説明

リサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体及びその製造方法

【課題】リサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂100重量部に発泡剤25〜35重量部、架橋剤、発泡助剤等を添加混練した発泡性架橋性組成物を気密でない金型中で加熱発泡させて気泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させるリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系連続気泡体は、耐候性、断熱性、吸音性等に優れているので、エアコン内の断熱材、自動車のドアミラー内の吸音材、バクテリアの担体、クッション材等の各種用途に広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭62−19294号公報
【特許文献2】特許第3827942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献記載のポリオレフィン系連続気泡体等、従来の連続気泡体はクッション性を有するがエチレン−酢酸ビニル共重合体を含んでいるためリサイクルが難しく、連続気泡体の再生樹脂を発泡体にリサイクルすることが難しかった。
【0005】
本発明者らは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂に
発泡剤、架橋剤、発泡助剤等を添加混練して加熱、発泡させてなるリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂に発泡剤、架橋剤、発泡助剤等を添加混練して加熱、発泡させたリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明のリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体の製造方法は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂100重量部に発泡剤25〜35重量部、架橋剤、発泡助剤等を添加混練した発泡性架橋性組成物を気密でない金型中で加熱発泡させて気泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させる製造方法である。
【0008】
上記本発明に係る発泡体において、発泡剤添加量は25〜35重量部であることが好ましい。発泡剤の添加量が25重量部未満の場合は、従来のポリオレフィン系連続気泡体の50%圧縮応力3〜10kPaより大きく、クッション性に劣る。35重量部を超える場合は、発泡体の形状がいびつになり、満足な発泡体が得られない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、リサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明でいうポリオレフィンとは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を除く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、エチレン共重合体を挙げることができる。
【0011】
本発明でいう発泡剤とは、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上の分解温度を有する化学発泡剤であり、例えばアゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等がある。
【0012】
本発明でいう架橋剤とは、ポリエチレン系樹脂中において少なくともポリエチレン樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するものであって、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどがあるが、その時に使用される樹脂によって最適な有機過酸化物を選択しなければならない。
【0013】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0014】
本発明においては、使用する組成物の物性の改良或いは価格の低下を目的として、架橋結合に著しい悪影響を与えない配合剤(充填剤)、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、あるいはパルプ等の繊維物質、又は各種染料、顔料並びに蛍光物質、その他常用のゴム及びプラスチック配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0015】
次に、本発明のリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体の製造方法について説明する。
【0016】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂100重量部に発泡剤25〜35重量部、架橋剤、発泡助剤を添加し、これをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡性架橋性組成物をプレス中の金型に充填し、一定時間加圧下に120〜140℃で30〜60分加熱して発泡剤を部分的に分解し、中間発泡体を生成させる。次いで、該中間発泡体を常圧下にて密閉系でない直方体型などの所望の形状の型内に入れ、ローゼ合金、ウッド合金等を用いるメタルバス、オイルバス、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム等の塩の1種又は2種以上の溶融塩を用いる塩浴中、窒素気流中で、または直方体型がその外壁に加熱用熱媒体導管(熱媒:スチーム等)が設けられてなるものでその中で、あるいは伸長可能な鉄板等により覆われた状態で、所定時間加熱した後、冷却して発泡体を得る。加熱温度は145〜210℃、好ましくは160〜190℃であり、加熱時間は30〜180分、好ましくは50〜150分である。
【0017】
このようにして、機械的変形を与えることによって容易に破壊しうる気泡膜を有し、且つ、従来の気泡体と同程度の架橋度(ゲル分率95%程度まで)を有する気泡体が得られる。
【0018】
以上のようにして得られた気泡体(いわゆる独立気泡体)は、次いで例えば等速二本ロール等により圧縮変形を加えることによって気泡膜は破壊され、気泡が連通化されて連続気泡体が得られる。等速二本ロールの表面に無数の小さい針を設けるか、又は等速二本ロールの前及び/又は後に無数の小さい針を設けたロールを配置して、該気泡体の表面に無数の小孔を開けることによって、気泡の連通化を促進させることができる。この方法によって得られる連続気泡体は、ASTM−D2856に準拠した空気比較式比重計1000型(東京サイエンス(株)製)を用いて測定した連続気泡率が100%又は100%に近いものである。
【0019】
連続気泡体の硬さの評価
得られた連続気泡体の硬さは、50%圧縮応力(JIS K6767準拠)を測定し、3〜10kPaの場合、従来のポリオレフィン系連続気泡体と同等であるとした。
【0020】
リサイクル性の評価
得られた連続気泡体を二軸押出機に投入し、バレルの設定温度を150℃、スクリュー回転数400r.p.mにて押出し、再生樹脂を得る。
再生樹脂に発泡剤、架橋剤、発泡助剤を添加混練し、プレス中の金型に充填し、加圧下に140〜160℃で30〜60分加熱して発泡体を得る。
得られた発泡体をバージン樹脂で作った発泡体と比較し、外観形状、気泡状態に差がなければ、再生樹脂が発泡体にリサイクル出来たと評価した。
【実施例1】
【0021】
低密度ポリエチレン(商品名:ノバテックYF30、密度0.920g/cm、メルトフローレート1.1g/10min、三菱化学株式会社製)100重量部、アゾジカルボンアミド(商品名:ビニホールAC#3、永和化成工業株式会社製)25重量部、ジクミルパーオキサイド0.5重量部、酸化亜鉛0.1重量部からなる組成物を100℃のニーダーにて混練し、128℃に加熱されたプレス内の金型(38×160×160mm)に練和物を充填し、40分間加圧下で加熱し、発泡性架橋組成物を成形した。該成形物の発泡倍率は1.1倍、ゲル分率は0であった。
【0022】
次いで、中間発泡体を加熱水蒸気の流路を周囲に設けた気密でない開閉式金属金型(100×500×500mm)の略中央に載置し、160℃の加熱水蒸気を該流路に流して90分間加熱して残存する発泡剤及び架橋剤を分解して冷却後、発泡体を得た。
【0023】
得られた発泡体をロール間隔20mmに設定した等速二本ロールの間を5回通化させて気泡膜を破壊させ、気泡の連通化を行った。得られた連続気泡体は、見掛け密度18kg/m、連続気泡率100%、50%圧縮応力5kPaであった。
【0024】
リサイクル性評価
得られた連続気泡体を二軸押出機に投入し、バレルの設定温度を150℃、スクリュー回転数400r.p.mにて押出し、再生樹脂を得た。
再生樹脂100重量部に発泡剤4重量部、架橋剤0.8重量部、発泡助剤3.5重量部を添加混練し、プレス中の金型に充填し、加圧下に160℃で60分加熱して発泡体を得た。
得られた発泡体は、見掛け密度90kg/m、気泡形状が均一で、バージン樹脂で作った発泡体と遜色のない物であった。
【実施例2】
【0025】
発泡剤の添加量を35重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、連続気泡体を得た。
得られた連続気泡体の見掛け密度は12kg/m、連続気泡率100%、50%圧縮応力3kPaであった。
【0026】
得られた連続気泡体を実施例1と同じ条件で再生樹脂にし、再度発泡体を作成した。
得られた発泡体は、見掛け密度88kg/m、気泡形状が均一で、バージン樹脂で作った発泡体と遜色のない物であった。
比較例1
【0027】
発泡剤の添加量を20重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0028】
得られた発泡体の見掛け密度は30kg/mであったが、50%圧縮応力が12kPaであり、従来の連続気泡体より劣っていた。
比較例2
【0029】
発泡剤の添加量を40重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させたが、形状がいびつで均一な連続気泡体は得られなかった。
比較例3
【0030】
低密度ポリエチレン40重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名:ノバテックLV540、密度0.942g/cm、メルトフローレート2.5g/10min、酢酸ビニル含有量20重量%、三菱化学株式会社製)60重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、連続気泡体を得た。
【0031】
得られた発泡体の見掛け密度は19kg/m、連続気泡率100%、50%圧縮応力3kPaであった。
【0032】
得られた連続気泡体を実施例1と同じ条件で再生樹脂にし、再度発泡体を作成したが、得られた発泡体の内部にはホールが発生し、気泡が不均一なものであった。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明の方法によれば、リサイクル可能な耐候性、断熱性、吸音性等に優れたポリオレフィン系連続気泡体を製造できる。本発明の方法によって製造されたポリオレフィン系連続気泡体は、エアコン内の断熱材、自動車のドアミラー内の吸音材、バクテリアの担体、クッション材等に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂に
発泡剤、架橋剤、発泡助剤等を添加混練して加熱、発泡させてなるリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体。
【請求項2】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂100重量部に発泡剤25〜35重量部を添加する請求項1記載のリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体。
【請求項3】
50%圧縮応力が3〜10kPaであることを特徴とする請求項1記載のリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体。
【請求項4】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂に発泡剤、架橋剤、発泡助剤等を添加混練した発泡性架橋性組成物を気密でない金型中で加熱発泡させて気泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させるリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体の製造方法。
【請求項5】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を除くポリオレフィン系樹脂100重量部に発泡剤25〜35重量部を添加混練することを特徴とする請求項4記載のリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体の製造方法。
【請求項6】
50%圧縮応力が3〜10kPaであることを特徴とする請求項4記載のリサイクル可能なポリオレフィン系連続気泡体の製造方法。


【公開番号】特開2012−207060(P2012−207060A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71565(P2011−71565)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】