説明

リチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物及びリチウムイオン二次電池

【課題】 サイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得られ、電極の原料である銅箔との密着性に優れ、また、可とう性にも優れる電極が得られる組成物及び、リチウムイオン二次電池を提供すること。
【解決手段】 重量平均分子量が4,000〜60,000で、カルボキシル基の酸価が30〜90KOHmg/gである直鎖状ポリイミド樹脂(A)と、1分子中に二つのエポキシ基を有し、エポキシ当量が250〜1000である直鎖状エポキシ樹脂(B)とを含有するリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物、該電極用樹脂組成物と炭素材料を用いて得られる負電極を有するリチウムイオン二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を動力源とする機器の電源や、特にサイクル安定性が要求される電力貯蔵用や電気自動車用の電源として好適に用いることができるリチウムイオン二次電池の電極用組成物と、この組成物を用いた電極を有するリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の高性能化、小型化、軽量化の進展や、電気自動車の実用化に向けた研究開発の進展に伴って高エネルギー密度二次電池に対する要求が強まっている。従来から広く使用されてきた二次電池としては、ニッケル・カドミウム電池や鉛電池等が挙げられるが、これらの電池は体積あたりあるいは重量あたりの放電容量が小さく、放電電圧も低いため、高エネルギー密度電池の要求に十分には応えることができなかった。
【0003】
これらの要求を満たす電池システムとしてリチウムイオンを吸蔵放出可能な物質を負極とする非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)が注目されている。
【0004】
電極活物質担体としてリチウムイオンを吸蔵放出可能な物質、例えば炭素質材料を負極に用いたリチウムイオン二次電池は、金属リチウム負極を使用した場合に近い高い放電電圧が得られるが、電極活物質担体と金属箔との密着力が小さく、充放電を繰り返すうちに剥離が生じ、サイクル特性が十分とはいえず、さらに改善することが求められていた。
【0005】
このような求めに対し、金属箔の表面に、電極活物質担体及びバインダー成分からなる塗膜を形成してなる電極材であって、前記塗膜の面積(A)に対する、前記電極活物質担体又は/及び前記バインダー成分が前記金属箔の表面に密着している部分の面積(B)の百分率(B/A×100)を密着度(Rc)とするとき、Rcが40%以上であることを特徴とする電極材を用いたリチウムイオン二次電池が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献に開示されている電極材としては、例えば、実施例2に開示されているように無水トリメリット酸96g(0.5モル)と、セバシン酸101g(1.01モル)と4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート265g(0.5モル)とを反応させて得られるポリアミドイミド樹脂100重量部とビスフェノールA−ジグリシジルエーテル(ビスフェノールA型エポキシ樹脂。エポキシ当量188)2.5重量部とを含有する樹脂組成物と炭素質材料とからなるペースト上合剤を銅箔上に塗布して得られる電極材がある。
【0006】
前記特許文献1で開示された電極材を用いて得られるリチウムイオン二次電池のサイクル特性は充放電サイクルテストを行い評価を行っている。具体的には、電流密度0.5mA/cm2 の定電流で、折り返し電圧0Vと2Vの間で充放電サイクルテストを行い、この充放電サイクルテストの2サイクル時の放電容量で、5サイクル時の放電容量を除した値を、容量維持率(%)として評価している。この評価によると、前記実施例2で得られた電極材を用いて得られるリチウムイオン二次電池の容量維持率は100%であり、サイクル特性は良好であるとされている。しかしながら、この評価では、容量維持率は2サイクル時の放電容量で、5サイクル時の放電容量を除する事により算出しており、容量維持率が100%といってもサイクルの間隔が狭く、この評価をサイクルの間隔が広い場合、例えば、10サイクル時の放電容量で100サイクル時の放電容量を除した場合は、容量維持率がおよそ70%程度にまで低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−149921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、サイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得られ、電極の原料である銅箔との密着性に優れ、また、可とう性にも優れる電極が得られる組成物及び、リチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行い、以下の知見を見出した。
1)特許文献1で用いられているポリアミドイミド樹脂は実施例1及び実施例2からも明らかなようにイソシアネート基が過剰となる条件で反応させている為、酸価(カルボキシル基の酸価)が実質的にゼロである。本発明者らは、酸価(カルボキシル基の酸価)が30〜90KOHmg/gで、しかも、重量平均分子量が4,000〜60,000である直鎖状のポリイミド樹脂を用いることにより、特許文献1のようにアミド構造を有さなくとも電極用の樹脂として使用する事ができる。
【0010】
2)特許文献1で用いられているエポキシ樹脂はエポキシ当量が188程度である。本発明者らは、エポキシ樹脂としてエポキシ当量が250〜1000のエポキシ樹脂と、前記1)で見出したポリイミド樹脂とを用いて得られる組成物は、電極の原料である銅箔との密着性に優れ、また、可とう性にも優れる電極が得られる組成物で、しかも、この組成物を用いて得られる電極を有するリチウムイオン二次電池は、サイクル特性が良好である。
本発明は、上記知見をもとに完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、重量平均分子量が4,000〜60,000で、カルボキシル基の酸価が30〜90KOHmg/gである直鎖状ポリイミド樹脂(A)と、1分子中に二つのエポキシ基を有し、エポキシ当量が250〜1000である直鎖状エポキシ樹脂(B)とを含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記リチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物と炭素材料を用いて得られる負電極を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物はサイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得られる。また、電極の原料である銅箔との密着性に優れ、また、可とう性にも優れる為、製造した電極をロール状にして保管する事も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は、重量平均分子量が4,000〜60,000の酸価が30〜90KOHmg/gである直鎖状ポリイミド樹脂である。重量平均分子量が4,000よりも小さいと十分な可とう性の電極が得にくくなる事から好ましくない。重量平均分子量が60,000よりも大きいと前記酸価が30〜90KOHmg/gの範囲のポリイミド樹脂を得にくくなり、その結果、銅箔との密着性に優れ、また、可とう性にも優れる電極が得にくくなることから好ましくない。重量平均分子量は5,000〜30,000の範囲がより好ましい。
【0015】
また、本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は、酸価が30KOHmg/gより小さいと、エポキシ樹脂との十分な硬化性が得られず可とう性に優れる電極が得にくくなる事から好ましくない。酸価が90KOHmg/gより大きいと、得られる電極が硬脆くなり可とう性が低下する事から好ましくない。酸価は50〜80KOHmg/gがより好ましい。
【0016】
本発明で重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により求めた。
測定装置 : 東ソー株式会社製 HLC−8320GPC、UV8320
カラム : 東ソー株式会社製 SuperAWM−H×2本
検出器 : RI(示差屈折計)及びUV(254nm)
データ処理:東ソー株式会社製 EcoSEC−WorkStation
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 DMF
流速 0.35ml/分
標準 :ポリスチレン標準試料にて検量線作成
試料 :樹脂固形分換算で0.2重量%のDMF溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(注入量:10μl)
【0017】
ポリイミド樹脂(A)は、例えば、ビフェニル構造を有するポリイソシアネート化合物(a1)および/またはビフェニル構造を有する酸無水物(a2)と、必要に応じて(a1)以外のポリイソシアネート化合物(a3)や(a2)以外の酸無水物(a4)を反応させることにより容易に得る事ができる。
【0018】
前記ビフェニル構造を有するポリイソシアネート化合物(a1)としては、例えば、4,4´−ジイソシアネート−3,3'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、4,4'−ジイソシアネート−3,3'−ジエチル−1,1'−ビフェニル、4,4'−ジイソシアネート−2,2'−ジメチル−1,1'−ビフェニル、4,4'−ジイソシアネート−2,2'−ジエチル−1,1'−ビフェニル、4,4'−ジイソシアネート−3,3'−ジトリフロロメチル−1,1'−ビフェニル、4,4'−ジイソシアネート−2,2'−ジトリフロロメチル−1,1'−ビフェニル等が挙げられる。
【0019】
前記ビフェニル構造を有する酸無水物(a2)としては、例えば、ビフェニル−3,3´ ,4,4'−テトラカルボン酸、ビフェニル−2,3,3',4'−テトラカルボン酸、およびこれらの一無水物、二無水物等などが挙げられ、これらは単独、或いは、2種以上の混合物として用いることができる。
【0020】
前記(a1)以外のポリイソシアネート化合物(a3)としては、例えば、(a1)以外の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
前記(a1)以外の芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル−4,4′−ジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートおよびノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
ポリイソシアネート化合物としては、前記ポリイソシアネート化合物と各種ポリオール成分とをイソシアネート基過剰で予め反応させたイソシアネートプレポリマーを使用することも可能である。
【0024】
本発明で用いるポリイミド樹脂は、溶剤溶解性や他の樹脂との相溶性を向上させるため分岐構造をとっても良い。かかる分岐の手法としては、ポリイソシアネート化合物として、例えば、前記ジイソシアネート化合物等のイソシアヌレート体であるイソシアヌレート環を有する3官能以上のポリイソシアネート化合物や前記ジイソシアネートのビュレット体、アダクト体、アロハネート体、あるいはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI)等を使用すればよい。
【0025】
(a2)以外の酸無水物(a4)としては、例えば、(a2)以外の芳香族トリカルボン酸無水物、脂環式トリカルボン酸無水物、(a2)以外のテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。(a2)以外の芳香族トリカルボン酸無水物としては、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0026】
脂環式トリカルボン酸無水物としては、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸無水物-3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸無水物-3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸無水物-2,3−無水物等が挙げられる。
【0027】
前記(a2)以外のテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、
【0028】
エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレンレングリコールビスアンヒドロトリメリテートやその他アルキレングリコールビスアンヒドロキシトリメリテート等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いるポリイミド(A)として、ベンゾフェノン構造を有するポリイミド樹脂を用いる事により耐熱性や低線膨張性を発現する電極を得ることもできる。ベンゾフェノン構造を有するポリイミド樹脂は、例えば、前記製法において、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物を必須として用いることにより得る事ができる。
【0030】
ベンゾフェノン構造の含有率は、ポリイミド樹脂の質量を基準として1〜30質量%が耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましく、5〜20質量%が合成安定性に優れることからより好ましい。
【0031】
ベンゾフェノン構造の含有量は、ポリイミド樹脂主鎖への結合箇所が4箇所のベンゾフェノン構造の分子量を178として、ポリイミド樹脂全体の重量に占めるベンゾフェノン構造の割合から算出することができる。
【0032】
また、本発明で用いるポリイミド(A)として、2、4位で主鎖と結合したトリレン構造を有するポリイミド樹脂を用いる事により溶融付着性と低線膨張性を発現する電極を得ることもできる。2、4位で主鎖と結合したトリレン構造を有するポリイミド樹脂は、例えば、前記製法において、トルエンジイソシアネートを必須として用いることにより得る事ができる。
【0033】
2、4位で主鎖と結合したトリレン構造の含有量は、ポリイミド樹脂主鎖に2、4−位で結合したトリレン構造の分子量を150として、ポリイミド樹脂全体の重量に占めるトリレン構造の割合から算出することができる。
【0034】
ポリイミド樹脂中の2、4位で主鎖と結合したトリレン構造の含有量は、1〜20質量%が合成安定性に優れることから好ましく、2〜14重量%が低線膨張性と合成安定性に優れることからより好ましい。
【0035】
前記製法では、ポリイソシアネート化合物と酸無水物基を有する化合物とが反応する。ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数(ma)と酸無水物基を有する化合物中の無水酸基とカルボキシル基との合計のモル数(mb)の割合(ma)/(mb)は、分子量の大きいポリイミド樹脂が得やすく、機械物性に優れる硬化物が得られるポリイミド樹脂となることから0.7〜1.2の割合が好ましく、さらに0.8〜1.2の割合がより好ましい。また、保存安定性に優れるポリイミド樹脂が得やすいことから前記(ma)/(mb)は0.9〜1.1の範囲がより好ましい。尚、無水トリメリット酸などのカルボン酸無水物を併用する場合は、前記(mb)は全てのカルボン酸無水物の中の無水酸基とカルボキシル基との合計のモル数である。
【0036】
前記製法において1段反応で製造を行う場合は、例えば、反応容器にポリイソシアネート化合物と酸無水物基を有する化合物とを仕込み、攪拌を行いながら昇温することで脱炭酸させながら反応を進行させる。
【0037】
反応温度としては、50℃から250℃の範囲で行うことが可能であり、反応速度と副反応防止の面から70℃から180℃の温度で行うことが好ましい。
【0038】
反応は、イソシアネート基がほぼ全て反応するまで行った方が得られるポリイミド樹脂の安定性が良好となることから好ましい。また、若干残存するイソシアネート基に対して、アルコールやフェノール化合物を添加し反応させても良い。
【0039】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を使用すると均一な反応を進行できるため好ましい。ここで有機溶剤は、系中にあらかじめ存在させてから反応を行っても、途中で導入してもよい。また、適切な反応速度を維持するためには、系中の有機溶剤の割合は、反応系の98質量%以下であるが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましく、40〜90質量%が更に好ましい。かかる有機溶剤としては、原料成分としてイソシアネート基を含有する化合物を使用するため、水酸基やアミノ基等の活性プロトンを有しない非プロトン性極性有機溶剤が好ましい。
【0040】
前記非プロトン性極性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、およびγ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒を使用することができる。また、上記溶媒以外に、溶解可能であれば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、および石油系溶剤等を使用しても良い。また、各種溶剤を混合して使用しても良い。
【0041】
特に溶剤の塗膜乾燥及び塗膜硬化時の残存溶剤量の低減、ポリイミド樹脂の溶解性の観点から、ジメチルアセトアミドの使用が好ましい
【0042】
本発明で用いるポリイミド樹脂の製造方法で用いる事ができるエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0043】
プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;低分子のエチレン−プロピレン共重合体等の共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;共重合ポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;および共重合ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0044】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、およびシクロヘキサノン等が挙げられる。また、石油系溶剤としては、トルエン、キシレンやその他高沸点の芳香族溶剤等や、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族および脂環族溶剤を使用することも可能である。
【0045】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)が有機溶剤に溶解するか否かの判定は、有機溶剤に本発明のポリイミド樹脂濃度を10質量%となるように加え、25℃で7日間時間静置した後、目視にて外観を観察することにより行うことができる。
【0046】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は線状の構造を有するポリイミド樹脂でも良いし、分岐状の構造を有するポリイミド樹脂でもよい。また、共重合成分としてポリエステル変性したポリエステルイミドやウレタン変性したポリウレタンイミドの構造を有していても良い。
【0047】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)の末端の構造としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸の無水物、イソシアネート基、アミン基等の構造が挙げられる。末端の構造としては、本発明のポリイミド樹脂自体の安定性や、有機溶剤や他の樹脂との配合後の安定性が良好なことからカルボン酸やその無水物の構造が好ましい。末端構造がカルボン酸やその無水物の構造のときは、酸価は、固形分酸価で1〜200が取り扱いやすいポリイミド樹脂となり、機械強度と寸法安定性に優れるフィルムや成型品が得られることから好ましい。
【0048】
また、本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は、アルキレン構造を有さないポリイミド樹脂が好ましい。
【0049】
本発明で用いるエポキシ樹脂(B)は1分子内に二つのエポキシ基を有し、エポキシ当量が250〜1000である必要がある。1分子内に二つより多くエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いると電極が硬脆くなり可とう性が低下する事から好ましくない。
【0050】
また、エポキシ当量が250より小さいと電極塗膜が硬脆くなり可とう性が低下することから好ましくない。エポキシ当量が1000より大きいとイミド樹脂との十分な硬化性が得られず可とう性が低下することから好ましくない。エポキシ当量は250〜700がより好ましい。
【0051】
エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等を好ましく用いることができる。
【0052】
エポキシ樹脂(B)の中でも、主鎖にポリアルキレングリコール鎖を含有するエポキシ樹脂が柔軟性、接着性に富み、リチウムイオン伝導性に優れる電極が得られることからからより好ましい。
【0053】
主鎖にポリアルキレングリコール鎖を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、主鎖にポリエチレングリコール鎖を含有するジグリシジルエーテル、主鎖にポリプロピレングリコールを有するジグリシジルエーテル、主鎖にポリテトラメチレングリコールを有するジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0054】
前記主鎖にポリエチレングリコール鎖を含有するジグリシジルエーテルとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0055】
【化1】

【0056】
式1中nは1〜30、好ましくは2〜15である。
【0057】
また、主鎖にポリプロピレングリコールを有するジグリシジルエーテルとしては、例えば、下記式(2)で表される化合物等が挙げられる。
【0058】
【化2】

【0059】
式2中mは1〜30、好ましくは2〜15である。
【0060】
本発明で用いる二官能のエポキシ樹脂(B)としては、主鎖にポリエチレングリコール鎖を含有するジグリシジルエーテル、主鎖にポリプロピレングリコールを有するジグリシジルエーテルが硬化塗膜の柔軟性が良好となることから好ましく、主鎖にポリエチレングリコール鎖を含有するジグリシジルエーテルがより好ましい。主鎖にポリエチレングリコール鎖を含有するジグリシジルエーテルの中でも、ポリエチレングリコール鎖の繰り返し単位が1〜30のジグリシジルエーテルが好ましく、ポリエチレングリコール鎖の繰り返し単位が2〜15のジグリシジルエーテルがより好ましい。
【0061】
本発明で用いる主鎖にポリアルキレングリコール鎖を含有する二官能のエポキシ化合物(B)の市販品としては、例えば、デナコールEX−810、デナコールEX−811、デナコールEX−850、デナコール851、デナコールEX−821、デナコールEX−830、デナコールEX−832、デナコールEX−841、デナコールEX−861、デナコールEX−911、デナコールEX−941、デナコールEX−920、デナコールEX−931〔ナガセケムテックス(株)社製〕、エピオールE−400、エピオールE−1000〔日油(株)社製〕等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量は、前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して30〜200質量%が、硬化物が低線膨張でありながら、低温での溶融性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られることから好ましく、50〜150質量%がより好ましく、40〜150質量%が更に好ましい。
【0063】
本発明のリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物には、更に必要に応じて、種々の充填材、有機顔料、無機顔料、体質顔料、防錆剤等を添加することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化けい素酸粉、微粒状酸化けい素、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルムニウム、雲母、アルミナ等が挙げられる。
【0065】
充填材としては、各種粒子径のものが使用可能であり、本樹脂やその組成物の物性を阻害しない程度に添加することが可能である。かかる適正な量としては、質量で5〜80%程度の範囲であり、好ましくは均一に分散してから使用することが好ましい。分散方法としては、公知のロールによる分散やビーズミル、高速分散等により行うことが可能であり、粒子表面を予め分散処理剤で表面改質しても良い。
【0066】
前記有機顔料としては、アゾ顔料;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンの如き銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0067】
前記無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデート・オレンジの如きクロム酸塩;紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄;炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド;硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物;硫酸鉛の如き硫酸塩;群青の如き珪酸塩;炭酸塩、コバルト・バイオレッド;マンガン紫の如き燐酸塩;アルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉、ニッケル粉の如き金属粉;カーボンブラック等が挙げられる。
【0068】
また、その他の着色、防錆、体質顔料のいずれも使用することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0069】
本発明の硬化物は本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を硬化させてなる。具体的には、例えば、本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物は基材に塗工した後、100〜300℃で加熱することで硬化させた硬化物が挙げられる。
【0070】
前記塗膜の形成方法で用いる基材は特に制限無く用いることができる。基材としては、例えば、プラスチック、金属、木材、ガラス、無機材、およびこれら複合材料等が挙げられる。基材の形状としては、特に制限がなく、シートやフィルム状のものやチップ形状、立体形状など例示することができる。
【0071】
リチウムイオン二次電池の電極材は、例えば、上記本発明の組成物と粒状の電極活物質担体とを溶剤に混合、分散させたペースト状の合剤を金属箔に塗布して塗膜層を形成した後、乾燥、圧着して形成される。
【0072】
上記合剤に使用する溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、キシレンの中の少なくとも一種を含むことが好ましい。特に好ましくは、溶解性の観点からN−メチル−2−ピロリドンである。
【0073】
上記の電極層を形成する工程の内、塗膜層中に含有される溶剤の量が当初の含有量の40%以下になるまで125℃以下の温度で乾燥する工程を少なくとも乾燥工程の初期に含むことが好ましい。このように、少なくとも乾燥工程の初期において溶剤の量が当初の含有量の40%以下になるまで125℃以下の低温で乾燥することにより、電極層中のバインダー成分の分布状態が最適化され、その後の乾燥、圧着工程を経て電極層と金属箔との最適な密着状態が得られ、充放電特性が向上する。
【0074】
本発明の電極材中の樹脂組成物と電極活物質担体との重量比は、好ましくは3:97〜20:80、より好ましくは5:95〜10:90である。電極活物質担体の含有量が上記範囲より多いと、電極合剤層にクラックが発生したり、金属箔等の集電体から電極合剤層が剥離し易くなる傾向がある。また、炭素質材料の含有量が上記範囲より少ないと、電池としたときの充放電サイクル特性が低下しやすくなる傾向がある。
【0075】
本発明のリチウムイオン二次電池において使用する非水電解液の非水溶媒としては、高誘電率溶媒である炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン等や、低粘度溶媒である1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、炭酸ジメチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジエチル等を使用することができる。
【0076】
以上のような非水溶媒に溶解させて非水電解液を調製する際に使用する電解質としては、一般に、伝導イオン種により異なるが、伝導イオン種がリチウムイオンである場合にはLiClO4 、LiAsF6 、LiPF6 、LiBF4 、LiCl、LiBr、CH3 SO3 Li、CF3 SO3 Li等を好ましく使用することができる。これらは単独でも2種類以上を混合して用いることもできる。
【0077】
本発明のリチウムイオン二次電池のセパレータ、電池缶、PTC素子などの他の構成については、従来のリチウムイオン非水電解質二次電池などと同様とすることができる。
【0078】
本発明のリチウムイオン二次電池の電池形状については特に限定されず、必要に応じて円筒型形状、角形形状、コイン型形状、ボタン型形状等の種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0079】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。例中特に断りの無い限り「部」、「%」は重量基準である。
【0080】
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、DMAC(ジメチルアセトアミド)213.2gとTDI(トリレンジイソシアネート)6.28g(0.036モル)、TODI(4,4'−ジイソシアネート−3,3'−ジメチル−1,1'−ビフェニル)37.8g(0.143モル)とTMA(無水トリメリット酸)29.1g(0.151モル)とBTDA(ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、)12.2g(0.038モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して2時間かけて150℃まで昇温した後、この温度で5時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体となった。25℃での粘度が2Pa・sの樹脂固形分25%で溶液酸価が16(KOHmg/g)のポリイミド樹脂(A1)の溶液(ポリイミド樹脂がDMACに溶解した樹脂組成物)を得た。尚、その値から算出された樹脂の固形分酸価は64(KOHmg/g)であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定の結果、重量平均分子量10,000であった。また、ポリイミド樹脂(A1)を200℃、2時間の条件で乾燥させ、ポリイミド樹脂(A1)の固形分を得て、その固形分0.1gをN−メチル−2−ピロリドン20ccに溶かし、30℃で対数粘度を測定したところ、0.43 dl/gであった。
【0081】
合成例2(同上)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、DMAC(ジメチルアセトアミド)547.0gとTDI(2,4−トリレンジイソシアネート)13.16g(0.076モル)、DMBPDI(4,4’−ジイソシアネート−3,3'−ジメチル−1,1'−ビフェニル)80.0g(0.30モル)とTMA(無水トリメリット酸)76.8g(0.40モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して1時間かけて160℃に昇温し、この温度で10時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体となった。25℃での粘度が1.0Pa・sの樹脂固形分20%で溶液酸価が8(KOHmg/g)のポリイミド樹脂(A2)の溶液(ポリイミド樹脂がDMACに溶解した樹脂組成物)を得た。尚、樹脂の固形分酸価は40(KOHmg/g)であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定の結果、重量平均分子量35000であった。また、ポリイミド樹脂(A2)を200℃、2時間の条件で乾燥させ、ポリイミド樹脂(A2)の固形分を得て、その固形分0.1gをN−メチル−2−ピロリドン20ccに溶かし、30℃で対数粘度を測定したところ、0.60 dl/gであった。
【0082】
合成例3(同上)
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを付けたフラスコに、DMAC(ジメチルアセトアミド)204.6gとTDI(トリレンジイソシアネート)5.96g(0.034モル)、TODI(4,4'−ジイソシアネート−3,3'−ジメチル−1,1'−ビフェニル)36.0g(0.137モル)とTMA(無水トリメリット酸)29.1g(0.151モル)とBTDA(ベンゾフェノン−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、)12.2g(0.038モル)とを仕込み、攪拌を行いながら発熱に注意して2時間かけて150℃まで昇温した後、この温度で5時間反応させた。反応は炭酸ガスの発泡とともに進行し、系内は茶色の透明液体となった。25℃での粘度が1Pa・sの樹脂固形分25%で溶液酸価が20(KOHmg/g)のポリイミド樹脂(A2)の溶液(ポリイミド樹脂がDMACに溶解した樹脂組成物)を得た。尚、その値から算出された樹脂の固形分酸価は80(KOHmg/g)であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定の結果、重量平均分子量5000であった。また、ポリイミド樹脂(A2)を200℃、2時間の条件で乾燥させ、ポリイミド樹脂(A2)の固形分を得て、その固形分0.1gをN−メチル−2−ピロリドン20ccに溶かし、30℃で対数粘度を測定したところ、0.29 dl/gであった。
【0083】
合成例4(比較対照用ポリイミド樹脂の合成)
反応容器に無水トリメリット酸96g、セバシン酸101g、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート265g、フッ化カリウム1gをN−メチル−2−ピロリドン900gと共に仕込み200℃に昇温して5時間反応させた後、冷却しながらさらにN−メチル−2−ピロリドン950gを加えて、固形分濃度が20重量%のポリアミドイミド樹脂(a1)の溶液を得た。尚、樹脂の固形分酸価は1.0(KOHmg/g)であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定の結果、重量平均分子量120,000であった。
【0084】
実施例1〜6、比較例1
第1表に示す配合でポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とを混合し、電極用樹脂組成物1〜6及び比較対照用樹脂組成物1´を得た。
【0085】
【表1】

【0086】
第1表の脚注
エポキシ樹脂B1:デナコールEX−830(ナガセケムテックス株式会社製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量268g/eq)
エポキシ樹脂B2:エピクロン2055(DIC株式会社製、固形BPA型エポキシ樹脂、エポキシ当量628g/eq)
エポキシ樹脂B3:エピクロンEXA−4850−150(DIC株式会社製、ポリエーテル変性型エポキシ樹脂、エポキシ当量437g/eq)
エポキシ樹脂b1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル。エポキシ当量188g/eq
【0087】
平均粒径15ミクロンの球状黒鉛〔(株)中越黒鉛工業所製〕90重量部と電極用樹脂組成物10重量部(固形分換算)を混合し、N−メチル−2−ピロリドンで固形分濃度が59重量%となるように希釈して分散、混練りしてペースト状合剤を調製した。得られたペースト状合剤を、厚さ30μmの銅箔の一方の面に塗布した後、100℃の熱風オーブンで10分乾燥し、さらに170℃の熱風オーブンで60分乾燥させることで電極を作成した。作成した電極を室温まで冷却したのち、電極密度が1.3g/cm3となるようにプレスした。得られた電極は銅箔を含む厚さが90μmであった。
【0088】
得られた電極の可とう性と、電極の銅箔と硬化樹脂との接着性を下記方法に従って評価した。評価結果を第2表に示す。
【0089】
電極の可とう性の評価方法
電極を8cm角の正方形に切り出し、試験片を得た。この試験片を直径2mm及び10mmの棒に巻きつけ、電極の表面を目視で観察した。下記基準に従い評価した。
【0090】
◎:直径2mmの棒に巻きつけても、銅箔と硬化した樹脂のはがれが見られない。
○:直径2mmの棒に巻きつけた場合は上記はがれが発生するものの、直径10mmの棒に巻きつけた場合は上記はがれは発生しない。
×:直径10mmの棒に巻きつけた場合でも上記はがれが発生する。
【0091】
電極の銅箔と硬化した樹脂の接着性の評価
電極を8cm角の正方形に切り出し、試験片を得た。この試験片を用いてクロスカット試験、粘着テープ試験を行い、下記基準に従い評価した。
【0092】
○:1mm×1mmのクロスカット(100マス)試験にてはがれが見られず、その後の粘着テープ剥離にて銅箔が露出しない。
△:1mm×1mmのクロスカット(100マス)試験にてはがれが見られず、その後の粘着テープ剥離にて一部あるいはほぼ前面に渡って銅箔の露出が見られる。
×:1mm×1mmのクロスカット(100マス)時にはがれが見られ、銅箔が露出する。
【0093】
上記電極を面積1.539cm2の円形に切り出し、真空下80℃で24時間乾燥した。この電極を、電極層面が厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンフィルムを介してリチウム箔と対面するようにして、ニッケルメッキした鉄製の電池缶容器に入れ、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等容量混合物に六フッ化リン酸リチウムLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解した非水電解液を注入し、密封してリチウムイオン二次電池を作成した。得られたリチウムイオン二次電池について、以下の方法で容量維持率(%)を測定した。
【0094】
<容量維持率(%)の測定方法>
正極を金属リチウムとして0Vから1.5Vまで、0.5Cの定電流定電圧充電法によって2サイクル目の充電容量(単位=mAh/g(活物質当たり))と50サイクル目の充電容量(単位=mAh/g(活物質当たり))を測定し、2サイクル目の充電容量に対する50サイクル目の充電容量の割合を百分率で算出し、これを容量維持率(%)として。この値が大きいほど容量減が少なく良い結果である。
【0095】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が4,000〜60,000で、カルボキシル基の酸価が30〜90KOHmg/gである直鎖状ポリイミド樹脂(A)と、1分子中に二つのエポキシ基を有し、エポキシ当量が250〜1000である直鎖状エポキシ樹脂(B)とを含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物。
【請求項2】
前記直鎖状ポリイミド樹脂(A)が重量平均分子量が5,000〜40,000で、カルボキシル基の酸価が30〜80である請求項1記載のリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物。
【請求項3】
前記直鎖状ポリイミド樹脂(A)が、5員環イミド骨格に直結するビフェニル骨格を有し、該ビフェニル骨格の含有率が20〜45質量%で、且つ、対数粘度が0.2〜0.8dl/gのポリイミド樹脂である請求項1記載のチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物。
【請求項4】
前記直鎖状エポキシ樹脂(B)が、主鎖にポリアルキレングリコール鎖を含有するエポキシ樹脂である、請求項1記載のリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物。
【請求項5】
前記直鎖状エポキシ樹脂(B)が、主鎖にポリエチレングリコール鎖および/またはポリプロピレングリコール鎖を含有するエポキシ樹脂である、請求項4記載のリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物。
【請求項6】
前記直鎖状エポキシ樹脂(B)が、主鎖にポリエチレングリコール鎖を含有し、且つ、該ポリエチレングリコール鎖の繰り返し単位が1〜30のエポキシ樹脂である、請求項5記載のリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して50〜150質量部である請求項1〜6のいずれか1項記載のリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のリチウムイオン二次電池の電極用樹脂組成物と炭素材料を用いて得られる負電極を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。

【公開番号】特開2013−20875(P2013−20875A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154775(P2011−154775)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】