説明

リチウム二次電池及びその製造方法

【課題】エネルギー密度、サイクル寿命を向上させることが可能なリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】 正極、負極、非水電解液を有するリチウム二次電池であって、前記非水電解液に電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有するリチウム二次電池。正極、負極、非水電解液を有するリチウム二次電池であって、電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有する前記非水電解液に電圧を印加することにより、少なくとも正極または負極のいずれか一方に前記電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーが重合してなるポリマーが形成されているリチウム二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用およびその製造方法に関し、詳しくは、高エネルギー密度を持つ二次電池の充放電サイクル特性を改善し、内部インピーダンスの増加の少ないリチウム二次電池及びそのリチウム二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、大気中に含まれるCO2 ガス量が増加しつつある為、室温効果により地球の温暖化が生じる可能性が指摘されている。火力発電所は化石燃料などを燃焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換しているが、燃焼によりCO2 ガスを多量に排出するためあらたな火力発電所は、建設することが難しくなって来ている。したがって、火力発電所などの発電機にて作られた電力の有効利用として、余剰電力である夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて、これを電力消費量が多い昼間に使用して負荷を平準化する。いわゆるロードレベリングが提案されつつある。
【0003】
また、CO2 、NOx 、炭化水素などを含む大気汚染にかかわる物質を排出しないという特徴とを有する電気自動車用途では、高エネルギー密度の二次電池の開発が期待されている。さらに、ブック型パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサー、ビデオカメラ及び携帯電話等のポータブル機器の電源用途では、小型・軽量で高性能な二次電池の開発が急務になっている。
【0004】
このような小型・軽量で高性能な二次電池としては、充電時の反応で、リチウムイオンを層間からデインターカレートするリチウムインターカレーション化合物を正極物質に、リチウムイオンを炭素原子で形成される六員環網状平面の層間にインターカレートできるグラファイトに代表されるカーボン材料を負極物質に用いたロッキングチェアー型のいわゆる“リチウムイオン電池”の開発が進み、実用化されて一般的に使用されている。
【0005】
しかし、この“リチウムイオン電池”では、カーボン材料で構成される負極は理論的には炭素原子当たり最大1/6のリチウム原子しかインターカレートできないため、金属リチウムを負極物質に使用したときのリチウム一次電池に匹敵する高エネルギー密度の二次電池は実現できない。もし、充電時に“リチウムイオン電池”のカーボンからなる負極に理論量以上のリチウム量をインターカレートしようとした場合あるいは高電流密度の条件で充電した場合には、カーボン負極表面にリチウム金属がデンドライト(樹枝)状に成長し、最終的に充放電サイクルの繰り返しで負極と正極間の内部短絡に至る可能性がありグラファイト負極の理論容量を越える“リチウムイオン電池”では十分なサイクル寿命が得られていない。
【0006】
一方、金属リチウムを負極に用いる高容量のリチウム二次電池が高エネルギー密度を示す二次電池として注目されているが、実用化に至っていない。その理由は、充放電のサイクル寿命が極めて短いためである。充放電のサイクル寿命が極めて短い主原因としては、金属リチウムが電解液中の水分などの不純物や有機溶媒と反応して絶縁膜が形成されていたり、金属リチウム箔表面が平坦でなく電界が集中する箇所があり、これが原因で充放電の繰り返しによってリチウム金属がデンドライト状に成長し、負極と正極間の内部短絡を引き起こし寿命に至ることにあると、考えられている。
【0007】
また、上述のリチウムのデンドライトが成長して負極と正極が短絡状態となった場合、電池の持つエネルギーがその短絡部において短時間に消費されるため、電池が発熱したり、電解液の溶媒が熱により分解してガスを発生し、電池内の内圧が高まったりすることがある。いずれにしても、デンドライトの成長により、短絡による電池の損傷や寿命低下が引き起こされ易くなる。
【0008】
上述の金属リチウム負極を用いた二次電池の問題点である金属リチウムと電解液中の水分や有機溶媒との反応進行を抑えるために、負極にリチウムとアルミニウムなどからなるリチウム合金を用いる方法が提案されている。しかしながら、この場合、リチウム合金が硬いためにスパイラル状に巻くことができないのでスパイラル円筒形電池の作製ができないこと、サイクル寿命が充分に伸びないこと、金属リチウムを負極に用いた電池に匹敵するエネルギー密度は充分に得られないこと、などの理由から、広範囲な実用化には至っていないのが現状である。
【0009】
この他、充電時にリチウムと合金を形成する金属として、前記のアルミニウムや、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、鉛、ビスマス等が挙げられており、これら金属や、これら金属からなる合金、及び、これら金属とリチウムの合金を負極に用いた二次電池が、特許文献1乃至特許文献7に開示されている。
【0010】
しかし、これらの特許文献に記載の二次電池では負極の形状を明示しておらず、また上記合金材料を一般的な形状である箔状を含む板状部材として二次電池(リチウムを活物質とした二次電池)の負極として用いた場合、電極材料層における電池反応に寄与する部分の表面積が小さく、大電流での充放電が困難である。
【0011】
更に、上記合金材料を負極として用いた二次電池では、充電時のリチウムとの合金化による体積膨張、放出時に収縮が起こり、この体積変化が大きく、電極が歪みを受けて亀裂が入る。そして、充放電サイクルを繰り返すと微粉化が起こり、電極のインピーダンスが上昇し、電池サイクル寿命の低下を招くという問題があるために実用化には至っていないのが現状である。
【0012】
本発明者らは、以上のような問題を解決するために、シリコンやスズ元素からなるリチウム二次電池用負極として、特許文献8乃至特許文献13を提案している。
特許文献8ではリチウムと合金化しない金属材料の集電体上にシリコンやスズのリチウムと合金化する金属とニッケルや銅のリチウムと合金化しない金属から形成された電極層を形成した負極を用いたリチウム二次電池を提案している。特許文献9ではニッケルや銅等の元素とスズ等の元素との合金粉末から形成された負極を、特許文献10では電極材料層が平均粒径0.5〜60μmのシリコンやスズから成る粒子を35wt%以上含有し空隙率が0.10〜0.86で密度が1.00〜6.56g/cm3 の負極を用いたリチウム二次電池を提案している。特許文献11では非晶質相を有するシリコンやスズを有した負極を用いたリチウム二次電池を提案している。特許文献12では非化学量論組成の非晶質スズ−遷移金属合金粒子からなる負極を用いたリチウム二次電池を提案している。特許文献13では非化学量論組成の非晶質シリコン−遷移金属合金粒子からなる負極を用いたリチウム二次電池を提案している。
【0013】
しかし、上記提案では、リチウム挿入に伴う電気量に対するリチウム放出に伴う電気量の効率が黒鉛負極と同等の性能までは得られておらず、効率のさらなる向上が期待されていた。また、上記提案の電極は黒鉛電極より抵抗が高く、抵抗の低減が望まれていた。
【0014】
リチウム二次電池用の電極材料としてシリコンからなる微粉末を使用する場合や、結着剤として絶縁体樹脂を使用する場合において、電極のインピーダンスが高くなり、電池のサイクル寿命や、充放電の初回の効率が低下する。これを改善するために特許文献14で導電性高分子モノマーを電池内で重合させることが提案されている。しかし導電性高分子は可撓性に乏しく電極表面に重合形成した膜が剥がれたり、微粒子状に重合形成されるため均一な膜にならず電極材料表面に効果的に被覆させることが困難である。また非水電解液中の導電性高分子の濃度や電解重合時の電流密度によっては、形成した導電性高分子がセパレーターを貫通して短絡を引き起こしてしまうため十分な電池性能向上の効果が得られていない。
【特許文献1】特開平8−64239号公報
【特許文献2】特開平3−62464号公報
【特許文献3】特開平2−12768号公報
【特許文献4】特開昭62−113366号公報
【特許文献5】特開昭62−15761号公報
【特許文献6】特開昭62−93866号公報
【特許文献7】特開昭54−78434号公報
【特許文献8】米国特許6051340号明細書
【特許文献9】米国特許5795679号明細書
【特許文献10】米国特許6432585号明細書
【特許文献11】特開平11−283627号公報
【特許文献12】特開平2000−311681号公報
【特許文献13】特WO00/17949号公報
【特許文献14】特開2001−135350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、電極構造体及びリチウム二次電池の内部抵抗を低下させる、さらには充放電を繰り返した時内部抵抗の増加を抑制するものであって、リチウム二次電池のリチウム挿入に伴う電気量に対するリチウム放出に伴う電気量の効率を向上させ、エネルギー密度、サイクル寿命を向上させることが可能なリチウム二次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は、正極、負極、非水電解液を有するリチウム二次電池であって、前記非水電解液に電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有することを特徴とするリチウム二次電池である。
【0017】
また、本発明は、正極、負極、非水電解液を有するリチウム二次電池であって、電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有する前記非水電解液に電圧を印加することにより、少なくとも正極または負極のいずれか一方に前記電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーが重合してなるポリマーが形成されていることを特徴とするリチウム二次電池である。
【0018】
さらに、本発明は、正極、負極、非水電解液を有するリチウム二次電池の製造方法において、電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有する前記非水電解液に正極および負極から電圧を印加することにより、少なくとも正極または負極のいずれか一方に前記電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーからなるポリマーを形成する工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、リチウム二次電池のリチウム挿入に伴う電気量に対するリチウム放出に伴う電気量の効率を向上させ、エネルギー密度、サイクル寿命を向上させることが可能なリチウム二次電池及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、正極と、リチウム金属、リチウム合金あるいはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極と、溶媒と溶質とからなる非水電解液とを備えた非水電解液二次電池において、前記非水電解液が電解還元重合モノマーと電解酸化重合モノマーの両方を含有することを特徴とするものである。
【0021】
前記非水電解液に含有される電解酸化重合モノマーの含有量は0.01wt%以上10wt%以下、好ましくは0.05〜5.0wt%の範囲である。電解還元重合モノマーの含有量は0.01wt%以上10wt%以下、好ましくは0.05〜5.0wt%の範囲である。
【0022】
また、本発明は、前記非水電解液に電解還元重合モノマーと電解酸化重合モノマーの両方を含有させ、電池の負極と正極間に含有モノマーが重合する電圧を印加させること、または電池使用時の充放電の過程で重合させることにより、電極あるいは電極活物質表面にポリマーを形成させるものである。
【0023】
電極材料表面や電極構造体表面に電解酸化重合ポリマーと電解還元重合ポリマーの両方を被覆させ、電解酸化重合ポリマーである導電性ポリマーによる導電パスを電極に形成することにより、電極内部抵抗を下げることができ、充放電を繰り返した時の電極内の抵抗の上昇を抑制することができる。さらに正極及び負極活物質表面に形成されたポリマーによる被覆膜は、活物質と電解液の直接接触を抑制し、Liと電解液の反応や正極活物質の溶出を防ぐ。また電流集中が起こることも防ぐことができる。電解酸化重合モノマーを重合させた導電性ポリマーは可撓性に乏しく、またセパレーターを貫通して短絡を引き起こすなどの問題が発生するが、電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを同時に重合させることにより、より均一で導電性を有し可撓性のあるポリマーを形成できる。
【0024】
これらにより、リチウム二次電池のリチウム挿入に伴う電気量に対するリチウム放出に伴う電気量の効率を向上させ、エネルギー密度、サイクル寿命を向上させることが可能となる。
【0025】
本発明者らは、活物質としてシリコン、又はスズ、及びこれらの少なくとも一種類を主構成元素として含む合金粉末を用いた負極において、電解酸化重合ポリマーと電解還元重合ポリマーを両方形成することで、充放電を繰り返すことによる電池内部インピーダンスの増加の少ない高容量リチウム二次電池を提供できることを見出した。
【0026】
以下、本発明の電池、これを構成する各部材の材料について、その態様に沿って具体的に説明する。
[電極構造体]
図1は、本発明のリチウム二次電池における負極材料微粉末から成る電極構造体103の一実施態様の断面を模式的に示す概念図である。図1(a)は集電体100上に、負極材料微粉末から成る電極材料層101、そしてその表面に電解重合ポリマー層(皮膜)102が設けられた電極構造体103である。図1(b)では、負極材料微粉末から成る電極材料層101が設けられた電極構造体103が、負極活物質104と導電補助材105と結着剤106から構成されている。これらの電極材料層101を構成している負極活物質104や導電補助材105の表面も電化重合ポリマーにより被覆されていると推測できる。尚、同図では、集電体100の片面のみに電極材料層101が設けられているが、電池の形態によっては集電体100の両面に設けることができる。
【0027】
以下では、図1(b)の電極構造体103の製造方法の一例について説明する。
負極活物質104、導電補助材105、結着剤106を混合し、適宜、溶媒を添加して粘度を調整して、ペーストを調製する。ついで、ペーストを集電体100上に塗布し、乾燥して電極材料層101を形成する。必要に応じてロールプレス等で厚みを調整して形成される。
【0028】
(集電体100)
集電体100は、充電時の電極反応で消費する電流を効率よく供給する、あるいは放電時に発生する電流を集電する役目を担っている。特に電極構造体103を二次電池の負極に適用する場合、集電体100を形成する材料としては、電気伝導度が高く、且つ、電池反応に不活性な材質が望ましい。好ましい材質としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレススチール、チタン、白金から選択される一種類以上の金属材料から成るものが挙げられる。より好ましい材料としては安価で電気抵抗の低い銅が用いられる。また、集電体の形状としては、板状であるが、この“板状”とは、厚みについては実用の範囲上で特定されず、厚み約100μm程度もしくはそれ以下のいわゆる“箔”といわれる形態をも包含する。また、板状であって、例えばメッシュ状、スポンジ状、繊維状をなす部材、パンチングメタル、エキスパンドメタル等を採用することもできる。
【0029】
(電極材料層101)
電極材料層101は、負極材料微粉末から構成される層で、電解重合ポリマーで被覆された合金粉末と導電補助材や結着剤としての高分子材などの複合化された層である。
【0030】
前記複合化された層は、前記負極材料微粉末に、適宜、導電補助材、結着剤を加え混合し、塗布し、加圧成形して形成される。容易に塗布できるようにするために、上記混合物に溶剤を添加してペースト状にすることも好ましい。上記の塗布方法としては、例えば、コーター塗布方法、スクリーン印刷法が適用できる。また、溶剤を添加することなく上記主材と導電補助材と結着剤を、あるいは結着剤を混合せずに上記負極材料と導電補助材のみを、集電体上に加圧成形して、電極材料層を形成することも可能である。導電補助材としては黒鉛粉末を用いる。黒鉛粉末はアセチレンブラックやケッチェンブラックなどの非晶質炭素や黒鉛構造炭素などの炭素材を用いることができる。上記導電材の形状として好ましくは、球状、フレーク状、フィラメント状、繊維状、スパイク状、針状、などが挙げられ、より好ましくは、これらの形状から選択される異なる二種類以上の形状を採用することにより、電極材料層形成時のパッキング密度を上げて電極のインピーダンスを低減することができる。
【0031】
Si元素含有負極材料(より具体的にはSi微粉末もしくはSi合金微粉末)は、従来の黒鉛等の炭素材料に比べて、充電時の体積膨張があるために、上記負極材料を主に用いて集電体上に作製した活物質層(電極材料層)の密度は、高すぎると充電時の体積膨張で集電体とのはがれを引き起こし、低すぎると粒子間の接触抵抗が増し集電能が低下するので、0.9〜2.5g/cm3 の範囲が好ましく、1.0〜1.8g/cm3 の範囲がより好ましい。
【0032】
結着剤としては、有機ポリマーが好ましく、非水溶性ポリマーと水溶性ポリマーのどちらでも使用可能である。非水溶性ポリマーの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリフッ化ビリニデン、テトラフルオロエチレンポリマー、フッ化ビリニデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂、ポリエチレン−ポリビニルアルコール共重合体、スチレン−ブタジエンラバー、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。水溶性ポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール、(エチレン成分の少ない)エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0033】
上記結着剤の電極材料層を占める割合は、結着剤としての機能を発揮し、かつ充電時により多くの活物質量を保持するために、電極材料層に対して1〜20wt%の範囲とすることが好ましく、5〜15wt%の範囲とすることがより好ましい。
【0034】
(電解重合ポリマー層102)
本発明の要点である電解重合ポリマー層102は、非水電解液に含有されている電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーが電圧を印加することにより、重合してなるポリマーからなる。電解重合ポリマー層102は、非水電解液に加えておいたモノマーを電池組み立て後に電極表面上に重合して形成されるが、初回の充放電前に電圧を印加させることで意図的にモノマーを重合させても良いし、電池の充放電の過程で形成させることもできる。
【0035】
[二次電池]
次に、本発明に係る二次電池について説明する。
本発明の二次電池は、上述した特徴を有する電極構造体を用いた負極、電解質及び正極を具備し、リチウムの酸化反応及びリチウムイオンの還元反応を利用したものである。図2は、本発明のリチウム二次電池の基本構成を示した図である。図2の二次電池において、201は本発明の電極構造体を使用した負極、202は正極、203はイオン伝導体、204は負極端子、205は正極端子、206は電槽(ハウジング)である。
【0036】
上記二次電池は、十分に露点温度が管理された乾燥空気あるいは乾燥不活性ガス雰囲気下で、負極と正極の間に短絡防止のセパレーターとして微孔性高分子フィルムをはさんで電極群を形成した後、電槽に挿入し、各電極と各電極端子とを接続し、電解液を注入した後、電槽を密閉して電池を組み立てる。
【0037】
(正極202)
前述した本発明の電極構造体を負極に用いたリチウム二次電池の対極となる正極202は、少なくともリチウムイオンのホスト材となる正極材料から成り、好ましくはリチウムイオンのホスト材となる正極材料から形成された層と集電体から成る。さらに該正極材料から形成された層は、リチウムイオンのホスト材となる正極材料と結着剤、場合によってはこれらに導電補助材を加えた材料から成るのが好ましい。
【0038】
本発明のリチウム二次電池に用いるリチウムイオンのホスト材となる正極材料としては、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、遷移金属窒化物、リチウム−遷移金属酸化物、リチウム−遷移金属硫化物、リチウム−遷移金属窒化物が好ましく、リチウムを含有するリチウム−遷移金属酸化物、リチウム−遷移金属硫化物、リチウム−遷移金属窒化物がより好ましい。遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、遷移金属窒化物の遷移金属元素としては、例えば、d殻あるいはf殻を有する金属元素であり、Sc、Y、ランタノイド、アクチノイド、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pb、Pt、Cu、Ag、Auが好適に用いられる。
【0039】
上記正極活物質の形状が粉末である場合には、結着剤を用いるか、焼結あるいは蒸着させて正極活物質層を集電体上に形成して正極を作製する。また、上記正極活物質粉の導電性が低い場合には、前記電極構造体の活物質層の形成と同様に、導電補助材を混合することが適宜必要になる。上記導電補助材並びに結着剤としては、前述した本発明の電極構造体103に用いるものが同様に使用できる。
【0040】
上記正極に用いる集電体材料としては、電気伝導度が高く、且つ、電池反応に不活性な材質であるアルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル、白金が好ましく、中でもアルミニウムが安価で電気伝導性が高いのでより好ましい。また、集電体の形状としては、板状であるが、この“板状”とは、厚みについては実用の範囲上で特定されず、厚み約100μm程度もしくはそれ以下のいわゆる“箔”といわれる形態をも包含する。また、板状であって、例えばメッシュ状、スポンジ状、繊維状をなす部材、パンチングメタル、エキスパンドメタル等を採用することもできる。
【0041】
(イオン伝導体203)
本発明のリチウム二次電池のイオン伝導体には、電解液(電解質を溶媒に溶解させて調製した電解質溶液)を保持させたセパレーターなどのリチウムイオンの伝導体が使用できる。
【0042】
本発明の二次電池に用いるイオン伝導体の導電率は、25℃における値として、1×10-3S/cm以上であることが好ましく、5×10-3S/cm以上であることがより好ましい。
【0043】
電解質としては、例えば、リチウムイオン(Li+ )とルイス酸イオン(BF4-、PF6-、AsF6-、ClO4-、CF3 SO3-、BPh4-(Ph:フェニル基))からなる塩、及びこれらの混合塩、が挙げられる。上記塩は、減圧下で加熱したりして、十分な脱水と脱酸素を行なっておくことが望ましい。
【0044】
上記電解質の溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピレンカーボネイト、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、ジクロロエタン、ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、クロロベンゼン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、スルホラン、ニトロメタン、ジメチルサルファイド、ジメチルサルオキシド、ギ酸メチル、3−メチル−2−オキダゾリジノン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−プロピルシドノン、二酸化イオウ、塩化ホスホリル、塩化チオニル、塩化スルフリル、又は、これらの混合液が使用できる。
【0045】
上記溶媒は、例えば、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、五酸化リン、塩化カルシウムなどで脱水するか、溶媒によっては、不活性ガス中でアルカリ金属共存下で蒸留して不純物除去と脱水をも行なうのがよい。
【0046】
(非水電解液)
本発明は、リチウム二次電池に用いられる非水電解液に特徴を有し、該非水電解液に電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有することを特徴とする。
【0047】
電解酸化重合モノマーには、ピロール、アニリン、チオフェン及びそれらの誘導体から成る群から選択される1種類以上のモノマーもしくはオレゴマーが用いられる。
電解還元重合モノマーには、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、メチレンマロン酸エステル、α−シアノアクリル酸エステル、ニトロエチレン、ビニレンカーボネートから成る群から選択される1種類以上のモノマーもしくはオレゴマーが用いられる。
【0048】
電解液へのモノマーの添加量が少なすぎると効果がなく、多すぎると電解液のイオン伝導度を低下させ、充電時に形成される重合被膜の厚みが厚くなり電極の抵抗を高めてしまう。本発明者らの実験では電解酸化重合モノマーを7.5wt%添加すると導電性ポリマーにより短絡を引き起こした。また、電解還元重合モノマーを5.0wt%添加すると電池内部抵抗の増加により、初回の充電に対する放電量が低下した。そして電解酸化重合モノマーは0.2wt%の添加でも効果があることを確認した。従って、モノマーの非水電解液への最適な添加量は非水電解液のイオン伝導度、電極の抵抗・厚み・凹凸、セパレーターの多孔度・厚み、重合時の印加電圧・電流密度などによって左右されるが、電解酸化重合モノマー、電解還元重合モノマーの電解液中の含有量は、それぞれ0.01〜10wt%の範囲が好ましい。より好ましくは0.05〜5wt%である。
【0049】
さらに、電解酸化重合モノマーより電解還元重合モノマーを多く添加するとより均一なポリマー皮膜を形成しやすいため、非水電解液に含有される電解酸化重合モノマー(MO )と電解還元重合モノマー(MR )の比率(MR /MO )は、重量比で1<MR /MO <50の範囲にすることが好ましい。より好ましくは、5<MR /MO <25である。
【0050】
また、本発明のリチウム二次電池の製造方法は、電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有する前記非水電解液に正極および負極から電圧を印加することにより、少なくとも正極または負極のいずれか一方に前記電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーからなるポリマーを形成する工程を有することを特徴とする。
【0051】
本発明では正極および負極間に電圧を印加することにより、非水電解液に含有されている電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーは電極表面で電子を受け渡しすることにより重合してポリマーを形成する。一方、重合開始剤を添加し重合する方法も考えられるが、重合開始剤等を添加すると電極表面ではなく、電解液中で重合反応が始まる可能性があり、セパレーターの細孔を塞いでしまう等の弊害が出るため好ましくない。
【0052】
また、本発明の電池では、3V以上の一定電圧を電池に所定の時間印加することによって、ポリマーを形成させることができる。4V級の二次電池の場合、一定電流密度で4.2V程度の充電終止電圧まで充電し、その後その電圧において定電圧のまま所定の時間充電を続けるという定電流定電圧方式の充電を行えば、容易に、ポリマーを形成させることができる。また、放電時にも3V以上の一定電圧を電池に所定の時間印加することになるので、ポリマーを形成させることができる。
【0053】
(セパレーター)
前記セパレーターは、二次電池内で負極201と正極202の短絡を防ぐ役割がある。また、電解液を保持する役割を有する場合もある。
【0054】
セパレーターとしては、リチウムイオンが移動できる細孔を有し、かつ、電解液に不溶で安定である必要がある。したがって、セパレーターとしては、例えば、ガラス、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、フッ素樹脂、などの不織布あるいはミクロポア構造の材料が好適に用いられる。また、微細孔を有する金属酸化物フィルム、又は、金属酸化物を複合化した樹脂フィルムも使用できる。
【0055】
[電池の形状と構造]
本発明の二次電池の具体的な形状としては、例えば、扁平形、円筒形、直方体形、シート形などがある。又、電池の構造としては、例えば、単層式、多層式、スパイラル式などがある。その中でも、スパイラル式円筒形の電池は、負極と正極の間にセパレーターを挟んで巻くことによって、電極面積を大きくすることができ、充放電時に大電流を流すことができるという特徴を有する。また、直方体形やシート形の電池は、複数の電池を収納して構成する機器の収納スペースを有効に利用することができる特徴を有する。
【0056】
図3に示すスパイラル式円筒型の二次電池では、正極集電体304上に形成された正極活物質(材料)層305を有する正極306と、負極集電体301上に形成された負極活物質(材料)層302を有した負極303が、例えば少なくとも電解液を保持したセパレーターで形成されたイオン伝導体307を介して対向し、多重に巻回された円筒状構造の積層体を形成している。当該円筒状構造の積層体が、負極端子としての負極缶308内に収容されている。また、当該負極缶308の開口部側には正極端子としての正極キャップ309が設けられており、負極缶内の他の部分においてガスケット310が配置されている。円筒状構造の電極の積層体は絶縁板311を介して正極キャップ側と隔てられている。正極306については正極リード313を介して正極キャップ309に接続されている。また負極303については負極リード312を介して負極缶308と接続されている。正極キャップ側には電池内部の内圧を調整するための安全弁314が設けられている。前述したようにイオン伝導体307には、電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーの両方を含み、電圧を印加することで正極306の活物質層305、負極303の活物質層302に、前述した本発明の重合ポリマーが被覆される。
【0057】
以下では、図3に示した電池の組み立て方法の一例を説明する。
(i)負極303と成形した正極306の間に、セパレーター307を挟んで、負極缶308に組み込む。
(ii)モノマーを添加した電解液を注入した後、正極キャップ309とガスケット310を組み立てる。
(iii)上記(ii)をかしめることによって、電池は完成する。
【0058】
なお、上述したリチウム電池の材料調製、及び電池の組み立ては、水分が十分除去された乾燥空気中、又は乾燥不活性ガス中で行なうのが望ましい。
上述のような二次電池を構成する部材について説明する。
【0059】
(ガスケット)
ガスケット310の材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、各種ゴムが使用できる。電池の封口方法としては、図2のようにガスケットを用いた「かしめ」以外にも、ガラス封管、接着剤、溶接、半田付けなどの方法が用いられる。また、図3の絶縁板311の材料としては、各種有機樹脂材料やセラミックスが用いられる。
【0060】
(外缶)
電池の外缶として、電池の負極缶308、及び正極キャップ309から構成される。外缶の材料としては、ステンレススチールが好適に用いられる。特に、チタンクラッドステンレス板や銅クラッドステンレス板、ニッケルメッキ鋼板などが多用される。
【0061】
図3では負極缶308が電池ハウジング(ケース)と端子を兼ねているため、上記のステンレススチールが好ましい。ただし、正極缶または負極缶が電池ハウジングと端子を兼用しない場合には、電池ケースの材質としては、ステンレススチール以外にも亜鉛などの金属、ポリプロピレンなどのプラスチック、または、金属もしくはガラス繊維とプラスチックの複合材を用いることができる。
【0062】
(安全弁)
リチウム二次電池には、電池の内圧が高まった時の安全対策として、安全弁が備えられている。安全弁としては、例えば、ゴム、スプリング、金属ボール、破裂箔などが使用できる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0064】
実施例1
〔電極構造体の作製〕
本例では、電解酸化重合モノマーにチオフェンを電解還元重合モノマーにビニレンカーボネートを用いてリチウム二次電池を作製した。
【0065】
〔負極の作製〕
シリコン−スズ合金の微粉末74wt%と、導電補助材として、黒鉛粉末(直径が約5μmで厚みが約1μmの略円板状の黒鉛粉末)10.0wt%と、黒鉛粉末(略球形であってその平均粒径は5μm)5.0wt%と、結着剤(バインダー)としてのポリアミック酸11.0wt%とを混合し、N−メチル−2ピロリドンを添加して混練し、ペーストを調製した。
【0066】
次に、そのように調製したペーストを、15μm厚の電界銅箔(電気化学的に製造された銅箔)の上にコーターで塗布し、乾燥させ、ロールプレスにて厚みを調製し、厚み25μmの活物質層の電極構造体を作製した。
【0067】
そして、その電極構造体を2.5cm×2.5cmのサイズに切り出し、銅タブを溶接して負極とした。
〔正極の作製〕
(i)クエン酸リチウムと硝酸コバルトを1:3のモル比で混合し、クエン酸を添加してイオン交換水に溶解した水溶液を、200℃空気気流中に噴霧して、微粉末のリチウム−コバルト酸化物の前駆体を調製した。
(ii)上記(i)で得られたリチウム−コバルト酸化物の前駆体を、更に、酸素気流中で850℃で熱処理した。
(iii)上記(ii)において調製したリチウム−コバルト酸化物に、黒鉛粉3重量%とポリフッ化ビリニデン粉5wt%を混合した後、N−メチル−2−ピロリドンを添加してペーストを作製した。
(iv)上記(iii)で得られたペーストを、厚み20ミクロンのアルミニウム箔の集電体304の両面に塗布乾燥した後、ロールプレス機で片側の正極活物質層の厚みを90ミクロンに調整した。さらに、アルミニウムのリードを超音波溶接機で接続し、150℃で減圧乾燥して正極を作製した。
【0068】
〔リチウム挿入脱離量の評価手順〕
次に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを3:7の体積比で混合して得た有機溶媒0.1リットルに、LiPF6 の塩を1M(モル/リットル)(15.19g)溶解させ、さらにチオフェンを0.2wt%(0.24g)とビニレンカーボネートを5.0wt%(6.13g)加えて電解液を調製した。そして、この電解液を25μm厚の多孔質ポリエチレンフィルムにしみ込ませ、該フィルムの一方の面には上述した負極を配置し、他方の面には上述した正極を配置して、これらの電極でポリエチレンフィルムを挟み込むようにした。次に、平坦性を出すために両側からガラス板で挟み込み、さらにアルミラミネートフィルムにて被覆して評価用セルを作製した。
【0069】
なお、このアルミラミネートフィルムは、最も外側の層がナイロンフィルムで、真ん中の層が20μm厚のアルミニウム箔で、内側の層がポリエチレンフィルムである、3層構成のフィルムを使用した。なお、各電極の引き出し端子部分はラミネートせず融着して密封した。
【0070】
そして、上記二次電池としての機能を評価するために、リチウムの挿入脱離サイクル試験(充放電サイクル試験)を行った。
すなわち、上述の評価用セルを充放電装置に接続し、始めに電流密度3.2mA/cm2 で評価用セルを充電し、次に電圧4.2Vに達したところで電圧を一定に保ち、電流が0.16mA/cm2 になるまで充電した。ついで、電流密度3.2mA/cm2 で評価用セルを電圧2.5Vに達するまで放電した。この時の充電電気量と放電電気量を測定し、電池の充放電効率を評価した。
【0071】
比較例1
電解液にモノマーを添加していない以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
比較例2
電解液に電解酸化重合モノマーとしてチオフェンを0.2wt%添加し、電解還元重合モノマーを添加しないで、他は実施例1と同様にして電池を作製した。
【0072】
比較例3
電解液に電解酸化重合モノマーとしてチオフェンを7.5wt%添加し、電解還元重合モノマーを添加しないで、他は実施例1と同様にして電池を作製した。
【0073】
比較例4
電解液に電解還元重合モノマーとしてビニレンカーボネートを5.0wt%添加し、電解酸化重合モノマーを添加しないで、他は実施例1と同様にして電池を作製した。
【0074】
(電極構造体のリチウム挿入脱離の性能評価結果)
下記の表1は、実施例及び比較例について、初回と50サイクル目のリチウム挿入量に対する脱離量をパーセンテージで表した充放電効率を示したものである。
【0075】
【表1】

【0076】
表1より、比較例3は電解液に添加した電解酸化重合モノマー量が多いため、重合形成した導電性ポリマーがセパレーターを貫通して短絡した。電解液にモノマーを5.0wt%以上添加した実施例1、比較例4はモノマーを添加していない比較例1よりも初回の充放電効率が低下した。このように、モノマー添加量が多すぎると電解液のイオン伝導度が低下や、充電時に形成される重合被膜の厚みが厚くなり電極の抵抗が高くなるなどの悪影響を及ぼしてしまう。しかし、50サイクル目の充放電効率をみると、実施例1では電解還元重合モノマーと電解酸化重合モノマーを電解液に同時に添加した効果により、比較例と比べて最も高く劣化が進んでいない。
【0077】
電解酸化重合モノマー添加量は0.2wt%で十分効果が得られることから、電解酸化重合モノマーは電解還元重合モノマーより少量添加すれば良いことが分かる。これらのことから、モノマーの添加量は0.01〜10.0wt%が好ましい。より好ましくは0.05〜5.0wt%である。そして電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーの比率は 1<電解還元重合モノマーの含有量/電解酸化重合モノマーの含有量<50 の範囲が好ましい。
【0078】
図4は、実施例1及び比較例1、2における二次電池のリチウム挿入脱離サイクル試験の結果を、横軸にサイクル数、縦軸にリチウム脱離量が最大のサイクルを100%として、各サイクルのリチウム脱離量を示したグラフである。図4に示すように本発明の電池(実施例1)と、モノマーを非水電解液に加えていない比較例1の電池及びチオフェンのみを非水電解液に加えた比較例2の電池ではサイクルを繰り返すと電池の容量維持率は、本発明の電池のほうが優れている。また実施例1は比較例1、比較例2よりも初回の充放電効率は低下するが、2サイクル目、3サイクル目で放電量が増加するため、3サイクル目での放電量は比較例1、比較例2とほぼ同量である。以上より、実施例1にて作製した二次電池は、高容量を維持しつつ、サイクル寿命が長くなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のリチウム二次電池は、リチウム二次電池内抵抗を軽減することができ、高エネルギー密度でサイクル特性に優れているので、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、ノートPC等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明における二次電池の電極構造体の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の二次電池(リチウム二次電池)の一実施態様の断面を模式的に示す概念図である。
【図3】スパイラル式円筒型電池の構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1及び比較例1、2の電極構造体の充放電サイクル特性を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
100 集電体
101 電極材料層
102 電解重合ポリマー層
103 電極構造体
104 活物質
105 導電材
106 結着剤
201、303 負極
202、306 正極
203、307 イオン伝導体
204 負極端子
205 正極端子
206 電槽(電池ハウジング)
301 負極集電体
302 負極活物質層
304 正極集電体
305 正極活物質層
308 負極缶(負極端子)
309 正極キャップ(正極端子)
310 ガスケット
311 絶縁板
312 負極リード
313 正極リード
314 安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、非水電解液を有するリチウム二次電池であって、前記非水電解液に電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有することを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項2】
正極、負極、非水電解液を有するリチウム二次電池であって、電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有する前記非水電解液に電圧を印加することにより、少なくとも正極または負極のいずれか一方に前記電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーが重合してなるポリマーが形成されていることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項3】
前記非水電解液に含有される電解酸化重合モノマーの含有量は0.01wt%以上10wt%以下、および電解還元重合モノマーの含有量は0.01wt%以上10wt%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記非水電解液に含有される電解酸化重合モノマー(MO )と電解還元重合モノマー(MR )の比率(MR /MO )は、1<MR /MO <50の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記電解酸化重合モノマーは、ピロール、アニリン、チオフェン及びそれらの誘導体から成る群から選択される1種類以上のモノマーもしくはオレゴマーである請求項1乃至4のいずれかの項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
電解還元重合モノマーは、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、メチレンマロン酸エステル、α‐シアノアクリル酸エステル、ニトロエチレン、ビニレンカーボネートから成る群から選択される1種類以上のモノマーもしくはオレゴマーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記負極が少なくともSi元素を含有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
正極、負極、非水電解液を有するリチウム二次電池の製造方法において、電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーを含有する前記非水電解液に正極および負極から電圧を印加することにより、少なくとも正極または負極のいずれか一方に前記電解酸化重合モノマーと電解還元重合モノマーからなるポリマーを形成する工程を有することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−216276(P2006−216276A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25588(P2005−25588)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】