説明

リクライニング装置のストッパプレート及びその製造方法

【課題】シートフレームにシートバックを回動可能に枢着し、該シートフレームとシートバックの一方と他方に、該シートバックの回動範囲を規制する、一対の回動規制面を有するストッパプレートと、この一対の回動規制面に係合するストッパ部材とを設けたリクライニング装置において、シートバックの回動範囲の異なる、複数のリクライニング装置のストッパプレートとして共通化が可能なストッパプレート及びその製造方法を得る。
【解決手段】周方向の両端部に一対の回動規制面を有する基本凹部と、この基本凹部とは異なる周方向位置に選択壁を挟んで形成した少なくとも一つの追加凹部とを備え、この追加凹部の基本凹部から周方向に離間した側の面が追加回動規制面を構成しているリクライニング装置のストッパプレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックの前後の回動(揺動)端を規制するリクライニング装置のストッパプレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シートフレームにシートバックを回動可能に枢着した車両のリクライニング装置は、該シートフレームとシートバックの一方と他方に、該シートバックの回動範囲を規制する、一対の回動規制面を有するストッパプレートと、この一対の回動規制面に係合するストッパ部材とを設けることで、シートバックの回動範囲(角度)を規制している。
【特許文献1】実開平4-91147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シートバックの回動範囲は、全ての車両に共通ではない。このため、ストッパプレートは、少なくとも回動範囲の異なるシートバックを有するリクライニング装置毎に、一対の回動規制面の角度間隔を異ならせた複数を用意しなければならず、共通化の困難な部品であった。
【0004】
本発明は、以上の問題意識に基づき、シートバックの回動範囲の異なる、複数のリクライニング装置のストッパプレートとして共通化が可能なストッパプレート及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ストッパプレートの態様では、シートフレームにシートバックを回動可能に枢着し、該シートフレームとシートバックの一方と他方に、該シートバックの回動範囲を規制する、一対の回動規制面を有するストッパプレートと、この一対の回動規制面に係合するストッパ部材とを設けたリクライニング装置において、ストッパプレートが、シートバックの枢軸を中心とする周方向の両端部に上記一対の回動規制面を有する基本凹部と、この基本凹部とは異なる周方向位置に、該基本凹部との間に形成した少なくとも一つの追加凹部とを備え、この追加凹部の上記基本凹部から周方向に離間した側の面が追加回動規制面を構成していることを特徴としている。
【0006】
追加凹部及び追加回動規制面は、基本凹部の周方向の両側に設けると、1つのストッパプレートから4種類(4つの異なる回動規制範囲を有する)ストッパプレートを形成することができる。
【0007】
本発明はまた、ストッパプレートの製造方法の態様では、シートフレームにシートバックを回動可能に枢着し、該シートフレームとシートバックの一方と他方に、該シートバックの回動範囲を規制する、一対の回動規制面を有するストッパプレートと、この一対の回動規制面に係合するストッパ部材とを設けたリクライニング装置において、ストッパプレートを、回動範囲が大小に異なる複数のリクライニング装置に共通の共通ストッパプレートとして、上記シートバックの枢軸を中心とする周方向の両端部に一対の回動規制面を有する基本凹部と、この基本凹部とは異なる周方向位置に、選択壁を挟んで、該基本凹部から周方向に離間した側の面を追加回動規制面とした追加凹部とを有する共通ストッパプレートを形成するステップと;共通ストッパプレートの選択壁を残存させ基本凹部の周方向の両端部の一対の回動規制面を上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第一のストッパプレートと、上記選択壁を除去し上記基本凹部の周方向の両端部の一方の回動規制面と上記追加回動規制面とを上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第二のストッパプレートとを選択して形成するステップと;によって製造することを特徴としている。
【0008】
追加回動規制面を構成する選択壁は、複数設けることができ、どの選択壁を残存させ除去するかにより、さらに回動規制範囲の異なる異種のストッパプレートを形成することができる。
【0009】
本発明方法は、4種類のストッパプレートを製造する特定実施例について表現すると、シートフレームにシートバックを回動可能に枢着し、該シートフレームとシートバックの一方と他方に、該シートバックの回動範囲を規制する、一対の回動規制面を有するストッパプレートと、この一対の回動規制面に係合するストッパ部材とを設けたリクライニング装置において、ストッパプレートを、回動範囲が大小に異なる複数のリクライニング装置に共通の共通ストッパプレートとして、上記シートバックの枢軸を中心とする周方向の両端部に一対の回動規制面を有する基本凹部と、この基本凹部の周方向の両側に、第一、第二の選択壁を挟んで、該基本凹部から周方向に離間した側の面を第一、第二の追加回動規制面とした第一、第二の追加凹部とを有する共通ストッパプレートを形成するステップと;共通ストッパプレートの第一、第二の選択壁を残存させ基本凹部の周方向の両端部の一対の回動規制面を上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第一のストッパプレートと、上記第一の選択壁を除去し上記基本凹部の周方向の両端部の一方の回動規制面と上記第一の追加回動規制面とを上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第二のストッパプレートと、上記第二の選択壁を除去し上記基本凹部の周方向の両端部の他方の回動規制面と上記第二の追加回動規制面とを上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第三のストッパプレートと、上記第一、第二の選択壁を除去し上記第一、第二の追加回動規制面を上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第四のストッパプレートと、を選択して形成するステップと;によって製造することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一つのストッパプレートを、シートバックの回動範囲の異なる複数のリクライニング装置のストッパプレートとして用いることができ、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明によるリクライニング装置10の一実施形態を示している。車両床面11にシートトラック12を介して固定されるシートフレーム13には、軸14でシートバック15が回動可能に枢着されている。シートフレーム13には、軸14を中心とする円弧上に位置する一対の回動規制面16aと16bを有するストッパプレート16が固定されており、シートバック15には、この一対の回動規制面16a、16bと係合(衝突)することで、該シートバック15の回動範囲を規制するストッパ部材17が固定されている。
【0012】
本実施形態は、このストッパプレート16を特徴としている。図2は、共通のストッパプレート16から4種類の(4つの異なる回動規制範囲を有する)ストッパプレートを形成する実施形態である。ストッパプレート16は、軸14を中心とする円弧状の基本凹部20を有しており、この基本凹部20の両端部によって、一対の回動規制面16aと16bが形成されている。
【0013】
このストッパプレート16には、この基本凹部20の周方向の両側に位置させて、第一、第二の追加凹部21、22が形成されている。基本凹部20と第一の追加凹部21の間、及び基本凹部20と第二の追加凹部22の間はそれぞれ、第一、第二の選択壁23、24である。第一の追加凹部21の基本凹部20から離れた(遠い)側の面は第一の追加回動規制面21aを構成し、第二の追加凹部22の基本凹部20から離れた(遠い)側の面は第二の追加回動規制面22aを構成している。一対の回動規制面16aと16bの角度間隔、回動規制面16aと第二の追加回動規制面22aの角度間隔、回動規制面16bと第一の追加回動規制面21aの角度間隔、及び第一、第二の追加回動規制面21aと22aの角度間隔はそれぞれ、シートバック15の回動範囲が異なる4種類のリクライニング装置10用に、予め正しく定められている。
【0014】
このストッパプレート16は、図2に示すように、4通りに用いることができる。
(1)一対の回動規制面16aと16bの角度間隔でシートバック15の回動範囲を規制する場合には、図2の左方に示すように、第一の選択壁23と第二の選択壁24を残してそのまま使用する。ストッパ部材17(シートバック15)は、一対の回動規制面16aと16bにより回動範囲を規制される。
(2)回動規制面16bと第一の追加回動規制面21aの角度間隔でシートバック15の回動範囲を規制する場合には、図2の右中に示すように、第一の選択壁23だけを除去する。ストッパ部材17(シートバック15)は、回動規制面16bと第一の追加回動規制面21aにより回動範囲を規制される。
(3)回動規制面16aと第二の追加回動規制面22aの角度間隔でシートバック15の回動範囲を規制する場合には、図2の右上に示すように、第二の選択壁24だけを除去する。ストッパ部材17(シートバック15)は、回動規制面16aと第二の追加回動規制面22aにより回動範囲を規制される。
(4)第一、第二の追加回動規制面21aと22aの角度間隔でシートバック15の回動範囲を規制する場合には、図2の右下に示すように、第一の選択壁23と第二の選択壁24の双方を除去する。ストッパ部材17(シートバック15)は、第一、第二の追加回動規制面21aと22aにより回動範囲を規制される。「除去」は、物理的に切除することは勿論、折り曲げることでストッパ部材17と当接しない状態にすることを含む概念である。
【0015】
上記(2)、(3)、(4)のように、第一、第二の選択壁23、24の少なくとも一方を除去したストッパプレート16は、その選択壁23、24の除去跡(切断跡または曲折跡)が残存する。
【0016】
以上の実施形態では、基本凹部20の周方向の両側にそれぞれ追加凹部21、22を形成したが、追加凹部は、一つのみあるいは3つ以上とする実施形態も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるリクライニング装置の一実施形態を示すシート全体の側面図である。
【図2】同リクライニング装置に用いる共通ストッパプレート及びその製造方法を示す正面図である。
【符号の説明】
【0018】
10 リクライニング装置
13 シートフレーム
14 軸
15 シートバック
16 ストッパプレート
16a 16b 回動規制面
17 ストッパ部材
20 基本凹部
21 第一の追加凹部
22 第二の追加凹部
21a 第一の追加回動規制面
21b 第二の追加回動規制面
23 第一の選択壁
24 第二の選択壁



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームにシートバックを回動可能に枢着し、該シートフレームとシートバックの一方と他方に、該シートバックの回動範囲を規制する、一対の回動規制面を有するストッパプレートと、この一対の回動規制面に係合するストッパ部材とを設けたリクライニング装置において、
上記ストッパプレートは、上記シートバックの枢軸を中心とする周方向の両端部に上記一対の回動規制面を有する基本凹部と、この基本凹部とは異なる周方向位置に、該基本凹部との間に選択壁を挟んで形成した少なくとも一つの追加凹部とを備え、この追加凹部の上記基本凹部から周方向に離間した側の面が追加回動規制面を構成していることを特徴とするリクライニング装置のストッパプレート。
【請求項2】
請求項1記載のストッパプレートにおいて、上記追加凹部及び追加回動規制面は、基本凹部の周方向の両側に設けられているストッパプレート。
【請求項3】
シートフレームにシートバックを回動可能に枢着し、該シートフレームとシートバックの一方と他方に、該シートバックの回動範囲を規制する、一対の回動規制面を有するストッパプレートと、この一対の回動規制面に係合するストッパ部材とを設けたリクライニング装置において、
上記ストッパプレートを、
上記回動範囲が大小に異なる複数のリクライニング装置に共通の共通ストッパプレートとして、上記シートバックの枢軸を中心とする周方向の両端部に一対の回動規制面を有する基本凹部と、この基本凹部とは異なる周方向位置に、選択壁を挟んで、該基本凹部から周方向に離間した側の面を追加回動規制面とした追加凹部とを有する共通ストッパプレートを形成するステップと;
上記共通ストッパプレートの選択壁を残存させ基本凹部の周方向の両端部の一対の回動規制面を上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第一のストッパプレートと、上記選択壁を除去し上記基本凹部の周方向の両端部の一方の回動規制面と上記追加回動規制面とを上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第二のストッパプレートとを選択して形成するステップと;
によって製造することを特徴とするリクライニング装置のストッパプレートの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のストッパプレートの製造方法において、上記選択壁は複数存在し、どの選択壁を残存させあるいは除去するかにより、さらに回動規制範囲の異なる異種のストッパプレートを形成するリクライニング装置のストッパプレートの製造方法。
【請求項5】
シートフレームにシートバックを回動可能に枢着し、該シートフレームとシートバックの一方と他方に、該シートバックの回動範囲を規制する、一対の回動規制面を有するストッパプレートと、この一対の回動規制面に係合するストッパ部材とを設けたリクライニング装置において、
上記ストッパプレートを、
上記回動範囲が大小に異なる複数のリクライニング装置に共通の共通ストッパプレートとして、上記シートバックの枢軸を中心とする周方向の両端部に一対の回動規制面を有する基本凹部と、この基本凹部の周方向の両側に、第一、第二の選択壁を挟んで、該基本凹部から周方向に離間した側の面を第一、第二の追加回動規制面とした第一、第二の追加凹部とを有する共通ストッパプレートを形成するステップと;
上記共通ストッパプレートの第一、第二の選択壁を残存させ基本凹部の周方向の両端部の一対の回動規制面を上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第一のストッパプレートと、上記第一の選択壁を除去し上記基本凹部の周方向の両端部の一方の回動規制面と上記第一の追加回動規制面とを上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第二のストッパプレートと、上記第二の選択壁を除去し上記基本凹部の周方向の両端部の他方の回動規制面と上記第二の追加回動規制面とを上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第三のストッパプレートと、上記第一、第二の選択壁を除去し上記第一、第二の追加回動規制面を上記ストッパ部材に当接する一対の回動規制面として用いる第四のストッパプレートと、を選択して形成するステップと;
によって製造することを特徴とするリクライニング装置のストッパプレートの製造方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項記載のストッパプレートの製造方法によって製造したリクライニング装置のストッパプレート。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−54748(P2008−54748A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232298(P2006−232298)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】