説明

リソグラフィ装置及びデバイス製造方法

【課題】 パッシブガスフローシステムを含む第1の方向に移動するコンポーネントを有するリソグラフィ装置を提供する。
【解決手段】 パッシブガスフローシステムは、コンポーネントが第1の方向に移動するときにパッシブガスフローシステム内へガスを動かすガス入口と、ガス管路によってガス入口に接続され、パッシブガスフローシステム内へ動かされるガスを方向に誘導するガス出口とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、リソグラフィ装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが与えられる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0003】
[0003] パターニングデバイスの領域内の内部のガス環境を制御して可変特性を備えた汚染物質及び/又はガス(例えば、空気)が放射ビーム及び/又はパターニングデバイスの感応素子に干渉することを防止することができる。内部のガス環境は通常、外側の領域から実質的に隔離されるが、好ましくは封止される。内部のガス環境に通じる出口を有するガス供給システムを提供して内部のガス環境内の過圧を維持するように構成できる。過圧は、ガスの一定のフローを内部のガス環境から押し出すことができる。ガスの一定の外向きのフローは、汚染物質の流入を防止する助けになる。ガスの一定のフローを漏れがある封止、例えば、対向するフロー制限面を通して運ぶことができる。
【0004】
[0004] パターニングデバイスの支持体は、主として一定の方向に直線的に駆動される(したがって、主として、その方向にパターニングデバイスを駆動する)ように構成できる。方向は、Z軸と呼ばれる投影システムの軸に垂直であってもよい。この方向は、Y方向とも呼ばれる。
【発明の概要】
【0005】
[0005] パターニングデバイス支持体の運動は、内部のガス環境の汚染レベルを増加させることがある。例えば、支持体の運動は、汚染物質が対向するフロー制限面に提供される封止を破る程度を増大させることがある。支持体の運動によって内部のガス環境の外側のガス環境の望ましくない変動が引き起こされることがある。このような変動は、支持体の一部を測定するデバイスに干渉する場合がある。内部のガス環境から流出するガスフローを制御するフロー制限面は、支持体の運動を駆動する磁石システムの過熱の一因になることがある。
【0006】
[0006] 例えば、支持体の運動に関連付けられた上記の問題、又はその他の問題の少なくとも1つに対処する構成を提供することが望ましい。
【0007】
[0007] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置であって、リソグラフィ装置の使用中に少なくとも第1の方向に移動するように構成されたコンポーネントを備え、該コンポーネントは、パッシブガスフローシステムを含み、該パッシブガスフローシステムは、コンポーネントが第1の方向に移動するときに、コンポーネントの第1の方向の移動がガスをパッシブガスフローシステム内へ動くように構成されたガス入口と、ガス管路によってガス入口に接続され、コンポーネントの第1の方向の移動によってパッシブガスフローシステム内へ動かされるガスをコンポーネントに対してある方向に誘導するように構成されたガス出口とを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0008】
[0008] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置を用いてパターニングデバイスから基板へパターンを転写するステップを含むデバイス製造方法であって、パッシブガスフローシステムを備えるリソグラフィ装置のコンポーネントを第1の方向に移動させるステップと、コンポーネントが第1の方向に移動する際に、コンポーネントの移動によって、ガス入口を介してガスをパッシブガスフローシステム内へ動かすステップと、ガス管路を通してガス入口からパッシブガスフローシステム内へ動かされたガスを、コンポーネントに対してガスをある方向に誘導するガス出口へ送るステップとをさらに含むデバイス製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
[0009] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【図1】[00010]本発明のある実施形態によるリソグラフィ装置を示す。
【図2】[00011]内部のガス環境と、パターニングデバイスの支持体の上側の第1及び第2の平面要素とを示す。
【図3】[00012]内部のガス環境と、支持体の下側の第1及び第2の平面要素とを示す。
【図4】[00013]本発明のある実施形態によるシステムを示す。
【図5】[00014]本発明のある実施形態によるある位置にあるシステムを示す。
【図6】[00014]本発明のある実施形態による別の異なる位置にあるシステムを示す。
【図7】[00015]本発明のある実施形態と併用できるガス入口の詳細を示す。
【図8】[00015]本発明のある実施形態と併用できるガス入口の詳細を示す。
【図9】[00015]本発明のある実施形態と併用できるガス入口の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0010] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示したものである。この装置は、
− 放射ビームB(例えばUV放射又はDUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
− パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
− 基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板Wを正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
− パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ又は複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSとを備える。
【0011】
[0011] 照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁、静電型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0012】
[0012] 支持構造MTはパターニングデバイスを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。この支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械、真空、静電式等のクランプ技術を使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0013】
[0013] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0014】
[0014] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0015】
[0015] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電気光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0016】
[0016] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
【0017】
[0017] リソグラフィ装置は、例えば2つ以上の基板テーブル、又は1つ又は複数の基板テーブルと1つ又は複数のセンサ又は測定テーブルとの組合せのような2つ以上のテーブル(あるいはステージあるいは支持体)を有するタイプでもよい。このような「マルチステージ」機械では、追加のテーブルを並行して使用してもよく、又は準備ステップを1つ又は複数のテーブル上で実行する一方で、1つ又は複数の別のテーブルを露光用に使用してもよい。リソグラフィ装置は、同様に基板、センサ及び測定テーブルと並行して使用してもよい2つ以上のパターニングデバイス(又はステージ又は支持体)を有してもよい。
【0018】
[0018] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、例えば水などの比較的屈折率の高い液体によって基板の少なくとも一部が覆われるタイプであってもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムとの間などのリソグラフィ装置の他の空間に施されるものであってもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増大させる技術において周知である。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造が液体内に完全に浸漬されているということのみを意味するのではなく、露光の際に投影システムと基板との間に液体が存在するということを意味する。これは、液体内に浸漬された基板などの構造を含んでいても、又は含んでいなくてもよい。参照符号IMは、液浸技術を実施する装置の位置を示す。このような装置は、液浸液の供給システムと問題の領域内に液体を封じ込める封止部材とを含んでもよい。このような装置は、任意選択として、基板テーブルが完全に液浸液に覆われるように構成されていてもよい。
【0019】
[0019] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDを用いて、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0020】
[0020] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するアジャスタADを備えていてもよい。通常、少なくともイルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調整することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。放射源SOと同様、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一部を形成すると考えてもよいし、又は考えなくてもよい。例えば、イルミネータILは、リソグラフィ装置の一体化部分であってもよく、又はリソグラフィ装置とは別の構成要素であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置は、イルミネータILをその上に装着できるように構成することもできる。任意選択として、イルミネータILは着脱式であり、別に提供されてもよい(例えば、リソグラフィ装置の製造業者又は別の供給業者によって)。
【0021】
[0021] 放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MAに入射し、パターニングデバイスMAによってパターニングされる。パターニングデバイスを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPWと位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)の助けを借りて、基板テーブルWTは、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めできるように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、支持構造MTの移動は、第1のポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、支持構造MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、パターニングデバイスMA上に複数のダイを設ける状況では、パターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0022】
[0022] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードにおいては、支持構造MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードにおいては、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、支持構造MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0023】
[0023] 上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0024】
[0024] 上述のように、パターニングデバイスMAの領域内に(パターニングデバイスMAの上方及び/又は下方に)制御された内部のガス環境を維持することが望ましい。図2は、例えば、支持体MTの上方の領域内で内部のガス環境4の制御を達成する方法の概略を示す構成を示す。そのような内部のガス環境は、望ましくはリソグラフィ装置のその他の部分、例えば、基板テーブル又はその一部の領域内に提供してもよいことを理解されたい。例えば、位置センサなどのセンサの周囲で内部のガス環境を制御することが望ましい。本明細書に記載する本発明のある実施形態はそのような別の文脈で使用でき、すなわち、本発明のある実施形態を記述するための文脈に限定されないことを理解されたい。
【0025】
[0025] この例の内部のガス環境4は、一方では、パターニングデバイスMAと支持体MTとの間、他方では、照明システムILの最終要素(及びそれを囲むハードウェア)2との間に位置する。したがって、図示の内部のガス環境4は、放射ビームがパターニングデバイスMAの遭遇する前に通過する容積である。
【0026】
[0026] この例では、出口7を介して内部のガス環境4にガスを供給するガス供給システム5が提供される。ガスは、制御された組成で、及び/又は制御された流量で供給できる。任意選択として、内部のガス環境4内では過圧が維持される。過圧によって矢印6で概略的に示すように外向きのガスフローが生まれる。ガス供給システム5及び/又は出口7は、パターニングデバイス支持体MT(図示の)及び/又はパターニングデバイス支持体MTの上方及び/又は下方の要素内に装着可能である。例えば、ガス供給システム5及び/又は出口7は、照明システムILの最終要素2内に装着できる。代替的に又は追加的に、ガス供給システム5及び/又は出口7は、投影システムPSの最終要素3内に装着できる。
【0027】
[0027] フローの空間配水/速度は、第1及び/又は第2の平面要素8、10によって制御できる。第1の平面要素8は、例えば第1のフロー制限面8aを提示する。第2の平面要素10は、例えば第2のフロー制限面10aを提示する。平面要素8、10は、通常、第1及び第2のフロー制限面8a、10aが全体に平面である、すなわち、標準の技術許容値内で、フロー制限面8a、10aの間のガスフローをさらに制限するために提供できる入念に形成された突起及び/又は凹部にかかわらず平面であるように構成されている。平面要素8、10の一方又は両方をプレートなどの別の要素として形成し、リソグラフィ装置のコンポーネント(例えば、第1の平面要素8の場合には支持体MT)に取り付けることができる。代替的に又は追加的に、平面要素8、10の一方又は両方は、別のコンポーネントの一体部分として形成できる。平面要素8、10の一方又は両方は、Z軸に対して互いに平行に離間した2つの実質的に平行な平面を含んでもよい。あるいは、平面要素8、10の一方又は両方は、単一の平面(この例ではフロー制限面8a、10aになる)のみを含んでもよい。
【0028】
[0028] フロー制限面8a、10aは互いに対向し、それらの間のギャップを通過する内向き及び外向きのガスフローに抵抗するように構成される。内向きのガスフローへの抵抗によって内部のガス環境4の汚染を低減する助けになる。外向きのガスフローへの抵抗によってガス供給システム5が内部のガス環境4内の実質的に安定した過圧を維持する助けになる。また、フロー制限面8a、10aは、ガスのアウトフローが通過する比較的小さいギャップを提示する。この結果、ガスのアウトフローの速度が増加する。速度の増大によって内側への汚染が防止される。さらに大きいアウトフロー速度が以下の理由から有益である。パターニングデバイス支持体MTは、第1の意味のY方向に沿って移動するときにその伴流内に周囲ガス(望ましくは内部のガス環境に侵入しない)で充填される傾向がある低圧領域を生成する。次に、パターニングデバイス支持体MTが第2の逆の意味のY方向にスキャンするときには、内部のガス環境への周囲ガスの大幅なインフローを最小限にするか又は完全に回避するために、出力速度は少なくともパターニングデバイス支持体MTのスキャン速度よりも大きいことが望ましい(また、望ましくは、スキャン速度プラス低圧領域内への周囲ガスのインフローの最大速度より大きい)。
【0029】
[0029] フロー制限面8a、10aは、互いに実質的に平行になるように構成できる。フロー制限面8a、10aの離間距離は、内部のガス環境4内の過圧を確立するためのガス供給システム5及び/又は出口7を介した所与のガス供給の所望レベルのアウトフロー速度を提供できる程度の小ささでなければならない。
【0030】
[0030] 図3は、内部のガス環境4がパターニングデバイスMAの下方に位置する図2の構成に対応する構成を示す。図示の内部のガス環境4は、放射ビームがパターニングデバイスMAに遭遇した後で通過する容積である。内部のガス環境4は、一方では支持体MTとパターニングデバイスMAとによって、また他方では投影システムPSの第1の要素(及びそれを囲むハードウェア)3によって封じ込められる。この例の支持体MTは、その下側部分に形成された第1の平面要素9を含む。第1の平面要素9は、第1のフロー制限面9aを有する。投影システムPSの第1の要素は、その上面に装着された第2の平面要素11を有する。第2の平面要素11は、第2のフロー制限面11aを有する。第2のフロー制限面11aは、第1のフロー制限面9aに対向するように構成される。平面要素9、11の一方又は両方は、Z軸に対して互いに平行に離間した2つの実質的に平行な平面を含んでもよい。あるいは、平面要素9、11の一方又は両方は、単一の平面(この例ではフロー制限面9a、11aになる)のみを含んでもよい。上記の図2の構成と同様、フローの配水/速度は、第1及び第2の平面要素9、11の構成によって制御できる。
【0031】
[0031] 図2の構成及び図3の構成の両方で、矢印6は、ガス供給システム5の出口7から内部のガス環境4の中央領域を通り、フロー制限面8a、9a、10a、11aの間のギャップを通して内部のガス環境4の外側の領域へ流れるガスフローを概略的に示す。
【0032】
[0032] 図2及び図3の内部のガス環境4は、別々の場所に示されている。しかし、ある実施形態では、内部のガス環境4は互いに隔離されていない。内部のガス環境4は結合していてもよい。この場合、単一のガス供給システム5を提供できる。単一のガス供給システム5は、パターニングデバイスMAの上方又は下方に単一の出口7を有してもよい。ガスは、パターニングデバイスMAの上方の内部のガス環境4とパターニングデバイスMAの下方の内部のガス環境4との間の1つ又は複数の連通によってパターニングデバイスMAの上方の内部のガス環境4とパターニングデバイスMAの下方の内部のガス環境4との間で流れることができる。あるいは、単一のガス供給システム5は、パターニングデバイスMAの下方、上方、又は下方及び上方の複数の出口7を有してもよい。
【0033】
[0033] 図示の例では、ガス供給システム5及び/又は出口7は支持体MTに組み込まれる。しかし、ガス供給システム5及び/又は出口7は、他のコンポーネントに装着されてもよい。例えば、ガス供給システム5及び/又は出口7は、照明システムILの最終要素(又はそれを囲むハードウェア)2及び/又は投影システムPSの第1の要素(又はそれを囲むハードウェア)3に装着してもよい。
【0034】
[0034] 図4は、パターニングデバイス支持体MTの縁部に適用される本発明のある実施形態を概略的に示す。図示のように、ガスフローを生成するアクティブなコンポーネントを有さず、装着された先のコンポーネントの移動によってガスフローを生成するシステムであるパッシブガスフローシステム20が提供される。パッシブガスフローシステム20は、ガス入口21と、ガス出口22と、ガス入口21をガス出口22に接続するガス管路23とを含む。
【0035】
[0035] パッシブガスフローシステム20のガス入口21は、装着先のパターニングデバイス支持体MTが図4の矢印によって示される第1の方向に移動すると、パターニングデバイス支持体MTの移動がガスをガス入口21内へ向かわせる。パッシブガスフローシステム20のガス入口21内へ動かされたガスは、その後、ガス管路23を通してガス出口22へ動かされる。パッシブガスフローシステム20のガス出口22は、パターニングデバイス支持体MTの移動によってパッシブガスフローシステム20を通して動かされるガスが、パターニングデバイス支持体MTに対してある方向のガスフローとして提供されるように、構成される。
【0036】
[0036] 図4に示す実施形態では、ガス出口22は、上記の1対のフロー制限面8a、10aの一方を形成するパターニングデバイス支持体MTの上側平面8a内に提供される。ガス出口22は、ガス出口22から流出するガスフロー24が、パターニングデバイス支持体MTの表面8aに対してほぼ垂直な方向から第1の方向に対してほぼ10°の方向、すなわち、ガスフローを生成するパターニングデバイス支持体MTの移動方向までの範囲から選択した角度26の方向に提供されるように構成できる。ある実施形態では、ガス出口22は、ガスフローが、表面8aに対してほぼ垂直な方向から第1の方向に対してほぼ45°の方向までの範囲から選択した方向に提供されるように構成できる。
【0037】
[0037] したがって、パッシブガスフローシステム20のガス出口22からのガスフロー24は、少なくとも部分的に第1の方向を向く、すなわち、パターニングデバイス支持体MTの縁部が第1の方向に移動する際に経験できる「逆風」に対して少なくとも部分的に対向する方向に向かっていてもよい。したがって、ガスフロー24によって外部ガスが1対のフロー制限面8a、10aの間を通して内部のガス環境4へ向かって通過する可能性を低減することができる。しかし、上記構成は、いかなるアクティブなコンポーネントを提供することなく達成可能である。特に、パッシブガスフローシステム20から出力されるガスフロー24を提供するために追加のガス供給は不要である。したがって、リソグラフィ装置の製品コスト及び/又はリソグラフィ装置の運用コストの大幅な増加を回避することができる。
【0038】
[0038] 所望のガスフロー24を提供するために、パッシブガスフローシステム20のガス出口22の断面積は、パッシブガスフローシステム20のガス入口21の断面積より小さくてもよい。一般に、パッシブガスフローシステム20のガス出口22の断面積が小さいほど、パターニングデバイス支持体MTの所与の移動速度に対して与えられる出力ガスフロー24の流速は大きくなる。しかし、パッシブガスフローシステム20のガス出口22の断面積が小さいほど、パターニングデバイス支持体MTの移動の特定の速度に対するガスフロー24の総量は小さくなる。したがって、サイズの選択がそれらの兼ね合いで決定される。
【0039】
[0039] 同様に、ガス出口22の向き、すなわち、上記の範囲内からのガス出口22によるガスフロー24の一定方向の選択もそれらの兼ね合いで決定される。例えば、ガス出口22から出力されるガスフロー24の第1の方向に対する角度が小さいほど、ガスフロー24は、外部ガスがフロー制限面8a、10aの間を通って内部のガス環境4内に流入するのを防止する効果が高い。しかし、この角度が小さいほど、パターニングデバイス支持体MTの移動の特定の速度に対して生成されるガスフロー24は小さくなる。
【0040】
[0040] 上記のように、パッシブガスフローシステム20によって生成されガス出口22によって出力されるガスフロー24は、パターニングデバイス支持体MTの移動速度によって変化する。しかし、このガスフローの必要性もパターニングデバイス支持体MTの移動速度によって変化する。特に、パターニングデバイス支持体MTが低速の場合、外部ガスがフロー制限面8a、10aの間を通って内部のガス環境4内に流入する可能性は低減する。したがって、パッシブガスフローシステム20によって提供されるガスフロー24は所望の時に増大する。すなわち、解決策は問題に応じて規模が変化する。
【0041】
[0041] 図4に示すように、パッシブガスフローシステム20のガス入口21は、パターニングデバイス支持体MTの移動方向に対向するように構成できる。特に、これは、ガス入口21のすぐ後ろのガス管路23がパターニングデバイス支持体MTの移動方向に対して実質的に平行であってもよいことを意味する。これによって、パターニングデバイス支持体MTの移動によってパッシブガスフローシステム20内へ動かされるガスのインフローが増大し又は最大限にされる。
【0042】
[0042] ある実施形態では、ガス入口21は、パターニングデバイス支持体MTの移動方向に対して実質的に垂直なアパーチャを有していてもよい。
【0043】
[0043] 一構成では、ガス入口21をパターニングデバイス支持体MTの前縁に提供して、ガス入口21が第1の方向を向き、パターニングデバイス支持体MTの移動時にパッシブガスフローシステム20内にガスが無制限に流入するようにしてもよい。しかし、これは不可能な場合がある。例えば、図4には示していないアクチュエータシステムを前縁に提供してもよい。したがって、図4に示すように、凹部25を表面8a(パターニングデバイス支持体MTの移動方向を含む平面に対して平行である)上に提供し、少なくともパッシブガスフローシステム20のガス入口21を凹部25内に提供できる。特に、図4に示すように、ガス入口21がパターニングデバイス支持体MTの移動方向に対向するように構成された凹部25の壁面にガス入口21を提供してもよい。
【0044】
[0044] 凹部25は、ガス入口21を配置するためだけに表面8aに提供されなくてもよい。言い換えれば、パターニングデバイス支持体MTの構成が何か別の理由でそのような凹部25を含む場合、任意選択として、ガス入口21をそのような凹部25内に配置するのが便利である。
【0045】
[0045] パッシブガスフローシステム20は、パターニングデバイス支持体MTが移動する際に、パターニングデバイス支持体MTの1つの縁部に沿って、又は隣接して、例えば、終始前縁に沿ってガスフロー24を提供するように構成してもよい。したがって、パッシブガスフローシステム20のガス入口21及び/又はガス出口22は、パターニングデバイス支持体MTの縁部の方向に、すなわち、図4の平面に対して垂直方向に細長くてもよい。代替的に又は追加的に、パッシブガスフローシステム20のガス入口21及び/又はガス出口22は、パターニングデバイス支持体MTの縁部に沿って又は隣接して配置された複数のアパーチャから形成されてもよい。
【0046】
[0046] 一構成では、ガス出口22は、パターニングデバイス支持体MTが移動する際にガス出口22からのガスフロー24がガスナイフを形成するように構成できる。
【0047】
[0047] リソグラフィ装置は、パターニングデバイス支持体MTがリソグラフィ装置の使用中に図示の方向に移動するように構成できるが、パターニングデバイス支持体MTがリソグラフィ装置の使用中にさらに逆方向に移動するように構成してもよい。その場合、パターニングデバイス支持体MTの反対側がそのような移動中にパターニングデバイス支持体MTの前縁となる。特に、パターニングデバイス支持体MTは、2つの側が交互に前縁になるように往復運動を行ってもよい。
【0048】
[0048] ある実施形態では、パターニングデバイス支持体MTの反対側(図4には図示せず)上に第2のパッシブガスフローシステム20を提供できる。第2のパッシブガスフローシステム20は図4に示すパッシブガスフローシステムに直接対応するが、反対方向を向いている。すなわち、パターニングデバイス支持体MTが図4に示す方向とは逆の方向に移動する際に、ガス管路を通してガス出口から外へある方向にガスが駆動され、外部ガスがガス環境4内に侵入する可能性を低減するガスフローを提供する。
【0049】
[0049] 上記のように、本発明のある実施形態を用いて、境界領域での空間外から空間内へのガスフローを低減するために、特定のガス環境4を提供するような空間の境界領域にガスフローを提供することができる。特に、上記のように、本発明のある実施形態を用いてパターニングデバイスMAを提供するガス環境4内への外部ガスのフローを低減又は阻止することができる。追加的に又は代替的に、そのような実施形態をパターニングデバイス支持体MT以外のリソグラフィ装置の移動コンポーネントと併用して、リソグラフィ装置の別の領域内の指定されたガス環境の維持を援助することができる。
【0050】
[0050] 例えば、上記のようなパッシブガスフローシステムを基板テーブルWTに提供して基板テーブルが移動する際にパッシブガスフローシステムがガスフローを提供するようにでき、基板テーブルの位置をモニタする位置センサなどのセンサの周囲の所望のガス環境の維持を援助するために、一定方向にガスフローを提供するようにパッシブガスフローシステムを構成できる。別の例として、本明細書に記載するパッシブガスフローシステムを用いて測定テーブルの周囲の所望のガス環境の維持を援助することができる。
【0051】
[0051] 図5は、本発明の別の実施形態を示す。さらに、図5の実施形態は、移動するパターニングデバイス支持体MTの文脈で示されている。追加的に又は代替的に、リソグラフィ装置内の別の移動コンポーネントに対してそのような実施形態を適用することができる。
【0052】
[0052] 図5は、リソグラフィ装置内でパターニングデバイス支持体MTを移動させる位置決めシステムの詳細図を示す。特に、図5は、パターニングデバイス支持体MTの粗位置決めを提供するためにロングストロークアクチュエータシステム(図5には示さず)によって動かされるロングストロークステージ31を示す。さらに、ロングストロークステージ31に対するその位置を調整することでパターニングデバイス支持体MTの微細位置決めを提供するためにショートストロークアクチュエータシステム32を提供してもよい。
【0053】
[0053] ショートストロークアクチュエータシステム32は、例えば図5に概略を示すように、パターニングデバイス支持体MTに装着された1つ又は複数の磁石33とロングストロークステージ31に装着されたコイル34とを含む。アクチュエータシステム32の動作中、コイル34内で熱が発生することがある。したがって、コイル34を冷却するためにロングストロークステージ31内に冷却システムを提供してもよい。しかし、熱の一部が磁石33に伝導し、その結果、パターニングデバイス支持体MT上に望ましくない熱負荷が発生することがある。
【0054】
[0054] したがって、図5に示すある実施形態では、冷却を提供するために磁石33及び/又はコイル34上にガスフロー24を提供するために、パッシブガスフローシステム20を提供してもよい。
【0055】
[0055] 特に、図5に示すように、ショートストロークアクチュエータシステム32が提供される空間を覆うプレート35内にパッシブガスフローシステム20を提供できる。図5に示すように、パッシブガスフローシステム20が内部に提供されるプレート35をパターニングデバイス支持体MTに装着できることを理解されたい。あるいは、パッシブガスフローシステム20が内部に提供されるプレート35をロングストロークステージ31に接続してもよい。
【0056】
[0056] 図示のように、この実施形態のパッシブガスフローシステム20は、パッシブガスフローシステム20内にガスを駆動するためにパターニングデバイス支持体MTが移動する方向が基板35aに対して実質的に平行な平面内にあるようにプレート35の上面35aに提供されたガス入口21を含む。パッシブガスフローシステム20のガス出口22をプレート35の下面35bに提供できる。プレート35の下面35bは、プレートの上面35aに実質的に平行であってもよい。ガス入口21をガス出口22に接続するためにガス管路23は、プレート35を貫通していてもよい。図4に関連して上述した実施形態同様、所望のガスフロー24を提供するために、パッシブガスフローシステム20は、ガス出口22の断面積がガス入口21の断面積より小さくなるように構成できる。ある実施形態では、ガス出口22の断面積は、ガス入口21の断面積と同じ大きさか又はそれより大きくてもよい。
【0057】
[0057] さらに、図4に関連して上述した実施形態同様、図5に示すパッシブガスフローシステム20は、パターニングデバイス支持体MTの1辺の実質的に全長にわたって延在していてもよい。例えば、ガス入口21及び/又はガス出口22は、細長いアパーチャを含んでいてもよい。したがって、この実施形態のパッシブガスフローシステム20は、例えば、細長いスリットの形態を有していてもよい。
【0058】
[0058] 一構成では、ガス管路23をプレート35を貫通する直線内に提供できる。一構成では、ガスフローシステム20は、パターニングデバイス支持体MTの移動方向に対して約185°から約225°までの範囲から、又は約185°から約205°までの範囲から選択した角度37でガスフロー24を提供するように構成できる。この角度は、パッシブガスフローシステム20を通過するガスフロー24を最適化し、及び/又はパッシブガスフローシステムによって出力されたガスフロー24の方向を制御するために選択できる。ガス出口22の断面積がガス入口21の断面積より小さい場合、ガス管路23の側壁は平行でなくてもよい。
【0059】
[0059] パッシブガスフローシステム20によって磁石33及び/又はコイル34上に向かわされるガスによってリソグラフィ装置の望ましくない部分へのガスフローが確実に発生しないようにする助けとして、排気ガスを所望の方向に誘導するために通気孔36を提供してもよい。特に、図5に示すように、パターニングデバイスMAを取り囲むガス環境及び/又はショートストロークアクチュエータシステム32が提供された空間の一方の側は上記のような平面要素11と境を接していてもよい。そのような構成では、平面要素11内に通気孔36を提供してもよい。
【0060】
[0060] 一構成では、図5に示すように、通気孔36は、パターニングデバイス支持体MTが平面要素11に対して移動する際、ショートストロークアクチュエータシステム32を覆うプレート35内に提供されたパッシブガスフローシステム20によってガスが空間内へ動かされるときに、ショートストロークアクチュエータシステム32を取り囲む空間が通気孔36にのみ通じるような位置にあってもよい。例えば図6に示すような別の位置では、パターニングデバイス支持体MTを上記の平面要素11に対して、最初、プレート35内のパッシブガスフローシステム20のガス入口21が平面要素10に対向する位置にあってもよい。この位置で、パターニングデバイス支持体MTの移動によって引き起こされるガスフローの最小抵抗の通路は、ショートストロークアクチュエータシステム32の周囲の空間を通っていてもよい。このガスは、パターニングデバイス支持体MTと平面要素11との間の空間よりも広いロングストロークステージ31と平面要素11との間の空間を通って排出されてもよく、その結果、後者の空間内を通過する大量のガスフローの可能性が低減する。図6に示す位置では、ショートストロークアクチュエータシステム32の周囲の空間は、通気孔36に接続されていなくてもよい。これによって空間内の圧力が増大し、パターニングデバイス支持体MTが図5の位置へ移動した時に空間が通気孔36に接続されるとガスフローが増大する。
【0061】
[0061] いずれの場合も、通気孔36は、通気孔36を通過するいかなるガスフローも重要なコンポーネント上に確実に誘導されないようにする助けになる位置にあってもよい。そのようなコンポーネントは、ガスフロー内の汚染物質及び/又はガスフローによって引き起こされる温度変化に影響される。
【0062】
[0062] ある実施形態では、パッシブガスフローシステム20によって提供されたショートストロークアクチュエータシステム32の周囲の空間からのガスを排出する上記のパッシブ構成では不十分な場合、アクティブ排気を提供できる。例えば、空間を好適な負圧源に接続してもよい。
【0063】
[0063] 図4に関連して上述した実施形態同様、図5及び図6に関連して上述したパッシブガスフローシステム20をパターニングデバイス支持体MTの両側に提供してパターニングデバイス支持体MTのいずれかの側に提供できるショートストロークアクチュエータシステム32への冷却フローを提供してもよい。この実施形態の文脈では、代替的に又は追加的に、図5に示すような1つのスキャン方向に移動しているときと反対方向に移動しているときとの両方で、パターニングデバイス支持体MTの片側のショートストロークアクチュエータシステム32にガスフロー24を提供することが望ましい。
【0064】
[0064] したがって、一構成では、パターニングデバイス支持体MTの片側に提供されたプレート35は、反対方向を向き、共にパターニングデバイス支持体MTの片側の磁石及び/又はコイル上にガスフローを提供する2つのパッシブガスフローシステム20を含んでいてもよい。すなわち、パターニングデバイス支持体MTが第1の方向に移動するときに、ガスは第1のパッシブガスフローシステムのガス入口21内は動かされ、パターニングデバイス支持体MTが逆方向に移動するときに、この移動によってガスは、他方のパッシブガスフローシステム20のガス入口21内は動かされる。したがって、パターニングデバイス支持体MTのいずれかの方向の移動によって、パターニングデバイス支持体MTの片側のショートストロークアクチュエータシステム32の磁石33及び/又はコイル34上にガスフロー24が動かされる。
【0065】
[0065] パターニングデバイス支持体MTの一方又は両方の側に、本明細書に記載するような同じ方向を向いた複数のパッシブガスフローシステム20を提供することができる。同じ方向を向いた複数のパッシブガスフローシステム20の提供を用いて、単一のパッシブガスフローシステム20を備えた構成と比較してパターニングデバイス支持体MTの特定の移動方向のための追加のガスを生成してもよい。
【0066】
[0066] 代替的に又は追加的に、本明細書に記載するパッシブガスフローシステムを用いて、冷却を必要とするリソグラフィ装置内の1つ又は複数の他のコンポーネントにガスフローを提供することができる。例えば、上記パッシブガスフローシステムを用いて、基板テーブルWT及び/又は測定テーブルのロングストロークステージ及び/又はショートストロークステージとロングストロークステージのアクチュエータシステムの一部又は全部に冷却ガスフローを提供することができる。
【0067】
[0067] 図5及び図6に関して上述した構成の変形形態で、パッシブガスフローシステム20は、プレート35の表面35aに提供された1つ又は複数の浸漬入口を含んでもよい。図7及び図8は、それぞれ平面図と断面図で、NACAダクトとしても知られるそのような浸漬入口の可能な構成を示す。
【0068】
[0068] 図示のように、そのような入口は、傾斜面42を有する凹部41を含む。傾斜面42は、入口が入口の上流側端部、すなわち、プレート35が移動する先の入口の端部に形成された表面35aに接続する。入口が形成された表面35aに対する傾斜の角度43は、ガスが入口内に引き込まれる程度を最大限にするように選択される。通常、入口が形成された表面35aに対する傾斜面42の角度43は、約1°から約15°までの範囲内から、又は約5°から約10°までの範囲内から選択できる。
【0069】
[0069] 図7に示すように、凹部41の幅は、凹部41の最も浅い端部から凹部の反対側端部へむけて増大し、凹部41に引き込まれるガスをガス管路23内に運ぶ。図7及び図8に示すように、凹部41の縁部は屈曲し、ガスフローの混乱を最小限にする。
【0070】
[0070] 上記の浸漬入口は、パターニングデバイス支持体MTの1つの縁部に沿って提供されたパッシブガスフローシステム20への単一の細長いガス入口としての使用に適さない場合もある。したがって、図9に示すように、パターニングデバイス支持体MTの1つの縁部に沿って提供されたプレート35の表面に列51をなして浸漬入口を配置することができる。便利なことに、図示のように、このタイプの第2の列52を逆方向に向けて第1の列51と織り交ぜて、パターニングデバイス支持体MTが上記逆方向に移動する際に被覆プレート35を通してガスフローを提供することができる。
【0071】
[0071] 上述したように、パターニングデバイス支持体MTの反対側のショートストロークアクチュエータシステムに冷却ガスフローを提供するために、パターニングデバイス支持体MTの反対側に対応する構成を提供してもよい。特に、互いに逆の向きに配置された浸漬入口の第3及び第4の列53、54を提供することができる。
【0072】
[0072] 図7〜図9に関連して上述した浸漬入口を図4に示すような本発明のある実施形態と併用することができる。例えば、図4に関連して説明したパッシブガスフローシステムのガス出口22にガス管路を関して接続した浸漬入口をパターニングデバイス支持体MTの上面8aに提供してもよい。そのような構成では、図4に示す構成とは対照的に、パッシブガスフローシステム20のガス入口を凹部25内に提供する必要はない。
【0073】
[0073] さらに、リソグラフィ装置は、本出願で開示された複数のパッシブガスフローシステムの構成を含んでいてもよい。例えば、パターニングデバイス支持体MTは、その一方又は両方が図7〜図9に関連して説明した変形形態を任意選択として含む、図4に示すような構成と図5及び図6に示すような構成との両方を含んでいてもよい。
【0074】
[0074] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前及び/又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に1つ又は複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0075】
[0075] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組合せを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0076】
[0076] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、436nm、405nm、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0077】
[0077] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁気及び静電気光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組合せを指すことができる。
【0078】
[0078] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0079】
[0079] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、下記に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置であって、
前記リソグラフィ装置の使用中に少なくとも第1の方向に移動するように構成されたコンポーネントを備え、該コンポーネントは、パッシブガスフローシステムを含み、該パッシブガスフローシステムは、
前記コンポーネントが前記第1の方向に移動するときに、前記コンポーネントの前記第1の方向の移動がガスを前記パッシブガスフローシステム内へ動かすように構成されたガス入口と、
ガス管路によって前記ガス入口に接続され、前記コンポーネントの前記第1の方向の移動によって前記パッシブガスフローシステム内へ動かされるガスを、前記コンポーネントに対してある方向に誘導するように構成されたガス出口とを備える、リソグラフィ装置。
【請求項2】
前記ガス出口は、前記コンポーネントの表面に設けられ、該表面は、前記第1の方向が前記表面に実質的に平行な平面内にあるように配向され、及び/又は
前記ガス出口は、前記パッシブガスフローシステムを通して動かされるガスがガスナイフを形成するように構成され、及び/又は
前記ガス出口は、前記ガスが前記第1の方向に対してほぼ垂直な方向から前記第1の方向に対して約10°の方向までの範囲、又は前記第1の方向に対してほぼ垂直な方向から前記第1の方向に対して約45°の方向までの範囲から選択される方向に前記ガス出口から流出するように構成される、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記パッシブガスフローシステムは、ガスフローを、空間の境界領域へ、該境界領域にて該空間の外から該空間の内へのガスフローを低減するように選択された方向に提供するように構成され、及び/又は
前記パッシブガスフローシステムは、前記第1の方向に実質的に垂直に整列した列に配置された複数のガス入口を備え、及び/又は
前記パッシブガスフローシステムは、ガスフローを前記コンポーネントの一部に向かって提供するように構成される、請求項1又は2に記載のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記ガス入口は、細長い形状を有し、且つ前記ガス入口が細長い方向が前記第1の方向に対して実質的に垂直になるように構成され、及び/又は
前記ガス入口は、第1の方向に対向する、請求項1から3のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記コンポーネントは、前記第1の方向が表面に実質的に平行な平面内にあるように配向された表面を有し、
前記表面は、凹部を含み、
前記ガス入口は、前記凹部内に配置される、請求項4に記載のリソグラフィ装置。
【請求項6】
請求項2に従属するとき、前記ガス出口は、前記ガス入口が設けられた前記凹部と同じコンポーネントの表面に設けられる、請求項5に記載のリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記コンポーネントは、前記第1の方向が前記表面に実質的に平行な平面内にあるように配向された表面を有し、
前記ガス入口は、前記表面に設けられる、請求項1から6のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項8】
前記ガス入口は、前記表面の凹部を含む、請求項7に記載のリソグラフィ装置。
【請求項9】
前記凹部は、前記凹部の第1の方向の最遠部にあって前記コンポーネントの前記表面に対して約1°〜約15°の範囲から又は約5°〜約10°の範囲から選択された角度をなす入口の端部にて、前記コンポーネントの前記表面を接続する、入口表面を含み、及び/又は
前記第1の方向に垂直であって前記コンポーネントの前記表面に平行な前記平面内にある方向で測定した前記凹部の幅が、前記第1の方向と逆の方向に増大する、請求項8に記載のリソグラフィ装置。
【請求項10】
前記コンポーネントは、前記コンポーネントの一部を覆うように構成されたカバープレートであって、該カバープレートの外部表面と内部表面とに平行な平面内に前記第1の方向があるように該外部及び内部表面が配向されるように、構成されたカバープレートを備え、
前記ガス入口は、前記カバープレートの前記外部表面に設けられ、
前記ガス出口は、前記カバープレートの前記内部表面に設けられる、請求項1から9のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項11】
前記パッシブガスフローシステムは、前記カバープレートを通して前記ガス入口から前記ガス出口へ至る真っ直ぐなガス管路であって、前記パッシブガスフローシステムが前記第1の方向に対して約185°〜約225°の範囲から又は約185°〜約205°の範囲から選択した角度でガスフローを提供するように、配置されたガス管路を備える、請求項10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項12】
前記コンポーネントは、前記リソグラフィ装置内のオブジェクトを支持するように構成された可動ステージであり、前記パッシブガスフローシステムは、アクチュエータへ向けてガスフローを提供するように構成される、請求項3から11のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項13】
前記コンポーネントは、前記リソグラフィ装置の使用中に前記第1の方向とは逆の第2の方向にも移動できるように構成され、
前記コンポーネントは、第2のパッシブガスフローシステムを含み、該第2のパッシブガスフローシステムは、
前記コンポーネントが前記第2の方向に移動するときに、前記コンポーネントの前記第2の方向の移動がガスを前記第2のパッシブガスフローシステム内へ動かすように構成されたガス入口と、
ガス管路によって前記ガス入口に接続され、前記コンポーネントの前記第2の方向の移動によって前記第2のパッシブガスフローシステム内へ動かされるガスを、前記コンポーネントに対してある方向に誘導するように構成されたガス出口とを備える、請求項1から12のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項14】
追加のパッシブガスフローシステムをさらに備え、該追加のパッシブガスフローシステムは、
前記コンポーネントが前記第1の方向に移動するときに、前記コンポーネントの前記第1の方向の移動がガスを前記追加のパッシブガスフローシステム内へ動かすように構成されたガス入口と、
ガス管路によって前記ガス入口に接続され、前記コンポーネントの前記第1の方向の移動によって前記追加のパッシブガスフローシステム内へ動かされるガスを、前記コンポーネントに対してある方向に誘導するように構成されたガス出口とを備える、請求項1から13のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
【請求項15】
リソグラフィ装置を用いてパターニングデバイスから基板へパターンを転写するステップを含むデバイス製造方法であって、
パッシブガスフローシステムを備える前記リソグラフィ装置のコンポーネントを第1の方向に移動させるステップと、
前記コンポーネントが前記第1の方向に移動する際に、前記コンポーネントの移動によって、ガス入口を介してガスを前記パッシブガスフローシステム内へ動かすステップと、
ガス管路を通して前記ガス入口から前記パッシブガスフローシステム内へ動かされたガスを、前記コンポーネントに対して該ガスをある方向に誘導するガス出口へ送るステップとをさらに含む、デバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate