説明

リチウム含有複合酸化物の作製方法

【課題】簡便で、製造コストを低減できる、リチウム含有酸化物を作製する。
【解決手段】一般式LiMPO(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)で表されるリチウム含有複合酸化物の作製方法であって、Li及びPを含む溶液を形成した後、Li及びPを含む溶液を、M(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)を含む溶液に滴下して混合液を形成し、当該混合液を用いた水熱法により、一般式LiMPO(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)で表される単結晶粒のリチウム含有複合酸化物を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム含有複合酸化物の作製方法に関する。また、リチウム含有酸化物を活物質として用いる電極を有するリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池の開発が行われている。熱安定性が高いことから、リチウムイオン二次電池の正極活物質材料として、オリビン型構造を有するLiFePO,LiMnPO,LiCoPO,LiNiPO等のリチウム含有複合酸化物が期待されている。オリビン型構造を有するリチウム含有複合酸化物に含まれる遷移金属元素(Fe,Mn,Co,Ni)は二価である。
【0003】
オリビン型構造を有するリチウム含有複合酸化物の作製方法として、固相法、水熱法、ゾルゲル法等が用いられる(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、リチウムイオン二次電池の放電容量及びエネルギー密度を高めるため、キャリアであるイオンの挿入及び脱離に関与する活物質層を構成する活物質の粒径を小さくすると共に、粒度分布の幅を狭くする試みがなされている。そこで、粒度分布の幅が狭く、粒径が小さいリチウム含有複合酸化物の作製方法として、リチウム源、二価の遷移金属元素源、及びリン源の原料を水に溶かした溶液を耐熱容器にいれ、所定の温度に加熱し、合成反応を行う水熱法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第08/077447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、二価の遷移金属元素(M(II))源の溶液は、水酸基を有する液体と反応すると、二価の遷移金属元素の水酸化物(M(II)(OH))が形成される。二価の遷移金属元素の水酸化物は、酸素に触れると容易に遷移金属元素が酸化されてしまい三価以上の遷移金属元素となる。水熱法で作製されるリチウム含有複合酸化物に副生成物ができてしまう。このため、二価の遷移金属元素源の溶液の調整は、大気雰囲気ではなく脱酸素雰囲気で行う必要があり、大がかりな設備が必要となる。
【0007】
そこで、本発明の一態様では、簡便で、製造コストを低減できる、リチウム含有酸化物の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、一般式LiMPO(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)で表されるリチウム含有複合酸化物の作製方法であって、Li及びPを含む溶液を形成した後、M(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)を含む溶液にLi及びPを含む溶液を滴下して混合液を形成し、当該混合液を用いた水熱法により、一般式LiMPO(Mは、Fe(II),Ni(II),Co(II),Mn(II)の一以上)で表される単結晶粒のリチウム含有複合酸化物を作製することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、リチウム化合物を溶解した第1の溶液と、リン化合物を溶解した第2の溶液とを混合して第1の混合液を形成し、鉄(II)化合物、マンガン(II)化合物、コバルト(II)化合物、及びニッケル(II)化合物の一以上を溶解した第3の溶液に該第1の混合液を滴下して、第2の混合液を形成する。次に、水熱法を用いて、第2の混合液を加熱することで、単結晶粒のリチウム含有複合酸化物を作製することを特徴とする。
【0010】
なお、上記第1の混合液または第2の混合液のPHを6〜8、好ましくは7とするように、Li及びPを含む溶液、Mを含む溶液、第1の溶液、第2の溶液、及び第3の溶液の濃度を制御する。
【0011】
また、リチウム含有複合酸化物は、扁平形状の単結晶粒であり、オリビン型構造である。また、単結晶粒のa軸及びc軸方向の辺の長さよりb軸方向の辺の長さが短く、b軸方向の辺の長さ5nm以上50nm以下である。
【0012】
Li及びPを含む溶液は、アルカリ性である。Mを含む溶液に、Li及びPを含む溶液を滴下すると、Mを含む溶液に含まれるFe(II)イオン,Mn(II)イオン,Co(II)イオン,Ni(II)イオンとLi及びPを含む溶液に含まれる水酸化イオンとの反応より、Mを含む溶液に含まれる水素イオンとLi及びPを含む溶液に含まれる水酸化イオンとの反応(即ち、中和反応)の方が優先的に生じ、遷移金属元素の水酸化物の生成を抑制することが可能である。この結果、大気雰囲気で、Li,P,及びMを含む混合液を調整することが可能である。また、当該Li,P,及びMを含む混合液を用いた水熱法により、オリビン型リチウム含有複合酸化物を作製することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様により、副生成物の量を低減し、単結晶粒のリチウム含有複合酸化物を作製することができる。また、大気雰囲気で、単結晶粒のリチウム含有複合酸化物を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リチウム含有複合酸化物の作製方法を説明するための図である。
【図2】リチウム含有複合酸化物を説明するための斜視図である。
【図3】オリビン型LiFePOの結晶構造を説明するための図である。
【図4】リチウムイオン二次電池を説明するための断面図である。
【図5】リチウムイオン二次電池の応用の一形態の斜視図である。
【図6】無線給電システムの構成の例を示す図である。
【図7】無線給電システムの構成の例を示す図である。
【図8】SEM像を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではないとする。なお、説明中に図面を参照するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。また、同様のものを指す際には同じハッチパターンを使用し、特に符号を付さない場合がある。
【0016】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様であるリチウム含有複合酸化物の作製方法について、図1を用いて説明する。
【0017】
ステップS201aにおいて、リチウム化合物を秤量する。また、ステップS201bにおいて、リン化合物を秤量する。また、ステップS201cにおいて、鉄(II)化合物、マンガン(II)化合物、コバルト(II)化合物、及びニッケル(II)化合物(以下、M(II)化合物と示す。)の一以上を秤量する。ここでは、のちに形成される、リチウム化合物、リン化合物及びM(II)化合物を含む混合液BのPHが6以上8以下、好ましくは7となるように、ステップS201a〜S201cにおいて、各化合物を秤量する。
【0018】
リチウム化合物の代表例としては、水酸化リチウム−水和物(LiOH・HO)、塩化リチウム(LiCl)、炭酸リチウム(LiCO)、酢酸リチウム(LiCHCOO)、シュウ酸リチウム((COOLi))等がある。
【0019】
リン化合物の代表例としては、オルトリン酸(HPO)等のリン酸、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)等のリン酸水素アンモニウム等がある。
【0020】
鉄(II)化合物の代表例としては、塩化鉄(FeCl)、硫酸鉄七水和物(FeSO・7HO)、酢酸鉄(Fe(CHCOO))等がある。
【0021】
マンガン(II)化合物の代表例としては、塩化マンガン四水和物(MnCl・4HO)、硫酸マンガン−水和物(MnSO・HO)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)等がある。
【0022】
コバルト(II)化合物の代表例としては、塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)、硫酸コバルト(CoSO)、酢酸コバルト四水和物(Co(CHCOO)・4HO)等がある。
【0023】
ニッケル(II)化合物の代表例としては、塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO)、硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)、酢酸ニッケル四水和物(Ni(CHCOO)・4HO)等がある。
【0024】
次に、ステップS203aにおいて、リチウム化合物を溶媒に溶解して、リチウムを含む溶液を形成する。同様に、ステップS203b、S203cにおいて、それぞれリン化合物、M(II)化合物を溶媒に溶解して、リンを含む溶液、M(II)を含む溶液を形成する。
【0025】
リチウム化合物、リン化合物、M(II)化合物を溶解する溶媒としては、水がある。
【0026】
次に、ステップS205において、ステップS203aで形成したリチウムを含む溶液と、ステップS203bで形成したリンを含む溶液を混合し、混合液Aを形成する。なお、リチウムを含む溶液はアルカリ性であり、リンを含む溶液は酸性であるため、当該ステップS205において、中和反応が生じ、混合液Aは弱アルカリ性となる。また、リチウムを含む溶液と、リンを含む溶液とのそれぞれの濃度によって、混合液Aに沈殿物が生じてもよい。
【0027】
なお、混合液Aの代わりに、LiPO,LiHPO,LiHPO等のリチウム塩を水等の溶媒に溶解して、リチウム及びリンを含む溶液を形成してもよい。
【0028】
次に、ステップS207において、ステップS205で形成した混合液Aと、ステップS203cで形成した、M(II)を含む溶液を混合して、混合液Bを形成する。
【0029】
なお、ステップS207においては、M(II)を含む溶液を撹拌しながら、混合液Aを少量ずつ滴下することが好ましい。
【0030】
混合液Aは弱アルカリ性である。このため、混合液AにM(II)を含む溶液を滴下すると、混合液AがM(II)を含む溶液に対して多量であるため、M(II)を含む溶液のM(II)と、混合液Aに含まれる水酸基との反応が生じ、M(II)水酸化物が形成されてしまう。
【0031】
一方、M(II)を含む溶液に混合液Aを少量ずつ滴下すると、混合液AがM(II)を含む溶液に対して少量であるため、M(II)と、混合液Aに含まれる水酸基との反応よりも、M(II)を含む溶液に含まれる水素と、混合液Aに含まれる水酸基との中和反応の方が優先的に行われる。この結果、M(II)水酸化物、代表的には鉄(II)水酸化物、マンガン(II)水酸化物、及びニッケル(II)水酸化物の生成を抑制することができる。即ち、大気雰囲気において、Li,P,M(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)を含む混合液Bを形成することが可能である。
【0032】
また、ステップS207は、室温以上50℃以下で行うことが好ましい。ステップS207を50℃より高い温度、例えば80℃で行うと、混合液AのPHが変化し、酸性となる。この結果、混合液Bは酸性となり、当該混合液Bを用いて水熱法を行うと、b軸方向の厚さが増加し、扁平状の単結晶粒とならないため好ましくない。一方、混合液BのPHが高く、アルカリ性であると、合成されるリチウム含有複合酸化物は微粒子化し、扁平状の単結晶粒とならないため好ましくない。
【0033】
次に、ステップS209において、混合液Bをオートクレーブ等の耐熱耐圧容器に入れたのち、100℃以上350℃以下、0.1MPa以上100MPa以下で、0.5時間以上24時間以下加熱した後冷却し、耐熱耐圧容器内の溶液を濾過し、水洗して、乾燥させる。
【0034】
この結果、化合物Aとしてオリビン型リチウム含有複合酸化物(LiMPO(Mは、Fe(II),Ni(II),Co(II),Mn(II)の一以上))を収率高く作製することができる。M(II)化合物の量によって、リチウム含有複合酸化物として、LiFePO、LiNiPO、LiCoPO、LiMnPO、LiFeNiPO、LiFeCoPO、LiFeMnPO、LiNiCoPO、LiNiMnPO(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFeNiCoPO、LiFeNiMnPO、LiNiCoMnPO(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFeNiCoMnPO(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が適宜得られる。また、本実施の形態により得られるリチウム含有複合酸化物は扁平形状の単結晶粒である。
【0035】
ここで、図1に示す作製方法により得られるリチウム含有複合酸化物の形状について説明する。
【0036】
図2は、図1に示す作製方法により得られるオリビン型リチウム含有複合酸化物の斜視図である。図2(A)は、直方体状である単結晶粒のリチウム含有複合酸化物101を示す。a軸方向及びc軸方向における辺の長さと比較して、b軸方向における辺の長さが短い扁平形状である。また、b軸における辺の長さが5nm以上50nm以下、好ましくは5nm以上20nm以下である。また、a軸方向及びc軸方向における辺の長さの比が0.5以上1.5以下、好ましくは0.8以上1.2以下である。即ち、b面における形状が正方形、略正方形である。
【0037】
図2(B)は、b面における形状が任意の形状であり、かつb軸方向における辺の長さが5nm以上50nm以下、好ましくは5nm以上20nm以下であるリチウム含有複合酸化物103である。
【0038】
なお、リチウム含有複合酸化物103が、a軸方向及びc軸方向における辺の長さと比較して、b軸方向における辺の長さが短い扁平形状の結晶であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、及びX線回折(XRD)の複数を用いることで判断することができる。例えば、リチウム含有複合酸化物103が単結晶粒であることは、透過型電子顕微鏡(TEM)の暗視野像において、コントラストが均一で粒界が認識されないことにより、判断することができる。
【0039】
ここで、オリビン型構造について説明する。図3は、オリビン型リチウム含有複合酸化物の一例であるリン酸鉄リチウム(LiFePO)の単位格子301を示す。オリビン型リン酸鉄リチウムは斜方晶構造であり、単位格子中には組成式で4つのリン酸鉄リチウム(LiFePO)が含まれる。オリビン型構造は、酸化物イオンの六方最密充填構造を基本骨格としており、最密充填構造の隙間に、リチウム、鉄及びリンが位置する。
【0040】
また、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)は、四面体サイト及び二種類の八面体サイトを有する。四面体サイトは頂点に四つの酸素原子を有する。八面体サイトは頂点に六つの酸素原子を有する。四面体サイトの中心にはリン307が配置し、八面体サイトの中心にリチウム303または鉄305が配置する。中心にリチウム303が配置する八面体サイトをM1サイトといい、中心に鉄305が配置する八面体サイトをM2サイトという。M1サイトは、b軸方向に一次元的に配列している。即ち、リチウム303が<010>方向に一次元的に配列している。なお、便宜上、リチウム303と他のイオン、または原子との結合を線で示していない。
【0041】
また、隣接するM2サイトの鉄305は、酸素309を間に介してジグザグ状に結合している。また、隣接するM2サイトの鉄305の間で結合する酸素309は、四面体サイトのリン307とも結合している。このため、鉄−酸素−リンの結合が連続する。
【0042】
なお、オリビン型リン酸鉄リチウムは、歪みを有してもよい。また、リン酸鉄リチウムにおいて、リチウム、鉄、リン、及び酸素の組成比は、1:1:1:4に限定されない。また、リン酸遷移金属リチウム(LiMPO)の遷移金属(M)として、リチウムイオンよりイオン半径の大きい遷移金属、例えば、マンガン、コバルト、またはニッケルなどを用いてもよい。
【0043】
図3に示すようなオリビン型リン酸鉄リチウムは、リン酸鉄となっても構造が安定である。よって、全てのリチウムイオンの挿入及び脱離が可能である。また、オリビン型リン酸鉄リチウムは、熱的安定性を有する。また、オリビン型リン酸鉄リチウムは、リチウムイオンがb軸方向に一次元的に配列しており、リチウムイオンは、b軸方向に拡散する。このため、単結晶粒のb軸方向の辺の長さを短くすることで、リチウムイオンの拡散を容易とすることができる。
【0044】
また、本実施の形態に示すリチウム含有複合酸化物のように、リチウムイオンの移動経路であるb軸方向における辺の長さが5nm以上50nm以下、好ましくは5nm以上20nm以下とすると、電気伝導に寄与するリチウムイオンの移動距離が短くなる。このため、本実施の形態に示すリチウム含有複合酸化物をリチウムイオン電池の正極活物質として用いることで、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が低減するため、高出力化が可能であると共に、放電容量を理論放電容量にまで高めることができる。
【0045】
本実施の形態により、簡易な方法で、収量高くリチウム含有複合酸化物を作製することができる。
【0046】
(実施の形態2)
本実施の形態では、リチウムイオン二次電池及びその作製方法について説明する。
【0047】
本実施の形態のリチウムイオン二次電池の一形態について図4を用いて説明する。ここでは、リチウムイオン電池の断面構造について、以下に説明する。
【0048】
リチウムイオン二次電池400は、負極集電体407及び負極活物質層409で構成される負極411と、正極集電体401及び正極活物質層403で構成される正極405と、負極411及び正極405で挟持されるセパレータ413とで構成される。なお、セパレータ413中には電解質415が含浸されている。また、負極集電体407は外部端子419と接続し、正極集電体401は外部端子417と接続する。外部端子419の端部はガスケット421に埋没されている。即ち、外部端子417、419は、ガスケット421によって絶縁されている。
【0049】
なお、本明細書においては、リチウムイオンが安定に存在する材料を含み、キャリアイオンであるリチウムイオンを移送可能であるものを電解質という。例えば、リチウムイオンが安定に存在する材料(溶質)を液体状の溶媒に溶解した電解液、及びリチウムイオンが安定に存在する材料(溶質)を含む固体状の固体電解質を、電解質に含める。
【0050】
なお、活物質とは、キャリアであるイオンの挿入及び脱離に関わる物質を指し、炭素層などを含むものではない。後に説明する塗布法により正極及び負極等の電極を作製する時には、炭素層が形成された活物質と共に、導電助剤やバインダ、溶媒等の他の材料を混合したものを活物質層として集電体上に形成する。よって、活物質と活物質層は区別される。
【0051】
負極集電体407は、銅、ステンレス、鉄、ニッケル等の導電性の高い材料を用いることができる。また、負極集電体407は、箔状、板状、網状等の形状を適宜用いることができる。
【0052】
負極活物質層409としては、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な材料を用いる。代表的には、リチウム、アルミニウム、黒鉛、シリコン、錫、ゲルマニウムなどが用いられる。負極集電体407を用いず負極活物質層409を単体で負極として用いてもよい。黒鉛と比較すると、ゲルマニウム、シリコン、リチウム、アルミニウムの理論リチウム吸蔵容量が大きい。吸蔵容量が大きいと小面積でも十分に充放電が可能であり、負極として機能するため、コストの節減及び二次電池の小型化につながる。ただし、シリコンなどはリチウム吸蔵により体積が4倍程度まで増えるために、材料自身が脆くなる事に十分に気をつける必要がある。
【0053】
なお、負極活物質層409にリチウムをプレドープしてもよい。リチウムのプレドープ方法としては、スパッタリング法により負極活物質層409表面にリチウム層を形成してもよい。または、負極活物質層409の表面にリチウム箔を設けることで、負極活物質層409にリチウムをプレドープすることができる。
【0054】
負極活物質層409の厚さは、20μm以上100μm以下の間で所望の厚さを選択する。
【0055】
なお、負極活物質層409には、バインダ、導電助剤を有してもよい。
【0056】
バインダとしては、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロースなどの多糖類や、ポリビニルクロリド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムなどのビニルポリマー、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテルなどがある。
【0057】
導電助剤としては、その材料自身が電子導電体であり、リチウムイオン二次電池内で他の物質と化学変化を起こさないものであればよい。例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、VGCF(登録商標)などの炭素系材料、銅、ニッケル、アルミニウムもしくは銀などの金属材料またはこれらの混合物の粉末や繊維などがそれに該当する。導電助剤とは、活物質間の導電性を助ける物質であり、離れている活物質の間に充填され、活物質同士の導通をとる材料である。
【0058】
正極集電体401は、白金、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス等の導電性の高い材料を用いることができる。また、正極集電体401は、箔状、板状、網状等の形状を適宜用いることができる。
【0059】
正極活物質層403は、実施の形態1で得られるリチウムを含む複合酸化物を適宜用いることができる。リチウム含有複合酸化物は、表面を厚さ10nm以下、好ましくは1nm以上10nm以下の炭素層で覆われていてもよい。
【0060】
正極活物質層403の厚さは、20μm以上100μm以下の間で所望の厚さを選択する。なお、クラックや剥離が生じないように、正極活物質層403の厚さを適宜調整することが好ましい。
【0061】
また、正極活物質層403には、負極活物質層409と同様に、バインダ及び導電助剤を有してもよい。バインダ及び導電助剤は、負極活物質層409に列挙するバインダ及び導電助剤を適宜用いることができる。
【0062】
セパレータ413は、絶縁性の多孔体を用いる。セパレータ413の代表例としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレン等がある。
【0063】
電解質415の溶質は、キャリアイオンであるリチウムイオンを移送可能で、且つリチウムイオンが安定に存在する材料を用いる。電解質の溶質の代表例としては、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSON等のリチウム塩がある。
【0064】
また、電解質415の溶媒としては、リチウムイオンの移送が可能な材料を用いる。電解質415の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解質415の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性を含めた安全性が高まる。また、リチウムイオン二次電池400の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。
【0065】
また、電解質415として、LiPO等の固体電解質を用いることができる。なお、電解質415として固体電解質を用いる場合は、セパレータ413は不要である。
【0066】
外部端子417、419は、ステンレス鋼板、アルミニウム板なとの金属部材を適宜用いることができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、リチウムイオン二次電池400として、ボタン型リチウムイオン二次電池を示したが、封止型リチウムイオン二次電池、円筒型リチウムイオン二次電池、角型リチウムイオン二次電池等の様々な形状のリチウムイオン二次電池とすることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0068】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、容量が大きい。また、出力電圧が高い。これらのため、小型化及び軽量化が可能である。また、充放電の繰り返しによる劣化が少なく、長期間の使用が可能であり、コスト削減が可能である。また、正極活物質層に、扁平形状の単結晶粒であり、b軸方向における辺の長さが5nm以上50nm以下、好ましくは5nm以上20nm以下であるオリビン型のリチウム含有複合酸化物を用いることで、リチウムイオン二次電池の放電容量を高めることができると共に、高出力化が可能である。
【0069】
次に、本実施の形態に示すリチウムイオン二次電池400の作製方法について説明する。
【0070】
はじめに、負極411の作製方法について、説明する。
【0071】
負極集電体407上に、塗布法、スパッタリング法、蒸着法などにより負極活物質層409を形成することで、負極411を作製することができる。または、負極411として、リチウム、アルミニウム、黒鉛、及びシリコンの箔、板、または網を負極として用いることができる。ここでは、黒鉛にリチウムをプレドープして負極を作製する。
【0072】
次に、正極405の作製方法について、説明する。
【0073】
正極集電体401上に、塗布法などによりリチウム含有複合酸化物を含むスラリーを塗布した後、乾燥させて正極活物質層403を形成することで、正極を作製することができる。
【0074】
なお、粒径の小さなリチウム含有複合酸化物は凝集しやすく、スラリー中で均一に分散しにくい。このため、リチウム含有複合酸化物を均一にスラリーに分散させるために、分散剤及び分散媒を適宜用いることが好ましい。
【0075】
次に、負極411、セパレータ413、及び正極405を電解質415に含浸させる。次に、外部端子417に、正極405、セパレータ413、ガスケット421、負極411、及び外部端子419の順に積層し、「コインかしめ機」で外部端子417及び外部端子419をかしめてコイン型のリチウムイオン二次電池を作製することができる。
【0076】
なお、外部端子417及び正極405の間、または外部端子419及び負極411の間に、スペーサ、及びワッシャを入れて、外部端子417及び正極405の接続、並びに外部端子419及び負極411の接続をより高めてもよい。
【0077】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で説明したリチウムイオン二次電池の応用形態について図5を用いて説明する。
【0078】
実施の形態2で説明したリチウムイオン二次電池は、デジタルカメラやビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう。)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置等の電子機器に用いることができる。また、電気自動車、ハイブリッド自動車、鉄道用電気車両、作業車、カート、電動車椅子等の電気推進車両に用いることができる。ここでは、電気推進車両の例を説明する。
【0079】
図5(A)に、電気推進車両の一つである四輪の自動車500の構成を示す。自動車500は、電気自動車またはハイブリッド自動車である。自動車500は、その底部にリチウムイオン二次電池502が設けられている例を示している。自動車500におけるリチウムイオン二次電池502の位置を明確にするために、図5(B)に、輪郭だけ示した自動車500と、自動車500の底部に設けられたリチウムイオン二次電池502とを示す。実施の形態2で説明したリチウムイオン二次電池を、リチウムイオン二次電池502に用いることができる。リチウムイオン二次電池502は、プラグイン技術や無線給電システムによる外部からの電力供給により充電をすることができる。
【0080】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池を、無線給電システム(以下、RF給電システムと呼ぶ。)に用いた場合の一例を、図6及び図7のブロック図を用いて説明する。なお、各ブロック図では、受電装置及び給電装置内の構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとして示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが困難であり、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0081】
はじめに、図6を用いてRF給電システムについて説明する。
【0082】
受電装置600は、給電装置700から供給された電力で駆動する電子機器または電気推進車両であるが、この他電力で駆動する装置に適宜適用することができる。電子機器の代表例としては、デジタルカメラやビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、表示装置、コンピュータ等がある。また、電気推進車両の代表例としては、電気自動車、ハイブリッド自動車、鉄道用電気車両、作業車、カート、電動車椅子等がある。また、給電装置700は、受電装置600に電力を供給する機能を有する。
【0083】
図6において、受電装置600は、受電装置部601と、電源負荷部610とを有する。受電装置部601は、受電装置用アンテナ回路602と、信号処理回路603と、リチウムイオン二次電池604とを少なくとも有する。また、給電装置700は、給電装置用アンテナ回路701と、信号処理回路702とを少なくとも有する。
【0084】
受電装置用アンテナ回路602は、給電装置用アンテナ回路701が発信する信号を受け取る、あるいは、給電装置用アンテナ回路701に信号を発信する役割を有する。信号処理回路603は、受電装置用アンテナ回路602が受信した信号を処理し、リチウムイオン二次電池604の充電、リチウムイオン二次電池604から電源負荷部610への電力の供給を制御する。また、信号処理回路603は、受電装置用アンテナ回路602の動作を制御する。すなわち、受電装置用アンテナ回路602から発信する信号の強度、周波数などを制御することができる。電源負荷部610は、リチウムイオン二次電池604から電力を受け取り、受電装置600を駆動する駆動部である。電源負荷部610の代表例としては、モータ、駆動回路等があるが、その他の電力を受け取って受電装置を駆動する装置を適宜用いることができる。また、給電装置用アンテナ回路701は、受電装置用アンテナ回路602に信号を送る、あるいは、受電装置用アンテナ回路602からの信号を受け取る役割を有する。信号処理回路702は、給電装置用アンテナ回路701が受信した信号を処理する。また、信号処理回路702は、給電装置用アンテナ回路701の動作を制御する。すなわち、給電装置用アンテナ回路701から発信する信号の強度、周波数などを制御することができる。
【0085】
本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池は、図6で説明したRF給電システムにおける受電装置600が有するリチウムイオン二次電池604として利用される。
【0086】
RF給電システムに本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池を利用することで、従来の二次電池に比べて放電容量又は充電容量(蓄電量ともいう)を増やすことができる。よって、無線給電の時間間隔を延ばすことができる(何度も給電する手間を省くことができる)。
【0087】
また、RF給電システムに本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池を利用することで、電源負荷部610を駆動することができる放電容量又は充電容量が従来と同じであれば、受電装置600の小型化及び軽量化が可能である。従って、トータルコストを減らすことができる。
【0088】
次に、RF給電システムの他の例について図7を用いて説明する。
【0089】
図7において、受電装置600は、受電装置部601と、電源負荷部610とを有する。受電装置部601は、受電装置用アンテナ回路602と、信号処理回路603と、リチウムイオン二次電池604と、整流回路605と、変調回路606と、電源回路607とを、少なくとも有する。また、給電装置700は、給電装置用アンテナ回路701と、信号処理回路702と、整流回路703と、変調回路704と、復調回路705と、発振回路706とを、少なくとも有する。
【0090】
受電装置用アンテナ回路602は、給電装置用アンテナ回路701が発信する信号を受け取る、あるいは、給電装置用アンテナ回路701に信号を発信する役割を有する。給電装置用アンテナ回路701が発信する信号を受け取る場合、整流回路605は受電装置用アンテナ回路602が受信した信号から直流電圧を生成する役割を有する。信号処理回路603は受電装置用アンテナ回路602が受信した信号を処理し、リチウムイオン二次電池604の充電、リチウムイオン二次電池604から電源回路607への電力の供給を制御する役割を有する。電源回路607は、リチウムイオン二次電池604が蓄電している電圧を電源負荷部610に必要な電圧に変換する役割を有する。変調回路606は受電装置600から給電装置700へ何らかの応答を送信する場合に使用される。
【0091】
電源回路607を有することで、電源負荷部610に供給する電力を制御することができる。このため、電源負荷部610に過電圧が印加されることを低減することが可能であり、受電装置600の劣化や破壊を低減することができる。
【0092】
また、変調回路606を有することで、受電装置600から給電装置700へ信号を送信することが可能である。このため、受電装置600の充電量を判断し、一定量の充電が行われた場合に、受電装置600から給電装置700に信号を送信し、給電装置700から受電装置600への給電を停止させることができる。この結果、リチウムイオン二次電池604の充電量を100%としないことで、リチウムイオン二次電池604の充電回数を増加させることが可能である。
【0093】
また、給電装置用アンテナ回路701は、受電装置用アンテナ回路602に信号を送る、あるいは、受電装置用アンテナ回路602から信号を受け取る役割を有する。受電装置用アンテナ回路602に信号を送る場合、信号処理回路702は、受電装置に送信する信号を生成する回路である。発振回路706は一定の周波数の信号を生成する回路である。変調回路704は、信号処理回路702が生成した信号と発振回路706で生成された一定の周波数の信号に従って、給電装置用アンテナ回路701に電圧を印加する役割を有する。そうすることで、給電装置用アンテナ回路701から信号が出力される。一方、受電装置用アンテナ回路602から信号を受け取る場合、整流回路703は受け取った信号を整流する役割を有する。復調回路705は、整流回路703が整流した信号から受電装置600が給電装置700に送った信号を抽出する。信号処理回路702は復調回路705によって抽出された信号を解析する役割を有する。
【0094】
なお、RF給電を行うことができれば、各回路の間にどんな回路を設けてもよい。例えば、受電装置600が信号を受信し整流回路605で直流電圧を生成したあとに、後段に設けられたDC−DCコンバータやレギュレータといった回路によって、定電圧を生成してもよい。そうすることで、受電装置600内部に過電圧が印加されることを抑制することができる。
【0095】
本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池は、図7で説明したRF給電システムにおける受電装置600が有するリチウムイオン二次電池604として利用される。
【0096】
RF給電システムに本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池を利用することで、従来の二次電池に比べて放電容量又は充電容量を増やすことができるので、無線給電の時間間隔を延ばすことができる(何度も給電する手間を省くことができる)。
【0097】
また、RF給電システムに本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池を利用することで、電源負荷部610を駆動することができる放電容量又は充電容量が従来と同じであれば、受電装置600の小型化及び軽量化が可能である。従って、トータルコストを減らすことができる。
【0098】
なお、RF給電システムに本発明の一態様に係るリチウムイオン二次電池を利用し、受電装置用アンテナ回路602とリチウムイオン二次電池604を重ねる場合は、リチウムイオン二次電池604の充放電によるリチウムイオン二次電池604の変形と、当該変形に伴うアンテナの形状の変化によって、受電装置用アンテナ回路602のインピーダンスが変化しないようにすることが好ましい。アンテナのインピーダンスが変化してしまうと、十分な電力供給がなされない可能性があるためである。例えば、リチウムイオン二次電池604を金属製あるいはセラミックス製の電池パックに装填するようにすればよい。なお、その際、受電装置用アンテナ回路602と電池パックは数十μm以上離れていることが望ましい。
【0099】
また、本実施の形態では、充電用の信号の周波数に特に限定はなく、電力が伝送できる周波数であれば、どの帯域であっても構わない。充電用の信号は、例えば、135kHzのLF帯(長波)でも良いし、13.56MHzのHF帯(短波)でも良いし、900MHz〜1GHzのUHF帯(極超短波)でも良いし、2.45GHzのマイクロ波帯でもよい。
【0100】
また、信号の伝送方式としては電磁結合方式、電磁誘導方式、共鳴方式、マイクロ波方式など様々な種類があるが、適宜選択すればよい。ただし、雨や泥などの、水分を含んだ異物によるエネルギーの損失を抑えるためには、周波数が低い帯域、具体的には、短波である3MHz〜30MHz、中波である300kHz〜3MHz、長波である30kHz〜300kHz、及び超長波である3kHz〜30kHzの周波数を利用した電磁誘導方式や共鳴方式を用いることが望ましい。
【0101】
本実施の形態は、上記実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0102】
本実施例では、実施の形態1を用いて作製したリチウム含有複合酸化物について、以下に説明する。
【0103】
はじめに、リチウム含有複合酸化物の作製方法について、説明する。
【0104】
Li:Mn:P=2:1:1のモル比となるように、LiOH・HO、MnCl・4HO、及びNHPOをそれぞれ秤量した。
【0105】
次に、純水にLiOH・HO、MnCl・4HO、NHPOをそれぞれ溶解させて、Liを含む溶液、Pを含む溶液、及びMnを含む溶液を形成した。
【0106】
次に、撹拌させながら少量ずつLiを含む溶液及びPを含む溶液を混合して、混合液Aを形成した。
【0107】
次に、撹拌させながらMnを含む溶液に少量ずつ混合液Aを滴下して、混合液Bを形成した。
【0108】
次に、混合液Bを耐熱耐圧容器に入れ、150℃で12時間加熱した後、耐熱耐圧容器を冷却し、耐熱耐圧容器内の生成物を、ろ過し、水洗した。次に、真空雰囲気及び60℃で2時間乾燥させ、生成物Aを採取した。
【0109】
生成物AをSEMで観察した。図8に、SEM像(倍率5万倍)を示す。図8より、扁平状の単結晶粒のリン酸マンガンリチウムを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式LiMPO(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)で表されるリチウム含有複合酸化物の作製方法であって、
Li及びPを含む溶液を形成し、
前記Li及びPを含む溶液を、M(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)を含む溶液に滴下して混合液を形成し、
前記混合液を用いた水熱法により、前記一般式LiMPO(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)で表されるリチウム含有複合酸化物を作製することを特徴とするリチウム含有複合酸化物の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記混合液のPHが7となるように、前記Li及びPを含む溶液、及び前記M(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)を含む溶液の濃度を制御することを特徴とするリチウム含有複合酸化物の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記リチウム含有複合酸化物は、オリビン型であることを特徴とするリチウム含有複合酸化物の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−211072(P2012−211072A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58452(P2012−58452)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】