説明

リアルタイムPCRのための核酸テンプレートの製造

【課題】リアルタイムPCRのための核酸テンプレートの製造を提供する。
【解決手段】高速大量リアルタイムPCR分析のために、細胞から核酸を効率的に製造する新しい試薬組成に係り、該試薬は、テンプレートを精製したり、別途に分離せずとも、いち早く細胞を溶解させてテンプレートを製造できる。従って、該試薬は、約35回の少ない回数のPCR増幅でも、核酸テンプレートの単一分子まで、迅速であって敏感にCatacleave PCR検出を同時に行わせ、リアルタイムPCR分析の結果を劇的に向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率のリアルタイムPCR(polymerase chain reaction)分析のためのテンプレート核酸製造の緩衝液及び方法に関するものであり、一具体例において、該緩衝液は、標的核酸を含む細胞の溶解に適している。
【背景技術】
【0002】
高速大量PCRスクリーニングの具現は、現代生物学及び医学の革新的な変化を引き起こした。かような驚くべき分析技術によって、診断、環境モニタリング、血液テスト及び遺伝子型検査(genotyping)などのいくつかの研究分野は、大きい影響を受けた。生物情報学(bioinformatics)の登場と共に、科学者らは、有史以来非常に多量の遺伝子情報を分析することができる。しかしながら、既存のPCR分析方法から高速大量形態への転換のためには、既存のPCR分析方法の長所を維持したまま、PCR段階ができる限り効率的に簡素化されねばならない。かような変化は、特に原核病原性菌(prokaryotic pathogens)のような生きている生物から抽出した標的DNA配列を検出するときに特に現れる。かような過程で増加した大量処理を行うためには、PCR検出の敏感度を落とさずに、細胞溶解(cell lysis)及びPCR増幅を同じ反応緩衝液で起こさせる必要性が要求されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,N.Y.(1987-2008)
【非特許文献2】Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高速大量リアルタイムPCR分析(high throughput real-time PCR analysis)のために、細胞から得た核酸テンプレートの効率的な準備のための、新規の溶解試薬剤形に基づいたものである。前記試薬剤形は、テンプレートの精製及び分離を行う必要なしに、迅速な細胞溶解及びテンプレート準備を可能にする。従って、前記試薬は、リアルタイムPCR分析の大量処理を顕著に向上させることができ、同時に検出敏感性を維持できる。
【0005】
従って、本発明は、PCR増幅を30回より少ない回数で、1個の核酸テンプレートに対して、迅速であって敏感性が良好なリアルタイムPCR検出を可能なようにする溶解試薬を利用し、テンプレート核酸を準備する新規の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの様態として、本発明は、リアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを準備する方法を開示している。細胞は、溶解試薬で溶解され、前記溶解試薬は、6ないし9ほどのpHを有する緩衝液、0.125%ないし2%ほどの濃度を有する両性イオンデタージェント(zwitterionic detergent)、0.3ないし2.5mg/mlほどの濃度を有するアジ化物(azide)、及びプロテアーゼを含む。実質的に蛋白質フリーの細胞溶解物を生産するために、前記の細胞溶解物を約55℃で15分間インキュベーションする。その後、プロテアーゼを95℃で10分ほど置いて不活性化させる。実質的に蛋白質フリーの細胞溶解物は、混合物でリアルタイムPCR増幅反応のためのテンプレートを提供するが、前記混合物は、細胞溶解物(cell lysate)内にある標的DNAにアニーリングすることができる増幅プライマー対;検出標識、標的DNAの領域に相補的なDNA核酸配列及びRNA核酸配列を含むプローブ(probe);増幅ポリメラーゼ活性(amplifying polymerase activity);増幅緩衝液;RNase H活性(RNase H activity)を含む。最初の増幅プライマーと2番目の増幅プライマーとの間の標的DNA増幅後、前記プローブ内にあるRNA配列は、標的DNAと相補的なDNA配列と、RNA:DNAヘテロデュプレックス(heteroduplex)を形成できる。
【0007】
RNase H活性は、ホットスタート(hot start)RNase H活性または熱安定性RNase活性、または両側いずれでもありうる。
【0008】
他の様態で、本発明は、リアルタイム増幅のための核酸テンプレートを準備する方法に係わるものである。細胞は溶解試薬で溶解され、前記溶解試薬は、6ないし9ほどのpHを有する緩衝液、0.125%ないし2%ほどの濃度を有する両性イオンデタージェント、0.3ないし2.5mg/mlほどの濃度を有するアジ化物を含む。細胞溶解物を約55℃で15分間培養した後、細胞溶解物は、混合物でリアルタイムPCR増幅反応のためのテンプレートを提供するが、前記混合物は、細胞溶解物内にある標的DNAにアニーリングすることができる増幅プライマー対;検出標識、標的DNAの領域に相補的なDNA核酸配列及びRNA核酸配列を含むプローブ;増幅ポリメラーゼ活性;増幅緩衝液;RNase H活性を含む。最初の増幅プライマーと2番目の増幅プライマーとの間の標的DNA増幅後、前記プローブ内にあるRNA配列は、標的DNAと相補的なDNA配列と、RNA:DNAヘテロデュプレックスを形成できる。
【0009】
細胞溶解物の追加は、細胞溶解物内にある単一標的DNA分子のリアルタイムPCR検出時に、40回PCR増幅サイクルより少なく、35回PCR増幅サイクルより少なく、または30回PCR増幅サイクルより少ない数を必要とする。
【0010】
ある具体例では、増幅反応混合物は、逆転写活性(reverse transcriptase activity)を含むことができる。前記プローブは、蛍光で標識されうる。前記蛍光標識は、FRET対でありうる。
【0011】
他の具体例では、実質的な蛋白質フリーの細胞溶解物は、増幅反応混合物によって5ないし15倍に希釈される。
【0012】
前記細胞は、リステリア(Listeria)のようなグラム陽性細菌細胞(gram positive bacterial cells)、または大腸菌(E.coli)またはサルモネラ(Salmonella)のようなグラム陰性細胞(gram negative cells)でありうる。
【0013】
前記緩衝液は、酢酸塩基盤の緩衝液(acetate based buffer)またはリン酸塩基盤の緩衝液(phosphate based buffer)、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、または2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液(Tris)でありうる。
【0014】
前記両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)でありうる。
【0015】
前記プロテアーゼは、プロテイナーゼK(proteinase K)でありうる。
【0016】
他の具体例では、本発明は、溶解試薬を開示している。前記溶解試薬は、6ないし8ほどのpHを有する緩衝液、0.125%ないし2%ほどの濃度を有する両性イオンデタージェント、0.3ないし2.5mg/mlほどの濃度を有するアジ化物、及びプロテアーゼを含み、このとき、増幅溶液に試薬が約5ないし15倍ほど希釈されるとき、増幅ポリメラーゼ及びRNase H酵素活性は抑制されない。
【0017】
前記溶解試薬は、酢酸塩基盤の緩衝液またはリン酸塩基盤の緩衝液、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)、または2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液を含む緩衝液を含むことができる。
【0018】
前記両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートでありうる。
【0019】
他の具体例では、前記溶解試薬は、6ないし8ほどのpHを有する緩衝液、0.125%ないし2%ほどの濃度を有する両性イオンデタージェント、0.3ないし2.5mg/mlほどの濃度を有するアジ化物、及びプロテアーゼを含み、このとき、プロテアーゼ不活性後、増幅溶液に前記試薬が約5ないし15倍程希釈されるとき、増幅ポリメラーゼ及びRNase H酵素活性は抑制されない。
【0020】
前記緩衝液は、酢酸塩基盤緩衝液、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)または2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液を含むことができる。
【0021】
前記両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートでありうる。
【0022】
前記検出方法は、早くて正確であり、敏感性が非常に高く、高速大量適用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】CataCleaveプローブ技法を示した概略図である。
【図2】PCR増幅産物のリアルタイムCataCleaveプローブ検出を示した概略図である。
【図3A】互い異なる溶解試薬(CZ1−7&0.125xTZ)の存在下で、CataCleaveプローブを使用してサルモネラDNAを検出したリアルタイムPCR反応結果である。
【図3B】互いに異なる濃度の溶解試薬の存在下で、CataCleaveプローブを使用してリステリアDNAを検出したリアルタイムPCR反応結果である。
【図4】互いに異なる濃度の溶解試薬を使用して得られたリステリア細胞溶菌物内でCataCleaveプローブを使用して標的DNA配列を検出したリアルタイムPCR反応結果である。
【図5】望ましい溶解試薬溶液とCataCleaveプローブとを使用して低濃度のリステリア細胞を検出したリアルタイムPCR反応結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に開示された具体例の実験は、取り立てて表示されていなければ、当業界で公知の一般的な分子生物学的技法を使用している。かような技法は、当業者に周知されており、文献に十分に説明されている。例えば、Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,N.Y.(1987-2008)及びSambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)を参照した。
【0025】
本明細書で取り立てて定義されていないのであれば、本明細書で使われたあらゆる技術的、科学的用語は、当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。また本明細書は、詳細な説明及び請求項の解釈を助けるために、用語の定義を提供する。結果として、定義が他の定義と一致しなければ、前記定義は、本明細書に説明されているものであると規定されるのである。
【0026】
本明細書で使われた用語、「細胞(cell)」は、原核細胞または真核細胞を意味しうる。
【0027】
一具体例で、用語、「細胞」は、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、抗酸性(acid-fast)細菌などを含む微生物を意味するが、これらに限定されるものではない。一具体例で、テストされる「細胞」は、綿棒を使用して表面の試料を収得できる。他の具体例で、前記「細胞」は、病原性生物を意味しうる。
【0028】
本明細書で使われるグラム陽性細菌は、例えば、Actinomadurae、Actinomyces israelii、Bacillus anthracis、Bacillus cereus、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Clostridium perfringens、Clostridium tetani、Corynebacterium、Enterococcus faecalis、Listeria monocytogenes、Nocardia、Propionibacterium acnes、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epiderm、Streptococcus mutans、Streptococcus pneumoniaeなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書で使われるグラム陰性細菌は、例えば、Afipia felis、Bacteroides、Bartonella bacilliformis、Bortatella pertussis、Borrelia burgdorferi、Borrelia recurrentis、Brucella、Calymmatobacterium granulomatis、Campylobacter、Escherichia coli、Francisella tularensis、Gardnerella vaginalis、Haemophilus aegyptius、Haemophilus ducreyi、Haemophilus influenziae、Helicobacter pylori、Legionella pneumophila、Leptospira interrogans、Neisseria meningitidis、Porphyromonas gingivalis、Providencia stuartii、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella enteritidis、Salmonella typhi、Serratia marcescens、Shigella boydii、Streptobacillus moniliformis、Streptococcus pyogenes、Treponema pallidum、Vibrio cholerae、Yersinia enterocolitica、Yersinia pestisなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本明細書で使われる抗酸性細菌は、例えば、Mycobacterium avium、Mycobacterium leprae、Mycobacterium tuberculosisなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
他の具体例で、前記「細胞」は、前記3種のカテゴリーに属さない他の細菌を意味するものであり、例えば、Bartonella henselae、Chlamydia psittaci、Chlamydia trachomatis、Coxiella burnetii、Mycoplasma pneumoniae、Rickettsia akari、Rickettsia prowazekii、Rickettsia rickettsii、Rickettsia tsutsugamushi、Rickettsia typhi、Ureaplasma urealyticum、Diplococcus pneumoniae、Ehrlichia chafensis、Enterococcus faecium、Meningococciなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0032】
他の具体例で、前記用語「細胞」は、例えば、Aspergilli、Candidae、Candida albicans、Coccidioides immitis、Cryptococci及びその組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
他の具体例で、用語「細胞」は、寄生微生物を意味するものであり、例えば、Balantidium coli、Cryptosporidium parvum、Cyclospora cayatanensis、Encephalitozoon、Entamoeba histolytica、Enterocytozoon bieneusi、Giardia lamblia、Leishmaniae、Plasmodii、Toxoplasma gondii、Trypanosomae、トラペゾイダル・アメーバ(trapezoidal amoeba)などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0034】
他の具体例で、用語「細胞」は、寄生虫を意味し(例えば、線虫)、具体的に、Nematoda(原虫、例えば、鞭虫、十二指腸虫、蟯虫、回虫、糸状虫など)、Cestoda(例えば、サナダムシ)などであるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本明細書で使われた用語、「両性イオンデタージェント(zwitterionic detergent)」は、両側性イオン性質を示す界面活性剤を意味し(例えば、順電荷を帯びず、伝導度(conductivity)及び電気泳動移動度(electrophoretic mobility)が不足し、イオン交換レジン(ion-exchange resin)に結合せず、蛋白質・蛋白質相互作用を切断)、CHAPS、CHAPSO、及びZwittergent(登録商標)(Calbiochem、San Diego、CA)並びにAnzergent(登録商標)(Anatrace,Inc.、Maumee、OH)の商標名で販売されるスルホベタインのようなベタイン誘導体(betaine derivative)などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の実施するのに利用するための、例示的な両性イオンデタージェントとしては、n−テトラデシル−N、N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−オクチル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−デシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート及びn−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネートのような化学名を有するZwittergent(登録商標)及びAnzergent(登録商標)の商標名で販売されているものを含む。
【0037】
本発明の例示的なデタージェントは、例を挙げれば、Anzergent 3−14(Analytical Grade)、Anzergent 3−8(Analytical Grade)、Anzergent 3−10(Analytical Grade)、Anzergent 3−12(Analytical Grade)、またはzwittergent 3−8、zwittergent 3−10、zwittergen t3−12及びzwittergent3−14、CHAPS、CHAPSO、ApolO及びApol2のような商標名からなるものを購買できる。
【0038】
一具体例で、両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニア]−1−プロパンスルホネート(米国特許第4,372,888号明細書で説明されている)の略語である、CHAPS(CAS number:75621−03−3であ、り、SIGMA-ALDRICH product no.C3023−1Gから利用可能)であり、これは、次のような構造を有する:
【化1】

【0039】
他の具体例で、CHAPSは、総組成物の0.125%ないし2%ほどの重量/体積(W/V)の濃度で存在する。他の具体例で、CHAPは、総組成物の0.25%ないし1%ほどのW/Vの濃度で存在する。また、他の具体例では、CHAPは、総組成物の0.4%ないし0.7%ほどのW/Vの濃度で存在する。
【0040】
他の具体例で、両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネートの略語である、CHAPS(CAS number:82473−24−3であり、FLUKAから利用可能、製品番号26675)であり、これは次のような構造を有する:
【化2】

【0041】
他の具体例で、CHAPSは、総組成物の0.125%ないし2%ほどの重量/体積(W/V)の濃度で存在する。他の具体例で、CHAPは、総組成物の0.25%ないし1%ほどのW/Vの濃度で存在する。また、他の具体例では、CHAPは、総組成物の0.4%ないし0.7%ほどのW/Vの濃度で存在する。
【0042】
本明細書で使われた、用語「緩衝液(buffer)」は、pKaが25℃で約6ないし約9になるように、6ないし9のpHを効果的に維持させる組成物を意味する。本明細書で前記緩衝液は、一般的に酵素活性機能と互換可能である、生理的に互換可能な緩衝液(compatible buffer)であり、生物学的高分子が、それらの正常な生理活性及び生化学的な機能を維持できるようにする。
【0043】
例示的な緩衝液は、4−2−ヒドロキシエチル−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3−(N−モルフォリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン酸(Tricine)、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン酸(Tris)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、及び酢酸塩またはリン酸塩を含む緩衝液(KHPO、KHPO、NaHPO、NaHPO)、並びにそれらと類似したものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本明細書で、用語「アジ化物(azide)」は、−Nの化学式を有するものを意味する。一具体例で、アジ化物は、アジ化ナトリウム(NaN、CAS number 26628−22−8;SIGMA-ADRICH製品番号:S2002−25Gから利用可能)であり、これは、グラム陰性細菌で、シトクロム酸化剤(cytochrome oxidase)を抑制し、細菌発育阻害作用を行う。
【0045】
本明細書で使われた用語、「プロテアーゼ(protease)」は、ペプチド結合を加水分解する酵素である(プロテアーゼ活性を有する)。また、プロテアーゼは、例えば、プロテイナーゼ(proteinase)、ペプチドヒドロラーゼ(peptide hydrolase)、または蛋白質分解酵素(proteolytic enzyme)と呼ばれる。本発明の用途のためのプロテアーゼは、ポリペプチド鎖の内部に作用しうるエンド型(endo-type)でありうる(エンドペプチダーゼ(endopeptidases))。一具体例で、前記プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ(serine protease)、プロテイナーゼK(EC 3.4.21.64;Roche Applied Sciences、組み換えプロテイナーゼK50 U/ml(Pichia pastorisより)Cat.No.03 115 887 001から取得可能)でありうる。
【0046】
プロテイナーゼKは、核酸準備時に蛋白質を分解し、汚染を除去するために使われる。核酸準備時にプロテイナーゼKを入れれば、ヌクレアーゼ(nuclease)を迅速に不活性化させる。プロテイナーゼKを入れなければ、精製過程で、DNAやRNAを分解させることができる。前記酵素は、蛋白質を変性させる化合物が存在するときは、活性を有するが、95℃ほどで10分間存在する場合には、不活性化されるために、前記の適用に適している。
【0047】
プロテイナーゼKは、リステリア(Listeria)、サルモネラ(Salmonella)または大腸菌(E.coli)のようなグラム陽性細胞及びグラム陰性細菌の分解時に必要である。また、前記酵素は、一般的に飲食物や環境試料(environmental sample)に存在するPCR(polymerase chain reaction)抑制剤の一部を除去できる。
【0048】
他の具体例で、リステリアのようなグラム陽性細菌の溶解時に、プロテイナーゼK(1mg/ml)を含む溶解試薬が必要である。細胞溶解物で蛋白質は、15分間55℃でプロテイナーゼKを処理することによって分解され、プロテイナーゼKは、95℃で10分間処理することによって不活性化される。冷却後、実質的な蛋白質フリーの溶解物は、高効率のPCR増幅に互換適合性がある。
【0049】
プロテイナーゼKに追加してまたは代替して、溶解試薬は、トリプシン(trypsin)、キモトリプシン(chymotrypsin)、エラスターゼ(elastase)、サブチリシン(subtilisin)、ストレプトリシン(streptorisin)、サーミターゼ(thermitase)、アクアリシン(aqualysin)、プラスミン(plasmin)、ククミシン(cucumisin)、またはカルボキシペプチダーゼA,D,CまたはY(carboxypeptidase A,D,CまたはY)のようなセリンプロテアーゼを含むことができる。
【0050】
本明細書で、用語「溶解物(lysate)」は、溶解された細胞残骸及び核酸がある液相を意味する。
【0051】
本明細書で使用している用語、「実質的に蛋白質フリー(substantially protein free)」は、ほとんどの蛋白質がプロテアーゼによる蛋白質加水分解によって不活性化された溶解物を意味する。細胞溶解の間、プロテイナーゼKの追加は、いち早くヌクレアーゼを不活性化させる。プロテイナーゼKを入れなければ、精製過程で、DNAやRNAを分解させることができる。前記実質的に蛋白質フリーの溶解物は、不活性である蛋白質を除去するために、処理過程がありもするし、ないこともある。
【0052】
本明細書で、「増幅ポリメラーゼ及びRNase H酵素活性を抑制しない(does not inhibit said amplifying polymerase and RNase H enzymatic activities)」という文言は、溶解試薬が増幅ポリメラーゼ及びRNase H活性を、溶解試薬が存在しないときに、増幅ポリメラーゼ及びRNase酵素活性と比較して、0%または1%未満、または2%未満、または5%未満、または10%未満、または25%未満に活性を低下させることを意味する。
【0053】
本明細書で使われた用語、「核酸(nucleic acid)」は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを意味し、前記オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、変形されているか、変形された塩基を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、2ないし60のヌクレオチドを含むヌクレオチドの単一鎖重合体である。ポリヌクレオチドは、2以上のヌクレオチドを含むヌクレオチドの重合体である。ポリヌクレオチドは、第2鎖が第1オリゴヌクレオチドの逆相補的(reverse complement)配列のオリゴヌクレオチドとアニーリングされたオリゴヌクレオチドを含む二重鎖DNA、ジオキシチミジンを含む単一鎖核酸重合体、単一鎖RNA、二重鎖RNAまたはRNA/DNAヘテロデュプレックスを含む単一鎖核酸重合体でありうる。核酸は、ゲノムDNA、cDNA、hnRNA、snRNA、mRNA、rRNA、tRNA、切片化された核酸、ミトコンドリアまたは葉緑体のような細胞小器官から得た核酸;微生物から得た核酸または生物学的試料内または上に存在しうるDNAウイルスまたはRNAウイルス;を含むが、これらに限定されるものではない。核酸は、例えば、RNA及びDNAの場合のように、ある種の糖モイエティ(moiety)から構成されていたり、または、例えば、RNA/DNAキメラ(chimera)の場合のように、互いに異なる糖モイエティの混合でありうる。
【0054】
本明細書で使われた用語、「標識(lable)」または「検出可能な標識(detectable label)」は、ヌクレオチド、ヌクレオチド重合体、または核酸結合因子に結合されたいかなる化学的モイエティをも意味することができ、前記結合は、共有結合または非共有結合でありうる。望ましくは、前記標識は検出可能であり、本発明の実験者に検出可能である前記ヌクレオチドまたはヌクレオチド重合体でありうる。検出可能な標識は、発光分子、化学発光分子、蛍光色素、蛍光クエンチング剤(quenching agent)、色調分子(colored molecule)、放射性同位元素またはシンチラント(scintillant)を含む。検出可能な標識はまた、任意の有用なリンカ分子(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、HRP(horseradish peroxidase)、protein A、protein G、抗体またはその断片、Grb2、ポリヒスチジン、Ni2+、FLAGタグ、mycタグ)、重金属、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ及びルシフェラーゼ)、電子供与体(donor)/受容体(acceptor)、アクリジニウムエステル、染料(dye)及び熱量測定基質(calorimetric substrate)を含む。また、表面プラズモン共鳴(surface Plasmon resonance)検出の場合のように、質量の変化(change in mass)を示すのに検出可能な標識が考慮されうる。当業者は、前記で言及されていない有用な検出可能な標識についても容易に認識でき、それらもまた、本発明の実施に使われうる。
【0055】
説明することを目的としてのみ、核酸テンプレート製造のための溶解試薬を使用して病原性細菌であるサルモネラをCataCleave PCRまたはRT−PCRで検出する方法の内容について、下記で説明する。CataCleave PCRについては、以後に説明する。
【0056】
サルモネラ標的配列の選択
本明細書で使われた用語、「標的(target)」核酸配列は、検出されたり、あるいは特性把握のための核酸配列または構造を意味する。標的核酸配列は、例えば、ゲノムDNAまたはゲノムRNAを含むが、これらに限定されるものではない。一具体例で、「標的」核酸配列は、PCR反応または逆転写PCR反応で、増幅のためのテンプレートとして提供されうる。一具体例で、前記「標的」核酸配列は、生物の核酸内に存在する核酸配列または他種の核酸には存在しない、その相補的な配列を意味しうる。
【0057】
一具体例で、DNA増幅のための標的になるサルモネラ属細菌の核酸配列は、まず当業界に公知のサルモネラ属細菌の核酸配列から選択した。本明細書で使われた用語、「サルモネラ標的配列(Salmonella target sequence)」、または「サルモネラ属細菌の標的配列」は、サルモネラ属に属するバクテリアの核酸配列を含むDNA配列またはRNA配列を意味する。これは、亜種:enterica(I)、salamae(II)、arizonae(IIIa)、diarizonae(IIIb)、houtenae(IV)及びindica(VI)を含むが、これらに限定されるものではないサルモネラ・エンテリカ種及びサルモネラボンゴリ種を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、亜種サルモネラ・エンテリカの血清群及び血清型(serovar)は、米国特許第7,659,381号明細書で確認することができ、これは、本明細書に参照として挿入される。
【0058】
本発明による増幅のために標的になる例示的なサルモネラ核酸配列は、下記文献に開示されており、これは、本明細書に参照として挿入される:Liu WQet al.,“Salmonella paratyphi C:genetic divergence from Salmonella choleraesuis and pathogenic convergence with Salmonella typhi”,PLoS One,2009;4(2):e4510;Thomson NR et al.,“Comparative genome analysis of Salmonella enteritidis PT4 and Salmonella gallinarum 287/91 provides insights into evolutionary and host adaptation pathways,”Genome Res,2008 Oct;18(10):1624-37;EnchevaV et al.,“Proteome analysis of serovars typhimurium and Pullorum of Salmonella enterica subspecies I.”,BMC Microbiol,2005 Jul 18;5:42;McClelland M et al.,“Comparison of genome degradation in Paratyphi A and Typhi,human-restricted serovars of Salmonella enterica that cause typhoid”,Nat Genet,2004 Dec;36(12):1268-74;Chiu CH et al.,“Salmonella enterica serotype Choleraesuis:epidemiology,pathogenesis,clinical disease, and treatment,”Clin Microbiol Rev,2004 Apr;17(2):311-22;Deng W et al.,“Comparative genomics of Salmonella enterica serovar Typhi strains Ty2 and CT18,”J Bacteriol,2003 Apr;185(7):2330-7;Parkhill J et al.,“Complete genome sequence of a multiple drug resistant Salmonella enterica serovar Typhi CT18.”,Nature,2001 Oct 25;413(6858):848-52;McClelland M et al.,“Complete genome sequence of Salmonella enterica serovar typhimurium LT2,”Nature,2001 Oct 25;413(6858):852-6.Salmonella enterica subsp.Enterica serovar typhimurium str.LT2の完全なゲノム(4857432 bp)の例示的なヌクレオチド配列は、GenBank Accenssion No.NC_003197で確認することができる。
【0059】
一具体例で、標的サルモネラInvA核酸配列にアニーリングされる前記増幅プローブは、配列番号3の配列を有するものでありうる。
【0060】
他の具体例で、前記標的核酸配列は、下記DNA配列を有するサルモネラ特異的なInvA遺伝子核酸配列である:
配列番号4、サルモネラ・エンテリカInvA遺伝子(GenBank Accenssion No.:U43272.1):
AACAGTGCTCGTTTACGACCTGAATTACTGATTCTGGTACTAATGGTGATGATCATTTCT
ATGTTCGTCATTCCATTACCTACCTATCTGGTTGATTTCCTGATCGCACTGAATATCGTA
CTGGCGATATTGGTGTTTATGGGGTCGTTCTACATTGACAGAATCCTCAGTTTTTCAACG
TTTCCTGCGGTACTGTTAATTACCACGCTCTTTCGTCTGGCATTATCGATCAGTACCAGC
CGTCTTATCTTGATTGAAGCCGATGCCGGTGAAATTATCGCCACGTTCGGGCAATTCGTT
ATTGGCGATAGCCTGGCGGTGGGTTTTGTTGTCTTCTCTATTGTCACCGTGGTCCAGTTT
ATCGTTATTACCAAAGGTTCAGAACGCGTCGCGGAAGTCGCGGCCCGATTTTCTCTGGAT
GGTATGCCCGGTAAACAGATGAGTATTGATGCCGATTTGAAGGCCGGTATTATTGATGCG
GATGCTGCGCGCGAACGGCGAAGCGTACTGGAAAGGGAAAGCCAGCTTTACGGTTCCTTT
GACGGTGCGATGAAGTTTATCAAAGGTGACGCTATTGCCGGCATCATTATTATCTTTGTG
AACTTTATTGGCGGTATTTCGGTGGGGATGACCCGCCATGGTATGGATTTGTCCTCCGCT
CTGTCTACTTATACCATGCTGACCATTGGTGATGGTCTTGTCGCCCAGATCCCCGCATTG
TTGATTGCGATTAGTGCCGGTTTTATCGTGACTCGCGTAAATGGCGATAGCGATAATATG
GGGCGGAATATCATGACGCAGCTGTTGAACAACCCATTTGTATTGGTTGTTACGGCTATT
TTGACCATTTCAATGGGAACTCTGCCGGGATTCCCGCTGCCGGTATTTGTTATTTTATCG
GTGGTTTTAAGCGTACTCTTCTATTTTAAATTCCGTGAAGCAAAACGTAGCGCCGCCAAA
CCTAAAACCAGCAAAGGCGAGCAGCCGCTTAGTATTGAGGAAAAAGAAGGGTCGTCGTTG
GGACTGATTGGCGATCTCGATAAAGTCTCTACAGAGACCGTACCGTTGATATTACTTGTG
CCGAAGAGCCGGCGTGAAGATCTGGAAAAAGCTCAACTTGCGGAGCGTCTACGTAGTCAG
TTCTTTATTGATTATGGCGTGCGCCTGCCGGAAGTATTGTTACGCGATGGCGAGGGCCTG
GACGATAACAGCATCGTATTGTTGATTAATGAGATCCGTGTTGAACAATTTACGGTCTAT
TTTGATTTGATGCGAGTGGTAAATTATTCCGATGAAGTCGTGTCCTTTGGTATTAATCCA
ACAATCCATCAGCAAGGTAGCAGTCAGTATTTCTGGGTAACGCATGAAGAGGGGGAGAAA
CTCCGGGAGCTTGGCTATGTGTTGCGGAACGCGCTTGATGAGCTTTACCACTGTCTGGCG
GTGACCGTGGCGCGCAACGTCAATGAATATTTCGGTATTCAGGAAACAAAACATATGCTG
GACCAACTGGAAGCGAAATTTCCTGATTTACTTAAAGAAGTGCTCAGACATGCCACGGTA
CAACGTATATCTGAAGTTTTGCAGCGTTTATTAAGCGAACGTGTTTCCGTGCGTAATATG
AAATTAATTATGGAAGCGCTCGCATTGTGGGCGCCAAGAGAAAAAGATGTCATTAACCTT
GTAGAGCATATTCGTGGAGCAATGGCGCGTTATATTTGTCATAAATTCGCCAATGGCGGC
GAATTACGAGCAGTAATGGTATCTGCTGAAGTTGAGGATGTTATTCGCAAAGGGATCCGT
CAGACCTCTGGCAGTACCTTCCTCAGCCTTGACCCGGAAGCCTCCGCTAATTTGATGGAT
CTCATTACACTTAAGTTGGATGATTTATTGATTGCACATAAAGATCTTGTCCTCCTTACG
TCTGTCGATGTCCGTCGATTTATTAAGAAA
【0061】
本明細書で使われた用語、「プライマー(primer)」または「増幅プライマー(amplification primer)」は、PCR反応で、DNA合成を始めるための開始点として作用するオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは、一般的に15ないし35個のヌクレオチドであり、前記標的配列に相補的な領域と混成化される。オリゴヌクレオチドは、適切な方法(例えば、化学的合成)によって合成されて製造され、これは、当業界に周知されている。また、オリゴヌクレオチドは、商業的な出所を介して便利に入手できる。
【0062】
当業者は、プライマーを容易に最適化して確認することができる。最適のプライマー/プローブセットを考案するのに、多数のコンピュータ・プログラム(例えば、Primer-Express)を容易に使用できる。提供される核酸情報(またはaccession numberで公衆利用可能な情報)に基づいて、プライマーとプローブとをそれによって製造できるということは、当業者に自明である。
【0063】
一具体例で、増幅プライマーセット(すなわち、フォワード・プライマー及びリバース・プライマー)は、配列番号1及び2のプライマーセットでありうる。
5’−TCG TCA TTC CAT TAC CTA CC(配列番号1)
5’−TAC TGA TCG ATA ATG CCA GAC GAA(配列番号2)
【0064】
「プライマー二量体(primer dimer)」は、PCRで潜在的に発生しうる副産物(by-product)であり、プライマー内の一連の相補的な塩基によって、互いに部分的に混成化されるプライマー分子によって構成される。その結果、DNAポリメラーゼは、プライマー二量体を増幅することになり、PCR反応液との競争を誘発するので、従って、潜在的にPCR増幅のために標的になるDNA配列の増幅を阻害する。リアルタイムPCRで、プライマー二量体は、敏感度を低下させて正確な定量(quantification)を妨害する。
【0065】
サルモネラの検出のためのプライマー配列が、プライマー二量体の形成に対してスクリーニングされる。PCR反応は、Sybr Green Iの存在下で、フォワード・プライマーセット及びリバース・プライマーセットを使用して行われた。この染料の蛍光放出強度は、デュプレックス(duplex)DNA内に染料が挿入されるとき増加するので、核酸増幅反応で、非特異的なプローブとして提供される。前記反応は、800nMのフォワード・プライマー及びリバース・プライマー、熱安定性DNAポリメラーゼ、及びSybr Green Iを含む適切な反応緩衝液で行われる。温度サイクルリング(cycling)条件は、95℃で5分、その後、95℃で15秒、55℃で15秒、及び72℃で30秒を40回反復する。リアルタイム・データは72℃段階で収集する。増加したSybr Green I蛍光放出の結果は、Applied Biosystems 7500 Fast Real-Time PCR SystemまたはBiorad CFX96 real-time PCR thermocyclerのような適切な装置を使用して、リアルタイムで検出できる。プライマー二量体の形成は、プライマー特異的なテンプレートDNAの存在下で見られるところと類似した、特徴的なs字形の放出プロファイルを引き起こす。本明細書で、用語「アニーリング(annealing)」及び「混成化(hybridization)」は混用され、1つの核酸と他の核酸とが塩基対形成相互作用によって、デュプレックス、トリプレックス(triplex)、または他の高次元構造の形成を引き起こすことを意味する。一具体例で、一次相互作用は、例えば、A/T及びG/Cのように、Watson/Crick及びHoogsteen-type水素結合による塩基特異的である。一具体例でまた、塩基スタッキング(base-stacking)及び疎水性相互作用がデュプレックス安定性に寄与できる。
【0066】
本明細書で使われた用語「実質的に相補的(substantially complementary)」は、配列内で十分に相補的な2個の核酸鎖がアニーリングされ、安定したデュプレックスを形成することを意味する。前記相補性は、完全であることが必要ではない;例えば、2個の核酸間に塩基対のミスマッチ(mismatch)がいくつかほどありえる。しかし、ミスマッチの数字が多すぎて、最小限の厳格な混成化条件ですら混成化が起こらない場合には、前記配列は、実質的に相補的な配列ではない。本明細書で、2個の配列が「実質的に相補的」であると解釈されれば、前記配列は、厳格な混成化条件のように選択された反応条件下で、互いに混成化されうるように、十分に相補的であることを意味する。特異性を達成できる充分の核酸の相補性と混成化との厳格性の関係は、当業界に周知されている。2個の実質的に相補的な鎖は、例えば、完全に相補的であるか、または、例えば、対をなす配列及び対をなさない配列間の差異点を十分に許容する限り、1ないし多数のミスマッチを含むことができる。従って、「実質的に相補的な」配列は、二重鎖区域で、100,95,90,80,75,70,60,50%以下、または前記数字間のいかなる%の塩基対相補性を有する配列を意味しうる。
【0067】
当業者は、所望のサルモネラゲノム配列を増幅できるPCRプライマーを考案する方法を知っているであろう。合成されたオリゴヌクレオチドは、一般的に約55℃のTを有する、20ないし26個の塩基対である。
【0068】
テスト試料でのバクテリア核酸配列のための富化(enrichment)
標的サルモネラ配列を検出する1つの例示的な方法は、食品試料または表面採取物を提供する段階、試料または採取物と成長培地とを混合し、培養してサルモネラの数または群集を増大させる段階(富化(enrichment))、サルモネラ細胞を破砕する段階(溶解(lysis))、及び前記得た溶解物(lysate)を標的サルモネラ配列の増幅及び検出に適用する段階を含む。食品試料は、サケのような魚類、牛乳やタマゴのような酪農製品、家禽類、果物ジュース、粉砕豚肉,豚肉,粉砕牛肉または牛肉のような肉類、ホウレンソウまたはアルファルファスプラウト(alfalfa sprout)のような野菜類、またはピーナッツバターのような加工された堅果類を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
食品汚染に対する検出限界(LOD:limit of detection)は、25gの固体食品または25mlの液体食品、または限定された空間の表面で検出されうるコロニー形成ユニット(CFU:colony forming unit)の数に係わって説明される。定義によれば、コロニー形成ユニットは、生きているバクテリア数の測定である。死んているか、または生きているあらゆる細胞を数える間接的な顕微鏡計数法とは異なり、CFUは、生きている細胞を測定する。1 CFU(1つのバクテリア細胞)は、成長して許容される条件下で、アガール・プレート上に1つのコロニーを形成する。United States Food Testing Inspection Serviceでは、最小LODを、固体食品25gまたは液体食品25mLの、固体食品当たり1 CFUまたは表面区域当たり1 CFUと定義している。
【0070】
実際、1 CFUで、食品試料または表面を反復的に接種し、富化過程で、バクテリアを生き残らせることは不可能である。かような問題は、一つまたはさまざまな標的レベルに試料を接種し、最適確数法(MPN:most probable number)と呼ばれる統計的評価を使用して結果を分析することで克服されうる。
【0071】
例えば、サルモネラ培養は、分光測定計で吸光度を測定することによって、具体的な細胞密度に育てることができる。前記標的の10倍連続的希釈を介して、アガール培地に塗抹し、生きているバクテリアを計数する。かようなデータは、塗抹された細胞の密度に対するCFU/体積に係わる標準曲線を生成するのに使われる。MPNが有意であるために、さまざまな接種レベルでの試験試料が分析される。富化及び抽出後に少量の試料がリアルタイム分析のために除去される。最終目標は、25%ないし75%の間(すなわち、CataCleaveプローブを使用し、逆転写酵素PCRを利用したアッセイで、陽性試料テストの25%ないし75%の間であり、これついては、下記で説明する)の有効化率(fractional recovery)を達成するのである。かような有効化率パーセントを選択する理由は、固体食品の試料25g、液体食品の試料25mL、または表面の限定された空間に対して、0.3 CFUないし1.375 CFU間のMPN値に変換されるためである。それらMPN値は、要求される1 CFU/試料のLODにまとめることができる。実際、それらの有効化率を達成するために、希釈された接種源の体積を測定(標準曲線に基づく)することが可能である。
【0072】
核酸テンプレートの製造
細胞を溶解させるための試薬は、pH約6ないし8の緩衝液、約0.125%ないし約2%濃度の両性イオンデタージェント、約0.3ないし約2.5mg/ml濃度のアジ化物を含むことができる。サルモネラまたは大腸菌のようなグラム陰性細菌の溶解のために、前記溶解試薬は、選択的に、プロテイナーゼKのようなプロテアーゼを含むことができる。しかし、プロテイナーゼKのようなプロテアーゼは、グラム陽性細菌からPCRテンプレート核酸を準備するためにも要求される。
【0073】
一具体例で、1x溶解試薬は、12.5mMのTrisアセテートまたはTris−HClまたはHEPES(pH=7ないし8)、0.25%(w/v)CHAPS、0.3125mg/mlアジ化ナトリウムを含むように製造される。その後、45mlの1x溶解試薬を5mlの富化試料に添加し、55℃で15分間インキュベーションする。
【0074】
グラム陰性細菌の溶解のために、1mg/mlのプロテイナーゼKが、前記溶解試薬に添加されうる。55℃で15分間インキュベーションした後、プロテイナーゼKを95℃で10分間不活性化させ、高効率のPCRまたは逆転写PCR分析に適した、実質的に蛋白質フリーの溶解物を製造する。
【0075】
サルモネラ標的核酸配列のPCR増幅
プライマーが選択され、標的核酸を含む細胞フリー溶解物が準備されれば(実施例参照)、核酸増幅は、重合酵素連鎖反応(PCR)、核酸配列基盤増幅(NASBA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)及びローリングサークル増幅(RCA)を含んだ多様な方法によって行われうる。前記重合酵素連鎖反応は、特異的な標的DNA配列を増幅するのに最も一般的に使われる方法である。
【0076】
「重合酵素連鎖反応(polymerase chain reaction)」または「PCR」は、一般的に所望するヌクレオチド配列をインビトロ(in vitro)で増幅する方法を意味する。前記過程は、米国特許第4,683,202号明細書、同第4,683,195号明細書、同第4,800,159号明細書及び同第4,965,188号明細書に詳細に説明されており、前記内容は、全体として本明細書に挿入される。一般的に、前記PCR過程は、2倍モル濃度以上過量の、前記二重鎖標的配列の反対鎖に相補的なオリゴヌクレオチド・プライマーを、所望する標的配列を含む反応混合物に入れる段階からなる。前記反応混合物は、DNAポリメラーゼの存在下で、温度サイクルリング(thermal cycling)プログラムに適用し、前記DNAプライマーセット間の所望する標的配列を増幅させる。
【0077】
一具体例で使われうるサルモネラ特異的プライマーは、配列番号1または2のDNA配列を有することができる。
【0078】
本発明の一具体例で使われうるプローブ(時には「CataCleaveプローブ」を意味する)は、下記配列を有することができる:
5’−/FAM/CGATCAGrGrArArATCAACCAG/IABFQ)(配列番号3)が、配列番号1及び2のプライマーセットと共に使われうる(前記小文字「r」は、RNA塩基を意味する(すなわち、rGはリボグアノシンである)。
【0079】
本明細書で使われた用語、「PCR切片(PCR fragment)」または」逆転写酵素PCR切片(reverse transcriptase−PCR fragment)」または「アンプリコン(amplicon)」は、特定の標的核酸の増幅によって生成されるポリヌクレオチド分子(または、集合的に分子の多数)を意味する。PCR切片は、一般的に、DNA PCR切片を意味するが、これに限定されるものではない。PCR切片は、単一鎖または二重鎖、または任意の濃度比によるその混合物でありうる。PCR切片または逆転写酵素PCR切片は、100−500個のヌクレオチドまたはそれ以上でありうる。
【0080】
増幅「緩衝液(buffer)」は、増幅反応に添加され、前記増幅反応を調節することにより、前記増幅反応の一つ以上の要素の安定性、活性及び/または寿命を変形させる化合物である。本発明の前記緩衝液は、PCR増幅及びRNase H切断活性と両立しうる。緩衝液の例は、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MOPS(3−(N−モルフォリノ)−プロパンスルホン酸)、及び酢酸塩またはリン酸塩を含む緩衝液などを含むが、それらに限定されるものではない。また、PCR緩衝液は、一般的に、約70mM以下のKCl及び約1.5mMまたはそれ以上のMgCl、約50ないし200μMのそれぞれのdATP,dCTP,dGTP及びdTTPを含むことができる。本発明の緩衝液は、効率的な逆転写酵素PCRまたはPCR反応を最適化させるために添加物を含むことができる。
【0081】
添加物は、前記組成物の一つ以上の要素の安定性、活性及び/または寿命を変形させる組成物に添加される化合物である。一具体例で、前記組成物は、増幅反応組成物である。一具体例で、添加物は、汚染された酵素の不活性化、蛋白質フォールディング(folding)の安定化、及び/または凝集の減少に影響を及ぼす。増幅反応に含まれうる添加物の例は、ベタイン、ホルムアミド、KCl、CaCl、MgOAc、MgCl、NaCl、NHOAc、NaI、Na(CO、LiCl、MnOAc、NMP、トレハロース、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、グリセロール、エチレングリコール、ジチオトレイトール(「DTT」)、ピロホスファターゼ(Thermoplasma acidophilum無機ピロホスファターゼ(TAP)を含むが、これに限定されるものではない)、ウシ血清アルブミン(「BSA」)、プロピレングリコール、グリシンアミド、CHES、パーコール(percoll)、アウリントリカルボキシル酸、Tween 20、Tween 21、Tween 40、Tween 60、Tween 85、Brij 30、NP−40、Triton X−100、CHAPS、CHAPSO、Mackernium、LDAO(N−ドデシル−N,N−ジメチルアミン−N−オキシド)、Zwittergent 3−10、Xwittergent 3−14、Xwittergent SB 3−16、Empigen、NDSB−20、T4G32、E.Coli SSB、RecA、ニッキング・エンドヌクレアーゼ(nicking endonuclease)、7−デアザG、dUTP、陰イオンデタージェント(anionic detergent)、陽イオンデタージェント(cationic detergent)、非イオンデタージェント(non-ionic detergent)、zwittergent、ステロール、浸透調節物質(osmolyte)、陽イオン、及び増幅の効率を変化させることができるその他の化合物,蛋白質または補助因子を含むが、これらに限定されるものではない。一具体例で、2以上の添加物が増幅反応に含まれる。前記添加物が、RNase Hの活性を妨害しないならば、添加物は、プライマー・アニーリングの選択性を向上させるために選択的に添加されうる。
【0082】
本明細書で、用語「増幅ポリメラーゼ活性(amplifying polymerase activity)」または「増幅活性(amplifying activity)」は、熱安定性DNAポリメラーゼと関連した活性と共に、核酸増幅と関連した酵素活性を意味する。
【0083】
本明細書で使われた用語である、酵素に適用される「熱安定性(thermostable)」は、上昇した温度(例えば、55℃以上)で生物学的活性を維持したり、または加熱及び冷却の反復されたサイクルによって、生物学的活性を維持する酵素を意味する。熱安定性ポリヌクレオチドポリメラーゼは、特にPCR増幅反応で使われうる。
【0084】
本明細書で使われた用語「熱安定性ポリメラーゼ(thermostable polymerase)」は、熱に相対的に安定しており、それぞれのPCRサイクル前に、酵素を添加する必要性を除去した酵素である。熱安定性ポリメラーゼの非制限的な例は、好熱性バクテリアであるThermus aquaticus(Taqポリメラーゼ)、Thermus thermophilus(Tthポリメラーゼ)、Thermococcus litoralis(TliポリメラーゼまたはVENTポリメラーゼ)、Pyrococcus furiosus(PfuポリメラーゼまたはDEEPVENTポリメラーゼ)、Pyrococcus woosii(Pwoポリメラーゼ)並びに他のPyrococcus種、Bacillus stearothermophilus(Bstポリメラーゼ)、Sulfolobus acidocaldarius(Sacポリメラーゼ)、Thermoplasma acidophilum(Tacポリメラーゼ)、Thermus rubber(Truポリメラーゼ)、Thermus brockianus(DYNAZYMEポリメラーゼ)、Thermotoga neapolitana(Tneポリメラーゼ)、Thermotoga maritime(Tma)並びにThermotoga属の他種(Tspポリメラーゼ)、及びMethanobacterium thermoautotrophicum(Mthポリメラーゼ)から分離したポリメラーゼを含むことができる。前記PCR反応は、さらに効率的な標的配列の増幅を引き起こす相補的な性質を有する一つ以上の熱安定性ポリメラーゼ酵素を含むことができる。例えば、高進行性(processivity)(広いヌクレオチド区画をコピーできる能力)を有するヌクレオチドポリメラーゼは、校正能(proofreading capability)(標的核酸配列伸張の間、エラーを正しく修正できる能力)を有する他のヌクレオチドポリメラーゼと相互補完されうるので、高フィデリティ(fidelity)を有する長い標的配列を複製できるPCR反応を生成できる。前記熱安定性ポリメラーゼは、野生型として使われうる。代案として、前記ポリメラーゼは、前記酵素の切片を含んだり、または前記PCR反応を増進させることができる有利な特徴を提供する突然変異を含むように変形されうる。一具体例で、前記熱安定性ポリメラーゼは、Taqポリメラーゼでありうる。AmpliTaq、AmpliTaq Stoffel fragment、SuperTaq、SuperTaq plus、LA Taq、LApro Taq及びEXTaqを含む、向上した特徴を有したTaqポリメラーゼの多様な変形体が知られている。
【0085】
サルモネラRNA標的核酸配列の逆転写酵素PCR増幅
遺伝子発現を研究するために最も、広範囲に使われる技法のうちの一つが、PCRによる増幅のため、にmRNA配列をテンプレートとして、第1鎖cDNAを活用することである。たびたびPCRまたは逆転写酵素PCRとして解釈される前記方法は、PCR過程の高い敏感性及び特異性を利用し、RNAの検出及び定量に広範囲に使われる。
【0086】
本明細書で使われた用語、「逆転写酵素活性(reverse transcriptase activity)」は、単一鎖RNAテンプレートから、相補的なDNA鎖またはcDNAの合成を触媒するRNA依存性DNAポリメラーゼと関連した活性を意味する。
【0087】
終点(end-point)またはリアルタイム・アッセイとして行われる前記逆転写酵素PCR過程は、2段階の分離された分子的合成を含む:(i)RNAテンプレートからcDNAの合成、及び(ii)PCR増幅を介して新しく合成されたcDNAの複製。逆転写酵素PCRとたびたび関連される技術的な問題を処理するための試みであり、前記過程の3種の基本的な段階を考慮して、多数のプロトコルが開発された:(a)RNAの変性(denaturation)及びリバース・プライマーの混成化、(b)cDNAの合成、及び(c)PCR増幅。いわゆる「連結されていない(uncoupled)」逆転写酵素PCR過程(例えば、二段階(two step)逆転写酵素PCR)で逆転写は、逆転写酵素活性のための最適の緩衝液条件を使用し、独立的な段階として行われる。cDNA合成に続き、前記反応は、TaqDNAポリメラーゼ活性に最適条件に、MgCl及びデオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)濃度が低下するように希釈した後、PCRを標準条件(米国特許第4,683,195号明細書及び同第4,683,202号明細書を参照)によって行う。これに対し、「連結された(coupled)」逆転写酵素PCR法は、逆転写酵素及びTaq DNAポリメラーゼ活性のために、共通の緩衝液を使用する。第1バージョンで、リバース・プライマーのアニーリングは、酵素の添加以前に分離された段階であり、その後、単一反応容器に添加する。他のバージョンで、逆転写酵素活性は、熱安定性Tth DNAポリメラーゼの構成要素である。アニーリング及びcDNA合成は、Mn2+の存在下で行われ、その後PCRは、キレート試薬によって、Mn2+が除去された後、Mg2+の存在下で行われる。最後に、前記「連続的な(continuous)」方法(例えば、ワンステップ(one step)逆転写酵素PCR)は、前記逆転写酵素PCR 3段階を、成分または酵素添加のための反応チューブの開放を防止する1つの連続的な反応に統合する。連続的な逆転写酵素PCRは、熱安定性Taq DNAポリメラーゼ及びTthポリメラーゼの逆転写酵素活性を使用する単一酵素システム、及び開始温度が65℃であるAMV逆転写酵素並びにTaq DNAポリメラーゼを使用する2酵素システムとして説明される。RNA変性段階は省略す
る。
【0088】
リアルタイムで、最初の段階である逆転写PCRは、テンプレート特異的なDNAプライマーの一つを使用し、相補的なDNA鎖を生成する。伝統的なPCR反応で、この生成物は変成され、第2テンプレート特異的なプライマーが前記cDNAに結合し、デュプレックスDNAを形成するように拡張される。この生成物は、温度サイクルリングの次の段階で増幅される。最も高い敏感性を維持するために、cDNAの合成前に、前記RNAが分解されないことが重要である。RNA:DNAハイブリッドは、RNase Hの基質になることができるために、反応緩衝液でRNase Hの存在は、前記過程の最初の段階で形成されるRNA:DNAハイブリッドの所望しない分解を引き起こすであろう。かような問題を克服する2種の主要方法が存在する。一つは、DNA変性段階開始の高温度の間に溶けうるワックスのような膜を使用することによって、逆転写反応の残りからRNase Hを物理的に分離することである。第二の方法は、一般的に、45ないし55℃である逆転写温度で不活性化されるように、RNase Hを変形させることである。RNase Hを抗体と反応させたり、または可逆的な化学変形を含んださまざまな方法が当業界に知られている。例えば、本発明で使われたホットスタート(hot start)RNase H活性は、RNase Hをアルカリ性条件下で、シスアコニット酸無水物と反応させた後で生成された可逆的な化学変形を有するRNase Hでありうる。変形された酵素が、Tris基盤の緩衝液と共に反応で使われるとき、温度を95℃に上げ、溶液のpHを低くすれば、RNase H活性は回復される。この方法は、逆転写の開始前に、反応混合物内にRNase Hを含む。
【0089】
本発明で使われうるRNase H酵素及びホットスタートRNase H酵素の追加的な例は、Walderらの米国特許出願第2009/0325169号に開示されている。
【0090】
ワンステップ逆転写酵素PCRは、連結されていない逆転写酵素PCRに比べ、いくつかの利点を提供する。ワンステップ逆転写酵素PCRは、連結されていない逆転写酵素PCR(例えば、2段階の反応間で、成分または酵素の添加のために、反応チューブを開くことなど)に比べ、反応混合物試薬及び核酸産物の操作(handling)が少なく要求され、従って、労働強度が小さく、要求される時間が短縮される。ワンステップ逆転写酵素PCRはまた、試料を少なく要求し、汚染の危険性をを低減させることができる。ワンステップ逆転写酵素PCRの敏感性及び特異性は、与えられた試料または病原性RNAの検出において、一つないしいくつかの遺伝子の発現レベルを研究するのに適していると証明されている。一般的に、かような過程は、cDNA合成を始めるために、遺伝子特異的なプライマーの使用を制限する。
【0091】
それら逆転写酵素PCR技法と組み合わせわせたリアルタイム検出によるPCR反応の動力学を測定する能力は、高敏感度を有するRNAコピー数を正確であって精密に決定させる。これは、下記で説明される5’蛍光発生ヌクレアーゼ・アッセイ(Taq−Man)またはエンドヌクレアーゼ・アッセイ(CataCleave)のような、蛍光二重標識された混成化プローブ技法による増幅過程の間、PCR産物の蛍光モニタリング及び測定を介して、逆転写酵素PCR産物を検出することによって可能である。
【0092】
CataCleaveプローブを利用したサルモネラ標的核酸配列のリアルタイムPCR
増幅後のアンプリコン検出は、PCR過程の間、増幅をモニタリングするために開発された。かような方法は、一般的に蛍光標識プローブを、新しく合成されたDNAまたは二重鎖DNA間に挿入されて蛍光放出が増大する染料に結合させる。
【0093】
前記プローブは、一般的に標的がない場合、2つの発色団間で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET:fluorescence resonance energy transfer)によって、供与体放出が消滅されうるように設計される。供与体発色団(donor chromophore)は、励起状態(excited state)で、発色団対が近距離に位置するとき、受容体発色団(acceptor chromophore)にエネルギーを伝達する。かような伝達は、常に非放射線で、対極子・対極子結合(dipole-dipole coupling)を介して起こる。発色団間の距離を十分に延長させるあらゆる工程は、FRET効率を低下させ、供与体発色団放出を放射能的に検出できることになる。一般的な受容体発色団は、FAM、TAMRA、VIC、JOE、Cy3、Cy5、及びTexas Redなどを含む。受容体発色団は、供与体の放出スペクトルと励起スペクトル(excitation spectra)とが重なることができるように選択される。例えば、かような結合対には、FAM−TAMRAがある。また、広範囲な供与体をクエンチングする非蛍光受容体がありえる。それ以外にも、適した供与体・受容体FRET対の他の例は、当業者に周知されている。
【0094】
PCRのリアルタイム検出のために使われうるFRETプローブの共通的な例は、分子ビーコン(molecular beacon)、Taq−Manプローブ(例えば、米国特許第5,210,015号明細書及び同第5,487,972号明細書)、及びCataCleaveプローブ(例えば、米国特許第5,763,181号明細書)を含む。分子ビーコンは、単一鎖のオリゴヌクレオチドであり、非結合状態では前記プローブは、供与体と受容体との発色団と近接しており、供与体放出を低減させることができる二次構造を形成するように考案されている。適切な反応温度で、ビーコンは構造が解除され、特にアンプリコンに結合する。いったん解除されれば、供与体と受容体との発色団間の距離が拡大され、FRETが変わることになり、特別な機器を利用して供与体放出をモニタリングできることになる。Taq−Man及びCataCleave技法は、利用されるFRETプローブが切断され、供与体と受容体との発色団がFRETを変えるのに十分なほどに離れるという点で、分子ビーコンとは異なる。
【0095】
Taq−Man技法は、5’末端に供与体発色団で標識され、3’末端に受容体発色団で標識された単一鎖オリゴヌクレオチドプローブを利用する。増幅のために利用される前記DNAポリメラーゼは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性(exonuclease activity)を有さねばならない。Taq−Manプローブは、プライマーが結合するとき、共にアンプリコンの1本の鎖に結合される。DNAポリメラーゼがプライマーを伸張させる間、ポリメラーゼは、結局結合されたTaq−Manプローブと対向するであろう。このとき、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性が、5’末端から始まり、順次にTaq−Manプローブを分解することになるのである。前記プローブが分解されることにより、プローブを含むモノヌクレオチドは、反応緩衝液として出てくる。供与体が受容体から拡散されることにより、FRETは変わる。供与体からの放出は、プローブ切断を確認するためにモニタリングされる。Taq−Manの作用のために、特別のアンプリコンは、PCRのサイクルごとに、ただ一度ずつ検出されうる。Taq−Man標的部位を介したプライマーの伸張は、二重鎖産物を生成し、アンプリコンが次のPCRサイクルで変性されるまで、Taq−Manプローブの追加結合を防止する。
【0096】
本明細書に参照として結合された米国特許第5,763,181号明細書の内容は、他のリアルタイム検出方法(CataCleaveと命名)を開示している。CataCleave技法は、プローブの切断が、ポリメラーゼ活性のない二次酵素によって行われるという点で、Taq−Manと異なる。CataCleaveプローブは、例えば、制限酵素またはRNaseのようなエンドヌクレアーゼの標的分子内に配列を有している。一具体例で、CataCleaveプローブは、プローブの5’末端及び3’末端は、DNAから構成され、切断部位は、RNAから構成されているキメラ構造を有している。前記プローブのDNA配列部分は、両末端や内部でFRET対で標識される。PCR反応は、RNA−DNA二重鎖のRNA配列部分を特異的に切断できるRNase H酵素を含む。切断後、プローブの半分いずれも、反応温度で標的アンプリコンから解離され、反応溶液に分散される。供与体及び受容体が分離されるほど、FRETは、Taq−Manプローブのような方法に変わり、供与体放出は、モニタリングされうる。切断及び解離は、さらなるCataCleave結合のための部位を再生産することになる。かような方法で、プライマーがCataCleaveプローブ結合部位を介して伸張するまで、単一アンプリコンが標的とさせたり、またはプローブ切断を何回も反復できるようにする。
【0097】
サルモネラ特異的なCataCleaveプローブの標識
用語「プローブ(probe)」は、例えば、標的核酸配列のような特異的な核酸配列の相補的な領域を有する配列特異的な方法で混成化されるように考案された特異的な部分を含むポリヌクレオチドを含む。一具体例で、前記オリゴヌクレオチド・プローブは、15ないし60個のヌクレオチド範囲である。さらに望ましくは、前記オリゴヌクレオチド・プローブは、18ないし30個のヌクレオチド範囲である。本発明のオリゴヌクレオチド・プローブの正確な配列及び長さは、前記プローブが結合される標的ポリヌクレオチドの性質によって部分的に変わる。結合位置及び長さは、特定の具体例で、適切なアニーリング及び変成の特性をなすために多様でありえる。かような考案選択のための指針は、Taq−manアッセイまたはCataCleaveを開示する文献である米国特許第5,763,181号明細書、同第6,787,304号明細書、及び同第7,112,422号明細書に見出され、前記内容は全体として、本明細書に参照として挿入される。
【0098】
本明細書で使われる用語「標識(label)」または「検出可能な標識(detectable label)」は、共有結合または非共有結合によってプローブに結合された蛍光色素化合物を含むCataCleaveプローブの任意の標識を意味しうる。
【0099】
本明細書で使われる用語「蛍光色素(fluorochrome)」は、放出になる光よりさらに短い波長の光によって励起(excitation)される光を放出する蛍光化合物を意味する。用語「蛍光供与体(fluorescent donorまたはfluorescence donor)」は、本発明に開示されたアッセイで測定される光を放出する蛍光色素を意味する。さらに具体的に、蛍光供与体は、蛍光受容体によって吸収される光を提供する。用語「蛍光受容体」は、蛍光供与体から放出されるエネルギーを吸収する第2蛍光色素またはクエンチング分子を意味する。第2蛍光色素は、蛍光供与体から放出されるエネルギーを吸収し、蛍光供与体によって放出される光よりさらに長い波長の光を放出する。クエンチング分子は、蛍光供与体によって放出されたエネルギーを吸収する。
【0100】
いかなる発光分子、望ましくは、蛍光色素及び/または蛍光クエンチャ(quencher)であっても、本発明の実施に使われうる。前記発光分子は、例えば、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸、フルオレセイン、Oregon Green 488、Oregon Green 514、テトラメチルロダミン、ロダミンX、テキサスレッド染料、QSY 7、QSY 33、Dabcyl、BODIPY FL、BODIPY 630/650、BODIPY 6501665、BODIPY TMR−X、BODIPY TR−X、ジアルキルアミノクマリン、Cy5.5、Cy5、Cy3.5、Cy3、DTPA(Eu3+)−AMCA及びTTHA(Eu3+)AMCAを含むが、これらに限定されるものではない。
【0101】
一具体例で、前記オリゴヌクレオチド・プローブの3’末端ヌクレオチドは、遮断されているか、または核酸ポリメラーゼによって拡張されないようになっている。かような遮断は、前記プローブの末端3’地域に、リポータ(reporter)分子またはクエンチャ分子を付着させることによって便利に行われうる。
【0102】
一具体例で、リポータ分子は、連結モイエティを介して、前記プローブの3’末端または5’末端の端への付着のために由来した蛍光有機染料である。望ましくは、クエンチャ分子は、本発明の具体例によって、蛍光でもあってもよく、または蛍光でなくともよい有機染料である。例えば、本発明の望ましい具体例で、前記クエンチャ分子は、非蛍光である。一般的に、クエンチャ分子が蛍光であるか、または非放射性の分解によって、リポータから伝えられるエネルギーを単純に放出するものであるならば、前記クエンチャの吸収バンドは、前記リポータ分子の蛍光放出の吸収バンドと実質的に重なることになる。本明細書で、励起されたリポータ分子から吸収されるが、放射性のエネルギーを放出させない非蛍光クエンチャ分子を、発色性分子(chromogenic molecule)と解釈できる。
【0103】
リポータ・クエンチャ対は、例えば、フルオレセイン及びロダミン染料を含むキサンテン染料(xanthene dye)から選択されうる。オリゴヌクレオチドの結合のための結合部位として、または結合機能性(functionality)として使われうるフェニル・モイエティ上に置換基を有する、それら化合物の多様な適切な形態を広く商業的に入手できる。蛍光化合物の他の基は、アルファ位置またはベータ位置にアミノ基を有するナフチルアミンである。前記ナフチルアミノ化合物は、1−ジメチルアミノナフチル−5−スルホネート、1−アニリノ−8−ナフタレンスルホネート及び2−p−トルイジニル−6−ナフタレンスルホネートのような化合物を含む。他の染料は、3−フェニル−7−イソシアナートクマリン、9−イソチオシアナートアクリジン及びアクリジンオレンジのようなアクリジン;N−(p−(2−ベンゾオキサゾリル)フェニル)マレイミド;ベンゾオキサジアゾール、スチルベン、ピレンなどを含む。
【0104】
一具体例で、リポータ分子及びクエンチャ分子は、フルオレセイン及び非蛍光クエンチャ染料から選択される。
【0105】
オリゴヌクレオチドの5’末端または3’末端に、リポータ分子またはクエンチャ分子を付着させる多様なリンキング・モイエティ(linking moiety)及び方法論は、下記参考文献に例示されている:Eckstein,editor,Oligonucleotide and Analogues:A Practical Approach (IRL Press,Oxford,1991);Zuckerman et al.,Nucleic Acid Research,15:5305-5321 (1987) (3’thiol group on oligonucleotide);Sharma et al.,Nucleic Acid Research,19:3019 (1991) (3’sulfhydryl);Giusti et al.,PCR Method and Applications,2:223-227 (1993) and Fung et al.,米国特許第4,757,141号明細書 (5’phosphoamino group via Aminolink.II available from Applied Biosystems,Foster City,Calif.) Stabinsky,米国特許第4,739,044号明細書 (3’aminoalkylphosphoryl group);Agrawal et al.,Tetrahedron Letters,31:1543-1546 (1990) (attachment via phosphoramidate linkages);Sproat et al.,Nucleic Acid Research,15:4837 (1987) (5’mercapto group);Nelson et al.,Nucleic Acid Research,17:7187-7194 (1989) (3’amino group) など。
【0106】
ロダミン及び非蛍光クエンチャ染料はまた、固相合成の開始段階で、オリゴヌクレオチドの3’末端に便利に付着されうる(例えば、Wooら、米国特許第5,231,191号明細書、Hobbs、Jr.,米国特許第4,997,928号明細書参照)。
【0107】
固体支持体へのサルモネラ特異的CataCleaveプローブの付着
本発明の一具体例で、オリゴヌクレオチド・プローブは、固体支持体に付着されうる。異なるプローブは、固体支持体に付着され、試料内の異なる標的配列を同時に検出するのに使われうる。異なる蛍光波長を有するリポータ分子は、異なるプローブに使われ、従って、異なるプローブに対する混成化が別個に検出されることを可能にする。
【0108】
オリゴヌクレオチド・プローブの固定のための固体支持体の望ましい形態の例は、ポリスチレン、アビジン・コーティングされたポリスチレン・ビード・セルロース、ナイロン、アクリルアミド・ゲル及び活性化されたデキストラン、統制された孔隙ガラス(CPG:controlled pore glass)、ガラスプレート及び高交差結合(highly cross-linked)ポリスチレンを含む。かような固体支持体は、それらの化学的安定性、機能化(functionalization)の容易性、及び良好に規定された表面面積のために混成化並びに診断研究で望ましい。統制された孔隙ガラス(500Å、1,000Å)及び非膨脹高交差結合ポリスチレン(1,000Å)のような固体支持体が、オリゴヌクレオチド合成とのそれらの親和性(compatibility)ために特に望ましい。
【0109】
オリゴヌクレオチド・プローブは、固体支持体に多様な方式で付着されうる。例えば、前記プローブは、前記プローブの3’末端または5’の末端ヌクレオチドを、前記固体支持体に付着させることによって、前記固体支持体に付着されうる。しかし、前記プローブは、前記プローブを前記固体支持体から距離をおかさせるリンカによって、前記固体支持体に付着されうる。前記リンカは、最も望ましくは、30原子長以上、さらに望ましくは、50原子長以上である。
【0110】
固体支持体に固定されたプローブの混成化は、一般的に、前記プローブが30原子以上、さらに望ましくは、50原子以上によって、前記固体支持体から分離されることを必要とする。かような分離をなすために、リンカは、一般的に前記リンカと3’ヌクレオシドとの間に位置したスペーサを含む。オリゴヌクレオチド合成のために、前記リンカ・アーム(arm)は、普通塩基性試薬で切断され、オリゴヌクレオチドを前記固体支持体から自由にさせられるエステル結合によって、3’ヌクレオシドの3’−OHに付着される。
【0111】
オリゴヌクレオチド・プローブを固体支持体に付着させるのに使用できる多種のリンカが当業界に公知されている。リンカは、標的配列が固体支持体に付着されたプローブに混成化されることを顕著に妨害しない任意の化合物から形成されうる。リンカは、自動化された合成によってリンカに容易に添加されうる同種重合体オリゴヌクレオチドから形成されうる。代案として、機能化されたポリエチレングリコールのようなポリマーが、前記リンカとして使われうる。かようなポリマーは、それらがプローブの標的オリゴヌクレオチドへの混成化を顕著に妨害しないために、同種重合体オリゴヌクレオチドに比べて望ましい。ポリエチレングリコールは、それが商業的に購入可能であり、有機及び水性の培地いずれにも溶解可能であり、機能化に便利であり、かつオリゴヌクレオチド合成及び合成後の状態下で完全に安定しているために、特に望ましい。
【0112】
固体支持体、リンカ及びプローブ間の結合は、高温度での塩基条件下で、塩基保護基の除去の間、望ましくは切断されない。望ましい結合の例は、カルバメート結合及びアミド結合を含む。プローブの固定(immobilization)は当業界に周知されており、業界の同業者は、固定条件を決定できる。
【0113】
本方法の一具体例によれば、混成化プローブは、固体支持体上に固定される。オリゴヌクレオチド・プローブは、混成化に有利な条件下で、核酸の試料と接触される。リポータ分子の蛍光信号は、試料との接触前後に測定される。標的配列に混成化されたとき、プローブ上のリポータ分子が、さらに大きい蛍光信号を示したために、プローブが試料と接触された後の蛍光信号の増大は、プローブが試料内の標的配列に混成化されたということを示す。非混成化状態では、蛍光標識は、クエンチャによって抑制される。標的と混成化されれば、蛍光標識は、クエンチャから分離されて蛍光を発する。
【0114】
また、固体支持体への混成化プローブの固定は、プローブに混成化された標的配列を試料から容易に分離させる。その後の段階で、分離された標的配列を固体支持体から分離させ、研究者の特別な必要性によって、当業界に周知の方法によって、加工(例えば、精製、増幅)されうる。
【0115】
CataCleaveプローブを使用したSalmonella標的核酸配列のリアルタイム検出
前記標識されたオリゴヌクレオチド・プローブは、試料内でサルモネラ標的核酸配列のリアルタイム検出のためのプローブとして使われうる。
【0116】
CataCleaveオリゴヌクレオチド・プローブは、まず選択されたサルモネラ標的配列を含むPCRアンプリコン内で発見される配列と相補的なDNA配列及びRNA配列で合成される。一具体例で、前記プローブは、FRET対、例えばプローブの一末端は、フルオレセイン分子で、他端は、非蛍光クエンチャ分子で標識される。従って、前記プローブが、PCRアンプリコンと混成化されたとき、RNase H活性によって切断されうるRNA:DNAヘテロデュプレックス形態が形成される。
【0117】
RNase Hは、RNA−DNA混成体で、RNAを加水分解する。この酵素は、初めはウシの胸腺で確認されたが、その後、多様な生物で発見された。RNase H活性は、真核生物及びバクテリアに偏在して(ubiquitous)現れる。たとえRNase Hが多様な分子量及び核溶解活性の蛋白質ファミリによって構成されるとしても、基質必要物は、多様な同型(isotype)間に類似して現れる。例えば、これまで研究されたほとんどのRNase Hは、エンドヌクレアーゼとして機能し、5’ホスフェート末端及び3’ヒドロキシル末端を有する切断生産物を生産するために、二価陽イオン(例えば、Mg2+、Mn2+)を必要とする。
【0118】
E.coli由来のRNase HIは、RNase Hファミリのうち最も周知されている。RNase HI以外にも、2番目のE.Coli RNase H、RNase HIIがクリーニングされて特性が確認された(Itaya,M.,.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990,87,8587-8591)。RNase HIは、155個のアミノ酸からなっているのに比べて、これは、213個のアミノ酸からなっている。E.Coli RNase HIIは、E.coli RNase HIと17%の相同性(homology)を示すのみである。S.typhimuriumからクリーニングされたRNase Hは、E.coli RNase HIと11個の位置で異なるだけであり、155個のアミノ酸からなっている(Itaya,M.and Kondo K.,Nucleic Acids Res.,1991,19,4443-4449)。
【0119】
RNase H活性を示す蛋白質がクリーニングされ、いくつかのウイルス、他のバクテリア及び酵母から精製された(Wintersberger,U.Pharmac.Ther.,1990,48,259-280)。多くの場合において、RNase H活性を有する蛋白質が、RNase Hが他の酵素、普通DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼのアミノ末端またはカルボキシ末端に融合された融合蛋白質として現れる。RNase Hドメインは、大腸菌RNase HIと高い相同性があると持続的に明らかにされたが、他のドメインが実質的に多様であり、融合蛋白質の分子量及び他の特性が非常に多様である。
【0120】
高等真核生物で、RNase Hの2つのクラスは、分子量、二価陽イオンの効果、スルフヒドリル(sulfhydryl)試薬に対する感受性、及び免疫学的交差反応性の差に基づいて定義されてきた(Busen et al.,Eur.J.Biochem.,1977,74,203-208)。RNase HI酵素は、68ないし90kDa範囲の分子量を有し、Mn2+またはMg2+によって活性化され、かつスルフヒドリル試薬に無感受性であると報告されている。反対に、RNase HII酵素は、31ないし45kDa範囲の分子量を有し、Mg2+を必要とし、スルフヒドリル試薬に高感受性を示し、Mn2+によって抑制されると報告されている(Busen,W.,and Hausen,P.,Eur.J.Biochem.,1975,52,179-190;Kane,C.M.,Biochemistry,1988,27,3187-3196;Busen,W.,J.Biol.Chem.,1982,257,7106-7108)。
【0121】
RNase HII特性を有する酵素が、ヒト胎盤からほぼ均質に精製された(Frank et al.,Nucleic Acids Res.,1994,22,5247-5254)。この蛋白質は、約33kDaの分子量を有し、6.5ないし10のpH範囲で活性化され、最適pHが8.5ないし9であると報告されている。前記酵素は、Mg2+を必要とし、Mn2+及びn−エチルマレイミドによって抑制されると報告されている。切断反応の生成物は、3’ヒドロキシル末端及び5’ホスフェート末端を有する。
【0122】
一具体例によれば、リアルタイム核酸増幅は、熱安定性核酸ポリメラーゼ、RNase H活性、サルモネラ標的ポリヌクレオチドに混成化されうるPCR増幅プライマー対、及び標識されたCataCleaveオリゴヌクレオチド・プローブの存在下で、標的ポリヌクレオチドで行われる。リアルタイムPCR反応の間、RNase Hによるプローブの切断は、蛍光クエンチャから蛍光供与体を分離させ、試料内のサルモネラ標的DNA配列のリアルタイム検出によって、プローブの蛍光をリアルタイムで増大させる。
【0123】
一具体例で、リアルタイム核酸増幅は、約40回以下のPCR増幅サイクルで、単一標的DNA分子のリアルタイム検出を可能にする。
【0124】
キット
本発明はまた、試料内のSalmonella標的核酸配列のリアルタイム検出のための一つ以上の反応試薬を有する包装単位を含むキット形態を提供する。また前記キットは、一つ以上の下記の品目を含むことができる:緩衝液、使用説明書、及び陽性対照群または陰性対照群。キットは、本明細書に記述された方法を行うために、適切な割合で共に混合された反応試薬の容器を含むことができる。反応試薬容器は、望ましくは、前記方法を行うときに測定する段階を省略することができるように、単位数量の反応試薬を含む。
【0125】
前記キットは、pH約6ないし8の緩衝液、約0.125%ないし約2%濃度の両性イオンデタージェント、約0.3ないし約2.5mg/ml濃度のアジ化物を含む溶解試薬を含むことができる。グラム陽性細菌の溶解のために、前記キットは、プロテアーゼ、例えば、100mgの凍結乾燥されたプロテイナーゼK及びプロテイナーゼK溶液の再構成(reconstitution)のための一定量の緩衝液を含むことができる。一具体例で、前記1x溶解試薬は、12.5mM Trisアセテート(pH8.0)またはTris−HCl(pH8.0)またはHEPES(pH=7.8)、0.25%(w/v)CHAPS、及び0.3125mg/mlアジ化ナトリウムを含む。
【0126】
キットはまた、これらに限定されるものではないが、熱安定ポリメラーゼ、熱安定RNase H、サルモネラ核酸標的配列を増幅させるために選択されたプライマー、及びリアルタイムPCR産物にアニーリングされる標識されたCataCleaveオリゴヌクレオチド・プローブを含むリアルタイムPCRのための反応試薬を含み、本明細書に記述された方法論によって、サルモネラ標的核酸配列の検出を可能にする。キットは、2個以上のサルモネラ標的核酸配列の検出のための反応試薬を含むことができる。キット反応試薬はまた、適用できるRT−PCR分析のための反応試薬を含むことができる。
【0127】
特定具体例で、前記増幅プライマーセットは、配列番号1及び2の配列を有する。
【0128】
他の具体例で、前記CataCleaveオリゴヌクレオチド・プローブは、配列番号3の配列を有する。
【実施例】
【0129】
本発明は、下記実施例によって詳細に説明され、それらは、ある方法によって限定されるものであると解釈されてはならない。
【0130】
実施例1:サルモネラの溶解
5μlの粉砕牛肉リッチメント(richment)(サルモネラが接種されている)を、2.5μlのプロテイナーゼK(20.1mg/ml)が含まれた42.5μlの溶解緩衝液に希釈させた。前記試料を、55℃で15分間インキュベーションさせた後、95℃で10分間熱を加えた後で冷却させた。その後、2μlの溶解物を、それぞれのPCR−CataCleave反応に添加した。
【0131】
実施例2:互いに異なる溶解試薬の存在下でのグラム陰性病原菌であるサルモネラのInvA遺伝子配列のリアルタイム検出
8種の緩衝液をテストした:
1.CZ1:1%CHAPS、1mg/mLアジ化ナトリウム、20mM HEPES−KOH(pH8)
2.CZ2:2%CHAPS、1mg/mLアジ化ナトリウム、20mM HEPES−KOH(pH8)
3.CZ3:0.5%CHAPS、1mg/mLアジ化ナトリウム、20mM HEPES−KOH(pH8)
4.CZ4:1%CHAPS、0.5mg/mLアジ化ナトリウム、20mM HEPES−KOH(pH8)
5.CZ5:1%CHAPS、2.5mg/mLアジ化ナトリウム20mM HEPES−KOH(pH8)
6.CZ6:1%CHAPS、1mg/mLアジ化ナトリウム、20mM HEPES−KOH(pH8)
7.CZ7:1%CHAPS、1mg/mLアジ化ナトリウム、100mM HEPES−KOH(pH8)
8.0.125 TZ(1X TZ:2%Triton −X、5mg/mlアジ化ナトリウム、0.2M Tris pH=8)
【0132】
それぞれの反応ミックスは、増幅緩衝液(32mM HEPES−KOH、pH7.8、100mM 酢酸カリウム、4mM酢酸マグネシウム、0.11%ウシ血清アルブミン、1%ジメチルスルホキシド)、800nM Salmonellaフォワード・プライマー(配列番号1)、800nM Salmonellaリバース・プライマー(配列番号2)、200nM Salmonella CataCleaveプローブ(配列番号3)、dUTP/NTPミックス(80μMのdGTP,dCTP,dATP及び160μM dUTP)、2.5ユニットのThermus aquaticus DNAポリメラーゼ、1ユニットのPyrococcus furiosis RNase HII、及び0.1ユニットのウラシル−N−グリコシラーゼ並びに溶解物を含んでいる。これを、下記表1に示した。
【0133】
【表1】

【0134】
前記Salmonellaフォワード・プライマー及びリバース・プライマーは、サルモネラ浸湿遺伝子(invA)内に含まれた180bpの切片を増幅する。
【0135】
プライマー及びプローブの配列は次の通りである:
Salmonellaフォワード・プライマー:5’−TCGTCATTCCATTACCTACC(配列番号1)
Salmonellaリバース・プライマー:5’−TACTGATCGATAATGCCAGACGAA(配列番号2)
Salmonella CataCleaveプローブ:5’−/FAM/CGATCAGrGrArArATCAACCAG/IABFQ)(配列番号3)
【0136】
前記小文字「r」は、RNA塩基を意味する(すなわちrGは、リボグアノシンである)。
【0137】
略語:FAM:6−カルボキシフルオレセイン;IABHQ:Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)社の短波長放出のためのIowa Black Hole Quencher
【0138】
前記反応は、下記サイクルリング・プロトコルによって、Roche Lightcycler 480で行われた:37℃で10分、95℃で10分、その後95℃で15秒、60℃で20秒で50回の増幅。
【0139】
FAM放出は、60℃段階でモニタリングされた。下記表2は、それぞれの溶解溶液を使用して製造されたサルモネラの溶解物であり、リアルタイムPCRを行った検出結果をCp値で示したものである。
【0140】
【表2】

【0141】
CataCleave−PCR反応から出てきた未加工データ(raw data)を下記表3に示し、その結果を、図3Aのようにグラフで図示した。前記データは、1%CHAPS、2.5mg/mLアジ化ナトリウム、20mM HEPES−KOH(pH8)の組成を有するCZ5を反応試薬として使用したとき、サルモネラに対する溶解物として最もすぐれていることを示している。
【0142】
【表3】

【0143】
実施例3:互いに異なる溶解試薬の存在下でのグラム陽性病原菌であるリステリアのInlA遺伝子配列のリアルタイム検出
1)互いに異なる濃度の溶解試薬の存在下での対照群のCataCleave PCR
まず、対照群のCataCleave PCRは、下記濃度の溶解試薬に再懸濁された精製された標的DNAでテストした:
1x ZAC、0.5x ZAC、0.25x ZAC、0.125x ZAC及び0.125xTZ溶解試薬(1x ZACは、100mM Tris−アセテート(pH8.0)、1%(w/v)CHAPS、2.5mg/mLアジ化ナトリウムを含む)
【0144】
5μlの粉砕牛肉リッチメント(リステリアが接種されているる)を、2.5μlのプロテイナーゼK(20mg/ml)が含まれた42.5μlの溶解緩衝液に希釈させ、前記試料を55℃で15分間インキュベーションさせた後、95℃で10分間熱を加えた。その後、2μlの溶解物を、それぞれのPCR−CataCleave反応に添加した。それぞれの反応ミックスは、1x ICAN増幅緩衝液(32mM HEPES−KOH、pH7.8、4mM酢酸マグネシウム、1%DMSO及び0.11%BSA)、400nM LmonC3フォワード・プライマー(配列番号5)、400nM LmonC3リバース・プライマー(配列番号6)、200nM Salmonella CataCleaveプローブ(配列番号7)、dUTP/NTPミックス(80μMのdGTP,dCTP,dATP及び160μM dUTP)、2.5ユニットのThermus aquaticus DNAポリメラーゼ、1ユニットのPyrococcus furiosis RNase HII、及び0.1ユニットのウラシル−N−グリコシラーゼを含んでいる。これを下記表4に示した。
【0145】
【表4】

【0146】
Lmon C3F:ACGAGTAACGGGACAAATGC(配列番号5)
Lmon C3R:TCCCTAATCTATCCGCCTGA(配列番号6)
Lmon CC C3B:5’−/FAM/−CGAATGTAArCAGACACGGTCTCA/IABFQ/(配列番号:7)
【0147】
前記小文字「r」は、RNA塩基を意味する(すなわち、rCは、リボシチジンである)。
【0148】
略語:FAM:6−カルボキシフルオレセイン;IABFQ:Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)社の短波長放出のためのIowa Black Hole Quencher
【0149】
前記反応は、下記サイクルリング・プロトコルによって、Roche Lightcycler 480で行った:37℃で10分、95℃で10分、その後、95℃で15秒、60℃で20秒で50回の増幅。FAM放出は、60℃段階でモニタリングされた。下記表5は、それぞれの溶解溶液を使用して製造された対照群のリアルタイムPCRを行った検出結果を、Cp値で示したものである。
【0150】
【表5】

【0151】
CataCleave−PCR反応から出てきた未加工データを下記表6に示し、その結果を、図3Bのようにグラフで図示した。前記結果は、溶解試薬がPCR CataCleave反応を阻害しないということを示している。
【0152】
【表6A】

【表6B】

【0153】
2)互いに異なる濃度の溶解試薬の存在下でのCataCleave PCR
5μlの粉砕牛肉リッチメント(リステリアが接種されている)を、2.5μlのプロテイナーゼK(20.1mg/ml)が含まれた42.5μlの溶解緩衝液に希釈させた。前記試料を55℃で15分間インキュベーションさせた後、95℃で10分間熱を加えた後で冷却した。その後、17.7μlの溶解物を、それぞれのPCR−CataCleave反応に添加した。それぞれの反応ミックスは1x ICAN増幅緩衝液、400nM Lmon C3フォワード・プライマー(配列番号5)、400nM Lmon C3リバース・プライマー(配列番号6)、200nM Salmonella CataCleaveプローブ(配列番号7)、dUTP/NTPミックス(80μMのdGTP,dCTP,dATP及び160μM dUTP)、2.5ユニットのThermus aquaticus DNAポリメラーゼ、1ユニットのPyrococcus furiosis RNase HII、及び0.1ユニットのウラシル−N−グリコシラーゼを含んでいる。これを下記表7に示した。
【0154】
【表7】

【0155】
前記反応は、下記サイクルリング・プロトコルによって、Roche Lightcycler 480で行った:37℃で10分、95℃で10分、その後、95℃で15秒、60℃で20秒で50回の増幅。FAM放出は、60℃段階でモニタリングされた。下記表8は、それぞれの溶解溶液を使用して製造されたリステリア溶解物へのリアルタイムPCRを行った検出結果を、Cp値で示したものである。
【0156】
【表8】

【0157】
CataCleave−PCR反応から出てきた未加工データを下記表9に示し、その結果を、図4のようにグラフで図示した。
【0158】
【表9A】

【表9B】

【0159】
溶解試薬0.125x ZACが、リステリアinlA遺伝子の検出のための結合された(combined)溶解及びPCR CataCleaveアッセイに最適であるということを示している。また、前記結果は、0.125x ZAC溶解試薬が、0.125x TZ溶解試薬(A.Abolmaaty,C.Vu,J.Oliverand R.E.Levin.2000.Microbio.101:181-189)よりすぐれているということを示している。
【0160】
L.monocytogenes細胞を一晩培養し、1mg/mlのプロテイナーゼKを含んだ0.125x ZACに希釈して溶解させた後、2μlの前記溶解結果物を、1x ICAN増幅緩衝液、400nM Lmon C3フォワード・プライマー(配列番号5)、400nM Lmon C3リバース・プライマー(配列番号6)、200nM CataCleaveプローブ(配列番号7)、dUTP/NTPミックス(80μMdGTP,dCTP,dATP及び160μM dUTP)、2.5ユニットのThermus aquaticus DNAポリメラーゼ、1ユニットのPyrococcus furiosis RNase HII、及び0.1ユニットのウラシル−N−グリコシラーゼ(UNG)を含むそれぞれの反応ミックスに添加した。
【0161】
CataCleave−PCR反応から出てきた未加工データを下記表10に示し、その結果を図5のようにグラフで図示した。
【0162】
【表10A】

【表10B】

【0163】
図から分かる結果は、前記アッセイがL.monocytogenesの1 cfuまたは1コピーのゲノムを検出できるということを証明している。
【0164】
本明細書で開示したあらゆる特許、特許出願、公開または他の開示資料は、その全体として本明細書に参照として挿入される。ここで、参照として挿入されるとする資料またはその一部が、本明細書の定義、陳述またはその他開示資料と矛盾する場合、挿入された資料と現在の開示資料との間に矛盾しないほどにのみ挿入されるものと解釈するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH6ないし9の緩衝液、0.125%ないし2%濃度の両性イオンデタージェント、0.3ないし2.5mg/ml濃度のアジ化物、及びプロテアーゼを含む溶解試薬内で細胞を溶解させる段階と、
収得された細胞溶解物を、55℃で15分間インキュベーションして、実質的に蛋白質フリーの細胞溶解物を生成する段階と、
95℃で10分間、前記プロテアーゼを不活性化させる段階と、
前記蛋白質フリーの細胞溶解物をリアルタイムPCR増幅反応混合物に直接添加する段階であって、前記混合物は、前記細胞溶解物中の標的DNAとアニーリングすることができる増幅プライマーセット;検出可能な標識、並びに前記標的DNAの領域と実質的に相補的なDNA核酸配列及びRNA核酸配列を含むプローブ;増幅ポリメラーゼ活性;増幅緩衝液及びRNase H活性;を含み、第1増幅プライマー及び第2増幅プライマー間の標的DNAの増幅後、前記プローブ内のRNA配列は、前記標的DNA中の相補的なDNA配列とRNA:DNAヘテロデュプレックスを形成できる段階と、を含むリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項2】
前記細胞溶解物の添加は、前記細胞溶解物内で単一標的DNA分子のリアルタイムPCR検出を可能にすることを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項3】
前記単一標的DNA分子のリアルタイムPCR検出は、50回未満のPCR増幅サイクルを要求することを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項4】
前記増幅反応混合物は、逆転写酵素活性をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項5】
前記プローブは、FRET対で標識されることを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項6】
前記蛋白質フリーの細胞溶解物は、前記増幅反応混合物によって、5ないし15倍希釈されることを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項7】
前記細胞は、グラム陽性細菌細胞及びグラム陰性細菌細胞であることを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項8】
前記グラム陽性細菌細胞は、リステリアであることを特徴とする請求項7に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項9】
前記緩衝液は、酢酸塩緩衝液またはリン酸塩緩衝液、Tris、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)または2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液を含むことを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項10】
前記両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートであることを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項11】
前記プロテアーゼは、プロテイナーゼKであることを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項12】
前記増幅活性は、熱安定性増幅活性を含むことを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項13】
前記RNase H活性は、熱安定性RNase H活性を含むことを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項14】
前記RNase H活性は、ホットスタートRNase H活性であることを特徴とする請求項1に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項15】
pH6ないし9の緩衝液、0.125%ないし2%濃度の両性イオンデタージェント、及び0.3ないし2.5mg/ml濃度のアジ化物を含む溶解試薬内で細胞を溶解させる段階と、
細胞溶解物を55℃で15分間インキュベーションする段階と、
前記細胞溶解物を増幅反応混合物に直接添加する段階であり、前記混合物は、前記細胞溶解物内で標的DNAとアニーリングすることができる増幅プライマーセット;検出可能な標識、並びに前記標的DNAの領域と実質的に相補的なDNA核酸配列及びRNA核酸配列を含むプローブ;増幅ポリメラーゼ活性;増幅緩衝液及びRNase H活性;を含み、第1増幅プライマー及び第2増幅プライマー間の標的DNAの増幅後、前記プローブ内のRNA配列は、前記標的DNA内の相補的なDNA配列とRNA:DNAヘテロデュプレックスを形成できる段階と、を含む、リアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項16】
前記増幅反応混合物は、逆転写酵素活性をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項17】
前記プローブは、FRET対で標識されることを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項18】
前記細胞溶解物は、前記増幅反応混合物によって、5ないし15倍希釈されることを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項19】
前記細胞溶解物の添加は、前記細胞溶解物内で、単一標的DNA分子のリアルタイムPCR検出を可能にすることを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項20】
前記単一標的DNA分子のリアルタイムPCR検出は、50回未満のPCR増幅サイクルを要求することを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項21】
前記細胞は、グラム陰性細菌細胞であることを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項22】
前記グラム陰性細菌細胞は、サルモネラ(Salmonella)または大腸菌(E.coli)であることを特徴とする請求項21に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項23】
前記緩衝液は、酢酸塩緩衝液またはリン酸塩緩衝液、Tris、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)または2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液を含むことを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項24】
前記両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートであることを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項25】
前記増幅活性は、熱安定性増幅活性を含むことを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項26】
前記RNase H活性は、熱安定性RNase H活性を含むことを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項27】
前記RNase H活性は、ホットスタートRNase H活性であることを特徴とする請求項15に記載のリアルタイムPCR増幅のための核酸テンプレートを製造する方法。
【請求項28】
pH6ないし9の緩衝液と、
0.125%ないし2%濃度の両性イオンデタージェントと、
0.3ないし2.5mg/ml濃度のアジ化物と、を有する溶解試薬であり、
前記試薬の2倍希釈液を、
細胞溶解物内の標的DNAとアニーリングすることができる増幅プライマーセットと、
検出可能な標識、並びに前記標的DNAの領域と実質的に相補的なDNA核酸配列及びRNA核酸配列を含むプローブと、
増幅ポリメラーゼ活性と、
増幅緩衝液と、
RNase H活性と、を含む、増幅反応混合物に直接添加することが、前記増幅ポリメラーゼ及びRNase H酵素活性を阻害しない、溶解試薬。
【請求項29】
前記緩衝液は、酢酸塩緩衝液またはリン酸塩緩衝液、Tris、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)または2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液を含むことを特徴とする請求項28に記載の溶解試薬。
【請求項30】
前記両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートであることを特徴とする請求項28に記載の溶解試薬。
【請求項31】
前記増幅反応混合物は、逆転写酵素活性をさらに含むことを特徴とする請求項28に記載の溶解試薬。
【請求項32】
前記増幅活性は、熱安定性増幅活性を含むことを特徴とする請求項28に記載の溶解試薬。
【請求項33】
前記RNase H活性は、熱安定性RNase H活性を含むことを特徴とする請求項28に記載の溶解試薬。
【請求項34】
前記RNase H活性は、ホットスタートRNase H活性であることを特徴とする請求項28に記載の溶解試薬。
【請求項35】
pH6ないし9の緩衝液と、
0.125%ないし2%濃度の両性イオンデタージェントと、
0.3ないし2.5mg/ml濃度のアジ化物と、
プロテアーゼと、を有する溶解試薬であり、
前記プロテアーゼの不活性化後、前記試薬の2倍希釈液を、
前記細胞溶解物内で標的DNAとアニーリングすることができる増幅プライマーセットと、
検出可能な標識、並びに前記標的DNAの領域と実質的に相補的なDNA核酸配列及びRNA核酸配列を含むプローブと、
増幅ポリメラーゼ活性と、
増幅緩衝液と、
RNase H活性と、を含む、増幅反応化合物に直接添加することが、前記増幅ポリメラーゼ及びRNase H酵素活性を阻害しないことを特徴とする溶解試薬。
【請求項36】
前記緩衝液は、酢酸塩緩衝液またはリン酸塩緩衝液、Tris、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)または2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液を含むことを特徴とする請求項35に記載の溶解試薬。
【請求項37】
前記両性イオンデタージェントは、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートであることを特徴とする請求項35に記載の溶解試薬。
【請求項38】
前記増幅反応混合物は、逆転写酵素活性をさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の溶解試薬。
【請求項39】
前記増幅活性は、熱安定性増幅活性を含むことを特徴とする請求項35に記載の溶解試薬。
【請求項40】
前記RNase H活性は、熱安定性RNase H活性を含むことを特徴とする請求項35に記載の溶解試薬。
【請求項41】
前記RNase H活性は、ホットスタートRNase H活性であることを特徴とする請求項35に記載の溶解試薬。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−188856(P2011−188856A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−52721(P2011−52721)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(500548884)三星テクウィン株式会社 (156)
【Fターム(参考)】