説明

リチウムイオン二次電池

【課題】出力低下の原因となる電極活物質層/電解質層界面、電極活物質層/集電体界面でトラップされたガスを吸着(吸収)し、より高出力な且つ高容量なリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】一方の集電体に正極活物質層が設けられ、もう一方の集電体に負極活物質層が設けられた電極が電解質層を介した構造のリチウムイオン二次電池において、前記活物質層の少なくとも一方の面にガス吸着剤を含んでいる活物質層を形成したことを特徴とするリチウムイオン二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、初回充電時、電池長期使用時にガス発生が生じ、電極と電解質層又は電極と集電体の界面でトラップされ接触面積が減少して高出力を得にくくなることが問題であった。この対策として、電池密封工程時において真空下で密封を行うことで、ガスの除去を行ってきた。また、電極活物質層全体に吸着剤を添加することでガス吸収、水分吸収を行ってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電解質層にポリマー電解質又はゲル電解質を用いたバイポーラ(双極)型のリチウムイオン二次電池では発生したガスは移動しにくく電極活物質層/電解質層、電極活物質層/集電体界面でトラップされてしまう。そのため、上記に記載したような従来の手法では完全なガス抜きが行えず電池セル内にガスが残るという問題点と吸着剤を活物質層全体に添加すると活物質量が減少し反応表面積、電池容量が低下する問題点があった。
【0004】
そこで本発明では、出力低下の原因となる電極活物質層/電解質層界面、電極活物質層/集電体界面でトラップされたガスを吸収(吸着)し、より高出力な且つ高容量なリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、一方の集電体に正極活物質層が設けられ、もう一方の集電体に負極活物質層が設けられた(一対の)電極が、電解質層を介した構造のリチウムイオン二次電池において、
前記活物質層の少なくとも一方の面にガス吸着剤を含んでいる活物質層を形成したことを特徴とするリチウムイオン二次電池により達成できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、正負極の少なくとも一方にガス吸着剤を含まない活物質層とガス吸着剤を含んでいる活物質層を配置させることで、該ガス吸着剤が電池密封時のガス抜きを行う際に活物質層と電解質層界面ないし集電体界面でトラップされたガスを吸収(吸着)することができる。更に該ガス吸着剤が初回充電時、電池長期使用時に電池内部で発生し、活物質層と電解質層界面ないし集電体界面でトラップされ移動できないガスを吸着することができる。その結果、電池内で除去することのできなかったガスを吸着することができ電池内部抵抗を低減させることができ、より高出力な且つ高容量なリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のリチウムイオン二次電池は、一方の集電体に正極活物質層が設けられ、もう一方の集電体に負極活物質層が設けられた(一対の)電極が電解質層を介した構造のリチウムイオン二次電池において、前記活物質層の少なくとも一方の面にガス吸着剤を含んでいる活物質層(以下、単にガス吸着剤含有活物質層ともいう)を形成したことを特徴とするものである。よって、活物質層の一方の面には、活物質を含まず、ガス吸着剤を含んでいる層(単にガス吸着剤単独含有層ともいう)が形成されていてもよい。本発明では、ガス吸着剤含有活物質層とガス吸着剤単独含有層を総称してガス吸着剤含有層ともいう。
【0008】
まずは、本発明の特徴部分であるガス吸着剤を含んでいる活物質層を形成してなる活物質層の構造(配置構成)につき、図面を用いて説明する。
【0009】
図1(A)は、ガス吸着剤含有活物質層を、活物質層/電解質層界面に設けた場合の単電池構造を模式的に表した概略断面図である。図1(B)は、ガス吸着剤含有活物質層を、活物質層/集電体界面に設けた場合の単電池構造を模式的に表した概略断面図である。図1(C)は、ガス吸着剤含有活物質層を、活物質層/電解質層界面および活物質層/集電体界面の両方に設けた場合の単電池構造を模式的に表した概略断面図である。図2は、図1(A)の単電池構造を3層分積層してなるバイポーラ型の扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池の電極積層体(バイポーラ電池本体)を模式的に表した概略断面図である。また、本発明では、特に断らない限り、活物質層と電解質層との界面を「活物質層/電解質層界面」と略記し、活物質層と集電体との界面を「活物質層/集電体界面」と略記して表す。
【0010】
図1(A)〜(C)では、正極活物質層側および負極活物質層側のそれぞれにガス吸着剤含有活物質層を形成した実施形態を表しているが、本発明ではかかる実施形態に制限されるのではない。即ち、正極活物質層側または負極活物質層側のいずれか一方にのみガス吸着剤含有活物質層を形成するようにしてもよい。好ましくは、初回充電時、長期使用時にガス発生が多く認められる正極活物質層側には少なくともガス吸着剤含有活物質層を形成するのが望ましく、より望ましくは、正極活物質層および負極活物質層のそれぞれに、初回充電時、長期使用時に発生するガス量から、必要となる量のガス吸着剤含有活物質層を形成するのがより望ましいといえる。
【0011】
本発明では、活物質層の少なくとも一方の面にガス吸着剤含有活物質層を形成していることを特徴とするものである。この点につき、第1〜第3形態に分けて説明する。
【0012】
(a)第1形態
ここで、ガス吸着剤含有活物質層は、活物質層/電解質層界面に発生したガス近傍に配置することが望ましいことから、活物質層の電解質層と接する面にガス吸着剤含有活物質層を形成するのが望ましい一形態(以下、第1形態とも言う)と言える。かかる第1形態では、電池容量の低下を来たすことなく、電池密封工程で除去することのできなかった電極/電解質界面に溜まったガスを吸着することができ電池内部抵抗を低減させることができる(実施例1と比較例1の「抵抗値/比較例1抵抗値」及び「容量値/比較例1容量値」を対比参照のこと。)。
【0013】
該第1形態では、ガス吸着剤含有活物質層に電極活物質も含まれることがより効果的であることから、活物質層が、ガス吸着剤を含まない活物質層と活物質層/電解質層界面にガス吸着剤を含んでいる活物質層とを設けた構造をとるのが望ましい。具体的には、図1(A)に示すように、単電池層11は、電解質層14を挟み隣合う(一対の)電極である正極活物質層13と負極活物質層15とが対向するようになっている。この正極活物質層13と負極活物質層15は、共に集電体12上に、ガス吸着剤を含まない活物質層13a、15a、その上にガス吸着剤を含んでいる活物質層13b、15bが順に積層されてなる2層構造を有するものである。即ち、当該第1形態では、正極活物質層13及び負極活物質層15共に、ガス吸着剤含有活物質層13b、15bが、活物質層/電解質層界面に形成されているものである。
【0014】
かかる構造を有する第1形態では、電池容量の低下を招くことなく、ガス吸着剤が初回充放電時、電池長期使用時に発生し、活物質層/集電体界面にたまって移動できないガスを吸着することができる点で優れている。なお、各層の塗布の手法は、自走式ダイコータによる塗布または、インクジェット式等による塗布がある(電池の製法については、後述する)。
【0015】
(b)第2形態
上記ガス吸着剤含有活物質層は、活物質層/集電体界面に発生したガス近傍に配置することが望ましいことから、活物質層の集電体と接する面にガス吸着剤含有活物質層を形成するのが望ましい形態(以下、第2形態とも言う)と言える。かかる第2形態では、電池容量の低下を来たすことなく、電池密封工程で除去することのできなかった電極/電解質界面に溜まったガスを吸着することができ電池内部抵抗を低減させることができる(実施例6と比較例1の「抵抗値/比較例1抵抗値」及び「容量値/比較例1容量値」を対比参照のこと。)。
【0016】
該第2形態では、ガス吸着剤含有活物質層に電極活物質も含まれることがより効果的であることから、活物質層が、ガス吸着剤を含まない活物質層と活物質層/集電体界面にガス吸着剤を含んでいる活物質層とを設けた構造をとるのが望ましい。具体的には、図1(B)に示すように、単電池層11は、電解質層14を挟み隣合う電極の正極活物質層13と負極活物質層15とが対向するようになっている。この正極活物質層13と負極活物質層15は、共に集電体12上に、ガス吸着剤を含んでいる活物質層13b、15b、その上にガス吸着剤を含まない活物質層13a、15aが順に積層されてなる2層構造を有するものである。即ち、当該第2形態では、正極活物質層13及び負極活物質層15共に、ガス吸着剤含有活物質層13b、15bが、活物質層/集電体界面に形成されているものである。
【0017】
かかる構造を有する第2形態では、電池容量の低下を招くことなく、ガス吸着剤が初回充放電時、電池長期使用時に発生し、活物質層/電解質界面にたまって移動できないガスを吸着することができる点で優れている。なお、各層の塗布の手法は、自走式ダイコータによる塗布または、インクジェット式等による塗布がある(電池の製法については、後述する)。
【0018】
(c)第3形態
上記ガス吸着剤含有活物質層は、活物質層/電解質界面および活物質層/集電体界面に発生したガス近傍に配置することが望ましいことから、活物質層の電解質層と接する面及び活物質層の集電体と接する面の両面にガス吸着剤含有活物質層を形成する形態(以下、第3形態とも言う)が望ましい。かかる第3形態では、電池容量の低下を来たすことなく、電池密封工程で除去することのできなかった電極/電解質界面および電極/集電体界面に溜まったガスを吸着することができ電池内部抵抗を低減させることができる(表1の実施例7と比較例1の「抵抗値/比較例1抵抗値」及び「容量値/比較例1容量値」を対比参照のこと。)。
【0019】
該第3形態においても、ガス吸着剤含有活物質層に電極活物質も含まれることがより効果的であることから、活物質層が、ガス吸着剤を含まない活物質層と活物質層/集電体界面にガス吸着剤を含んでいる活物質層とを設けた構造をとるのが望ましい。具体的には、図1(C)に示すように、単電池層11は、電解質層14を挟み隣合う電極の正極活物質層13と負極活物質層15とが対向するようになっている。この正極活物質層13と負極活物質層15は、共に集電体12上に、ガス吸着剤含有活物質層でない活物質層13b、15b、その上にガス吸着剤を含まない活物質層13a、15a、更にその上にガス吸着剤を含んでいる活物質層13b、15bが順に積層されてなる3層構造を有するものである。即ち、第3形態では、正極活物質層13及び負極活物質層15共に、ガス吸着剤含有活物質層13b、15bが、活物質層/電解質界面と、活物質層/集電体界面に形成されている。
【0020】
かかる第3形態では、電池容量の低下を招くことなく、ガス吸着剤が初回充放電時、電池長期使用時に発生し、活物質層/電解質界面及び活物質層/電解質界面にたまった移動できないガスを吸着することができる点で優れている。なお、各層の塗布の手法は、自走式ダイコータによる塗布または、インクジェット式等による塗布がある(電池の製法については、後述する)。
【0021】
本発明に係るリチウムイオン二次電池では、例えば、図2に示すように、正極活物質層13側と、負極活物質層15側とで、活物質層の積層構造が同じ電極(例えば、図1(A)の電極)を、電解質層14を挟んで複数枚積層した構造の電極積層体(電池本体)21を形成することができる。但し、本発明では、正極活物質層側と、負極活物質層側とで、活物質層の積層構造が異なっていてもよい。例えば、正極活物質層側は、図1(A)の電極活物質層の積層構造をとり、負極活物質層側は、図1(A)の電極活物質層の積層構造以外の図1(B)や図1(C)の電極活物質層の積層構造をとってもよい。同様に、正極活物質層側が、図1(B)の電極活物質層の積層構造をとり、負極活物質層側は、図1(B)の電極活物質層の積層構造以外の図1(A)や図1(C)の電極活物質層の積層構造をとってもよい。更に、正極活物質層側が、図1(C)の電極活物質層の積層構造をとり、負極活物質層側は、図1(C)の電極活物質層の積層構造以外の図1(A)や図1(B)の電極活物質層の積層構造をとってもよい。更に、本発明では、正極活物質層側または負極活物質層側のいずれか一方にのみ、上記した第1〜3形態に示すような本発明のガス吸着剤含有活物質層を形成した電極構造としてもよい。また、電池を構成する各単電池層(単セル)ごとに異なる電極構造としてもよい。ただし、本発明では、これらの電極活物質層の積層構造に何ら制限されるものではない。
【0022】
また、当該ガス吸着剤含有活物質層は、便宜的に活物質層の一部として説明するが、通常の活物質層とは別の独立した層として捉えてもよいことはいうまでもない。また、電解質層の一部、または集電体の一部として捉えても良い。こうした場合にも本発明の技術範囲に含まれると解すべきであり、いずれに属するかで異なる発明と捉えるべきものではない。
【0023】
次に、本発明に係るリチウムイオン二次電池の全体構成の説明及び各構成要件に分けて説明する。
【0024】
まず、本発明に係るリチウムイオン二次電池は、より高出力且つ高容量とできることから、車両の駆動電源用等として好適に利用できるほか、携帯電話などの携帯機器向けのリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。すなわち、本発明の対象となるリチウムイオン二次電池は、活物質層の少なくとも一方の面にガス吸着剤含有活物質層を形成しているものであればよく、他の構成要件に関しては、特に制限されるべきものではない。例えば、上記リチウムイオン二次電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。即ち、「(一対の)電極が電解質層を介した構造」としたのは、これら積層型(扁平型)電池と巻回型(円筒型)電池の双方の形態を含めた最も広義に解釈し得るようにするためのものである。よって、当該要件を意図的に狭く解釈すべきものではない。また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、上述したバイポーラ型ではない(内部並列接続タイプ)電池およびバイポーラ型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。即ち、「一方の集電体に正極活物質層が設けられ、もう一方の集電体に負極活物質層が設けられた(一対の)電極」としたのは、これらバイポーラ型ではない(内部並列接続タイプ)電池とバイポーラ型(内部直列接続タイプ)電池の双方の形態を含めた最も広義に解釈し得るようにするためのものである。よって、当該要件を意図的に狭く解釈すべきものではない。バイポーラ型ではない電池では、通常の電池に比べて単電池の電圧が高く、容量、出力特性に優れた電池を構成できる。リチウムイオン二次電池内の電解質(層)の種類で区別した場合には、電解質(層)に非水系の電解液等の溶液電解質を用いた溶液電解質型電池、電解質(層)に高分子電解質を用いたポリマー電池(該ポリマー電池は、更に高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)を用いたゲル電解質型電池、高分子固体電解質(単にポリマー電解質ともいう)を用いた固体高分子(全固体)型電池に分けられる)など、従来公知のいずれの電解質(層)にも適用し得るものである。このうち、ポリマー電池、なかでも固体高分子(全固体)型電池は液漏れが生じないので、液絡の問題が無く信頼性が高く、かつ簡易な構成で出力特性に優れた電池を形成することができる点では有利である。また、積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
【0025】
したがって、以下の説明では、本発明のガス吸着剤含有活物質層を用いてなるバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池及びバイポーラ型のリチウムイオン二次電池につき図面を用いてごく簡単に説明するが、決してこれらに制限されるべきものではない。
【0026】
図3に、バイポーラ型でない扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池の断面概略図を示す。図3に示すリチウムイオン二次電池31では、電池外装材32に高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素38を収納し密封した構成を有している。ここで、発電要素38は、正極集電体33の両面に、本発明の特徴部分であるガス吸着剤含有活物質層を設けた正極活物質層34が形成された正極板、電解質層35、および負極集電体36の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に本発明の特徴部分であるガス吸着剤含有活物質層を設けた負極活物質層37が形成された負極板を積層した構成を有している。なお、ガス吸着剤含有活物質層を設けた正極活物質層および負極活物質層の詳しい構造(配置構成)に関しては、既に図1(A)〜(C)を用いて説明しているため、ここでは図示及び図解せず省略する。また、上記の各電極板(正極板及び負極板)と導通される正極(端子)リード39および負極(端子)リード40が、各電極板の正極集電体33及び負極集電体36に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられ、上記熱融着部に挟まれて上記の電池外装材32の外部に露出される構造を有している。
【0027】
図4に、バイポーラ型の扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単にバイポーラ電池とも称する)の全体構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図4に示したように、バイポーラ電池41では、1枚または2枚以上で構成されるバイポーラ電極45で電解質層46を挟み、隣合うバイポーラ電極45の正極活物質43と負極活物質層44とが対向するようになっている。ここで、バイポーラ電極45は、集電体42の片面に正極活物質層43を設け、もう一方の面に本発明の負極活物質層44を設けた構造を有している。すなわち、バイポーラ電池41では、集電体42の片方の面上に正極活物質層43を有し、他方の面上に負極活物質層44を有するバイポーラ電極45を、電解質層46を介して複数枚積層した構造の電極積層体(バイポーラ電池本体)47を具備してなるものである。また、該電極積層体47の最上層と最下層の電極45a、45bは、バイポーラ電極構造でなくてもよく、集電体42(または端子板)に必要な片面のみの正極活物質層43または負極活物質層44を配置した構造としてもよい。また、バイポーラ電池41では、上下両端の集電体42にそれぞれ正極および負極リード48、49が接合されている。
【0028】
なお、バイポーラ電極45(電極45a、45bを含む)の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、バイポーラ電池41では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、バイポーラ電極45の積層回数を少なくしてもよい。また、バイポーラ電池41でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体47部分を電池外装材(外装パッケージ)50に減圧封入し、電極リード48、49を電池外装材50の外部に取り出した構造とするのがよい。このバイポーラ電池41の基本構成は、複数積層した単電池層(単セル)が直列に接続された構成ともいえるものである。バイポーラ型のリチウムイオン二次電池は、その電極構造が異なることを除いては、基本的には上述したバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池と同様であるため、各構成要素につき以下にまとめて説明する。
【0029】
[集電体]
本発明で用いることのできる集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。
【0030】
また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体(複合集電体)を用いてもよい。該複合集電体を用いる場合、正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、チタンなどの導電性金属を用いることができるが、アルミニウムが特に好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができるが、SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、複合集電体においては、正極集電体と負極集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していれば良い。また、正極集電体及び負極集電体には、平板(箔)のほか、ラスプレート、すなわちプレートに切目を入れたものをエキスパンドすることにより網目空間が形成されるプレートにより構成されているものを用いることもできる。
【0031】
集電体の厚さは、特に限定されないが、通常は1〜100μm程度である。
【0032】
[正極活物質層(正極)]
本発明では、正極活物質層(以下、ガス吸着剤含有層でない正極活物質層という)の少なくとも一方の面にガス吸着剤含有活物質層が形成されているものである。ただし、負極活物質層側にガス吸着剤含有活物質層が形成されている場合には、必ずしもガス吸着剤含有層は必要ではない。
【0033】
ここで、ガス吸着剤含有層とは、少なくとも隣接する電極活物質層に比べて、炭素材料が多い層である。これは、本発明の技術範囲に該当するか否か、製品を分解ないし分析して判断する上で最も簡便な方法なためである。即ち、本発明に用いることのできるガス吸着剤には、後述するような炭素材料が使用され得るが、導電助剤や負極活物質材料にも炭素材料が使用されることもある。こうした他の使用目的で添加される導電助剤や負極活物質の炭素材料は、従来の技術と同様に電極活物質層全体に添加されるものである。したがって、こうした異なる使用形態で用いられる炭素材料と本発明のガス吸着剤とを明確かつ簡単に区別するために、ガス吸着剤含有層の定義を上記のように規定したものである。ただし、本発明では、上記定義によらなくても導電助剤や負極活物質に使用する炭素材料と簡単に区別(判別)できる場合には、上記定義によらなくてもよい。この場合、本発明で言うガス吸着剤含有層は、ガス吸着剤となり得る活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンシート等の炭素材料および/または炭素材料以外のガス吸着剤を含んでいる層と言えるものである。
【0034】
よって、ガス吸着剤含有活物質層とは、上記に規定するガス吸着剤含有層に更に活物質が含まれている層を言う。
【0035】
以下では、(1)ガス吸着剤含有層でない正極活物質層(単に正極活物質層ともいう)、ガス吸着剤含有層の1形態である(2)ガス吸着剤を含んでいる正極活物質層(単にガス吸着剤含有正極活物質層ともいう)、ガス吸着剤含有層の他の1形態である(3)正極活物質を含まず、ガス吸着剤を含んでいる層(単にガス吸着剤単独含有層ともいう)の順に説明する。
【0036】
(1)ガス吸着剤含有層でない正極活物質層(通常の一般的な正極活物質層)
当該(1)のガス吸着剤含有層でない正極活物質層とは、上記定義による場合には、ガス吸着剤含有層よりも炭素材料が少ない層をいう。また上記定義によらない場合には、ガス吸着剤となり得る活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンシート等の炭素材料および/または炭素材料以外のガス吸着剤を含んでいない層をいう。
【0037】
当該(1)のガス吸着剤含有層でない正極活物質層には、正極活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩、バインダ、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。電解質層に高分子ゲル電解質を用いる場合には、従来公知のバインダ、電子伝導性を高めるための導電助剤などが含まれていればよく、高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくても良い。電解質層に溶液電解質を用いる場合にも、当該正極活物質層には高分子電解質の原料のホストポリマー、電解液やリチウム塩などは含まれていなくてもよい。
【0038】
上記正極活物質としては、特に制限されるものではなく、従来公知の正極活物質を用いことができる。なかでも遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属酸化物)を用いることが好ましい。容量、出力特性に優れた電池を構成できるからである。こうしたリチウム−遷移金属酸化物としては、具体的には、LiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiCr、LiCrOなどのLi・Cr系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの(例えば、LiNiCo1−x(0<x<1)等)などが挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0039】
また、正極活物質の平均粒径は、特に制限されるものではないが、反応性、サイクル耐久性の観点からは、0.01〜20μmの範囲であるのが望ましい。ただし、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。ここでいう、正極活物質の平均粒径とは、正極活物質材料中に含有されている正極活物質粒子の平均粒径をいう。従って、正極活物質材料中に1次粒子の状態で含まれている正極活物質粒子については、当該1次粒子の粒径とし、1次粒子が複数集まって2次粒子を構成して存在する正極活物質粒子については、当該2次粒子の粒径としてこれらの平均値を算出すればよい。
【0040】
上記2次粒子を構成する1次粒子の平均粒径は、0.01〜5μmの範囲であるのが望ましく、より望ましくは0.05〜2μmの範囲である。上記2次粒子の平均粒径は、0.05〜20μmの範囲であるのが望ましく、より望ましくは0.1〜5μmの範囲である。ただし、本発明では、必ずしも上記範囲に制限されるものではない。
【0041】
かかる正極活物質粒子(1次粒子及び2次粒子を含む)の粒径は、例えば、SEM観察、TEM観察により測定することができる。なお、正極活物質粒子の中には、縦横比が違う1次粒子及び該1次粒子で構成された2次粒子(概ね球状となる)を有するものが含まれている。したがって、上記でいう粒径などは、粒子の形状が一様でないことから、絶対最大長で表すものとし、篩い分けする場合には篩い目(メッシュスルーサイズまたはメッシュパスサイズ)を用いてもよい。この点は、後述する負極活物質粒子の粒径等においても同様である。ここで、絶対最大長とは、図9に示すように、1次粒子ないし2次粒子91の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の長さLをとるものとする。
【0042】
本発明では、正極活物質の2次粒子の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なるが、概ね球状に形成されるものである。但し、この他にも球状に近い不定形状などに形成される場合もあるなど、特に限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できることから、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
【0043】
上記導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボンファイバー(VGCF)等が挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0044】
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、SBR、ポリイミドなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0045】
上記高分子ゲル電解質は、イオン導伝性を有する固体高分子電解質に、従来公知の非水電解質リチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものであるが、さらに、リチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれるものである。
【0046】
ここで、高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質支持塩および可塑剤)としては、特に制限されるべきものではなく、従来既知の各種電解液を適宜使用することができるものである。例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質支持塩)を含み、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の可塑剤(有機溶媒)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0047】
イオン導伝性を有する固体高分子電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のような公知の固体高分子電解質が挙げられる。
【0048】
高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
【0049】
上記イオン伝導性を高めるための電解質支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、Li(CFSON、Li(CSON(LiBETI)等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0050】
高分子ゲル電解質中のホストポリマーと電解液との比率(質量比)は、使用目的などに応じて決定すればよいが、2:98〜90:10の範囲である。
【0051】
当該正極活物質層における、正極活物質、導電助剤、バインダ、高分子電解質(ホストポリマー、電解液など)、電解質支持塩(リチウム塩)の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して適宜決定すべきである。
【0052】
上記した(1)の正極活物質層の膜厚は、特に制限されるべきものではなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。具体的には、上記(1)の一般的な正極活物質層の厚さは、1〜500μmである。この範囲内であれば、本発明のガス吸着剤含有活物質層を併用した場合でも、十分な容量を確保することができる。
【0053】
また上記に定義した関係から、上記(1)の正極活物質層では、上記(2)や(3)のガス吸着剤含有層よりも炭素材料が少なければよく、この関係を満足する範囲内であれば、正極活物質層に含まれる炭素材料の一部として本発明のガス吸着剤を含んでいてもよい。あるいは、本発明のガス吸着剤として用いる炭素材料において、導電助剤としての性能を有するような場合には、当該導電助剤の一部または全部に本発明のガス吸着剤を利用してもよいといえる。こうすることで、容量低下を招くことなく、例えば、集電体との界面にだけガス吸着剤含有活物質層を形成した場合でも、電解質層との界面のガスを当該(1)の活物質層中のガス吸着剤により吸着することができる。また、電池長期使用時に当該(1)の活物質層内で発生したガスを当該(1)の活物質層中のガス吸着剤でも吸着できる。かかるガス吸着剤については、以下の(2)のガス吸着剤含有正極活物質層において説明する。
【0054】
(2)ガス吸着剤を含んでいる正極活物質層(ガス吸着剤含有正極活物質層)
当該ガス吸着剤含有正極活物質層には、正極活物質及びガス吸着剤を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩、バインダ、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。
【0055】
ガス吸着剤以外の各構成成分については、上記(1)の正極活物質層において説明したとおりである。本発明では、上記第1〜3形態で説明したように、ガス吸着剤含有活物質層には電極活物質も含まれることがより効果的であることから、後述する(3)のガス吸着剤単独含有層よりも当該(2)のガス吸着剤含有正極活物質層の方が、高容量化の観点から望ましいといえる。
【0056】
ここで、上記ガス吸着剤としては、特に制限されるものではないが、初回充放電時、電池長期使用時に発生したガスを吸着し電池内部抵抗を低減することに優れていることから、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンシート等の炭素材料を好適に利用することができる。なお、カーボンシートとしては、従来公知のものを用いることができ、活性カーボンシート、例えば、Kyonlの様な活性炭繊維の織布などが利用できる。ガス吸着剤は1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。ただし、本発明のガス吸着剤は、これらに制限されるものではなく、例えば、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、各種粘土、酸化鉄、過塩素酸マグネシウム、イオン交換樹脂、各種金属塩等の従来公知のものが挙げられる。こうした中から、リチウムイオン二次電池の充放電反応に影響したり、電解質層への影響しない材料を適宜選択して用いてもよい。これらのガス吸着剤を初回充放電時、電池長期使用時に発生したガスを吸着し電池内部抵抗を低減させることができる。特に、カーボンナノチューブなどのように、電解質層に刺さりやすい材料は、集電体側に用いるのがよい。一方、電解質膜側には、活性炭やカーボンシートなどの電解質層に影響の少ないものを選択するのが望ましい。ただし、カーボンナノチューブの電解質膜側への使用を制限するものではなく、例えば、カーボンナノチューブの長さなどをコントロールすることで利用可能である。
【0057】
上記ガス吸着剤は、該ガス吸着剤含有正極活物質層の全量に対し7wt%以下の含有量を有するのが望ましい。電池容量、出力特性に優れた電池を構築できるからである。ガス吸着剤の種類にもよるが、該ガス吸着剤含有正極活物質層の全量に対し7wt%を越える場合には当該ガス吸着剤含有正極活物質層内の活物質量が減少し、電池容量及び出力の低下が生じるので、該ガス吸着剤は7wt%以下とするのが良い。また、ガス吸着剤量の量が少ないとガス吸着が十分に行えないのでガス吸着剤の含有量は、該ガス吸着剤を含んでいる活物質層の全量に対し2〜7wt%の範囲がより望ましい。
【0058】
上記ガス吸着剤の大きさは、その形態によっても異なることから一義的に規定するのは困難であり、特に制限されるものではないが、当該(2)のガス吸着剤含有正極活物質層内における充放電反応に影響せずに程度の範囲内であって、以下に示す当該(2)のガス吸着剤含有正極活物質層の厚さの範囲を満足させることができる程度のものを適宜選択して利用するのが望ましい。
【0059】
また、上記ガス吸着剤の形状(形態)としては、特に制限されるものではなく、上記したように、粉末状、顆粒状等の球状;ナノチューブ状、繊維状;シート状(不織布等も含む)等の各種形態が挙げられる。
【0060】
上記した(2)のガス吸着剤含有正極活物質層の膜厚は、特に制限されるべきものではなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。具体的には、上記(2)のガス吸着剤含有正極活物質層の厚さは、1〜15μmの範囲内であれば、電池容量の低下を招くことなく、電池内で除去することのできなかったガスを吸着することができ電池内部抵抗を低減させることができる。
【0061】
(3)正極活物質を含まず、ガス吸着剤を含んでいる層(ガス吸着剤含有正極層)
当該ガス吸着剤含有正極層には、ガス吸着剤を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩、バインダ、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。
【0062】
これらの構成成分については、上記(1)の正極活物質層および(2)のガス吸着剤含有正極活物質層において説明したとおりである。
【0063】
当該ガス吸着剤含有正極層では、正極活物質を含まないことから、高容量化に寄与し得ない。そのため、当該ガス吸着剤含有正極層は、ガス吸着効果を有効に発現でき、電池内部抵抗を低減できる範囲内で薄膜化するのが望ましい。
【0064】
かかる観点から、当該ガス吸着剤含有正極層の膜厚は、1〜15μmである。この範囲内であれば、電池容量の低下を抑えて、電池内で除去することのできなかったガスを吸着することができ電池内部抵抗を低減させることができる。また、ガス吸着剤の含有量は、当該ガス吸着剤含有正極層の全量に対し2〜7wt%範囲とするのが望ましい。電池容量、出力特性に優れた電池を構築できるからである。
【0065】
さらに、上記した(1)〜(3)の各層を適当に組み合わせてなる正極活物質層全体の膜厚は、特に限定するものではなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮して決定すべきである。一般的な正極活物質層全体の厚さは、1〜500μmである。この範囲であれば本発明のガス吸着剤含有活物質層による機能を有効に発現することができる。
【0066】
また、上記(1)の活物質層の膜厚と、(2)ないし(3)のガス吸着剤含有層の膜厚との比率についても、特に限定するものではない。電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮し、電池容量の低下を抑えつつ、ガスを吸着して電池内部抵抗を低減し、より高出力且つ高容量なリチウムイオン二次電池を提供することができるように、これらの比率を決定すべきである。
【0067】
[負極活物質層(負極)]
本発明では、負極活物質層の少なくとも一方の面にガス吸着剤含有活物質層が形成されているものである。ただし、正極活物質層側にガス吸着剤含有活物質層が形成されている場合には、必ずしもガス吸着剤含有層は必要ではない。
【0068】
ここで、ガス吸着剤含有層とは、上記[正極活物質層(正極)]の項で定義したとおりである。
【0069】
したがって、以下では、(1)ガス吸着剤含有層でない負極活物質層(単に負極活物質層ともいう)、ガス吸着剤含有層の1形態である(2)ガス吸着剤を含んでいる負極活物質層(単にガス吸着剤含有負極活物質層ともいう)、ガス吸着剤含有層の他の1形態である(3)負極活物質を含まず、ガス吸着剤を含んでいる層(単にガス吸着剤含有負極層ともいう)の順に説明する。
【0070】
(1)ガス吸着剤含有層でない負極活物質層(通常の一般的な負正極活物質層)
当該(1)のガス吸着剤含有層でない負極活物質層とは、上記定義による場合には、ガス吸着剤含有層よりも炭素材料が少ない層をいう。また上記定義によらない場合には、ガス吸着剤となり得る活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンシート等の炭素材料および/または炭素材料以外のガス吸着剤を含んでいない層をいう。
【0071】
当該(1)のガス吸着剤含有層でない負極活物質層には、負極活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、バインダ、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。負極活物質の種類以外は、基本的に本発明の[正極活物質層(正極)]の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0072】
上記負極活物質としては、特に制限されるものではなく、従来公知の溶液系のリチウムイオン電池でも使用される負極活物質を用いることができる。なかでも炭素材料もしくは遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属酸化物)を用いることが好ましい。容量、出力特性に優れた電池を構成できるからである。こうした負極活物質として好適な炭素材料としては、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、アモルファスカーボン、コークスおよびメソフェーズピッチ系炭素繊維、グラファイト、非晶質炭素であるハードカーボンなどの炭素材料から選ばれてなる少なくとも1種を主材料とする負極活物質を用いることが望ましい。ただし、これらに限られるわけではない。また、リチウム−遷移金属酸化物としては、具体的にはチタンとリチウムとの複合酸化物(リチウム−チタン複合酸化物)などが挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0073】
また、負極活物質の平均粒径は、特に制限されるものではないが、反応性、サイクル耐久性の観点からは、0.01〜20μmの範囲であるのが望ましい。かかる負極活物質粒子(1次粒子及び2次粒子を含む)の粒径は、例えば、SEM観察、TEM観察により測定することができる。
【0074】
上記正極活物質粒子の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なるが、概ね球状に形成されるものである。但し、この他にも球状に近い不定形状などに形成される場合もあるなど、特に限定されるものではなく、いずれの形状であれ問題なく使用できることから、充放電特性などの電池特性を向上し得る最適の形状を適宜選択するのが望ましい。
【0075】
(2)ガス吸着剤を含んでいる負極活物質層(ガス吸着剤含有負極活物質層)
当該ガス吸着剤含有負極活物質層には、負極活物質及びガス吸着剤を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩、バインダ、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。
【0076】
当該ガス吸着剤含有負極活物質層についても、基本的に本発明の[正極活物質層(正極)]の項の「(2)ガス吸着剤含有正極活物質層」で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0077】
(3)負極活物質を含まず、ガス吸着剤を含んでいる層(ガス吸着剤含有負極層)
当該ガス吸着剤含有負極層には、ガス吸着剤を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電助剤、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩、バインダ、高分子ゲルないし固体電解質(ホストポリマー、電解液など)などが含まれ得る。
【0078】
当該ガス吸着剤含有負極層についても、基本的に本発明の[正極活物質層(正極)]の項の「(3)ガス吸着剤含有正極層」で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0079】
さらに、上記した(1)〜(3)の各層を適当に組み合わせてなる負極活物質層全体の膜厚についても、本発明の[正極活物質層(正極)]の項で記載した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0080】
[電解質層]
本発明では、その使用目的に応じて、(a)電解液(溶液電解質)を含むセパレータからなる電解質層、(b)高分子ゲル電解質を用いた電解質層、(c)高分子固体電解質を用いた電解質層のいずれにも適用し得るものである。好ましくは、上記(b)高分子ゲル電解質を用いた電解質層および/または(c)高分子固体電解質を用いた電解質層を用いるのが更に良い。これは、従来の手法では、電解質層にポリマー電解質又はゲル電解質を用いたバイポーラ(双極)型のリチウムイオン二次電池では発生したガスは移動しにくく電極活物質層/電解質層、電極活物質層/集電体界面でトラップされてしまっていた。本発明のガス吸着剤を含んでいる層を配置することで、こうした初回充電時、長期使用時に発生したガスを、ガス吸着剤を含んでいる層内のガス吸着剤が、効果的に吸着することができるからである。即ち、ポリマー電解質、ゲル電解質では初充放電時に発生したガス、あるいは電池長期使用中に発生したガスが電極活物質層/電解質界面、電極活物質層/集電箔界面でトラップされ従来の電池密封工程では完全に除去できないので本発明はポリマー電解質、ゲル電解質を用いたリチウムイオン二次電池に対し効果がある。その結果、電池内で除去することのできなかったガスを吸着することができ電池内部抵抗を低減させることができる。
【0081】
(a)電解液(溶液電解質)を含むセパレータからなる電解質層
セパレータに含ませることのできる電解液としては、既に説明した[正極活物質層(正極)]の項の高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質塩および可塑剤)と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略するが、電解液の好適な1例を示せば、電解質として、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBOB、LiCFSOおよびLi(CFSOの少なくとも1種類を用い、溶媒(可塑剤)として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランおよびγ−ブチルラクトンよりなるエーテル類から少なくとも1種類を用い、前記電解質を前記溶媒に溶解させることにより、電解質の濃度が0.5〜2モル/リットルに調整されているものであるが、本発明はこれらに何ら制限されるべきものではない。
【0082】
上記セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができるものである。例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーからなる多孔質セパレータ(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)、不織布セパレータなどを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
【0083】
上記多孔質セパレータの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
【0084】
上記不織布セパレータの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができ、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。
【0085】
また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布のかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
【0086】
上記セパレータ(不織布セパレータを含む)の厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできないが、ハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池自動車などのモータ駆動用電源等の用途においては、5〜200μmであることが望ましい。セパレータの厚さが、かかる範囲にあることで、保持性、抵抗が増大するのを抑制することができる。また、セパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
【0087】
上記多孔質セパレータの微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。該セパレータの微細孔の平均径が上記範囲にあることで、異常発熱時などセパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起き、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
【0088】
上記多孔質セパレータの空孔率は20〜50%であることが望ましい。セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここでセパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値である。
【0089】
また、上記不織布セパレータの空孔率は、50〜90%であることが好ましい。空孔率が50%未満では、電解質の保持性が悪化し、90%超では強度が不足する。
【0090】
上記セパレータへの電解液の含浸量は、セパレータの保液能力範囲まで含浸させればよいが、当該保液能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質シール部に樹脂を注入して電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保液できる範囲であれば含浸可能である。該電解液は、真空注液法などにより注液した後、完全にシールすることができるなど、従来公知の方法でセパレータに電解液を含浸させることができる。該電解液は、積層電池本体を電池外装材に収納し、該電池外装材の外周囲を一部を除いて溶融シールした後、真空注液法などにより注液し、その後、電池外装材を完全にシールするなど、従来公知の方法でセパレータに電解液を含浸させることができる。
【0091】
(b)高分子ゲル電解質ないし(c)高分子固体電解質を用いた電解質層
まず、(b)高分子ゲル電解質を用いた電解質層には、高分子ゲル電解質だけで構成される電解質層のほか、高分子ゲル電解質を含むセパレータからなる電解質層が含まれる。同様に、(c)高分子固体電解質を用いた電解質層には、高分子固体電解質だけで構成される電解質層のほか、高分子固体電解質を含むセパレータからなる電解質層が含まれる。
【0092】
高分子ゲル電解質および高分子固体電解質としては、既に説明した[正極活物質層(正極)]の項の高分子ゲル電解質および高分子固体電解質と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。また、セパレータとしては、既に説明した[電解質層]の項の「(a)電解液(溶液電解質)を含むセパレータ」で説明したセパレータと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0093】
また、セパレータへの高分子ゲル電解質ないし高分子固体電解質の含有量は、セパレータ中へのゲルまたは固体高分子の保持能力の範囲まで含有させればよいが、当該保持能力範囲を超えて含有させてもよい。これは、電極間の短絡(液絡)が問題となるバイポーラ型電極を用いるリチウムイオン二次電池(バイポーラ電池)であっても、以下に示す絶縁シール層を形成することで、当該電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保持(保液)できる範囲であれば含有(含浸)可能である。該高分子ゲル電解質ないし高分子固体電解質は、これら電解質を含む前駆体溶液をセパレータに塗布含浸させた後、熱ないし紫外線などにより架橋重合させるなど、従来公知の方法でセパレータに高分子ゲル電解質ないし高分子固体電解質を含有保持させることができる(後述する実施例の手順2の「ゲル電解質層の形成」参照のこと。)。
【0094】
なお、上記(a)〜(c)の電解質層は、1つの電池の中で併用してもよい。
【0095】
また、高分子電解質(高分子ゲル電解質ないし高分子固体電解質)は、電解質層、正極活物質層、負極活物質層に含まれ得るが、同一の高分子電解質を使用してもよく、層によって異なる高分子電解質を用いてもよい。
【0096】
ところで、現在好ましく使用される高分子ゲル電解質用のホストポリマーは、PEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、酸化還元電位の高い正極活物質を使用する場合には、負極活物質層の容量が、高分子ゲル電解質層を介して対向する正極活物質層の容量より少ないことが好ましい。負極活物質層の容量が対向する正極活物質層の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極活物質層および負極活物質層の容量は、正極活物質層および負極活物質層を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。ただし、負極活物質層の容量を対向する正極活物質層の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
【0097】
電池を構成する電解質層の厚さは、特に限定するものではない。しかしながら、コンパクトな電池を得るためには、電解質としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好まく、電解質層の厚さは5〜200μmの範囲であることが望ましい。
【0098】
[絶縁シール層]
絶縁シール層は、主にバイポーラ型電極を用いるリチウムイオン二次電池の場合に用いられる。この絶縁シール層は、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものである。本発明では、必要に応じて、電極の周囲に絶縁シール層を設けてもよい(後述する実施例の手順3参照)。これは、車両駆動用ないし補助用電源として利用するような場合には、電解液(高分子ゲル電解質中の電解液成分を含む)による短絡(液絡)を完全に防止する必要がある。さらに、電池への振動や衝撃が長期にわたり負荷される。そのため、電池寿命の長期化の観点からは、絶縁シール層を設置することがより長期間の信頼性、安全性を確保する上で望ましく、高品質の大容量電源を提供できる点で望ましいためである。
【0099】
該絶縁シール層としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0100】
[正極および負極端子板]
正極および負極端子板は、必要に応じて使用すればよい。例えば、バイポーラ型リチウムイオン二次電池の場合では、積層(ないし巻回)構造によっては、最外部の集電体から電極端子を直接取り出しても良く、この場合には正極および負極端子板は用いなくとも良い(図4参照のこと)。
【0101】
正極および負極端子板を用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよいが、積層されてなる電極、電解質および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持するだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、端子部での内部抵抗を抑える観点から、正極および負極端子板の厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
【0102】
正極および負極端子板の材質は、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0103】
正極端子板と負極端子板との材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極および負極端子板は、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
【0104】
[正極および負極リード]
正極および負極リードに関しては、バイポーラ型に限らず、バイポーラ型ではない従来公知のリチウムイオン二次電池で用いられるリードと同様のものを用いることができる。なお、電池外装材(電池ケース)から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆しておくのが好ましい。
【0105】
[電池外装材(電池ケース)]
バイポーラ型に限らず、リチウムイオン二次電池では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池本体である電池積層体ないし電池巻回体全体を電池外装材ないし電池ケースに収容するのが望ましい。軽量化の観点からは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)の両面をポリプロピレンフィルム等の絶縁体(好ましくは、耐熱性の絶縁体)で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムなど、従来公知の電池外装材を用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池積層体を収納し密封した構成とするのが好ましい。この場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて上記電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムなどを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。こうしたラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
【0106】
次に、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法につき説明する。具体的には、まず、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の好適な態様の1つである、電解質層に高分子ゲル電解質を含むセパレータを用いてなるバイポーラ型リチウムイオン二次電池の製造方法を例にとり説明する。さらに、該バイポーラ(双極)型電極として、図1(C)で説明したように、正極活物質層及び負極活物質層共に、活物質層/電解質界面と活物質/集電体界面にガス吸着剤を含んでいる活物質層を設けた構造の電極を用いた例にとり説明するが、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法が下記方法に何ら制限されるべきものでない。
【0107】
[当該製造方法の概要]
まず、集電体の片面にガス吸着剤含有正極活物質層を設けた正極活物質層を作製し、集電体の正極活物質層が作製された面と他方の面にガス吸着剤含有負極活物質層を設けた負極活物質層を作製することにより、単電池(セル)とする。次に、作製した単電池(セル)を高分子ゲル電解質を含むセパレータからなる電解質層を介して複数積層して電極積層体とする。このとき、正極側の最外層には最外層集電体にガス吸着剤含有正極活物質層を設けた正極活物質層のみが形成された電極が配置され、負極側の最外層には最外層集電体にガス吸着剤含有負極活物質層を設けた負極活物質層のみが形成された電極を配置する。その後、各最外層集電体からタブを取り出し、電池ケースなどに収容することによりバイポーラ電池を作製する。以下、各工程ごとに説明する。
【0108】
[バイポーラ型電極の作製の概要]
集電体の片面に正極活物質層を作製する段階では、ガス吸着剤含有層でない正極活物質層、ガス吸着剤含有正極活物質層に適した各種の正極用組成物を調製する。次に集電体の片面上に、調製した各種の正極用組成物を適正な順序で塗布し、乾燥および重合することにより正極活物質層を作製する。続いて、集電体のもう一方の面に負極活物質層を作製する段階では、ガス吸着剤含有層でない負極活物質層、ガス吸着剤含有負極活物質層に適した各種の負極用組成物を調製する。次に、集電体の他の片面上に、調製した各種の負極用組成物を適正な順序で塗布し、乾燥および重合することにより負極活物質層を作製し、バイポーラ型電極を作製する。
【0109】
(1)正極用組成物の調製
正極用組成物は、通常、スラリー(正極用スラリー)として得られ、集電体の一方の面に順に塗布される。
【0110】
正極用スラリーのうち正極活物質層用組成物(正極活物質層用スラリー)は、正極活物質を含む溶液である。他成分として、導電助剤、バインダ、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料であるホストポリマーおよびリチウム塩などが任意で含まれる。例えば、正極活物質層用スラリーは、正極活物質を含む溶媒中に、バインダ、導電助剤、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料であるホストポリマーおよびリチウム塩等を添加し、ホモミキサー等で攪拌することで得られる。
【0111】
同様に、ガス吸着剤含有層用組成物(ガス吸着剤含有層用スラリー)は、ガス吸着剤を含む溶液である。他成分として、正極活物質、導電助剤、バインダ、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料であるホストポリマーおよびリチウム塩などが任意で含まれる。例えば、ガス吸着剤含有正極活物質層用スラリーでは、正極活物質を含む溶媒中に、ガス吸着剤、バインダ、導電助剤、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料であるホストポリマーおよびリチウム塩等を添加し、ホモミキサー等で攪拌することで得られる。また、ガス吸着剤含有正極層用スラリーでは、溶媒(分散媒)中に、ガス吸着剤、バインダ、導電助剤、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料であるホストポリマーおよびリチウム塩等を添加し、ホモミキサー等で攪拌することで得られる。
【0112】
あるいは、後述する実施例のように、正極活物質層用スラリーを2つに分けてもよい。例えば、正極活物質、導電助剤、バインダ等を含む正極活物質層用スラリーと、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料であるホストポリマーやリチウム塩等を含む高分子電解質用スラリー(高分子電解質の前駆体溶液ないしプレゲル溶液等)とに分けてもよい。
【0113】
同様に、ガス吸着剤含有層用スラリーも2つに分けてもよい。例えば、ガス吸着剤、導電助剤、バインダ、(ガス吸着剤含有正極活物質層スラリーは、更に正極活物質)等を含むガス吸着剤含有層用スラリーと、重合開始剤、高分子ゲル電解質の原料であるホストポリマーやリチウム塩等を含む高分子電解質用スラリーとに分けてもよい。
【0114】
こうした高分子電解質用スラリーは、他の成分からなる正極活物質層用スラリー及び負極活物質層用スラリーを用いて電極活物質層を形成後に、電極活物質層上に塗布、含浸し、熱や紫外線照射等により架橋重合させるなどして当該活物質層内に保持させてもよい。こうすることで、電極活物質層を構成する各層内に高分子電解質を一度にまとめて保持(担持)させることができる点で優れている。即ち、高分子電解質用スラリーでは、熱または紫外線照射などにより架橋重合を行う必要があり、こうした架橋重合工程を電極活物質層を構成する3層を形成する際に個別に行うよりも工数を大幅に低減することができる。したがって、以下には、正極活物質層用スラリー及びガス吸着剤含有層用スラリーと、高分子電解質用スラリーとを分けて製造する例を示すが、本発明がこれらに何ら制限されるものではない。
【0115】
上記正極活物質、ガス吸着剤、導電助剤、バインダ、リチウム塩、高分子ゲル電解質の高分子原料(ホストポリマー)等に関しては、基本的に本発明のリチウムイオン二次電池の構成要件である正極活物質層の項で記載した内容と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0116】
上記正極用スラリーを調製する際に必要に応じて用いられる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、n−ピロリドンなどのスラリー粘度調製用溶媒が挙げられ、上記正極用スラリーの種類に応じて適宜選択して用いる。
【0117】
正極活物質、リチウム塩、導電助剤の添加量は、得られるリチウムイオン二次電池が所定の関係を満たすように適宜決定すればよい。
【0118】
上記重合開始剤は、重合方法(熱重合法、紫外線重合法、放射線重合法、電子線重合法など)や重合させる化合物に応じて適宜選択する必要がある。例えば、紫外線重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BDK)、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(ABIN)などが挙げられるが、これらに制限されるべきものではない。重合開始剤の添加量は、ホストポリマーに含まれる架橋性官能基の数に応じて決定される。通常は上記ホストポリマー(高分子ゲル電解質の高分子原料)に対して0.01〜1質量%程度である。
【0119】
(2)正極活物質層の作製
調製した各種の正極用スラリーを集電体上に塗布した後、乾燥して含まれる溶媒を除去する。
【0120】
具体的には、図1(C)に示す第3形態の正極活物質層13を形成する場合を例にとれば、まず、ガス吸着剤含有層用スラリーを自走型ダイコータ等で集電体12の片面に塗布した後、乾燥して含まれる溶媒を除去する。更に必要に応じて、所望の膜厚になるようにプレスを行ってもよい。
【0121】
次に、活物質層13bの上から、正極活物質層用スラリーを自走型ダイコータ等で塗布した後、乾燥して含まれる溶媒を除去する。更に必要に応じて、所望の膜厚になるようにプレスを行ってもよい。
【0122】
更に活物質層13aの上から再度ガス吸着剤含有層用スラリーを自走型ダイコータ等で塗布した後、乾燥して含まれる溶媒を除去する。更に必要に応じて、所望の膜厚になるようにプレスを行ってもよい。
【0123】
こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)12は、集電体12上に、ガス吸着剤を含んでいる活物質層13bと、その上にガス吸着剤を含まない活物質層13aと、更にその上にガス吸着剤を含んでいる活物質層13bとが順に積層されてなる3層構造を有するものである。
【0124】
上記した各種の正極用スラリーを集電体上ないし活物質層上に塗布する手法は、コーター、スクリーン印刷法など公知の方法により行えばよいが、好ましくは自走式ダイコータによる塗布または、インクジェット式等による塗布である。
【0125】
塗布した各種の正極用スラリーを乾燥するには、真空乾燥機など従来公知の装置を用いることができる。乾燥条件は塗布した正極用スラリーに応じて決定すればよい。
【0126】
作製した各層は、表面の平滑性および厚さの均一性を向上させるためにプレス操作を行うのがよい。プレス操作は冷間でプレスロールする方法または熱間でプレスロールする方法のいずれの方法でも良い。熱間でプレスロールする方法の場合は、電解質支持塩や重合性ポリマーが分解する温度以下で行うのが望ましい。プレス圧力は線圧で200〜1000kg/cmで行うことが望ましい。
【0127】
次に、集電体の正極活物質層が作製された面とは反対側の面に負極活物質層を作製するには、正極活物質層と同様にして、各種の負極用組成物を調製した後、集電体上に塗布して乾燥することにより負極活物質層を作製する。
【0128】
(3)負極用組成物の調製
負極用組成物は、通常、スラリー(負極用スラリー)として得られ、集電体(負極集電体を含む)の上に塗布される。
【0129】
各種の負極用スラリーに関しては、各種の正極用スラリーにおいて正極を負極としたことを除けば、使用される原料や添加量のほか、各種スラリーの調製方法や高分子電解質用スラリーを他の成分と分ける手法等の説明についても、「(1)正極用組成物の調製」における説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0130】
(4)負極活物質層の作製
調製した各種の負極用スラリーを集電体に塗布した後、乾燥して含まれる溶媒を除去する。
【0131】
図1(C)に示す第3形態の例にした具体的な塗布方法、乾燥条件などに関しても、正極を負極としたことを除けば、「(2)正極活物質層の作製」における説明と、基本的に同様であるためここでの説明は省略する。
【0132】
また、上記「(2)正極活物質層の作製」の項で説明したプレス操作は、例えば、集電体の片面に正極活物質層を形成した後に、正極活物質層全体をまとめて行っても良い。負極活物質についても同様である。更には集電体の片面に正極活物質層を形成し、他面に負極活物質層を形成した後に、正極活物質層および負極活物質層をまとめてプレス操作を行っても良い。プレス操作に要する工数を大幅に低減することができるためである。一方、正極活物質層および負極活物質層を構成する各層ごとに所定の膜厚を確保する観点からは、正極活物質層および負極活物質層を構成する各層ごとに行うのが望ましい。このようにプレス操作の対象や時期については、必要に応じて適宜選択すればよい。また、プレス条件については、正極活物質層または負極活物質層の各層ごとの場合でも、正極活物質層および/または負極活物質層全体をまとめて行う場合であっても、上記「(2)正極活物質層の作製」の項で説明した範囲内において調製することができる。
【0133】
(5)電極積層体(バイポーラ電池本体)の作製
上述の通りに作製した単電池(セル)を所望のサイズに切り出し、セパレータを介して複数積層して積層体を作製した後、これにゲル原料溶液(プレゲル溶液)を含浸させ、重合させ、バイポーラ電池の作製を行う。
【0134】
セパレータとしては、上述したような微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレン−コポリマーフィルム、不織布セパレータなど一般的に用いられているものが挙げられる。単電池(セル)の積層数は、バイポーラ電池に求める電池特性を考慮して決定される。
【0135】
また、電極積層体において、正極側の最外層には、最外層集電体上に正極層のみを形成した電極を配置する。負極側の最外層には、最外層集電体上に負極層のみを形成した電極を配置する。また、正極側および負極側に用いられる両最外層集電体は、中間層の集電体よりも厚いものを用いてもよい。
【0136】
電極積層体に含浸させるゲル原料溶液とは、高分子ゲル電解質の原料高分子(ホストポリマー)、リチウム塩、重合開始剤等を溶媒に溶解させて調製した溶液を意味する。ホストポリマー、リチウム塩などは、バイポーラ電池の正極活物質層において記載した説明を同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0137】
重合開始剤は、重合方法(熱重合法、紫外線重合法、放射線重合法、電子線重合法など)や重合させる化合物に応じて適宜選択する必要がある。例えば、紫外線重合開始剤としてベンジルジメチルケタール、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられるが、これらに制限されるべきものではない。また、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、n−ピロリドンなどのスラリー粘度調整用溶媒などが挙げられる。重合開始剤の添加量は、ホストポリマーに含まれる架橋性官能基の数に応じて決定される。通常は上記ホストポリマーに対して0.01〜1質量%程度である。
【0138】
ゲル原料溶液の含浸は、単電池(セル)をセパレータを介して複数積層した後、作製した電極積層体をゲル溶液に浸漬またはゲル原料溶液を注入することにより行う。ゲル原料溶液は、まだゲル状になっていないため、電極およびセパレータに浸透していく。また、前記含浸には、アプリケーターやコーターなどを用いれば微量の供給も可能である。
【0139】
その後、ゲル原料溶液を含浸させた積層体に含まれるホストポリマーを、熱、紫外線、放射線、電子線等により重合(架橋)する。重合には、簡便かつ確実に重合を行うことができることから、熱重合を行うことが正しい。乾燥ないし熱重合は、真空乾燥機など従来公知の装置を用いることができる。乾燥ないし熱重合の条件はゲル原料溶液などに応じて適宜決定すればよい。得られる電解質層の幅は、単電池(セル)の集電体の電極形成部サイズよりも若干小さくすることが多いが、特に制限されるものではない。
【0140】
なお、電極積層体を作製する際には、電池内部に水分等が混入するのを防止する観点から、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0141】
本発明において、電解質層は、好ましくはゲル原料溶液やポリマー電解質原料溶液をセパレータに含浸させて重合(架橋)されてなる。セパレータを用いることにより、電解液の充填量を高めることができるとともに、熱伝導性を確保することができるため、好適に用いられる。しかし、本発明の電解質層は、かような構成に限定されず、セパレータを含まない従来公知の電解質層を用いてもよい。
【0142】
(6)絶縁シール層の形成
絶縁シール層は、例えば、まず、電極積層体の単電池(セル)の周囲を、所定の幅でエポキシ樹脂などに浸漬またはエポキシ樹脂を注入ないし含浸し、その後、エポキシ樹脂を硬化させることにより形成する。事前に、集電体は離型性マスキング材等を用いてマスキング処理しておくのが好ましく、エポキシ樹脂を硬化させた後、マスキング材を剥がせばよい。
【0143】
あるいは、後述する実施例のように、バイポーラ型電極の少なくとも一方の電極活物質層の周辺部にシール材(絶縁シール層)として、上記エポキシ樹脂等を配置し熱と圧力をかけ集電体と該シール材を融着させてもよい。この場合には、更に電極活物質層中にゲル電解質を含浸保持させた後に、ゲル電解質を含浸保持したバイポーラ型電極とゲルポリマー電解質層とを交互に複数枚積層させ、熱と圧力をかけ、対向する集電体のもう一方の電極活物質層の周辺部と該シール材を融着させて電極積層体(バイポーラ電池本体)を形成してもよい。このように、当該絶縁シール層の形成は、必ずしも電極積層体(バイポーラ電池本体)の作製後である必要はなく、所望の絶縁シール効果を発現させることができるものであれば、最も作業効率のよいときに当該絶縁シール層を形成すればよい。
【0144】
(7)タブの接続
電極積層体の両最外層上にそれぞれ、正極用タブ、負極用タブを接合接続する。正極用タブおよび負極用タブの接合方法としては、接合温度の低い超音波溶接等が好適に利用し得るものであるが、これに限定されるべきものではなく、従来公知の方法を適宜利用することができる。
【0145】
(8)パッキング(電池の完成)
最後に、電極積層体全体を、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池外装材ないし電池ケースで封止し、バイポーラ電池を完成させる。封止の際には、正極用タブ、負極用タブの一部を電池外部に取り出す。電池外装材(電池ケース)の材質は、内面がポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆された金属(アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅など)が好適である。
【0146】
次に、本発明のリチウムイオン二次電池の用途としては、高エネルギー密度、高出力密度が求められる大容量電源に好適に利用することができる。例えば、ガソリンエンジンやディゼルエンジンと本発明の二次電池とのハイブリッド自動車、電気自動車やハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。この場合には、本発明のリチウムイオン二次電池を複数個接続して構成した組電池とすることが望ましい。
【0147】
すなわち、本発明では、上記リチウムイオン二次電池を複数個、並列接続または直列接続または並列−直列接続または直列−並列接続の少なくとも一つを用いて組電池(車両用サブモジュール)とすることができる。これにより、種々の車両用ごとの容量・電圧の要望を基本の電池の組み合わせで対応が可能になる。その結果、必要エネルギー、出力の設計選択性を容易にすることが可能になる。そのため種々の車両用ごとに異なる電池を設計、生産する必要がなく、基本となる電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。以下に、当該組電池(車両用サブモジュール)の代表的な実施形態につき、図面を用いて簡単に説明する。
【0148】
図5に本発明のバイポーラ電池(24V、50mAh)を2直20並に接続した組電池(42V1Ah)の模式図を示す。並列部分のタブは銅のバスバー56、58で接続し、直列部分はタブ48、49同士を振動溶着して接続した。直列部分の端部を端子62、64に接続して、正負の端子を構成している。電池の両側には、バイポーラ電池41の各層の電圧を検知する検知タブ60を取り出し、それらの検知線53を組電池51の前部に取り出している。詳しくは、図5に示す組電池51を形成するには、バイポーラ電池41を5枚並列にバスバー56で接続し、5枚並列にしたバイポーラ電池41をさらに電極タブ同士を接続して2枚直列にし、これらを4層積層して並列にバスバー58で接続して金属製の組電池ケース55に収納する。このように、バイポーラ電池41を任意の個数直並列に接続することによって、所望の電流、電圧、容量に対応できる組電池51を提供することができる。該組電池51には、正極端子62、負極端子64が金属製の組電池ケース55の側面前部に形成されており、電池を直並列に接続後、例えば、各バスバー56と各正極端子62、負極端子64とが端子リード59で接続されている。また、該組電池51には、電池電圧(各単電池層、更にはバイポーラ電池の端子間電圧)を監視するために検知タブ端子54が金属製の組電池ケース55の正極端子62及び負極端子64が設けられている側面前部に設置されている。そして、各バイポーラ電池41の電圧検知タブ60が全て検知線53を介して検知タブ端子54に接続されている。また、組電池ケース55の底部には、外部弾性体52が取り付けられており、組電池51を複数積層して複合組電池を形成するような場合に、組電池51間距離を保ち、防振性、耐衝撃性、絶縁性、放熱性などを向上することができる。
【0149】
また、この組電池51には、使用用途に応じて、上記検知タブ端子54以外にも各種計測機器や制御機器類を設けてもよい。さらにバイポーラ電池1の電極タブ(48、49)同士や検知タブ60と検知線53とを連結するためには、超音波溶接、熱溶接、レーザ溶接または電子ビーム溶接により、または、リベットのようなバスバー56、58を用いて、またはカシメの手法を用いて、連結するようにしてもよい。さらにバスバー56、58と端子リード59等とを連結するためにも、超音波溶接、熱溶接、レーザ溶接または電子ビーム溶接を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0150】
上記外部弾性体52にも、本発明の電池で用いた樹脂群と同様の材料を用いることができるが、これらに制限されるものではない。
【0151】
また、本発明の組電池では、本発明のバイポーラ型のリチウムイオン電池(単に、バイポーラ電池ともいう)と、該バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした本発明のリチウムイオン二次電池(こうした既存のバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池を、単に一般電池ともいう)と、を並列に接続したものであってもよい。すなわち、組電池を形成する電池は、本発明のバイポーラ電池と一般電池(但し、全ての電池が必ずしも本発明の電池でなくともよい)とを混在させても良い。これにより、出力重視のバイポーラ電池と、エネルギー重視の一般電池の組み合わせでお互いの弱点を補う組電池ができ、組電池の重量・サイズを小さくすることができる。それぞれのバイポーラ電池と一般電池をどの程度の割合で混在させるかは、組電池として要求される安全性能、出力性能に応じて決める。
【0152】
また、図6にバイポーラ電池A(42V、50mAh)と一般電池B(4.2V、1Ah)10直(42V)を並列に連結した組電池を示す。一般電池Bとバイポーラ電池Aは電圧が等しくなり、その部分で並列接続を形成している。この組電池51’は、出力の分担をバイポーラ電池Aが有し、エネルギーの分担を一般電池Bが有する構造である。これは、出力とエネルギーを両立することが困難な組電池において、非常に有効な手段である。この組電池51’でも、並列部分及び図の横方向に隣り合う一般電池B間を直列接続する部分のタブは銅のバスバー56で接続し、図の縦方向に隣り合う一般電池B間を直列接続する部分はタブ39、40同士を振動溶着して接続した。一般電池Bとバイポーラ電池Aを並列接続している部分の端部を端子62、64に接続して、正負の端子を構成している。バイポーラ電池Aの両側には、バイポーラ電池Aの各層の電圧を検知する検知タブ60を取り出し、それらの検知線(図示せず)を組電池51’の前部に取り出している以外は、図5の組電池51と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付した。詳しくは、図6に示す組電池51’を形成するには、一般電池B10枚を端から順番にバスバー56および振動溶着して直列に接続した。さらに、バイポーラ電池Aと直列接続された両端の一般電池Bとをそれぞれバスバー56で並列に接続して金属製の組電池ケース55に収納する。このように、バイポーラ電池Aを任意の個数直並列に接続することによって、所望の電流、電圧、容量に対応できる組電池51’を提供することができる。該組電池50’にも、正極端子62、負極端子64が金属製の組電池ケース55の側面前部に形成されており、電池A、Bを直並列に接続後、例えば、各バスバー56と各正極端子62、負極端子64とが端子リード59で接続されている。また、該組電池51’には、電池電圧(バイポーラ電池Aの各単電池層、更にはバイポーラ電池A及び一般電池Bの端子間電圧)を監視するために検知タブ端子54が金属製の組電池ケース55の正極端子62及び負極端子64が設けられている側面前部に設置されている。そして、各バイポーラ電池A(更には一般電池B)の検知タブ60が全て検知線(図示せず)を介して検知タブ端子54に接続されている。また、組電池ケース55の低部には、外部弾性体52が取り付けられており、組電池51’を複数積層して複合組電池を形成するような場合に、組電池51’間距離を保ち、防振性、耐衝撃性、絶縁性、放熱性などを向上することができる。
【0153】
また本発明の組電池では、更に上記のバイポーラ電池を直並列接続して第1組電池ユニットを形成するとともに、この第1組電池ユニットの端子間電圧と電圧を同一にするバイポーラ電池以外の二次電池が直並列接続されてなる第2組電池ユニットを形成し、この第1組電池ユニットと第2組電池ユニットを並列接続することによって組電池としても良いなど、特に制限されるものではない。
【0154】
なお、組電池の他の構成要件に関しては、何ら制限されるべきものではなく、既存のバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池を用いた組電池の構成要件と同様のものが適宜適用することができるものであり、従来公知の組電池用の構成部材および製造技術が利用できるため、ここでの説明は省略する。
【0155】
次に、上記の組電池(車両用サブモジュール)を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続した複合組電池(車両用組電池)とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、新たに組電池を作製することなく、比較的安価に対応することが可能になる。すなわち、本発明の複合組電池は、組電池(本発明のバイポーラ電池ないしバイポーラ型でない電池だけで構成したもの、本発明のバイポーラ電池とバイポーラ型でない電池とで構成したものなど)を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続したことを特徴とするものであり、基準の組電池を製造し、それを組み合わせて複合組電池とすることで、組電池の仕様をチューニングできる。これにより、仕様の異なる沢山の組電池種を製造しなくてよいため、複合組電池コストを減少することができる。
【0156】
複合組電池としては、例えば、図5に記載のバイポーラ電池を用いた組電池(42V、1Ah)6並に接続した複合組電池(42V、6Ah)の模式図が図7である。複合組電池を構成する各組電池は連結版と固定ねじにより一体化し、組電池の間に弾性体を設置して防振構造を形成している。また、組電池のタブは板状のバスバーで連結している。すなわち、図7に示したように、上記の組電池51を6組並列に接続して複合組電池70とするには、各組電池ケース55の蓋体に設けられた組電池51のタブ(正極端子62および負極端子64)を、板状のバスバーである外部正極端子部、外部負極端子部を有する組電池正極端子連結板72、組電池負極端子連結板74を用いてそれぞれ電気的に接続する。また、各組電池ケース55の両側面に設けられた各ネジ孔部(図示せず)に、該固定ネジ孔部に対応する開口部を有する連結板76を固定ネジ77で固定し、各組電池51同士を連結する。また、各組電池51の正極端子62および負極端子64は、それぞれ正極および負極絶縁カバーにより保護され、適当な色、例えば、赤色と青色に色分けすることで識別されている。また、組電池51の間、詳しくは組電池ケース55の底部に外部弾性体52を設置して防振構造を形成している。
【0157】
また、上記複合組電池では、これを構成する複数の組電池をそれぞれ脱着可能に接続しておくのが望ましい。このように、組電池を複数直並列接続されてなる複合組電池では、一部の電池、組電池が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能となるためである。
【0158】
また、本発明の車両は、上記組電池および/または上記複合組電池を搭載することを特徴とするものである。これにより、軽く小さい電池にすることでスペース要望の大きな車両要望に合致できる。電池のスペースを小さくすることで、車両の軽量化も達成できる。
【0159】
図8に示したように、複合組電池70を、車両(例えば、電気自動車等)に搭載するには、電気自動車80の車体中央部の座席(シート)下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、電池を搭載する場所は、座席下に限らず、車両の床下、シートバック裏、後部トランクルームの下部でも良いし、車両前方のエンジンルームでも良い。
【0160】
なお、本発明では、複合組電池だけではなく、使用用途によっては、組電池を車両に搭載するようにしてもよいし、これら複合組電池と組電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明の複合組電池または組電池を駆動用電源や補助電源として搭載することのできる車両としては、上記のハイブリッドカー、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車等が好ましいが、これらに制限されるものではない。また、本発明の組電池および/または複合組電池を、例えば、駆動用電源や補助電源等として搭載することのできる車両としては、ハイブリッドカー、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車等が好ましいが、これらに制限されるものではない。
【実施例】
【0161】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の内容を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例では、特に断らない限りは、下記手順1〜3で作製(形成)したバイポーラ型電極、セパレータを有するゲル電解質層および積層電池を用いるものとし、下記手順1〜3と同様の説明は省略するものとする。
【0162】
手順1. バイポーラ(双極)型電極の作製
集電体であるSUS箔(厚さ10μm)の片面に正極スラリーを塗布させ、反対面に負極スラリーを塗布させSUS箔の両面に正極活物質層と負極活物質層が塗布されたバイポーラ型電極を形成させた。
【0163】
手順2. ゲル電解質層の形成
セパレータには、ポリプロピレン製の不織布(厚さ50μm)を用いた。
【0164】
このポリプロピレン製の不織布(厚さ50μm)セパレータに、イオン伝導性高分子マトリックスの前駆体である平均分子量7500〜9000のモノマー溶液(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体)5重量%、電解液としてPC+EC(PC:EC=1:1(体積比))95重量%、1.0M LiBETI、重合開始剤(BDK;ホストポリマー(高分子ゲル電解質の高分子原料)であるイオン伝導性高分子マトリックスの前駆体に対して0.01〜1質量%)からなるプレゲル溶液を浸漬させて、石英ガラス基板に挟み込み紫外線を15分照射して前駆体を架橋させて、ゲル電解質を含むセパレータからなるゲルポリマー電解質層を得た。
【0165】
手順3. 積層電池
手順1で作製したバイポーラ型電極の正極活物質層の周辺部にシール材を配置し熱と圧力をかけ集電体とシール材を融着させた後、前記バイポーラ型電極の正負極活物質層上にプレゲル溶液を塗布し、熱架橋させることにより正負極活物質層中にゲル電解質を含浸保持させた。ゲル電解質を含浸保持した前記バイポーラ型電極とゲル電解質を含むセパレータ(ゲルポリマー電解質層)とを交互に3層積層させ、(熱と圧力をかけ、対向する集電体の負極活物質層の周辺部とシール材を融着させ)積層電池を形成した。
【0166】
実施例1
手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、まず、LiMn(正極活物質)、アセチレンブラック(導電助剤)、PVdF(バインダ)(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようプレスを行った。次に、その上からLiMn、活性炭(ガス吸着剤)、アセチレンブラック、PVdF(重量比82:3:5:10)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようにプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含まない活物質層と、その上にガス吸着剤を含んでいる活物質層とが順に積層されてなる2層構造を有するものである。
【0167】
手順1によるバイポーラ型電極の負極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、ハードカーボン(負極活物質)、VGCF(導電助剤)、PVdF(バインダ)(重量比85:5:10)の混合比からなる負極スラリーを前記集電体の反対面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚30μmになるようにプレスを行って作製した。これにより前記バイポーラ型電極を形成した。
【0168】
なお、上記した各成分の混合比からなる正極スラリーおよび負極スラリーは、上記した各成分に更に溶媒としてN−メチルー2−ピロリドン(NMP)を適量加えて撹拌して調製したものを用いた。
【0169】
プレス後のバイポーラ型電極の正極活物質層および負極活物質層の膜厚は共に30μmとした。
【0170】
前記手順3によるゲル電解質を含浸保持したバイポーラ型電極間に前記手順2によるゲル電解質を含むセパレータ(ゲルポリマー電解質層)を挟み、積層電池形成後、初充放電を行い、放電状態で内部抵抗を測定した。
【0171】
実施例2
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、まず、LiMn(正極活物質)、アセチレンブラック(導電助剤)、PVdF(バインダ)(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようプレスを行った。次に、その上からLiMn、活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比80:5:5:10)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようにプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含まない活物質層と、その上にガス吸着剤を含んでいる活物質層とが順に積層されてなる2層構造を有するものである。
【0172】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は、実施例1と同様の積層電池を形成した。
【0173】
実施例3
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、まず、LiMn、アセチレンブラック、PVdF(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようプレスを行った。次に、その上からLiMn、活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比83:2:5:10)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようにプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含まない活物質層と、その上にガス吸着剤を含んでいる活物質層とが順に積層されてなる2層構造を有するものである。
【0174】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は、実施例1と同様の電池を形成した。
【0175】
実施例4
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、まず、LiMn、アセチレンブラック、PVdF(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようプレスを行った。次に、その上からLiMn、活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比78:7:5:10)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようにプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含まない活物質層と、その上にガス吸着剤を含んでいる活物質層とが順に積層されてなる2層構造を有するものである。
【0176】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は、実施例1と同様の電池を形成した。
【0177】
実施例5
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、まず、LiMn、アセチレンブラック、PVdF(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようプレスを行った。次に、その上からLiMn、活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比84:1:5:10)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようにプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含まない活物質層と、その上にガス吸着剤を含んでいる活物質層とが順に積層されてなる2層構造を有するものである。
【0178】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は実施例1と同様の電池を形成した。
【0179】
実施例6
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、まず、LiMn、活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比82:3:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようプレスを行った。次に、その上からLiMn、アセチレンブラック、PVdF(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようにプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含んでいる活物質層と、その上にガス吸着剤を含まない活物質層とが順に積層されてなる2層構造を有するものである。
【0180】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は、実施例1と同様の電池を形成した。
【0181】
実施例7
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、まず、LiMn、活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比82:3:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚10μmになるようにプレスを行った。次に、その上からLiMn、アセチレンブラック、PVdF(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し、膜厚10μmになるようプレスを行った。更にその上からLiMn、活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比82:3:5:10)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し、膜厚10μmになるようプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含んでいる活物質層と、その上にガス吸着剤を含まない活物質層と、更にその上にガス吸着剤を含んでいる活物質層とが順に積層されてなる3層構造を有するものである。
【0182】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は、実施例1と同様の電池を形成した。
【0183】
比較例1
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、LiMn、アセチレンブラック、PVdF(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚30μmになるようにプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含まない活物質層のみが積層されてなる単層(1層)構造を有するものである。
【0184】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は、実施例1と同様の電池を形成した。
【0185】
比較例2
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、LiMn、活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比82:3:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚30μmになるようにプレスを行って作製した。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含んでいる活物質層のみが積層されてなる単層(1層)構造を有するものである。
【0186】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は、実施例1と同様の電池を形成した。
【0187】
比較例3
前記手順1によるバイポーラ型電極の正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、まず、LiMn、アセチレンブラック、PVdF(重量比85:5:10)の混合比からなる正極スラリーを前記集電体の片面に自走型ダイコータで塗布し、膜厚15μmになるようプレスを行った。次に、その上から活性炭を含まない活物質層中の活物質量に対して活性炭の重量比を3.66%になるように活性炭、アセチレンブラック、PVdF(重量比30:50:20)の混合比からなる正極スラリーを自走型ダイコータで塗布し膜厚15μmになるようにプレスを行った。こうして得られた正極活物質層(高分子ゲル電解質未含浸状態のもの)は、集電体上に、ガス吸着剤を含まない活物質層と、その上に正極ガス吸着剤層とが順に積層されてなる2層構造を有するものである。
【0188】
そして、こうして得られた正極活物質層を用いた事以外は、実施例1と同様の電池を形成した。
【0189】
[電池の評価]
実施例1〜7、比較例1〜3のそれぞれの電池で充放電試験を行った。実験は0.5Cの電流で3層積層電池の総電圧を12.6Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧充電(CV)し、あわせて3時間充電した後、0.5Cの電流で総電圧7.5Vまで放電を行った。
【0190】
初回充放電後、放電状態での電池内部抵抗を測定した。測定結果から、「抵抗値/比較例1抵抗値」として、比較例1の抵抗値を基準とした各実施例1〜7及び比較例1〜3の抵抗値の比率(割合)を表1に示す。また表1には、「容量値/比較例1容量値」として、比較例1の初回充放電時の放電容量値を基準とした各実施例1〜7及び比較例1〜3の初回充放電時の放電容量値の比率(割合)を示す。更に表1には、「比較例1に対する相対出力」として、比較例1の初回充放電時の出力値を基準とした各実施例1〜7及び比較例1〜3の初回充放電時の出力値の比率(割合)を示す。
【0191】
その後、実施例1〜3、6、7、比較例1〜3では1Cの電流で充放電を100サイクル行い、放電状態での積層電池の膨らみを目視で確認した。結果を表1に示す。表1では、100サイクル後に電池の膨らみが確認されたものには「×」(不良)とし、100サイクル後に電池の膨らみが確認されなかったものには「○」(良好)とした。
【0192】
【表1】

【0193】
上記表1に示すように、実施例1、比較例1を比較すると活物質層/電解質層界面にガス吸着剤である活性炭を含む活物質層を設けることで電池内部抵抗が低下し、初回充電時に発生したガスが活性炭内に吸着されることが確認された。
【0194】
実施例1、比較例2を比較すると抵抗値はほとんど同じであったが、電池容量は比較例2では活物質層全体に吸着剤を添加するので実施例1に比べ低い値を示したことから、ガス吸着剤は活物質層全体に添加するのではなく活物質層/電解質層界面に配置することで高出力、高容量な電池を設計できることが確認された。
【0195】
実施例1、比較例3を比較すると抵抗値はほとんど同じであった。しかし、比較例3では吸着剤を含む層に活物質層を設けないために比較例1に比べ、電池容量が50%程度減少することがわかり、ガス吸着剤を設ける層は活物質も含むことで高出力、高容量な電池を設計できることが確認された。
【0196】
実施例1〜5を比較すると実施例2が最も抵抗値の減少が大きくなることが確認された。実施例4では吸着剤の添加量を実施例2より増大させたにもかかわらず、抵抗値は実施例2とほとんど同じであった。また、電池容量は、実施例4が最も低い値を示した。一方、実施例5では抵抗値が比較例1とほとんど同じであったことから、吸着剤を含む活物質層内では活物質量に対し活性炭が2〜7wt%の添加量で活物質層/電解質層界面でのガス吸着が可能となり高出力、高容量に優れた電池を設計することが確認された。
【0197】
実施例1、6を比較すると抵抗値、電池容量とも大きな差は見られなかったことよりガス吸着剤は活物質層/電解質層界面、活物質層/集電体界面のどちらに配置しても効果があることが分かった。
【0198】
実施例1、6、7を比較すると実施例7の内部抵抗値が最も小さいことがわかった。このことから活物質層/電解質界面および活物質層/集電体界面の双方に吸着剤を含む層を設けることでそれぞれの界面に溜まったガスを吸着することが可能となり高出力、高容量な電池を設計できることが確認された。
【0199】
実施例7、比較例2を比較すると電極活物質層全体に吸着剤を設けるより、活物質層/電解質層、活物質層/集電体界面に吸着剤を含む層を設けることでそれぞれの界面に溜まったガスを吸着することが可能となり高出力、高容量な電池を設計することが確認された。
【0200】
実施例1〜3、6、7、比較例1〜3の充放電100サイクル後の電池膨らみを確認した結果、比較例1では電池の膨らみが確認されたがそれ以外では、電池膨らみが確認されなかった。このことから、ガス吸着剤を活物質内に設けることで、初回充放電時だけでなく電池長期使用時に発生したガスも吸着することが可能で、特に活物質層/電解質、活物質層/集電体界面に吸着剤を設けることで、高出力、高容量な電池を設計することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】図1(A)は、ガス吸着剤含有活物質層を、活物質層/電解質層界面に設けた場合の単電池構造を模式的に表した概略断面図である。図1(B)は、ガス吸着剤含有活物質層を、活物質層/集電体界面に設けた場合の単電池構造を模式的に表した概略断面図である。図1(C)は、ガス吸着剤含有活物質層を、活物質層/電解質層界面および活物質層/集電体界面の両方に設けた場合の単電池構造を模式的に表した概略断面図である。
【図2】図2は、図1(A)の単電池構造を3層分積層してなるバイポーラ型の扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池の電極積層体(バイポーラ電池本体)を模式的に表した概略断面図である。
【図3】バイポーラ型でない電極を用いた扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池の断面概略図を示す。
【図4】バイポーラ型電極を用いた扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表わした概略断面図を示す。
【図5】本発明のバイポーラ電池を2直20並に接続した組電池の一例を示す模式図である。図5(a)は組電池の平面図であり、図5(b)は組電池の正面図であり、図5(c)は組電池の右側面図であって、これら図5(a)〜(c)では、いずれもバイポーラ電池を直列と並列の混合に接続した様子がわかるように外部ケースを透過して組電池内部を表わしたものである。
【図6】本発明のバイポーラ電池Aと本発明のバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池B10直を並列に連結した組電池の一例を示す図である。図6(a)は組電池の平面図であり、図6(b)は組電池の正面図であり、図6(c)は組電池の右側面図であって、これら図6(a)〜(c)では、いずれもバイポーラ電池Aおよびバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池Bを直列と並列の混合に接続した様子がわかるように外部ケースを透過して組電池内部を表わしたものである。
【図7】本発明の複合組電池の一例を示す図である。図7(a)は複合組電池の平面図であり、図7(b)は複合組電池の正面図であり、図7(c)は複合組電池の右側面図である。
【図8】複合組電池を搭載した状態の電気自動車を示す模式図である。
【図9】粒子の粒径を測定する際に用いる絶対最大長を説明した解説図である。
【符号の説明】
【0202】
11 単電池層、
12 集電体、
13 正極活物質層、
13a ガス吸着剤を含まない正極活物質層、
13b 正極側のガス吸着剤含有活物質層、
15 負極活物質層、
15a ガス吸着剤を含まない負極活物質層、
15b 負極側のガス吸着剤含有活物質層、
31 単極型のリチウムイオン二次電池、
32 電池外装材、
33 正極集電体、
34 正極活物質層、
35 電解質層、
36 負極集電体、
37 負極活物質層、
38 発電要素、
39 正極(端子)リード、
40 負極(端子)リード、
41 バイポーラ型のリチウムイオン二次電池(バイポーラ電池)、
42 集電体、
43 正極活物質層、
44 負極活物質層、
45 バイポーラ型電極、
45a 電極積層体の最上層の電極、
45b 電極積層体の最下層の電極、
46 電解質層、
47 電極積層体(バイポーラ電池本体)、
48 正極リード、
49 負極リード、
50 電池外装材(外装パッケージ)、
51、51’ 組電池、
52 外部弾性体、
53 検知線、
54 検知タブ端子、
55 組電池ケース、
56、58 バスバー、
59 端子リード、
62 正極端子、
64 負極端子、
70 複合組電池、
72 複合組電池正極端子連結板、
74 複合組電池負極端子連結板、
76 連結板、
77 固定ネジ、
80 電気自動車、
91 粒子(不定形粒子を含む)
L 最大の長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の集電体に正極活物質層が設けられ、もう一方の集電体に負極活物質層が設けられた電極が電解質層を介した構造のリチウムイオン二次電池において、
前記活物質層の少なくとも一方の面にガス吸着剤を含んでいる活物質層を形成したことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記電解質層が、ポリマー電解質および/またはゲル電解質を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記電極において、少なくとも片方の活物質層は、前記ガス吸着剤を含まない活物質層と、活物質層/電解質層界面にガス吸着剤を含んでいる活物質層と、を設けた構造を特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記電極において、少なくとも片方の活物質層は、前記ガス吸着剤を含まない活物質層と、活物質層/集電体界面にガス吸着剤を含んでいる活物質層と、を設けた構造を特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記電極において、少なくとも片方の活物質層は、前記ガス吸着剤を含まない活物質層と、活物質層/電解質層界面にガス吸着剤を含んでいる活物質層と、活物質層/集電体界面に吸着剤を含んでいる活物質層と、を設けた構造を特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記ガス吸着剤を含んでいる活物質層が、少なくとも隣接する活物質層に比べて炭素材料が多い層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記ガス吸着剤が、活性炭、カーボンナノチューブ及びカーボンシートよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種の炭素材料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記ガス吸着剤は、前記ガス吸着剤を含んでいる活物質層の全量に対し7wt%以下の含有量を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
前記正極活物質にはリチウム−遷移金属酸化物が含まれ、
前記負極活物質には炭素材料もしくはリチウム−遷移金属化合物を用いていることを特徴とする項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−26725(P2007−26725A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203459(P2005−203459)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】