説明

ランマ

【課題】搬送時において、底板の摩耗状態に拘わらずベローズがねじれて変形することを防止し、製品の信頼性を高めたランマを提供する。
【解決手段】上下方向の往復運動を与えるための動力源を有する頭部と、前記頭部の外側に配され、前記頭部を囲うハンドルと、前記動力源からの回転運動を上下の往復運動に変換する伝達機構と、前記伝達機構から伝達される往復運動により、上下に往復運動する脚部8と、脚部8の下端に配され、路盤を締固める底板20と、前記伝達機構を覆い、前記頭部及び脚部8の対向する端部を互いに接続するベローズ10とを備えたランマ1において、前記頭部又は脚部8の側面に設けられ、最外縁となる先端が底板20の側縁よりも外側に突出している支持部材30を備え、前記ハンドルは、支持部材30が設けられた側を下にしてランマ1を倒した際に、床面50と接する接地部7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路盤等を締め固めるためのランマに関する。
【背景技術】
【0002】
ランマは、舗装工事における路盤や埋設管周辺の地盤を締め固める(転圧する)ために使用される(例えば特許文献1参照)。特に、溝やマンホール周辺の狭い場所での転圧作業に用いられている。アスファルト補修等の舗装工事では、まず補修すべき該当箇所を切り取り、この切り取った箇所における路盤の転圧を行う。ランマは、このような場合における狭隘な部分での転圧に適し、特に切り取った箇所の壁際を締め固めるのに適している。ランマは路盤を叩く部分となる底板を最下端に有しており、壁際を締め固める際は、ランマの底板は側壁に接触するため、底板の側方部が摩耗し易い。
【0003】
舗装工事では側壁の高さはおよそ10cm以下であり、ランマは締固め作業中は5cm〜10cm程度跳ね上がる。一方で、ランマの底板は前進し易いように前方が上方に沿っている。そのため、底板の前方部分はほとんど側壁よりも上側にあり、側壁と接触することが少なく、摩耗量も少ない。このことは、底板の側方部において、前方とそれ以外の箇所との摩耗量に差を生じさせている。
【0004】
底板は、ランマが有するシリンダの高速往復運動により路盤を締め固める。このシリンダはスプリングが挿入されて軸方向に摺動可能な外筒と内筒からなる。この外筒と内筒は互いに軸廻りの回動は自由であるが、これらは弾性変形可能な樹脂からなるベローズで覆われて連結されている。したがって、ベローズの弾性変位内で外筒と内筒は回動可能である。
【0005】
ランマにて締め固める路盤は必ずしも平坦ではなく、したがって底板の底面全面で接触するとは限らず、底板の一部のみが接触して締め固めることもある。このような場合は、その反動をランマの軸心で受けることができず、挙動を乱すことになる。しかし、上記ベローズの弾性変形により、底板は柔軟にその路盤に接するので、そのショックは和らぎ、ある程度挙動を安定的に保つことができる。したがって、ベローズがある程度弾性変形することは上記観点からも必須である。
【0006】
このようなランマを運搬する場合、ランマの重心は上部にあり、直立させると安定性が悪いため、ランマを横に倒して搬送することが多い。この場合、燃料漏れを防ぐため、ランマはエンジンのキャブレタが取り付けられた側を上に向けて横に倒される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−3310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようにランマを横に倒すと、底板は床に接することになる。上述したように底板の側方部において、前方を除く部分が摩耗している場合、図5に示すように底板がランマの軸廻りに傾いた状態で倒される(図5では底板のみ記載)。具体的には、図5を参照すると、底板91の前側の側部92よりもそれ以外の側部93の方が摩耗しているため、底板91の後部側が前部92よりも下がり、底板91の中心線Bは地面に対して水平に延びる水平線Cに対して角度θだけ傾いている。これにより、外筒と内筒が相対的に回動し、上述したベローズがねじれた状態となる。このような姿勢で長時間保管されるような状態が続くと、ベローズの変形を招く。また、ベローズはその上端と下端とがランマにバンドで巻き付けられているが、このバンドが回転してしまうと、結果としてベローズがねじれた状態で固定されるため、ランマを直立させた状態でもねじれることになり、ランマの推進安定性が大きく損なわれることになる。
【0009】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、底板の摩耗状態に拘わらずベローズがねじれて変形することを防止し、製品の信頼性を高めたランマを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1の発明では、上下方向の往復運動を与えるための動力源を有する頭部と、前記頭部の外側に配され、前記頭部を囲うハンドルと、前記動力源からの回転運動を上下の往復運動に変換する伝達機構と、前記伝達機構から伝達される往復運動により、上下に往復運動する脚部と、前記脚部の下端に配され、路盤を締固める底板と、前記伝達機構を覆い、前記頭部及び前記脚部の対向する端部を互いに接続するベローズとを備えたランマにおいて、前記頭部又は前記脚部の側面に設けられ、最外縁となる先端が前記底板の側縁よりも外側に突出している支持部材を備え、前記ハンドルは、前記支持部材が設けられた側を下にして前記ランマを倒した際に、前記床面と接する接地部を有することを特徴とするランマを提供する。
【0011】
また、請求項2の発明では、前記支持部材は、その先端が前記接地部よりも内側に収まっていることを特徴としている。
また、請求項3の発明では、前記支持部材は前記脚部に設けられていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項4の発明では、前記支持部材は、前記動力源のキャブレタが配設されている側と反対側の側面に設けられていることを特徴としている。
また、請求項5の発明では、前記支持部材はさらに収納構造を有し、前記支持部材の前記先端は前記収納構造により前記底板の側縁よりも内側に収められることを特徴としている。
【0013】
また、請求項6の発明では、前記収納構造は、前記支持部材における前記頭部又は前記脚部側の端部である基端部を軸支する受け台と、前記基端部を支点に回動された前記支持部材を前記頭部又は前記脚部に沿った位置に固定するための固定部材とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、最外縁となる先端が底板の側縁よりも外側に突出している支持部材が、頭部又は脚部の側面に設けられている。このため、ランマを床面に横に倒したときに、床面と接するのはハンドルの接地部と支持部材の先端となる。すなわち、この状態で底板は床面に接触しない。これにより、摩耗した状態の底板が傾斜して接地されることがなくなり、これに伴うベローズのねじれによる変形が防止される。したがって、トラックの荷台等の床面にランマを横に倒して運搬する場合、その搬送時において、底板の摩耗状態に拘わらずベローズがねじれて変形することを防止でき、製品の信頼性を高めることができる。また、倉庫等の床面にランマを横倒し姿勢にして保管する場合、その保管時においても、ベローズがねじれて変形することを防止できる。さらに、ベローズのねじれが防止されると、作業時におけるランマの推進安定性も維持できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、支持部材の先端は、ハンドルの接地部よりも内側に収まっている。このため、ハンドル部分まで入り込む深溝の地盤を締め固める場合、支持部材が溝壁に当接することはなく、作業の妨げとなることはない。また、ランマを横に倒したときに頭部から脚部にかけて下がるような格好となり、したがって頭部に備わる動力源や燃料タンクが上側に配置される。これにより、ランマを横に倒したときの姿勢(横倒し姿勢)を安定させることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、支持部材は脚部に設けられているため、ランマを横に倒したときに、ランマの重心となる頭部から遠い位置にて支えることができる。したがって、安定した横倒し姿勢を維持することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、支持部材は、動力源のキャブレタが配設されている側と反対側の側面に設けられている。このため、ランマを横に倒したときに、キャブレタが上側に配置されるので、燃料漏れを防止することができる。
請求項5の発明によれば、支持部材はさらに収納構造を有し、支持部材の先端は収納構造により底板の側縁よりも内側に収められる。このため、例えば締め固め作業において、底板を壁際に寄せた場合であっても、又、どのような深さの溝であっても、支持部材が側壁と接触することはない。したがって、支持部材が締め固め作業の作業性を損なうことはない。
【0018】
請求項6の発明によれば、収納構造は、支持部材における頭部又は脚部側の端部である基端部を軸支する受け台と、基端部を支点に回動された支持部材を頭部又は脚部に沿った位置に固定するための固定部材とを有する。このため、支持部材は受け台に備わる回転軸廻りに回転可能であり、固定部材によって頭部又は脚部に沿った位置に固定可能である。このように支持部材が固定されれば、締め固め作業中にがたつくことを防止できる。したがって、支持部材が締め固め作業の作業性を損なうことはない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るランマの側面図である。
【図2】本発明に係るランマの正面図である。
【図3】本発明に係るランマを横に倒した状態を示す正面図である。
【図4】図3の矢印A−A視図である。
【図5】従来のランマにおける底板を横に倒したときの状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るにランマついて図面を参照して説明する。
図1及び図2を参照すれば、ランマ1は、上下方向の往復運動を与えるための動力源4を有する頭部2を備えている。頭部2にはその外周を囲むハンドル6が配設されており、このハンドル6は頭部2を保護するとともに、作業者の把持部となる。詳しくは、ハンドル6は、略長方形状の把持フレーム7と一対のU字フレーム9とから形成されている。把持フレーム7は、頭部2の上部両側に沿ってそれぞれ延びる一対の側部7sと、これら側部7sの端部をそれぞれ連結するフロント及びリア部7f、7rとを有する。一方、U字フレーム9はそれぞれ、その両端が把持フレーム7の側部7sに接続され、側部7sの下側から動力源4の両側に沿い下方に向けて延びている。そして、これら把持フレーム7及びU字フレーム9、即ち、ハンドル6はランマ1の最外縁を規定している。このため、ランマ1を横倒しにして床面に接地させたとき、把持フレーム7及びU字フレーム9の少なくとも一方は床面50と接する接地部26を有する(図3参照)。
【0021】
また、頭部2の下側には、動力源4からの回転運動を上下の往復運動に変換する伝達機構(図示しない)と、この伝達機構から伝達される往復運動により、上下に往復運動する脚部8とが備わる。頭部2と脚部8との間には、弾性変形可能な樹脂からなるベローズ10が配設されている。ベローズ10は伝達機構を覆い、頭部2及び脚部8の対向する端部を互いに接続している。図の例では、ベローズ10は、その上端と下端とにホースバンド12が巻き付けられ、各ホースバンド12の両端をそれぞれボルト14により締結することで、頭部2及び脚部8にそれぞれ取り付けられている。
【0022】
また、脚部8の下端には取付ベース18を介して底板20が配されている。この底板20は路盤を直接叩くためのものであり、その前部が上方に反り上がる形状を有している。なお、図の例では底板20はボルト21及びナット22により取付ベース18に取り付けられている。
さらに、ベローズ10と取付ベース18との間にはプロテクタ16が配設されおり、このプロテクタ16の側面には支持部材30が設けられている。支持部材30はランマ1を横に倒したときに脚部8を支えるためのスタンド32を有している。スタンド32は、ランマ1を横倒しにするときは側方に突出される(図3参照)。
【0023】
図3及び図4を参照すれば、ランマ1を床面50に横に倒して置いたとき、即ち、ランマ1を横倒し姿勢にしたとき、床面50と接するのはハンドル6の接地部26とスタンド32の先端となる。すなわち、このスタンド32の先端は底板20の側縁よりも外側に突出している。このため、この状態で底板20は床面50に接触しない。これにより、摩耗した状態の底板20が傾斜して接地されることがなくなり、これに伴うベローズ10のねじれによる変形が防止される。したがって、トラックの荷台等の床面にランマ1を横倒し姿勢にして運搬する場合、その搬送時において、底板20の摩耗状態に拘わらずベローズ10がねじれて変形することを防止でき、ランマ1の製品としての信頼性を高めることができる。また、また、倉庫等の床面にランマ1を横倒し姿勢にして保管する場合、その保管時においても、ベローズ10がねじれて変形することを防止できる。さらに、ベローズ10のねじれを防止することは、作業時におけるランマ1の推進安定性も維持できる。なお、図4は便宜上、底板20とハンドル6のみを図示している。
【0024】
また、図で示したように、スタンド32がプロテクタ16、即ち、脚部8に設けられていれば、ランマ1を横倒しにしたときに、ランマ1の重心となる頭部2から遠い位置にて支えることができる。したがって、ランマ1は安定した横倒し姿勢を維持することができる。
また、スタンド32をランマ1に対して側方に突出させたときの先端は、ハンドル6の接地部26よりも内側に収まっている。このため、ハンドル6の高さまでランマ1が入り込む深溝の地盤を締め固める場合、スタンド32が溝壁に当接することはなく、作業の妨げとなることはない。また、ランマ1を横に倒したときに頭部2から脚部8にかけて下がるような格好となる。したがって、頭部2に備わる動力源4や燃料タンクが上側に配置される。これにより、ランマ1の横倒し姿勢を安定させることができる。
【0025】
さらに、図1及び図4より明らかなように、支持部材30は途中で分岐してその先端に床面50と接地する複数の接地面34(図では2つ)を有している。このため、ランマ1の荷重をハンドル6の接地部26と協働して複数の接地面34で受けることができ、ランマ1の横倒し姿勢をより一層安定させることができる。
また、図1〜図3に示されるように、スタンド32が設けられた側と反対側の頭部2の側面には動力源4のキャブレタ5が配設されている。このため、ランマ1をハンドル6の接地部26とスタンド32とで支持する横倒し姿勢にしたときに、キャブレタ5が上側に配置されるので、キャブレタ5からの燃料漏れを防止することができる。
【0026】
また、支持部材30は収納構造40をさらに有している。具体的には、収納構造40は、スタンド32における脚部8側の端部である基端部を軸支する受け台42と、この基端部を支点に回動されたスタンド32を脚部8に沿った位置に固定するための固定部材44とを有する。固定部材44は、例えば、コイルスプリングである。コイルスプリングの両端はそれぞれ、スタンド32の先端部と受け台42との間に架け渡され、ランマ1の締め固め作業における振動に耐えうるばね力を有している。なお、固定部材44はコイルスプリングに限らず、スタンド32を脚部8に押さえ付けるバンド等でもよい。
【0027】
この収納構造40により、スタンド32の先端は底板20の側縁20sよりも内側に収められる。すなわち、スタンド32は受け台42に備わる回転軸43廻りに回転可能であり、固定部材44によって脚部8に沿った位置に固定可能である。このように、スタンド32が固定されれば、スタンド32が締め固め作業中にがたつくことを防止できる。このため、例えば締め固め作業において、底板20を壁際に寄せた場合であっても、又、どのような深さの溝であっても、スタンド32が側壁と接触することはない。したがって、スタンド32、即ち、支持部材30が締め固め作業の作業性を損なうことはない。
【0028】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。
例えば、支持部材30は頭部2に設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。
また、収納構造40はスタンド32自体を伸縮させるものであってもよい。
【0029】
さらに、ハンドル6の接地部26はU字フレーム9のみに限定されず、ハンドル6の把持フレーム7の側部7sにあってもよいし、側部7s及びU字フレーム9にそれぞれあってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ランマ(締固め機)
2 頭部
4 動力源
5 キャブレタ
6 ハンドル
7 把持フレーム
7s 側部
7r 後部
8 脚部
9 U字フレーム
10 ベローズ
12 ホースバンド
14 ボルト
16 プロテクタ
18 取付ベース
20 底板
20s 側縁
21 ボルト
22 ナット
26 接地部
30 支持部材
32 スタンド
34 接地面
40 収納構造
42 受け台
44 固定部材
46 回転軸
50 床面
91 底板
92 側部
93 側部
B 中心線
C 水平線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向の往復運動を与えるための動力源を有する頭部と、
前記頭部の外側に配され、前記頭部を囲うハンドルと、
前記動力源からの回転運動を上下の往復運動に変換する伝達機構と、
前記伝達機構から伝達される往復運動により、上下に往復運動する脚部と、
前記脚部の下端に配され、路盤を締固める底板と、
前記伝達機構を覆い、前記頭部及び前記脚部の対向する端部を互いに接続するベローズとを備えたランマにおいて、
前記頭部又は前記脚部の側面に設けられ、最外縁となる先端が前記底板の側縁よりも外側に突出している支持部材を備え、
前記ハンドルは、前記支持部材が設けられた側を下にして前記ランマを倒した際に、前記床面と接する接地部を有することを特徴とするランマ。
【請求項2】
前記支持部材は、その先端が前記接地部よりも内側に収まっていることを特徴とする請求項1に記載のランマ。
【請求項3】
前記支持部材は前記脚部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のランマ。
【請求項4】
前記支持部材は、前記動力源のキャブレタが配設されている側と反対側の側面に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のランマ。
【請求項5】
前記支持部材はさらに収納構造を有し、前記支持部材の前記先端は前記収納構造により前記底板の側縁よりも内側に収められることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のランマ。
【請求項6】
前記収納構造は、前記支持部材における前記頭部又は前記脚部側の端部である基端部を軸支する受け台と、前記基端部を支点に回動された前記支持部材を前記頭部又は前記脚部に沿った位置に固定するための固定部材とを有することを特徴とする請求項5に記載のランマ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−241389(P2012−241389A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111447(P2011−111447)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(594201397)株式会社日立建機カミーノ (18)
【Fターム(参考)】