説明

リチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物及びリチウムイオン二次電池

【課題】 サイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得られるリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物と、この組成物を用いたリチウムイオン二次電池を提供すること。
【解決手段】 ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する非反応性の乳化剤の存在下でビニル単量体を重合して得られるビニル重合体と活物質とを含有するリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物であり、該ビニル重合体が、ビニル単量体の合計質量に対してポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量が5〜15質量%になるように該乳化剤を用いて得られるリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物、該組成物を用いて得られる負電極を有するリチウムイオン二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を動力源とする機器の電源や、特にサイクル安定性が要求される電力貯蔵用や電気自動車用の電源として好適に用いることができるリチウムイオン二次電池の電極用組成物と、この組成物を用いた電極を有するリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコンや携帯電話、PDAなどの携帯端末の電源に用いられている二次電池として、リチウムイオン二次電池が多用されてきている。リチウムイオン二次電池は、自動車への採用も本格化しつつあり、リチウムイオン二次電池に対する充放電サイクル特性の向上が求められている。
【0003】
電極活物質担体としてリチウムイオンを吸蔵放出可能な物質、例えば炭素質材料を負極に用いたリチウムイオン二次電池は、金属リチウム負極を使用した場合に近い高い放電電圧が得られるが、電極活物質担体と金属箔との密着力が小さく、充放電を繰り返すうちに剥離が生じ、上記充放電サイクル特性が十分とはいえない状況にある。
【0004】
この状況を改善するため、エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位(a)と、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー由来の構造単位(b)とを有し、構造単位(a)/構造単位(b)=99〜60/1〜40(重量比)、かつ構造単位(a)と構造単位(b)の合計が全単位に対して80重量%以上であるポリマーと活物質をと含む樹脂組成物が開示されている。このポリマー(ビニルポリマー)は、例えば、原料としてメタクリル酸2−エチルヘキシルとメタクリル酸と、ジビニルベンゼンを用い、これらの原料100質量部に対してポリオキシエチレン鎖を有する非反応性の乳化剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)5部(ポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量で換算すると原料100質量部に対して4.3%)を反応系内に存在させて原料を重合させて得られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1に記載の実施例では充電容量の維持率を測定しサイクル特性の評価を行っている。ここで、充電容量の維持率は、3サイクル、時の放電容量で、50サイクル時の放電容量を除する事により算出している。該サイクル特性の評価は、60℃と高温の雰囲気下で行っている事もあるが、充電容量の維持率が65〜73%程度であり、未だ十分ではない。
【0006】
また、リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物に用いるポリマーとして、ポリエチレングリコール鎖を有する反応性乳化剤(重合成モノマー)を原料の一部として用いて得られるポリマーが開示されている。具体的には、原料の合計量に対するポリエチレングリコール鎖の質量の割合が5〜15%となるようにポリエチレングリコール鎖を有する反応性乳化剤を用いて得られるポリマーが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献の実施例1によるとこのポリマーを用いて得られるリチウムイオン二次電池は、常温における充放電レートを0.1Cとして充放電を5サイクルと50サイクル行ったあとの電気容量を測定している。この条件下では、5サイクル終了時の充電容量に対する50サイクル終了時の充電容量の割合は94%程度を維持しているものの、充放電レートを0.2Cと厳しくすると80%程度まで下落してしまい、充放電サイクル特性は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−195521号公報
【特許文献2】特開2001−035496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、サイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得られるリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物と、この組成物を用いたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特許文献1に比べて、ビニルモノマーの合計質量に対するポリオキシエチレン鎖の含有量を多くする、具体的には、5〜15質量%となるように乳化剤を用い、この乳化剤の存在下で得られるビニルポリマーを用いることによりサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池が得られること、この知見はポリオキシエチレン鎖に限定されず、ポリオキシアルキレン鎖であれば上記効果が得られること、反応系にポリオキシエチレン鎖の質量が5〜15%となるように乳化剤を用いればよく、乳化剤は反応性、非反応性の限定はないこと等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する非反応性の乳化剤の存在下でビニル単量体を重合して得られるビニル重合体と活物質とを含有するリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物であり、該ビニル重合体が、ビニル単量体の合計質量に対するポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5〜15%となるように該乳化剤を用いて得られるものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する非反応性の乳化剤の存在下でビニル単量体を重合して得られるビニル重合体と炭素系活物質とを含有するリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物であり、該ビニル重合体が、ビニル単量体の合計質量に対するポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5〜15質量%になるように該乳化剤を用いて得られる組成物を用いて得られる負電極を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物はサイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得られる。また、電極の原料である銅箔との密着性に優れ、また、可とう性にも優れる為、製造した電極をロール状にして保管する事も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いるビニル重合体は、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する非反応性の乳化剤の存在下でビニル単量体を重合して得られ、該ビニル単量体の合計質量に対するポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5〜15%になるように該乳化剤を用いて得られるものであることを特徴とする。ポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5%よりも少ないとリチウムイオンの輸送に有効なポリオキシアルキレンエーテル鎖の構造が少ない為、サイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得にくくなることから好ましくない。ポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が15%よりも多いと、得られるビニル重合体の集電体への密着性が低下し、サイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得にくくなることから好ましくない。本発明で用いるビニル重合体で用いるビニル重合体は、ビニル単量体の合計質量に対してポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5〜13%になるように乳化剤を用いて得られる重合体がより好ましい。
【0014】
尚、本発明で用いる乳化剤中のポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合は、〔(ポリオキシアルキレンエーテル鎖の繰り返し構造部分の質量)/乳化剤の全質量〕で求めることができる。
【0015】
ビニル重合体の原料であるビニル単量体としては、各種のビニル単量体を用いることができ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;
【0016】
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸のエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル単量体類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン化合物;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;ブタジエン等のジエン類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2−メタクリロイルプロピオン酸等のカルボキシル基含有ビニル単量体;
【0017】
アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド等の不飽和カルボン酸のアミド類;グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ビニル単量体;2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルエチルアクリレート等の水酸基含有ビニル単量体;ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有ビニル単量体;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和カルボン酸の置換アミド;
【0018】
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物;ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等の1分子中に2個以上の不飽和結合を有するビニル単量体;更に、塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド;
【0019】
アクリル酸ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アクリル酸ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、アクリル酸ポリオキシプロピレンテトラデシルエーテル、メタクリル酸ポリオキシエチレンデシルエーテル、メタクリル酸ポリオキシエチレンシクロヘキシルエチルエーテル、メタクリル酸ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、メタクリル酸ポリオキシプロピレン−2,4−ビス(α−メチルベンジル)フェニルエーテル等の(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレンエーテル化合物等が挙げられる。
【0020】
また、下記式(1)
【0021】
【化1】

(式中、R1およびR2は水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはハロゲンであり、R3およびR4は水素またはメチル基であり[ただし、R3とR4が同時にメチル基になることはない]、mは3〜20の整数である。)
で表される単量体もビニル単量体として例示することができる。このようなビニル単量体は、具体的には、例えば、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ヘプタエチレングリコールジメタクリレート、オクタエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、ヘキサプロピレングリコールジメタクリレート、ヘプタプロピレングリコールジメタクリレート、オクタプロピレングリコールジメタクリレート;これらのメタクリレートの一部をアクリレートに替えた化合物;トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、ヘキサエチレングリコールジアクリレート、ヘプタエチレングリコールジアクリレート、オクタエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサプロピレングリコールジアクリレート、ヘプタプロピレングリコールジアクリレート、オクタプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0022】
また、下記式(2)
【0023】
【化2】

(式中、R5は水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはハロゲンであり、R6は炭素数1〜20の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基であり、R7およびR8は水素またはメチル基であり[ただし、R7とR8が同時にメチル基になることはない]、nは1〜50の整数である。)
で表される単量体もビニル単量体として例示することができる。このようなビニル単量体は、具体的には、例えば、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレートおよびフェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いるビニル重合体の中でも、アクリル酸ブチルとスチレンとアクリル酸とを用いて得られるビニル重合体が最適な極性と耐熱性を有する電極を得られることから好ましく、中でも、アクリル酸ブチル30〜90質量部、スチレン10〜70質量部及びアクリル酸1〜10質量部を用いて得られるビニル重合体がより好ましい。
【0025】
本発明で用いるポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する非反応性の乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有するアニオン性乳化剤、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有するカチオン性乳化剤、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有するノニオン性乳化剤等が挙げられる。
【0026】
前記ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有するアニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシアルキレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。
【0027】
前記ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有するカチオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0028】
前記ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有するノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;
【0029】
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;
【0030】
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類;
【0031】
グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート、モノグリセライドステアリン系、モノグリセライドオレイン系、モノグリセライドステアリン・オレイン系等のグリセリン脂肪酸エステル類;
【0032】
ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0033】
また、前記式(1)、式(2)で表されるビニル単量体もポリオキシアルキレンエーテル鎖を有するノニオン性乳化剤として使用する事ができる。
【0034】
本発明で用いるポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する乳化剤の中でもリチウムイオンとの親和性が良好で、サイクル特性が向上するリチウムイオン二次電池が得られることからポリオキシアルキレンエーテル鎖を有するノニオン性乳化剤が好ましく、中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類がより好ましい。
【0035】
本発明で用いる乳化剤中のポリオキシアルキレンエーテル鎖の繰り返し単位数は2〜100が安定してビニル重合体を合成できることから好ましく、5〜50がより好ましい。
【0036】
本発明で用いる乳化剤は非反応性の乳化剤である。非反応性の乳化剤を用いることで、得られるリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物はリチウムイオンの輸送に寄与するとされるポリオキシアルキレンエーテル鎖の運動性を損なわない組成物が得られると本発明者らは考えている。
【0037】
本発明のビニル重合体は、ビニル単量体の合計質量に対するポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5〜15量%になるように非反応性の乳化剤を用いて得られる。重合の具体的な方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを挙げることができるが、溶剤成分を全く含まない製造方法であり、かつ簡便であることから、懸濁重合、乳化重合が好ましく、更に塗膜物性に優れる水性被覆剤が得られることから乳化重合がより好ましい。
【0038】
乳化重合の一例を挙げると、ビニル単量体の全量100質量部に対して、ラジカル重合開始剤0.01〜10質量部と、水性媒体50〜10,000質量部を使用して前記乳化剤の存在下、0〜100℃で重合することができる。また、ラジカル重合開始剤と還元剤を併用するレドックス重合にても行うことができ、この場合の還元剤の使用量はビニル単量体の全量100質量部に対して0.01〜10質量部である。この際、鉄イオンや銅イオン等の多価金属塩イオンを生成する化合物を促進剤として併用することも可能である。
【0039】
乳化重合の一例を更に具体的に説明する。まず、水にビニル系単量体と前記乳化剤とを加えたプレエマルジョンを得る。このときのビニル系単量体100質量部に対する水の量は特に制限されず、乳化剤の性能や量などを考慮して決定すればよい。ここで、ビニル系単量体がより良好に水に分散したプレエマルジョンを得るために、本発明の効果を損なわない範囲でポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する乳化剤以外の乳化剤を加えても良い。
【0040】
ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する乳化剤以外の乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有さないアニオン性乳化剤、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有さないカチオン性乳化剤等が挙げられる。
【0041】
前記アニオン性乳化剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩;スルホン化パラフィンのアンモニウム塩などのアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トリエタノールアミンアビエテート、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ヤシ油せっけん、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどの脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェートなどのアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0042】
カチオン性乳化剤としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムハイドロオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0043】
上記プレエマルジョンとは別途にポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する乳化剤を含有する水を用意する。水の量は、目的とする樹脂エマルションの不揮発分を考慮して決定すればよい。前記乳化剤の量は、上記プレエマルジョンの調製に用いた乳化剤との合計が有するポリオキシアルキレンエーテル鎖の量がビニル系単量体の質量の5〜15質量%となるように適宜調整すればよい。
【0044】
乳化剤を入れた後、液温を例えば50〜90℃に昇温する。そして、反応系を窒素雰囲気下にした後、プレエマルジョンの一部を水中に投入する。投入する量は通常プレエマルションの全量の0〜50質量%程度である。プレエマルジョンの一部を投入した後、5〜10分間程度攪拌する。
【0045】
攪拌後、重合開始剤を投入する。重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル及びその塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。
【0046】
さらにこれらの過硫酸塩または過酸化物と、鉄イオンおよびナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸などの還元剤を組み合わせて用いる公知のレドックス系開始剤も用いることができる。
【0047】
重合開始剤を投入する際は、イオン交換水に溶解してから投入する。ここで、重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、ビニル単量体100質量部に対して通常0.05〜5質量部である。
【0048】
重合開始剤を投入した後、液温50〜90℃で5〜30分間程度攪拌する。その後、残りのプレエマルジョンと、別途用意した重合開始剤を更に添加する。添加する際は通常1〜5時間かけて滴下する。重合開始剤の使用量としては、ビニル単量体100質量部に対して通常0.01〜10質量部である。
【0049】
重合開始剤の全量を滴下後、更に1〜5時間攪拌し、重合を進行させる。反応終了後、反応液を冷却し、必要に応じてpHをアンモニア水などで調整、乾燥し、本発明で用いるビニル重合体を得る。
【0050】
本発明で用いる活物質は負極活物質と正極活物質がある。負極活物質は、主に炭素系活物質と非炭素系活物質とに大別される。
【0051】
前記炭素系活物質としては、炭素質材料と黒鉛質材料が挙げられる。炭素質材料とは一般的に炭素前駆体を2000℃以下で熱処理(炭素化)された黒鉛化度の低い(結晶性の低い)炭素材料を示し、黒鉛質材料とは易黒鉛性炭素を2000℃以上で熱処理することによって得られた黒鉛に近い高い結晶性を有する黒鉛質材料を示す。
【0052】
炭素質材料としては、熱処理温度によって炭素の構造を容易に変える易黒鉛性炭素とガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素が挙げられる。易黒鉛性炭素としては石油や石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられ、例えば、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。MCMBとはピッチ類を400℃前後で加熱する過程で生成したメソフェーズ小球体を分離抽出した炭素微粒子であり、メソフェーズピッチ系炭素繊維とは、前記メソフェーズ小球体が成長、合体して得られるメソフェーズピッチを原料とする炭素繊維である。
【0053】
難黒鉛性炭素としては、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)などが挙げられる。
【0054】
黒鉛質材料としては天然黒鉛、人造黒鉛が上げられる。人造黒鉛としては、主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMB系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが負極活物質として利用される。
【0055】
非炭素系活物質としては、リチウム金属を用いることができ、またリチウムと合金を形成する単体金属および合金、及びそれらの酸化物や硫化物等が用いられる。
【0056】
リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。それらの中でもケイ素(Si)、スズ(Sn)または鉛(Pb)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、または、それらの金属の化合物が用いられる。
【0057】
酸化物や硫化物としては、酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等が挙げられる。それらの中でも酸化スズ、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化バナジウム等の酸化物、Si、Sn、PbおよびTi原子よりなる群から選ばれる金属元素を含むリチウム含有金属複合酸化物材料が用いられている。
【0058】
リチウム含有金属複合酸化物としては、更にLixTiyMzO4で示されるリチウムチタン複合酸化物(0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、ZnおよびNb)が挙げられ、中でもLi4/3Ti5/3O4、Li1Ti2O4、Li4/5Ti11/5O4が用いられる。
【0059】
これらの中でも、表面官能基がほとんど存在しない活物質が、不溶成分の粒子径が小さいことによる高い分散性向上効果が得られることから好ましい。表面官能基がほとんど存在しない活物質は、半水溶性高分子の不溶成分が粒子間に存在することにより、その浸透圧効果でスラリーの分散が進んでいる。不溶成分の粒子径が小さいほど、浸透圧効果が大きくなることから、スラリーの分散が進み安定性が向上することから、得られる電極の均一性も向上する。このような活物質としては、炭素系活物質が好ましい。
【0060】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出可能な活物質が用いられ、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属とのリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が使用される。
【0061】
遷移金属酸化物としては、MnO、MnO、V、V13、TiO、Cu、非晶質VO−P、MoO、V2O、V13等が挙げられ、中でもサイクル安定性と容量からMnO、V、V13、TiOが好ましい。
【0062】
遷移金属硫化物としては、TiS、TiS、非晶質MoS、FeS等が挙げられる。
【0063】
リチウム含有複合金属酸化物の構造は特に限定はされず、層状構造、スピネル構造、オリビン型構造などが挙げられる。
【0064】
層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)、Co−Ni−Mnの複合酸化物を主構造とするリチウム含有複合酸化物、Ni−Mn−Alの複合酸化物を主構造とするリチウム含有複合酸化物、Ni−Co−Alの複合酸化物を主構造とするリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
【0065】
スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはマンガン酸リチウム(LiMn)やMnの一部を他の遷移金属で置換したLi[Mn]O(ここでMは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu等)等が挙げられる。
【0066】
オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはLiXMPO(式中、Mは、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B及びMoから選ばれる少なくとも1種、0≦X≦2)であらわされるオリビン型燐酸リチウム化合物が挙げられる。
【0067】
有機化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。
【0068】
電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。リチウムイオン二次電池用の正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
【0069】
本発明において、用いられる活物質の粒子径は、通常1〜50μm、好ましくは2〜30μmである。粒子径が上記範囲にあることにより、後述するスラリー組成物を調製する際のバインダー量を少なくすることができ、電池の容量の低下を抑制できると共に、スラリー組成物を、塗布するのに適正な粘度に調製することが容易になり、均一な電極を得ることができる。
【0070】
活物質の使用量は、通常、ビニル重合体に対して質量基準で1〜1000倍、好ましくは2〜500倍、より好ましくは3〜500倍、とりわけ好ましくは5〜300倍である。
【0071】
本発明のリチウムイオン二次電極用樹脂組成物には、更に必要に応じて、種々の充填材、有機顔料、無機顔料、体質顔料、防錆剤等を添加することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0072】
前記充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化けい素酸粉、微粒状酸化けい素、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルムニウム、雲母、アルミナ等が挙げられる。
【0073】
充填材としては、各種粒子径のものが使用可能であり、本樹脂やその組成物の物性を阻害しない程度に添加することが可能である。かかる適正な量としては、質量で5〜80%程度の範囲であり、好ましくは均一に分散してから使用することが好ましい。分散方法としては、公知のロールによる分散やビーズミル、高速分散等により行うことが可能であり、粒子表面を予め分散処理剤で表面改質しても良い。
【0074】
前記有機顔料としては、アゾ顔料;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンの如き銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0075】
前記無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデート・オレンジの如きクロム酸塩;紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄;炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド;硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物;硫酸鉛の如き硫酸塩;群青の如き珪酸塩;炭酸塩、コバルト・バイオレッド;マンガン紫の如き燐酸塩;アルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉、ニッケル粉の如き金属粉;カーボンブラック等が挙げられる。
【0076】
また、その他の着色、防錆、体質顔料のいずれも使用することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0077】
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の樹脂組成物を用いて得られる電極を有することを特徴とする。
【0078】
上記電極は、例えば、本発明の組成物を含むペースト状の合剤を金属箔に塗布して塗膜層を形成した後、乾燥、圧着して形成される。
【0079】
上記合剤の調製に使用する溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、キシレンの中の少なくとも一種を含むことが好ましい。特に好ましくは、溶解性の観点からN−メチル−2−ピロリドンである。
【0080】
上記の電極層を形成する工程の内、塗膜層中に含有される溶剤の量が当初の含有量の40%以下になるまで125℃以下の温度で乾燥する工程を少なくとも乾燥工程の初期に含むことが好ましい。このように、少なくとも乾燥工程の初期において溶剤の量が当初の含有量の40%以下になるまで125℃以下の低温で乾燥することにより、電極層中のバインダー成分の分布状態が最適化され、その後の乾燥、圧着工程を経て電極層と金属箔との最適な密着状態が得られ、充放電特性が向上する。
【0081】
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の樹脂組成物の中でも炭素系活物質を含有する組成物を用いて得られるものが導電性が良好な電極が得られることから好ましい。
【0082】
本発明のリチウムイオン二次電池は、電解液や本発明の組成物を用いて得られる負電極を含み、必要に応じてセパレーター等の部品を用いて、常法に従って製造されるものである。例えば、次の方法が挙げられる。すなわち、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、電池形状に応じて巻く、折るなどして、電池容器に入れ、電解液を注入して封口する。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
【0083】
電解液は通常、リチウムイオン二次電池用に用いられるものであればいずれでもよく、負極活物質、正極活物質の種類に応じて電池としての機能を発揮するものを選択すればよい。電解質としては、例えば、従来より公知のリチウム塩がいずれも使用でき、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H、CFSOLi、CHSOLi、LiCFSO、LiCS0、Li(CFSO)2N、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどが挙げられる。
【0084】
この電解質を溶解させる溶媒(電解液溶媒)は通常用いられるものであれば特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類;γ−ブチルラクトンなどのラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4―メチル−1,3―ジオキソランなどのオキソラン類;アセトニトリルやニトロメタンなどの含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの有機酸エステル類;リン酸トリエステルや炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピルのような炭酸ジエステルなどの無機酸エステル類;ジグライム類;トリグライム類;スルホラン類;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトンなどのスルトン類;等の単独もしくは二種以上の混合溶媒が使用できる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例、比較例により本発明を説明する。本実施例における「部」、「%」は特に断りが無い限り質量基準である。
【0086】
合成例1(ビニル重合体の合成)
・プレエマルジョンの調整
アクリル酸ブチル(以後、BAと略す。)312.0部、スチレン264部、アクリル酸(以後、AAと略す。)18部およびグリシジルメタクリレート(以後、GMAと略す)6.0部を、エマルゲンA−500〔花王株式会社製のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(ノニオン系乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕15部、ノイゲンTDS−500F〔第一工業製薬(株)製ポリオキシエチレントリデシルエーテル(ノニオン性乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕15部、ネオゲンS−20F〔第一工業製薬(株)製直鎖アルキルベンゼンススホン酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分20%〕7.5部とラテムルE−118B〔花王株式会社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分25%、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:76%〕6.0部をイオン交換水202.5部に溶解させた乳化剤を水溶液中に分散させることにより、プレエマルジョン(A1)を作製した。
【0087】
・滴下用重合開始剤溶液の調製
1.5部の過硫酸ナトリウムと6部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B1)を調製した。また、1.2部の過硫酸ナトリウムと42部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B2)を調製した。
【0088】
・ビニル重合体エマルジョンの合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入口を備えた1Lの反応容器に、イオン交換水264部と、レオコールTD90〔ライオン株式会社製ポリエチレングリコール系ノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:65%〕6.0部を入れ、窒素シール下に78℃にまで30分間かけて昇温した。この反応容器にプレエマルジョン(A1)42.3部を加え5分間攪拌した後、滴下用重合開始剤溶液(B1)を加え、80℃にて5分間反応させた。次いで、残りのプレエマルジョン(A1)803.7部と、滴下用重合開始剤溶液(B2)とを3時間かけて滴下し、その後さらに60分間保持することにより、系内の電解質物質濃度を低下させつつ乳化重合せしめ、その後冷却した。アンモニア水とイオン交換水を用いて、pHが7.6、不揮発分が49.7%、になるように調整し、樹脂エマルジョンを得た。これを(EM−1)と称する。
【0089】
本合成例において、ビニル重合体の原料の合計量に対するポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤中のポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合は5.2%であった。また、ポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤の使用量は、ビニル重合体の原料の合計量に対して6.25%であった。
【0090】
合成例2(同上)
・プレエマルジョンの調整
アクリル酸ブチル(以後、BAと略す。)212.0部、スチレン176部、アクリル酸(以後、AAと略す。)15部およびγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.0部を、エマルゲンA−500〔花王株式会社製のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(ノニオン系乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕20部、ノイゲンTDS−500F〔第一工業製薬(株)製ポリオキシエチレントリデシルエーテル(ノニオン性乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕20部、ネオゲンS−20F〔第一工業製薬(株)製直鎖アルキルベンゼンススホン酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分20%〕10部とラテムルE−118B〔花王株式会社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分25%、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:76%〕8.0部をイオン交換水200部に溶解させた乳化剤を水溶液中に分散させることにより、プレエマルジョン(A2)を作製した。
【0091】
・滴下用重合開始剤溶液の調製
0.25部の過硫酸ナトリウムと1.0部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B3)を調製した。また、1.0部の過硫酸ナトリウムと40.0部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B4)を調製した。
【0092】
・ビニル重合体エマルジョンの合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入口を備えた1Lの反応容器に、イオン交換水348部と、レオコールTD90〔ライオン株式会社製ポリエチレングリコール系ノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:65%〕8.0部を入れ、窒素シール下に78℃にまで30分間かけて昇温した。この反応容器にプレエマルジョン(A2)33.2部を加え5分間攪拌した後、滴下用重合開始剤溶液(B3)を加え、80℃にて5分間反応させた。次いで、残りのプレエマルジョン(A2)629.8部と、滴下用重合開始剤溶液(B4)とを3時間かけて滴下し、その後さらに60分間保持することにより、系内の電解質物質濃度を低下させつつ乳化重合せしめ、その後冷却した。アンモニア水とイオン交換水を用いて、pHが7.5、不揮発分が39.3%、になるように調整し、樹脂エマルジョンを得た。これを(EM−2)と称する。
【0093】
本合成例において、ビニル重合体の原料の合計量に対するポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤中のポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合は10.5%であった。また、ポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤の使用量は、ビニル重合体の原料の合計量に対して12.4%であった。
【0094】
合成例3(同上)
・プレエマルジョンの調整
アクリル酸ブチル(以後、BAと略す。)212.0部、スチレン176部、アクリル酸(以後、AAと略す。)15部およびγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.0部を、エマルゲンA−500〔花王株式会社製のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(ノニオン系乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕24部、ノイゲンTDS−500F〔第一工業製薬(株)製ポリオキシエチレントリデシルエーテル(ノニオン性乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕24部、ネオゲンS−20F〔第一工業製薬(株)製直鎖アルキルベンゼンススホン酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分20%〕12部とラテムルE−118B〔花王株式会社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分25%、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:76%〕10部をイオン交換水200部に溶解させた乳化剤を水溶液中に分散させることにより、プレエマルジョン(A3)を作製した。
【0095】
・滴下用重合開始剤溶液の調製)
0.25部の過硫酸ナトリウムと1.0部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B5)を調製した。また、1.0部の過硫酸ナトリウムと40.0部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B6)を調製した。
【0096】
・ビニル重合体エマルジョンの合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入口を備えた1Lの反応容器に、イオン交換水348部と、レオコールTD90〔ライオン株式会社製ポリエチレングリコール系ノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:65%〕10部を入れ、窒素シール下に78℃にまで30分間かけて昇温した。この反応容器にプレエマルジョン(A3)33.8部を加え5分間攪拌した後、滴下用重合開始剤溶液(B5)を加え、80℃にて5分間反応させた。次いで、残りのプレエマルジョン(A3)641.2部と、滴下用重合開始剤溶液(B2)とを3時間かけて滴下し、その後さらに60分間保持することにより、系内の電解質物質濃度を低下させつつ乳化重合せしめ、その後冷却した。アンモニア水とイオン交換水を用いて、pHが7.5、不揮発分が39.3%、になるように調整し、樹脂エマルジョンを得た。これを(EM−3)と称する。
【0097】
本合成例において、ビニル重合体の原料の合計量に対するポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤中のポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合は12.6%であった。また、ポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤の使用量は、ビニル重合体の原料の合計量に対して15%であった。
【0098】
合成例4(比較対照用ビニル重合体の合成)
・プレエマルジョンの調整
アクリル酸ブチル(以後、BAと略す。)312.0部、スチレン264部、アクリル酸(以後、AAと略す。)18部およびグリシジルメタクリレート(以後、GMAと略す)6.0部を、エマルゲンA−500〔花王株式会社製のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(ノニオン系乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕12部、ノイゲンTDS−500F〔第一工業製薬(株)製ポリオキシエチレントリデシルエーテル(ノニオン性乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕12部、ネオゲンS−20F〔第一工業製薬(株)製直鎖アルキルベンゼンススホン酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分20%〕6.0部とラテムルE−118B〔花王株式会社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分25%、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:76%〕5.0部をイオン交換水202.5部に溶解させた乳化剤水溶液中に分散させることにより、プレエマルジョン(A4)を作製した。
【0099】
・滴下用重合開始剤溶液の調製
1.5部の過硫酸ナトリウムと6部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B7)を調製した。また、1.2部の過硫酸ナトリウムと42部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B8)を調製した。
【0100】
・ビニル重合体エマルジョンの合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入口を備えた1Lの反応容器に、イオン交換水264部と、レオコールTD90〔ライオン株式会社製ポリエチレングリコール系ノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:65%〕5.0部を入れ、窒素シール下に78℃にまで30分間かけて昇温した。この反応容器にプレエマルジョン(A4)41.9部を加え5分間攪拌した後、滴下用重合開始剤溶液(B7)を加え、80℃にて5分間反応させた。次いで、残りのプレエマルジョン(A4)795.6部と、滴下用重合開始剤溶液(B8)とを3時間かけて滴下し、その後さらに60分間保持することにより、系内の電解質物質濃度を低下させつつ乳化重合せしめ、その後冷却した。アンモニア水とイオン交換水を用いて、pHが7.5、不揮発分が49.5%、になるように調整し、樹脂エマルジョンを得た。これを(em−1)と称する。
【0101】
本合成例において、ビニル重合体の原料の合計量に対するポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤中のポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合は4.3%であった。また、ポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤の使用量は、ビニル重合体の原料の合計量に対して5%であった。
【0102】
合成例5(同上)
・プレエマルジョンの調整
アクリル酸ブチル(以後、BAと略す。)212.0部、スチレン176部、アクリル酸(以後、AAと略す。)15部およびγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.0部を、エマルゲンA−500〔花王株式会社製のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(ノニオン系乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:95%〕28部、ノイゲンTDS−500F〔第一工業製薬(株)製ポリオキシエチレントリデシルエーテル(ノニオン性乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕28部、ネオゲンS−20F〔第一工業製薬(株)製直鎖アルキルベンゼンススホン酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分20%、〕14部とラテムルE−118B〔花王株式会社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分25%、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:76%〕12部をイオン交換水200部に溶解させた乳化剤を水溶液中に分散させることにより、プレエマルジョン(A5)を作製した。
【0103】
・滴下用重合開始剤溶液の調製
0.25部の過硫酸ナトリウムと1.0部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B9)を調製した。また、1.0部の過硫酸ナトリウムと40.0部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B10)を調製した。
【0104】
・ビニル重合体エマルジョンの合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入口を備えた1Lの反応容器に、イオン交換水348部と、レオコールTD90〔ライオン株式会社製ポリエチレングリコール系ノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:65%〕10部を入れ、窒素シール下に78℃にまで30分間かけて昇温した。この反応容器にプレエマルジョン(A5)34.4部を加え5分間攪拌した後、滴下用重合開始剤溶液(B9)を加え、80℃にて5分間反応させた。次いで、残りのプレエマルジョン(A5)652.6部と、滴下用重合開始剤溶液(B10)とを3時間かけて滴下し、その後さらに60分間保持することにより、系内の電解質物質濃度を低下させつつ乳化重合せしめ、その後冷却した。アンモニア水とイオン交換水を用いて、pHが7.5、不揮発分が39.3%、になるように調整し、樹脂エマルジョンを得た。この樹脂エマルジョンは安定性に乏しく、凝集物を含んでいた。これを(em−2)と称する。
【0105】
本合成例において、ビニル重合体の原料の合計量に対するポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤中のポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合は15.5%であった。また、ポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤の使用量は、ビニル重合体の原料の合計量に対して18.0%であった。
合成例6(同上)
・プレエマルジョンの調整
アクリル酸ブチル(以後、BAと略す。)312.0部、スチレン264部、アクリル酸(以後、AAと略す。)18部、グリシジルメタクリレート(以後、GMAと略す)6.0部及び、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:80%)14.4部を、エマルゲンA−500〔花王株式会社製のポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(ノニオン系乳化剤)、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%〕12部、ノイゲンTDS−500F〔第一工業製薬(株)製ポリオキシエチレントリデシルエーテル(ノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:90%)〕12部、ネオゲンS−20F〔第一工業製薬(株)製直鎖アルキルベンゼンススホン酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分20%〕6.0部とラテムルE−118B〔花王株式会社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン性乳化剤);有効成分25%、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:76%〕5.0部をイオン交換水202.5部に溶解させた乳化剤水溶液中に分散させることにより、プレエマルジョン(A6)を作製した。
【0106】
・滴下用重合開始剤溶液の調製)
1.5部の過硫酸ナトリウムと6部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B7)を調製した。また、1.2部の過硫酸ナトリウムと42部のイオン交換水をビーカーに入れ、常温で充分攪拌溶解して、滴下用重合開始剤溶液(B8)を調製した。
【0107】
・ビニル重合体エマルジョンの合成
温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入口を備えた1Lの反応容器に、イオン交換水264部と、レオコールTD90〔ライオン株式会社製ポリエチレングリコール系ノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンエーテル鎖の含有率:65%〕5.0部を入れ、窒素シール下に78℃にまで30分間かけて昇温した。この反応容器にプレエマルジョン(A4)41.9部を加え5分間攪拌した後、滴下用重合開始剤溶液(B7)を加え、80℃にて5分間反応させた。次いで、残りのプレエマルジョン(A4)795.6部と、滴下用重合開始剤溶液(B8)とを3時間かけて滴下し、その後さらに60分間保持することにより、系内の電解質物質濃度を低下させつつ乳化重合せしめ、その後冷却した。アンモニア水とイオン交換水を用いて、pHが7.5、不揮発分が49.5%、になるように調整し、樹脂エマルジョンを得た。これを(em−3)と称する。
【0108】
本合成例において、ビニル重合体の原料(メトキシポリエチレングリコールメタクリレートも含む)の合計量に対するポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤中(メトキシポリエチレングリコールメタクリレートも含む)のポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合は4.0%であり、ポリオキシエチレンエーテル鎖を有する乳化剤の使用量(メトキシポリエチレングリコールメタクリレートも含む)は、ビニル重合体の原料(メトキシポリエチレングリコールメタクリレートも含む)の合計量に対して4.9%であった。
【0109】
実施例1
樹脂エマルジョン(EM−1)を固形分で1.5部、カルボキシメチルセルロースナトリウム1部、アセチレンブラック6.5部、球状黒鉛91部に水を加えて撹拌し、固形分濃度が50%の本発明のリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物1を得た。得られたスラリーを、厚さ30μmの銅箔の一方の面に塗布した後、60℃の熱風オーブンで10分乾燥し、さらに85℃の熱風オーブンで一晩減圧乾燥させることで電極を作成した。作成した電極を室温まで冷却したのち、電極密度が1.3g/cmとなるようにプレスした。得られた電極は銅箔を含む厚さが80μmであった。
【0110】
得られた電極の可とう性、電極の銅箔と硬化した樹脂組成物の接着性及びサイクル特性を下記方法に従って評価した。
【0111】
<電極の可とう性の評価方法>
電極を8cm角の正方形に切り出し、試験片を得た。この試験片を直径2mm及び10mmの棒に巻きつけ、電極の表面を目視で観察した。下記基準に従い評価した。
【0112】
◎:直径2mmの棒に巻きつけても、銅箔と硬化した樹脂のはがれが見られない。
○:直径2mmの棒に巻きつけた場合は上記はがれが発生するものの、直径10mmの棒に巻きつけた場合は上記はがれは発生しない。
×:直径10mmの棒に巻きつけた場合でも上記はがれが発生する。
【0113】
<電極の銅箔と硬化した樹脂組成物の接着性の評価>
電極を8cm角の正方形に切り出し、試験片を得た。この試験片を用いてクロスカット試験、粘着テープ試験を行い、下記基準に従い評価した。
【0114】
○:1mm×1mmのクロスカット(100マス)試験にてはがれが見られず、その後の粘着テープ剥離にて銅箔が露出しない。
△:1mm×1mmのクロスカット(100マス)試験にてはがれが見られず、その後の粘着テープ剥離にて一部あるいはほぼ前面に渡って銅箔の露出が見られる。
×:1mm×1mmのクロスカット(100マス)時にはがれが見られ、銅箔が露出する。
【0115】
上記電極を面積1.539cm2の円形に切り出し、真空下80℃で24時間乾燥した。この電極を、電極層面が厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンフィルムを介してリチウム箔と対面するようにして、ニッケルメッキした鉄製の電池缶容器に入れ、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等容量混合物に六フッ化リン酸リチウムLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解した非水電解液を注入し、密封してリチウムイオン二次電池を作成した。得られたリチウムイオン二次電池について、以下の方法で容量維持率(%)を測定した。
【0116】
<サイクル特性〔容量維持率(%)〕の測定方法>
正極を金属リチウムとして0Vから1.5Vまで、0.2Cの定電流定電圧充電法によって2サイクル目の充電容量(単位=mAh/g(活物質当たり))と100サイクル目の充電容量(単位=mAh/g(活物質当たり))を測定し、2サイクル目の充電容量に対する100サイクル目の充電容量の割合を百分率で算出し、これを容量維持率(%)として。この値が大きいほど容量減が少なく良い結果である。
【0117】
実施例2、3及び比較例1〜3
本発明の樹脂組成物(EM−1)を用いる以外は、(EM−2)、(EM−3)及び(em−1)〜(em−3)をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物2、3及び比較対照用リチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物1´〜3´を得た。これらの組成物を用いて実施例1と同様に評価を行った。評価結果を第1表に示す。
【0118】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する非反応性の乳化剤の存在下でビニル単量体を重合して得られるビニル重合体と活物質とを含有するリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物であり、該ビニル重合体が、ビニル単量体の合計質量に対するポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5〜15%になるように該乳化剤を用いて得られるものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物。
【請求項2】
前記乳化材がノニオン性の乳化剤である請求項1記載のリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ノニオン性の乳化剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル類またはポリオキシエチレンアリールエーテル類である請求項2記載のリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシエチレンエーテル鎖の繰り返し単位数が、5〜50である請求項1記載のリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビニル重合体が、ビニル単量体の合計質量に対するポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5〜13%になるように該乳化剤を用いて得られるものである請求項1記載のリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビニル系重合体が、アクリル酸ブチル30〜90質量部、スチレン10〜70質量部及びアクリル酸1〜10質量部を用いて得られるものである請求項1〜5のいずれか1項記載のリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物。
【請求項7】
ポリオキシアルキレンエーテル鎖を有する非反応性の乳化剤の存在下でビニル単量体を重合して得られるビニル重合体と炭素系活物質とを含有するリチウムイオン二次電池電極用樹脂組成物であり、該ビニル重合体が、ビニル単量体の合計質量に対するポリオキシアルキレンエーテル鎖の質量の割合が5〜15%になるように該乳化剤を用いて得られる組成物を用いて得られる負電極を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。

【公開番号】特開2013−97895(P2013−97895A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237199(P2011−237199)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】