説明

リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池

【課題】高温スウェリングを抑制することができるリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】環状エステルを含むエステル系溶媒と下記化学式1のニトリル系溶媒を含む有機溶媒、及びリチウム塩を含む電解液を提供する。


(化学式1中、Rは、C乃至C10の脂肪族ヒドロカーボンもしくはハロゲン化脂肪族ヒドロカーボン、又はC乃至C10の芳香族ヒドロカーボンもしくはハロゲン化芳香族ヒドロカーボンである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池に係り、より詳しくは、高温での保存特性及びスウェリング特性に優れたリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、先端電子産業の発達により電子装備の少量化及び軽量化が可能になるに伴い、携帯用電子機器の使用が増大している。このような携帯用電子機器の電源として高いエネルギー密度を有する電池の必要性が増大し、リチウム二次電池の研究が活発に行われている。通常、リチウム二次電池の正極活物質にはリチウム−遷移金属酸化物が用いられ、負極活物質には炭素(結晶質又は非晶質)又は炭素複合体が用いられている。前記活物質を適当な厚さと長さで集電体に塗布したり、又は活物質自体をフィルム形状に塗布し、絶縁体のセパレータと共に巻いたり積層して電極群を形成した後、缶又はこれと類似した容器に入れ、電解液を注入して二次電池を製造する。
【0003】
前記電解液は通常、リチウム塩と有機溶媒を含む。この有機溶媒には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネートと、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネートからなる2乃至5成分系の溶媒を用いている。しかし、前記の溶媒は高温でのスウェリング現象が過度に発生する劣悪なスウェリング特性を示すという問題点があった。前記スウェリング現象とは、高温で電池内部の電解液が分解することによって発生するガスにより、電池が特定方向に膨らむなど特定面の中心部が変形する現象を意味する。このようなスウェリング現象は、リチウムポリマー電池の場合にはリチウムイオン電池に比べて激しくはないが、正極活物質としてニッケル系列活物質(例えば、LiNiMO、M=Co、Mn、Al、P、Fe、Mgなどであり、一つ以上の元素からなる。)を用いる場合に依然として問題となっている。
【0004】
このようなスウェリング現象を抑制するために最近は、高沸点であり高い誘電率を有するγ−ブチロラクトンを用いた溶媒に関する試みが多く行われている。
【0005】
このγ−ブチロラクトンは、主にエチレンカーボネートと混合して用いるが、この混合溶媒は、高粘度であり、セパレータに対する湿潤性に問題があるため、さらにその他の低沸点、低誘電率溶媒を混合して用いることが多い。しかし、この場合も依然として高温スウェリング現象の問題点を有している(特許文献1〜7及び非特許文献1)。
【0006】
また、スウェリング現象を抑制するための方法として、特許文献8にはポリエチレン性不飽和モノマー物質(polyethylenicially unsaturated monomoeric material)またはプレポリモノマー物質(prepolymonomeric material)を含む高分子電解液が記述されており、特許文献9にはビニル-エーテルのコポリマー生成物の架橋-硬化したポリエーテルを含むポリマー電解液が記述されている。また、特許文献10にはシンナメートエステルが架橋された化合物とポリエチリレンオキシドなどを含む高分子電解液が記述されており、特許文献11にはアクリロイルに-変性されたポリアルキレンオキシドを含む高分子電解液が記述されている。
【0007】
つまり、従来は、主鎖がポリ(アルキレンオキシド)またはポリアルキレン単位で行われた多官能性モノマーの架橋を通じて高温スウェリングを抑制しようとしたが、性能上の限界があった。
【0008】
特に、最近、より高容量電池を製造するために従来の正極活物質に主に用いられていたLiCoOなどのコバルト系列化合物に、理論容量が非常に大きいリチウムニッケル系列化合物を混合して正極活物質として用いているが、この正極活物質を既存のカーボネート系溶媒を使用した電解液電池に適用する場合、高温スウェリング現象が過度に発生するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】日本国特開2000−235868号公報
【特許文献2】米国特許第5,079,109号
【特許文献3】米国特許第5,272,022号
【特許文献4】米国特許第5,552,243号
【特許文献5】米国特許第5,521,017号
【特許文献6】米国特許第6,117,596号
【特許文献7】米国特許第5,851,693号
【特許文献8】米国特許第4,830,939号
【特許文献9】米国特許第4,886,716号
【特許文献10】米国特許第4,970,012号
【特許文献11】米国特許第4,908,283号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“New thin lithium−ion batteries using a liquid electrolyte with thermal stability”Journal of Power sources, 97−98, 677(2001), Notio Takami et al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、高温スウェリングを抑制することができるリチウム二次電池用電解液を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記電解液を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、環状エステルを含むエステル系溶媒70乃至95体積%と下記の化学式1のニトリル系溶媒5乃至30体積%を含む非水性有機溶媒、及びリチウム塩を含むリチウム二次電池用電解液を提供する。
【化1】

【0014】
(式中、Rは、C乃至C10の脂肪族ヒドロカーボンもしくはハロゲン化脂肪族ヒドロカーボン、又はC乃至C10の芳香族ヒドロカーボンもしくはハロゲン化芳香族ヒドロカーボンである。)
本発明はまた、前記電解液と、リチウムを挿入及び脱離することができる正極活物質を含む正極と、リチウムを挿入及び脱離することができる負極活物質を含む負極と、を有してなるリチウム二次電池を提供する。好ましくは、正極活物質はニッケルを含む化合物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電解液は、既存のカーボネート系の電解液に比べて高温での保存特性及びスウェリング特性を向上させることができ、この電解液を用いたリチウム二次電池は、容量、効率、低温、寿命などの特性において従来のものと同等以上の性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のリチウム二次電池の一実施形態を概略的に示した断面図である。
【図2】本発明の実施例7乃至10及び比較例1によって製造された電池のサイクル寿命特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電解液は、環状エステルを含むエステル系溶媒とニトリル系溶媒を含む非水性有機溶媒、及びリチウム塩を含む。
【0018】
前記ニトリル系溶媒は、下記の化学式1で示される化合物である。
【化2】

【0019】
前記化学式1で、Rは、C乃至C10の脂肪族ヒドロカーボンもしくはハロゲン化脂肪族ヒドロカーボン、又はC乃至C10の芳香族ヒドロカーボンもしくはハロゲン化芳香族ヒドロカーボンである。好ましくは、C乃至Cの脂肪族ヒドロカーボンまたはハロゲン化脂肪族ヒドロカーボンであり、より好ましくは、C乃至Cの脂肪族ヒドロカーボンまたはハロゲン化脂肪族ヒドロカーボンである。このように、ヒドロカーボンでアルキル基の数字が高い、つまり、高級アルキルへ行くほど融点が高くなって安全性が向上し、また、芳香族よりは脂肪族ヒドロカーボンの場合に分解が少なく行われ、より好ましい。前記化学式1でRが不飽和ヒドロカーボン、例えば、メタクリレートの場合には電解液の溶媒として使用できないので好ましくない。
【0020】
前記ニトリル系溶媒の代表的な例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル(propionitrile)、ブチロニトリル(butyronitrile)、バレロニトリル(valeronitrile)、カプリロニトリル(caprylonitrile)、ヘプタンニトリル(heptanenitrile)、シクロペンタンカーボニトリル、シクロヘキサンカーボニトリル、2−フルオロベンゾニトリル(2-fluorobenzonitrile)、4−フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、2−クロロベンゾニトリル、4−クロロベンゾニトリル、ジクロロベンゾニトリル、トリクロロベンゾニトリル、2−クロロ−4−フルオロベンゾニトリル、4−クロロ−2−フルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル(phenylacetonitrile)、2−フルオロフェニルアセトニトリル及び4−フルオロフェニルアセトニトリルからなる群より選択される一つ以上の溶媒が好ましい。ニトリル系溶媒は、粘度が低くて誘電率が高いため、スウェリング現象を抑制することができる。
【0021】
本発明の電解液は、前記化学式1のニトリル系溶媒を非水有機溶媒中、5乃至30体積%含み、より好ましくは、10乃至25体積%含む。前記ニトリル系列溶媒を5体積%未満で含む場合にはスウェリング特性の改善効果がないという問題点があり、30体積%を超える場合には電池性能に問題点がある。したがって、アセトニトリルを使用することが記載されている日本特許公開2000-124077号ではアセトニトリルを60体積%以上過剰に使用するので、電池性能上の問題及び安全性低下の問題点を防止することができなくなり、好ましくない。また、米国特許第6,190,804号にはニトリルを固体電解液製造時に溶媒として用いることができるという言及がなされているだけで、ニトリル系列溶媒の使用量などに関する言及は全くないので、この特許内容から本願発明の効果を期待することは難しい。
【0022】
本発明の電解液における非水性有機溶媒には、前記ニトリル系溶媒5乃至30体積%以外に環状エステルを含むエステル系溶媒が70乃至95体積%含まれる。前記環状エステルとしては、エチレンカーボネートが好ましく、該エチレンカーボネートはエステル系溶媒中に10乃至40体積%含まれることが好ましく、10乃至15体積%含まれることがより好ましい。エチレンカーボネートの含量が40体積%を超える場合にはスウェリング特性が悪化し、電池性能が劣化する傾向があり、また、10体積%未満である場合には電池性能が劣化する傾向にある。日本国特開7-320748号では、エチレンカーボネートを25乃至95体積%で使用することが記載されているが、40体積%を超えて過剰に使用する場合があるので、スウェリング特性の悪化及び電池性能の劣化の問題点を完全に解決しようとするものではないと考えられる。
【0023】
したがって、本発明の電解液に用いられる非水性有機溶媒中のうちの一つである環状エステルを含むエステル系溶媒の全体含量70乃至95体積%のうち、環状エステルであるエチレンカーボネートは10乃至40体積%含まれることが好ましく、10乃至15体積%含まれることがより好ましい。また、エチレンカーボネート以外の環状エステルとして、エステル系溶媒中、好ましくは30乃至85体積%、より好ましくは55乃至85体積%の範囲で、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-ヴァレロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-ヴァレロラクトン、及びε−カプロラクトンからなる群より選択される一つまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0024】
本発明の電解液はまた、鎖状エステルをさらに含むこともできる。この時の鎖状エステルの含量は、環状エステルとニトリル系溶媒の全体100体積部に対して0体積部より大きく、70体積部以下であるのが好ましい。鎖状エステルの含量が前記全体体積に対して70体積部を超えると、電池スウェリングの問題点がある。
【0025】
前記鎖状エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、ヘキサン酸メチル、ギ酸メチル及びこれらの混合物からなる群より選択される一つ以上の溶媒を含む。
【0026】
また、本発明の電解液は、添加剤として、例えば、ハロゲン、シアノ基(CN)及びニトロ基(NO)からなる群より選択される置換基を有するカーボネートもしくはビニレンカーボネート、ジビニルスルホン、エチレンサルファイトなどをさらに含んでもよい。このような添加剤をさらに添加することで、高温スウェリング特性、容量、寿命、低温特性などの電気化学的特性がより優れた電池を提供できるので好ましい。また、カーボネート添加剤としては、下記化学式5のエチレンカーボネート誘導体が好ましく、フルオロエチレンカーボネートが最も好ましい。
【化3】

【0027】
(式中、Xはハロゲン、シアノ基(CN)及びニトロ基(NO)からなる群より選択される。)
【0028】
前記カーボネート添加剤は、電解液の総重量100重量部に対して好ましくは0.01乃至10重量部、より好ましくは0.01乃至5重量部含まれる。前記カーボネート添加剤の使用量が0.01重量部未満であると、電池内部でのガス発生抑制効果を期待し難く、10重量部を超えると高温寿命が悪化する傾向にあり、高温で膨らむ問題も発生し易くなる。
【0029】
前記リチウム塩は、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム電池の作動を可能にするものである。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは自然数である)及びLiSOCFなどが挙げられ、単独でも2種以上の混合物でもよい。
【0030】
前記リチウム塩の濃度は、0.6乃至2.0Mの範囲内で用いることが好ましく、0.7乃至1.6Mの範囲がより好ましい。リチウム塩の濃度が0.6M未満であると、電解液の導電度が低くなって電解液性能が低下する傾向にあり、2.0Mを超えると、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少する傾向にある。
【0031】
本発明の電解液は、モノマー及び重合開始剤をさらに含む、高分子電解液であってもよい。
【0032】
前記モノマーとしては、鎖末端に下記の化学式2乃至4からなる群より選択される不飽和結合を含む作用基を2つ以上有する分子量50乃至100,000の第1モノマー、またはこの第1モノマーと下記の化学式2乃至4からなる群より選択される不飽和結合を含む作用基を一つ以上有する分子量50乃至100,000の第2モノマーの混合物が好ましい。
【化4】

【0033】
(前記化学式2乃至4で、R、R及びRは同一であるか、又は各々独立にH、C乃至C10の脂肪族又は芳香族ヒドロカーボン、−C≡N、−OR(ここで、RはH、CHまたはC)、−F、−Cl又は−Brである。)
【0034】
前記モノマーとして、より具体的には、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、ポリエステルポリオル ジ(メタクリレート)、ポリカーボネートポリオルジアクリレート、ポリカプロラクトンジオールジメタクリレート、トリメチルオールプロパンエトキシル化トリメタクリレート、トリメチルロールプロパンプロポキシル化トリメタクリレート、トリメチルオールプロパンカプロラクトン化トリメタクリレート、テトラメチルオールプロパンエトキシル化トリメタクリレート、テトラメチルロールプロパンプロポキシル化トリメタクリレート、テトラメチルオールプロパンカプロラクトン化トリメタクリレート、ジトリメチルオールプロパンエトキシル化トリメタクリレート、ジトリメチルオールプロパンプロポキシル化トリメタクリレート、ジトリメチルオールプロパンカプロラクトン化トリメタクリレート、ジペンタエリトリトールエトキシル化ジメタクリレート、ジペンタエリトリトールプロポキシル化ジメタクリレート、ジペンタエリトリトールカプロラクトン化ジメタクリレート、グリセロールエトキシル化ジメタクリレート、グリセロールプロポキシル化ジメタクリレート、ジペンタエリトリトールカプロラクトン化ヘキサアクリレート、または、これらモノマーの末端のアクリル基をビニル基、アリル基、ビニルスルホン基に置換したもの、ウレタンメタクリレートのモノマーなどを挙げることができる。
【0035】
本発明の電解液中、好ましくは、前記モノマーの含量は0.01乃至20重量%であり、より好ましくは、0.1乃至10重量%である。前記モノマーの含量が0.01重量%未満である場合には過度なスウェリング特性を示し、20重量%を超える場合には電池性能が低下して好ましくない。
【0036】
前記重合開始剤は前記モノマーの重合を開始することができ、電池性能を劣化させない物質であればいずれも用いることができ、その代表的な例として有機過酸化物またはアゾ系化合物を一つまたは二つ以上混合して用いることができる。前記有機過酸化物としては、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシ二炭酸、 ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ペルオキシ二炭酸ジ-イソプロピル、ジ-3-メトキシブチルペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン及びジエチレングリコール-ビス(t-ブチルペルオキシカルボネート )からなる群より選択されるペルオキシ二炭酸類;過酸化ジアセチル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル及び過酸化ヘキサノイルビス-3,5,5-トリメチルからなる群より選択されるジアシルペルオキシド類;及びペルオキシピバル酸 t-ブチル、t-アミルペルオキシピバラート、ヘキサン酸ペルオキシ-2-エチルt-ブチル、t-ヘキシルペルオキシピバラート(t-hexylperoxy pivalate)、t-ブチルペルオキシネオデカノアート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノアート、t-ヘキシルペルオキシピバラート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノアート、2-エチルヘキサン酸ブチル 1,1,3,3-テトラメチル、t-アミルペルオキシ2-エチルヘキサノアート、t-ブチルペルオキシイソブチラート、t-アミルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノイル、t-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノアート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾアート及びジーブチルペルオキシトリメチルアジペートからなる群より選択されるペルオキシエステル類などを使用することができ、前記アゾ系化合物は2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)や1,1’-アゾ-ビス(シアノシクロ-ヘキサン)などを使用することができる。この重合開始剤の含量は、使用するモノマーの重合反応を招くことができる含量であればよく、特に限定されないが、一般にはモノマー対比で0.01乃至5重量%の範囲で含まれれば十分である。
【0037】
前記高分子電解液を利用して、本発明のリチウム二次電池を製造する第1の方法としては、前記高分子電解液を正極、セパレータ及び負極から構成された電極群と共に金属缶またはパウチなどの電池ケースに注入して密封した後、40乃至100℃で30分乃至8時間加熱する。この時、高分子電解液内のモノマーが重合してポリマーが生成する。第2の方法としては、前記高分子電解液を正極または負極表面にキャスティングした後、当該正極または負極表面に熱、紫外線または電子ビームを照射することで高分子電解液内のモノマーを重合させ、ついで、当該正極または負極を電池ケース内に密封して電池を製造する。この時、別途セパレータを使用することもできるが、高分子電解液がセパレータの役割を果たすこともできるので、使用しなくても差し支えない。
【0038】
本発明のリチウム二次電池は、上記本発明の電解液、正極及び負極を含む。
【0039】
前記正極はリチウムイオンを可逆的に挿入及び脱離することができる正極活物質を含む。このような正極活物質としてはリチエイテッド挿入化合物があり、この中でニッケルを含む化合物が最も高容量であるので、ニッケルを含む化合物、つまり、ニッケル系列化合物を用いるのが高容量電池を提供することができるので、好ましい。また、さらに好ましくは、高容量以外に他の電池性能を改善させるために、ニッケル系列化合物にコバルト系列化合物もしくはマンガン系列化合物を一つ以上混合して用いる。同時に、ニッケル系列化合物を使用する場合にスウェリング現象が最も深刻に現れるので、ニッケル系列化合物を正極活物質として用いる場合に本発明の電解液を使用する効果を最も極大化して得ることができる。前記ニッケル系列化合物としては、例えば、下記の化学式6または7で示されるものを用いることができる。
【化5】

【0040】
(前記式で、0.90≦x≦1.1、0.1≦y≦0.9、0≦z≦0.5であり、MはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも一つの元素であり、AはO、F、S及びPからなる群より選択される元素であり、XはF、SまたはPである。)
【0041】
前記コバルトまたはマンガン系列化合物は当該分野において活物質として使用可能な化合物であればいずれも使用可能であり、その代表的な例としては、下記の化学式8乃至12からなる群より選択されるものを用いることができる。
【化6】

【0042】
(前記式で、0.90≦x≦1.1、0.1≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦α≦2であり、MはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも一つの元素であり、AはO、F、S及びPからなる群より選択される元素であり、XはF、SまたはPである。)
【0043】
前記負極はリチウムイオンを挿入及び脱離することができる負極活物質を含み、このような負極活物質としては結晶質または非晶質炭素、または炭素複合体の炭素系負極活物質を用いることができる。
【0044】
前記正極及び負極は、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒の中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造するなど、公知の手段により製造すればよく特に限定されない。
【0045】
前記導電剤としては、構成される電池において、化学変化を招かないで、電子伝導性の材料であればいずれも使用可能あり、その例として、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末、金属繊維などを一つ以上用いることができる。
【0046】
前記結着剤は活物質及び導電剤を電流集電体に堅固に付着させることができるリチウム二次電池で一般に用いられる物質は全て用いることができ、その例としては、スチレン-ブタジエンラバー、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピレンセルロース、ディアセチレンセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどが挙げられる。この中でスチレン-ブタジエンラバーバインダーが最も好ましい。
【0047】
前記溶媒としては、リチウム二次電池の活物質組成物の製造時、活物質、導電剤及びバインダーをよく分散させることができる一般に用いられているものはいずれも用いることができ、その代表的な例としては、N-メチルピロリドンなどを用いることができる。
【0048】
このような構成を有する本発明のリチウム二次電池の代表的な例を図1に示した。図1に示したように、正極3、負極2を含み、前記正極3及び前記負極2の間に位置するセパレータ4、負極2、正極3及びセパレータ4に含浸された電解液、円筒状の電池容器5、電池容器5を封入する封入部材6を含む。図1の構造は角形タイプの電池であって、本発明のリチウム二次電池がこの形状に限定されるわけではなく、円筒形、パウチなどいかなる形状も可能なことはもちろんである。
【0049】
以下、本発明の好ましい実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例だけであり、本発明が下記の実施例に限られるわけではない。
【0050】
<実施例>
(実施例1)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びバレロニトリルを3:6:1の体積比で混合した混合溶媒に、LiBFを1.5M溶解して電解液を製造した。LiCoO正極活物質を用いた正極、グラファイト負極活物質を用いた負極及び前記電解液を用いてリチウム二次電池を製造した。この時、電解液の使用量は2.2gとした。
【0051】
(実施例2)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びヘプタンニトリルを3:6:1の体積比で混合した混合溶媒に、LiBFを1.5M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0052】
(実施例3)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びカプリロニトリルを3:6:1の体積比で混合した混合溶媒に、LiBFを1.5M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0053】
(実施例4)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びバレロニトリルを3:6:1の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0054】
(実施例5)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びバレロニトリルを3:5:2の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0055】
(実施例6)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びバレロニトリルを3:5:2の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0056】
(実施例7)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びバレロニトリルを3:6:1の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0057】
(実施例8)
エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルを3:5:2の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0058】
(実施例9)
エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルを3:6:1の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0059】
(実施例10)
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを8:2の重量比で混合した正極活物質を用い、電解液使用量を2.1gに変更したことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0060】
(実施例11)
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを8:2の重量比で混合した正極活物質を用い、電解液使用量を2.1gに変更したことを除いては、前記実施例2と同一に実施した。
【0061】
(実施例12)
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを8:2の重量比で混合した正極活物質を用い、電解液使用量を2.1gに変更したことを除いては、前記実施例3と同一に実施した。
【0062】
(実施例13)
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを8:2の重量比で混合した正極活物質を用い、電解液使用量を2.1gに変更したことを除いては、前記実施例4と同一に実施した。
【0063】
(実施例14)
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを8:2の重量比で混合した正極活物質を用い、電解液使用量を2.1gに変更したことを除いては、前記実施例5と同一に実施した。
【0064】
(実施例15)
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを8:2の重量比で混合した正極活物質を用い、電解液使用量を2.1gに変更したことを除いては、前記実施例6と同一に実施した。
【0065】
(実施例16)
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを8:2の重量比で混合した正極活物質を用い、電解液使用量を2.1gに変更したことを除いては、前記実施例8と同一に実施した。
【0066】
(実施例17)
エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルを30:55:15の体積比で混合した溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例10と同一に実施した。
【0067】
(実施例18)
LiPFとLiBFを99.9:0.1重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0068】
(実施例19)
LiPFとLiBFを99.9:0.1重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例6と同一に実施した。
【0069】
(実施例20)
LiPFとLiBFを99.9:0.1重量比で混合して用いたことを除いては、前記実施例7と同一に実施した。
【0070】
(比較例1)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート及びフルオロベンゼンを30:55:5:10の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0071】
(比較例2)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びフルオロベンゼンを3:6:1の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0072】
(比較例3)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びジエチルカーボネートを4:4:2の体積比で混合した混合溶媒に、LiBFを1.5M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0073】
(比較例4)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、フルオロベンゼン及びジエチルカーボネートを3:5:1:1の体積比で混合した混合溶媒に、LiBFを1.5M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施した。
【0074】
(比較例5)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート及びフルオロベンゼンを30:55:5:10の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例10と同一に実施した。
【0075】
(比較例6)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びフルオロベンゼンを3:6:1の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例10と同一に実施した。
【0076】
(比較例7)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びジエチルカーボネートを4:4:2の体積比で混合した混合溶媒に、LiBFを1.5M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例10と同一に実施した。
【0077】
(比較例8)
エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、フルオロベンゼン及びジエチルカーボネートを3:5:1:1の体積比で混合した混合溶媒に、LiBFを1.5M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例10と同一に実施した。
【0078】
(比較例9)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート及びフルオロベンゼンを30:55:5:15の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.3M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例10と同一に実施した。
【0079】
(比較例10)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートを3:7の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.3M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例10と同一に実施した。
【0080】
上記実施例1乃至20及び比較例1乃至10のリチウム電池を、0.5Cの充放電速度、4.2V、20mAhカット−オフ条件で定電流、定電圧充電し、85℃の熱風オーブンで4時間放置した前後の電池の厚さを測定し、その増加率を算出した。厚さの増加率を下記表1に示す。
【表1】

【0081】
表1のとおり、同じもしくは類似のリチウム塩と正極活物質を使用している実施例と比較例を比べると、実施例1乃至20の厚さの増加率が比較例1乃至10より小さいことから、スウェリング特性が改善されたことが分かる。特に、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを用いた実施例4乃至5と比較例1乃至2とを比較した場合、実施例4乃至5の厚さの増加率が比較例1乃至2に比べて著しく減少していることが分かる。
【0082】
また、前記実施例7乃至10の電池と比較例1の電池とを1Cに定電流定電圧充電して4.2V、0.1C(82mAh)にカット−オフし、1Cに定電流放電して3Vカット−オフする条件でサイクル寿命特性を測定し、その結果を図2に示した。図2のグラフは、上から、比較例1、実施例7、実施例8、実施例9、実施例10の順に示されている。図2に示したように、本発明の実施例7乃至10は比較例1と同等な水準のサイクル寿命特性を示している。
【0083】
(実施例21)
モノマーとしてジペンタエリトリトールカプロラクトンヘキサアクリレート(Nippon Kayaku)1.5重量%と、開始剤としてジ(4-t-ブチルシアロヘキシル)ペルオキシ二炭酸(di4-tert-butylcyalohexyl)peroxydicarbonate(“Perkadox16”、AKZO NOBEL))をモノマー対比5重量%の量で電解液である1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルの混合溶媒(3/5/2体積比)98.5重量%に添加して10分間攪拌した。
【0084】
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを6:4重量比で混合した正極活物質を使用し、導電剤としてカーボンブラックを、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを使用して正極を製造し、天然黒鉛負極活物質及びバインダーとしてスチレン-ブタジエンラバーを使用して負極を製造した。製造された正極、負極及びセパレータを巻き取って製造した組立体(ゼリーロール)をアルミニウムからなるパウチ外装制に入れて部分密封して電池組立体を完成した。前記電解液を利用して電池を組立てた。前記電解液使用量は2.62gとした。組立てられた電池を70℃で4時間放置して、ゲルポリマー電解液が形成された電池を製造した。
【0085】
(実施例22)
バレロニトリルの代わりにヘプタンニトリルを使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0086】
(実施例23)
バレロニトリルの代わりにカプリロニトリルを使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0087】
(実施例24)
バレロニトリルの代わりにシクロヘキサンカーボンニトリルを使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0088】
(実施例25)
バレロニトリルの代わりに2-フルオロベンゾニトリルを使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0089】
(実施例26)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルが30:65:5体積比で混合された混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0090】
(実施例27)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルが30:40:30体積比で混合された混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0091】
(実施例28)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルが30:55:15体積比で混合された混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0092】
(実施例29)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルが30:45:25体積比で混合された混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0093】
(実施例30)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルが15:65:20体積比で混合された混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0094】
(実施例31)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン及びバレロニトリルが30:50:20体積比で混合された混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様にして製造した。
【0095】
(実施例32)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン及びバレロニトリルが15:65:20体積比で混合された混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様にして製造した。
【0096】
(実施例33)
フルオロエチレンカーボネートを液体電解液対比3%を追加することを除いては、実施例21と同様にして製造した。
【0097】
(実施例34)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルが15:40:30:15体積比で混合された混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様にして製造した。
【0098】
(実施例35)
正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Mn0.05とLiCoOを6:4重量比で混合したものを使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0099】
(実施例36)
正極活物質としてLiNi0.75Co0.2Mn0.05とLiCoOを6:4重量比で混合したものを使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0100】
(比較例10)
1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート及びフルオロベンゼンの混合溶媒(30:55:5:10)を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0101】
(比較例11)
1.3M LiPFが溶解されたアセトニトリル及びエチレンカーボネートを7:3体積比で混合した混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0102】
(比較例12)
1.3M LiPFが溶解されたアセトニトリル及びエチレンカーボネートを1:1体積比で混合した混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0103】
(比較例13)
1.3M LiPFリチウム塩が溶解されたアセトニトリル、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを40:30:30体積比で混合した混合溶媒を使用したことを除いては、前記実施例21と同様に実施した。
【0104】
*容量特性
前記実施例21乃至36及び比較例10乃至13で製造された電池を0.5C及び4.2V、3時間カット-オフ条件で定電流/定電圧充電し、0.2C及び2.75Vカット-オフ条件で定電流放電して容量を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0105】
*スウェリング特性
前記実施例21乃至36及び比較例10乃至13で製造された電池を0.5C及び4.2V、0.1Cカット-オフ条件で定電流/定電圧充電し、熱風オーブン内85℃の温度で4時間放置した後に厚さを測定した。初期の厚さに対する放置後の厚さ増加率を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0106】
*サイクル寿命特性
前記実施例21乃至36及び比較例10乃至13の電池を1Cに500回充放電した後、サイクル寿命(残存容量%)の特性も評価し、その結果を下記表2に共に示した。
【表2】

【0107】
表2に示したように、前記実施例21乃至36の電池は、比較例10乃至13と容量は類似しているが、サイクル寿命特性は多少優れており、スウェリング特性は顕著に向上したことが分かる。結果的に、本発明の電解液を使用した実施例21乃至36の電池は、容量及びサイクル寿命特性はある程度満足しながら安全性を顕著に向上させることができることが分かる。
【0108】
(実施例37)
エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルを30:50:20体積比で混合した混合溶媒にLiPFを1.15M溶解して電解液を製造した。
【0109】
LiNi0.8Co0.1Mn0.1とLiCoOを6:4重量比で混合した正極活物質を使用し、導電剤としてカーボンブラックを、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを使用して正極を製造し、天然黒鉛負極活物質及びバインダーとしてスチレン-ブタジエンラバーを使用して負極を製造した。製造された正極、負極及び前記電解液を利用して電池を組立てた。前記電解液使用量は2.6gとした。
【0110】
(実施例38)
バレロニトリルの代わりにヘプタンニトリルを使用したことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0111】
(実施例39)
バレロニトリルの代わりにカプリロニトリルを使用したことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0112】
(実施例40)
バレロニトリルの代わりにシクロヘキサンカーボンニトリルを使用したことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0113】
(実施例41)
バレロニトリルの代わりに2-フルオロベンゾニトリルを使用したことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0114】
(実施例42)
エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルを30:40:30体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0115】
(実施例43)
エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルを30:55:15体積比に混合した混合溶媒にLiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0116】
(実施例44)
エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルを30:45:25体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0117】
(比較例14)
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート及びフルオロベンゼンを30:55:5:10の体積比で混合した混合溶媒にLiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0118】
(比較例15)
アセトニトリル及びエチレンカーボネートを7:3体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0119】
(比較例16)
アセトニトリル及びエチレンカーボネートを1:1体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0120】
(比較例17)
アセトニトリル、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを40:30:30体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.15M溶解した電解液を用いたことを除いては、前記実施例37と同様に実施した。
【0121】
前記実施例37乃至44及び比較例14乃至17の電池について、前述と同様に容量、サイクル寿命及びスウェリング特性を測定した。結果を表3に示した。
【表3】

【0122】
(実施例45)
モノマーとしてジペンタエリトリトールカプリロニトリルヘキサアクリレート(Nippon Kayaku)1重量%と、開始剤としてジ(4-t-ブチルシアロヘキシル)ペルオキシ二炭酸(di4-tert-butylcyalohexyl)peroxydicarbonate(“Perkadox16”、AKZO NOBEL))をモノマー対比3重量%の量で電解液である1.3M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジエチルカーボネート及びバレロニトリルの混合溶媒(15/55/20/10体積比)98.5重量%に添加して10分間攪拌した。
【0123】
LiCoO正極活物質を使用し、導電剤としてカーボンブラックを、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを使用して正極を製造し、天然黒鉛負極活物質及びバインダーとしてスチレン-ブタジエンラバーを使用して負極を製造した。製造された正極、負極及びセパレータを巻き取って製造した組立体(ゼリーロール)をアルミニウムからなるパウチ外装制に入れて部分密封し、電池組立体を完成した。前記電解液を利用して電池を組立てた。前記電解液使用量は2.62gとした。組立てられた電池を70℃で4時間放置して、ゲルポリマー電解液が形成された電池を製造した。
【0124】
*過放電テスト
前記実施例45の方法で製造された電池を500mA、4.2V、50mAカット-オフ条件で充電し、300mA、3.00Vカット-オフ条件で第1放電、2mA、2.75Vカット-オフ条件で第2放電、1mA、0.00Vカット-オフ条件で第3放電を実施した後、60分間休止する条件で充放電をした後、さらに、500mA、3Vカット-オフ条件で第1充電、500mA、4.2V、50mAカット-オフ条件で第2充電し、300mA、3Vカット-オフ条件で放電する容量回復工程を1回(1サイクル)とし、総3回反復実施する過放電テストを実施した。初期容量と各サイクル毎に放電容量を測定して、初期容量に対する各サイクル後、回復される容量比率を測定した。この時初期容量は500mA、4.2V、50mAカット-オフ条件で充電し、300mA、3.00Vカット-オフ条件で第1放電した後の容量をいい、初期容量を測定した結果859mAhが得られた。この初期容量859mAhを100%とした時の容量%は1サイクル放電容量834mAh、つまり、97%、2サイクル時832mAh、つまり、97%、3サイクル時839mAh、つまり、98%に容量回復特性に優れたものと示された。
【符号の説明】
【0125】
1 リチウム二次電池
2 電解液
3 正極
4 負極
5 電池ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エステルを含むエステル系溶媒70乃至95体積%および下記化学式1のニトリル系溶媒5乃至30体積%を含む非水性有機溶媒、ならびに
リチウム塩、
を含むリチウム二次電池用電解液。
【化1】

(化学式1中、Rは、C乃至C10の脂肪族ヒドロカーボンもしくはハロゲン化脂肪族ヒドロカーボン、又はC乃至C10の芳香族ヒドロカーボンもしくはハロゲン化芳香族ヒドロカーボンである。)
【請求項2】
前記非水性有機溶媒は、前記エステル系溶媒を75乃至90体積%含み、前記ニトリル系列溶媒を10乃至25体積%含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項3】
前記環状エステルとして、エチレンカーボネートを前記エステル系溶媒中に10乃至40体積%含み、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-ヴァレロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-ヴァレロラクトン及びε-カプロラクトンからなる群より選択される一つ以上またはこれらの混合物を前記エステル系溶媒中に30乃至85体積%含む、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項4】
前記環状エステルとして、エチレンカーボネートを前記エステル系溶媒中に10乃至15体積%含み、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-ヴァレロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-ヴァレロラクトン及びε-カプロラクトンからなる群より選択される一つ以上またはこれらの混合物を前記エステル系溶媒中に55乃至85体積%含む、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項5】
前記化学式1中のRは、C乃至Cの脂肪族ヒドロカーボン又はハロゲン化脂肪族ヒドロカーボンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項6】
前記ニトリル系溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカーボニトリル、シクロヘキサンカーボニトリル、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、2−クロロベンゾニトリル、4−クロロベンゾニトリル、ジクロロベンゾニトリル、トリクロロベンゾニトリル、2−クロロ−4−フルオロベンゾニトリル、4−クロロ−2−フルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2−フルオロフェニルアセトニトリル及び4−フルオロフェニルアセトニトリルからなる群より選択される一つ以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項7】
前記非水性有機溶媒は、鎖状エステルを、前記環状エステルと前記ニトリル系溶媒の全体100体積部に対して0体積部より大きく、70体積部以下でさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項8】
前記鎖状エステルは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、ヘキサン酸メチル、ギ酸メチル及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項9】
前記電解液は、モノマー及び重合開始剤をさらに含む高分子電解液である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項10】
前記モノマーは鎖末端に下記化学式2乃至4からなる群より選択される不飽和結合を含む作用基を2つ以上有する分子量50乃至100,000の第1モノマー、またはこの第1モノマーと下記の化学式2乃至4からなる群より選択される不飽和結合を含む作用基を一つ有する分子量50乃至100,000の第2モノマーの混合物である、請求項9に記載のリチウム二次電池用電解液。
【化2】

(前記化学式2乃至4で、R、R及びRは同一であるか、又は各々独立にH、C乃至C10の脂肪族又は芳香族ヒドロカーボン、−C≡N、−OR(ここで、RはH、CHまたはC)、−F、−Cl又は−Brである。)
【請求項11】
前記高分子電解液は前記モノマーを0.01乃至20重量%含む、請求項9又は10に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項12】
前記重合開始剤は有機過酸化物またはアゾ系化合物である、請求項9〜11のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項13】
前記有機過酸化物は、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシ二炭酸、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ペルオキシ二炭酸ジ-イソプロピル、ジ-3-メトキシブチルペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン及びジエチレングリコール-ビス(t-ブチルペルオキシカルボネート )からなる群より選択されるペルオキシ二炭酸類;過酸化ジアセチル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル及び過酸化ヘキサノイルビス-3,5,5-トリメチルからなる群より選択されるジアシルペルオキシド類;及びペルオキシピバル酸 t-ブチル、t-アミルペルオキシピバラート、ヘキサン酸ペルオキシ-2-エチルt-ブチル、t-ヘキシルペルオキシピバラート(t-hexylperoxy pivalate)、t-ブチルペルオキシネオデカノアート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノアート、t-ヘキシルペルオキシピバラート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノアート、2-エチルヘキサン酸ブチル 1,1,3,3-テトラメチル、t-アミルペルオキシ2-エチルヘキサノアート、t-ブチルペルオキシイソブチラート、t-アミルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノイル、t-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノアート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾアート及びジーブチルペルオキシトリメチルアジペートからなる群より選択されるペルオキシエステル類からなる群より選択されるものであり、前記アゾ系化合物は2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び1,1’-アゾ-ビス(シアノシクロ-ヘキサン)からなる群より選択されるものである、請求項12に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項14】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは自然数である)及びLiSOCFからなる群より選択される一つ以上又はこれらの混合物である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項15】
添加剤として、ハロゲン、シアノ基(CN)及びニトロ基(NO)からなる群より選択される置換基を有するカーボネートもしくはビニレンカーボネート、ジビニルスルホン、エチレンサルファイトの1種以上をさらに含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項16】
添加剤として、ハロゲン、シアノ基(CN)及びニトロ基(NO)からなる群より選択される置換基を有するカーボネート添加剤をさらに含む、請求項15に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項17】
前記カーボネート添加剤は下記化学式5のカーボネートである、請求項16に記載のリチウム二次電池用電解液。
【化3】

(化学式5中、Xはハロゲン、シアノ基(CN)及びニトロ基(NO)からなる群より選択される。)
【請求項18】
前記カーボネート添加剤はフルオロエチレンカーボネートである、請求項17に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項19】
前記カーボネート添加剤は、電解液全体100重量部に対して0.01乃至10重量部含まれる、請求項16〜18のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用電解液。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−118355(P2010−118355A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14168(P2010−14168)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【分割の表示】特願2004−241017(P2004−241017)の分割
【原出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】