説明

リソグラフィ投影対物器械を修正/修理する方法

【課題】リソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を修正/修理する方法を提供する。
【解決手段】屈折力を有する少なくとも1つの第1の光学要素を含む複数の光学要素を対物面(12)と像平面(16)の間に含むリソグラフィ投影露光装置(10)の投影対物器械を修正/修理する方法は、光学要素の全てを差し替えることなく、少なくとも1つの第1の光学要素を現場で投影対物器械から取り外す段階、少なくとも1つの第1の予備光学要素を少なくとも1つの第1の光学要素の位置で投影対物器械内に挿入する段階、及び投影対物器械の像品質を望ましい品質へと調節する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、マイクロリソグラフィ処理に用いられるリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械に関する。
より具体的には、本発明は、リソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を修正/修理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
投影対物器械は、感光材料で被覆した基板、例えば、ウェーハ又はプレートなどの上に精密回路パターンを焼き付けるためにリソグラフィ投影露光装置に用いられる。焼き付けらえる回路パターンは、レチクルと呼ばれる物体によって提供され、これは、投影対物器械によって基板上に結像される。そのような用途のための投影対物器械は、非常に高い光学性能を必要とする。
一般的に、リソグラフィ投影露光装置の投影対物器械は、対物面と像平面の間に複数の光学要素を含む。ここで「の間」という用語は、対物面から出射して像平面に到達する投影光が各光学要素に少なくとも1回当たるような方法で複数の光学要素が配置されると理解されるものとする。同様に、「の前」及び「の後」のような用語は、伝播する投影光の順であると理解されるものとする。異なる種類の投影対物器械、すなわち、屈折、反射、及び反射屈折投影対物器械が存在する。屈折投影対物器械は、屈折光学要素のみを含む。反射投影対物器械は、反射光学要素のみを含む。反射屈折投影対物器械は、屈折光学要素、並びに反射光学要素を含む。本明細書では、本発明を屈折及び反射屈折投影対物器械に関して説明し、その複数の光学要素は、少なくとも1つの屈折光学要素を含む。投影対物器械の最後の光学要素と像平面の間に液浸液が存在する場合には、投影対物器械は、液浸型のものであると呼ばれる。液浸液自体は、光学要素に含まれない。2つの液浸液が存在し、かつ投影対物器械の最後の光学要素が、これらの2つの液浸液の間に置かれている場合には、投影対物器械は、2重液浸型のものであると呼ばれる。従って、あらゆる2重液浸型の投影対物器械は、液浸型の投影対物器械でもある。
【0003】
リソグラフィ処理における投影対物器械のある一定の使用期間の後には、光学要素のうちの1つ又はそれよりも多くは、様々な原因を有する可能性がある劣化をもたらす場合がある。例えば、液浸リソグラフィに用いられる投影対物器械では、像平面の隣にある最後の光学要素は、最後の光学要素のコーティングを劣化させる場合がある液浸液と接触状態にある。更に、最後の光学要素がフッ化カルシウムから成り、液浸液として純水が用いられる場合には、純水がフッ化カルシウムに対して非常に高い腐食性を有するので、最後の光学要素自体の材料は、液浸液によって劣化する。2重液浸の場合には、最後の光学要素及び最後から2番目の光学要素は、液浸液によって劣化する場合がある。
【0004】
起こり得る別の劣化は、光学要素上の統合光の強度分布に由来し、それにより、光学要素の形状変形のみならず、光学要素が屈折型のものである場合には、屈折率分布の変化が生じる場合がある。この分布は、スリット状のレチクル、非回転対称照明設定、例えば、双極又は四重極設定、及び物体の種類、例えば、一方向を向く回路パターンによって影響を受ける。
他の稼働時間によって惹起される光学要素の劣化は、屈折率変化、光学要素の材料における応力等とすることができる。従って、ある一定の稼働時間の後、投影対物器械が高精度光学性能に影響を与える劣化をもたらす時には、投影対物器械を修理又は修正すべきである。
【0005】
従来の修理方法では、投影対物器械全体が、リソグラフィ露出において投影対物器械を用いる顧客から製造業者へと搬送され、劣化した投影対物器械は、投影対物器械の殆どの光学要素を差し替えることによって修理される。そのような修理方法は、非常に長い所用時間を消費し、顧客のところでの望ましくない長い休止時間を招く。更に、複数の光学要素の全ての差し替えは、非常に経費負担が大きく、投影対物器械の莫大な経費負担を考えると、そのような修理方法はまた、顧客には受け入れられない。
従って、現場で、すなわち、投影対物器械が用いられている顧客の場所において実施することができ、投影対物器械の全ての光学要素の差し替えを必要としない投影対物器械を修理する方法の必要性が存在する。
【0006】
大部分の事例では、リソグラフィ処理において投影対物器械を用いる顧客は、投影対物器械のいわゆる指紋のできる限り少ない変更しか伴わない劣化した投影対物器械の修理又は修正を望む。1つの投影対物器械の指紋は、それぞれ、この1つの投影対物器械の特徴的な像欠陥の組、又は1つの投影露光システム全体の特定の特性の組と理解されるものとする。
一方、一部の事例では、顧客は、投影対物器械によって基板へと投影される特定のレチクル、及び/又はリソグラフィ処理に用いられるある一定の照明設定に像欠陥の量を適応させてしまうことを望む。一部の場合には、コマ収差のようなある一定の像欠陥を像内に導入することが望まれる。
【0007】
EP−A−0724199は、投影対物器械の歪曲成分を測定する段階、像の歪曲を相殺するために補正光学要素における表面形状を計算する段階、補正光学要素を投影対物器械から取り外す段階、補正光学要素を必要な表面形状へと機械加工する段階、及び補正光学要素を取り外す前にこの補正光学要素が配置されていた位置にこの補正光学要素を再配置する段階を含む、投影対物器械を調節する方法を開示している。この文献は、投影対物器械を修理する方法に関して説明していない。
【0008】
文献US6、333、776Blは、取り替え器具によって選択的に挿入及び回収することができる補正板が配置された投影対物器械を開示している。補正板は、保存器内に保存された別の補正板と必要に応じて取り替えることができる。補正板は、ランダムな歪曲を補正することができるように研磨されている。ここでの「ランダムな歪曲」という用語は、注目している投影対物器械の生産中に生産パラメータのランダムな変化によって発生する投影対物器械の歪曲であると理解されるものとする。この文献も、投影対物器械を修理する方法に関して説明していない。
【0009】
US5、392、119は、投影対物器械内に配置された2つの補正板を用いることによって投影対物器械を補正する方法を開示している。第1の補正板は、ビーム偏向を生成するように最適化され、第2の補正板は、前に測定された収差を補正するように最適化される。開示されたこの方法は、例えば、光学分解能を改善するために既存の投影対物器械を修正するのに用いることができる。
WO2005/069055A2は、屈折力を有する光学要素を最後の光学要素として有する液浸型投影対物器械を開示している。
WO2006/121009及びWO2006/126522は、平行平面板を最後の光学要素として有する2重液浸型の投影対物器械を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP−A−0724199
【特許文献2】US6、333、776Bl
【特許文献3】US5、392、119
【特許文献4】WO2005/069055A2
【特許文献5】WO2006/121009
【特許文献6】WO2006/126522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、現場で実施することができるリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を修正/修理する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、顧客での投影対物器械の使用休止時間を低減するリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を修正/修理する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、所用時間を要さず、及び/又は経費負担の小さいリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を修正/修理する方法を提供することである。
投影対物器械の別の目的は、顧客の要求に従って投影対物器械の像品質を適応させることができるリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を修正/修理する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様により、対物面と像平面の間に複数の光学要素を含み、これらの複数の光学要素が、屈折力を有する少なくとも1つの第1の光学要素を含むリソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を提供する。本方法は、光学要素の全てを差し替えることなしに、少なくとも1つの第1の光学要素を顧客のところで投影対物器械から取り外す段階、少なくとも1つの第1の予備光学要素を少なくとも1つの第1の光学要素の位置で投影対物器械内に挿入する段階、及び投影対物器械の像品質を顧客が望む品質へと調節する段階を含む。
【0013】
本発明による方法は、劣化した光学要素の悪影響のみが、光学要素の全てを差し替えることなく、1つの光学要素を差し替えることによって相殺されるという概念に基づいている。従って、本発明による方法は、所用時間を要さず、顧客のところでの休止時間を著しく短縮する。本方法は、現場で、すなわち、顧客のところで実施され、修理/修正すべき投影対物器械は、投影対物器械の製造業者へと搬送する必要はない。更に、本方法は、顧客が望む品質への投影対物器械の像品質の調節を含み、それにより、投影対物器械の元の状態の像品質を維持するのみならず、投影対物器械の元の状態の像品質に対して修正/修理手順によって像品質を変更することも可能である。
【0014】
少なくとも1つの第1の予備光学要素は、第1の光学要素の形状に少なくともほぼ適応する光学要素である。
少なくとも1つの第1の予備光学要素自体が劣化を受けることは必要ではない。しかし、光学システムの劣化の影響を相殺するためには、少なくとも第1の予備光学要素は、光学システムの光学要素から適正に選択すべきである。特に有利なのは、顧客によって用いられる結像設定に依存して、光学システムの瞳平面の近く、視野平面の近くの位置であり、これらの間の平面が必要になる可能性もある。結像設定は、マスク及び照明設定に依存して、顧客毎に異なる可能性があり、特定の異なる劣化の影響を引き起こす。従って、少なくとも第1の予備光学要素は、光学システム毎に異なるものとすることができる。
【0015】
好ましい実施形態では、本方法は、更に、少なくとも1つの第1の予備光学要素を投影対物器械内に挿入する前に、この少なくとも1つの第1の予備光学要素を加工する段階を含む。
第1の予備光学要素の性質が、加工、例えば、別の好ましい実施形態において与えられているように機械加工を受け入れ、特に、別の好ましい実施形態において与えられているように、少なくとも1つの第1の予備光学要素の少なくとも1つの表面に非球面又は更に非回転対称の表面形状を与えるとする場合、この手段は、第1の予備光学要素が、例えば、第1の予備光学要素と交換される第1の光学要素に対する第1の予備光学要素の光学効果の差を相殺するための望ましい像品質補正をもたらすことができるという利点を有する。また、第1の予備光学要素の加工は、元の状態における投影対物器械の像品質に対して、投影対物器械の像品質を変更するのに用いることができる。
【0016】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1の予備光学要素は、投影対物器械からの取り外し、及びその後の加工の後の第1の光学要素である。
この手段は、投影対物器械の修理経費負担を更に低減するという利点を有する。投影対物器械の光学要素が、製造という点で非常に高価であることを考慮すると、投影対物器械からの取り外し、及び光学要素又はそのコーティングから材料欠陥を除去するためのその後の加工の後の第1の光学要素の再使用は、投影対物器械の修理の経費負担低減に著しく寄与することができる。
【0017】
休止時間を短縮するためには、例えば、第1の光学要素が、その再加工の後に第1の予備光学要素として再使用される場合に、少なくとも1つの第1の予備光学要素が、他の投影対物器械から取り外され、上述の加工処理のうちの1つ又はそれよりも多くに従って加工された第1の光学要素のプールから選択されるならば更に好ましい。例えば、複数の投影対物器械から取り外された複数の第1の光学要素は、再加工し、補給のために保持し、投影対物器械の部分集合内で差し替えることができる。
少なくとも1つの第1の光学要素の加工により、少なくとも1つの第1の光学要素の厚みは、少なくとも1つの第1の光学要素の元の状態のものの厚みに対して低減される可能性がある。
【0018】
再加工された第1の光学要素の厚み低減は、投影対物器械内に再挿入された時に、第1の光学要素の元の状態に対して、第1の光学要素の光学効果の著しい変化を引き起こす可能性がある。しかし、本発明によると、この差は、例えば、少なくとも1つの第1の光学要素の第1の予備光学要素としての投影対物器械内への挿入の前に、第1の光学要素にこの差を補正するのに適する非球面又は更に非回転対称の表面形状を与えることにより、及び/又は光学要素の全て又は一部を再位置決めすること(設定)によって相殺することができる。
第1の予備光学要素は、劣化した第1の光学要素を投影対物器械又は別の投影対物器械から取り外して再加工した後のものとすることができることを前に説明したが、少なくとも1つの第1の予備光学要素は、取り外した第1の光学要素の元の状態のものと同じ種類の本質的に同一の光学要素とすることも可能である。
【0019】
更に別の好ましい実施形態では、像品質を調節する段階は、像品質を測定する段階、並びに少なくとも1つの更に別の光学要素の移動及び/又は変形によって像品質を調節する段階を含む。この少なくとも1つの更に別の光学要素は、それ自体予備光学要素とすることができる。
更に別の好ましい実施形態では、本方法は、更に、複数の光学要素から少なくとも1つの第2の光学要素を選択する段階、少なくとも1つの第2の光学要素を投影対物器械から取り外す段階、及び少なくとも1つの第2の予備光学要素を第2の光学要素の位置で投影対物器械内に挿入する段階を含み、少なくとも1つの第2の予備光学要素は、測定によって得られる実際の像品質と望ましい像品質の間の差に応じて加工及び/又は選択される。
【0020】
少なくとも1つの第2の予備光学要素は、投影対物器械の像品質が、第1の光学要素の第1の予備光学要素による交換の後に、望ましい像品質に完全に調節することはできないが、第2の予備光学要素が、投影対物器械の補正の更に別の自由度をもたらすことができる場合に有利である。更に、第1の予備光学要素は、望ましい像品質に調節することを可能にするために、非球面又は更に非回転対称補正表面が設けられるか、又は第2の予備光学要素が屈折型のものである場合には、望ましい屈折率分布を有するように選択されるという具合に加工及び/又は選択されると上述したが、第1の予備光学要素がそのような加工処理を受け入れず、及び/又はそのような加工処理が望ましい像品質を生じる情勢にない事態が発生する可能性がある。例えば、第1の予備光学要素は、材料の不均質性誤差を受ける可能性があり、像品質からの偏差を引き起こす。そのような事例では、第2の予備光学要素は、その表面の機械加工を可能にするように設計することができ、及び/又は望ましい屈折率分布を有するようにより簡単に選択することができ、更に、望ましい像品質を調節するための補正要素として用いることができる。この実施形態は、第1の予備光学要素が、例えば、液浸型投影対物器械における像平面の隣の最後の光学要素であるか、又は2重液浸型投影対物器械における最後から2番目の光学要素である場合に特に有利である。
【0021】
この関連において、第2の予備光学要素を投影対物器械内に挿入する前に、少なくとも1つの第2の予備光学要素が加工される場合には更に好ましい。
好ましくは、少なくとも1つの第2の予備光学要素の加工段階は、少なくとも1つの第2の予備光学要素の材料の厚みを変更する段階を含む。
少なくとも1つの第2の予備光学要素の材料の厚みを変更する段階は、第1の予備光学要素が、その元の状態の第1の光学要素に対して低減した厚みを有する場合に適切な補正機構であることが分かっている。
【0022】
更に好ましくは、少なくとも1つの第2の予備光学要素の加工段階は、少なくとも1つの第2の予備光学要素の少なくとも1つの表面に非球面又は更に非回転対称の表面形状を与える段階を含む。
少なくとも1つの第2の予備光学要素に非球面又は更に非回転対称の表面形状を与える段階により、望ましい像品質に調節することを可能にするための改善された補正機能を獲得することができる。
【0023】
更に別の好ましい実施形態では、前に取り外された少なくとも1つの第2の光学要素は、加工した後に少なくとも1つの第2の予備光学要素になる。同様の実施形態は、第1の予備光学要素に関して上述している。
更に好ましい実施形態では、本方法は、更に、少なくとも1つの第1の予備光学要素を挿入した後、かつ少なくとも1つの第2の予備光学要素を加工する前に、現場で投影対物器械の像品質を測定する段階、及び測定された像品質に応じて少なくとも1つの第2の予備光学要素に関する補正プロフィールを計算する段階、並びに計算された補正プロフィールに応じて少なくとも1つの第2の予備光学要素を加工する段階を含む。
【0024】
この「2段階」処理は、第1の予備光学要素が、投影対物器械内に挿入される時の変形に対して感受性が高い場合に特に有利である。第1の予備光学要素を投影対物器械内に挿入することにより、第1の予備光学要素の挿入の前には予め模擬することができない第1の予備光学要素の変形が発生する場合がある。この場合には、まず第1の予備光学要素を投影対物器械内に挿入し、投影対物器械の像品質を測定し、この後望ましい像品質を得るために、第2の予備光学要素に要求される補正プロフィールを計算することが有利である。それにより、第1の予備光学要素の挿入処理によって引き起こされる像欠陥が、第2の予備光学要素に関する補正プロフィールを計算する時に考慮される。相応に第2の予備光学要素を加工した後、第2の予備光学要素は、投影対物器械内に挿入される。
【0025】
代替的な実施形態では、少なくとも1つの第2の予備光学要素は、第1の予備光学要素の光学効果のシミュレーションに基づく望ましい像品質に応じて加工され、この後、第1及び第2の予備光学要素は、投影対物器械内に挿入される。
この「1段階」処理は、所用時間の短縮という点で有利であり、特に第1の予備光学要素が、投影対物器械内に挿入される時の変形に感受性がないか又は低い場合に用いることができる。
【0026】
別の好ましい実施形態では、像品質の調節段階は、光学システムの劣化の前の像品質を少なくともほぼ維持する段階を含む。
この手段の利点は、投影対物器械の指紋が、修正/修理処理によって少なくともほぼ変更されないことである。
像品質の調節段階が、例えば、投影対物器械の使用における作動要件に従って少なくとも1つの特定の像欠陥を増加及び低減することにより、光学システムの劣化の前の像品質に対して像品質を変更する段階を含む場合も好ましいものとすることができる。
【0027】
冒頭で既に上述したように、ある一定の状況下の顧客は、ある一定のリソグラフィ露出処理において、コマ収差のような像欠陥を増加させようと望む場合がある。好ましい実施形態では、本質的に同一の光学性能を有するいくつかのリソグラフィ装置を確立するためにいくつかのスペアパーツに個々の補正表面を設けることができる。
そのような作動要件は、投影露光装置の照明設定及び/又は投影対物器械によって結像すべき物体を含むことができる。
【0028】
更に別の好ましい実施形態では、像品質の調節段階は、複数の光学要素のうちの光学要素の少なくとも1つの位置及び/又は形状を調節する段階を含む。
光学要素の1つ又はそれよりも多くの位置の調節段階は、適切なアクチュエータ又はマニピュレータによるx、y、及び/又はz平行移動的及び/又は回転的位置決め段階を含むことができ、適するアクチュエータ又はマニピュレータによって変形させることができる能動レンズ要素の場合には、調節段階は、そのような光学要素の形状を調節する段階を含むことができる。代替的又は追加的に、能動レンズ要素のマニピュレータは、光学要素が屈折型のものである場合には光学要素の屈折率分布を変えることができる。これは、屈折要素を加熱及び/又は冷却、圧搾及び/又は屈曲することによって達成することができる。
【0029】
更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1の光学要素は、像平面の隣の最後のレンズ要素であり、液浸型投影対物器械の場合には、液浸液は、光学要素に含まれない。
更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1の光学要素は、2重液浸型投影対物器械における最後から2番目のレンズ要素である。
既に上述のように、特に液浸型投影対物器械の最後のレンズ要素は、例えば、レンズ要素の液浸液との接触又はコーティングを傷つけることに起因して、多くの場合に劣化を受ける。最後の光学要素は、入射側に大きな曲率を有し、好ましくは、像平面の隣に平面表面を有する比較的肉厚なレンズとすることができる。また、このレンズは、像に近い大きな屈折力集中に起因する劣化を受ける可能性もある。
【0030】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第2の光学要素は、屈折力を持たない要素であり、2重液浸型投影対物器械の場合には、少なくとも1つの第2の光学要素は、2つの液浸液の間に位置した平行平面板である。
補正要素として選択されることになる第2の光学要素としての平行平面板の使用は、凹及び/又は凸表面を有する光学要素に対して、補正表面を有するそのような要素を設ける点におけるより良好な統御性という利点を有する。
【0031】
少なくとも1つの第2の光学要素は、好ましくは、投影対物器械の視野平面の近くか又は瞳平面の近くの位置に配置される。視野平面の近くの位置にある平行平面板は、視野依存の像欠陥に対して特に感受性があり、従って、そのような像欠陥を補正することができ、瞳平面の近くに位置決めされた平行平面板は、特に、視野にわたって少なくともほぼ一定である像欠陥を補正することができる。
本発明の範囲内では、一方が投影対物器械の視野平面の近くに配置され、他方が瞳平面の近くに配置された補正要素として選択することができる2つの第2の光学要素が存在する場合には特に好ましい。
【0032】
本発明は、更に、上述の方法の1つ又はそれよりも多くの実施形態によって修正/修理される投影対物器械を提供する。
更に別の利点及び特徴は、以下の説明及び添付図面から明らかになるであろう。
上述の特徴及び下記に更に説明することになるものは、所定の組合せにおいて適用可能であるのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく他の組合せ又は単独でも適用可能であることは理解されるものとする。
例示的な実施形態を図面に示し、これを参照してそれを以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】投影対物器械を含むリソグラフィ露光装置の概略図である。
【図2】図1の投影対物器械を修正/修理する方法の第1の実施形態の流れ図である。
【図3】図1の投影対物器械を修正/修理する方法の第2の実施形態の流れ図である。
【図4】投影対物器械内の光学要素の差し替え後の異なる補正処理の効果を示すための図である。
【図5】液浸型反射屈折投影対物器械の設計を示す図である。
【図6】液浸型反射屈折投影対物器械の別の設計を示す図である。
【図7】2重液浸型反射屈折投影対物器械を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、一般的に参照番号10とラベル付けしたリソグラフィ投影露光装置を略示する。例えば、投影露光装置10は、半導体素子を製造するマイクロリソグラフィ処理に用いられる。
投影露光装置10は、投影対物器械11を含み、投影対物器械11は、投影対物器械11の対物面12内に配置された物体(レチクル)14を投影対物器械11の像平面16内に配置された基板18(ウェーハ)上に結像する。物体14を基板16上に結像するための光は、光源20(例えば、レーザ)によって生成され、照明光学器具22によって物体14上に導かれ、光は、物体14から投影対物器械11の中に入射する。
【0035】
基板18上への物体14の結像は、照明光学器具22からの光が、物体14の寸法よりも幅が小さい走査スロット24を通じて物体上に導かれるいわゆる走査処理で実施される。物体14全体を基板18に漸次的に投影するために、物体14は走査方向26に変位され、一方で台28上に配置された基板18は、走査方向26とは反対の方向30に変位される。
投影対物器械11は、投影対物器械11を通じる光の伝播方向(z方向)に配置された複数の光学要素を含む。図示の実施形態では、投影対物器械11は、6つの光学要素を含み、そのうちの4つは、屈折力を有する光学要素、すなわち、光学要素32、34、36、及び38である。残りの2つの光学要素40及び42は、屈折力を持たない光学要素であり、図示の実施形態では平行平面板である。
【0036】
光学要素の個数は、6よりも多く又は少なくすることができることは理解されるものとする。更に、光学要素の形状は、図示の形状に制限されない。液浸リソグラフィでは、一般的に6つよりも多くのレンズ及び少なくとも1つのミラーが用いられる。光学要素の個数及び形状は、結像性能の要件によって判断される。一般的に、248nm又は193nmの波長では、ほぼ10×30mmの結像視野にわたって1nm(rms)よりも小さい波面収差、及び0.9を十分に超える開口数であり、かつ水のような液浸液によって可能となったNA=1.3程度までの開口数が必要である。
【0037】
光学要素32から42は、マウント32aから42aによって位置を調節可能とすることができるようにマウント32aから42a内に保持される。
光学要素32から42のうちの一部、この実施形態では32から42の全ての光学要素には、各光学要素32から42の位置を調節するために、アクチュエータ又はマニピュレータ32bから42bが割り当てられる。アクチュエータ又はマニピュレータは、光学要素32から42を図1に示す座標系に従ってx、y、及び/又はz方向に位置決めすることが可能なものとすることができる。平行移動だけではなく、x、y、及び/又はz軸回りの回転移動も可能であることは理解されるものとする。更に、光学要素32から42のうちの一部は、能動的に変形可能な要素として構成することができ、及び/又はこれらが屈折型のものである場合には、その屈折率分布を変えることができ、アクチュエータ32bから42bのうちの一部は、対応する光学要素32から42を変形し、及び/又はこれらの光学要素が屈折型のものである場合には、その屈折率分布を変えることができるように設計することができる。
【0038】
投影対物器械11のある一定の稼働時間の後には、光学要素32から42のうちの1つ又はそれよりも多く、特に屈折力を有する光学要素32から38は、劣化する可能性がある。
例えば、投影対物器械11が液浸リソグラフィに用いられる場合には、最後の光学要素38は、光学要素38のコーティング及びバルク材料に対して腐食性を有する液浸液(示していない)と接触状態にある。ある一定の稼働時間の後には、光学要素38は、投影対物器械11を修理すべきである程度まで劣化する場合がある。
【0039】
図2を参照して、投影対物器械11を修理する方法を以下に説明する。以下の説明では、光学要素38を第1の光学要素と呼ぶ。
下記に説明する方法は、現場、すなわち、顧客の場所で光学要素32から42の全てを差し替える必要なしに実施することができ、光学要素32から42のうちの2つの差し替えのみを必要とする。これらの2つの光学要素は、劣化した第1の光学要素38、及び以下に第2の光学要素と呼ぶ光学要素40及び42の一方である。
【0040】
投影対物器械11を修理する方法は、50aにおいて、第1の光学要素38の交換品として用いることができる少なくとも1つ、好ましくは、複数の第1の予備光学要素を設ける段階を含む。従って、第1の予備光学要素は、劣化の後に交換されることになる第1の光学要素38の通りに設計及び製造される。52aでは、第1の予備光学要素による第1の光学要素38の差し替えに関連する全てのデータを判断して記憶する。
【0041】
50b及び52bでは、少なくとも1つ、好ましくは、複数の第2の予備光学要素を準備し、これらの差し替え処理に関連するデータを判断して記憶する。以下の説明では、第2の予備光学要素は、第2の光学要素40の交換品として用いられると仮定する。
54では、現場で実際の修理処理が実施される時の応答時間を短縮するために、全ての第1及び第2の予備光学要素をプール内に収集する。
修理が望ましい場合は、参照番号56で示すように、プールから第1及び第2の予備光学要素が取り出される。
【0042】
次に、58では、第1の予備光学要素を投影対物器械11の元の状態における第1の光学要素38と比較した光学効果の差を模擬する。第1の予備光学要素が、交換すべき第1の光学要素38に従って設計及び製造されたとしても、第1の光学要素38の元の状態のものの特性と全く等しい特性を有する第1の予備光学要素を設けることは不可能であることに注意されたい。従って、第1の予備光学要素と第1の光学要素の元の状態のものとの間の光学効果に何らかの差が存在することになる。
【0043】
58における模擬段階の結果に基づいて、第1の予備光学要素と第1の光学要素38とを対比した光学効果の差を補正又は相殺するために第2の予備光学要素が有するべきである補正表面形状を計算する。
補正表面形状は、通常は非球面又は更に非回転対称形状である。
62では、段階60で計算した補正表面形状を有する第2の予備光学要素を設けるために、第2の予備光学要素を加工、例えば、機械加工する。
【0044】
第1の予備光学要素が、そのような加工、特に第1の予備光学要素の機械加工を受け入れる場合には、補正表面を第1の予備光学要素上に設けることができることに注意されたい。しかし、一部の事例では、特に、第1の予備光学要素が、フッ化カルシウムの場合のように加工、特に機械加工することが困難な材料で作られている場合には、加工処理は不可能であるか、又は少なくとも第1の予備光学要素と交換すべき第1の光学要素との間の光学効果の差によって引き起こされる像欠陥を補正するのに必要になる範囲では不可能である。
【0045】
次に、第1の予備光学要素及び第2の予備光学要素を顧客に搬送する。
64では、第1の光学要素38及び第2の光学要素40を投影対物器械11から取り外す。
66では、第1及び第2の予備光学要素は、投影対物器械内でそれぞれの光学要素が投影対物器械11からのこれらの光学要素の取り外しの前に配置されていた位置に挿入される。
68では、望ましい像品質に調節するために、投影対物器械11の像品質が、特にアクチュエータ又はマニピュレータ32bから42bを用いることによって調節される。
【0046】
70では、実際の像品質を測定し、その後、別の調節段階を続けることができる。光学要素32から42の全て又は一部を位置決め及び/又は変形することだけで、望ましい像品質に調節することができない場合には、第2の予備光学要素の別の補正を実施することができ、この補正では、前に挿入した第2の予備光学要素を投影対物器械11から再度取り外し、それを補正するか、又は実際の第2の予備光学要素に対する交換品として、望ましい像品質に従って前に加工した別の第2の予備光学要素を設けることができる。
前に説明した投影対物器械11を修理する方法は、「1段階」処理である。
【0047】
図3を参照して、以下に「2段階」修理処理を説明する。
段階50a、50b、52a、52b、54、及び56は、前に説明した方法の対応する段階に等しい。図3では、図2における段階58を省略しているが、段階58は、図3による方法において用いることもできる。
図3による方法と図2による方法の間の差は、第2の予備光学要素によってもたらされる補正が、投影対物器械11内への第1の予備光学要素の挿入の前ではなく後に計算される点である。
【0048】
従って、74では、劣化した第1の光学要素(光学要素38)を投影対物器械11から取り外す。76では、第1の予備光学要素を投影対物器械11内の第1の光学要素(光学要素38)が元の状態で配置されていた位置に挿入する。
次に、第1の予備光学要素を位置調節し(78において)、像品質を測定する(80において)。
82では、第2の予備光学要素によってもたらされることになる必要な補正を前の測定段階の結果に基づいて計算する。
【0049】
この手順の利点は、投影対物器械11内に挿入する時に第1の予備光学要素が変形された場合に、投影対物器械11の像欠陥に寄与するそのような変形が、第2の予備光学要素によってもたらされることになる必要な補正の計算の中に含まれる点である。更に、図2による方法における計算段階60は、第1の予備光学要素と交換すべき第1の光学要素とを対比した光学効果の差のシミュレーションだけに基づくのに対して、計算段階82は、投影対物器械11全体の光学性能、すなわち、全ての光学要素32から42の光学性能をも含む。特に、第1の予備光学要素の屈折率分布における差は散乱する可能性があり、それによって第1の予備光学要素を有する光学システムの光学性能のシミュレーションは、必要な精度では不可能である可能性がある。従って、第1の予備光学要素の挿入の後に、まず光学性能を測定し、次に第2の予備要素の補正表面を計算することが有利であろう。
【0050】
84では、通常は非球面又は更に非回転対称の表面形状になる補正表面形状を有する第2の予備光学要素を設けるために、計算段階82に基づいて第2の予備光学要素を加工、特に機械加工する。
86では、第2の予備光学要素11を投影対物器械11内に挿入し、投影対物器械11を調節し(88において)、更に90において像品質を再度測定する。第1の予備光学要素の投影対物器械11への挿入の後に計算段階82が実施されているので、通常図3による方法は、第2の予備光学要素の補正の繰返しを必要としない。
【0051】
投影対物器械11の像品質の調節は、光学要素32から42のうちの1つ又はそれよりも多くの劣化の前の投影対物器械11の像品質を維持する目的に向けられるのみならず、像品質の変更に向けることができることに注意されたい。投影対物器械11の使用における作動要件に依存して、顧客は、ある一定の像欠陥を増加及び/又は低減させ、例えば、特定の照明設定又は投影対物器械11によって結像すべき特定の物体(レチクル)に対して有用なものとすることができるコマ収差を導入するか又は高めることが望ましい場合がある。
【0052】
以下に、図2及び3による方法の修正を以下に説明する。
図2及び3に関して既に説明したように、複数の第1及び第2の予備光学要素は、図2及び3に参照番号54で示すプール内に補給のために保持することが好ましい。更に、補給のために保持される第1及び第2の予備光学要素は、新たに製造された要素であることを上述した。しかし、既存の投影対物器械から取り外され、同じか又は他の投影対物器械における再使用に向けて再加工された光学要素から、少なくとも第1の予備光学要素のプールを構築することを想定することができる。
【0053】
より良い精度にするために、以下の修理処理の実施形態を適用することができる。
まず図1の投影対物器械11で、劣化した第1の光学要素38を投影対物器械11から取り外す。
次に、光学要素からコーティング及び/又は材料欠陥を除去するために、第1の光学要素38を再加工する。そのような再加工は、投影対物器械11からの取り外しの後に第1の光学要素38を機械加工することによって行うことができる。
【0054】
通常、第1の光学要素38のそのような再加工は、特に第1の光学要素の中心部の厚みの著しい低減を引き起こす。実験は、材料欠陥が除去される時に、そのような再加工手順において数μmから100μmよりも大きい範囲の厚み低減が発生する可能性があることを示している。
再加工された第1の光学要素38の厚みの著しい低減は、同じ投影対物器械11、又は投影対物器械11と同じ種類の別の投影対物器械において第1の予備光学要素として再使用される時に、投影対物器械の像品質の著しい変化を引き起こすことになる。
【0055】
従って、再加工された第1の光学要素が、投影対物器械11又は別の投影対物器械において第1の予備光学要素として用いられる場合には、著しい材料の厚み低減によって引き起こされる像欠陥を補正するための手段が必要である。
以下の補正処理及びこれらの処理の組合せを実施することができる。
補正処理のうちの1つは、好ましくは、移動の平行及び回転自由度、並びに与えられて入れば変形を含む光学要素32から42の移動の全ての自由度を用いて光学要素32から42の位置を再調節するために、アクチュエータ又はマニピュレータ32bから42bを用いる段階にある。
【0056】
別の補正処理は、再加工される第1の光学要素に非球面表面形状を与えるように厚みが低減したこの第1の光学要素を加工する段階にある。
更に別の補正処理は、複数の光学要素32から42から第2の光学要素、例えば、光学要素40及び/又は光学要素42を選択する段階、及びこれらの第2の光学要素に非球面又は更に非回転対称補正表面を設ける段階にある。
代替的に又は上述の補正処理に加えて、非球面又は更に非回転対称補正表面が設けられた第2の光学要素、又は複数の光学要素32から42のうちの別の光学要素は、第1の光学要素38の厚み低減によって引き起こされる像欠陥を相殺するために第2又は別の光学要素の厚みが変更、例えば低減されるように加工される。
好ましくは、上述の補正処理の組合せは、同時に又は段階的に実施される。
【0057】
図4は、柱が、適用された補正処理に依存する残留像欠陥を表す図を示している。第1の光学要素38は、厚みが約30μmだけ低減されるように加工されたものである。厚み低減を相殺するためのいかなる補正もない場合には、視野にわたる「RMS Z5」の最大値は110nmを超える。
図4の第1の柱は、光学要素32から42の再位置決めを用いる上記第1の補正処理を用いた後の残留「RMS Z5」を示している。相応に「RMS Z5」は、指標1だけ低減している。
第2の柱は、第1の柱に用いられた補正処理を用い、更に、第2の光学要素の厚み変更を用いた後の残留「RMS Z5」を示している。
【0058】
第3の柱は、基本段階(第1の柱)、及び第1の光学要素38自体の上の非球面補正表面を付加的に用いた後の残留「RMS Z5」を示している。
4番目の柱は、基本段階(第1の柱)及び第2の光学要素上の非球面補正表面を付加的に用いた後の残留「RMS Z5」を示している。
最後に5番目の柱は、柱1から4による全ての補正処理の組合せを用いた「RMS Z5」を示している。最終波面誤差Z5は、0.3nmRMSの許容限界値よりも十分に低い。
【0059】
図4は、投影対物器械11内の2つよりも多くの光学要素の差し替えを必要とせずに、再加工及び再挿入された第1の光学要素の著しい厚み低減によって引き起こされた像欠陥を相殺することができることを示している。
更に、上述の実施形態に関して、屈折力を有する光学要素32から38のうちの1つの光学要素の差し替えの後に、補正要素として選択することができる2つの第2の光学要素を投影対物器械11内に設けることができることに注意されたい。
特に、視野依存性を有する像欠陥を相殺するのみならず、視野にわたって実質的に一定の像欠陥を補正することを可能にするように、第2の光学要素40の一方は、視野平面の近くの位置に配置することができ、第2の光学要素40、42のうちの他方は、投影対物器械11の瞳平面の近くの位置に配置すべきである。
【0060】
図5は、光学要素101を第1の光学要素とする液浸型反射屈折投影対物器械の設計100を示している。特に、光学要素101は、CaF2、BaF2、LiF、LUAG、又はスピネルから作られるか、又はこれらの混合結晶である。点で印したレンズ及び/又はミラーは、非球面のものである。
図6は、光学要素201を第1の光学要素とし、第2の光学要素とする光学要素202が平行平面板である液浸型反射屈折投影対物器械の別の設計200を示している。第2の光学要素は、投影対物器械の瞳平面内に置かれる。点で印したレンズ及び/又はミラーは、非球面のものである。
図7は、光学要素301を第1の光学要素とし、第2の光学要素とする光学要素302が平行平面板である2重液浸型投影対物器械300を示している。第2の光学要素は、投影対物器械の視野平面の近くに置かれる。2つの液浸液は、303及び304である。最後の2つの図には点が存在しないが、この投影対物器械にも同様に非球面レンズ及び/又はミラーが存在してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 リソグラフィ投影露光装置
12 対物面
16 像平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折力を有する少なくとも1つの第1の光学要素を含む複数の光学要素を対物面と像平面の間に含む、リソグラフィ投影露光装置の投影対物器械を修正/修理する方法であって、該光学要素の全てを差し替えることなく、
少なくとも1つの第1の光学要素を現場で投影対物器械から取り外す段階と、
少なくとも1つの第1の予備光学要素を前記少なくとも1つの第1の光学要素の位置で前記投影対物器械内に挿入する段階と、
前記投影対物器械の像品質を望ましい品質に調節する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の予備光学要素を前記投影対物器械内にそれを挿入する前に加工する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加工する段階は、前記少なくとも1つの第1の予備光学要素を機械加工する段階を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加工する段階は、前記少なくとも1つの第1の予備光学要素の少なくとも1つの表面に非球面又は更に非回転対称の表面形状を与える段階を含むことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の予備光学要素は、前記投影対物器械からの取り外し及びその後の加工の後の前記第1の光学要素であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の光学要素の前記加工により、該少なくとも1つの第1の光学要素の厚みが、該少なくとも1つの第1の光学要素のその元の状態の厚みに比べて低減することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の予備光学要素は、前記取り外された第1の光学要素のその元の状態と同じ種類の本質的に同一の光学要素であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
像品質を調節する前記段階は、像品質を測定する段階、及び少なくとも1つの更に別の光学要素の移動及び/又は変形によって該像品質を調節する段階、及び/又はこの更に別の光学要素が屈折型のものである場合に該更に別の光学要素の屈折率分布を変える段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記投影対物器械は、液浸型のもの又は2重液浸型のものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の光学要素は、BaF2、LiF、BaLiF3、LUAG、又はスピネルのうちの1つであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の光学要素から少なくとも1つの第2の光学要素を選択する段階、該少なくとも1つの第2の光学要素を前記投影対物器械から取り外す段階、及び少なくとも1つの第2の予備光学要素を該第2の光学要素の位置で該投影対物器械内に挿入する段階を更に含み、
前記少なくとも1つの第2の予備光学要素は、測定によって得られる実際の像品質と前記望ましい像品質との間の差に応じて設計される、
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の予備光学要素を前記投影対物器械内に挿入する前に該少なくとも1つの第2の予備光学要素を加工する段階を更に含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第2の予備光学要素を前記加工する段階は、該少なくとも1つの第2の予備光学要素の材料の厚みを変更する段階を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加工する段階は、前記少なくとも1つの第2の予備光学要素の少なくとも1つの表面に非球面又は更に非回転対称の表面形状を与える段階を含むことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
以前に取り外された少なくとも1つの第2の光学要素が、前記少なくとも1つの第2の予備光学要素であることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第1の予備光学要素を挿入した後でかつ前記少なくとも1つの第2の予備光学要素を加工する前に現場で前記投影対物器械の像品質を測定する段階、及び該測定された像品質に応じて該少なくとも1つの第2の予備光学要素に対する補正プロフィールを計算する段階、及び該計算された補正プロフィールに応じて該少なくとも1つの第2の予備光学要素を加工する段階を更に含むことを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第2の予備光学要素は、前記第1の予備光学要素の光学効果のシミュレーションに基づく前記望ましい像品質に応じて加工され、その後に、該第1及び第2の予備光学要素は、前記投影対物器械内に挿入されることを特徴とする請求項12から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの第2の光学要素は、BaF2、LiF、BaLiF3、LUAG、又はスピネルのうちの1つであることを特徴とする請求項11から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記像品質を前記調節する段階は、光学システムの劣化の前の像品質を少なくともほぼ維持する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記像品質を前記調節する段階は、光学システムの劣化の前の像品質に対して該像品質を変更する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記像品質を前記変更する段階は、前記投影対物器械の使用時の作動要件に従って少なくとも1つの特定の像欠陥を増加及び低減する段階の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記作動要件は、前記投影露光装置の照明設定及び前記投影対物器械によって結像される物体の種類のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記像品質を前記調節する段階は、前記複数の光学要素のうちの前記光学要素の少なくとも1つの位置及び形状の一方を調節する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの第1の光学要素は、前記像平面に最も近いレンズ要素であることを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの第2の光学要素は、前記像平面に最も近いレンズ要素であることを特徴とする請求項11から請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの第2の光学要素は、屈折力を持たない要素、特に平行平面板であることを特徴とする請求項11から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1から請求項26のいずれか1項に従って修正/修理されたことを特徴とする、投影露光装置の投影対物器械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−58801(P2013−58801A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269465(P2012−269465)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2009−517015(P2009−517015)の分割
【原出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】