説明

リアルタイム配列決定

【課題】 単一DNAまたはRNA分子またはその部分を直接かつ実質的にリアルタイムでシークエンシングすることを可能にするシークエンシング方法論を提供する。
【解決手段】 本方法論は、検出システムによってモニターされる検出可能な特性を有する原子および/または分子標識を用いてポリメラーゼおよび/またはdNTPを修飾することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一分子シークエンシング装置および方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、標識重合剤および/または標識モノマーを用いる単一分子シークエンシング装置および方法であって、標識重合剤および/または標識モノマーが、成長高分子鎖へのモノマーの挿入の前、間および/または後に、検出可能な特性に変化を受けるような装置および方法に関する。その装置および方法は、リアルタイムに近いまたはリアルタイムの条件下で、DNA、RNA、ポリペプチド、炭水化物、または類似の生体分子の配列をシークエンシングするのに理想的に適している。また、本発明は、標識解重合剤(tagged polymerizing agent)および/または標識解重合性高分子を用いる単一分子シークエンシング装置および方法であって、標識解重合剤および/または標識解重合性高分子が、解重合性高分子鎖からのモノマーの除去の前、間および/または後に、検出可能な特性に変化を受けるような装置および方法に関する。その装置および方法は、DNA、RNA、ポリペプチド、炭水化物、または類似の生体分子の配列をシークエンシングするのに理想的に適している。また、本発明は、標識重合剤または解重合剤と、標識または非標識高分子サブユニット(例えばモノマーまたはモノマーの集合)との相互作用を明示する信号を検出することに関するものであり、検出された信号は、モノマー順序に関する情報を提供する。
【背景技術】
【0003】
従来のDNAシークエンシングの概要
DNA断片における塩基または「配列」の順序を迅速かつ確実に特定することを可能とする方法の開発は、重要な技術の進歩であり、その重要性は言い尽くせない。DNA配列の知識は、生物の分子的機序の理解を高めることができる。DNA配列情報は、広範囲の生物学的プロセスに重要な情報を科学者に提供する。DNAにおける塩基の順序は、タンパク質の情報内容を直接コードする細胞内の分子であるRNAにおける塩基の順序を指定する。DNA配列情報は、タンパク質配列情報を推測するのに日常的に用いられている。塩基順序はDNA構造およびその機能を決定し、さらに正常な発生、遺伝病の発現、または癌を指定する分子プログラムを提供する。
【0004】
DNA配列の知識およびそれら配列を操作し得ることは、生物工学の発展を加速させ、重要な科学的疑問に問いかけかつ答えるための手段を提供する分子技術の発展を導いた。核酸の配列特異的検出を容易にさせる重要なバイオ技術であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は配列情報に基づく。DNAシークエンシング方法は、試験されている生物のタイプに関わらず、科学者が、変化がDNAに導入されたか否かを特定し、さらに生物の生態へのその変化の影響を評価することを可能とする。結局、DNA配列情報は、個体を独自に同定する方法を提供することができる。
【0005】
DNAシークエンシング工程を理解するためには、DNAに関するいくつかの事実を思い出す必要がある。第1に、DNA分子は4つの塩基、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびチミン(T)から構成されている。それら塩基は、AはTと相互作用し、GはCと相互作用するというように、水素結合を介した非常に特異的な態様でお互いに相互作用する。それら塩基間の特異的相互作用は塩基対合と称される。実際、二本鎖DNAを安定化させているのはそのような塩基対合(および塩基スタッキング相互作用)である。DNA分子の2本の鎖は逆平行であって、1本の鎖は5’から3’方向に配向され、他方の鎖は3’から5’方向に配向されている。5’および3’の用語は、DNA骨格の方向性を称するものであり、塩基の順序を記述するのに重要である。DNA配列における塩基順序を記載するための慣習は、5’から3’方向を用い、左から右に書かれる。従って、一方のDNA鎖の配列が分かっている場合、相補配列は指定される。
【0006】
サンガーDNAシークエンシング(酵素的合成)
サンガーシークエンシングは、近年、最も一般的に用いられているDNAをシークエンシングする方法である(Sanger et al., 1977)。その方法は、DNAポリメラーゼのいくつかの特徴を利用する:DNA分子の正確なコピーを作る能力;合成の方向性(5’から3’);合成がそれから開始されるDNA鎖(「プライマー」)の必要性;およびプライマーの末端における3’OHの必要性。もし3’OHが利用できなければ、DNA鎖はポリメラーゼによって伸長されない。3’OHを欠く塩基アナログであるジデオキシヌクレオチド(ddNTP、ddATP、ddTTPddGTP、ddCTP)が酵素的シークエンシング反応に加えられた場合、そのジデオキシヌクレオチドはポリメラーゼによって成長鎖に組み込まれる。しかしながら、一旦ddNTPが組み込まれると、ポリメラーゼは更なる塩基を鎖の末端に加えることができない。重要なこととして、AはTの組込みを指定し、GはCの組込みを指定する(それらの逆も同様)という、天然ヌクレオチドの組込みを指定するのと同じ塩基組込み法則によって、ddNTPはポリメラーゼによってDNA鎖に組み込まれる。
【0007】
蛍光DNAシークエンシング
DNA配列情報の特定における大きな進歩が、自動DNAシークエンサーの導入と共に生じた(Smith et al., 1986)。自動シークエンサーを用いて、シークエンシング反応産物を分離し、反応産物からのデータを検出および収集し(コンピューターによって)、さらに塩基の順序を分析して自動的にDNA断片の塩基配列を決定する。自動シークエンサーは、蛍光標識を含む伸長産物を検出する。自動シークエンサーを用いて得られる配列読取り長は、様々なパラメーターに依存するが、通常、500から1,000塩基までの範囲であろう(データ収集時間3−18時間)。最大能力で、自動シークエンサーは並行して96サンプルからデータを収集することができる。
【0008】
色素標識ターミネーターケミストリー(dye-labeled terminator chemistry)がシークエンシング産物の特定に用いられる場合、塩基は、ddNTPに結合させた蛍光標識の色によって特定される。適当なサイクル数(3−12時間)に亘り反応が組み立てられかつ処理された後、自動シークエンサーの単一レーンに装填するための伸長産物が調製される(組み込まれなかった色素標識ddNTPは除去され、反応産物が濃縮される)。色素−ターミネーターケミストリーの利点は、伸長産物が、色素標識ddNTPで終結している場合にのみ可視化されることである;早期終結産物(prematurely terminated product)は検出されない。従って、その方法によって、通常、バックグラウンドノイズの少ない結果が得られる。
【0009】
最新技術の色素−ターミネーターケミストリーは、4つのエネルギー転移蛍光色素を用いる(Rosenblum et al., 1997)。それらターミネーターは、4つの異なるジクロロローダミン(dRhodamine)アクセプター色素の1つに結合したフルオレセインドナー色素(6-FAM)を含む。G−、A−、T−、またはC−ターミネーターに関して、ターミネーターに結合するd-Rhodamineアクセプター色素は、それぞれ、ジクロロ[R−100]、ジクロロ[R6G]、ジクロロ[TAMRA]、またはジクロロ[ROX]である。ドナー色素(6-FAM)は自動シークエンサーにおけるアルゴンイオンレーザーからのエネルギーを効率的に吸収し、連関しているアクセプター色素にそのエネルギーを転移させる。ターミネーターのドナーおよびアクセプター部分を連関させているリンカーは、実質的に100%の効率でエネルギー転移を達成させるように最適に離間している。それらアクセプター色素から発せられる蛍光信号は、最小のスペクトル重複を示し、G−、A−、T−、またはC−ターミネーターに関して、各々、540、570、595、および625nmに中心をおいた10nm仮想フィルターを用いて、ABIPRISM 377 DNAシークエンサーによって収集される。従って、エネルギー転移色素標識ターミネーターは、より明るい信号をもたらし、スペクトル解像度を改善する。それら改善は、より正確なDNA配列情報をもたらす。
【0010】
自動DNAシークエンシング反応において用いられる有力な酵素は、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のDNAポリメラーゼIの遺伝子組換え形態である。その酵素、AmpliTaq DNAポリメラーゼ、FSは、より効率的にddNTPを組込み、さらに3’→5’および5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を除去するように最適化された。サーマス・アクアティカスDNAポリメラーゼの位置667において天然に生じるフェニルアラニンのチロシンでの置換は、ddNTPに対するdNTPの差別的組込みを減らす(Tabor and Richardson, 1995; Reeve and Fuller, 1995)。従って、ポリメラーゼ内の単一の水酸基がdNTPとddNTPとの間の識別を担う。ポリメラーゼが新規に複製されたDNA鎖から誤って組込まれた塩基を除くことを可能にする3’→5’エキソヌクアーゼ活性(校正活性)は、組込まれたddNTPをもポリメラーゼに除去させるため、そのような校正活性は除かれた。5’→3’エキソヌクレアーゼ活性は、反応産物の5’末端から塩基を除去してしまうため、除かれた。反応産物はゲル電気泳動の間にサイズ分離されるため、反応産物が共通の終点を共有する場合のみ、説明可能な配列データが得られる。より詳細には、プライマーが伸長産物の5’末端を特定し、組込まれた色分けされたddNTPがその分子の3’末端における塩基を特定する。従って、従来のDNAシークエンシングは、同じ5’終点を共有するがDNA鎖の3’末端におけるddNTPの位置が異なるDNA分子集団の分析を含む。
【0011】
ゲノムシークエンシング
研究者は、500−1,000塩基よりも長い平均シークエンシング読取り長のDNA断片の配列を特定することを必要とする場合が非常に多い。驚くほどのことではないが、それを達成するための戦略が開発された。それら戦略は、ランダムまたは有向性(directed)の2つの大きな分類に分けられ、配列決定されるべき断片のサイズによって戦略の選択が成される。
【0012】
ランダムまたはショットガンDNAシークエンシングにおいて、大きなDNA断片(通常、20,000塩基対よりも大きなDNA断片)を、クローニングベクターに挿入されるさらに小さな断片に切断する。それらより小さなクローン内に含まれる情報全体は、もとのDNA断片内に含まれる情報と同等であると仮定される。多くの小さなクローンをランダムに選択し、シークエンシング反応のためにDNA鋳型を調製し、さらに挿入物に隣接するベクターDNA配列と塩基対合するプライマーを用いてシークエンシング反応を開始させる(20kbp挿入物に関して2−7日)。続いて、各塩基呼び出しの質を調べ(手動でまたはソフトウェアによって自動的に(PHRED, Ewing et al., 1998); 配列反応ごとに1−10分)、小さなDNA断片から得られた配列のコンピューターアセンブリによってもとのDNA断片の配列を再構成した。提供された時間概算に基づいて、ショットガンシークエンシング戦略が用いられる場合、20kbpの挿入は完了するのに3−10日かかることが予測される。そのような戦略は、全ヒトゲノムを意味する順序断片(ordered fragment)の配列を特定するのに大規模に用いられた(http://www.nhgri.nih.gov/HGP/)。しかしながら、しばしば、配列における隙間がコンピューターアセンブリの後に残るため、そのようなランダムなアプローチは完全な配列決定には通常十分ではない。有向性戦略(下記のような)が、配列プロジェクトを完成するのに通常用いられる。
【0013】
大きな断片のシークエンシングのランダム段階の後に残った隙間を埋めるために、および小さなDNA断片をシークエンシングするための有効なアプローチとして、有向性またはプライマー−ウォーキング(primer-walking)シークエンシング戦略を用いることができる。その戦略は、一本鎖部位で鋳型にアニールしかつ鎖の伸長の開始部位として働くDNAプライマーを用いる。そのアプローチは、プライマーを設計するためにいくらかの配列情報の知識を必要とする。最初の反応から得られた配列を用いて、次の反応のためのプライマーを設計し、全配列が特定されるまでそのような工程を繰り返す。従って、プライマーベースの戦略は、公知のDNA領域から未知のDNA領域への繰り返しのシークエンシング工程を含み、その工程は重複を最小限にし、さらに追加のクローニング工程を必要としない。しかしながら、その戦略は、シークエンシングの各ラウンドのために新しいプライマーの合成を必要とする。
【0014】
新しいプライマーを設計および合成することの必要性は、それら合成に必要な費用および時間と相まって、大きなDNA断片をシークエンシングするためのプライマー−ウォーキングの日常的な適用を制限する。研究者は、外注プライマー合成の必要性を排除するために短いプライマーのライブラリーを用いることを提案した(Studier, 1989; Siemieniak and Slightom, 1990; Kieleczawa et al., 1992; Kotler et al., 1993; Burbelo and Iadarola, 1994; Hardin et al., 1996; Raja et al., 1997; Jones and Hardin, 1998a,b; Ball et al., 1998; Mei and Hardin, 2000; Kraltcheva and Hardin, 2001)。プライマーライブラリーを利用できることは、各プライマーを複数の反応のプライミングに用い、さらに次のシークエンシングプライマーの迅速な入手を可能とするため、プライマーの無駄を最小限にする。
【0015】
ヒトゲノムプロジェクトの本来の目的の1つは、2005年までに全ヒトゲノムの配列決定を完了することであった(Http://www.nhgri.nih.gov/HGP/)。しかしながら、計画は前倒しされ、ヒトゲノムの「施行図」が2001年2月に公開された(Venter et al., 2001, “International Human Genome Sequencing Consortium 2001”)。いくつかの研究分野における技術的進歩によって、完全なゲノム配列は2003年に予定され、2年計画が早められた。DNA操作(特に大きなDNA断片の操作及び増幅)、より迅速かつ優れたDNAシークエンシング方法の発展(http://www.abrf.org)、データ(バイオインフォーマティクス)を操作および解析できるコンピューターハードウェアおよびソフトウェアの発達、ならびにDNA配列を作成および分析すること(遺伝子工学)に関連する手順の自動化等の全ての側面における進歩によって、そのように期限が加速された。
【0016】
単一分子DNAシークエンシング
従来のDNAシークエンシング戦略および方法は確実であるが、時間、労力、および費用がかかる。それら問題に対処するため、ある研究者は、酵素的分解を用い、続いて単一dNMP検出および識別を行う、蛍光ベースの単一分子シークエンシング方法について検討している。蛍光標識ヌクレオチドを含むDNA高分子をエキソヌクレアーゼによって消化し、フローサイトメトリーによって標識ヌクレオチドを検出および識別する(Davis et al., 1991; Davis et al., 1992; Goodwin et al., 1997; Keller et al., 1996; Sauer et al., 1999; Werner et al., 1999)。本方法は、蛍光標識塩基を含むようにDNA鎖を合成することが必要である。そのような必要性が、特定され得る配列の長さを制限し、任意の配列データが得られる前に実施しなければならない操作の数を増やす。関連するアプローチは、DNA鎖から単一(非標識)ヌクレオチドを連続的に分離し、そのDNA鎖をもとの順序で固形マトリックス中に封じ込め、さらに分離されたヌクレオチドの分光学的発光を検出してDNA配列情報を再構成することを提案する(Ulmer, 1997; Mitsis and Kwagh, 1999; Dapprich, 1999)。そのアプローチは、単一分子DNAシークエンシングを開発する目標を有する会社であるPraelux, Inc.によって開発されているアプローチである。理論上、後者の方法は、前者の酵素的分解法ほどは長さの制限を受けにくいが、後者の方法は、任意の配列情報が得られる前に多くの操作を必要とする。
【0017】
特許文献1に示されているように、Li-cor, Inc.は、単一分子シークエンシングのため、酵素合成ベースの戦略を開発している。Li-corの方法は、蛍光標識をγ−リン酸塩に結合させ、さらにクエンチング部分をdNTPにおける(好ましくは塩基における)別の部位に結合させることによって各dNTPを多様に修飾することを含む。クエンチング部分は、組込まれなかったdNTPに結合した蛍光標識からの発光を防ぐために加えられる。組込まれると、蛍光標識とクエンチング部分が分離され、結果として標識から発光がもたらされる。標識(ピロリン酸塩に含まれる)はポリメラーゼ活性部位から離れて流れるが、修飾(クエンチング)塩基はDNA高分子の一部になる。
【0018】
いくつかの単一分子シークエンシングシステムが開示されているが、それらの多くは塩基修飾を見込みまたは必要とする。例えば、特許文献2から10(参照によってこの中に組込まれる)を参照。塩基修飾は、DNA構造を破壊するであろう(それは通常、酵素活性部位に最も近いA形DNA(A-form DNA)から成る; Li et al., 1998a)。dNTPおよび新たに合成された鎖中の約7塩基の3’隣接塩基はポリメラーゼの内部領域に接触するため、A形DNAが、酵素とDNAとの間の副溝接触を最大にするのに重要であろう。DNA構造が塩基修飾のせいで影響を受けた場合、酵素の忠実性および/または機能が変化するであろう。
【特許文献1】国際公開第00/36151号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/16375 号パンフレット
【特許文献3】国際公開第01/23610 号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/25480号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/06770号パンフレット
【特許文献6】国際公開第99/05315号パンフレット
【特許文献7】国際公開第00/60114号パンフレット
【特許文献8】国際公開第00/36151号パンフレット
【特許文献9】国際公開第00/36512号パンフレット
【特許文献10】国際公開第00/70073号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、当業界には、単一分子DNA配列のための迅速かつ効率的な酵素的DNAシークエンシングシステムに対する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
単一分子シークエンシング
本発明は、重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子または原子標識で修飾された重合剤であって、標識の検出可能な特性が、モノマーの組込みの前、間および/または後に変化を受けるような重合剤を提供する。モノマーは、DNA、RNA,混合DNA/RNA配列のヌクレオチド、アミノ酸、単糖、天然ヌクレオチドの合成アナログ、天然アミノ酸の合成アナログ、または天然単糖の合成アナログ、合成有機または無機モノマー等のような、有機、無機または生物有機化学モノマーであって差し支えない。
【0021】
本発明は、解重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子または原子標識で修飾された解重合剤であって、標識の検出可能な特性が、モノマー除去の前、間および/または後に変化を受けるような解重合剤を提供する。高分子は、天然ヌクレオチドのみまたは天然ヌクレオチドとその合成アナログとの混合物を含むDNA、RNA,混合DNA/RNA配列のヌクレオチド、天然アミノ酸のみまたは天然アミノ酸とその合成アナログとの混合物を含むポリペプチド配列、天然単糖のみまたは天然単糖とその合成アナログとの混合物を含む多糖または糖鎖配列、合成有機または無機モノマーを含む高分子等であって差し支えない。
【0022】
また、本発明は、合成/重合剤または解重合剤(分子)とその基質(モノマーまたは解重合性高分子)との間の相互作用の変化を明示する検出可能な特性に相当する信号を検出し、さらに、好ましくはリアルタイムまたはほぼリアルタイムで、その信号をモノマー順序に特異的な情報またはモノマー配列情報に解読することを可能にするシステムを提供する。
【0023】
単一部位標識ポリメラーゼ
本発明は、ポリメラーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子または原子標識で修飾されたポリメラーゼであって、標識の検出可能な特性が、モノマーの組込みの前、間および/または後に変化を受けるようなポリメラーゼを提供する。モノマーは、DNA、RNA、または混合DNA/RNAモノマー、あるいはポリメラーゼによって重合可能な合成アナログであって差し支えない。
【0024】
本発明は、エキソヌクレアーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子または原子標識で修飾されたエキソヌクレアーゼであって、標識の検出可能な特性が、モノマーの遊離の前、間および/または後に変化を受けるようなエキソヌクレアーゼを提供する。高分子は、天然モノマーまたはエキソヌクアーゼによって解重合可能な合成アナログから構成されるDNA、RNA、または混合DNA/RNA配列であって差し支えない。
【0025】
本発明は、モノマーの組込みの前、間および/または後に配座変化(conformational change)を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子または原子標識で修飾されたポリメラーゼであって、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に標識が第1の検出特性を有しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に標識が第2の検出特性を有するようなポリメラーゼを提供する。
【0026】
本発明は、モノマーの組込みの前、間および/または後に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの発色団で修飾されたポリメラーゼであって、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に発色団の発光の強度および/または周波数が第1の値を有しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に発色団の発光の強度および/または周波数が第2の値を有するようなポリメラーゼを提供する。
【0027】
本発明は、モノマーの組込みの前、間および/または後に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの蛍光活性分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に標識が第1の蛍光特性を有しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に標識が第2の蛍光特性を有するようなポリメラーゼを提供する。
【0028】
本発明は、モノマーの組込みの前、間および/または後に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に標識が実質的に検出可能であり、かつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に標識が実質的に検出不可能であり、あるいはポリメラーゼが第1の配座状態にある時に標識が実質的に検出不可能でありかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に標識が実質的に検出可能であるようなポリメラーゼを提供する。
【0029】
本発明は、遊離されたピロリン酸基上の標識と相互作用する部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子または原子標識で修飾されたポリメラーゼであって、ポリメラーゼ標識が、遊離されたピロリン酸基上の標識と相互作用する前には第1の検出特性を有し、かつ遊離されたピロリン酸基上の標識と相互作用している時には第2の検出特性を有するようなポリメラーゼを提供する。好ましい実施形態において、そのような検出特性の変化は、各ピロリン酸基が遊離された時に関連して生じる。
【0030】
本発明は、遊離されたピロリン酸基上の標識と相互作用する部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの発色団で修飾されたポリメラーゼであって、発色団が遊離されたピロリン酸基上の標識と相互作用する前には発色団の発光の強度および/または周波数が第1の値を有し、かつ発色団が遊離されたピロリン酸基と相互作用している時には発色団の発光の強度および/または周波数が第2の値を有するようなポリメラーゼを提供する。好ましい実施形態において、そのような検出特性の変化は、各ピロリン酸基が遊離された時に関連して生じる。
【0031】
本発明は、遊離されたピロリン酸基上の標識と相互作用する部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの蛍光活性分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、ポリメラーゼ標識が、ピロリン酸基がその遊離部位から離れて拡散した時に、ピロリン酸基の遊離の前の第1の状態から第2の状態に変化するようなポリメラーゼを提供する。好ましい実施形態において、そのような検出特性の変化は、各ピロリン酸基が遊離された時に関連して生じる。
【0032】
本発明は、遊離されたピロリン酸基上の標識と相互作用する部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、ポリメラーゼ標識が、ピロリン酸基が遊離された後にピロリン酸基上の標識と相互作用した場合にピロリン酸遊離前の実質的に検出可能な状態から実質的に検出不可能な状態に変化し、あるいはポリメラーゼ標識が、ピロリン酸基が遊離した後にピロリン酸基上の標識と相互作用した場合にピロリン酸遊離前の実質的に検出不可能な状態から実質的に検出可能な状態に変化するようなポリメラーゼを提供する。
【0033】
複数部位標識重合剤または解重合剤
本発明は、重合剤上の複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子および/または原子標識で修飾されたモノマー重合剤であって、その対の少なくとも1つの標識の検出可能な特性が、標識間相互作用の変化のせいでモノマーの組込みの前、間および/または後に変化を受けるようなモノマー重合剤を提供する。
【0034】
本発明は、解重合剤上の複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子および/または原子標識で修飾された解重合剤であって、その対の少なくとも1つの標識の検出可能な特性が、標識間相互作用の変化のせいでモノマーの遊離の前、間および/または後に変化を受けるような解重合剤を提供する。
【0035】
本発明は、重合剤上の複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子および/または原子標識で修飾されたモノマー重合剤であって、その対の少なくとも1つの標識の検出可能な特性が、重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有しかつ重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有し、モノマー組込みサイクルの間に重合剤がその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るようなモノマー重合剤を提供する。
【0036】
本発明は、解重合剤上の複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子および/または原子標識で修飾された解重合剤であって、その対の少なくとも1つの標識の検出可能な特性が、解重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有しかつ解重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有し、モノマー遊離サイクルの間に解重合剤がその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るような解重合剤を提供する。
【0037】
好ましくは、検出信号に変化が生じるように、第1の状態と第2の状態は異なる。しかしながら、変化無しの結果は、重合媒体または解重合媒体の他の特性を明示するであろう。
【0038】
複数部位標識ポリメラーゼ
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、少なくとも1つの標識がモノマー組込みの間に変化を受け、その対の検出可能な特性が、ポリメラーゼが第1の状態にある時に第1の値を有しかつポリメラーゼが第2の状態にある時に第2の値を有し、モノマー組込みサイクルの間にポリメラーゼがその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0039】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、少なくとも1つの標識がモノマー組込みの間に配座変化を受け、その対の検出可能な特性が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の値を有しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の値を有し、モノマー組込みサイクルの間にポリメラーゼがその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0040】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子または原子で修飾されたポリメラーゼであって、少なくとも1つの標識がモノマー組込みの間に配座変化を受け、ポリメラーゼが第1の配座状態または第2の配座状態にある時にその対が相互作用して発色団を形成し、モノマー組込みサイクルの間にポリメラーゼがその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0041】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、少なくとも1つの標識がモノマー組込みの間に配座変化を受け、その標識が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の蛍光特性を有しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の蛍光特性を有し、モノマー組込みサイクルの間にポリメラーゼがその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0042】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、少なくとも1つの標識がモノマー組込みの間に配座変化を受け、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に実質的に活性でありかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に不活性であり、あるいはポリメラーゼが第1の配座状態にある時に実質的に不活性でありかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に活性であり、モノマー組込みサイクルの間にポリメラーゼがその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0043】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、少なくとも1つの標識がモノマー組込み過程の間におけるピロリン酸遊離の間および/または後に変化を受け、その対の検出可能な特性が、標識がピロリン酸遊離前の第1の状態にある時に第1の値を有しかつ標識がピロリン酸遊離の間および/または後の第2の状態にある時に第2の値を有し、モノマー組込みサイクルの間に標識がその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0044】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、少なくとも1つの標識がピロリン酸遊離過程の間におけるポリメラーゼの配座変化のせいで位置変化を受け、その対の検出可能な特性が、標識が第1の位置にある時に第1の値を有しかつ標識が第2の位置にある時に第2の値を有し、遊離サイクルの間に標識がその第1の位置から第2の位置に変化しさらに第1の位置に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0045】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子または原子で修飾されたポリメラーゼであって、それら標識がピロリン酸遊離過程の間におけるポリメラーゼの配座変化のせいで相対的分離(relative separation)を変化させ、それら標識が第1の距離で離間している時にそれら標識は第1の発光プロフィールを有する発色団を形成し、かつそれら標識が第2の距離で離間している時にそれら標識は第2の発光プロフィールを有する発色団を形成し、ピロリン酸遊離サイクルの間に離間距離がその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0046】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、それら標識がピロリン酸遊離の間におけるポリメラーゼの配座変化のせいで相対的分離を変化させ、それら標識が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の蛍光特性を有しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の蛍光特性を有し、ピロリン酸遊離サイクルの間にその蛍光特性がその第1の値から第2の値に変化しさらに第1の値に戻るようなポリメラーゼを提供する。
【0047】
本発明は、複数の部位またはその近くに位置し、それら部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識で修飾されたポリメラーゼであって、それら標識がピロリン酸遊離の間におけるポリメラーゼの配座変化のせいで相対的分離を変化させ、それら対が、標識が第1の分離を有する時に実質的に蛍光活性でありかつ標識が第2の分離を有する時に実質的に蛍光不活性であり、あるいは標識が第1の分離を有する時に実質的に蛍光不活性でありかつ標識が第2の分離を有する時に実質的に蛍光活性であり、ピロリン酸遊離サイクルの間に蛍光活性が1回一巡するようなポリメラーゼを提供する。
【0048】
第1の状態から第2の状態へ変化し、さらに再度第一の状態に戻る時に特性は一巡する。好ましくは、検出信号に変化が生じるように、第1の状態と第2の状態は異なる。しかしながら、変化無しの結果は、重合媒体または解重合媒体の他の特性を明示するであろう。
【0049】
標識重合剤を用いる方法
本発明は、モノマーが成長分子鎖に何時組込まれるかまたは組込まれるか否かを特定する方法であって、原子または分子標識の検出可能な特性をモニターする工程を含み、その標識が重合剤上の部位またはその近くに位置しその部位に関連しまたは共有結合し、その標識の検出可能な特性がモノマー組込みの前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする方法を提供する。
【0050】
本発明は、モノマーが成長分子鎖に何時組込まれるかを特定する方法であって、原子または分子標識の検出可能な特性をモニターする工程を含み、その標識が重合剤上の部位またはその近くに位置しその部位に関連しまたは共有結合し、検出可能な特性が、重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有しかつ重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有し、さらにモノマー組込みサイクルの間に重合剤が第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻ることを特徴とする方法を提供する。
【0051】
好ましくは、検出信号に変化が生じるように、第1の状態と第2の状態は異なる。しかしながら、変化無しの結果は、重合媒体または解重合媒体の他の特性を明示するであろう。
【0052】
標識ポリメラーゼを用いる方法
本発明は、モノマーが成長分子鎖に何時組込まれるかまたは組込まれるか否かを特定する方法であって、標識の検出可能な特性をモニターする工程を含み、その標識がポリメラーゼ上の部位またはその近くに位置しその部位に関連しまたは共有結合し、その部位がモノマー組込みの間に変化を受け、検出可能な特性が、ポリメラーゼが第1の状態にある時に第1の値を有しかつポリメラーゼが第2の状態にある時に第2の値を有し、その値はその部位が変化を受けたことを明示し、さらにモノマー組込みサイクルの間にポリメラーゼが第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻ることを特徴とする方法を提供する。
【0053】
本発明は、モノマーが成長分子鎖に何時組込まれるかまたは組込まれるか否かを特定する方法であって、標識の検出可能な特性をモニターする工程を含み、その標識がポリメラーゼ上の部位またはその近くに位置しその部位に関連しまたは共有結合し、その部位がモノマー組込みの間に配座変化を受け、検出可能な特性が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の値を有しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の値を有し、その値はその部位が変化を受けたことを明示し、さらにモノマー組込みサイクルの間にポリメラーゼが第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻ることを特徴とする方法を提供する。
【0054】
本発明は、モノマーが成長分子鎖に何時組込まれるかまたは組込まれるか否かを特定する方法であって、標識ポリメラーゼを光に当てる工程、および標識ポリメラーゼによって発せられる蛍光の強度および/または周波数をモニターする工程を含み、その標識ポリメラーゼが、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置しその部位に関連しまたは共有結合した標識を有するポリメラーゼを含み、その標識が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の強度および/または周波数の蛍光を発しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の強度および/または周波数の蛍光を発し、その強度および/または周波数の変化はその部位が変化を受けたことを明示し、さらにモノマー組込みサイクルの間にポリメラーゼが第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻ることを特徴とする方法を提供する。
【0055】
また、本発明は、同時に並列および/または大規模並列シークエンシングを可能とする、複数の標識ポリメラーゼを用いる上記の方法も提供する。そのような並列処理を用いて、種を越えて所定の遺伝子に関するDNA配列における相同性の程度を迅速に検出し、または特定遺伝形質に関して患者DNAを迅速にスクリーニングし、または多形性に関してDNA配列を迅速にスクリーニングすることもできる。
【0056】
また、本発明は、ポリメラーゼに関連した成長DNA鎖にモノマーが組込まれたか否かまたは何時組込まれたかを特定する方法であって、塩基組込みの後にピロリン酸基が遊離される時であってそのピロリン酸基がポリメラーゼから離れて拡散する前に、ポリメラーゼ標識がピロリン酸上の標識と相互作用して1つの標識の検出可能な特性または両方の標識に関連する検出可能な特性(蛍光対の場合)に変化を生じさせるように、標識がポリメラーゼ上に配置されていることを特徴とする方法を提供する。
【0057】
好ましくは、検出信号に変化が生じるように、第1の状態と第2の状態は異なる。しかしながら、変化無しの結果は、重合媒体の他の特性を明示するであろう。
【0058】
標識重合剤を用いる装置
本発明は、少なくとも1つの標識重合剤がその上に沈着されている基板を含む、単一分子シークエンシング装置を提供する。標識重合剤は、適切な重合媒体中の基板表面上に置かれていて差し支えなく、あるいは重合剤は、基板上の領域、区域、穴、溝、チャネル、または他の類似の構造中に封じ込められていて差し支えない。基板は、重合剤へのモノマーの分子輸送を支持することができる例えばチャネルまたは溝等の少なくとも1つの連結構造によって重合剤封じ込め構造に連結された基板上のモノマー領域、区域、穴、溝、チャネル、リザーバ、または他の類似の構造も含んでいて差し支えない。あるいは、基板は、各モノマーを包含する構造を含んでいて差し支えなく、各構造は、重合剤へのモノマーの分子輸送を支持することができる連結構造によって重合剤封じ込め構造に連結されている。基板は、複数の重合剤封じ込め構造に再分割されていても差し支えなく、各構造はモノマーリザーバに連結されている。あるいは、各重合剤封じ込め構造は、各リザーバが特定モノマーを包含するように、それ自身のモノマーリザーバまたは十分なモノマーリザーバを有していて差し支えない。
【0059】
本発明は、分子拘束(molecular tether)または連結基(linking group)によって基板の表面に付着された少なくとも1つの標識重合剤を有する基板を含み、拘束または連結基の一方の端部が基板の表面上の部位に結合し、さらにもう一方の端部が重合剤上の部位に結合しまたは重合剤と強く関連した分子上の部位に結合しているような、単一分子シークエンシング装置も提供する。この内容において、「結合する」の用語は、化学的および/または物理的相互作用が、通常の重合条件下で基板の所定の領域内に重合剤を保持するのに十分であることを意味する。化学的および/または物理的相互作用として、限定はされないが、基板の所望の領域中に重合剤を完全に保持するのに十分な、共有結合、イオン結合、水素結合、無極結合、引力のある静電的相互作用、双極子相互作用、または任意の他の電気的または量子力学的相互作用が挙げられる。拘束標識重合剤が付着した基板を、適切な重合媒体を含む容器中に入れて差し支えない。あるいは、適切な重合媒体で満たすことができる基板上の領域、区域、穴、溝、チャネル、または他の類似構造上またはその中に、標識重合剤を拘束または固定させて差し支えない。基板は、重合剤へのモノマーの分子輸送を支持することができる少なくとも1つの連結構造によって重合剤構造に連結された基板上のモノマー領域、区域、穴、溝、チャネル、リザーバ、または他の類似構造も含んでいて差し支えない。あるいは、基板は、各モノマーを包含する構造を含んでいて差し支えなく、各構造は、重合剤へのモノマーの分子輸送を支持することができる連結構造によって重合剤構造に連結されている。基板は、各々少なくとも1つの拘束重合剤を有する複数の重合剤構造に再分割されていても差し支えなく、各構造はモノマーリザーバに連結されている。あるいは、各重合剤構造は、それ自身のモノマーリザーバまたは十分なモノマーリザーバ(各特定モノマー用の1つのリザーバ)を有していて差し支えない。
【0060】
そのような装置において用いるためのモノマーとして、限定はされないが、配列決定されるべき高分子の型に依存して、dNTP、標識dNTP、標識ddNTP、アミノ酸、標識アミノ酸、単糖、標識単糖、または適当なそれらの混合物または組合せが挙げられる。
【0061】
標識ポリメラーゼを用いる装置
本発明は、少なくとも1つの標識ポリメラーゼがその上に沈着されている基板を含む、単一分子シークエンシング装置を提供する。標識ポリメラーゼは、適切な重合媒体中の基板表面上に置かれていて差し支えなく、あるいはポリメラーゼは、基板上の領域、区域、穴、溝、チャネル、または他の類似構造中に封じ込められていて差し支えない。基板は、ポリメラーゼへのモノマーの分子輸送を支持することができる少なくとも1つの連結構造によってポリメラーゼ封じ込め構造に連結された基板上のモノマー領域、区域、穴、溝、チャネル、または他の類似構造も含んでいて差し支えない。あるいは、基板は、各モノマーを包含する構造を含んでいて差し支えなく、各構造は、ポリメラーゼへのモノマーの分子輸送を支持することができる連結構造によってポリメラーゼ封じ込め構造に連結されている。基板は、複数のポリメラーゼ封じ込め構造に再分割されていても差し支えなく、各構造はモノマーリザーバに連結されている。あるいは、各ポリメラーゼ封じ込め構造は、それ自身のモノマーリザーバまたは4つのリザーバを有し、各リザーバが特定モノマーを包含していて差し支えない。
【0062】
本発明は、分子拘束または連結基によって基板の表面に接着された少なくとも1つの標識ポリメラーゼを有する基板を含み、拘束または連結基の一方の端部が基板の表面上の部位に結合し、さらにもう一方の端部がポリメラーゼ上の部位に結合しまたはポリメラーゼと強く関連した分子上の部位に結合しているような、単一分子シークエンシング装置も提供する。この内容において、「結合する」の用語は、化学的および/または物理的相互作用が、通常の重合条件下で基板の所定の領域内にポリメラーゼを保持するのに十分であることを意味する。化学的および/または物理的相互作用として、限定はされないが、基板の所望の領域中にポリメラーゼを完全に保持するのに十分な、共有結合、イオン結合、水素結合、無極結合、引力のある静電的相互作用、双極子相互作用、または任意の他の電気的または量子力学的相互作用が挙げられる。拘束標識ポリメラーゼが付着した基板を、適切な重合媒体を含む容器中に入れて差し支えない。あるいは、適切な重合媒体で満たすことができる基板上の領域、区域、穴、溝、チャネル、または他の類似構造上またはその中に、標識ポリメラーゼを拘束または固定させて差し支えない。基板は、少なくとも1つのチャネルによってポリメラーゼ構造に連結された基板上のモノマー領域、区域、穴、溝、チャネル、または他の類似構造も含んでいて差し支えない。あるいは、基板は、各モノマーを包含する構造を含んでいて差し支えなく、各構造は、ポリメラーゼ封じ込め構造においてポリメラーゼへのモノマーの分子輸送を支持する連結構造によってポリメラーゼ構造に連結されている。基板は、各々少なくとも1つの拘束ポリメラーゼを有する複数のポリメラーゼ構造に再分割されていても差し支えなく、各構造はモノマーリザーバに連結されている。あるいは、各ポリメラーゼ構造は、それ自身のモノマーリザーバまたは4つのモノマーリザーバを有し、各リザーバが特定モノマーを包含していて差し支えない。
【0063】
そのような装置において用いるためのモノマーとして、限定はされないが、dNTP、標識dNTP、ddNTP、標識ddNTP、あるいは適当なそれらの混合物または組合せが挙げられる。
【0064】
単一分子シークエンシング装置を用いる方法
本発明は、基板に封じ込められまたは拘束された標識重合剤に複数のモノマーを供給する工程、および標識の検出可能な特性を長時間モニターする工程を含んでなる、単一分子シークエンシングの方法を提供する。本方法は、検出可能な特性の変化を、モノマー付加の発生(タイミング)および/または組込まれた各モノマーの同一性および/または組込まれたモノマーの配列のほぼ同時特定に関連付ける工程をさらに含んでいて差し支えない。
【0065】
本発明は、基板に封じ込められまたは拘束された標識重合剤に複数のモノマーを供給する工程、連続的にまたは周期的に標識重合剤に光を当てる工程、および標識によって発せられた蛍光の強度および/または周波数を長時間測定する工程を含んでなる、単一分子シークエンシングの方法を提供する。本方法は、標識から発せられた蛍光の測定強度および/または周波数の時間経過に伴う変化を、モノマー付加の発生(タイミング)および/または組込まれた各モノマーの同一性および/または組込まれたモノマーの配列のほぼ同時特定に関連付ける工程をさらに含んでいて差し支えない。
【0066】
本発明は、基板に封じ込められまたは拘束された標識ポリメラーゼに複数のモノマーを供給する工程、および標識の検出可能な特性を長時間モニターする工程を含んでなる、単一分子シークエンシングの方法を提供する。本方法は、時間経過に伴う検出可能な特性の変化を、モノマー付加の発生(タイミング)および/または組込まれた各モノマーの同一性および/または組込まれたモノマーの配列のほぼ同時特定に関連付ける工程をさらに含んでいて差し支えない。
【0067】
本発明は、基板に封じ込められまたは拘束された標識ポリメラーゼに複数のモノマーを供給する工程、連続的にまたは周期的に標識ポリメラーゼに光を当てる工程、および標識ポリメラーゼによって発せられた蛍光の強度および/または周波数を長時間測定する工程を含んでなる、単一分子シークエンシングの方法を提供する。本方法は、標識から発せられた蛍光の測定強度および/または周波数の時間経過に伴う変化を、モノマー付加の発生(タイミング)および/または組込まれた各モノマーの同一性および/または組込まれたモノマーの配列のほぼ同時特定に関連付ける工程をさらに含んでいて差し支えない。
【0068】
協同標識システム(COOPERATIVELY TAGGED SYSTEMS)
本発明は、協同的に標識された標識重合剤および標識モノマーであって、モノマー挿入の前、間および/または後にそれら標識が相互作用した時に、標識の少なくとも1つの検出可能な特性が変化するようなものを提供する。1つの好ましい実施形態において、ポリメラーゼ上の標識は、各モノマー挿入の前、間および/または後にそれら標識が相互作用するように配置されている。βおよび/またはγリン酸標識dNTPのようにモノマー挿入の後に標識がモノマーから遊離される場合、すなわち標識がβおよび/またはγリン酸基上に存在する場合、モノマー挿入の後、標識が重合剤から遊離された後のみにモノマー上の標識と相互作用するように、重合剤上の標識を設計することができる。組込み事象の間に移動するポリメラーゼ上の部位にポリメラーゼ標識を付着させて2つの標識の相対的分離を変化させることによってポリメラーゼ標識とdNTP標識との間の相互作用を増強させるように、あるいは、塩基組込みの間にピロリン酸が遊離される時であってかつ重合剤からピロリン酸が拡散して離れる前に、ポリメラーゼ標識とピロリン酸上の標識との間の相互作用を増強させるように、重合剤内の標識の配置を最適化させることができる。
【0069】
本発明は、協同的に標識された標識重合剤および標識モノマーであって、それら標識が検出可能な特性の測定可能な変化を生じさせるのに十分な距離内にある時に、標識の少なくとも1つの検出可能な特性が変化するようなものを提供する。検出可能な特性が、他方の標識へのエネルギー転移によって一方の標識に誘導される蛍光であり、あるいは他方の標識の蛍光をクエンチングさせまたはその蛍光強度および/または周波数に測定可能な変化を生じさせる一方の標識のせいである場合、それら標識をお互いに非常に近接させることによって(すなわちそれら標識を分離する距離を減らすことによって)、測定可能な変化が生じる。通常、検出可能な特性に測定可能な変化を生じさせるのに必要な距離は、約100Å以内(以下)であり、好ましくは約50Å以内、さらに好ましくは約25Å以内、さらに好ましくは約15Å以内、最も好ましくは10Å以内である。もちろん、当業者は、標識の検出可能な特性に測定可能な変化を生じさせるのに十分な距離が、標識の位置、標識の性質、溶媒系、外側領域(external field)、励起光源の強度および周波数帯幅、温度、圧力等の多くのパラメーターに依存することを認識するであろう。
【0070】
本発明は標識重合剤および標識モノマー前駆体であって、モノマー挿入の前、間および/または後にそれら標識が相互作用した時に、少なくとも1つの標識によって発せられる蛍光の強度および/または周波数が変化するようなものを提供する。
【0071】
本発明は協同的に標識された標識解重合剤および標識解重合性高分子であって、モノマー遊離の前、間および/または後に標識が相互作用した時に、少なくとも1つの標識の検出可能な特性が変化するようなものを提供する。解重合剤上の標識は、各モノマー遊離の前、間および/または後にそれら標識が相互作用するように設計することができる。
【0072】
本発明は協同的に標識された標識解重合剤および標識高分子であって、検出可能な特性に測定可能な変化を生じさせるのに十分な距離内にそれら標識がある時に、少なくとも1つの標識の検出可能な特性が変化するようなものを提供する。検出可能な特性が、他方の標識へのエネルギー転移によって一方の標識に誘導される蛍光であり、あるいは他方の標識の蛍光をクエンチングさせまたはその蛍光強度および/または周波数に測定可能な変化を生じさせる一方の標識のせいである場合、それら標識をお互いに非常に近接させることによって(すなわちそれら標識を分離する距離を減らすことによって)、測定可能な変化が生じる。通常、検出可能な特性に測定可能な変化を生じさせるのに必要な距離は、約100Å以内(以下)であり、好ましくは約50Å以内、さらに好ましくは約25Å以内、さらに好ましくは約15Å以内、最も好ましくは10Å以内である。もちろん、当業者は、標識の検出可能な特性に測定可能な変化を生じさせるのに十分な距離が、標識の位置、標識の性質、溶媒系、外側領域、励起光源の強度および周波数帯幅、温度、圧力等の多くのパラメーターに依存することを認識するであろう。
【0073】
本発明は標識解重合剤および標識解重合性高分子であって、モノマー遊離の前、間および/または後にそれら標識が相互作用した時に、少なくとも1つの標識によって発せられる蛍光の強度および/または周波数が変化するようなものを提供する。
【0074】
ポリメラーゼを用いる協同標識システム
本発明は、協同的に標識された標識ポリメラーゼおよび標識モノマーであって、モノマー挿入の前、間および/または後にそれら標識が相互作用した時に、少なくとも1つの標識の検出可能な特性が変化するようなものを提供する。ポリメラーゼ上の標識は、各モノマー挿入の前、間および/または後にそれら標識が相互作用するように設計することができる。βおよび/またはγリン酸標識dNTPのようにモノマー挿入の後に標識がモノマーから遊離される場合、すなわち標識がβおよび/またはγリン酸基上に存在する場合、モノマー挿入の後、標識がポリメラーゼから遊離された後のみにモノマー上の標識と相互作用するように、ポリメラーゼ上の標識を設計することができる。前者の場合、ポリメラーゼ標識は、モノマー挿入過程(最初の結合および成長高分子への結合)の間にポリメラーゼ標識がモノマー標識と相互作用することを可能にするようなポリメラーゼ上の部位に置かれなければならない。後者の場合、ポリメラーゼ標識は、遊離されたピロリン酸がポリメラーゼから離れて重合媒体中に拡散する前に、ポリメラーゼ標識が遊離ピロリン酸上にあるモノマー標識と相互作用することを可能にするようなポリメラーゼ上の部位に置かれなければならない。
【0075】
本発明は、協同的に標識された標識ポリメラーゼおよび標識モノマーであって、それら標識が検出可能な特性の測定可能な変化を生じさせるのに十分な距離内にありまたは近接している時に、少なくとも1つの標識の検出可能な特性が変化するようなものを提供する。検出可能な特性が、他方の標識へのエネルギー転移によって一方の標識に誘導される蛍光であり、あるいは他方の標識の蛍光をクエンチングさせまたはその蛍光強度および/または周波数に測定可能な変化を生じさせる一方の標識によるものである場合、それら標識をお互いに非常に近接させることによって(すなわちそれら標識を分離する距離を減らすことによって)、測定可能な変化が生じる。通常、検出可能な特性に測定可能な変化を生じさせるのに必要な距離は、約100Å以下であり、好ましくは約50Å以下、さらに好ましくは約25Å以下、さらに好ましくは約15Å以下、最も好ましくは10Å以下である。もちろん、当業者は、標識の検出可能な特性に測定可能な変化を生じさせるのに十分な距離が、標識の位置、標識の性質、溶媒系、外側領域(external field)、励起光源の強度および周波数帯幅、温度、圧力等の多くのパラメーターに依存することを認識するであろう。
【0076】
本発明は標識ポリメラーゼおよび標識モノマー前駆体であって、それら標識がドナー−アクセプター対のような蛍光活性対を形成し、それら標識が相互作用する時に少なくとも1つの標識(通常ドナー−アクセプター対のアクセプター標識)によって発せられる蛍光の強度および/または周波数が変化するようなものを提供する。
【0077】
本発明は標識ポリメラーゼおよび標識モノマー前駆体であって、それら標識がドナー−アクセプター対のような蛍光活性対を形成し、それら標識が蛍光の強度および/または周波数の何れかを変化させるのに十分な距離内にありまたは近接している時に、少なくとも1つの標識(通常ドナー−アクセプター対のアクセプター標識)によって発せられる蛍光の強度および/または周波数が変化するようなものを提供する。通常、そのような距離は、約100Å以下であり、好ましくは約50Å以下、さらに好ましくは約25Å以下、さらに好ましくは約15Å以下、最も好ましくは10Å以下である。もちろん、当業者は、標識の検出可能な特性に測定可能な変化を生じさせるのに十分な距離が、標識の位置、標識の性質、溶媒系、外側領域、励起光源の強度および周波数帯幅、温度、圧力等の多くのパラメーターに依存することを認識するであろう。
【0078】
本発明は、内面に封じ込められまたは拘束されている少なくとも1つの標識ポリメラーゼを有し、かつ複数の標識モノマーを含有する溶液を内面に接触して有する容器を含む、単一分子シークエンシング装置を提供する。
【0079】
分子データストリーム読取り方法および装置(MOLECULAR DATA STREAM READING METHODS AND APPARATUS)
本発明は、容器の内面に封じ込められた標識ポリメラーゼに複数の標識モノマーを供給する工程、標識ポリメラーゼに光を当てる工程、および成長高分子鎖への連続的モノマー付加または挿入の各々の間に標識ポリメラーゼによって発せられる蛍光の強度および/または周波数を測定する工程を含んで成る、単一分子シークエンシングの方法を提供する。本方法は、発せられた蛍光の測定強度および/または周波数を、組込み事象および/または挿入あるいは付加された各モノマーの同一性に関連付けて、結果的にほぼリアルタイムのまたはリアルタイムの成長核酸配列の配列(DNA配列、RNA配列、または混合DNA/RNA配列)の読み出しをもたらす工程をさらに含んでいて差し支えない。
【0080】
本発明は、データストリームを表す公知要素の配列を有する分子、少なくとも1つの標識が結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー、ポリメラーゼ上の少なくとも1つの標識を励起させるように適合させた励起光源、およびポリメラーゼ上の励起された標識からの反応を検出するように適合させた検出器を含んで成り、要素の相補配列の重合の間に少なくとも1つの標識からの反応が変化し、その反応の変化がデータストリームの内容を表すことを特徴とする、保存情報を検索するシステムも提供する。
【0081】
本発明は、公知要素の配列を有する分子、少なくとも1つの標識が結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー、ポリメラーゼ上の少なくとも1つの標識を励起させるように適合させた励起光源、およびポリメラーゼ上の励起された標識からの反応を検出するように適合させた検出器を含んで成り、要素の相補配列の重合の間に少なくとも1つの標識からの反応が変化して分子の要素配列を表すことを特徴とする、単一分子シークエンサーからの配列情報を特定するシステムも提供する。
【0082】
また、本発明は、公知要素の配列を有する分子、少なくとも1つの蛍光標識が結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー、ポリメラーゼおよび/またはモノマー上の少なくとも1つの蛍光標識を励起させるように適合させた励起光源、およびポリメラーゼおよび/またはモノマー上の少なくとも1つの蛍光標識から発せられた蛍光を検出するように適合させた蛍光検出器を含んで成り、新しいヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが相補配列に重合される度に信号強度が変化し、シークエンシングの完了時にデータストリームが検索されるように、発光または発光欠如の持続時間、あるいは発せられる光の波長範囲の何れかが、配列中に重合された特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを明示することを特徴とする、単一分子からの配列情報を特定するシステムも提供する。
【0083】
また、本発明は、所定のデータストリームを表すヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの配列;少なくとも1つの蛍光標識が共有結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー;ポリメラーゼおよび/またはモノマー上の少なくとも1つの蛍光標識を励起させるように適合させた励起光源;およびポリメラーゼおよび/またはモノマー上の少なくとも1つの蛍光標識から発せられた蛍光を検出するように適合させた蛍光検出器を含んで成り、新しいヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが相補配列に重合される度に少なくとも1つの蛍光標識が蛍光を発しまたは蛍光を発することができず、シークエンシングの完了時にデータストリームが検索されるように、発光または発光欠如の持続時間、あるいは、発光される光の波長範囲の何れかが、配列中に重合された特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを明示することを特徴とする、データを保存および検索するシステムも提供する。
【0084】
この中で用いられている「モノマー」の用語は、所定のポリメラーゼによって成長分子鎖に組込まれ得る任意の化合物を意味する。そのようなモノマーとして、限定はされないが、天然のヌクレオチド(例えば、ATP、GTP、TTP、UTP、CTP、dATP、dGTP、dTTP、dUTP、dCTP、合成アナログ)、各ヌクレオチドの前駆体、非天然ヌクレオチドおよびそれらの前駆体、または所定のポリメラーゼによって成長高分子鎖に組込まれ得る任意の他の分子が挙げられる。さらには、タンパク質またはタンパク質アナログ合成のためのアミノ酸(天然のまたは合成の)、炭水化物合成または他のモノマー合成のための単糖が挙げられる。
【0085】
この中で用いられている「ポリメラーゼ」の用語は、モノマーの所定の配列を有する高分子に一連のモノマーを重合させることができる任意の分子または分子集合体を意味し、限定はされないが、天然のポリメラーゼまたは逆転写酵素、突然変異した天然ポリメラーゼまたは逆転写酵素が挙げられ、ここで突然変異は、ポリメラーゼまたは逆転写酵素の1つ以上または多くのアミノ酸の他のアミノ酸での置換、1つ以上または多くのアミノ酸の挿入または欠失、あるいは1つ以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素、非天然ポリメラーゼまたは逆転写酵素の一部分の結合を含む。また、ポリメラーゼの用語は、モノマーの所定の配列を有する高分子を重合させることができる合成分子または分子集合、あるいは、標識の精製および/または固定化および/または分子相互作用を容易にさせる付加的配列を有しかつモノマーの所定のまたは特定のまたは鋳型の配列を有する高分子を重合させることができる任意の他の分子または分子集合も含む。
【0086】
単一部位標識重合剤または解重合剤
本発明は、重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有する重合剤を含んで成り、その標識の検出可能な特性がモノマー組込みの前、間および/または後に変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0087】
本発明は、重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有する重合剤を含んで成り、モノマー組込みの間に、その標識の検出可能な特性が、重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有しかつ重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0088】
本発明は、解重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有する解重合剤を含んで成り、その標識の検出可能な特性がモノマー除去の前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする組成物を提供する。
【0089】
本発明は、解重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有する解重合剤を含んで成り、その標識の検出可能な特性が、モノマー除去の間、解重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有し、かつ解重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0090】
単一部位標識ポリメラーゼ
本発明は、ポリメラーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、その標識の検出可能な特性がモノマー組込みの前、間および/または後に変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0091】
本発明は、ポリメラーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、その標識の検出可能な特性が、モノマー組込みの間、ポリメラーゼが第1の状態にある時に第1の値を有し、かつポリメラーゼが第2の状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0092】
本発明は、エキソヌクレアーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有するエキソヌクレアーゼを含んで成り、その標識の検出可能な特性がモノマー除去の前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする組成物を提供する。
【0093】
本発明は、エキソヌクレアーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有するエキソヌクレアーゼを含んで成り、その標識の検出可能な特性が、モノマー除去の間、エキソヌクレアーゼが第1の状態にある時に第1の値を有し、かつエキソヌクレアーゼが第2の状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0094】
本発明は、適切に修飾されたモノマーとの相互作用の前、間および/または後に検出可能な反応をもたらすように修飾された酵素を含んで成り、そのモノマーがヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、アミノ酸、アミノ酸アナログ、単糖、単糖アナログ、またはそれらの混合物または組合せであることを特徴とする組成物を提供する。
【0095】
本発明は、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、前記標識が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の検出特性を有し、かつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の検出特性を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0096】
本発明は、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの発色団を有するポリメラーゼを含んで成り、前記発色団から発せられる光の強度および/または周波数が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の値を有し、かつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0097】
本発明は、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、前記標識が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の蛍光特性を有し、かつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の蛍光特性を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0098】
本発明は、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、前記標識が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に実質的に活性でありかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に実質的に不活性であり、あるいはポリメラーゼが第1の配座状態にある時に実質的に不活性でありかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に実質的に活性であることを特徴とする組成物を提供する。
【0099】
複数部位標識重合剤および解重合剤
本発明は、重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有する重合剤を含んで成り、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性がモノマー組込みの前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする組成物を提供する。
【0100】
本発明は、重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有する重合剤を含んで成り、検出可能な特性が、モノマー組込みの間、重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有し、かつ重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0101】
本発明は、解重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有する解重合剤を含んで成り、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性がモノマー除去の前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする組成物を提供する。
【0102】
本発明は、解重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有する解重合剤を含んで成り、検出可能な特性が、モノマー除去の間、解重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有し、かつ解重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0103】
複数部位標識ポリメラーゼ
本発明は、ポリメラーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性がモノマー組込みの前、間および/または後に変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0104】
本発明は、ポリメラーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、検出可能な特性が、モノマー組込みの間、ポリメラーゼが第1の状態にある時に第1の値を有し、かつポリメラーゼが第2の状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0105】
本発明は、エキソヌクレアーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有するエキソヌクレアーゼを含んで成り、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性がモノマー除去の前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする組成物を提供する。
【0106】
本発明は、エキソヌクレアーゼ上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有するエキソヌクレアーゼを含んで成り、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性が、モノマー除去の間、エキソヌクレアーゼが第1の状態にある時に第1の値を有し、かつエキソヌクレアーゼが第2の状態にある時に第2の値を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0107】
本発明は、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子または原子を有するポリメラーゼを含んで成り、ポリメラーゼが第1の配座状態または第2の配座状態にある時にその対が相互作用して発色団を形成することを特徴とする組成物を提供する。
【0108】
本発明は、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、その標識が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の蛍光特性を有し、かつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の蛍光特性を有することを特徴とする組成物を提供する。
【0109】
本発明は、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも一対の分子標識を有するポリメラーゼを含んで成り、その対が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に実質的に活性でありかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に実質的に不活性であり、あるいはポリメラーゼが第1の配座状態にある時に実質的に不活性でありかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に実質的に活性であることを特徴とする組成物を提供する。
【0110】
標識ポリメラーゼを用いる方法
本発明は、標識の検出可能な特性をモニターする工程を含んで成り、その標識がポリメラーゼ上の部位またはその近くに位置しその部位に関連しまたは共有結合し、その部位がモノマー組込みの間に変化を受け、さらに、検出可能な特性が、ポリメラーゼが第1の状態にある時に第1の値を有しかつポリメラーゼが第2の状態にある時に第2の値を有し、各モノマー付加の間に第1の値から第2の値に一巡することを特徴とする、何時モノマーが成長分子鎖に組込まれたかを特定する方法を提供する。
【0111】
本発明は、標識の検出可能な特性をモニターする工程を含んで成り、その標識がモノマー上の部位またはその近くに位置しその部位に関連しまたは共有結合し、あるいはモノマー上の部位に関連しまたは共有結合し、その部位がモノマー組込みの間に配座変化を受け、さらに、検出可能な特性が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の値を有しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の値を有し、各モノマー付加の間に第1の値から第2の値に一巡することを特徴とする、何時モノマーが成長分子鎖に組込まれたかを特定する方法を提供する。
【0112】
本発明は、標識ポリメラーゼを光に当てる工程、および標識ポリメラーゼおよび/またはモノマーによって発せられる蛍光の強度および/または周波数をモニターする工程を含んで成り、その標識ポリメラーゼが、モノマー組込みの間に配座変化を受ける部位またはその近くに位置しその部位に関連しまたは共有結合し、あるいはモノマー上の部位に関連しまたは共有結合した標識を有するポリメラーゼを含み、その標識が、ポリメラーゼが第1の配座状態にある時に第1の強度および/または周波数の蛍光を発しかつポリメラーゼが第2の配座状態にある時に第2の強度および/または周波数の蛍光を発し、各モノマー付加の間に第1の値から第2の値に一巡することを特徴とする、何時モノマーが成長分子鎖に組込まれたかを特定する方法を提供する。
【0113】
標識ポリメラーゼを用いる単一分子シークエンシング装置
本発明は、少なくとも1つの標識ポリメラーゼが封じ込められたチャンバーまたはチップ表面および各々が特定モノマーを含む複数のチャンバーを有する基板、ならびにチャンバーを相互連結させる複数のチャネルを含む単一分子シークエンシング装置を含んで成り、各複製複合体が、各複合体から個々にデータ収集することを可能にする程十分離れていることを特徴とする構成物を提供する。
【0114】
本発明は、基板に封じ込められた標識ポリメラーゼに、複数のモノマーを供給する工程、標識ポリメラーゼを光に当てる工程、および標識ポリメラーゼによって発せられた蛍光の強度および/または周波数を測定する工程を含んで成る、単一分子シークエンシングの方法を提供する。本方法は、発せられた蛍光の測定強度および/または周波数を、成長DNA鎖への特定モノマーの組込みに関連付ける工程をさらに含んでいて差し支えない。
【0115】
協同的に標識された標識モノマーおよび標識重合剤
本発明は、協同的に標識された標識重合剤および標識モノマーを含む組成物であって、それら標識が相互作用する時に、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性が変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0116】
本発明は、協同的に標識された標識解重合剤および標識解重合性高分子を含む組成物であって、それら標識が相互作用する時に、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性が変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0117】
協同的に標識された標識モノマーおよび標識ポリメラーゼ
本発明は、協同的に標識された標識ポリメラーゼおよび標識モノマーを含む組成物であって、それら標識が相互作用する時に、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性が変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0118】
本発明は、協同的に標識された標識ポリメラーゼおよび標識モノマーを含む組成物であって、それら標識が、発せられる蛍光の強度および/または周波数に変化を生じさせるのに十分な距離内にある時に、それら標識の少なくとも1つの検出可能な特性が変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0119】
本発明は、標識ポリメラーゼおよび標識モノマー前駆体を含む組成物であって、標識が相互作用した時に、少なくとも1つの標識によって発せられる蛍光の強度および/または周波数が変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0120】
本発明は、標識ポリメラーゼおよび標識モノマー前駆体を含む組成物であって、それら標識が、発せられる蛍光の強度および/または周波数に変化を生じさせるのに十分な距離内にある時に、少なくとも1つの標識によって発せられる蛍光の強度および/または周波数が変化することを特徴とする組成物を提供する。
【0121】
本発明は、内面に封じ込められた少なくとも1つの標識ポリメラーゼを有し、かつ複数の標識モノマーを含有する溶液、または合わさって重合のための全てのモノマー前駆体を提供する標識モノマーサブセットおよび非標識モノマーサブセットを内面に接触して有する容器を含んで成る、単一分子シークエンシング装置を提供する。
【0122】
本発明は、容器の内面に封じ込められた標識ポリメラーゼに複数のモノマーを供給する工程、標識ポリメラーゼに光を当てる工程、および標識ポリメラーゼによって発せられた蛍光の強度および/または周波数を測定する工程を含んで成る、単一分子シークエンシングの方法を提供する。本方法は、発せられた蛍光の測定強度および/または周波数を、成長DNA鎖への特定モノマーの組込みに関連付ける工程をさらに含んでいて差し支えない。
【0123】
本発明は:(a)データストリームを表す要素の配列を有する分子;(b)少なくとも1つの標識が結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー;(c)ポリメラーゼ上の少なくとも1つの標識を励起させるように適合させた励起光源;および(d)ポリメラーゼまたはモノマー上の標識からの反応を検出するように適合させた検出器;を含んで成り、要素の相補配列の重合の間に少なくとも1つの標識からの反応が変化し、その反応の変化がデータストリームの内容を表すことを特徴とする、保存情報を検索するシステムを提供する。
【0124】
本発明は:(a)要素の配列を有する分子;(b)少なくとも1つの標識が結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー;(c)ポリメラーゼまたはモノマー上の少なくとも1つの標識を励起させるように適合させた励起光源;および(d)ポリメラーゼ上の標識からの反応を検出するように適合させた検出器;を含んで成り、要素の相補配列の重合の間に少なくとも1つの標識からの反応が変化して、分子の要素配列を表すことを特徴とする、単一分子シークエンサーからの配列情報を特定するシステムを提供する。
【0125】
本発明は:(a)要素の配列を有する分子;(b)少なくとも1つの蛍光標識が結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー;(c)ポリメラーゼまたはモノマー上の少なくとも1つの蛍光標識を励起させるように適合させた励起光源;および(d)ポリメラーゼ上の少なくとも1つの蛍光標識から発せられた蛍光を検出するように適合させた蛍光検出器;を含んで成り、新しいヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが相補配列に重合される度に少なくとも1つの蛍光標識が蛍光を発しまたは蛍光を発することができず、シークエンシングの完了時にデータストリームが検索されるように、発光または発光欠如の持続時間、あるいは、発光される光の波長範囲の何れかが、配列中に重合された特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを明示することを特徴とする、単一分子からの配列情報を特定するシステムを提供する。
【0126】
本発明は:(a)所定のデータストリームを表すヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの配列;(b)少なくとも1つの蛍光標識が共有結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー;(c)ポリメラーゼ上の少なくとも1つの蛍光標識を励起させるように適合させた励起光源;および(d)ポリメラーゼ上の少なくとも1つの蛍光標識から発せられた蛍光を検出するように適合させた蛍光検出器;を含んで成り、新しいヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが相補配列に重合される度に少なくとも1つの蛍光標識が蛍光を発しまたは蛍光を発することができず、シークエンシングの完了時にデータストリームが検索されるように、発光または発光欠如の持続時間、あるいは、発光される光の波長範囲の何れかが、配列中に重合された特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを明示することを特徴とする、データを保存および検索するシステムを提供する。
【0127】
本発明は:(a)所定のデータストリームを表すヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの配列;(b)少なくとも1つの蛍光標識が共有結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー;(c)ポリメラーゼまたはモノマー上の少なくとも1つの蛍光標識を励起させるように適合させた励起光源;および(d)ポリメラーゼまたはモノマー上の少なくとも1つの蛍光標識から発せられた蛍光を検出するように適合させた蛍光検出器;を含んで成り、新しいヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが相補配列に重合される度に少なくとも1つの蛍光標識が蛍光を発しまたは蛍光を発することができず、シークエンシングの完了時にデータストリームが検索されるように、発光または発光欠如の持続時間、あるいは、発光される光の波長範囲の何れかが、配列中に重合された特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを明示することを特徴とする、データを保存および検索するシステムを提供する。
【0128】
本発明は:(a)所定のデータストリームを表すヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの配列;(b)少なくとも1つの蛍光標識が共有結合したポリメラーゼを含む単一分子シークエンサー;(c)ポリメラーゼまたはモノマー上の少なくとも1つの蛍光標識を励起させるように適合させた励起光源;および(d)ポリメラーゼ上の少なくとも1つの蛍光標識から発せられた蛍光を検出するように適合させた蛍光検出器;を含んで成り、新しいヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが相補配列に重合される度に少なくとも1つの蛍光標識が蛍光を発しまたは蛍光を発することができず、シークエンシングの完了時にデータストリームが検索されるように、発光または発光欠如の持続時間、あるいは、発光される光の波長範囲の何れかが、配列中に重合された特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを明示することを特徴とする、分子配列をシークエンシングする方法を提供する。
【0129】
本発明は、分子標識をピロリン酸基に結合させる工程、および修飾ピロリン酸基をdNMPと接触させてγリン酸標識dNTPを作成する工程を含んで成る、γ−リン酸修飾ヌクレオチドを合成する方法を提供する。
【0130】
本方法は、γ−リン酸標識ATPのγリン酸基を生体分子の5’末端に転移させることができるキナーゼと生体分子とを接触させて共有結合修飾生体分子をもたらす工程を含んで成る、生体分子を5’末端標識する方法を提供する。
【0131】
本発明は、タンパク質またはポリペプチドのカルボキシル末端またはアミノ末端の何れかあるいは生体分子の5’末端に原子または分子標識を転移させることができる物質と、ポリペプチドまたは炭水化物とを接触させて、共有結合修飾生体分子をもたらす工程を含んで成る、ポリペプチドまたは炭水化物を末端標識する方法を提供する。
【0132】
以下の詳細な説明、ならびに添付図面(同様の要素は同じ番号が付けられている)を参照することによって本発明をより理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0133】
本発明者は、dNTPのような標識モノマーおよび/またはポリメラーゼのような標識重合剤および/またはポリメラーゼ関連タンパク質またはプローブのような重合剤に関連する標識物質を用いて、ポリメラーゼ活動の間に、RNAまたはDNAの塩基配列のような正確なモノマー配列を直接読み出す方法論を発明した。タンパク質合成または炭水化物合成、あるいは例えばRNAまたはDNA分子、タンパク質、炭水化物、混合生体分子、またはモノマーの無機または有機配列等の配列のような、モノマーの配列が有用な情報を提供するような任意の分子配列の合成に、本発明の方法論を適合させることができる。そのような方法論を用いる方法および装置は、複製の間に生じる配座変化をモニターし、様々な配列構成におけるポリメラーゼの組込み忠実性を評価するといった、基礎研究の問題に対処する新しいやり方を作り出すように設計されている。本発明の単一分子検出システムは、特にリアルタイムまたはほぼリアルタイムでのシークエンシングのために、蛍光分子化学、コンピューターモデリング、塩基−呼び出しアルゴリズム、および生体高分子の遺伝子操作を改善するように設計されている。本発明者は、高分子配列が重合ではなく解重合によって特定されるエキソヌクレアーゼのような解重合剤にも本発明を適合させることができることを発見した。さらには、本発明の単一分子システムは、標識ポリメラーゼが基板上のアレイにパターン化される、並列および/または大規模並列アッセイに修正可能である。そのようなアレイから収集されたデータを用いて、配列の信頼性を高めおよび/または多くの異なる起源からのDNA領域を同時にシークエンシングして類似性または相違を特定することができる。
【0134】
本方法論は、シークエンシング工程に関連する時間、労力、および費用を減らすことができ、さらに高度に拡張可能なシークエンシングシステムに導くことができ、反応当り少なくとも1桁または2桁までDNA配列発見工程の向上をもたらすことができるため、本発明の単一分子DNAシークエンシングシステムは、現在のDNAシークエンシング技術に置き換わる可能性を有する。
【0135】
例えばIntensitifed Charge Coupled Devise(ICCD)によって直接的に、あるいは電子検出の前に信号を増幅させるために1つの中間体または一連の中間体を介して、発光信号のパターンが収集され、その際、信号が解読され、さらに各塩基に信頼値が指定されて、鋳型配列に対する配列相補性が明らかになる。本発明は、物理的光増幅技術または分子カスケーディング剤(molecular cascading agent)を用いて単一分子蛍光事象によってもたらされる光を増幅させる、蛍光標識から発せられた蛍光を増幅させる技術も提供する。
【0136】
本発明の単一分子DNAシークエンシング技術は:(1)単にゲノムまたはその部分をシークエンシングすることによって生物を分類しまたは生物内の変異を特定することを容易にすることができ;(2)特に例えば戦争において用いられる病原菌のような極端な状況において、病原菌または遺伝子組換え病原菌を迅速かつ容易に同定することができ;さらに(3)警察および軍隊応募に関して迅速かつ容易に人の特定を行うことができる。
【0137】
本発明の単一分子シークエンシング技術の1つの実施形態は、dNTPがポリメラーゼ反応の間に組込まれた時に標識が相対的分離を変化させるように、DNAポリメラーゼ上の一対の標識を戦略的に位置決めすることを含む。そのような相対的変化は、一方または両方の標識からの蛍光の強度および/または周波数等の検出可能な特性に変化を生じさせる。それら検出可能な特性の変化の時間プロフィールは各モノマー組込み事象を明示し、どの特定dNTPが各取込み事象において取り込まれたかについて証拠を提供する。その一対の標識は、ポリメラーゼに共有結合する必要はないが、塩基取込みの間に標識の相対的分離が変化するようなやり方で、ポリメラーゼに関連する分子に結合していて差し支えない。
【0138】
本発明の単一分子シークエンシング技術の別の実施形態は、dNTP上の標識または各dNTP上の分離標識と相互作用する、DNAポリメラーゼ上に戦略的に位置決められた単一標識を含む。その標識は、異なる色の蛍光を発する色分けされた標識のように、各dNTPについて標識が異なっていて差し支えない。重合工程の間に次のdNTPが組込まれる時、サイン蛍光信号(色)、あるいは蛍光信号強度および/または周波数の変化によって塩基の同一性が指示される。実質的に「リアルタイム」またはほぼ「リアルタイム」または「リアルタイム」のポリメラーゼ活性および塩基配列の読み出しをもたらすように、ポリメラーゼ組込みの速度を変化させおよび/または制御することができる。各ポリメラーゼから>100,000塩基/時間の速度で配列データを収集することができる。
【0139】
本発明の単一分子シークエンシング技術の別の実施形態において、標識ポリメッラーゼは各々、ポリメラーゼ上またはポリメラーゼ内に置かれまたは位置決めされたドナー標識およびアクセプター標識を含み、それら標識間の距離はdNTP結合、dNTP組込みおよび/または鎖伸長の間に変化する。それら標識間距離の変化は、蛍光標識から発せられる蛍光の強度および/または波長に変化をもたらす。発せられる光の強度および/または周波数の変化をモニターすることによって、重合事象に関する情報またはデータおよび組込まれた塩基の同定がもたらされる。
【0140】
別の実施形態において、ポリメラーゼ上の標識はdNTP上の標識と相互作用するように設計され、そのような相互作用は一方または両方の標識の検出可能な特性を変化させる。標識dNTPを用いて重合に関して各蛍光標識ポリメラーゼをモニターして、それから派生する塩基取込みデータの有効性を特定する。取り込まれた各dNTPの特定および同定を可能とする蛍光データを測定および定量化するために、特定の分析装置と共に特定の測定法およびプロトコルが開発された。同時に、本発明は、適当なポリメラーゼによって重合された標識dNTPを同定し、さらに反応から発せられた蛍光を分析しかつ塩基同一性を解釈するソフトウェアを開発した。当業者は、適当な蛍光活性対が当業界で周知であり、Molecular Probes(Oregon)またはBiosearch Technologies, Inc.(Novato, CA) のような供給メーカーから市販されていることを認識するであろう。
【0141】
本発明において用いるための標識DNAポリメラーゼは、本発明の様々な実施形態の実施を可能にする1つ以上の標識結合部位を提供するように遺伝子操作されている。一旦適切なポリメラーゼ候補が同定されると、変異および/または修飾が重合効率に対して顕著に不利な影響を及ぼさないことを条件に、当業界で周知の反応で、ポリメラーゼ内の特定アミノ酸を変異させおよび/または修飾する。光活性標識の場合、色素あるいは蛍光ドナーまたはアクセプター分子のような標識の結合を容易にするように変異および/または修飾アミノ酸を適合させる。一旦形成されると、遺伝子操作ポリメラーゼを1つ以上の適当な標識と接触させ、本発明の装置および方法において用いることができる。
【0142】
DNA塩基同一性の直接分子センサーとして機能するようにポリメラーゼを遺伝子操作することによって、迅速で潜在的にリアルタイムの酵素DNAシークエンシングシステムへの手段が提供される。本発明の単一分子DNAシークエンシングシステムは:(1)反応当り少なくとも2桁までのDNA配列発見工程の向上をもたらすことができる;(2)分解ベースの単一分子法に関連する長さ制限によって拘束されない;および(3)共に配列にエラーを導入するようなクローニングまたはPCR増幅を必要とすることなく、所望の(標的)DNA配列、特にゲノムの直接シークエンシングを可能にする。本発明のシステムは、単に問題のゲノムまたはそのゲノムの所望の部分をシークエンシングすることによって、生物を分類しまたは生物内の変異を同定する仕事を容易にすることができる。健康に関する影響を評価するため、ならびに癌検出およびまたは特徴づけ等の一般的DNA診断、ゲノム分析、またはより総合的な形態の遺伝的変異検出のために重要である病原体または改変病原体を迅速に同定するように、本発明のシステムを適合させる。本発明の単一分子DNAシークエンシングシステムは単一分子遺伝分析の特権を与える基盤技術(enabling platform technology)になるであろう。
【0143】
本発明の単一分子シークエンシングシステムは以下の利点を有する:本システムは、シークエンシング反応処理、ゲルまたはキャピラリー装填、電気泳動、およびデータアセンブリを排除する;(2)本システムは、労力、時間、および費用に顕著な節約をもたらす;(3)本システムは、組込み事象(タイミング、持続時間等)、および塩基配列等のほぼリアルタイムのまたはリアルタイムのデータ収集、処理、および決定を可能にする;(4)本システムは、マイクロアレイ形式で並列または大規模並列サンプル処理を可能にする;(5)本システムは、1日以下の時間で迅速なゲノムシークエンシングを可能にする;(6)本システムは、分析のためにほんの僅かな材料を必要とする;(7)本システムは、ヒト等の動物または病原菌の遺伝的同定、スクリーニングおよび特徴づけを可能にする;(8)本システムは、配列処理能力の大きな向上を可能にする;(9)本システムは、PCR、RT−PCR、および転写工程において導入されるエラーを回避できる;(10)本システムは、対立遺伝子特異的突然変異検出のための正確な配列情報をもたらす;(11)本システムは、例えば一塩基変異多型(SNP)検出のような迅速な医学的診断を可能にする;(12)本システムは、例えば様々な異なる配列構成におけるポリメラーゼ取込み速度;異なる構成におけるエラーの分析;後遺伝子型分析;タンパク質グリコシル化の分析;タンパク質の同定;等の基礎研究における改善を可能にする;(13)本システムは、頑丈な(長年の使用に耐える)単一分子検出装置の作成を可能にする;(14)本システムは、生体分子に適合するシステムおよび方法の開発を可能にする;(15)本システムは、遺伝ナノマシーンまたはナノテクノロジーの開発を可能にする;(16)本システムは、大きな遺伝子データベースの構築を可能にする;および(17)本システムは、低い変異事象の検出に関して高い感度を有する。
【0144】
単一分子DANシークエンシングの簡単な概要
本発明の単一分子DNAシークエンシングシステムの1つの実施形態において、ポリメラーゼ上の適当な部位に単一標識を結合させ、4つのヌクレオチド:dATP、dTTP、dCTPおよびdGTP:の各々に独自の標識を結合させる。各dNTP上の標識は、組込みに基づいて直接検出される独自の発色サイン(すなわち異なる発光周波数スペクトルまたは色)を有するように設計される。標識dNTPが成長DNA高分子に組込まれると、ポリメラーゼ標識とdNTP標識の相互作用のせいで特徴的な発光信号または塩基発光サインが発せられる。次に、蛍光信号、すなわち発光強度および/または周波数が検出および分析され、DNA塩基配列が特定される。
【0145】
本発明において用いるための標識ポリメラーゼおよび/またはdNTPの選択の1つの基準は、ポリメラーゼおよび/またはdNTP上の標識が、ワトソン−クリック塩基対合を妨害しないこと、あるいはポリメラーゼ活性に顕著に不利な影響を及ぼさないことである。本発明は、非標識dNTPと組み合わせてまたは単に標識dNTPのみを用いて、天然のTaqポリメラーゼによって、末端(γ)リン酸に結合した標識を含むdNTPが組込まれることを発見した。得られるDNA鎖がその分子構成中に全くdNTP標識を含まず、酵素誤認識およびバックグラウンド蛍光を最小化するため、βおよび/またはγリン酸基においてdNTPを標識することが好ましい。
【0146】
本発明のシークエンシングシステムの1つの実施形態は、フルオレセインまたはフルオレセイン型分子のような蛍光ドナーをポリメラーゼ上に取り付け、さらにd−ローダミンまたは類似分子のような固有の蛍光アクセプターを各dNTP上に取り付けることを含み、各固有のアクセプターが、ポリメラーゼ上のドナーと相互作用する時に、少なくとも1つの識別可能な周波数またはスペクトルの特徴を含む蛍光スペクトルが作り出される。DNA伸長のためにポリメラーゼによって標識dNTPが結合され、検出された蛍光信号スペクトルが分析され、さらに組込まれた塩基の同一性を特定される。
【0147】
本発明のシークエンシングシステムの別の実施形態は、ポリメラーゼ上の蛍光標識およびdNTP上の固有のクエンチャーを含み、クエンチャーは好ましくはポリメラーゼ標識のための検出可能なクエンチング効率を有する。結果的に、入ってくるクエンチャー標識dNTPの各々の同一性が、その固有のポリメラーゼ蛍光標識発光のクエンチング効率によって特定される。再度、組込みの間に作られる信号が特定および分析され、DNA塩基配列を構成する組込まれた各塩基が特定される。
【0148】
試薬
本発明における使用に適切な重合剤として、限定はされないが、DNAまたはRNAポリメラーゼまたは逆転写酵素等のような、特定の鋳型に関連してモノマーを重合させる任意の重合剤、あるいは段階的にモノマーを重合させる任意の重合剤が挙げられる。
【0149】
本発明における使用に適切なポリメラーゼとして、限定はされないが、例えば伸長核酸高分子中にDNA、RNAまたは混合配列を重合させるDNAまたはRNAポリメラーゼのような、精製および使用に十分な量でその宿主から単離することができおよび/または本発明において使用するのに十分な量で発現させることができ、単離および精製するために他の生物中に遺伝子組換えすることができるような任意のポリメラーゼが挙げられる。本発明において使用するための好ましいポリメラーゼは、検出可能な特性を有する原子または分子標識を結合させるように修飾できるアミノ酸によって置換された1つ以上のアミノ酸を有する、天然ポリメラーゼの突然変異体または変異種を含む。例示的DNAポリメラーゼとして、限定はされないが、RNA鋳型またはDNA鋳型の何れかを用いるHIV1逆転写酵素、サーマス・アクアティカスまたは大腸菌由来のDNA pol I、バクテリオファージT4 DNA pol、またはT7 DNA pol等が挙げられる。例示的RNAポリメラーゼとして、限定はされないが、T7 RNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0150】
本発明における使用に適切な解重合剤として、限定はされないが、例えばDNA、RNAまたは混合DNA/RNA高分子の場合におけるエキソヌクレアーゼ、ポリペプチドの場合におけるプロテアーゼ、または多糖を連続的に解重合させる酵素系のような、段階的にモノマーを解重合させる任意の解重合剤が挙げられる。
【0151】
本発明における使用に適切なモノマーとして、限定はされないが、重合剤を用いて高分子中に段階的に重合され得る任意のモノマーが挙げられる。本発明における使用に適切なヌクレオチドとして、限定はされないが、天然のヌクレオチド、それらの合成アナログ、原子および/または分子標識が結合したアナログ、あるいはそれらの混合物または組合せが挙げられる。
【0152】
本発明における使用に適切な原子標識として、限定はされないが、例えばユーロピウムシフト剤、NMR活性原子等のような、重合剤またはdNTPの特定部位に結合できる任意の原子要素が挙げられる。
【0153】
本発明における使用に適切な分子標識として、限定はされないが、重合剤またはdNTPの特定部位に結合できる任意の分子要素であって、特に、ジクロロ[R100]、ジクロロ[R6G]、ジクロロ[TAMRA]、ジクロロ[ROX]等のd−ローダミンアクセプター色素;フルオレセイン、6−FAM等のフルオレセインドナー色素;2−メチルベンゾキサゾール、エチルp−ジメチルアミノベンゾエート、フェノール、ピロール、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;オーラミンO、クリスタルバイオレット,HO、クリスタルバイオレット,グリセロール、マラカイトグリーン等のアリールメチン(Arylmethine)色素;7−メトキシクマリン−4酢酸、クマリン1、クマリン30、クマリン314、クマリン343、クマリン6等のクマリン色素;1,1’−ジエチル−2,2’−シアニンヨウ化物、クリプトシアニン、インドカルボシアニン(C3)色素、インドジカルボシアニン(C5)色素、インドトリカルボシアニン(C7)色素、オキサカルボシアニン(C3)色素、オキサジカルボシアニン(C5)色素、オキサトリカルボシアニン(C7)色素、ピナシアノールヨウ化物染色液全て、チアカルボシアニン(C3)色素, エタノール、チアカルボシアニン(C3)色素,n−プロパノール、チアジカルボシアニン(C5)色素、チアトリカルボシアニン(C7)色素等のシアニン色素;N,N’−ジフルオロボリル−1,9−ジメチル−5−(4−ヨードフェニル)−ジピリン、N,N’−ジフルオロボリル−1,9−ジメチル−5−[(4−(2−トリメチルシリルエチニル))]、N,N’−ジフルオロボリル−1,9−ジメチル−5−フェニルジピリン等のジピリン;4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM),アセトニトリル、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM),メタノール、4−ジメチルアミノ−4’−ニトロスチベン、メロシアニン540等のメロシアニン;4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI),ジメチルスルフォキシド、7−ベンジルアミノ−4−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、ダンシルグリシン,HO、ダンシルグリシン,ジオキサン、ヘキスト(Hoechst)33258,DMF、ヘキスト(Hoechst)33258,HO、ルシファー(Lucifer)イエローCH,ピロキシカム、硫酸キニーネ,0.05M HSO、硫酸キニーネ,0.5M HSO、スクアリリウム(Squarylium)色素III等のその他の色素;2,5−ジフェニルオキサゾール(PPO)、ビフェニル、POPOP、p−クウォーターフェニル、p−ターフェニル等のオリゴフェニレン;過塩素酸クレシルバイオレット、ナイルブルー,メタノール、ナイルレッド、ナイルブルー,エタノール、オキサジン1、オキサジン170等のオキサジン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、アントラセン、ナフタレン、ペリレン、ピレン等の多環式芳香族炭化水素;1,2−ジフェニルアセチレン、1,4−ジフェニルブタジエン、1,4−ジフェニルブタジイン、1,6−ジフェニルヘキサトリエン、β−カロチン、スチルベン等のポリエン/ポリイン;アントラキノン、アゾベンゼン、ベンゾキノン、フェロセン、リボフラビン、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)、テトラピロール、ビリルビン、クロロフィル1a,ジエチルエーテル、クロロフィル1a,メタノール、クロロフィル1b、ジプロトン化テトラフェニルポルフィリン、ヘマチン、オクタエチルポルフィリンマグネシウム、オクタエチルポルフィリンマグネシウム(MgOEP)、フタロシアニンマグネシウム(MgPc),PrOH、フタロシアニンマグネシウム(MgPc),ピリジン、テトラメシチルポルフィリンマグネシウム(MgTMP)、テトラフェニルポルフィリンマグネシウム(MgTPP)、オクタアセチルポルフィリン、フタロシアニン(Pc)、ポルフィリン、テトラ−t−ブチルアザポルフィリン、テトラ−t−ブチルナフタロシアニン、テトラキス(tetrakis)(2,6−ジクロロフェニル)ポルフィリン、テトラキス(o−アミノフェニル)ポルフィリン、テトラメシチルポルフィリン(TMP)、テトラフェニルポルフィリン(TPP)、ビタミンB12、オクタエチルポルフィリン亜鉛(ZnOEP)、フタロシアニン亜鉛(ZnPc),ピリジン、テトラメシチルポルフィリン亜鉛(XnTMP)、テトラメシチルポルフィリン亜鉛ラジカルカチオン、テトラフェニルポルフィリン亜鉛(ZnTPP)等のレドックス活性発色団(redox-active chromophores);エオシンY、フルオレセイン,塩基性エタノール、フルオレセイン,エタノール、ローダミン123、ローダミン6G、ローダミンB、ローズベンガル、フルホローダミン101等のキサンチン;あるいはそれらの混合物または組合せまたはそれらの合成誘導体のような蛍光色素;あるいはDLO−FB1(5’−FAM/3’−BHQ−1)、DLO−TEB1(5’−TET/3’−BHQ−1)、DLO−JB1(5’−JOE/3’−BHQ−1)、DLO−HB1(5’−HEX/3’−BHQ−1)、DLO−C3B2(5’−Cy3/3’−BHQ−2)、DLO−TAB2(5’−TAMRA/3’−BHQ−2)、DLO−RB2(5’−ROX/3’−BHQ−2)、DLO−C5B3(5’−Cy5/3’−BHQ−3)、DLO−C55B3(5’−Cy5.5/3’−BHQ−3)、MBO−FB1(5’−FAM/3’−BHQ−1)、MBO−TEB1(5’−TET/3’−BHQ−1)、MBO−JB1(5’−JOE/3’−BHQ−1)、MBO−HB1(5’−HEX/3’−BHQ−1)、MBO−C3B2(5’−Cy3/3’−BHQ−2)、MBO−TAB2(5’−TAMRA/3’−BHQ−2)、MBO−RB2(5’−ROX/3’−BHQ−2)、MBO−C5B3(5’−Cy5/3’−BHQ−3)、MBO−C55B3(5’−Cy5.5/3’−BHQ−3)等のFRET蛍光団−クエンチャー対またはBioserch Technologies, Inc.(Novato, CA)から市販されている類似のFRRT対、NMR活性基を有する標識、例えば赤外線(IR)、遠赤外線、可視紫外線、遠紫外線等のような容易に同定され得るスペクトルの特徴を有する標識等が挙げられる。
【0154】
酵素選択
本発明者は、サーマス・アクアティカス由来のDNAポリメラーゼ−Taq DNAポリメラーゼI−が、本発明の単一分子装置、システム、および方法での使用に理想的に適していることを発見した。この中でしばしば単にTaqとして称されるTaq DNAポリメラーゼは、本出願において開示されている発明で使用される標識ポリメラーゼの構築において発明者が利用できる多くの特性を有する。もちろん、通常の熟練者は、本発明の単一分子シークエンシングシステムにおける使用に他のポリメラーゼを適合させ得ることを認識するであろう。
【0155】
Taq DNAポリメラーゼIはその活性部位内またはその近くにおける非常に多くの変異を許容するため(Patel et al., J. Mol. Biol., volume 308, pages 823-837;参照によってこの中に組込まれる)、その酵素は酵素標識修飾に耐性であり、また、広範囲の修飾ヌクレオチド基質を取り込ませることができる。
【0156】
Taq DNAポリメラーゼの結晶構造が利用できる
DNA鋳型/プライマー、dNTPまたはddNTPを含むまたはそれらを含まない、Taq DNAポリメラーゼについて解明されている13の構造があり、それらは、ポリメラーゼ活性に不利な影響を及ぼすことなく蛍光標識のような原子および/または分子標識を結合させることができるポリメラーゼ内のアミノ酸部位の選択に関する十分な情報をもたらす。例えば、Eom et al., 1996; Li et al., 1998a; Li et al., 1998bを参照。さらには、本発明者は、最適標識付加部位の同定を助けるための書き込み済みプログラムを有する。そのプログラムは、オープン型およびクローズ型のTaqポリメラーゼに関連する構造データを比較し、ポリメラーゼ上の標識とdNTP上の標識との間の配座極度(conformation extreme)における相違を最適化し、またはポリメラーゼ上の2つの標識間の分離における変化を最適化し、それによって標識の1つまたは標識対の検出可能な特性の変化を高めまたは最大化するように最適に位置付けされたポリメラーゼ構造内の領域を同定する。
【0157】
Taq DNAポリメラーゼは大腸菌において効率的に発現される
Taq DNAポリメラーゼは大腸菌において効率的に発現され、本発明の単一分子DNAシークエンシングシステムにおける使用のための遺伝子組換えTaq DNAポリメラーゼの迅速な同定、特徴付け、および最適化のために、新生ポリメラーゼ(nascent polymerase)およびその変異体の効率的な産生および精製を可能にする。
【0158】
タンパク質配列中にシステインは存在しない
Taq DNAポリメラーゼは全くシステインを包含せず、そのことは、単一システインが戦略的部位の既存のアミノ酸に代わって設置すなわち置換され、挿入されたシステインが標識結合部位として働くような、システイン包含突然変異体の容易な作成を可能とする。
【0159】
酵素の連続運動性は変更可能である
天然Taq DNAポリメラーゼは、あまり連続運動性のポリメラーゼではないため(解離の前に50−80ヌクレオチドが組込まれる)、本発明のシークエンシングシステムに最適のポリメラーゼに相当しないが、塩基呼び出しソフトウェアを適切に変更することによって、低い連続運動性を補うことができる。あるいは、ポリメラーゼ遺伝子中に連続運動性促進配列を挿入することによって、Taq DNAポリメラーゼの連続運動性を増強させることができる。連続運動性の高いポリメラーゼは、重合速度を変化させることができる鋳型解離効果から生じ得る複雑化を最小にすることが期待される。TaqのHとHヘリックスの間(ポリメラーゼ内の「サム(thumb)」領域の先端部)にT7 DNAポリメラーゼからの76アミノ酸「連続運動性ドメイン」を導入することによって、Taqの連続運動性を遺伝子操作することができる。連続移動性ドメインは、T7 DNAポリメラーゼからのチオレドキシン結合ドメイン(TBD)も含み、Taq ポリメラーゼの連続移動性および特異的活性の両方のチオレドキシン依存的上昇をTaqポリメラーゼに生じさせる。Bedford et al., 1997; Bedford et al., 1999を参照。
【0160】
Taq DNAポリメラーゼは5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、かつ熱安定である
一本鎖M13 DNAおよび合成オリゴヌクレオチドを最初の研究で用いる。ポリメラーゼ活性が最適化された後、シークエンシングシステムを用いて、単離染色体−二本鎖DNA−からの配列情報を直接特定することができる。通常、二本鎖DNAのサンプルを加熱することは、シークエンシングのためにねじれたDNA形態(stranded DNA form)中に二本鎖DNAを作成または維持するのに十分である。
【0161】
一本鎖状態を支持するため、単一分子DNAシークエンシングのために設計された酵素中に天然Taq DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性が保持される。ポリメラーゼのその活性が「TaqMan」アッセイによって利用される。エキソヌクレアーゼ活性は、ニックトランスレーション反応機構を用いて、複製部位から下流を復元できる2本鎖を除く。遺伝子操作ポリメラーゼからの合成は、合成オリゴヌクレオチドプライマーによって(特定反応の開始が必要な場合)またはDNA分子中のニックによって(複数反応が処理される場合)開始され、全DNA分子の配列を特定する。
【0162】
ポリメラーゼは3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を含まない
Taq DNAポリメラーゼは3’→5’エキソヌクレーゼ活性を含まず、そのことは、ポリメラーゼが、蛍光信号が検出された塩基を、別の特徴的な蛍光信号をもたらす別の塩基で置換できないことを意味する。
【0163】
全てのポリメラーゼが複製エラーを作り出す。3’→5’エキソヌクレアーゼ活性は、新規に複製されたDNA鎖を校正するために用いられる。Taq DNAポリメラーゼはその校正機能を欠くため、塩基組込みにおけるエラーがDNA複製におけるエラーになる。Taq DNAポリメラーゼにおけるエラー率は、1エラー/〜100,000合成塩基であり、その割合は相対的に高い忠実性を保証するのに十分低いものである。例えば、Eckert and Kunkel, 1990; Cline et al., 1996を参照。そのようなエキソヌクレアーゼ活性の削除が組込みの間における忠実性の低下を明らかにすることが、ポリメラーゼに関して主張および証明されている。従って、Taqポリメラーゼは−必然的に−最初のヌクレオチド選択および/または組込みの間により正確でなければならず、従って本発明における使用の優れた選択である。
【0164】
本発明の遺伝子操作ポリメラーゼのエラー率は、公知配列の合成におけるエラー率を特定することによって評価される。そのエラー率は、シークエンシング情報が信頼をもって指定され得るように並列で実施される反応の最適数を特定する。その最適数は1または10以上であって差し支えない。例えば、本発明者は、塩基構成がポリメラーゼの正確さおよび反応速度に影響を及ぼし、その情報が個々の塩基決定に信頼値を指定するのに用いられることを発見した。しかしながら、特定シークエンシングプロジェクトの目的によっては、可能な限り迅速にゲノム配列を作ることがより重要であろう。例えば、潜在的な病原体の最初の同定目的または迅速なスクリーニングのために、低い精度で病原体のゲノム配列を作りまたは設計することが好ましい場合もある。
【0165】
Taq DNAポリメラーゼは単一分子DNAシークエンシングのために選択される酵素である
DNA塩基同一性の直接分子センサーとして機能するようにポリメラーゼを操作することは、可能な最も速い酵素的DNAシークエンシングシステムを提供する。上述された理由のため、Taq DNAポリメラーゼは単一分子DNAシークエンシングのために遺伝子操作しかつ適合させるのに最適な酵素である。さらには、他の研究分野における単一分子検出システムおよび分子モデルを進歩させる本技術を用いて、複製の間におけるDNAポリメラーゼ構造および機能に関する基礎研究の問題に対処することができる。本発明者は、天然のTaq DNAポリメラーゼが、γ−標識dNTPを組込ませ、伸長DNA高分子をもたらすことを発見した。重要なこととして、修飾ヌクレオチドの組込みは、ポリメラーゼ活性に不利ではなく、γ−標識ヌクレオチドの組込みによるプライマー鎖の伸長はワトソン−クリック塩基対合法則に従う。
【0166】
標識ポリメラーゼ−ヌクレオチド相互作用の検出
ポリメラーゼ−ヌクレオチド相互作用を検出する1つの好ましい方法は、信号を最大化しかつノイズを最小化する蛍光共鳴エネルギー転移−ベース(FRET−ベース)の方法を含む。FRET−ベースの方法は、アクセプターからの発光がドナーからの発光よりも強い場合、すなわち、励起周波数において、アクセプターがドナーよりも高い蛍光量子収量を有する場合に使用できる。FRET法の効率は、計算モデルから算定できる。例えば、Furey et al., 1998; Clegg et al., 1993; Mathies et al., 1990を参照。エネルギー転移の効率(E)は、以下の式(1)から計算される:
【化1】

ここで、RはE=0.5でのFoerster 臨界距離である。Rは式(2)から計算される:
【化2】

ここでnは媒体の屈折率であり(水溶液に関してn=1.4)、κは2つの遷移双極子の相対角度に関連する幾何学的配向因子であり(κは通常2/3と仮定される)、JDA[M-1cm]はドナー発光とアクセプター吸収の正規化されたスペクトル重複を表す重複積分であり、Qは量子収量である。重複積分は、以下の式(3)から計算される:
【化3】

ここで、Fはドナー発光であり、εはアクセプター吸収であり、Qは以下の式(4)から計算される:
【化4】

ここで、IおよびIRFはドナーおよび参照化合物(0.1N NaOH中のフルオレセイン)の蛍光強度であり、ARFおよびAは参照化合物およびドナーの吸光度である。QRFは0.1N NaOH中のフルオレセインの量子収量であり、0.90が採られる。
【0167】
配座平均値を得るために、ドナーとアクセプターとの間の距離Rを、ポリメラーゼの様々な配置(例えば配座)を調べることによって測定した。両方の標識がポリメラーゼ上にある場合、Rはオープン型およびクローズ型配座(open and closed conformation)におけるドナーとアクセプターとの間の距離であるが、一方、ドナーがポリメラーゼ上にありかつアクセプターがdNTP上にある場合、Rは、dNTPがポリメラーゼに結合してポリメラーゼがそのクローズ型形態である時のドナーとアクセプターとの間の距離である。
【0168】
オープン型対クローズ型ポリメラーゼ配座における、標識γ−リン酸と標識のために選択されたアミノ酸部位との間の距離は、最適な色素の組合せの輪郭を描く。ドナーとアクセプターとの間の距離(R)がR(RはFoerster臨界距離である)と同じである場合、FRET効率(E)は50%である。Rが1.5Rよりも大きい場合、エネルギー転移効率は極わずかになる(E<0.02)。オープン型対クローズ型においてR/Rが1.6より大きい程異なるような酵素内の部位が同定され、さらに必要であれば、遺伝子操作によってそれらの距離および/または距離差を増加させることができる。FRET効率対距離のプロットを図1に示す。
【0169】
蛍光色素選択工程
ポリメラーゼがそのクローズ型配置にある時に標識dNTPとポリメラーゼ上の標識との間のエネルギー転移効率を最大にし、さらにポリメラーゼがそのオープン型にある時にdNTP上の標識(非生産的に結合しているかあるいは溶液中にある)とポリメラーゼ上の標識との間のエネルギー転移効率を最小にするように色素セットを選択する。反応媒体中の各ヌクレオチドのモル濃度が約1μM以下であると仮定して、標識ヌクレオチド間の平均距離は約250Å以上であると計算される。その距離は、オープン型におけるポリメラーゼ上の部位とクローズ型配座におけるポリメラーゼ上の部位とを分離する距離よりも数倍大きいため、ポリメラーゼと遊離dNTPとの間の最小FRETバックグラウンドが観察される。好ましくは、ヌクレオチド濃度を1μM未満に減らす。少なくとも<10%のK値のレベルまでdNTP濃度を減らすと、バックグラウンド蛍光をさらに最小化し、リアルタイムモニタリングのためにポリメラーゼ反応の速度を制御する便利な方法を提供する。そのような条件下において、重合反応の速度はdNTP濃度に直線的に比例し、従って調整感度が高い。さらには、単一励起波長の使用は、各dNTP上の独自の標識の改善された同定を可能にする。単一の低波長励起レーザーを用いて高い感度が得られる。
【0170】
1つの好ましい実施形態において、システインのようなドナー結合を受けやすい置換アミノ酸を含むポリメラーゼ上の部位に蛍光ドナーを結合させ、さらに4つの独自の蛍光アクセプターを各dNTPに結合させる。例えば、フルオレセインをポリメラーゼ上の部位に結合させ、ローダミン、ローダミン誘導体および/またはフルオレセイン誘導体を各dNTPに結合させる。各ドナー−アクセプター蛍光団対は、励起後識別を分離するのに十分他の対から離間した吸収スペクトルを有している。好ましくは、ドナーは励起光がドナーを活性化し、次にそのドナーがその励起エネルギーをアクセプターの1つに効率的に転移させるようにドナーが選択される。エネルギー転移の後、アクセプターはそのエネルギーを独自の蛍光サインとして発する。効率的なエネルギー転移のために、蛍光ドナーの発光は、蛍光アクセプターの吸収スペクトルと十分重複していなければならない。しかしながら、本発明の方法は、並列反応を実施することによって、2つ、3つまたは4つの独自の蛍光ドナー−アクセプター対を用いて実施できる
蛍光団の選択は、その酵素適合性のみならず、そのスペクトルおよび光物理的特性の関数である。例えば、アクセプター蛍光団がドナー蛍光団の励起波長で全く有意な吸収を示さないことが重要であり、ドナー蛍光団がアクセプター蛍光団の検出波長において発光しないことはあまり重要ではない(望ましいが)。それらスペクトル特性は、蛍光団の環系(ring system)の化学的修飾によって希釈される。
【0171】
dNTPは塩基、糖およびリン酸基等のいくつかの部位で標識を受けやすいが、dNTPはβおよび/またはγリン酸の何れかにおいて標識されるのが好ましい。入ってくる標識dNTPがポリメラーゼの活性部位に結合する場合、ポリメラーゼ上のドナーからdNTP上のアクセプターへの顕著なFRETが生じる。アクセプターの独自の蛍光が、どのdNTPが組込まれたかを同定する。一旦標識dNTPが成長DNA鎖に組込まれると、ピロリン酸基に結合した蛍光アクセプターは、解裂されたピロリン酸基と共に媒体に遊離される。実際、成長DNA鎖は蛍光アクセプター分子を全く含まない。本質的に、FRETは、ポリメラーゼ上のドナーと入ってくるアクセプター標識dNTPとの間のみで1つづつ生じる。このアプローチは、dNTPのdNMP部分内の部位へのアクセプターの選択的結合または多重修飾dNTPの使用よりも優れている。アクセプターがβまたはγリン酸基以外の部位に結合する場合、アクセプターは成長DNA鎖の一部になり、DNA鎖は複数の蛍光アクセプターを含むことになる。重合反応とFRET測定との干渉が生じやすいであろう。
【0172】
重合媒体中の標識dNTPからの蛍光(バックグラウンド)が問題である場合、dNTP上のアクセプターと共有結合相互作用せず、かつ媒体中の標識dNTPからの蛍光を消光するような衝突クエンチャーを重合媒体に添加して差し支えない。もちろん、ポリメラーゼ上のドナーとほとんど接触を有しないようにクエンチャーを適合させることもできる。衝突クエンチャーとポリメラーゼ上のドナーとの間の相互作用を最小にするため、好ましくは、ポリメラーゼ標識を内部に配置させて衝突クエンチャーから隔離し、あるいは衝突クエンチャーを立体的に嵩張らせ、または立体的に嵩張る基と関連させて、クエンチャーとポリメラーゼとの間の相互作用を減らす。
【0173】
ポリメラーゼ−ヌクレオチド相互作用を検出する別の好ましい方法は、ポリメラーゼ上の蛍光標識の発光を消光するためにヌクレオチド−特異的クエンチング剤を使用することを含む。従って、ポリメラーゼを蛍光団で標識し、一方各dNTPを蛍光団のためのクエンチャーで標識する。通常、DABCYL(4−(4’−(ジメチルアミノフェニルアゾ))安息香酸が一般的なクエンチャーであり、それは、例えば5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルフォン酸(AEANS)のような蛍光団からのエネルギーを吸収し、熱を分散する。好ましくは、各クエンチャーを蛍光団にかなり近接させた時に識別可能なクエンチング効率が得られるように、各dNTPに対して1つのクエンチャーが選択される。従って、クエンチングの程度を用いて、各dNTPが成長DNA鎖に組込まれた時に各dNTPを同定する。そのような好ましい検出法の1つの利点は、蛍光発光が単一源から発せられ、バックグラウンドノイズを無視できるものにすることである。あまり好ましくはないが、2つまたは3つの適切なクエンチャーしか特定されなかった場合、4つのdNTPの内の2つまたは3つのdNTPを標識し、異なる一対の標識dNTPを用いて一連のポリメラーゼ反応を1回ごとに実施する。それら実施からの結果を組み合わせて、DNA分子の全配列を作る。
【0174】
TAQポリメラーゼおよびdNTPを標識するための部位の選択
本発明は、検出可能な特性を有する任意のタイプの原子および/または分子標識を結合させることを指向するが、好ましい群の標識、すなわち蛍光標識を用いて、部位の選択および標識結合の方法を説明している。
【0175】
ポリメラーゼおよび/またはdNTPの蛍光標識
ポリメラーゼまたはdNTPに結合する蛍光プローブおよびクエンチャーは、DNA重合反応への不利な影響を最小にするように設計される。本発明者は、蛍光プローブまたはクエンチャーでポリメラーゼおよびdNTPを化学的に標識するための合成法を開発した。
【0176】
通常、ポリメラーゼをコードするDNA配列中の選択されたアミノ酸コドンを、突然変異誘発によって、例えばシステインのような分子標識とより反応しやすいアミノ酸のコドンで置換することによって、ポリメラーゼを標識する。突然変異DNA配列が調製されると、発現のためにその変異体を大腸菌に挿入する。発現後、変異ポリメラーゼを単離および精製する。次に、ポリメラーゼ活性に関して精製変異ポリメラーゼを試験する。活性が確認された後、変異ポリメラーゼを、僅かに過剰なモル濃度の所望の標識と反応させて、ほぼ化学量論的標識を達成する。あるいは、ポリメラーゼを過剰な量の標識で処理して差し支えなく、時間の関数として標識が生じる。ほぼ化学量論的標識が達成された時、標識反応を停止させる。
【0177】
変異ポリメラーゼが所望の分子標識による標識を受け得る標的残基を含むいくつかの部位を有する場合、例えば保護基または競合阻害剤、および可逆的なブロッキング基(後で除去される)を用いるような特定の反応条件下で標識反応を実施して差し支えない。変異ポリメラーゼにおける標的アミノ酸残基が、活性dNTP結合部位に近接している場合、保護基または競合阻害剤の飽和レベルを最初に添加して標的残基を保護し、続いて可逆的ブロッキング基を添加して非標的残基を不活化させる。次に、保護基または競合的阻害剤を標的残基から取り除き、変異ポリメラーゼを所望の標識で処理して標的残基を標識する、最後に、変異ポリメラーゼ中の非標的残基からブロッキング基を化学的に取り除き、標識が実質的に完全に標的残基上にのみ存在するような標識変異ポリメラーゼを得る。
【0178】
あるいは、標的残基が活性部位の近くにない場合、ポリメラーゼをブロッキング基で処理して、非標的残基を不活化させても差し支えない。未反応ブロッキング基の除去の後、標的残基を標識するため、変異ポリメラーゼを所望の標識で処理する。最後に、変異ポリメラーゼ中の非標的残基からブロッキング基を化学的に取り除いて、標識変異ポリメラーゼを得る。
【0179】
Taqポリメラーゼのためのアミノ酸部位の選択
本発明者は、変異およびそれに続く標識結合(蛍光標識の結合のような)に耐えると思われるTaqポリメラーゼ中のアミノ酸を同定した。多くの部位がシステイン置換および標識結合可能であるが、以下の基準を用いてポリメラーゼ中の好ましい部位を同定した:(1)他のタンパク質と接触しない;(2)ポリメラーゼの配座または折畳みを変化させない;およびタンパク質の機能に関連しない。配列分析データを含む突然変異研究、分子ドッキングデータを含むコンピューターを用いた研究、ならびにポリメラーゼ活性および忠実性の評価の組合せを用いてそのような選択を行った。
【0180】
進化追跡法(evolutionary trace method)を用いて進化時間およびタンパク質機能の関数として配列中の変異を調べることによって間接的に、機能に重要でないタンパク質表面の領域を同定した。例えば、Lichtarge et al., 1996を参照。そのアプローチにおいて、進化的突然変異と構造的相同性とを比較することによって、構造または機能に重要なアミノ酸残基を発見する。多くの結晶および共結晶(co-crystal)構造、ならびに多くの利用可能な配列があるため、ポリメラーゼはこのタイプの研究に理想的なシステムである。本発明者は、突然変異/標識のための部位選択から、構造的/機能的に重要な領域を排除した。さらには、様々な配座状態でのポリメラーゼの利用可能な結晶構造の目視検査および重ね合わせは、dNTPのための結合部位近くのアミノ酸部位を同定するのにさらに援助をもたらした。選択されたアミノ酸部位のいくつかは、いくらか内側に位置し、好ましくは、例えばdNTP結合領域、塩基取り込み領域、ピロリン酸遊離領域等のような塩基組込みの間に変化を受けるポリメラーゼ中の活性領域を取り囲む。それら内側部分における標識は検出の間において低いバックグラウンド信号を示し、すなわち蛍光標識dNTPが用いられた時にポリメラーゼ酵素と非特的に結合した標識dNTPとの間の相互作用を減らすため、そのような内側部分が好ましい。
【0181】
一旦標識ポリメラーゼが調製され、完全溶媒環境中においてエネルギーが最小化されると、突然変異および/または標識によるポリメラーゼの構造に対する影響の推定がなされ、相対的な標識の位置付けおよび分離に関する情報が提供される。次に、測定前にそのデータを用いてFRET効率を算定する。もちろん、dNTPがクエンチャーで標識される場合、それら検討材料はそれほど重要ではない。
【0182】
本発明の別の態様は、dNTPおよびポリメラーゼを標識するのに用いられる例えば蛍光標識のような原子および/または分子標識の分子力学の力場パラメーター(molecular mechanics force field parameters)、ならびにポリメラーゼおよび/またはdNTP上の蛍光標識アミノ酸のパラメーターの構築を含む。力場パラメーターは、公知のポリメラーゼ結晶構造から派生する相対的分子内配座(すなわち二面角特定)のための局所的電荷分布(partial charge distribution)およびエネルギーを得るために量子力学研究を使用する。
【0183】
UHBDプログラムを用いてタンパク質を低誘電性領域として扱いかつ溶媒を高誘電性領域として扱うような静電モデルを利用して、各イオン性残基のイオン化状態を算定する。例えば、Antosiewicz et al., 1994; Briggs and Antosiewicz, 1999; Madura et al., 1995を参照。各残基に関して、ポアソン−ボルツマン方程式を解くことによって、各イオン性残基のイオン化の静電気自由エネルギーを計算した。連動する滴定挙動(coupled titration behavior)を考慮して一連の自己矛盾のない予測イオン化状態をもたらすように、それら個々のイオン化自由エネルギーを修正した。次に、dNTPの結合によって生じるイオン化におけるシフトを考慮するように、それら予測イオン化自由エネルギーを再計算する。想定外のイオン化状態は、さらにコンピューターを用いた検討および実験的検討を受け、タンパク質中の各残基に対する一連の局所的電荷を導き、すなわち、タンパク質中の各イオン性残基は、結合標識またはアミノ酸置換のタイプに依存して、異なる電荷状態を有する。
【0184】
アミノ酸部位選択をさらに助けるため、Taqポリメラーゼ/DNA複合体の分子表面の特性から静電ポテンシャルマップを作り、主にUHBDプログラムを用いて、溶媒によって、および必要に応じて溶解イオン(すなわちイオン強度)によってスクリーニングした。そのマップは、dNTPのための結合位置および提案された突然変異/標識部位における静電環境に関するガイダンスを提供する。
【0185】
その分子モデルが、標識化学および/または標識位置決めを精錬し、新たなポリメラーゼ変異体、塩基取り込み速度およびポリメラーゼ忠実性を予測するための予測システム挙動をさらに改善するように、作成された分子モデルは、新たな実験データを考慮して絶えず精錬され、改善された分子モデル、改善された分子力学計算、および改善された力場パラメーターの構築を可能にする。
【0186】
分子ドッキングシミュレーションを用いて、ポリメラーゼ結合ポケット内での天然のおよび蛍光標識されたdNTPのドッキングした配向性(docked orientation)を予測する。最高のドッキング配座は、十分解明された溶媒環境の存在下でエネルギーが最小化される。標識のために選択されたポリメラーゼ中のアミノ酸部位と関連して、どのように複数の標識が相互作用するかを分析し、さらに各選択アミノ酸部位のFRET効率を予測するために、ドッキング研究を用いる。
【0187】
静電気計算を除いて、全てのドッキング、量子力学、分子力学、および分子動力学計算がHyperChem(v6.0)を用いて実施される。HyperChemソフトウェアは、ウィンドウズ(登録商標)オペレーティングシステムによるPCで動かされる。データ解析またはFRET予測のための多くのコンピュータープログラム(以下に記載)は、リナックス(Linux)オペレーティングシステムおよびリナックスによって動くUHBDプログラムを用いてPC上で書かれている。
【0188】
ポリメラーゼ構造の解析
大腸菌、サーマス・アクアティカス、バシルス・ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)、T7バクテリオファージ由来のDNAポリメラーゼI(DNA Pol I)、およびヒトpolβについて解析された共結晶構造は、(複製)ポリメラーゼが機械的および構造的特徴を共有することを示す。「オープン型」(非生産的)配座中および「クローズ型」(生産的)配座中にTaq DNAポリメラーゼを捕獲する構造は、塩基組込みの間に変化を受けるポリメラーゼの領域を特定するのに特に重要である。ポリメラーゼ/プライマー/鋳型複合体へのヌクレオチドの付加は、そのオープン型からクローズ型配座への移行の原因である。それら構造の比較は、ヌクレオチド組込みの間にポリメラーゼ内で生じる配座変化に関する情報を提供する。特に、クローズ型配座において、フィンガードメインの先端が46°まで内側に回転し、それによってポリメラーゼ活性部位中のプライマー鎖の3’末端にdNTPが位置付けられる。この末端塩基対の幾何学的性質はその結合ポケットの幾何学的性質に正確に適合する。正しい相補塩基の結合は、クローズ型配座の形成を促進させるが、間違ったdNTP結合はその配座変化をもたらさない。酵素がそのクローズ型配座にある時に反応化学的性質が生じる。
【0189】
ここで図2を参照して、Taq DNA pol Iの大きな断片(Klentaq 1)のオープン型およびクローズ型三重複合体の形態が、それらのCα透写図の重ね合わせの中に示される。三重複合体は、酵素、ddCTP、およびプライマー/鋳型二重鎖DNAを含む。オープン型構造は赤紫色で示され、クローズ型構造は黄色で示されている。タンパク質の左上部分の乱れた外観は、オープン型およびクローズ型配座における「フィンガー」ドメインの動きを示す。
【0190】
プライマーおよび結合ddGTPを含むTaqポリメラーゼの2つの異なる結晶構造から、結合ddGTPのγリン酸に対するポリメラーゼのオープン型およびクローズ型配座におけるアミノ酸の位置の変化を特定するためにプログラムを用いて、突然変異および標識の位置に最も大きな変化を受ける20アミノ酸部位の一覧表を作成した。アミノ酸のαおよびβ炭素原子と結合ddGTPのγリン酸基との間の距離が、各アミノ酸について計算された。Taqポリメラーゼに関する2つの異なる組の結晶データから得られた一覧を表I、II、IIIおよびIVに示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0191】
上記のアミノ酸部位は塩基組込みの間に位置の顕著な変化を受けるTaqポリメラーゼ中の部位を表すため、上記の一覧のアミノ酸は、システイン置換およびそれに続く標識結合に好ましいアミノ酸部位を表す。
【0192】
FRET方法論を用いて分析するために蛍光標識を担持するように修飾された場合に最終的に選択されたアミノ酸部位が信号を最大化しかつバックグラウンドノイズを最小にするように、オープン型およびクローズ型配座極値にあるポリメラーゼのそれら同定されたアミノ酸部位に関する視覚化を用いて、アミノ酸部位選択をさらに精錬する。タンパク質の二次構造または活性に顕著に影響を及ぼさないと予測されるアミノ酸変化は、遊離dNTPとの相互作用から標識が保護されるような突然変異誘発および蛍光修飾のためのTaqポリメラーゼ中のアミノ酸部位の精錬された集合を作成する。以下の3つのパネルは、オープン型からクローズ型へのポリメラーゼの転移の際、結合ddGTPに関連する位置に最も大きな変化を受けるアミノ酸のおおよその一覧からのアミノ酸部位の選択を精錬するために本発明において用いられるプロトコルを説明する。
【0193】
ここで図3A−Cを参照して、Taq DNAポリメラーゼIの大きな断片の3ktq(クローズ型「黒色」)と1tau(オープン型「淡青色」)との重ね合わせを示す。図3Aを見ると、3ktqからの結合DNAが赤色で示されており、一方、3ktqに結合したddCTPは緑色で示されている。ポリメラーゼがオープン型(1tau)からクローズ型(3ktq)に移行するときに最も移動するとして3つの残基、すなわちAsp655、Pro656、およびLeu657が視覚的に同定された。さらなる構造解析に基づいて、Pro656はO−ヘリックスをキャッピングする役割を有すると思われる。Leu657の側鎖は、クローズ型(3ktq)において、タンパク質の別の部分に非常に近接している。大きな側鎖/標識の付加は、ポリメラーゼが完全に閉じた活性配座を達成する能力を減少させる。逆に、AAsp655は、ポリメラーゼのクローズ型およびオープン型配座の両方において完全に溶媒に曝されている。図3Bを見ると、Taqポリメラーゼの3ktq(クローズ型)および1tau(オープン型)配座の重ね合わせからの活性部位の近接図が示されている。オープン型配座とクローズ型配座との間の大きな移動が明らかである。図3Cを見ると、3ktq(DNAおよびddCTPの不在下)の分子表面表現の近接図が示されている。分子表面は、2つの領域において、Asp655を青色で、Leu657を緑色で色分けされている。その表現において、サムドメイン(thumb domain)における分子表面の緑色部分がフィンガードメインの一部に「連結」しているため、Leu657がタンパク質の別の部分に近接していることが明らかである。図3Cは、フィンガーが右にきてサムが左にくるようにパーム(手のひら)を覗いたポリメラーゼのその領域を示す。
【0194】
ポリメラーゼ変異体の突然変異誘発およびシークエンシング
Taq1 DNAポリメラーゼをコードする遺伝子が得られ、大腸菌株DH1中のpTTQ18において発現させる。例えば、Engelke et al., 1990を参照。本発明者は、表I−IVに示すアミノ酸、あるいはそれらの精錬された一覧または混合物または組合せのアミノ酸を含む突然変異誘発のための候補アミノ酸を特定した。当業界で周知の標準的分子方法を用いる本発明者は、各標的アミノ酸部位に、個別にシステインコドンを導入した。例えば、Sambrook et al., 1989 and Allen et al., 1998を参照。変異ポリメラーゼを発現する単離コロニーからDNAを精製し、色素−ターミネーター蛍光化学を用いてシークエンシングし、ABI PRISM 377 自動シークエンサーで検出し、さらにGeneCodes, Inc.から市販されているSequencher(登録商標)を用いて分析した。
【0195】
酵素変異体の発現および精製
本発明者は、Taqポリメラーゼがγ標識dNTPを組込ませて伸長DNA配列を合成できることを示している。次の段階は、dNTP上の標識と相互作用するように設計された標識を担持できる変異体の構築、および単一分子シークエンシングのためのポリメラーゼの最適化を含む。上記および実施例部分に記載されているような標準的な部位特異的突然変異誘発を用いて変異体を構築する。次にその構築体を大腸菌に挿入し、発現させる。次に、その後のポリメラーゼ単離および精製のために、大腸菌を十分増殖させた後、変異Taqポリメラーゼが得られる。
【0196】
非発酵性基質(non-fermentative substrates)のコンピューター制御フィードバックベースの供給によって、100を越える光学密度まで大腸菌を増殖させることができるが、得られる3kgの大腸菌細胞ペーストは、ポリメラーゼ最適化の間に過剰になるであろう。もちろん、最適化されたポリメラーゼ構築体が調製された場合には、その大規模産生が用いられるであろう。最適化ポリメラーゼの開発の間に、Amgenから市販されている栄養分の高い培地(rich medium)を用いかつ酸素が十分供給された10Lバッチ培養において増殖された大腸菌細胞集団から変異体が派生する。迅速なポリメラーゼ変異体スクリーニングのため、2Lのバッフル付き振とうガラス容器(baffled shake glasses)中で大腸菌を増殖させることによって変異体を調製する。次に、6L分離用遠心機を用いて細胞ペーストを回収し、フレンチプレスで溶解させ、遠心によって細胞の残骸を取り除く。大腸菌由来の核酸配列による干渉を減らすため、他の核酸を除くのも好ましい。ヌクレアーゼ(およびそれに続くヌクレアーゼの熱変性)を用いて、または好ましくはMurphy et al., Nature Biotechnology 17, 822, 1999に記載の凝固剤ベースの核酸沈降プロトコルに変更を加えたものを用いて、核酸の除去が行われる。
【0197】
Taqポリメラーゼの熱安定性は通常の大腸菌タンパク質よりもかなり高いため、大腸菌タンパク質汚染を約100倍まで減らすような、単に75℃で60分間の粗ポリメラーゼの熱処理によって、汚染Taqポリメラーゼタンパク質からのTaqポリメラーゼまたはその変異体の精製が達成される。そのような大腸菌タンパク質汚染の減少は、高い最初の発現レベルと合わさって、従来の最初の工程においてほぼ純水なTaqポリメラーゼまたはその変異体をもたらす(もちろん変異ポリメラーゼが天然ポリメラーゼ熱安定性を保持していることが条件となる)。
【0198】
日常的なシークエンシングおよびPCRスクリーニングのため、さらに特別の精製が通常要求される。そのような試験に十分な純度の生成物をもたらすには、通常、pH8.0でのQセファロース等における単一の陰イオン交換工程で十分である。好ましくは、汚染がその後の試験の結果を邪魔しないことを保証するため、好ましくは第2の精製工程も実施される。第2の精製工程は、SDS−PAGEおよびCD−監視融解実験(CD-monitored melting experiments)を含む。
【0199】
アクセプター蛍光標識のためのdNTP中の部位の選択
AutoDockコンピュータープログラム(Morris et al., 1998; Soares et al., 1999)を用いて天然dNTPおよび蛍光標識dNTPのドッキング配向を予測するため、分子ドッキングシミュレーションを実施した。配座の自由度は、ドッキングシミュレーションの間に、AutoDockプログラムにおいて実行される効率的なラマルク遺伝子アルゴリズム(Lamarckian Genetic algorithm)の使用を可能にする。タンパク質側鎖のサブセットは、dNTPがドッキングしたときにdNTPを受け入れるように動くことが可能である。最高のドッキング配置は、溶媒環境下でエネルギーが最小化される。触媒に含まれかつ鋳型/プライマーDNA鎖または組込まれるdNTPに接触しているポリメラーゼ活性部位中のアミノ酸を特定するような実験データが利用可能である。ドッキング研究のようなコンピューター支援化学モデリングを用いて、標識され得るdNTP中の部位を同定および支持し、さらに特定部位に特定標識を担持するdNTPのFRET効率を予測することができる。
【0200】
通常、所望の標識とdNTPとを反応させることによって、あるいは所望の標識とピロリン酸基または塩基のような前駆体とを反応させてその後dNTPの合成を完成させることによって、dNTPを標識する。
【0201】
DNAポリメラーゼ反応のためのヌクレオチドの化学的修飾
本発明者は、差別的な信号検出のための識別可能な光学的特性を有するように蛍光団および蛍光エネルギー転移化合物を修飾するため、および塩基、糖またはリン酸骨格位置に修飾を組込むためのヌクレオチド/ヌクレオシドシントンを作成するため、および核酸塩基、糖またはリン酸骨格での置換を含む4つのデオキシヌクレオチド3リン酸(dNTP)の相補集合を作るための合成を開発した。
【0202】
γ−リン酸修飾dNTPの合成
本発明者は、天然Taqポリメラーゼがリン酸修飾dNTPまたはddNTPを重合できることを発見した。先にも述べたように、複製DNAは異常な塩基を全く含まず、ポリメラーゼ活性は不利な影響をほとんど受けず、さらに長いDNA鎖が形成されるため、βおよび/またはγリン酸基においてdNTPまたはddNTPを標識することは好ましい。本発明者は、ANSがホスファミド結合を介してリン酸に結合しているγ−ANS−リン酸dNTPを合成した。それら標識dNTPは天然TaqポリメラーゼおよびHIV逆転写酵素によって簡単に組込まれるが、ANSはβおよび/またはγリン酸基の何れかを介して結合できる広範囲の標識のうちの1つに過ぎない。
【0203】
本発明者は、信号検出のために、ポリメラーゼと共に標識dNTPまたはddNTPを用いる。dNTPは、共有結合またはアフィニティー結合を介して、ヌクレオチドのリン酸位置(α、βおよび/またはγ)および/または他の位置において修飾される。標識は、次のモノマーが配列に付加される前に塩基から除かれるように設計される。標識を取り除くための1つの方法は、γおよび/またはβリン酸基上に標識を取り付けることである。別の方法は、開裂性結合を介してモノマー上の位置に標識を結合させる。次に、組込みの後でかつ次のモノマー組込みの前に、光、重合媒体中の化学的結合切断試薬および/または熱を使って、開裂性結合を切断してその標識を取り除く。
【0204】
他のγ−標識dNTPを合成するための1つの一般的合成経路を以下に示す:
【化5】

ここで、FRは蛍光標識であり、Lはリンカー基であり、Xは反応媒体のpHに依存してHまたは対イオンであり、Zはリン酸の水酸基と反応できる基であり、さらにZ’はdNMPとの反応後の基である。好ましくは、ZはCl、Br、I、OH、SH、NH、NHR、COH、COR、SiOH、SiOR、GeOH、GeOR、または類似の官能基または離脱基であり(ここでRはそれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルカリル(alkaryl)、ハロゲン化アナログであり、またはそれらのへトロ原子アナログである)、かつZ’はO、NH、NR、CO、SiO、GeOである(ここでRはそれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルカリル、ハロゲン化アナログであり、またはそれらのへトロ原子アナログである。
【0205】
その合成は、DCCおよびジクロロメタン中において、Z終端蛍光標識FR−L−Zとピロリン酸基PHとを反応させて、蛍光標識ピロリン酸を作成することを含む。蛍光標識ピロリン酸を調製した後、酸性THF中においてそれをモルフィリン終端dNMPと反応させて、γリン酸基に蛍光標識を有するdNTPを作成する。最終反応物は蛍光標識を担持しかつ開始原料よりも大きいため、非修飾開始原料および標識ピロリン酸との分離は簡単である。
【0206】
FR−L基の一般的合成を以下に示す:
【化6】

まず、ジイソプロピルアミンの存在下においてピリジン中のイソブチル無水物とフルオレセイン(FR)を反応させ、次のリンカー結合のために両方の環の水酸基が保護されたフルオレセインを作成する。次に、水酸基保護フルオレセインを、DCCおよびジクロロメタン中のN−ヒドロキシスクシミドと反応させ、続いて1−ヒドロキシ−6−アミノヘキサンと反応させて、ヒドロキシ終端FR−L基を作成する。次に、その基をピロリン酸と反応させて、dNTPをそのγ−リン酸基で標識し、あるいはアミノ酸を標識することができる。例えば、Ward et al., 1987; Engelhardt et al., 1993; Little et al., 2000; Hobbs, 1991を参照。
【0207】
各dNTPにおいて異なる蛍光標識を用いることによって、各標識が識別可能な発光スペクトルを発するように標識を設計することができる。重複しない発光周波数−多色−を有する標識を作成することによって発光スペクトルを識別することができ、あるいは各標識が、独特な発光バンド、独特な吸収バンドおよび/または独特な強度特徴のような重複しないスペクトル特徴を有していて差し支えない。各dNTP上の識別可能な標識を用いる系は、塩基呼び出しアルゴリズムに関連する信頼値を向上させる。
【0208】
上記に示したフルオレセインの合成スキームを、テトラクロロフルオレセイン(JOE)またはN,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)のような他の色素にも適用できる。通常、γリン酸標識反応は、塩基性水溶液および例えばDECのようなカルボジイミド中において実施される。他の蛍光団分子およびdNTPも同様に修飾できる。
【0209】
塩基において標識されたdNTPの合成
βおよび/またはγリン酸基でdNTPを標識するのが好ましいが、ポリメラーゼ反応活性を保持しながら、塩基および/または糖部分でdNTPを標識することも可能である。修飾のための部位は、好ましくは、ワトソン−クリック塩基対合を妨害しないように選択される。塩基修飾のための一般的スキームを以下に示す:
【化7】

【0210】
蛍光標識酵素を用いるポリメラーゼ活性測定法
ポリメラーゼ開発の間、ポリメラーゼ変異体の活性をモニターする。候補アミノ酸をシステインに置換し、さらにそのシステインを蛍光標識した後、ポリメラーゼ活性を測定した。天然Taqポリメラーゼが蛍光標識dNTPを組込ませる能力をモニターするのに用いられる測定法を用いてポリメラーゼ変異体をスクリーニングする。変異Taqポリメラーゼは改変されたアミノ酸配列を有するため、その測定法は、熱安定性、忠実性、重合速度、修飾塩基対天然塩基に対するアフィニティーのような、変異体の特徴付けデータを提供する。
【0211】
天然TaqポリメラーゼによるDNA高分子への蛍光標識dNTPの組込みを調べるのに用いられる条件に類似の条件下で、変異Taqポリメラーゼ活性測定法を実施する。変異Taqポリメラーゼ活性を調べるため、ポリメラーゼ反応バッファー中において、5’−32P末端修飾プライマー/一本鎖鋳型二重鎖、および適切に標識したdNTPと共に、精製変異Taqポリメラーゼをインキュベートする。ABI377 DNAシークエンサー(蛍光標識塩基に関して)、Fuji BAS1000ホスホイメージングシステム、あるいは他の適切なまたは類似の検出器または検出システムの何れかにおいて、伸長プライマーに関連する蛍光の相対量を測定することによって、ポリメラーゼが蛍光標識dNTPを組込ませる能力をモニターする。その測定法を用いて、変異ポリメラーゼが標識dNTPを組込ませることを確認し、さらに、塩基組込みの間に蛍光サインが得られることを確認する。それら測定法は、末端標識プライマー、蛍光標識dNTP、および適切な塩基を用いる。次に反応産物をサイズ分離し、伸長に関して分析する。反応は、必要に応じて、一定温度反応条件下またはサーモサイクル (thermocycled) で実施する。
【0212】
プライマー伸長アッセイ
蛍光標識DNAポリメラーゼによる単一塩基組込みを調べるために開発された条件に類似の条件を用いて、Taq DNAポリメラーゼがγ−リン酸dNTP変異体を組込む能力を測定する。例えば、Furey et al., 1998を参照。それら実験は、蛍光標識を担持するポリメラーゼが、先験的に、重合活性を低下させないことを示す。本発明者は、天然Taqポリメラーゼが、個々にまたは集合的に、γ−標識dNTPを組込ませて、長いDNA鎖を作成することを示している。
【0213】
ポリメラーゼ活性を調べるため、例えばPromega Corporation(Madison, Wisconsin)から市販されている Taq DNAポリメラーゼバッファー中において、表IIIに示すような、5’−32Pまたは蛍光末端標識プライマー(TOP)/一本鎖鋳型(BOT−X)二重鎖、および適切なdNTPと共に、ポリメラーゼをインキュベートする。必要に応じて、一定温度またはサーモサイクルで反応を実施する。次に、反応生成物をサイズ分離し、ホスホイメージングシステムまたは蛍光検出システムを用いて定量化する。その天然の対応物と比較することによって、各標識dNTPの組込みの相対的効率を特定する。
【表5】

【0214】
表Vにおいて、「TOP」はアッセイDNA二重鎖のプライマー鎖を表す。種々の鋳型鎖は「BOT」で表される。DNA鋳型の関連する特徴はハイフンの後に指示されている。例えば、BOT−T,BOT−C,BOT−G,BOT−Aを用いて、それぞれ、dA、dG、dC、およびdTのヌクレオチドまたはヌクレオチド変異体に関するポリメラーゼ組込み効率および忠実性をモニターした。
【0215】
標識dNTPの徹底的な精製の前に予備検定を行い、「BOT−Sau」鋳型を用いて、ポリメラーゼが、標識dNTPと共に共精製(co-purifies)される化学物質によって阻害されないことを確認する。「BOT−Sau」鋳型は、標識dATPに先立って天然dGTPの組込みをモニターするように設計されている(すなわち、ポリメラーゼ活性の陽性対照である)。見込みのある標識ヌクレオチドに関して、さらに大規模な精製を実施する。同様に、ポリメラーゼが、個々にまたは集合的に、標識dNTPの組込みに続いて伸長を続けるか否かを特定するために、同じ末端標識「TOP」プライマー、適切な「BOT」プライマー、蛍光標識dNTP、および適切な標識ヌクレオチドの3’塩基を用いて実験を実施する。次に、相対的伸長効率を特定するために、反応産物をサイズ分離および分析する。
【0216】
γリン酸標識ヌクレオチド組込みの忠実性の測定
Taq DNAポリメラーゼは3’→5’エキソヌクレアーゼ活性(校正活性)を欠く。単一分子DNAシークエンシングに用いられるポリメラーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する場合、そのポリメラーゼは、校正活性によって除かれる塩基を置換するために別の塩基を付加することができるであろう。その新たに付加された塩基は、鋳型への付加的塩基の組込みを明示するサイン蛍光信号を作り出し、結果として、本発明の単一分子シークエンシングシステムを不確かなものとする誤認DNA配列をもたらす。
【0217】
修飾dNTPの組込みに関するエラー率が100回のうちほぼ1回の閾値を越える場合には、エラー率によって決められる各塩基呼び出しに関する高い程度の信頼を有する配列情報を作るのに要求される最適数で、並列にシークエンシング反応を実施するのが好ましい。エラー率が高い程より多くの並列運転が必要とされ、エラー率が低い程より少ない並列運転が必要とされる。実際、一般的に1000回のうち1回未満のエラー、好ましくは5,000回のうち1回のエラー、さらに特に10,000回の塩基組込みのうち1回のエラーというように、エラー率が十分低ければ、並列運転は必要とされない。挿入または欠失は潜在的により重大なエラーであり、サンプル当り3反復の最小冗長性をもたらす。2重反応が実施される場合、どちらが正しいか特定できない。従って、本システムによって高い質のデータを作るためには、3重反応が必要とされる。
【0218】
BOT−変異鋳型を用いて、表Vに示されている遺伝子組換えポリメラーゼによって各γ−標識dNTPが組込まれる精度を特徴づけする。オリゴヌクレオチドはDNA鋳型として働き、各々、組込まれる最初の塩基においてのみ異なる。それら鋳型を利用する実験を用いて、各塩基の相対的組込み効率およびポリメラーゼが各標識dNTPを識別する能力について検討する。最初に、比較的単純な配列である一本鎖DNA鋳型を利用して、ポリメラーゼ変異体を用いる実験を実施する。300を越える精製鋳型の資源を含む、配列が特徴付けられた広範囲の鋳型が、ヒューストン大学(Dr. Hardin研究室)から利用可能である。例えば、1つの一連の鋳型は、様々な長さのポリAまたはポリT配列を包含する。必要に応じて、付加的な特定配列鋳型を構築し、塩基呼び出しアルゴリズムの開発を促進させる。
【0219】
相対的蛍光強度測定法
SPEX212機器または類似の機器を用いる溶液蛍光測定によって、標識dNTPに対するポリメラーゼ作用の直接検出が得られる。その機器は、ナノモル濃度レベルで、Taqポリメラーゼによって組込まれたANS標識γ−リン酸dNTPからの蛍光信号をうまく検出するために用いられた。SPEX212機器は、450ワットキセノンアーク源、二重発光および二重励起モノクロメーター、冷却PMT(最近、同時T−型異方性データ収集(T-format anisotropy data collection)に性能が向上した)、ならびにHi-Tech流れ停止アクセサリー(stopped-flow accessory)を含む。その機器は、TaqおよびRNAポリメラーゼならびにヘビ毒素ホスホジエステラーゼによって遊離されるANS−ピロリン酸に関して確認されているように、ANS標識γ−リン酸dNTPからの標識ピロリン酸の遊離の際の蛍光強度の増強および/または吸収スペクトルの変化を検出できる。
【0220】
ポリメラーゼ(対照:酵素無し)およびDNAプライマー/鋳型[ポリ(dA)ポリ(dT)](対照:プライマー/鋳型DNAを含まない)の存在下、適当なバッファー(例えばPromega Corporationからし反されているバッファー)中においてγ−リン酸標識dATPまたはTTP(対照:非修飾dATPおよびTTP)をインキュベートすることによって実験を実施する。ポリメラーゼが標識dNTPを組込む時、蛍光強度および/または周波数、吸収および/または発光スペクトル、ならびにDNAポリメラーゼ濃度の変化が検出される。実験キュベット対対照キュベットに関する時間および/または温度の関数としてのそれら測定値の変化は、ポリメラーゼがγ−リン酸標識dNTPを組込んでいるか否かの明白な特定を可能にする。それら測定値に基づいて、各標識dNTPに関して励起および蛍光発光を最適化することができる。
【0221】
単一分子検出システムの開発
好ましくは、顕微鏡を用いて、単一分子からの蛍光の検出を実施する。本発明において、共焦点走査顕微鏡も使用できるが、非走査アプローチが好ましい。ポリメラーゼ活性による蛍光信号を検出するのに有用である顕微鏡として任意の型の顕微鏡が挙げられ、油浸型顕微鏡が好ましい。好ましくは、振動および温度変動が制御された環境に顕微鏡を置き、さらに高感度デジタルカメラ顕微鏡を取り付ける。蛍光信号を記録するために多くの様々なカメラを使用できるが、例えばiPentaMax(Princeton Instruments)のような増感CCD型カメラが好ましい。
【0222】
検出の方法は、好ましくは内部反射形態で、標識の蛍光を誘導するのに十分な波長でサンプルに光を当てることを含む。蛍光標識がドナー−アクセプター対である場合には、励起周波数はドナーを励起するのに十分でなければならない。任意の型の光源を用いることができるが、好ましい光源はレーザーである。直後にまたは同時に複数の蛍光発光波長で同じサンプルの画像を取るのも好都合であろう。同時複数イメージングに関して、同じCCDに全てのカラー画像を同時に採取させるために画像スプリッターが好ましい。あるいは、各々が異なる波長特性を有する発光光学フィルターを介してサンプルを見る複数のカメラを用いても差し支えない。
【0223】
もちろん、実際には、標識検出は、用いられる特定の標識、ならびに電気特性、蛍光特性、化学特性、物理特性、電気化学特性、質量同位体(mass isotope)特性、および他の特性を含む、多くの変量に依存する。レーザー照射およびより感度の高いカメラによって性能が向上した、研究グレードのNikon Diaphot TMD倒立エピフルオレセンス顕微鏡(inverted epifluorescence microscope)を用いて、単一分子蛍光イメージングが得られる。さらには、単一分子技術は、うまく開発されかつ市場で利用可能な技術である。例えば、Peck et al., 1989; Ambrose et al., 1994; Goodwin et al., 1997; Brouwer et al., 1999; Castro and Williams, 1997; Davis et al., 1991; Davis et al., 1992; Goodwin et al., 1997; Keller et al., 1996; Michaelis et al., 2000; Orrit and Bernard, 1990; Orrit et al., 1994; Sauer et al., 1999; Unger et al., 1999; Zhuang et al., 2000を参照。
【0224】
488nmのアルゴンイオンレーザーを用いるエバネッセント波励起のためにエピフルオレセンス顕微鏡の装備を改良して差し支えない。本発明者は以前、核酸ハイブリダイゼーション研究のための測定法において、そのような照射の幾何学的特性を用いた。様々な類似の単一分子用途においてうまく用いられている12−ビット512x512ピクセルPrinceton Instruments I-PentaMax第IV世代増感CCDカメラで、現在のCCDカメラを置き換えることによって、励起工程の性能が向上した。そのカメラは、用いられる色素の発光波長の全範囲の45%を越え、さらにその範囲をかなり越える、量子効率を達成する。そのような既存の顕微鏡の垂直配置は振動の問題を最小化する傾向があり、それら顕微鏡は現在、抗振動テーブル(anti-vibration table)に取り付けられている。
【0225】
好ましい高感度イメージングシステムは、Olympus IX70-S8F倒立エピフルオレセンス顕微鏡に基づく。そのシステムは、低いバックグラウンドの部品を組込み、蛍光活性標識の発光波長の範囲において60−70%の量子効率で1秒当り80フレームを越える速度で単一分子蛍光画像を撮ることが可能である。
【0226】
複数の単一分子の蛍光をイメージングする際に、CCDまたは他のデジタルイメージングシステムの視野の単一ピクセルまたはピクセル−ビンのようなデータ収集チャンネル内に複数の蛍光発光体が発生するのを最小化することが好ましい。任意の所定のデジタルイメージング装置において、有限数のピクセルのようなデータ収集チャンネルを利用可能である。ランダムに離間した密集した蛍光発光体は、通常、多重に占有されデータ分析において問題となるようなピクセルまたはピクセルビンの分画の増加をもたらす。視野における発光体の密度が増加すると、問題となるデータチャンネル数も増加する。視野における発光体の集中を減らすことによって視野内の識別可能なデータ収集領域の多重占有を減らすことができるが、そのような発光体の集中の低下は、全く発光体を認めないデータ収集チャンネルまたはピクセルの分画を増やし、従って非能率的なデータ収集につながる。
【0227】
データ収集効率を高めおよび/または最大にするための好ましい方法は、発光体(標識ポリメラーゼ分子)間の間隔を制御することを含む。そのような間隔は多くのやり方で達成される。第1に、単一ポリメラーゼのみがイメージングシステムの視野内の各データ収集チャンネルまたはピクセル領域内に配置されるようにポリメラーゼを基板上に固定化する。固定化は、化学的に基板に結合させた捕獲剤または連結基にアンカー結合させることによって達成される。本質的に大きな捕獲剤を選択することによって、あるいはそれら捕獲剤の立体的嵩または静電反発力を高める分子とそれら捕獲剤とを共役結合させまたは捕獲剤をそれら分子に結合させることによって、あるいは重合分子集合体間の反発力が最大になるように選択された条件下(例えば静電反発力を最大にするために低イオン強度)で固定化することによって、捕獲剤または連結剤を有用な距離まで離間させることができる。
【0228】
あるいは、各重合分子集合体がイメージングシステムのデータチャンネルの解像サイズを越える距離よりも近くに接近できないように、ポリメラーゼの立体的嵩または重合系の静電反発力を高める関連タンパク質とポリメラーゼとを結合させても差し支えない。
【0229】
単一分子検出システムを用いるポリメラーゼ活性測定法
それら測定法は、本質的に、ポリメラーゼ活性測定法に関してこの中で記載されているように実施する。上述したように、スクリーニング目的のためのポリメラーゼ活性測定法との主な相違として、個々の複製事象の可視化を可能にするために、ポリメラーゼ、標的DNA、またはプライマー関連タンパク質のような、重合集合体の一部分を固形支持体に固定化することが挙げられる。様々な固定化の選択が利用可能であり、限定はされないが、有機表面または無機表面のような表面上への、および/またはナノチューブまたは他の類似のナノ構造体への、および/または多孔性マトリックスへの、1つの分子集合体の共有結合および/または非共有結合が挙げられる。それら固定化技術は、その間隔が複数の発光体を有するデータ収集チャンネルを減らしまたは最低にするのに十分であるような、蛍光、NMR等の検出可能な特性の検出のための特定領域を提供するように設計される。従って、単一分子シークエンシングのための好ましいデータ収集方法は、各データ収集チャンネルが単一ポリメラーゼのみの活性を見るように、蛍光標識ポリメラーゼがイメージング装置の視野内において確実に離間していることを確実にする。
【0230】
単一分子シークエンシングシステムからの蛍光信号の分析
検出器によって作られる生データは、波長および強度を含む、1から4つの時間依存蛍光データストリームを示す:各蛍光標識塩基ごとに1つのデータストリームがモニターされる。PHREDコンピュータープログラムを用いて塩基の同一性および信頼性の指定が計算される。必要であれば、本発明者は、部分的データおよび重複データを有するデータストリームを説明するため、コンピュータープログラムを作成するであろう。そのような場合、信頼度指数の変動および断片から配列の伸長を組み立てることに関連する困難性に基づいて、各塩基に信頼限界が指定されるように複数の実験を実施する。信頼度指数は、理想値と比較して蛍光の観察波長および強度の適合度を表す。信号分析の結果は、対応する確実性の確率を有する線状DNA配列である。さらには、必要な場合には、同定および比較目的のためのダイナミック照会(dynamic querying)のためにデータベースにデータを保存する。6−10、11−16、17−20、21−30塩基の探索ターム(search term)(配列)を、参照配列と比較して、好ましくは一致する配列またはユーザー定義の同一性レベルを共有する配列を迅速に同定することができる。信頼度指数の変動および断片から配列の伸長を組み立てることに関連する困難性に基づいて、各塩基に信頼限界が指定されるように複数の実験を実施する。信頼度指数は、理想値と比較して蛍光の観察波長および強度の適合度を表す。信号分析の結果は、対応する確実性の確率を有する線状DNA配列である。
【0231】
情報科学:単一分子検出システムからの蛍光信号の分析
データ収集は、部分的情報からデータを組み立て、鋳型または標的分子の全配列を特定するために複数のポリメラーゼ分子から配列情報を得ることを可能にする。複数の単一分子を用いて得られる結果を組み合わせることの重要な推進力は、不定期間にわたり単一分子からデータを得ることの不可能性である。2x10−5の一般的色素の光退色効率において、一般的色素分子は、永続的な光退色の前に、50,000励起/発光サイクルを受けることが予測される。所定の分子からのデータ収集は、(関心タイムスケールにおいて)光学的に不活性である三重項状態へのシステム間の横断によっても妨害され得る。従って、たとえ光退色に警戒しても、任意の所定の分子から得られるデータは、必然的に、相当の長さの鋳型配列に対して断片的なものであり、それら部分配列を同時に処理して、標的DNA分子の全配列を導き出す。
【0232】
あるいは、ある例において、マイクロアレイアッセイと同様に、参照対照を用いて反応を実施することも有用である。参照配列と試験サンプルとの間での信号の比較を用いて、配列間または配列組成物間での相違および類似性を同定する。そのような反応をDNAポリメラーゼの迅速なスクリーニングのために用いて、高分子間の相同性の程度を特定し、あるいはDNA高分子における多型性を特定し、あるいは病原体を同定することができる。
【実施例】
【0233】
Taqポリメラーゼのクローニングおよび突然変異誘発
クローニング
DNAポリメラーゼI(Taq pol I)をコードする完全長のサーマス・アクアティカス遺伝子を含むλバクテリオファージ宿主菌株シャロン35を、American Type Culture Collection(ATCC; Manassans, VA)から購入した。以下のDNAオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、感染大腸菌宿主の溶解物から直接Taq Pol Iを増幅させた:
Taq Pol I フォワード(forward)
5’-gc gaattc atgaggggga tgctgcccct ctttgagccc-3’
Taq Pol I リバース(reverse)
5’-gc gaattc accctccttgg cggagcgc cagtcctccc-3’
各合成DNAオリゴヌクレオチドの下線部分は、Taq Pol I遺伝子の直前及び直後の遺伝子操作されたEcoRI制限部位を示す。上記のリバースプライマーおよび以下のフォワードプライマーを用いるPCR増幅は、遺伝子のN−末端欠失を有する付加的構築物を作成した。
【0234】
Taq Pol I A293 本体(trunk)
5’-aatccatgggccctggaggaggc cccctggcccccgc-3’
下線部分は、アラニンをコードする最初のコドンを有するNcoI制限部位に相当する(ATG開始は、リボソーム結合部位に続く発現ベクターを表す)。理想的には、Taq Pol I遺伝子の完全長および切断構築体を単一のEcoRI部位(完全長)、およびNcoI/EcoRI消化pRSER−b発現ベクター中に連結させる。遺伝子操作ベクターの全てのin vivo操作のための宿主として大腸菌株JM109を用いる。
【0235】
突然変異誘発
適当な構築体が作成されると、天然Taqポリメラーゼのアミノ酸位置513−518、643、647、649、および653−661等の好ましいアミノ酸位置において、個別的システイン突然変異を導入する。以下のアミノ酸残基がアミノ酸643と661との間のアミノ酸に相当し、ここでxxxは天然ポリメラーゼ中の介在アミノ酸残基を示す:
643-Ala xxx xxx xxx Phe xxx Val xxx xxx Glu Ala Val Asp Pro Leu Met Arg Arg Ala-661
重複プライマーを用いて、PCRベースの突然変異誘発(Pfu DNAポリメラーゼを用いる)によって天然遺伝子中に点突然変異を導入する。
【0236】
相補的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーは各々、所望の変異アミノ酸残基をコードするコドンを含む。それらプライマーを用いるPCRは、所望の変異を含むニックが入った(knicked)非メチル化二本鎖プラスミドをもたらす。鋳型DNAを取り除くため、DpnI制限酵素で全PCR産物を処理する(配列GATC中のメチル化グアノシンにおいて切断する)。鋳型プラスミドの消化に続き、変異プラスミドが形質転換され、in vivoでライゲーションが生じる。
【0237】
以下の合成DNAオリゴヌクレオチドプライマーを以下に記載の突然変異誘発のために用い、小文字で示された文字を改変させて、指示した位置での所望のシステイン置換をもたらす。続いて自動シークエンシングによって変異をスクリーニングする:
【化8】

【化9】

【化10】

【0238】
次に、得られた変異Taqポリメラーゼを所望の原子または分子標識と反応させて、システイン残基のSH基を介して変異構造体中のシステインを標識し、天然dNTPおよび/または標識dNTPの組込みおよび組込み効率に関してスクリーニングする。塩基組込みの間の蛍光活性に関しても変異ポリメラーゼをスクリーニングする。従って、本発明は、513−518、643、647、649、および653−661から成る群より選択された1つ以上の部位に付加されたシステイン残基を有する変異Taqポリメラーゼに関する。システイン置換および修飾dNTPを用いたポリメラーゼ活性の確認の後、挿入されたシステイン残基のSH基を介して変異Taqポリメラーゼと標識とを反応させる。
【0239】
修飾dNTPの合成
(γ−AmNS)dATPの合成
γリン酸結合に付着した蛍光団1−アミノナフタレン−5−スルフォネートを含むヌクレオチドアナログを合成した(J. Biol. Chem. 254, 12069-12073. 1979)。Yabroughおよび協同者が(γ−AmNS)ATPのために記載した方法にいくらか修飾を加えて僅かに変更した方法に従って、dATPアナログ−(γ−AmNS)dATPを合成した。
【0240】
本実施例は、図4に示す、γANS標識dNTPの調製について説明する。
【0241】
1−アミノナフタレン−5−スルフォン酸(447mg、2mmol、40当量、Lancasterから購入)を10mLのHOに添加し、1N NaOHでpHを5.8に調製した。シリンジフィルターによって不溶性物質を除去し、実質的にそのpH値において飽和した溶液をもたらした(〜0.18から0.2M)。4mLの12.5mM 5’三リン酸−2’−デオキシアデノシン二ナトリウム塩(0.05mmol、1当量)および2mLの1M 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル−カルボジイミド塩酸塩(DEC、2mmol、40当量、Lancasterから購入)を22℃で反応容器に添加した。10mLの1−アミノナフタレン−5−スルフォネート溶液を添加することによって反応を開始させ、2.5時間継続させた。0.1N HClを断続的に添加することによってpHを5.65−5.75の間に維持した。2.5時間後、反応液を50mLに希釈し0.05Mトリエチルアンモニウム重炭酸イオンバッファーの溶液(TEAB、pH〜7.5)に調整した。1.0M水性TEAB(〜pH7.5)(100mL)、1.0M水性重炭酸ナトリウム(100mL)、および0.05M水性TEAB(〜pH7.5)(100mL)で平衡化させた50mLのDEAE−SEPHADEXイオン交換(A−25−120)カラムにおいて、低温で、反応生成物をクロマトグラフ処理した。0.05から0.9Mの水性TEAB(〜pH7.5)の直線勾配でカラムを溶出した。約10mLの画分を採取した。適当に希釈した後、画分の吸光度および蛍光プロフィール(UV366nm)を得た。未反応dATPのピークの後、〜0.7Mバッファーにおいて蛍光画分が溶出し、ブリリアントブルーの蛍光を示した。反応産物含有画分を集め、凍結乾燥機によって乾燥し、HO/エタノール(70/30)で2回共蒸着(co-evaporate)させた。残渣を水に回収し、凍結乾燥した。31P NMR(1Hデカップリング(decoupled)、600MHz、DO、MePO外部参照、293K、pH6.1)δ(ppm)−12.60、−14.10、−25.79。参照化合物dATPは、以下の共鳴ピークをもたらす:DO(293K)中での31P NMR(dATP、Na+)、δ(ppm)−11.53(γ)、−13.92(α)、−24.93(β)。
【0242】
ダイオードアレイUV検出HPLCを用いて、366nmでのANS基の明確な吸収によって所望の産物を含む画分を容易に同定した。さらには、水溶液中のγリン酸標識dATPおよび通常のdATPに関して31P NMRスペクトルを記録した。各化合物に関して、3つの特徴的共鳴が観察され、γ−標識dATP中の三リン酸部分を確認した。複合分析−H NMR、HPLC、およびUVスペクトル−は、正確な化合物の形成に関する情報を支持する。
【0243】
同じ合成産物を用いて、γ−ANS−リン酸修飾dGTP、dTTP、およびdCTPを調製した。
【0244】
Taqポリメラーゼによるγ−リン酸−標識dNTPの組込み
以下の実施例は、上述したように、市販されているTaq DNAポリメラーゼがANS−γ−リン酸dNTPを効率的に組み込むこと、ならびにそれらの合成および特徴付けについて説明する。
【0245】
第1の実施例において、ANS−γ−リン酸dATPを組込んで、プライマー鋳型から伸長DNA産物を作成することについて記載する。伸長バッファー中において反応を実施し、得られた放射性標識産物を20%変性ポリアクリルアミドゲルにおいてサイズ分離した。ホスホイメージングシステムを用いてデータを収集した。ここで図5を参照して、レーン1は、伸長バッファー中に5’放射性標識「TOP」プローブを含む。レーン2は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−Sau」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM dGTPを含む。レーン3は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−Sau」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM dATPを含む。レーン4は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−Sau」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM ANS−γ−dATPを含む。レーン5は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−T」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM dGTPを含む。レーン6は、レーン5からの侵出物を含む。レーン7は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−T」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM dATPを含む。レーン8は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−T」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM ANS−γ−dATPを含む。レーン9は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−3T」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM dGTPを含む。レーン10は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−3T」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM dATPを含む。レーン11は、DNA二重鎖(過剰な「BOT−3T」と放射性標識TOP)と共にインキュベートした、Taq DNAポリメラーゼ、50μM ANS−γ−dATPを含む。レーン12は、伸長バッファー中に5’標識「TOP」プローブを含む。レーン13は、伸長バッファー中に5’放射性標識「TOP」プローブおよびTaq DNAポリメラーゼを含む。オリゴヌクレオチド配列は表Vに示される。
【0246】
レーン1とレーン4との定量的比較は、ANS−γ−dATPが反応液中に含まれるが最初に組込まれる塩基がdGTP(反応液に添加されなかった)でなければならない場合に、ほんの僅かな非特異的単一塩基伸長が検出されたことを示す。レーン1および8の定量的分析は、ANS−γ−dATPが反応液に加えられかつ最初に組込まれる塩基がdATPである場合に、鋳型−指定(template-directed)単一塩基によって約71%のTOPプライマーが伸長されたことを示す.従って、Taq DNAポリメラーゼはγ−標識ヌクレオチドを組込ませる。ポリメラーゼがγ−標識ヌクレオチドを組込ませる能力と同様に重要なことは、修飾dATPが組込まれた後にDNAポリメラーゼがDNA高分子を伸長する能力である。レーン1とレーン11との比較は、γ−標識ヌクレオチドが組込まれた後にDNA鎖が伸長されたことを示す。従って、修飾ヌクレオチドの組込みはポリメラーゼ活性に不利な影響を及ぼさなかった。ANS−γ−ヌクレオチドの組込みによるプライマー鎖の伸長がワトソン−クリック塩基対合法則に依存することにも留意すべきである。実際、ヌクレオチド組込みの忠実性は、γ−リン酸への標識の付加によって少なくとも15倍上昇した。
【0247】
次の実施例は、4つ全てのANS標識γ−リン酸dNTPを用いた伸長DNA高分子の合成について説明する。それら反応において作成された産物を20%変性ポリアクリルアミドゲルで分離し、そのゲルを乾燥しかつFuji BAS1000イメージングプレートに一晩露出させた後画像化した。ここで図6の(A)実際のゲル、(B)色を薄くしたホスホイメージ、および(C)強調されたホスホイメージの画像を参照する。A、B、およびCにおけるレーンの説明は以下の通りである:レーン1は、α−32P dCTPの鋳型介在付加によって11および12塩基に伸長された精製10塩基プライマーを含む対照である。レーン2は、(鋳型を変性させるため)二本鎖プラスミドDNAと共に96℃で3分間インキュベートした同じプライマーを含み、(プライマー−鋳型をアニールさせるため)反応液を37℃にし、Taq DNAポリメラーゼおよび4つ全ての天然dNTP(各々100μM)を添加し、さらに反応液を37℃で60分間インキュベートした。レーン3は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした同じ標識プライマーを含み、DNAポリメラーゼおよび4つ全てのγ−標識dNTP(各々100μM)を添加し、さらに反応液を37℃で60分間インキュベートした。レーン4は対照を含み、α−32P dCTPの付加によって11および12塩基に伸長された精製10塩基プライマーを用い、レーン5−8の反応と平行させて繰り返した。レーン5は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした同じ32P標識プライマーを含み、反応液を10分間に37℃にし、その間にTaq DNAポリメラーゼおよび4つ全ての天然dNTP(各々100μM)を添加した。96℃で10秒間、37℃で1分間、および70℃で5分間の反応を25回繰り返した。レーン6は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした同じ32P標識プライマーを含み、反応液を10分間に37℃にし、その間にTaq DNAポリメラーゼおよび4つ全てのγ−修飾dNTP(各々100μM)を添加した。96℃で10秒間、37℃で1分間、および70℃で5分間の反応を25回繰り返した。レーン7は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした非精製10塩基32P標識プライマーを含み、反応液を10分間に37℃にし、その間にTaq DNAポリメラーゼおよび4つ全ての天然dNTP(各々100μM)を添加した。96℃で10秒間、37℃で1分間、および70℃で5分間の反応を25回繰り返した。レーン8は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした非精製10塩基32P標識プライマーを含み、反応液を10分間に37℃にし、その間にTaq DNAポリメラーゼおよび4つ全てのγ−標識dNTP(各々100μM)を添加した。96℃で10秒間、37℃で1分間、および70℃で5分間の反応を25回繰り返した。天然ヌクレオチドを含む反応と比較して、標識dNTPを含む反応において、加ピロリン酸分解(pyrophosphorolysis)の減少が明白である。
【0248】
次の実施例は、4つ全てのANS標識γ−リン酸dNTPを用いる長いDNA高分子の合成を説明する。各プライマー伸長反応物を2つの画分に分け、一方の画分は20%変性ゲルで電気泳動し(上記のように)、他方の画分は6%変性ゲルで電気泳動し、より正確に産物の長さを推定した。ゲルを乾燥し、さらにFuji BAS1000イメージングプレートに(1晩)画像化させた。ここで図7の(A)実際のゲル、(B)実際のゲルの色を薄くしたホスホイメージ、および(C)実際のゲルの強調されたホスホイメージの画像を参照する。A、B、およびCにおけるレーンの説明は以下の通りである:レーン1は、各々のパネルの左側に指示されたサイズ標準を有する123マーカーを含む。レーン2は、α−32P dCTPの鋳型介在付加によって11および12塩基に伸長された精製10塩基プライマー、すなわち対照を含む。レーン3は、(鋳型を変性させるため)二本鎖プラスミドDNAと共に96℃で3分間インキュベートした同じプライマーを含み、(プライマー−鋳型をアニールさせるため)反応液を37℃にし、Taq DNAポリメラーゼおよび4つ全ての天然dNTP(各々100μM)を添加し、さらに反応液を37℃で60分間インキュベートした。レーン4は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした同じ標識プライマーを含み、DNAポリメラーゼおよび4つ全てのγ−標識dNTP(各々100μM)を添加し、さらに反応液を37℃で60分間インキュベートした。レーン5は対照を含み、α−32P dCTPの付加によって11および12塩基に伸長された精製10塩基プライマーを用い、レーン5−8の反応と平行させて繰り返した。レーン6は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした同じ32P標識プライマーを含み、反応液を10分間に37℃にし、その間にTaq DNAポリメラーゼおよび4つ全ての天然dNTP(各々100μM)を添加した。96℃で10秒間、37℃で1分間、および70℃で5分間の反応を25回繰り返した。レーン7は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした同じ32P標識プライマーを含み、反応液を10分間に37℃にし、その間にTaq DNAポリメラーゼおよび4つ全てのγ−修飾dNTP(各々100μM)を添加した。96℃で10秒間、37℃で1分間、および70℃で5分間の反応を25回繰り返した。レーン8は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした非精製10塩基32P標識プライマーを含み、反応液を10分間に37℃にし、その間にTaq DNAポリメラーゼおよび4つ全ての天然dNTP(各々100μM)を添加した。96℃で10秒間、37℃で1分間、および70℃で5分間の反応を25回繰り返した。レーン9は、二本鎖DNAプラスミドと共に96℃で3分間インキュベートした非精製10塩基32P標識プライマーを含み、反応液を10分間に37℃にし、その間にTaq DNAポリメラーゼおよび4つ全てのγ−標識dNTP(各々100μM)を添加した。96℃で10秒間、37℃で1分間、および70℃で5分間の反応を25回繰り返した。
【0249】
本反応における伸長産物の大部分は、天然dNTPおよびγ標識dNTPの両方に関して数百塩基長であり、それら産物の有意な割合は、大きすぎてゲルに侵入しなかった。従って、γリン酸標識dNTPがTaqポリメラーゼによって使用されて、非標識または天然DNA高分子鎖である長いDNA高分子を作ることが実証された。
【0250】
異なるポリメラーゼはγ標識ヌクレオチドに対して異なって反応する
指示された酵素(Taq DNAポリメラーゼ、シーケナーゼ(Sequenase)、HIV−1逆転写酵素、T7 DNAポリメラ−ゼ、クレノウ断片、Pfu DNAポリメラーゼ)を、50μMの指定されたヌクレオチドを含む製造業者が指示する反応バッファー中において37℃で30−60分間インキュベートし、その反応産物を20%変性ゲルでのサイズ分離によって分析した。
【0251】
図5−7に示すように、Taq DNAポリメラーゼはγ−修飾ヌクレオチドを効率的に使用し、高められた正確さで伸長DNAポリメラーゼを合成する。
【0252】
図8に示すように、大腸菌DNAポリメラーゼIからのクレノウ断片はγ標識ヌクレオチドを効率的に使用するが、他の酵素において観察される極端な忠実性の改善は示さない。
【0253】
図9に示すように、pfu DNAポリメラーゼはγ−修飾ヌクレオチドを効率的に使用せず、従って単一分子シークエンシングシステムに好ましい酵素ではない。
【0254】
図10に示すように、HIV−1逆転写酵素は、γ標識ヌクレオチドを効率的に使用し、顕著な忠実性の改善をもたらした。
【0255】
天然T7 DNAポリメラーゼによって作られた反応産物において重合活性を検出するのは困難である(その酵素がエキソヌクレアーゼ活性を有するため)。しかしながら、その遺伝子組換え誘導体であるシーケナーゼは、非修飾ヌクレオチドと比較して、γ修飾ヌクレオチドが効率的に組込まれ、かつ組込みの忠実性が改善されることが示された。天然T7 DNAポリメラーゼおよびシーケナーゼに関する実験結果を図11に示す。
【0256】
従って、TaqポリメラーゼまたはHIV1逆転写酵素に関して、本発明のγ修飾dNTPの使用による改善された忠実性が、単一分子DNAシークエンシングを可能にする。しかしながら、全てのポリメラーゼが等しく本発明のγ−修飾ヌクレオチドを利用するわけではなく、詳細には、クレノウ断片、シーケナーゼ、HIV−逆転写酵素、およびTaqポリメラーゼは本発明の修飾ヌクレオチドを組込むが、pfu DNAポリメラーゼは本発明の修飾ヌクレオチドを組込まないように思われる。
【0257】
改善されたPCR−長いDNA配列の作成
核酸合成の忠実性は、PCRを用いる長い標的分子の増幅を行う際の限定要因である。プライマー伸長産物の合成の間のヌクレオチドの組込みミスは、効率的に増幅され得る標的の長さを制限する。鋳型に不整合の3’末端塩基のプライマー伸長に対する影響はがHuang et al., 1992, Nucl. Acids Res. 20: 4567-4573(参照によってこの中に組込まれる)に記載されている。誤って組込まれたヌクレオチドの存在は、時期を早めて鎖合成を終結させ、従って長い標的の増幅の効率を低下させるであろう。低レベルのヌクレオチド組込みミスであっても、10kbより長い配列においては重大となる。図5に示されているデータは、天然Taqポリメラーゼに関してγ標識dNTPを用いることによってDNA合成の忠実性が改善され、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性、すなわちChengらによって開発された長距離PCR(米国特許第5,512,462号;参照によってこの中に組込まれる)において必要とされる活性である「校正」を有するポリメラーゼを添加することを必要とせずに、より長いDNA伸長を可能にすることを示す。従って、本発明は、PCR反応条件下において天然Taqポリメラーゼを本発明のγ標識dNTPと接触させる工程を含んでなる、より長い伸長PCR増幅DNA産物を作るための改善されたPCRシステムを提供する。より長いPCR産物は、改善された塩基組込みの正確さによる、本発明のγ標識dNTPの使用の結果として生じる。
【0258】
信号強度および反応動力学的特性は塩基に関する情報を提供する
伸長DNA鎖における各ヌクレオチドの信号強度を用いて、塩基同一性データを決定し、確認しまたは支持する。ここで図12を参照して、実線は4つの天然ヌクレオチド(dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP)が合成反応に加えられた場合に作られる反応産物に対応する。点線は、所有の塩基修飾ヌクレオチドが反応に加えられた場合に作られる反応産物に対応する。明らかに示されているように、配列内容および塩基修飾は、反応産物の強度および/または動力学的特性に反映し、それら同定パターンは所有の塩基呼び出しソフトウェアに組込まれ、各シークエンス位置での塩基同一性に関して高い信頼値をもたらす。
【0259】
この中で挙げられかつ列挙された全ての引例が参照によって組込まれる。本発明は完全かつ完璧に記載されているが、添付請求項の範囲内において、詳細に説明したのとは異なるように本発明を実施できることを理解すべきである。本発明は好ましい実施形態を参照して開示されているが、その記載を読むことによって、当業者は、上述したおよび後に請求項に記載する本発明の範囲を逸脱することなく、適当な変化および変更を成し得るであろう。
他の実施態様
1.重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有する重合剤を含んで成り、前記標識の検出可能な特性が、モノマー組込みの前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする組成物。
2.前記検出可能な特性が、重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有しかつ重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有し、各モノマー組込みの間に重合剤がその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻ることを特徴とする実施態様1記載の組成物。
3.前記重合剤がポリメラーゼまたは逆転写酵素であることを特徴とする実施態様2記載の組成物。
4.前記ポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、シーケナーゼ、および大腸菌DNAポリメラーゼI由来のクレノウ断片よりなる群から選択されることを特徴とする実施態様3記載の組成物。
5.前記逆転写酵素が、HIV−1逆転写酵素を含むことを特徴とする実施態様3記載の組成物。
6.前記ポリメラーゼが、Taqポリメラーゼのアミノ酸位置513−518、643、647、649、および653−661、ならびにそれらの混合物または組合せよりなる群から選択される部位に結合した標識を有するTaq DNAポリメラーゼIを含むことを特徴とする実施態様3記載の組成物。
7.重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した少なくとも1つの分子および/または原子標識を有する重合剤を含んで成り、前記標識の検出可能な特性が、モノマー組込みの間、重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有しかつ重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有し、各モノマー組込みの間に重合剤がその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻り、前記重合剤がポリメラーゼまたは逆転写酵素であることを特徴とする組成物。
8.前記ポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、シーケナーゼ、および大腸菌DNAポリメラーゼI由来のクレノウ断片よりなる群から選択されることを特徴とする実施態様7記載の組成物。
9.前記逆転写酵素が、HIV−1逆転写酵素を含むことを特徴とする実施態様7記載の組成物。
10.重合剤上の部位に関連しまたは共有結合した分子および/または原子標識を有する重合剤、ならびに分子および/または原子標識を有するモノマーを含んで成り、前記標識の少なくとも1つが、重合剤標識とモノマー標識との間の相互作用によって、モノマー組込みの前、間および/または後に変化を受ける検出可能な特性を有することを特徴とする組成物。
11.前記検出可能な特性の変化が、各モノマー組込みの間に第1の配座状態から第2の配座状態に変化しさらに第1の配座状態に戻るような重合剤の配座の変化から生じることを特徴とする実施態様10記載の組成物。
12.前記検出可能な特性が、重合剤が第1の配座状態にある時に第1の検出特性を有しかつ重合剤が第2の配座状態にある時に第2の検出特性を有することを特徴とする実施態様10記載の組成物。
13.前記重合剤がポリメラーゼまたは逆転写酵素であることを特徴とする実施態様12記載の組成物。
14.前記ポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、シーケナーゼ、および大腸菌DNAポリメラーゼI由来のクレノウ断片よりなる群から選択されることを特徴とする実施態様13記載の組成物。
15.前記逆転写酵素が、HIV−1逆転写酵素を含むことを特徴とする実施態様13記載の組成物。
16.前記モノマーがdNTPを含み、かつ前記モノマーの標識がβまたはγリン酸基に共有結合していることを特徴とする実施態様12記載の組成物。
17.前記標識が蛍光標識を含み、前記検出可能な特性が、発せられる光の強度および/または周波数を含むことを特徴とする実施態様10記載の組成物。
18.前記検出可能な特性が、重合剤が第1の配座状態にある時に実質的に活性でありかつ重合剤が第2の配座状態にある時に不活性であり、あるいは重合剤が第1の配座状態にある時に実質的に不活性でありかつ重合剤が第2の配座状態にある時に活性であることを特徴とする実施態様16記載の組成物。
19.前記ポリメラーゼが、Taqポリメラーゼのアミノ酸位置513−518、643、647、649、および653−661、ならびにそれらの混合物または組合せよりなる群から選択される部位に結合した標識を有するTaq DNAポリメラーゼIを含み、前記標識が蛍光分子を含むことを特徴とする実施態様14記載の組成物。
20.重合剤上の部位またはその近くに位置し、その部位に関連しまたは共有結合した一対の標識を有する重合剤を含んで成り、該重合剤がポリメラーゼまたは逆転写酵素であり、少なくとも1つの前記標識の検出可能な特性が、モノマー組込みの前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする組成物。
21.前記検出可能な特性が、重合剤が第1の状態にある時に第1の値を有しかつ重合剤が第2の状態にある時に第2の値を有し、各モノマー組込みの間に重合剤がその第1の状態から第2の状態に変化しさらに第1の状態に戻ることを特徴とする実施態様20記載の組成物。
22.前記ポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、シーケナーゼ、および大腸菌DNAポリメラーゼI由来のクレノウ断片よりなる群から選択されることを特徴とする実施態様21記載の組成物。
23.前記逆転写酵素が、HIV−1逆転写酵素を含むことを特徴とする実施態様21記載の組成物。
24.前記ポリメラーゼが、Taqポリメラーゼのアミノ酸位置513−518、643、647、649、および653−661、ならびにそれらの混合物または組合せよりなる群から選択される部位に結合した標識を有するTaq DNAポリメラーゼIを含み、前記標識が蛍光分子を含むことを特徴とする実施態様22記載の組成物。
25.少なくとも1つの標識ポリメラーゼがその中に封じ込められている第1チャンバーおよび標識dNTPを含む第2チャンバーを有する基板、ならびに前記チャンバーを相互連結するチャネルを含んで成り、少なくとも1つの標識の検出可能な特性が、モノマー組込みサイクルの間に検出可能な変化を受けることを特徴とする単一分子シークエンシング装置。
26.各標識dNTPに対して1つのチャンバーが対応するような、複数のモノマーチャンバーをさらに含むことを特徴とする実施態様25記載の装置。
27.天然Taq DNAポリメラーゼのアミノ酸位置513−518、643、647、649、および653−661、ならびにそれらの混合物または組合せよりなる群から選択される部位にシステイン残基置換を有する変異Taqポリメラーゼ。
28.前記システイン残基に、そのSH基を介して標識が共有結合していることを特徴とする実施態様27記載のポリメラーゼ。
29.データストリームを表す未知のヌクレオチド配列;
標識結合ポリメラーゼおよび該ポリメラーゼに対応する標識結合モノマーを含む単一分子シークエンサー;
前記標識の少なくとも1つを励起するように適合させた励起光源;および
前記標識の少なくとも1つからの反応を検出するように適合させた検出器;を含んで成り、前記反応が相補配列の重合の間に変化し、かつ該反応の変化が前記データストリームの内容を表すことを特徴とする、保存情報を検索するシステム。
30.未知のヌクレオチド配列;
標識結合ポリメラーゼおよび該ポリメラーゼに対応する標識結合モノマーを含む単一分子シークエンサー;
前記標識の少なくとも1つを励起するように適合させた励起光源;および
前記標識の少なくとも1つからの反応を検出するように適合させた検出器;を含んで成り、前記反応が相補配列の重合の間に変化し、かつ該反応の変化が前記未知配列中の各ヌクレオチドの同一性を表すことを特徴とする、単一分子からの配列情報を特定するシステム。
31.分子配列をシークエンシングする方法であって、
蛍光ドナーが共有結合したポリメラーゼおよび各モノマーに独自の蛍光アクセプターが共有結合した前記ポリメラーゼに対応するモノマーを含む単一分子シークエンサーに、ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの未知配列を供給し;
励起光源からの光で前記蛍光ドナーを励起させ;
蛍光検出器によって、モノマー組込みサイクルの間に前記アクセプターから発せられる蛍光を検出し;さらに
前記変化を、前記未知配列中の各ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの同一性に変換する;各工程を含んで成り、前記アクセプターから発せられる光の強度および/または周波数が各モノマー組込みサイクルの間に変化することを特徴とする方法。
32.個々の核酸分子をまたは並列で多数の個々の核酸分子をシークエンシングする方法であって、
標識結合ポリメラーゼ、プライマーまたは鋳型を含む複製複合体の構成員を、各複合体の分解検出が可能になるように十分離間させて固相支持体上に固定化し;
協同的に標識されたヌクレオチドと共に、前記複製複合体をインキュベートし;
ポリメラーゼがそのオープン型とクローズ型との間で移行して、少なくとも1つの前記標識の検出可能な特性に変化を生じさせる時に、あるいはピロリン酸基がポリメラーゼから遊離される時に、ポリメラーゼによって組込まれた各ヌクレオチドを検出し;さらに
検出可能な特性の変化を未知核酸配列中のヌクレオチドの配列に関連付ける;各工程を含んで成り、前記標識ヌクレオチドの各々がそのγリン酸基に独自の標識を含み、各ヌクレオチドが個別に検出され得ることを特徴とする方法。
33.γリン酸修飾dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPを含んで成る、γ−リン酸修飾ヌクレオシド。
34.配列番号1から29の配列より成る群から選択されるプライマー配列またはその部分。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】図1は、蛍光ドナーとアクセプターとを分離する距離の関数としてのFRET活性を示す
【図2】図2は、Taq DNA pol I(Klentaq 1)の大きな断片のオープン型およびクローズ型の三重複合体を示す
【図3A】図3Aは、Taq DNAポリメラーゼIの大きな断片の3ktq(クローズ型「黒色」)と1tau(オープン型「淡青色」)との重ね合わせを示す。3ktqからの結合DNAが赤色で示されており、一方、3ktqに結合したddCTPは緑色で示されている
【図3B】図3Bは、Taqポリメラーゼの3ktq(クローズ型)および1tau(オープン型)配座の重ね合わせからの活性部位の近接図が示されている
【図3C】図3Cは、3ktq(DNAおよびddCTPの不在下)の分子表面表現の近接図が示されている
【図4】図4は、γ−ANS標識dNTPの調製について説明する
【図5】図5は、γ−ANS−リン酸−dATPを用いたDNA伸長実験からのサイズ分離放射性標識産物を含む20%変性ポリアクリルアミドゲルの画像を示す
【図6】図6は、γ−ANS−リン酸−dNTPを用いたDNA伸長反応において作成された産物の(A)20%変性アクリルアミドゲル、(B)色を薄くしたホスホイメージ、および(C)強調されたホスホイメージの画像を示す
【図7】図7は、γ−ANS−リン酸−dNTPを用いたDNA伸長反応において作成された産物の(A)6%変性アクリルアミドゲル、(B)色を薄くしたホスホイメージ、および(C)強調されたホスホイメージの画像を示す
【図8】図8は、50μMの指定されたヌクレオチドを含む反応バッファー中においてクレノウ断片を37℃で30−60分間インキュベートして得られた反応産物の20%変性アクリルアミドゲルの画像を示す
【図9】図9は、50μMの指定されたヌクレオチドを含む反応バッファー中においてpfu DNAポリメラーゼを37℃で30−60分間インキュベートして得られた反応産物の20%変性アクリルアミドゲルの画像を示す
【図10】図10は、50μMの指定されたヌクレオチドを含む反応バッファー中においてHIV−1逆転写酵素を37℃で30−60分間インキュベートして得られた反応産物の20%変性アクリルアミドゲルの画像を示す
【図11】図11は、50μMの指定されたヌクレオチドを含む反応バッファー中において天然T7 DNAポリメラーゼおよびシーケナーゼを37℃で30−60分間インキュベートして得られた反応産物の20%変性アクリルアミドゲルの画像を示す
【図12】図12は、伸長DNA鎖における各ヌクレオチドの信号強度を示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一分子からの配列情報を特定するシステムであって、
ヌクレオチド配列;
標識が結合した重合剤、および該重合剤に対応するモノマーであって各モノマーがその末端リン酸基に共有結合した標識を有するモノマー、および前記ヌクレオチド配列と二重鎖を形成するように適合させたプライマーを含む単一分子シークエンサー;
前記標識の少なくとも1つを励起するように適合させた励起光源;および
前記標識の少なくとも1つからの応答を検出するように適合させた検出器;を含み、
前記応答が相補配列の重合の間に変化し、かつ該応答の変化が前記配列中の各ヌクレオチドの同一性を表すことを特徴とするシステム。
【請求項2】
分子配列をシークエンシングする方法であって、
ヌクレオチド配列またはヌクレオチドアナログの配列を、蛍光ドナーが共有結合した重合剤、該重合剤に対応するモノマーであって各モノマーがその末端リン酸基に共有結合した独自の蛍光アクセプターを有するモノマー、および前記配列と二重鎖を形成するように適合させたプライマーを含む単一分子シークエンサーに提供し;
励起光源からの光で前記蛍光ドナーを励起させ;
蛍光検出器によって、モノマー組込みサイクルの間に前記アクセプターから発せられる蛍光を検出し、ここで、前記アクセプターから発せられる光の強度および/または周波数が各モノマー組込みサイクルの間に変化し;さらに
前記変化を、前記配列中の各ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの同一性に変換する;各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
個々の核酸分子または並列で多数の個々の核酸分子をシークエンシングする方法であって、
標識が結合した重合剤、プライマーまたは鋳型を含む複製複合体の構成員を、各複合体の分解検出が可能になるように十分離間させて固相支持体上に固定化し;
各々がその末端リン酸基に独自の標識を含み個別に検出され得る協同的に標識されたヌクレオチドと共に、前記複製複合体をインキュベートし;
前記重合剤がそのオープン型とクローズ型との間で移行して少なくとも1つの前記標識の検出可能な特性に変化を生じさせるとき、あるいはピロリン酸基が重合剤により遊離されるときに、重合剤によって組込まれた各ヌクレオチドを検出し;さらに
検出可能な特性の変化を核酸配列中のヌクレオチドの配列に関連付ける;各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの標識の検出可能な特性の変化が、標識間の相互作用によるものであることを特徴とする請求項1記載のシステム、あるいは請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記標識が蛍光標識を含み、前記検出可能な特性が、発せられる光の強度および/または周波数を含むことを特徴とする請求項4記載のシステムまたは方法。
【請求項6】
前記標識の両方が蛍光標識を含み、前記検出可能な特性が、発せられる光の強度および/または周波数を含み、重合剤の標識とモノマーの標識との間の相互作用が蛍光共鳴エネルギー転移によるものであることを特徴とする請求項4記載のシステムまたは方法。
【請求項7】
前記個々のヌクレオチド配列が未知であるか、あるいは前記個々の核酸配列が未知であることを特徴とする請求項1記載のシステム、あるいは請求項2または3記載の方法。
【請求項8】
前記重合剤が3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くことを特徴とする請求項1記載のシステム、あるいは請求項2または3記載の方法。
【請求項9】
前記重合剤がポリメラーゼまたは逆転写酵素であることを特徴とする請求項1記載のシステム、あるいは請求項2または3記載の方法。
【請求項10】
前記ポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼI、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くT7 DNAポリメラーゼ、シーケナーゼ、および3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠く大腸菌DNAポリメラーゼI由来のクレノウ断片よりなる群から選択されることを特徴とする請求項9記載のシステムまたは方法。
【請求項11】
前記逆転写酵素が、HIV−1逆転写酵素を含むことを特徴とする請求項9記載のシステムまたは方法。
【請求項12】
前記モノマーがdNTPを含み、かつ前記標識が末端リン酸基に共有結合していることを特徴とする請求項8記載のシステムまたは方法。
【請求項13】
前記ポリメラーゼが、Taqポリメラーゼのアミノ酸位置513−518、643、647、649、および653−661よりなる群から選択される部位に結合した標識を有するTaq DNAポリメラーゼIを含み、前記標識が蛍光分子を含むことを特徴とする請求項12記載のシステムまたは方法。
【請求項14】
前記ポリメラーゼまたは逆転写酵素が、該ポリメラーゼまたは逆転写酵素上の部位に位置しあるいはその部位に結合または共有結合した一対の標識を有し、その少なくとも1つの標識の検出可能な特性が、モノマー組込みの前、間および/または後に変化を受けることを特徴とする請求項9記載のシステムまたは方法。
【請求項15】
配列情報を特定するための組成物であって、分子標識または原子標識が結合または共有結合した重合剤と、分子標識または原子標識がβ、γまたは末端リン酸基に共有結合したモノマーとを含み、前記標識の少なくとも1つが、重合剤の標識とモノマーの標識との間の相互作用によって各モノマー組込みの前、間および/または後に変化を受ける検出可能な特性を有することを特徴とする組成物。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−118847(P2009−118847A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314188(P2008−314188)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【分割の表示】特願2002−509533(P2002−509533)の分割
【原出願日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.リナックス
2.Linux
【出願人】(503013587)ヴィジゲン バイオテクノロジーズ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】VISIGEN BIOTECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】