説明

リチウム二次電池の状態検出方法

【課題】リチウム二次電池の状態を簡便かつ高精度に検出できる状態検出方法を提案する。
【解決手段】本発明に係る状態検出方法は、リチウム二次電池の状態を検出する検出方法であって、電池をSOC10%以下まで放電する放電工程と、放電工程によって放電された電池のインピーダンスを測定する測定工程と、測定工程で得られたインピーダンスの測定値に基づいて電池の状態を検出する状態検出工程とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の状態を検出する状態検出方法に関する。特にリチウム二次電池に適した状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池、ニッケル水素電池その他の二次電池は、車両搭載用電源、或いはパソコン及び携帯端末の電源として重要性が高まっている(例えば特許文献1)。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)は、車両搭載用大型電源として好ましく用いられるものとして期待されている。ところで、この種のリチウム二次電池の状態を検出する方法としては、例えば、特開2009−244088号公報(特許文献1)が開示されている。同公報では、リチウムイオン二次電池に特定周波数の交流電圧または交流電流を入力し、該入力に対する出力の位相差に基づいてリチウムイオン二次電池の状態を検出することが記載されている。電池のインピーダンスを測定することを利用した他の技術としては、特開2000−299137号公報(特許文献2)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−244088号公報
【特許文献2】特開2000−299137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示された技術では、リチウムイオン二次電池に特定周波数の交流電圧または交流電流を入力し、該入力に対する出力の位相差に基づいてリチウムイオン二次電池の状態(負極での金属リチウムの析出状態)を検出している。そして、同公報によると、電池電圧がより高い方がより位相差の変化が大きくなるため好ましいとされている。しかしながら、かかる技術では、リチウム析出の検知精度に限界があり、精度のよい検査ができない場合があった。本発明はかかるリチウム二次電池の状態(負極でのリチウム析出状態)を検出する方法について新規な方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る方法は、リチウム二次電池の状態を検出する状態検出方法である。この状態検出方法は、上記電池をSOC(State Of Charge)10%以下まで放電する放電工程と、上記放電工程によって放電された電池のインピーダンスを測定する測定工程と、上記測定工程で得られたインピーダンスの測定値に基づいて上記電池の状態を検出する状態検出工程とを包含する。
【0006】
本発明のリチウム二次電池状態検出方法によると、放電工程においてSOCが10%以下の所定値(例えば5%、好ましくは0%)であるときに、電池100のインピーダンスを測定するので、電池の状態を簡便かつ高精度に検出することができる。すなわち、SOCが10%以下である低充電状態では、負極でのリチウム析出の有無によって、インピーダンスの測定値が大きく変化する。このため、かかる低充電状態で得られたインピーダンスの測定値を利用することにより、負極でのリチウムの析出状態(電池の劣化状態)について適切に検出できる。
【0007】
ここに開示されるリチウム二次電池状態検出方法の好ましい一態様では、上記測定工程では、上記インピーダンスを複数の周波数において測定する。この場合、上記複数の周波数において測定されたインピーダンスの実部および虚部を平面座標にプロットし、得られたインピーダンス円から反応抵抗値を算出するとよい。かかる反応抵抗値を利用することで、負極でのリチウムの析出状態(電池の劣化状態)を簡便かつ高精度に検出できる。
【0008】
ここに開示されるリチウム二次電池状態検出方法の好ましい一態様では、上記状態検出工程では、上記測定工程において算出された反応抵抗値と、予め定められた閾値(劣化の判定基準)とを比較することにより、上記電池に劣化が生じているか否かを判定する。このとき、上記劣化の判定基準(閾値)を複数用意することにより、電池の劣化の程度を段階的に判定することができる。好ましい一態様では、上記閾値は、上記電池の初期の反応抵抗値(すなわち電池に劣化が生じていない初期状態(典型的には通常の使用形態で使用する前)の反応抵抗値)よりも2倍以上大きい値に設定されている。初期の反応抵抗値よりも2倍以上大きい値を閾値とすることにより、誤検出を防止して、電池劣化の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る捲回電極体を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るコール・コールプロットを示す図である。
【図4】コール・コールプロットおよび等価回路を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池システムを示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池システムを搭載した車両の側面図である。
【図7】本発明の一試験例に係るリチウム二次電池を模式的に示す図である。
【図8】SOC0%で得られたコール・コールプロットを示す図である。
【図9】SOC20%で得られたコール・コールプロットを示す図である。
【図10】SOC40%で得られたコール・コールプロットを示す図である。
【図11】SOC60%で得られたコール・コールプロットを示す図である。
【図12】SOC80%で得られたコール・コールプロットを示す図である。
【図13】反応抵抗値とSOCとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、正極及び負極を備えた電極体の構成及び製法、セパレータや電解質の構成及び製法、リチウム二次電池その他の電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の状態検出方法を説明する。
【0012】
この状態検出方法は、リチウム二次電池100に対して行われる。リチウム二次電池100(以下、適宜「電池」という。)は、例えば、図1に示すように、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20が長尺状のセパレータ40を介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解液とともに、該捲回電極体80を収容し得る形状(扁平な箱型)のケース50に収容された構成を有する。
【0013】
ケース50は、上端が開放された扁平な直方体状のケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。ケース50を構成する材質としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましく用いられる(本実施形態ではアルミニウム)。あるいは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を成形してなるケース50であってもよい。ケース50の上面(すなわち蓋体54)には、捲回電極体80の正極と電気的に接続する正極端子70及び該電極体80の負極20と電気的に接続する負極端子72が設けられている。ケース50の内部には、扁平形状の捲回電極体80が図示しない非水電解液とともに収容される。
【0014】
本実施形態に係る捲回電極体80は、後述する正極シート10に具備される活物質を含む層(正極活物質層)の構成を除いては通常のリチウム二次電池の捲回電極体と同様であり、図2に示すように、捲回電極体80を組み立てる前段階において長尺状(帯状)のシート構造を有している。
【0015】
正極シート10は、正極シート10は、長尺シート状の箔状の正極集電体(以下「正極集電箔」と称する)12の両面に正極活物質を含む正極活物質層14が保持された構造を有している。ただし、正極活物質層14は正極シート10の幅方向の端辺に沿う一方の側縁(図では左側の側縁部分)には付着されず、正極集電体12を一定の幅にて露出させた正極活物質層非形成部が形成されている。
【0016】
負極シート20も正極シート10と同様に、長尺シート状の箔状の負極集電体(以下「負極集電箔」と称する)22の両面に負極活物質を含む負極活物質層24が保持された構造を有している。ただし、負極活物質層24は負極シート20の幅方向の端辺に沿う一方の側縁(図では右側の側縁部分)には付着されず、負極集電体22を一定の幅にて露出させた負極活物質層非形成部が形成されている。
【0017】
捲回電極体80を作製するに際しては、正極シート10と負極シート20とがセパレータシート40を介して積層される。このとき、正極シート10の正極活物質層非形成部分と負極シート20の負極活物質層非形成部分とがセパレータシート40の幅方向の両側からそれぞれはみ出すように、正極シート10と負極シート20とを幅方向にややずらして重ね合わせる。このとうに重ね合わせた積層体を捲回し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平状の捲回電極体80が作製され得る。
【0018】
捲回電極体80の捲回軸方向における中央部分には、捲回コア部分82(即ち正極シート10の正極活物質層14と負極シート20の負極活物質層24とセパレータシート40とが密に積層された部分)が形成される。また、捲回電極体80の捲回軸方向の両端部には、正極シート10及び負極シート20の電極活物質層非形成部分がそれぞれ捲回コア部分82から外方にはみ出ている。かかる正極側はみ出し部分(すなわち正極活物質層14の非形成部分)84及び負極側はみ出し部分(すなわち負極活物質層24の非形成部分)86には、正極リード端子74及び負極リード端子76がそれぞれ付設されており、上述の正極端子70及び負極端子72とそれぞれ電気的に接続される。
【0019】
かかる捲回電極体80を構成する構成要素は、正極シート10を除いて、従来のリチウム二次電池の捲回電極体と同様でよく、特に制限はない。例えば、負極シート20は、長尺状の負極集電体22の上にリチウム二次電池用負極活物質を主成分とする負極活物質層24が付与されて形成され得る。負極集電体22には銅箔その他の負極に適する金属箔が好適に使用される。負極活物質は従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物、Si系材料、Sn系材料等が挙げられる。
【0020】
正極シート10は、長尺状の正極集電体12の上にリチウム二次電池用正極活物質を主成分とする正極活物質層14が付与されて形成され得る。正極集電体12にはアルミニウム箔その他の正極に適する金属箔が好適に使用される。
【0021】
正極活物質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。ここに開示される技術の好ましい適用対象として、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)等の、リチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)を主成分とする正極活物質が挙げられる。中でも、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3)を主成分とする正極活物質(典型的には、実質的にリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質)への適用が好ましい。
【0022】
ここで、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とは、Li,Ni,Co及びMnを構成金属元素とする酸化物のほか、Li,Ni,Co及びMn以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、Li,Ni,Co及びMn以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。かかる金属元素は、例えば、Al,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,La及びCeからなる群から選択される一種または二種以上の元素であり得る。リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウムマンガン酸化物についても同様である。
【0023】
このようなリチウム遷移金属酸化物(典型的には粒子状)としては、例えば、従来公知の方法で調製されるリチウム遷移金属酸化物粉末をそのまま使用することができる。例えば、平均粒径が凡そ1μm〜25μmの範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末を正極活物質として好ましく用いることができる。
【0024】
正極活物質層14は、一般的なリチウム二次電池において正極活物質層の構成成分として使用され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。そのような材料の例として、導電材が挙げられる。該導電材としてはカーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料が好ましく用いられる。あるいは、ニッケル粉末等の導電性金属粉末等を用いてもよい。その他、正極活物質層の成分として使用され得る材料としては、上記構成材料の結着剤(バインダ)として機能し得る各種のポリマー材料が挙げられる。
【0025】
特に限定するものではないが、正極活物質層全体に占める正極活物質の割合は凡そ50質量%以上(典型的には50〜95質量%)であることが好ましく、凡そ75〜90質量%であることが好ましい。また、導電材を含む組成の正極活物質層では、該正極活物質層に占める導電材の割合を例えば3〜25質量%とすることができ、凡そ3〜15質量%であることが好ましい。また、正極活物質及び導電材以外の正極活物質層形成成分(例えばポリマー材料)を含有する場合は、それら任意成分の合計含有割合を凡そ7質量%以下とすることが好ましく、凡そ5質量%以下(例えば凡そ1〜5質量%)とすることが好ましい。
【0026】
上記正極活物質層14の形成方法としては、正極活物質(典型的には粒状)その他の正極活物質層形成成分を適当な溶媒(好ましくは水系溶媒)に分散した正極活物質層形成用ペーストを正極集電体12の片面または両面(ここでは両面)に帯状に塗布して乾燥させる方法を好ましく採用することができる。正極活物質層形成用ペーストの乾燥後、適当なプレス処理(例えば、ロールプレス法、平板プレス法等の従来公知の各種プレス方法を採用することができる。)を施すことによって、正極活物質層14の厚みや密度を調整することができる。
【0027】
正負極シート10、20間に使用される好適なセパレータシート40としては多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成されたものが挙げられる。例えば、合成樹脂製(例えばポリエチレン等のポリオレフィン製)多孔質セパレータシートが好適に使用し得る。なお、電解質として固体電解質若しくはゲル状電解質を使用する場合には、セパレータが不要な場合(即ちこの場合には電解質自体がセパレータとして機能し得る。)があり得る。
【0028】
かかる構成の捲回電極体80をケース本体52に収容し、そのケース本体52内に適当な非水電解液を配置(注液)することにより、捲回電極体80に非水電解液を含浸させる。ケース本体52内に上記捲回電極体80と共に収容される非水電解液としては、従来のリチウム二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)等を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiClO等のリチウム塩を好ましく用いることができる。例えば、ECとEMCとを3:7の体積比で含む混合溶媒に支持塩としてのLiPFを約1mol/リットルの濃度で含有させた非水電解液を好ましく用いることができる。
【0029】
上記非水電解液を捲回電極体80とともにケース本体52に収容し、ケース本体52の開口部を蓋体54で封止することにより、本実施形態に係るリチウム二次電池100の構築(組み立て)が完成する。なお、ケース本体52の封止プロセスや電解液の配置(注液)プロセスは、従来のリチウム二次電池の製造で行われている手法と同様にして行うことができる。その後、該電池のコンディショニング(初期充放電)を行う。必要に応じてガス抜きや品質検査等の工程を行ってもよい。
【0030】
ここで、上述したリチウム二次電池においては、例えば、低温環境下において充電(特にハイレート充電)を行うと、負極表面にリチウム(Li)が析出してしまうことがある。負極表面に析出したリチウムの多くは、電池の充放電反応に寄与できなくなるので、充放電を繰り返すうちに電池容量が低下するなどの不都合が生ずる場合がある。
【0031】
そこで、負極でのリチウムの析出状態を検出する項目の一つとして、本発明者は、電池の正負極間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定を利用した方法を考えている。インピーダンス測定は、例えば、電池に0.1Hz〜10kHzに周波数を変えつつ交流信号(典型的には交流電流または交流電圧)を付与し、電圧/電流の応答信号からインピーダンスを測定する。この際、周波数の違いにより、複数のインピーダンスが得られる。かかる複数のインピーダンスに基づいて、平面座標の横軸Xに複素インピーダンスの実部(Re|Z|)(Ω)を、縦軸Yに複素インピーダンスの虚部(Im|Z|)(Ω)をプロットし、図3に示すようなコール・コールプロットを得ることができる。
【0032】
このコール・コールプロットにおいて、高周波信号を付与したときに得られるプロットは、実部(Re|Z|)(Ω)の値が低い方にプロットされる。また、低周波信号を付与したときに得られるプロットは、実部(Re|Z|)(Ω)の値が高い方にプロットされる。そして、このコール・コールプロットにおいては、通常、2つのインピーダンス円(円弧成分)C、Cが現れる。低周波側に現れる大きなインピーダンス円Cは、電解液と電極の界面の抵抗および容量に起因している。一方、高周波側に現れる小さいインピーダンス円Cは、電極の反応抵抗および容量に起因している。かかる高周波側の小さいインピーダンス円Cは、例えば、図4に示す等価回路にフィッティングすることにより解析され得る。図4に示す等価回路において、R0は直流抵抗を、R1は反応抵抗を、C1は二重層容量を示している。負極上に金属リチウムが析出すると、それに伴い負極の反応抵抗が増大するので、高周波側のインピーダンス円Cの解析により得られる反応抵抗R1の値も上昇する。換言すれば、高周波側のインピーダンス円Cの解析により得られる反応抵抗R1の値から、負極でのリチウムの析出状態(電池の劣化状態)を検出することができる。
【0033】
ここで上記リチウム析出の検知性の観点からは、上記インピーダンス円Cの解析で得られる反応抵抗R1の値が、リチウム析出前後において大きく変化することが望ましい。本発明者は、種々実験を行った結果、電池をある程度放電した状態でインピーダンス測定を行うと、上記リチウム析出前後における反応抵抗値の変化が極めて大きくなることを見出した。具体的には、種々異なったSOCに調整した電池を複数用意し、リチウム析出を伴うサイクル劣化試験前後において、各々の電池を正負極間のインピーダンス測定に供した。このうち、0%、20%、40%、60%、80%のSOCに調整した電池について、インピーダンス測定を行った結果を、図8〜図12に示す。図8はSOC0%で得られるコール・コールプロットを、図9はSOC20%で得られるコール・コールプロットを、図10はSOC40%で得られるコール・コールプロットを、図11はSOC60%で得られるコール・コールプロットを、図12はSOC80%で得られるコール・コールプロットを、それぞれ示している。また、図13は、各コール・コールプロットから得た反応抵抗R1の値とSOCとの関係を示すグラフである。かかる反応抵抗値は、図4に示す等価回路フィッティングにより得たものである。
【0034】
SOCを20%、40%、60%、80%に調整した電池では、図9〜図13に示すように、リチウム析出前後において反応抵抗値はさほど変わらなかった。これに対し、SOCを0%に調整した電池では、リチウム析出前後において反応抵抗値に顕著な差異が生じた。具体的には、リチウム析出後の反応抵抗値は析出前に比べて3倍近くまで上昇した。これは、SOC0%のときにリチウム析出の検知性が大きく向上することを意味している。即ち、かかるSOC0%で得られた反応抵抗値を利用することで、リチウム析出の検知精度が向上し、負極でのリチウムの析出状態(電池の劣化状態)について適切に検出することが可能になる。
【0035】
以上のような知見から、本実施形態における電池の検出方法は、放電工程と測定工程と状態検出工程とを含んでいる。放電工程は、検査対象であるリチウム二次電池をSOC10%以下(好ましくは5%以下、特に好ましくは0%)まで放電する工程である。
【0036】
測定工程は、上記放電工程によって放電された電池のインピーダンスを測定する工程である。この実施形態では、図4に示すように、インピーダンスを複数の周波数において測定する。そして、複数の周波数において測定されたインピーダンスの実部(Re|Z|)および虚部(Re|Z|)を平面座標にプロットし、得られた高周波側のインピーダンス円Cから反応抵抗R1の値を算出する。かかる反応抵抗値の算出は、例えば、高周波側のインピーダンス円Cを図4に示す等価回路にフィッティングすることにより行うことができる。あるいは、高周波側のインピーダンス円CとX軸との交点(すなわち虚部がゼロの点)から反応抵抗R1の値を直接読み取ってもよい。
【0037】
状態検出工程は、上記測定工程で得られたインピーダンスの測定値に基づいて電池の状態を検出する工程である。この実施形態では、上記測定工程において算出された反応抵抗値と、予め定められた閾値(劣化の判定基準)とを比較することにより、電池に劣化が生じているか否かを判定する。例えば、上記測定工程において算出された反応抵抗値が上記閾値を超えた場合、電池に劣化が生じていると判定すればよい。このとき、上記劣化の判定基準(閾値)を複数用意することにより、電池の劣化の程度を段階的に判定することができる。好ましい一態様では、上記閾値(劣化の判定基準)は、上記電池の初期の反応抵抗値(すなわち電池に劣化が生じていない初期状態(典型的には通常の使用形態で使用する前)の反応抵抗値)よりも2倍以上大きい値に設定されている。例えば、電池の初期の反応抵抗値が4Ωの場合、上記閾値としては、概ね8Ω以上が適当であり、好ましくは10Ω以上であり、特に好ましくは12Ω以上である。このように初期の反応抵抗値よりも2倍以上大きい値を閾値とすることにより、誤検知を防止して、電池劣化の検出精度を向上させることができる。
【0038】
図5は、上述した電池検出方法を具現化した検出装置を含むリチウム二次電池システム1000の一例を示すブロック図である。このリチウム二次電池システム1000は、図5に示すように、リチウム二次電池100と、これに接続された負荷110と、負荷110に接続されたリチウム二次電池100の運転をコントロールする電子制御装置120と、該電池のSOCを検出するSOC検出部130と、該電池のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部140とを備えている。リチウム二次電池100については、先に説明したものと同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0039】
負荷110は、リチウム二次電池100に蓄えられた電力を消費する電力消費機および/または電池100に充電可能な電力供給機(充電器)を含み得る。電子制御装置120は、負荷110に接続されたリチウム二次電池100の運転をコントロールするものとして構成されており、所定の情報に基づいて、負荷110を駆動制御する。電子制御装置120の典型的な構成には、少なくとも、かかる制御を行うためのプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)と、そのプログラムを実行可能なCPU(Central Processing Unit)と、入出力ポートとが含まれる。電子制御装置120には、図示しない電圧センサ、電流センサ、温度センサ等からの各種信号、SOC検出部130及びインピーダンス測定部140からの信号(出力)などが入力ポートを介して入力される。また、電子制御装置120からは、負荷110(電力消費機および/または電力供給機)への駆動信号などが出力ポートを介して出力される。
【0040】
SOC検出部130は、リチウム二次電池100のSOCを検出するものとして構成されている。かかるSOC検出部130としては、一般的なSOC検出装置において常套的に使用されているものから任意に選択することができる。例えば、SOC検出部130は、図示しない電圧センサにより検出された端子電圧をSOCに換算するものであり得る。かかる換算は、端子電圧とSOCとの相関を示すマップを用いて行うことができる。必要に応じて温度等を加味した補正を行ってもよい。あるいは、SOC検出部130は、図示しない電流センサにより検出された電流の積算によりSOCを算出するものでもよい。かかるSOC検出部130によって検出されたSOCの検出結果は、SOC検出部130の出力として電子制御装置120に送られる。電子制御装置120は、SOC検出部130によって検出されたSOCを常時モニタリングし、その検出されたSOCが10%以下の所定値(例えば5%、好ましくは0%)になったときにインピーダンス測定を開始するようにインピーダンス測定部140に指令を発する。
【0041】
インピーダンス測定部140は、リチウム二次電池100のインピーダンスを測定するものとして構成されている。かかるインピーダンス測定部140としては、一般的なインピーダンス測定装置として常套的に使用されているものから任意に選択することができる。例えば、インピーダンス測定部140は、交流インピーダンス法により、電池のインピーダンスを複数の周波数において測定するものであり得る。交流インピーダンス法における測定方法としては特に限定されない。例えば、リサージュ法、交流ブリッジ法などのアナログ方式や、デジタル・フーリエ積分法、ノイズ印加による高速フーリエ変換法などのデジタル方式を適宜採用し得る。インピーダンス測定部140において測定される複数の周波数は、高周波数側のインピーダンス円Cから反応抵抗R1の値を算出できる範囲であればよい。例えば、複数の周波数は典型的には1MHz〜0.1Hz程度であり、好ましくは1kHz〜0.1Hz程度とすることができる。これにより、高周波数側のインピーダンス円Cから反応抵抗値を高精度に算出できる。電池に印加する交流の振幅としては特に制限されないが、概ね1mV〜10mV(好ましくは3mV〜8mV、例えば5mV程度)とすることが好ましい。これにより、再現性のよい正確な測定を行うことができる。インピーダンス測定部140によって測定されたインピーダンスの測定結果は、インピーダンス測定部140の出力として電子制御装置120に送られる。
【0042】
電子制御装置120は、インピーダンス測定部140によって測定されたインピーダンスの測定値に基づき、電池の状態を検出する状態検出部(図示せず)を備えている。状態検出部には、インピーダンス測定部140で測定されたインピーダンスの測定結果が、インピーダンス測定部140から送られる。状態検出部は、インピーダンス測定部140から送られてきたインピーダンスの測定結果に基づき、電池の状態を検出する。
【0043】
この実施形態では、状態検出部は、まず、複数の周波数において測定されたインピーダンスの実部(Re|Z|)および虚部(Im|Z|)を平面座標にプロットし、図3に示すようなコール・コールプロットを取得する。次いで、得られたコール・コールプロットを、図4に示す等価回路にフィッティングし、高周波側のインピーダンス円Cから反応抵抗R1の値を算出する。そして、この算出された反応抵抗R1の値に基づいて、電池の劣化具合を判定する。好ましい一態様では、劣化の判定基準となる反応抵抗値を記憶部(図示せず)に予め記憶させておき、これを閾値として実測の測定結果と比較することにより、電池に劣化が生じているか否かを判定する。このとき、上記劣化の判定基準(閾値)を複数用意することにより、電池の劣化の程度を段階的に判定することができる。記録部は、電子制御装置120で読み出し可能な記録媒体、例えば、ROM、HDD、光記録媒体、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、フラッシュメモリなどにより構成され得る。なお、インピーダンス測定の条件、フィッティングさせる等価回路などは、電池の具体的構成に応じて適宜変更できる。
【0044】
このようにして、リチウム二次電池のSOCを検出し、この検出されたSOCが10%以下の所定値(例えば5%、好ましくは3%、特に好ましくは0%)であるときに電池のインピーダンスを測定し、その測定されたインピーダンスの測定値に基づいて、電池の状態(電池の劣化状態)を検出することができる。
【0045】
電子制御装置120は、状態検出部で判定した判定結果を表示部(図示せず)に出力してもよい。表示部では、かかる判定結果に応答して、例えば電池交換を促す表示を表示することができる。
【0046】
また、電子制御装置120は、状態検出部で判定した判定結果に基づいて、電池の充放電を制御する制御部(図示せず)を備えてもよい。制御部では、少なくとも、状態検出部で判定した判定結果に基づいて、電池状態が良好に保たれるように負荷110(電力消費機および/または電力供給機)を駆動制御する。かかる制御は、例えば、状態検出部で判定した判定結果に基づいて、電池100の許容される最大入出力を設定し、その設定された最大入出力の範囲内で負荷110を駆動制御するものであり得る。例えば、電池の劣化具合が大きいほど最大入出力が小さくなるように設定し、電池の劣化具合が小さいほど最大入出力が大きくなるように設定するとよい。この構成によると、電池の許容される最大入出力が電池の劣化具合に応じて適切に設定されるので、電池への過負荷を防止することができ、電池の更なる劣化を抑制することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係るリチウム二次電池システム1000では、SOC検出部130において検出されたSOCが10%以下の所定値(例えば5%、好ましくは0%)であるときに、電池100のインピーダンスを測定するので、電池の状態を簡便かつ高精度に検出することができる。すなわち、SOCが10%以下である低充電状態では、負極でのリチウム析出の有無によって、インピーダンスの測定値が大きく変化する。このため、かかる低充電状態で得られたインピーダンスの測定値を利用することにより、負極でのリチウムの析出状態(電池の劣化状態)を簡便かつ高精度に検出することができる。
【0048】
ここに開示されるリチウム二次電池システム1000は、車両に搭載される電池として適した性能を備える。したがって本発明によると、図6に示すように、ここに開示されるいずれかのリチウム二次電池システム1000を備えた車両1が提供される。特に、該リチウム二次電池システム1000を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が提供される。
【0049】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0050】
<正極シートの作製>
正極活物質としては、ニッケル酸リチウム(LiNiO)粉末を用いた。まず、正極活物質粉末と導電材としてのアセチレンブラック(AB)とバインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これらの材料の質量比が90:7:1:2となるようにN−メチルピロリドン(NMP)中で混合して、正極活物質層用ペーストを調製した。この正極活物質層用ペーストを長尺シート状の正極集電体(厚さ20μm程度のアルミニウム箔)の両面に帯状に塗布して乾燥することにより、正極集電体の両面に正極活物質層が設けられた正極シートを作製した。
【0051】
<負極シートの作製>
負極活物質としては、グラファイト粉末を用いた。まず、負極活物質粉末とバインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、これらの材料の質量比が95:5となるように水中で混合して、負極活物質層用ペーストを調製した。この負極活物質層用ペーストを長尺シート状の負極集電体(厚さ15μm程度の銅箔)の両面に帯状に塗布して乾燥することにより、負極集電体の両面に負極活物質層が設けられた負極シートを作製した。
【0052】
<リチウム二次電池の作製>
次いで、正極シートの正極活物質層を3cm×4cmに打ち抜いて、正極を作製した。また、負極シートの負極活物質層を3cm×4cmに打ち抜いて、負極を作製した。正極にアルミリードを取り付け、負極にニッケルリードを取り付け、それらをセパレータ(多孔質ポリエチレンシートを使用した。)を介して対向配置し、非水電解液とともにラミネート袋に挿入して、図7に示すラミネートセル60を構築した。図7中、符号61は正極を、符号62は負極を、符号63は電解液の含浸したセパレータを、符号64はラミネート袋をそれぞれ示す。なお、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:7の体積比で含む混合溶媒に支持塩としてのLiPFを約1mol/リットルの濃度で含有させたものを用いた。このようにしてリチウム二次電池100を組み立てた。その後、常法により初期充放電処理(コンディショニング)を行って試験用のリチウム二次電池を得た。
【0053】
<定格容量の測定>
以上のように得られた試験用リチウム二次電池の定格容量を、温度25℃、3.0Vから4.1Vの電圧範囲で、次の手順1、2によって測定した。
手順1:1Cの定電流充電によって4.1Vに到達後、定電圧充電を行い、合計充電時間が1時間30分になるまで充電する。
手順2:1Cの定電流放電によって3.0Vまで放電し、5分間の休止後、1/5Cの定電流放電によって再び3.0Vまで放電する。
定格容量:手順2における定電流放電における放電容量を定格容量とする。この試験用リチウム二次電池では、定格容量が凡そ14mAhになる。
【0054】
<SOC調整>
上記定格容量の測定後、試験用リチウム二次電池を種々異なったSOCに調整した。SOC調整は、次の手順1、2によって行った。ここでは、温度による影響を一定にするため、25℃の温度環境下でSOC調整を行った。
手順1:3Vから1Cの定電流充電によって、定格容量の凡そ0%、20%、40%、60%、80%に相当する電圧になるまで充電する。
手順2:手順1の後、30分間、定電圧充電する。
これにより、試験用リチウム二次電池は、所定のSOCに調整することができる。
【0055】
<初期の反応抵抗(R1)測定>
上記SOC調整の後、種々異なったSOCの電池において、0℃の温度下で交流インピーダンス測定を行い、得られたコール・コールプロットの等価回路フィッティングにより初期の反応抵抗(R1)値(Ω)を求めた。インピーダンス測定条件としては、周波数範囲10kHz〜0.1Hz、電圧振幅5mVとした。
【0056】
<サイクル劣化試験>
上記初期の反応抵抗値を測定した後、リチウム二次電池に対し、ハイレート充放電を繰り返すサイクル劣化試験を行った。具体的には、0℃の恒温槽内において、24Cで10秒間のハイレートパルス充電を行い、次いで、4Cで60秒間のハイレートパルス放電を行い、230秒間休止するという充放電サイクルを500回連続して繰り返した。上記サイクル劣化前における電池容量(リチウム二次電池の初期の容量)と、サイクル劣化後における電池容量とから容量維持率(=「サイクル試験後の容量/サイクル試験前の容量」×100)を算出したところ、約80%であった。かかる電池容量の低下は、負極上に金属リチウムが析出したことに起因する。即ち、負極上に析出したリチウムの多くは、電池の充放電反応に寄与できなくなるため、電池容量が低下したものと推測される。
【0057】
<サイクル劣化試験後の反応抵抗(R1)測定>
上記サイクル劣化試験後のリチウム二次電池を、上記<SOC調整>と同様にして、凡そ0%、20%、40%、60%、80%のSOCに調整した。そして、種々異なったSOCの電池において、交流インピーダンス測定を行い、得られたコール・コールプロットの等価回路フィッティングによりサイクル劣化試験後の反応抵抗(R1)値(Ω)を求めた。インピーダンス測定条件は、前述した初期の反応抵抗測定と同じ条件とした。結果を表1と図8〜図13に示す。図8はSOC0%で得られたコール・コールプロットを、図9はSOC20%で得られたコール・コールプロットを、図10はSOC40%で得られたコール・コールプロットを、図11はSOC60%で得られたコール・コールプロットを、図12はSOC80%で得られたコール・コールプロットを、それぞれ示している。また、図13は、初期の反応抵抗値と、サイクル劣化試験後の反応抵抗値と、SOCとの関係を示すグラフである。
【0058】
【表1】

【0059】
表1及び図13から明らかなように、SOCを20%、40%、60%、80%に調整した電池では、サイクル劣化試験前後において、反応抵抗値はさほど変わらなかった。ここで供試した電池の場合、抵抗増加比(=サイクル劣化試験後の反応抵抗値/初期の反応抵抗値)は、概ね1.3以下(1.07〜1.26)に留まった。これに対し、SOCを0%に調整した電池では、抵抗増加比が2.96に達し、サイクル劣化試験前後において、反応抵抗値が著しく変化した。この結果から、SOC0%のときにサイクル劣化(リチウム析出)の検知性が大きく向上することが確かめられた。検知精度を向上させる観点からは、SOCは10%以下が適当であり、好ましくは5%以下であり、特に好ましくは0%である。上記抵抗増加比に換算すると、概ね2以上が適当であり、好ましくは2.5以上であり、特に好ましくは3以上である。
【0060】
なお、ここで供試した電池の場合、SOC0%は電圧3.0Vに相当し、SOC100%は電圧4.1Vに相当する。したがって、ここに開示される技術には、以下のものが含まれる。即ち、リチウム二次電池の状態を検出する検出方法であって、前記電池を電圧3.35V(SOC10%)以下まで放電する放電工程と、前記放電工程によって放電された電池のインピーダンスを測定する測定工程と、前記測定工程で得られたインピーダンスの測定値に基づいて前記電池の状態を検出する状態検出工程とを包含する、リチウム二次電池の状態検出方法。好ましい一態様では、前記放電工程では、前記電池を電圧3.0V(SOC0%)まで放電する。
【0061】
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0062】
例えば、上述した実施形態では、複数の周波数において測定されたインピーダンスの実部(Re|Z|)および虚部(Im|Z|)を平面座標にプロットし、得られたインピーダンス円Cから反応抵抗R1の値を算出し、その算出された反応抵抗値に基づいて、電池の状態を検出しているが、これに限定されない。例えば、コール・コールプロットから得た反応抵抗R1以外の電気素子(抵抗、キャパシタンス等)から電池の状態を検出してもよい。また、周波数をスイープさせずに特定の周波数のみでインピーダンス測定を行い、その測定結果に基づいて電池の状態を検出してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
10 正極シート
12 正極集電体
14 正極活物質層
20 負極シート
22 負極集電体
24 負極活物質層
40 セパレータシート
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
74 正極リード端子
76 負極リード端子
80 捲回電極体
82 捲回コア部分
100 リチウム二次電池
120 電子制御装置
130 検出部
140 インピーダンス測定部
1000 リチウム二次電池システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池の状態を検出する検出方法であって、
前記電池をSOC10%以下まで放電する放電工程と、
前記放電工程によって放電された電池のインピーダンスを測定する測定工程と、
前記測定工程で得られたインピーダンスの測定値に基づいて前記電池の状態を検出する状態検出工程と
を包含する、リチウム二次電池の状態検出方法。
【請求項2】
前記測定工程では、前記インピーダンスを複数の周波数において測定する、請求項1に記載のリチウム二次電池状態検出方法。
【請求項3】
前記測定工程では、前記複数の周波数において測定されたインピーダンスの実部および虚部を平面座標にプロットし、得られたインピーダンス円から反応抵抗値を算出する、請求項2に記載のリチウム二次電池状態検出方法。
【請求項4】
前記状態検出工程では、前記測定工程において算出された反応抵抗値と、予め定められた閾値とを比較することにより、前記電池に劣化が生じているか否かを判定する、請求項3に記載のリチウム二次電池状態検出方法。
【請求項5】
前記閾値は、前記電池の初期の反応抵抗値よりも2倍以上大きい値に設定されている、請求項4に記載のリチウム二次電池状態検出方法。
【請求項6】
前記放電工程では、前記電池をSOC0%まで放電する、請求項1〜5の何れか一つに記載のリチウム二次電池状態検出方法。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−212513(P2012−212513A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76324(P2011−76324)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】