説明

リチウム二次電池

【課題】内部電極体の内部で発生したガスが放圧機構に至る前の内部で留まることなく、円滑に放圧することが可能で安全性に優れるとともに、エネルギー密度の高いリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】金属箔体を構成要素として含んでなる電極板(正極板2、負極板3)を有し、電極板が捲回又は積層されてなる内部電極体6と、内部電極体6を収納する電池ケース10と、を備えたリチウム二次電池1である。内部電極体6の内部で発生したガスによって電池ケース10の内部圧力が所定以上に上昇した場合に、ガスが電池ケース10の外部へと放出され得るガス放出流路が、上昇した内部圧力の作用により内部電極体6の変形を伴って形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に関する。更に詳しくは、安全性に優れるとともに、エネルギー密度の高いリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコンや、電話・カメラ・GPS・ラジオ・テレビ等の機能を選択的に備えた携帯電子機器において、小型化、軽量化が加速度的に進行しており、それらの電源用電池として、リチウム二次電池が好適に使用されている。
【0003】
リチウム二次電池は、一般に、正極板の(正極)活物質にリチウム遷移金属複合酸化物を、負極板の(負極)活物質に炭素質材料を、電解液にリチウムイオン電解質が有機溶媒に溶解された非水電解液を、それぞれ用いた二次電池であり、単電池電圧が約4V程度と高いことからエネルギー密度が大きい、という特徴を備えたものである。その特徴から、従来の二次電池より小型化、高電圧化されたものであるので、上記の用途のみならず、最近の環境問題を背景に、低公害車として積極的な一般への普及が図られている電気自動車やハイブリッド電気自動車のモータ駆動用電源としても注目を集める等、更に、その用途は拡大してきている。
【0004】
用途の拡大に伴い、リチウム二次電池には、安全性の向上が求められている。エネルギー密度が高く容量が大きいリチウム二次電池は、蓄積されるエネルギーの絶対値が大きいことから、誤用した場合の危険性が高いので、取り扱いや充放電時の安全性の確保を十分に図る必要がある。
【0005】
日本蓄電池工業会によれば、リチウム二次電池の安全性評価基準ガイドラインの誤用試験として、電池を満充電させた状態で電池内部の電極体に金属棒を打ち込み、電極体における正極板と負極板とを内部短絡させる「釘刺し試験」が規定されており、これにより異常電流が急激に流れた場合でも、電池が発火、爆発等せず、安全性が確保されるべき旨が定められている。そして、釘刺し試験をクリアするために、図8に示すように、リチウム二次電池31には、異常電流によって発熱が起こり、電解液が蒸発して電池内圧が上昇した場合等を想定して、電池内圧を大気圧に開放する放圧機構32が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、図9に示すように、内部電極体(電極構造体42)の内部にガスが発生したときに、ガス抜けを十分に確保することができないと、電池性能の低下を引き起こすことがある。このため、電極構造体42を構成する正極側集電体箔と負極側集電体箔とに複数の集電体箔側小孔43を穿設するとともに、これらの集電体箔を巻き取るための芯体44にも複数の芯体側小孔45を穿設して、集電体箔側小孔43と芯体側小孔45とで電極構造体42の内部で発生したガスを排出するリチウム二次電池41が開示されている(例えば、特許文献2参照)。なお、図9において、符号46は電池ケースを示す。
【特許文献1】特開平9−92249号公報
【特許文献2】特開平10−162801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたリチウム二次電池においては、異常電流等による発熱のために電解液が蒸発してガス化した場合に、そのガスが放圧機構に届く前に電池内部で留まり易いという問題があった。このため、作動した放圧機構を通じて十分にガスを抜くことができなくなる場合があり、電池の安全性が確保され難くなる場合があった。
【0008】
また、特許文献2に記載されたリチウム二次電池は、正極側集電体箔と負極側集電体箔に集電体箔側小孔を穿設したために、内部電極体のエネルギー密度が低下し、電池の容量が小さくなってしまうという問題があった。また、このようなリチウム二次電池は、集電体箔側小孔と芯体側小孔との位置を合わせて製造する必要があるために製造工程が煩雑になり、コスト高になるという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、内部電極体の内部で発生したガスが放圧機構に至る前の内部で留まることなく、円滑に放圧することが可能で安全性に優れるとともに、エネルギー密度の高いリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明によれば、以下に示すリチウム二次電池が提供される。
【0011】
[1]金属箔体を構成要素として含んでなる電極板を有し、前記電極板が捲回又は積層されてなる内部電極体と、前記内部電極体を収納する電池ケースと、を備えたリチウム二次電池であって、前記内部電極体の内部で発生したガスによって前記電池ケースの内部圧力が所定以上に上昇した場合に、前記ガスが前記電池ケースの外部へと放出され得るガス放出流路が、上昇した前記内部圧力の作用により前記内部電極体の変形を伴って形成されるリチウム二次電池。
【0012】
[2]前記ガス放出流路の少なくとも一部が、前記内部電極体の前記電極板の捲回又は積層面に対して鉛直方向に、前記内部電極体の内部に形成される前記[1]に記載のリチウム二次電池。
【0013】
[3]前記変形が、前記金属箔体の予め設計された所定の箇所が破れて破孔が形成されることである前記[2]に記載のリチウム二次電池。
【0014】
[4]前記内部電極体が、前記電極板が捲回又は積層される芯体を更に有するものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のリチウム二次電池。
【0015】
[5]前記芯体の形状が、所定の内部空間を有するとともに前記内部空間に連通する一以上の貫通孔が形成された形状であり、前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、上昇した前記内部圧力の作用によって前記金属箔体の前記貫通孔に近接する部分が破れて破孔が形成され、前記ガスが、前記破孔、前記貫通孔、及び前記内部空間を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される前記[4]に記載のリチウム二次電池。
【0016】
[6]前記芯体には、一以上の溝部が、少なくとも一の端部まで形成されており、前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、上昇した前記内部圧力の作用によって、前記金属箔体の前記溝部に近接する部分が破れて破孔が形成され、前記ガスが、前記破孔、及び前記溝部を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される前記[4]に記載のリチウム二次電池。
【0017】
[7]前記芯体が、中空部を有する二以上の芯体要素が、それぞれの間に所定間隔の隙間部が形成されるとともに、前記中空部が相互に連通するように配設されてなるものであり、前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、上昇した前記内部圧力の作用によって前記金属箔体の前記隙間部に近接する部分が破れて破孔が形成され、前記ガスが、前記破孔、前記隙間部、及び前記中空部を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される前記[4]に記載のリチウム二次電池。
【0018】
[8]前記内部電極体と前記電池ケースの間に、所定の内部空間を有するとともに前記内部空間に連通する一以上の貫通孔が形成された第一の外装体を更に備え、前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、上昇した前記内部圧力の作用によって前記金属箔体の前記貫通孔に近接する部分が破れて破孔が形成され、前記ガスが、前記破孔、前記貫通孔、及び前記内部空間を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される前記[3]に記載のリチウム二次電池。
【0019】
[9]前記電池ケースの耐圧強度(F1)と、前記金属箔体の、前記破孔が形成される部分の耐圧強度(F2)が、F2<F1の関係を満たす前記[3]〜[8]のいずれかに記載のリチウム二次電池。
【0020】
[10]前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、上昇した前記内部圧力の作用によって、前記内部電極体が前記電極板の厚み方向に膨張変形するとともに、隣接する前記電極板どうしの間に空間部が形成され、前記ガスが、前記空間部を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される前記[1]に記載のリチウム二次電池。
【0021】
[11]前記内部電極体と前記電池ケースの間に、所定の圧力で変形可能な第二の外装体を更に備え、前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、上昇した前記内部圧力の作用によって、前記第二の外装体が変形し、前記内部電極体が前記電極板の厚み方向に膨張変形する前記[10]に記載のリチウム二次電池。
【0022】
[12]前記電池ケースは放圧機構を備えてなり、前記ガス放出流路の末端が、前記放圧機構に連通する前記[1]〜[11]のいずれかに記載のリチウム二次電池。
【0023】
[13]前記芯体の形状が円筒状であり、全体形状が円柱状である前記[1]〜[12]のいずれかに記載のリチウム二次電池。
【0024】
[14]前記芯体の形状が中空板状であり、全体形状が角柱状である前記[1]〜[12]のいずれかに記載のリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0025】
本発明のリチウム二次電池は、内部電極体の内部で発生したガスが放圧機構に至る前の内部で留まることなく、円滑に放圧することが可能であり、極めて安全性に優れたものである。また、本発明のリチウム二次電池は、正極板及び負極板を構成する金属箔体の実質的な表面積が有効に利用されているために、エネルギー密度を高く維持しつつ、安全性の向上がなされたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0027】
本発明のリチウム二次電池の一実施形態は、金属箔体を構成要素として含んでなる電極板を有し、この電極板が捲回又は積層されてなる内部電極体と、この内部電極体を収納する電池ケースとを備えたものである。また、本実施形態のリチウム二次電池は、その構成要素である内部電極体の内部で発生したガスによって電池ケースの内部圧力が所定以上に上昇した場合に、ガスが電池ケースの外部へと放出され得るガス放出流路が、上昇した内部圧力の作用により内部電極体の変形を伴って形成されるものである。従って、本実施形態のリチウム二次電池は、異常時であっても電池内部、特に、内部電極体内部の圧力が過度に上昇し難く、電池ケースの破損や、短絡による発火を効果的に防止することができる。
【0028】
また、本実施形態のリチウム二次電池は、例えば特許文献2に記載されたリチウム二次電池のように、小孔を電極板(金属箔体)に穿設しておき、ガス放出流路を予め用意しておく態様のものではない。即ち、異常発生に伴って上昇する内部圧力を利用し、上昇したこの内部圧力の作用によって、ガス放出流路が形成されるように構成されたものである。従って、小孔を穿設するというような、電極板(金属箔体)の表面積を減ずるような加工を予め施しておく必要がないために、極めて高エネルギー密度・高容量なものである。
【0029】
次に、内部電極体の変形を伴って形成されるガス放出流路の詳細について、具体例を挙げつつ説明する。ガス放出流路の少なくとも一部が形成される態様としては、例えば、内部電極体の電極板の捲回又は積層面に対して鉛直方向に、内部電極体の内部に形成されるといった態様等を挙げることができる。そして、この際に生ずる内部電極体の変形としては、例えば、(1)金属箔体の予め設計された所定の箇所が破れて破孔が形成されること、(2)内部電極体が電極板の厚み方向に膨張変形すること、等を挙げることができる。
【0030】
なお、本実施形態のリチウム二次電池においては、内部電極体が、電極板が捲回又は積層される芯体を更に有するものであることが、金属箔体上の、破孔が形成される所定の箇所の設計を容易にすることが可能となるために好ましい。以下、本発明に係るリチウム二次電池の更なる詳細について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0031】
図1は、本発明のリチウム二次電池の一実施形態を模式的に示す断面図である。また、図2は、図1に示すリチウム二次電池に用いられる芯体の一例を模式的に示す説明図であり、図2(a)は、中心軸に垂直な方向から見た正面図、図2(b)は、中心軸に平行な方向から見た側面図、図2(c)は図2(a)の断面図である。図1及び図2(a)〜図2(c)に示すように、本実施形態のリチウム二次電池1は、金属箔体を構成要素として含む電極板(正極板2、負極板3)を有し、この電極板が捲回又は積層されてなる内部電極体6と、この内部電極体6を収納する電池ケース10と、を備えたものである。ここで、図1中、符号16は正極集電部材、符号17は負極集電部材、符号33は正極内部端子、符号34は負極内部端子、符号35は正極外部端子、符号36は負極外部端子を示す。なお、図1に示す内部電極体6は、芯体4に正極板2及び負極板3が捲回されることによって構成された捲回型内部電極体である。
【0032】
芯体4の形状は、内部空間8を有するとともに、この内部空間8に連通する少なくとも一の貫通孔7が形成された形状である。なお、この内部空間8の少なくとも一の端部は、内部電極体6の内部で発生したガスを電池ケース10の外部へと放出し得る放圧機構と連通している。具体的には、内部空間8の端部は放圧孔9(放圧弁20)と連通している。本実施形態のリチウム二次電池1においては、内部電極体6の内部で発生したガスによって電池ケース10の内部圧力が所定以上に上昇した場合に、先ず、上昇した内部圧力の作用によって、金属箔体の貫通孔7に近接する部分が破れて破孔(図示せず)が形成される。これにより、破孔、貫通孔7、及び内部空間8を通じて電池ケース10の外部へと発生したガスを放出し得るガス放出流路が形成される。なお、正極板2及び負極板3の構成要素である金属箔体が破れて破孔が形成される場合には、正極板2と負極板3とが接触しないように配設されたセパレータ11にも同時に破孔が形成される。
【0033】
従来のリチウム二次電池では、異常電流に起因した発熱によって、電解液が蒸発して発生したガスの放出流路としては、近接する電極板どうしの隙間が利用されている。このため、リチウム二次電池の内部状態や、発生するガスの量によっては、近接する電極板どうしの隙間からのガスの放出が良好に行われない場合がある。
【0034】
これに対して、本実施形態のリチウム二次電池1は、内部電極体6の内部で発生したガスによって電池ケース10の内部圧力が所定以上に上昇した場合に、金属箔体の所定箇所が破れて破孔が形成され、この破孔、貫通孔7、及び芯体4の内部空間8を含むガス放出流路が形成されるように構成されている。このため、近接する電極板(正極板2、負極板3)どうしの隙間からのガスの放出が良好に行われずに内部圧力が上昇した場合には、上述のガス放出流路が形成され、ガスの放出が行われる。従って、本実施形態のリチウム二次電池1は、異常時であっても電池内部、特に、内部電極体6内部の圧力が過度に上昇し難く、電池ケース10の破損や、短絡による発火を効果的に防止することができる。
【0035】
また、本実施形態のリチウム二次電池1では、構成部材である正極板2及び負極板3に、予め放圧のための孔を穿設することを要しない。従って、本実施形態のリチウム二次電池1は、通常状態での使用時に金属箔体の表面積が有効に活用されており、極めてエネルギー密度の高いものである。
【0036】
図1に示すリチウム二次電池1に用いられる芯体4には、その軸方向に17個、周方向に4個の貫通孔7が形成されているが、本発明に係るリチウム二次電池においては、内部圧力の過度な上昇を抑制し、電池外部へのガスの放出を効果的に行うことが可能であれば、芯体4に形成される貫通孔7の数、形状、大きさ等については特に限定されることはない。従って、芯体4に形成される貫通孔7の数等は、電池全体の寸法、正極板2、負極板3、及びセパレータ11の材質や寸法(厚み)、ガスの放出を開始する圧力等によって適宜設定すればよい。また、図10に示すような形状の芯体61を使用することもできる。図10に示す芯体61は、内部空間62を有するとともに、この内部空間62に連通する一以上のスリット(切欠部)60が形成されたものである。即ち、本明細書にいう「貫通孔」には、図10に示すようなスリット(切欠部)60も概念的に包含される。なお、芯体には貫通孔とスリット(切欠部)のいずれもが形成されていてもよい。
【0037】
また、図1においては、貫通孔7を通じて放圧孔9へガスを導くことができるように、円筒状で、全体形状が円柱状の芯体4を例示しているが、例えば、多孔質体等の複数の気孔が形成された材料を用いて、芯体を形成してもよい。このような多孔質体等を用いて芯体を形成することにより、芯体を筒状にしなくとも、発生したガスを多孔質体内部の気孔を経由して放圧孔9へと導くことができる。なお、放圧孔9には金属箔19と放圧弁20が配設されており、この放圧弁20からガスが放出されることによって放圧される。
【0038】
図11(a)は、本発明のリチウム二次電池に用いられる芯体の更に他の例を示す斜視図である。本発明に係るリチウム二次電池においては、図11(a)に示すような、一以上の溝部70が、少なくとも一の端部72まで形成された芯体71を用いて内部電極体74(図11(b)参照)を構成したものであることが好ましい。図11(b)に示すような形状の内部電極体74を備えた本発明に係るリチウム二次電池の内部圧力が所定以上に上昇した場合には、上昇した内部圧力の作用によって、電極板73を構成する金属箔体のうち、溝部70に近接する部分が破れて破孔(図示せず)が形成される。これにより、破孔、及び溝部70を通じて、電池ケースの外部へと発生したガスが放出されるガス放出流路が形成され、図1に示したリチウム二次電池1と同様の効果を得ることができる。
【0039】
図12(a)は、本発明のリチウム二次電池に用いられる芯体の更に他の例を示す斜視図である。本発明に係るリチウム二次電池においては、図12(a)に示すような、中空部83を有する二以上の芯体要素80が、それぞれの間に所定間隔の隙間部82が形成されるとともに、中空部83が相互に連通するように配設されてなる芯体81を用いて内部電極体85(図12(b)参照)を構成したものであることが好ましい。図12(b)に示すような形状の内部電極体85を備えた本発明に係るリチウム二次電池の内部圧力が所定以上に上昇した場合には、上昇した内部圧力の作用によって、電極板84を構成する金属箔体のうち、隙間部82に近接する部分が破れて破孔(図示せず)が形成される。これにより、破孔、隙間部82、及び中空部83を通じて、電池ケースの外部へと発生したガスが放出されるガス放出流路が形成され、図1に示したリチウム二次電池1と同様の効果を得ることができる。
【0040】
図13は、本発明のリチウム二次電池の更に他の実施形態を模式的に示す断面図であり、その全体形状が円柱状のものを示している。本実施形態のリチウム二次電池93は、内部電極体96と電池ケース94の間に、内部空間90を有するとともに、この内部空間90に連通する一以上の貫通孔91が形成された第一の外装体92を更に備えたものである。なお、本実施形態のリチウム二次電池93においては、芯体は必須の構成要素ではない。本実施形態のリチウム二次電池93の内部圧力が所定以上に上昇した場合には、上昇した内部圧力の作用によって、電極板95を構成する金属箔体のうち、貫通孔91に近接する部分が破れて破孔(図示せず)が形成される。これにより、破孔、貫通孔91、及び内部空間90を通じて、電池ケースの外部へと発生したガスが放出されるガス放出流路が形成され、図1に示したリチウム二次電池1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、図14は、本発明のリチウム二次電池の更に他の実施形態を模式的に示す断面図であり、その全体形状が角柱状のものを示している。本実施形態のリチウム二次電池103は、内部電極体106と電池ケース104の間に、内部空間100を有するとともに、この内部空間100に連通する一以上の貫通孔101が形成された第一の外装体102を更に備えたものである。なお、本実施形態のリチウム二次電池103においては、芯体は必須の構成要素ではない。本実施形態のリチウム二次電池103の内部圧力が所定以上に上昇した場合には、上昇した内部圧力の作用によって、電極板105を構成する金属箔体のうち、貫通孔101に近接する部分が破れて破孔(図示せず)が形成される。これにより、破孔、貫通孔101、及び内部空間100を通じて、電池ケースの外部へと発生したガスが放出されるガス放出流路が形成され、図1に示したリチウム二次電池1と同様の効果を得ることができる。
【0042】
図3は、本発明のリチウム二次電池に用いられる内部電極体の一例を示す斜視図である。この内部電極体6は捲回型内部電極体であり、正極板2と負極板3とが芯体4の外周に捲回されることにより構成されている。正極板2と負極板3の間にはセパレータ11が配設されている。従って、正極板2と負極板3は、直接的には接触していない。正極板2及び負極板3には、電気的接続を行うための電極リード12,13が取り付けられている。この電極リード12,13は少なくとも一本ずつあればよいが、それぞれ複数の電極リード12,13を取り付けて集電抵抗を小さくすることもできる。
【0043】
正極板2は、集電基板の両面に正極活物質を塗工することによって作製された金属箔体により構成されている。集電基板としては、アルミニウム箔やチタン箔等の正極電気化学反応に対する耐蝕性が良好である金属箔が用いられる。なお、集電基板としては、金属のメッシュ(網)やパンチングメタル等を用いることもできる。また、正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。なお、リチウム遷移金属複合酸化物に、アセチレンブラック等の炭素微粉末を導電助剤として加えることが好ましい。
【0044】
なお、リチウム遷移金属複合酸化物としては、マンガン酸リチウム(LiMnO4)の他、マンガン酸リチウム(LiMnO4)よりも熱安定性の低いニッケル酸リチウム(LiNiO2)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン・コバルト・ニッケル複合正極材料(LiMn1/3Co1/3Ni1/32)等を用いることができる。本発明に係るリチウム二次電池は、比較的熱安定性の良好なマンガン酸リチウム(LiMnO4)を正極活物質として用いた場合だけでなく、より熱安定性の低い上記のリチウム遷移金属複合酸化物を用いた場合であっても、電池ケースの破損や発火等の不具合が極めて生じ難く、優れた安全性が確保されたものである。
【0045】
正極活物質の塗工は、正極活物質粉末に溶剤や結着剤等を添加して作製したスラリー又はペーストを、ロールコータ法等を用いて、集電基板に塗布・乾燥することで行われ、その後に必要に応じてプレス処理等が施される。
【0046】
負極板3は、正極板2と同様にして作製することができる。負極板3を構成する金属箔体は、集電基板として銅箔又はニッケル箔等の負極電気化学反応に対する耐蝕性が良好な金属箔が好適に用いられる。負極活物質としては、ソフトカーボンやハードカーボンといったアモルファス系炭素質材料や、人造黒鉛、天然黒鉛等の高黒鉛化炭素質粉末が用いられる。
【0047】
セパレータ11は、多孔性ポリマーやセルロース等で構成されている。より具体的には、マイクロポアを有するリチウムイオン透過性のポリエチレンフィルム(PEフィルム)を、多孔性のリチウムイオン透過性のポリプロピレンフィルム(PPフィルム)で挟んだ三層構造としたものが好適に用いられる。このような構造のセパレータは、内部電極体の温度が上昇した場合に、PEフィルムが約130℃で軟化してマイクロポアが潰れ、リチウムイオンの移動、即ち電池反応を抑制する安全機構を有するものである。また、このPEフィルムは、より軟化温度の高いPPフィルムで挟持されているために、PEフィルムが軟化した場合においても、PPフィルムが形状を保持して正極板2と負極板3との接触・短絡が防止され、電池反応の確実な抑制と安全性の確保が可能となる。
【0048】
電極リード12,13は、正極板2、負極板3、及びセパレータ11の捲回作業時に、正極板2及び負極板3の、電極活物質の塗工されていない集電基板が露出した部分に、それぞれ取り付けられる。電極リード12,13としては、正極板2及び負極板3のそれぞれの集電基板と同じ材質からなる箔状のものが好適に用いられる。電極リード12,13の正極板2及び負極板3への取り付けは、超音波溶接やスポット溶接等により行うことができる。
【0049】
非水電解液を調製するための溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)といった炭酸エステル系のものや、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の単独溶媒又は混合溶媒を好適に用いることができる。特に、電解液の電導度及び高温安定性等の観点から、環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒が好適に用いられる。
【0050】
非水電解液を調製するための電解質としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)やホウフッ化リチウム(LiBF4)等のリチウム錯体フッ素化合物、又は過塩素酸リチウム(LiClO4)といったリチウムハロゲン化物を挙げることができる。これらのうちの一種類、又は二種類以上を、上述した有機溶媒(混合溶媒)に溶解することにより非水電解液を得ることができる。電解質としては、特にLiPF6を用いることが好ましい。酸化分解が起こり難く信頼性が高いからである。
【0051】
また、図1に示すように、本実施形態のリチウム二次電池1に用いられる放圧機構としての放圧孔9は、リチウム二次電池1の一端面における電極蓋14の中央部にあたる位置に形成されている。芯体4は、リチウム二次電池1の中央に配置されている。また、放圧孔9の構造は、外部端子と一体化されて放圧の妨げとならない構造である。このため、図1に示される放圧機構は、簡単な構成でありながらも良好な放圧作動性を示す機構である。なお、本発明に係るリチウム二次電池に用いられる放圧機構は、図1に示す放圧孔9を有するものに限定されることはない。即ち、電池内部で発生したガスを良好に放圧することが可能なものであれば、従来公知のいずれの放圧機構であっても好適に採用することができる。
【0052】
なお、図1に示すように、本実施形態のリチウム二次単電池1においては、電極蓋14及び/又は放圧孔9が形成された電極蓋14の外縁部直近の電池ケース10部分に絞り加工部51が形成されていることが、電極蓋14の位置決めと固定が確実になされるために好ましい。放圧機構を有するリチウム二次電池1を作製するには、先ず、電池ケース10の開口端部に、絞り加工部51を形成する。次いで、放圧孔9に相当する箇所に孔が形成された板状部材を、絞り加工部51が形成された電池ケース10の開口端部に溶接・固定する。その後、放圧孔9を一体的に構成した放圧孔ユニットを板状部材に嵌め込むことにより、放圧機構を有するリチウム二次電池1を作製することができる。このように、電池ケース10の開口端部に絞り加工部51が形成されていると、放圧孔ユニットを板状部材に嵌め込む際に生ずる嵌め込み応力を、電池ケース10との溶接部のみではなく、電池ケース10の絞り加工部51にも分散できることから、生産における安全性が向上し、歩留まりも向上する。
【0053】
図1に示すようなリチウム二次電池1の組み立てるには、電流を外部に取り出すための端子と電極リード12,13との導通を確保しつつ、内部電極体6を電池ケース10に挿入して安定な位置にホールドした後、非水電解液を含浸させる。次いで、電池ケース10を封止すれば、リチウム二次電池1を得ることができる。電池ケース10内部に酸化剤を入れることも好ましい。用いる酸化剤が、空気、酸素、又はオゾン等の気体である場合には、これらの気体を含む雰囲気下において電池の組み立て、非水電解液の含浸を行えばよい。
【0054】
なお、本実施形態のリチウム二次電池1においては、捲回型の内部電極体6を構成する正極板2及び負極板3に電極リード12,13を取り付けることなく、代わりに、正極集電部材を正極板2の金属箔体の先端、及び負極集電部材を負極板3の金属箔体の先端にそれぞれ溶接によって接続して、いわゆるタブレス構造型のリチウム二次電池としてもよい。
【0055】
図1においては、芯体4の形状が円筒状であり、その全体形状が円柱状であるリチウム二次電池1を示しているが、このようなもの以外にも、例えば図4に示すように、芯体24の形状が中空板状であり、全体形状が角型状のものであってもよい。このような形状の芯体24を用いた場合には、図5に示すように内部の圧力が所定以上に上昇したときは、正極板26及び負極板27を構成する金属箔体の、芯体24の貫通孔28(図4参照)に近接する部分が破れて破孔が形成され、この破孔、芯体24の貫通孔28(図4参照)、及び内部空間29を経由するガス放出流路が形成され、電池の外部へとガスを放出することが可能となる。従って、図1に示したリチウム二次電池1と同様の効果を得ることができる。なお、図4は、本発明のリチウム二次電池に用いられる芯体の他の例を示す斜視図であり、図5は、本発明のリチウム二次電池に用いられる内部電極体の他の例を示す斜視図である。なお、図5中、符号30はセパレータを示す。
【0056】
図6は、本発明のリチウム二次電池の他の実施形態を模式的に示す断面図である。図6に示す本実施形態のリチウム二次電池21は、金属箔体を構成要素として含んでなる電極板(正極板2、負極板3)を有し、この電極板がセパレータ11を介して芯体4に捲回された内部電極体6と、この内部電極体6を収納する電池ケース10とを備えている。また、内部電極体6から電流を導出するための正極集電部材16、及び負極集電部材17が配設されている。なお、芯体4には、芯体4の内部空間8に連通する少なくとも一の貫通孔7が形成されている。本実施形態のリチウム二次電池21は、電池ケース10の電池ケース10の耐圧強度(F1)と、金属箔体の貫通孔7に近接する部分(即ち、破孔が形成される部分)の耐圧強度(F2)が、F2<F1の関係を満たすように構成されている。本実施形態のリチウム二次電池21は、放圧機構としての放圧孔9を備えたものであり、芯体4に形成された貫通孔7と、この貫通孔7に連通する内部空間8は、この放圧孔9と連通している。
【0057】
本実施形態のリチウム二次電池21は、電池ケース10の内部圧力が所定以上に上昇した際に、電極板(正極板2、負極板3)を構成する金属箔体のうちの、芯体4の貫通孔7に近接する部分が破れて破孔が形成される。ここで、本実施形態のリチウム二次電池21は、F2<F1の関係を満たすように構成されているため、電池ケース10が破損する以前の段階で破孔が形成される。従って、形成された破孔、貫通孔7、及び内部空間8を経由するガス放出流路が、電池ケース10の破損前に形成され、発生したガスが放圧孔9へと導かれるために、極めて安全性に優れている。
【0058】
また、本発明に係るリチウム二次電池においては、図15に示すように、内部圧力が所定以上に上昇した場合に、上昇した内部圧力の作用によって、内部電極体110が電極板111の厚み方向に膨張変形するとともに、隣接する電極板111どうしの間に空間部112が形成され、内部電極体の内部で発生したガスが、形成された空間部112を通じて電池ケースの外部へと放出され得るガス放出流路が形成されるように構成されていることも好ましい。この場合、ガス放出流路の主要な部分が、隣接する電極板111どうしの間に、電極板111の捲回(又は積層)面と平行に形成されることになり、図1に示したリチウム二次電池1と同様の効果を得ることができる。
【0059】
更に、本発明に係るリチウム二次電池においては、図16に示すように、内部電極体126と電池ケースの間に、所定の圧力で変形可能な第二の外装体122を更に備え、内部圧力が所定以上に上昇した場合に、上昇した内部圧力の作用によって、第二の外装体122が変形し、内部電極体126が電極板125の厚み方向に膨張変形するように構成されていることが好ましい。このように構成された本実施形態のリチウム二次電池123は、内部電極体126が膨張変形することにより、隣接する電極板125どうしの間に空間部121が形成されるために、内部電極体126の内部で発生したガスが、形成された空間部121を通じて電池ケース124の外部へと放出され得るガス放出流路が形成される。従って、図1に示したリチウム二次電池1と同様の効果を得ることができる。
【0060】
なお、「内部圧力の作用」には、内部圧力の上昇に伴って上昇する内部温度の作用も含まれる。従って、第二の外装体122は、温度上昇によって軟化し、又は溶融して変形する場合がある。また、第二の外装体122を構成する材料は、適当な圧力や温度で変形、軟化、溶融等するものであれば特に限定されず、熱可塑性樹脂材料等を好適に用いることができる。
【0061】
以上、本発明のリチウム二次電池の実施形態について、主に捲回型の内部電極体を用いた場合を例に挙げつつ説明してきたが、本発明のリチウム二次電池が上記の実施形態に限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、図7に示すような芯体38を備えた積層型の内部電極体37を用いてもよい。また、本発明に係るリチウム二次電池は、特に、電池容量が2Ah以上である大型の電池に好適に採用されるが、このような容量以下の電池に適用することを妨げるものではない。また、本発明のリチウム二次電池は、大容量、低コスト、高信頼性、及び長期保存性に優れるという特徴を生かして、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)等の車載用電池や、EV・HEV等のモータ駆動用電源として好ましい。更には、高出力が必要とされるエンジン起動用の電源としても好適である。
【0062】
以上説明したように、本発明のリチウム二次電池は、それを構成する内部電極体の内部で発生したガスによって内部圧力が所定以上に上昇した場合に、ガス放出流路が、上昇した内部圧力の作用によって、内部電極体の変形を伴って形成されるように構成されたものである。従って、正極板及び負極板を構成する金属箔体の実質的な表面積が有効に利用されており、エネルギー密度が高く維持されたものであるとともに、極めて優れた安全性を有するものである。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
マンガン酸リチウム(LiMn24で表される組成のうち、Liが過剰であるとともに、Mnの一部がTiで置換されたもの)スピネルを正極活物質とし、これに導電助剤としてアセチレンブラックを外比で4質量%添加したものに、更に溶剤、バインダを加えて調製した正極スラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面にそれぞれ約50μmの厚みとなるように塗工して、厚さ約120μmの正極板を作製した。
【0065】
一方、グラファイトを負極活物質として調製した負極スラリーを、厚さ10μmの銅箔の両面にそれぞれ約40μmの厚みとなるように塗工して、厚さ約90μm負極板を作製した。
【0066】
作製した正極板と負極板とを、セパレータ(PP/PE/PP(三層))を介して、少なくとも一の孔が形成され、リチウム二次電池内部の圧力が所定以上に上昇したとき、正極板や負極板等を破って孔からガスが放圧されるように構成された芯体に捲回することにより、捲回型内部電極体を作製した。一方、EC、DMC、及びDECの各種有機溶媒を体積比で1:1:1となるように混合して混合溶媒を調製し、これに1mol/lの濃度となるように電解質であるLiPF6を溶解して非水電解液を調製した。
【0067】
捲回型内部電極体を収納したアルミニウム製の円筒型である電池ケースに非水電解液を充填し、電池ケースを封止することにより、セル容量5Ahのリチウム二次電池(放圧弁付)を作製した(実施例1)。なお、作製は全てドライプロセスにより行い、電池ケースの封止不良等による電池外部からの水分浸入等の影響も排除した。
【0068】
次に、得られたリチウム二次電池(実施例1)を満充電した後、更に定電流充電(定電流電源200Aの最大電圧は18Vに設定)を継続する過充電試験を行った。
【0069】
(実施例2)
ニッケル酸リチウム(LiNiO2で表される組成のうち、Niの一部がCo及びAlで置換されたもの)スピネルを正極活物質として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池(実施例2)を製造した。更に、実施例1と同様の過充電試験を行った。
【0070】
(比較例1)
捲回型内部電極体を作製する芯体として、孔が形成されていない従来の芯体を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池(比較例1)を製造した。更に、実施例1と同様の過充電試験を行った。
【0071】
(比較例2)
捲回型内部電極体を作製する芯体として、孔が形成されていない従来の芯体を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法でリチウム二次電池(比較例2)を製造した。更に、実施例1と同様の過充電試験を行った。
【0072】
実施例1,2のリチウム二次電池は、過充電時、内部の圧力の上昇により、芯体に近接する金属箔体が、芯体に形成された孔に沿った形で破られ、この芯体の孔から芯体内の空間を通って放圧が行われた。このため、金属箔体を捲回した捲回型内部電極体が酷く破損することや、圧力上昇により電池ケースが破損することがなく、安全性に優れたものであった。
【0073】
これに対して、比較例1のリチウム二次電池は、過充電時、内部の圧力の上昇によって、捲回型内部電極体内での放圧が追いつかず、電池ケース内部で、捲回型内部電極体が圧力上昇によって破裂していた。更に、比較例2のリチウム二次電池は、電池ケースが破裂するとともに、発火することが観測された。これは、比較例2のリチウム二次電池では、比較例1のリチウム二次電池で用いたマンガン酸リチウムに比してより熱安定性の低いニッケル酸リチウムを用いたためであると推測される。
【0074】
以上の結果より、マンガン酸リチウムに比して熱安定性の低い(即ち、過充電試験等の誤用試験時に、より反応性が高い)ニッケル酸リチウムを正極活物質として用いた場合にも優れた安全性が確保され得ることが判明した。なお、上記の正極活物質以外にも、マンガン酸リチウムよりも熱安定性の低いコバルト酸リチウム(LiCoO2)やマンガン・コバルト・ニッケル複合正極材料(LiMn1/3Co1/3Ni1/32)を用いて実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造するとともに、過充電試験を行ったところ、実施例1,2のリチウム二次電池と同様の優れた安全性を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のリチウム二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車用のモータ駆動用バッテリーに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のリチウム二次電池の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示すリチウム二次電池に用いられる芯体の一例を模式的に示す説明図であり、図2(a)は中心軸に垂直な方向から見た正面図、図2(b)は中心軸に平行な方向から見た側面図、図2(c)は図2(a)の断面図である。
【図3】本発明のリチウム二次電池に用いられる内部電極体の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明のリチウム二次電池に用いられる芯体の他の例を示す斜視図である。
【図5】本発明のリチウム二次電池に用いられる内部電極体の他の例を示す斜視図である。
【図6】本発明のリチウム二次電池の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明のリチウム二次電池に用いられる積層型内部電極体の一例を示す斜視図である。
【図8】従来のリチウム二次電池の一実施形態を示す断面図である。
【図9】従来のリチウム二次電池の他の実施形態を示す説明図であり、図9(a)は斜視図であり、図9(b)は部分断面図である。
【図10】本発明のリチウム二次電池に用いられる芯体の更に他の例を示す斜視図である。
【図11(a)】本発明のリチウム二次電池に用いられる芯体の更に他の例を示す斜視図である。
【図11(b)】本発明のリチウム二次電池に用いられる内部電極体の更に他の例を示す部分断面図である。
【図12(a)】本発明のリチウム二次電池に用いられる芯体の更に他の例を示す斜視図である。
【図12(b)】本発明のリチウム二次電池に用いられる内部電極体の更に他の例を示す部分断面図である。
【図13】本発明のリチウム二次電池の更に他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図14】本発明のリチウム二次電池の更に他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図15】内部電極体が電極板の厚み方向に膨張変形する状態の一例を示す模式図である。
【図16】内部電極体が電極板の厚み方向に膨張変形する状態の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1,21,31,41,93,103,123:リチウム二次電池、2,26:正極板、3,27:負極板、4,24,38,44,61,71,81:芯体、6,25,37,74,85,96,106,110,126:内部電極体、7,28,91,101:貫通孔、8,29,62,90,100:内部空間、9:放圧孔、10,94,104,124:電池ケース、11:セパレータ、12,13:電極リード、14:電極蓋、16:正極集電部材、17:負極集電部材、19:金属箔、20:放圧弁、32:放圧機構、33:正極内部端子、34:負極内部端子、35:正極外部端子、36:負極外部端子、42:電極構造体、43:集電体箔側小孔、45:芯体側小孔、51:絞り加工部、60:スリット(切欠部)、70:溝部、72:端部、73,84,95,105,111,125:電極板、80:芯体要素、82:隙間部、83:中空部、92:第一の外装体、102:第一の外装体、112,121:空間部、122:第二の外装体、F1,F2:強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔体を構成要素として含んでなる電極板を有し、前記電極板が捲回又は積層されてなる内部電極体と、
前記内部電極体を収納する電池ケースと、を備えたリチウム二次電池であって、
前記内部電極体の内部で発生したガスによって前記電池ケースの内部圧力が所定以上に上昇した場合に、
前記ガスが前記電池ケースの外部へと放出され得るガス放出流路が、上昇した前記内部圧力の作用により前記内部電極体の変形を伴って形成されるリチウム二次電池。
【請求項2】
前記ガス放出流路の少なくとも一部が、前記内部電極体の前記電極板の捲回又は積層面に対して鉛直方向に、前記内部電極体の内部に形成される請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記変形が、前記金属箔体の予め設計された所定の箇所が破れて破孔が形成されることである請求項2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記内部電極体が、前記電極板が捲回又は積層される芯体を更に有するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記芯体の形状が、所定の内部空間を有するとともに前記内部空間に連通する一以上の貫通孔が形成された形状であり、
前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、
上昇した前記内部圧力の作用によって前記金属箔体の前記貫通孔に近接する部分が破れて破孔が形成され、
前記ガスが、前記破孔、前記貫通孔、及び前記内部空間を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される請求項4に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記芯体には、一以上の溝部が、少なくとも一の端部まで形成されており、
前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、
上昇した前記内部圧力の作用によって、前記金属箔体の前記溝部に近接する部分が破れて破孔が形成され、
前記ガスが、前記破孔、及び前記溝部を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される請求項4に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記芯体が、中空部を有する二以上の芯体要素が、それぞれの間に所定間隔の隙間部が形成されるとともに、前記中空部が相互に連通するように配設されてなるものであり、
前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、
上昇した前記内部圧力の作用によって前記金属箔体の前記隙間部に近接する部分が破れて破孔が形成され、
前記ガスが、前記破孔、前記隙間部、及び前記中空部を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される請求項4に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記内部電極体と前記電池ケースの間に、所定の内部空間を有するとともに前記内部空間に連通する一以上の貫通孔が形成された第一の外装体を更に備え、
前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、
上昇した前記内部圧力の作用によって前記金属箔体の前記貫通孔に近接する部分が破れて破孔が形成され、
前記ガスが、前記破孔、前記貫通孔、及び前記内部空間を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される請求項3に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記電池ケースの耐圧強度(F1)と、
前記金属箔体の、前記破孔が形成される部分の耐圧強度(F2)が、
F2<F1の関係を満たす請求項3〜8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、
上昇した前記内部圧力の作用によって、前記内部電極体が前記電極板の厚み方向に膨張変形するとともに、隣接する前記電極板どうしの間に空間部が形成され、
前記ガスが、前記空間部を通じて前記電池ケースの外部へと放出され得る前記ガス放出流路が形成される請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記内部電極体と前記電池ケースの間に、所定の圧力で変形可能な第二の外装体を更に備え、
前記内部圧力が所定以上に上昇した場合に、
上昇した前記内部圧力の作用によって、前記第二の外装体が変形し、前記内部電極体が前記電極板の厚み方向に膨張変形する請求項10に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記電池ケースは放圧機構を備えてなり、
前記ガス放出流路の末端が、前記放圧機構に連通する請求項1〜11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記芯体の形状が円筒状であり、全体形状が円柱状である請求項1〜12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記芯体の形状が中空板状であり、全体形状が角柱状である請求項1〜12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図12(a)】
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【図12(b)】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−120606(P2006−120606A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189263(P2005−189263)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】