説明

リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法

【課題】炭化水素燃料や含酸素炭化水素燃料の燃焼によって発生する火炎を熱源とした熱風焼成炉を使用した場合においても、高品質なリチウム遷移金属複合酸化物を得る。
【解決手段】熱風焼成炉10は、原料混合物44を収容する製品加熱部12と、複数の蓄熱体収容部13a,13bと、蓄熱体収容部13a,13b内に収容された蓄熱体14a,14bと、蓄熱体14a,14bを加熱するため蓄熱体収容部13a,13bに設けられたバーナ15a,15bと、ガス供給源16及び空気供給源17から供給される炭化水素燃料及び空気をバーナ15a,15bへ供給するガス流路18及び空気流路19と、を備えている。蓄熱体収容部13a,13bから製品加熱部12に向かって開閉弁23a,23b付きの加熱用ガス供給路22a,22bが設けられ、加熱用ガス供給路22a,22bの下流側の加熱用ガス供給路22が製品加熱部12の隔壁12aに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の正極活物質に用いられるリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム二次電池などの非水電解質二次電池における正極中における正極活物質として用いられている。リチウム二次電池は、既に携帯電話やノートパソコン等の電源として実用化されており、更に自動車用途や電力貯蔵用途などの中・大型用途においても、適用が試みられている。
【0003】
リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウム化合物と遷移金属化合物等の原料を混合し、焼成することによって得ることができる。例えば、特許文献1にはニッケル化合物とリチウム化合物とを混合し、空気雰囲気下、600℃で加熱処理するリチウム−ニッケル複合酸化物の製造方法が開示されている。
【0004】
リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法においては、焼成時の雰囲気中に二酸化炭素が存在することにより、正極の活性が低下することが問題となっていた。従来のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法においては、電気炉など、必要に応じて空気を流通させ、または雰囲気を制御できる加熱炉本体を用い、できるだけ二酸化炭素を含まない条件での焼成が行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
一方、非水電解質二次電池用正極活物質として需要が急増しているリチウム遷移金属複合酸化物を多量に生産するにあたり、リチウム遷移金属複合酸化物の量産性向上やコスト削減という観点から、リチウム遷移金属複合酸化物を得るための焼成炉として、プロパン等の炭化水素や含酸素炭化水素燃料の火炎を熱源とした汎用性のあるガス焼成炉を使用することが望まれており、検討が行われている。
【0006】
しかしながら、このようなガス焼成炉はプロパン等の炭化水素燃料を燃焼させて加熱するため、炉内には高濃度のCO2(通常、5〜10体積%)を含む。そのため、このようなガス焼成炉を用いて従来の温度条件で焼成を行うと、電気炉焼成品に比べて正極活性が低いリチウム遷移金属複合酸化物が合成され、該リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質に用いて非水電解質二次電池を作製しても十分な電池性能を得ることが出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−290851号公報
【特許文献2】特開2000−58053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる状況下、本発明の目的は、炭化水素や含酸素炭化水素燃料の火炎を熱源とした熱風焼成炉を使用した場合においても、高品質なリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1>リチウム化合物と、遷移金属元素を含む化合物とを混合して得られた原料混合物を、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料と支燃性ガスとを燃焼させた火炎を熱源とする熱風焼成炉で焼成するリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法であって、
前記熱風焼成炉が、前記原料混合物を収容する製品加熱部と、蓄熱体が収容された蓄熱体収容部と、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料を燃焼させた火炎で前記蓄熱体を加熱するバーナと、を備え、前記蓄熱体収容部に導入され前記蓄熱体との接触によって昇温した加熱用ガスを前記製品加熱部へ供給して前記原料混合物を加熱することを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
<2>前記製品加熱部から排出された使用後ガスの少なくとも一部を、前記蓄熱体収容部内へ再導入し加熱用ガスとして再利用することを特徴とする前記<1>記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
<3>前記熱風焼成炉が、複数の前記蓄熱体収容部を備え、前記バーナが複数の前記蓄熱体収容部内の蓄熱体を交互に加熱可能であることを特徴とする前記<1>または<3>記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
<4>前記遷移金属元素が、NiおよびMnから選ばれる1以上の元素を含むことを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
<5>前記遷移金属元素が、NiおよびMnから選ばれる1以上の元素に加え、CoおよびFeから選ばれる1以上の元素を含むことを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
<6>前記製品加熱部内の二酸化炭素濃度を4体積%以下に保持した状態で焼成を行う前記<1>から<5>のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料の燃焼によって発生する火炎を熱源とする熱風焼成炉を使用した場合においても、高品質なリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る熱風焼成炉の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、リチウム化合物と、遷移金属元素を含む化合物とを混合して得られた原料混合物を、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料の燃焼によって発生する火炎を熱源とする熱風焼成炉で焼成するリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法であって、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料の燃焼によって発生する火炎で加熱された蓄熱体との接触によって昇温した加熱用ガスを用いて原料混合物を加熱することを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法に係るものである。
【0014】
まず、原料混合物の製造方法について説明する。
上記リチウム化合物としては、水酸化リチウム、酸化リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウムおよび炭酸リチウムからなる群より選ばれる1種以上の無水物および/または該1種以上の水和物を挙げることができる。
この中でも、低コストであり、加熱の際に腐食性ガスが発生しない水酸化リチウムまたは炭酸リチウムが好適に使用される。
【0015】
上記遷移金属元素としては、その化合物がリチウム化合物と混合され、焼成されることにより二次電池の正極活物質となりうる遷移金属元素であれば制限がない。このような遷移金属元素として、具体的には、Ni、Mn、Co、Fe、Cr、Ti等を挙げることができ、これらの元素を1種あるいは2種以上含んでいてもよい。
この中でも、高容量の二次電池用正極を得るという観点からは、上記遷移金属元素が、NiおよびMnから選ばれる1以上の元素を含有することが好ましい。さらに、より高容量の二次電池用正極を得るという観点からは、上記遷移金属元素が、NiおよびMnから選ばれる1以上の元素に加えて、さらにCoおよびFeから選ばれる1以上の元素を含有することが好ましい。
【0016】
原料として使用される遷移金属元素の形態としては、それぞれの金属単体、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩、アルコキシドなどが挙げられる。
【0017】
リチウム化合物と遷移金属元素を含む化合物とを混合して得られる原料混合物(以下、単に「原料混合物」と呼ぶ場合がある。)は、乾式混合、湿式混合、液相混合、あるいはこれらの組み合わせのいずれの混合方法で得られてもよく、その混合順序も特に制限されない。
また、原料であるリチウム化合物、遷移金属化合物を単に物理的に混合するのみならず、これらの原料のうち一部を、混合したのちに反応させて得られた反応生成物と、残りの原料とを混合してもよい。
特に2種類以上の遷移金属元素を原料として含む場合には、焼成の際における反応性を高め、より均一なリチウム遷移金属複合酸化物を合成できるという観点から、複合遷移金属化合物を合成した後にリチウム化合物と混合することが好ましい。
なお、この複合遷移金属化合物の合成方法は特に限定されないが、それぞれの元素を含有する水溶液とアルカリとを接触(液相混合)させて得た共沈物スラリーを固液分離したのちに、乾燥することにより製造された複合金属水酸化物であることが好ましい。
【0018】
以下、上記複合遷移金属化合物の代表的な製造方法として、遷移金属元素を含む溶液とアルカリとを接触させて、複合遷移金属水酸化物を製造する場合を例として具体的に説明する。
【0019】
遷移金属元素を含む溶液は、原料となる遷移金属元素それぞれの金属単体、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩、アルコキシドなどを、水やこれらを溶解することが可能なアルコール等の有機溶剤などの溶媒に溶解して作製することができ、溶媒としては通常、水が用いられ、好ましくは純水、イオン交換水などが用いられる。
なお、前記遷移金属元素の単体または化合物が前記溶媒に溶解し難い場合には、それらを塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などを含有する溶液に溶解させて作製してもよい。
この中でも遷移金属元素の硫酸塩、例えば、Niの硫酸塩、Mnの硫酸塩、Coの硫酸塩およびFeの硫酸塩を水に溶解して得られる水溶液であることが好ましい。Feの硫酸塩としては、2価のFeの硫酸塩であることが好ましい。
【0020】
アルカリとしては、例えば、LiOH(水酸化リチウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、Li2CO3(炭酸リチウム)、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、K2CO3(炭酸カリウム)および(NH42CO3(炭酸アンモニウム)からなる群より選ばれる1種以上の無水物並びに該1種以上の水和物を挙げることができる。
アルカリとして、アンモニアを挙げることもできる。
アルカリは通常水溶液として用いられる。このアルカリ水溶液におけるアルカリの濃度は、通常0.5〜10モル/L程度、好ましくは1〜8モル/L程度である。また、製造コストの面から、用いるアルカリとして好ましくはNaOHまたはKOHの、無水物または水和物を用いることが好ましい。また、上述のアルカリは2つ以上併用してもよい。
【0021】
これらの溶媒として使用されるアルカリ水溶液に使用される水は、好ましくは純水および/またはイオン交換水である。また、本発明の効果を損なわない範囲で、アルコールなど水以外の有機溶媒や、pH調整剤などを含んでいてもよい。
【0022】
遷移金属元素を含む溶液と、アルカリとを接触(液相混合)させることで、遷移金属水酸化物を含有する共沈物スラリーを得る。なお、「共沈物スラリー」とは、大部分が、遷移金属水酸化物からなる共沈物と水とからなるスラリーであり、共沈物作製の過程で残った原料、副生塩(例えば、KCl、K2SO4等)添加剤、あるいは有機溶剤等を含んでいてもよいが、純水や有機溶媒等で洗浄し、除去しても良い。
接触(液相混合)の方法としては、遷移金属元素を含む溶液にアルカリ水溶液を添加して混合する方法、アルカリ水溶液に遷移金属元素を含む溶液を添加して混合する方法、並びに遷移金属元素を含む溶液およびアルカリ水溶液を混合する方法を挙げることができる。これらの混合時には、攪拌を伴うことが好ましい。また、上記の接触(液相混合)の方法の中では、アルカリ水溶液に遷移金属元素を含む溶液を添加して混合する方法が、pHを一定範囲に保ちやすい点で好ましく用いることができる。この場合、アルカリ水溶液に、遷移金属元素を含む溶液を添加混合していくに従い、混合された液のpHが低下していく傾向にあるが、このpHが9以上、好ましくは10以上となるように調節しながら、遷移金属元素を含む溶液を添加するのがよい。また、遷移金属元素を含む溶液およびアルカリ水溶液のうち、いずれか一方または両方の水溶液を40〜80℃の温度に保持しながら接触(液相混合)させると、より均一な組成の共沈物を得ることができる傾向にあるため好ましい。
【0023】
次いで、上記共沈物スラリーを固液分離して乾燥することにより、遷移金属水酸化物の乾燥物(以下、単に「乾燥物」と記載する場合がある。)を得る。
乾燥は、通常、熱処理によって行うが、送風乾燥、真空乾燥等によってもよい。また、乾燥の雰囲気としては、大気、酸素、窒素、アルゴンまたはそれらの混合ガス等を用いることができるが、大気雰囲気が好ましい。乾燥を熱処理によって行う場合には、通常50〜300℃で行い、好ましくは100〜200℃程度である。
【0024】
乾燥物のBET比表面積は、通常、10m2/g以上150m2/g以下程度である。乾燥物のBET比表面積は、後述の焼成時の反応性を促進させる意味で、20m2/g以上であることが好ましい。また、操作性の観点では、乾燥物のBET比表面積は、130m2/g以下であることが好ましい。
【0025】
次いで、原料混合物を製造するために、上記乾燥物とリチウム化合物とは混合される。
乾燥物と、リチウム化合物との混合は、乾式混合、湿式混合のいずれによってもよいが、簡便性の観点では、乾式混合が好ましい。混合装置としては、攪拌混合、V型混合機、W型混合機、リボン混合機、ドラムミキサー、ボールミル等を挙げることができる。
【0026】
次に、本発明の製造方法における焼成工程について説明する。
本発明の製造方法における焼成工程(以下、単に「焼成工程」と称す場合がある。)は、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料の燃焼で発生する火炎を熱源とする熱風焼成炉を使用し、かつ、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料の燃焼によって発生する火炎で加熱された蓄熱体との接触によって昇温した加熱用ガスを用いて原料混合物を加熱することを特徴とする。
ここで、「熱風焼成炉」とは、蓄熱体をバーナで加熱し、次に蓄熱体に向かって空気などのガスを送り込み、蓄熱体との接触によって昇温したガスによって被焼成物を加熱して焼成する炉をいう。
また、「加熱用ガス」とは、加熱された蓄熱体に接触させることによって昇温した後、被焼成物の加熱に供される気体をいう。
炭化水素燃料としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、アセチレン等や、これらのガスの混合物が挙げられる。また、ブタン及びプロパン等の炭化水素を主成分とし、圧縮することで容易に液化し、可搬性に優れた液化石油ガス(LPG)を用いることもできる。
また、含酸素炭化水素燃料としては、エタノール等のアルコール類や、ジエチルエーテル等のエーテル類、が挙げられる。
炭化水素や含酸素炭化水素は、2種以上を任意の割合で混合して使用することもできる。また、灯油などの炭化水素や含酸素炭化水素を含む各種燃料油も用いることもできる。
これら燃料の中でも、液化石油ガス(LPG)は、燃焼時の熱量が大きく、かつ、比較的安価であるため好適である。
なお、「支燃性ガス」は、物質が燃焼するのを助ける性質を有するガスであり、具体的には、空気、酸素、またはこれらと不活性ガスとの混合ガス等が挙げられる。焼成工程における支燃性ガスとして好適であるのは、酸素を18体積%以上含むガスであり、通常、空気が用いられる。
【0027】
炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料の燃焼によって発生する火炎を、直接、焼成炉内に吹き込むと、焼成炉内の二酸化炭素濃度が大幅に増加し、焼成されるリチウム遷移金属複合酸化物の品質が低下するが、本発明の製造方法における焼成工程では、燃料の燃焼によって発生する火炎で加熱された蓄熱体との接触によって昇温した加熱用ガスを用いて原料混合物を加熱する方式であるため、燃料によって発生する火炎を、直接、焼成炉に吹き込んで加熱する方式に比べ、炉内の二酸化炭素量を大幅に削減することができる。その結果、高品質なリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
【0028】
一般に、リチウム遷移金属複合酸化物の焼成工程では、焼成温度は、通常、600℃以上の高温を要するが、本発明の焼成工程において、焼成温度は、反応促進の観点より、好ましくは650℃以上であり、より好ましくは750℃以上、さらに好ましくは830℃以上である。なお、上限温度は、特に限定はないが、高温で焼成するとリチウム遷移金属複合酸化物が焼結しやすくなるため、通常、1100℃以下、好ましくは1000℃以下である。
なお、前記焼成工程における保持温度により、リチウム遷移金属複合酸化物のBET比表面積を調整することができる。通常、保持温度が高くなるにつれて、BET比表面積は小さくなる傾向にある。保持温度を低くすればするほど、BET比表面積は大きくなる傾向にある。
【0029】
ここで、本発明に係る焼成工程で使用する熱風焼成炉において、前記製品加熱部から排出された使用後ガスの少なくとも一部を、前記蓄熱体収容部内へ導入して加熱用ガスとして再利用することが望ましい。なお、「使用後ガス」とは、蓄熱体収容部から製品加熱部内へ供給され、原料混合物の加熱に用いられた後、製品加熱部から排出される気体をいう。
このような構成とすれば、製品加熱部から排出された後、室温より高温状態にある使用後ガスを蓄熱体によって昇温させることになるため、室温状態のガスを加熱する場合よりも少ない熱量で必要温度の加熱用ガスを生成することが可能となり、省エネルギを図ることができる。
【0030】
また、前記熱風焼成炉として、複数の蓄熱体収容部を備え、バーナが複数の蓄熱体収容部内の蓄熱体を交互に加熱可能であるものを使用することもできる。
このような構成とすれば、バーナを切り替えて複数の蓄熱体収容部内の蓄熱体を交互に加熱するとともに、バーナによる加熱を終えた蓄熱体収容部内へ加熱用ガスを送り込んで昇温させて製品加熱部へ供給する、という動作を繰り返すことにより、高温の加熱用ガスを製品加熱部へ連続的に供給することが可能となるため、焼成工程の効率化を図ることができる。
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の製造方法における焼成工程に好適な熱風焼成炉の一実施形態を具体的に説明する。なお、以下に説明する熱風焼成炉に係る実施形態に示したものに本発明は限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0032】
図1は本発明の実施形態に係る熱風焼成炉の概略構成を示す図である。図1に示すように、熱風焼成炉10は、原料混合物11を収容する製品加熱部12と、複数の蓄熱体収容部13a,13bと、それぞれの蓄熱体収容部13a,13b内に収容された蓄熱体14a,14bと、蓄熱体14a,14bを加熱するため蓄熱体収容部13a,13bにそれぞれ設けられたバーナ15a,15bと、ガス供給源16及び空気供給源17から供給される炭化水素燃料及び空気をそれぞれバーナ15a,15bへ供給するガス流路18及び空気流路19と、を備えている。
【0033】
ガス流路18は三方切替弁20を介して2系統のガス流路18a,18bに分岐され、ガス流路18a,18bはそれぞれバーナ15a,15bに接続されている。空気流路19も同様に、三方切替弁21を介して2系統の空気流路19a,19bに分岐され、空気流路19a,19bはそれぞれバーナ15a,15bに接続されている。
【0034】
蓄熱体収容部13a,13bからそれぞれ製品加熱部12に向かって開閉弁23a,23b付きの加熱用ガス供給路22a,22bが設けられ、これらの加熱用ガス供給路22a,22bは開閉弁23a,23bより下流側で合流して加熱用ガス供給路22となり、加熱用ガス供給路22の下流側は製品加熱部12内に連通した状態で隔壁12aに接続されている。また、蓄熱体収容部13a,13bには、炭化水素燃料の燃焼時に発生する排ガスを排出するため、それぞれ開閉弁27a,27b付きの排ガス流路28a,28bが設けられている。
【0035】
一方、製品加熱部12の隔壁12bには、製品加熱部12内を流動した後のガスを排出するための使用後ガス流路24が接続され、使用後ガス流路24の下流側は使用後ガス流路24a,24bと使用後ガス排出路24cとに分岐し、使用後ガス流路24a,24bはそれぞれ蓄熱体収容部13a,13b内に連通するように接続され、使用後ガス排出路24cの途中には開閉弁29が設けられている。使用後ガス流路24a,24bの途中には、製品加熱部12から排出された使用後ガスをそれぞれ蓄熱体収容部13a,13bに向かって送給するブロワ25a,25bと、使用後ガス流路24a,24bを開閉する開閉弁26a,26bと、が設けられている。
【0036】
ここで、熱風焼成炉10による焼成工程について説明する。図1に示すように、製品加熱部12内に原料混合物11を所定の状態に収容した後、熱風焼成炉10を稼動させると、ガス供給源16、空気供給源17からガス流路18、空気流路19を経由して供給される炭化水素燃料(LPG)、空気が、三方切替弁20,21によって一定時間ごとに切り替えられながら、それぞれバーナ15a,15bへ交互に供給される。
【0037】
熱風焼成炉10において、三方切替弁20がガス流路18,18aを連通するとともに、三方弁切替弁21が空気流路19,19aを連通しているときは、LPG及び空気がバーナ15aにのみ供給され、三方切替弁20がガス流路18,18bを連通するとともに、三方弁切替弁21が空気流路19,19bを連通しているときは、LPG及び空気がバーナ15bにのみ供給されるので、交互に燃焼するバーナ15a,15bで発生する火炎によって蓄熱体収容部13a,13b内の蓄熱体14a,14bが交互に加熱される。
【0038】
また、一方のバーナ15aが燃焼しているとき、蓄熱体収容部13aにおいては、排ガス流路28aの開閉弁27aが開状態となり、使用後ガス流路24aの開閉弁26aが閉状態となり、ブロワ25aが休止する。このとき、休止しているバーナ15b側の蓄熱体収容部13bにおいては、排ガス流路28bの開閉弁27bが閉状態となり、使用後ガス流路24bの開閉弁26bが開状態となり、ブロワ25bが作動する。
【0039】
以上のように、三方切替弁20,21が一定時間ごとに切り替わることにより、バーナ15a,15bが交互に一定時間ずつ稼動して、蓄熱体収容部13a,13b内の蓄熱体14a,14bを交互に加熱するとともに、稼動していないバーナ15a(若しくは15b)側の蓄熱体収容部13a(若しくは13b)内にブロワ15a(若しくは15b)によって送り込まれる使用後ガスが蓄熱体14a(若しくは14b)に接触して加熱され加熱用ガスとなり、加熱用ガス供給路22a(若しくは22b)及び加熱用ガス供給路22を経由して製品加熱部12内へ供給され、原料混合物11を加熱する。
【0040】
このように、熱風焼成炉10においては、蓄熱体収容部13a,13bに導入され蓄熱体14a,14bとの接触によって昇温した加熱用ガスを製品加熱部12へ供給して原料混合物11を加熱するので、バーナ15a,15bで発生する二酸化炭素が製品加熱部12内へ侵入することがなく、製品加熱部12内の二酸化炭素量を大幅に削減することができるため、高品質なリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
【0041】
また、製品加熱部12から排出された使用後ガスを、使用後ガス流路24a,24bを経由して蓄熱体収容部13a,13b内へ再導入し再加熱して、加熱用ガスとして利用するので、省エネルギに有効である。なお、必要に応じて使用後ガス排出路24cの開閉弁29を開くことにより、製品加熱部12から排出された使用後ガスの一部は使用後ガス排出路24cを経由し、所定の場所に排ガスとして排出される。
【0042】
さらに、蓄熱体14a,14bは、単位容積当たりの熱交換率が高く、空気及び燃料排ガスが通過する際の圧力損失が小さい形状であるものが好ましいので、本実施形態では、直径8〜20mm程度のアルミナボールを使用しているが、これに限定するものではなく、その他の種類のセラミックス製のボールあるいはハニカム構造体などを用いることもできる。
【0043】
製品加熱部12は、ステンレス等の耐熱性金属、耐熱性セラミック等によって形成され、1500℃程度まで加熱することができる。その炉内の寸法は、温度分布が不均一にならない限り特に制限はない。
【0044】
なお、本実施形態では、製品加熱部12は、いわゆるバッチ式であるが、これに限定されない。例えば、ベルト炉、ロータリーキルン、ローラーハースキルン等の連続炉であってもよい。また、焼成容器を多段に積み重ねた台車を炉内で移動させて焼成する台車炉でもよい。
【0045】
以下、本発明の製造方法の焼成工程における他の条件について説明する。
【0046】
上述のように本願発明の製造方法において、原料の反応促進の観点より、焼成温度は、好ましくは650℃以上であり、より好ましくは750℃以上、さらに好ましくは830℃以上である。なお、製品加熱部内の二酸化炭素濃度は、4体積%以下であることが好ましく、3体積%以下若しくは1体積%以下であることがより好ましい。二酸化炭素濃度を1体積%以下とすることにより、より活性の高いリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
【0047】
焼成工程における原料混合物の保持時間は、通常0.1〜20時間であり、好ましくは0.5〜8時間である。前記保持温度までの昇温速度は、通常50℃〜400℃/時間であり、前記保持温度から室温までの降温速度は、通常10℃〜400℃/時間である。
【0048】
前記焼成の際に、混合物は、反応促進剤を含有していてもよい。
反応促進剤として、具体的には、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、CaCl2、MgCl2、SrCl2、BaCl2及びNH4Clなどの塩化物、Na2CO3、K2CO3、Rb2CO3、Cs2CO3、CaCO3、MgCO3、SrCO3及びBaCO3などの炭酸塩、K2SO4、Na2SO4などの硫酸塩、NaF、KF、NH4Fなどのフッ化物、が挙げられる。この中でも、好ましくはNa、K、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr及びBaからなる群から選ばれる1種以上の元素の塩化物、炭酸塩または硫酸塩を挙げることができ、より好ましくはKCl、K2CO3、K2SO4である。また、反応促進剤を2種以上併用することもできる。
混合物が反応促進剤を含有することで、混合物の焼成時の反応性を向上させ、得られるリチウム遷移金属複合酸化物のBET比表面積を調整することが可能な場合がある。
反応促進剤を混合物に含有させるには、例えば遷移金属水酸化物をリチウム化合物と混合するときに反応促進剤を添加すればよい。
なお、混合物と反応促進剤との混合割合は、混合物100重量部中0.1重量部以上100重量部以下が好ましく、1.0重量部以上25重量部以下がより好ましい。
【0049】
また、前記焼成によりリチウム遷移金属複合酸化物を得るが、このリチウム遷移金属複合酸化物はボールミルやジェットミルなどを用いて粉砕してもよい。粉砕によって、リチウム遷移金属複合酸化物のBET比表面積を調整することが可能な場合がある。また、粉砕と焼成を2回以上繰り返してもよい。また、リチウム遷移金属複合酸化物は必要に応じて洗浄あるいは分級することもできる。
【0050】
上記の方法により得られるリチウム遷移金属複合酸化物は、二次電池、中でも非水電解質二次電池に有用な正極活物質となる。
【0051】
上記の方法により得られるリチウム遷移金属複合酸化物は、通常、0.05μm以上1μm以下の平均粒径の一次粒子から構成され、一次粒子と、一次粒子が凝集して形成された0.1μm以上100μm以下の平均粒径の二次粒子との混合物からなる。一次粒子及び二次粒子の平均粒径は、それぞれSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することにより、測定することができる。
【0052】
上記の方法により得られるリチウム遷移金属複合酸化物は、その構造が通常α-NaFeO2型結晶構造、すなわちR−3mの空間群に帰属される結晶構造である。結晶構造は、リチウム遷移金属複合酸化物について、CuKαを線源とする粉末X線回折測定により得られる粉末X線回折図形から同定することができる。
【0053】
上記の方法により得られるリチウム遷移金属複合酸化物におけるLiの組成としては、Ni、Mn、Fe,Co等の遷移金属元素Mの合計量(モル)に対し、Liの量(モル)は、通常、0.5以上1.5以下であり、容量維持率をより高める意味で、0.95以上1.5以下であることが好ましく、より好ましくは1.0以上1.4以下である。以下の式(A)として表したときには、yは、通常、0.5以上1.5以下であり、好ましくは0.95以上1.5以下、より好ましくは1.0以上1.4以下である。
Liy(Ni1-xx)O2 (A)
(ここで、Mは、1種以上の遷移金属元素を表し、xは、0<x<1である。)
【0054】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の方法により得られる本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属元素の一部を、他元素で置換してもよい。ここで、他元素としては、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Mg、Sc、Y、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Tc、Ru、Rh、Ir、Pd、Cu、Ag、Zn等の元素を挙げることができる。
【0055】
上記の方法により得られるリチウム遷移金属複合酸化物を構成する粒子の表面に、リチウム遷移金属複合酸化物とは異なる化合物を付着させてもよい。このような化合物としては、例えば、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Mgおよび遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する化合物、好ましくはB、Al、Mg、Ga、InおよびSnからなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する化合物、より好ましくはAlの化合物を挙げることができ、化合物として具体的には、前記元素の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、有機酸塩を挙げることができ、好ましくは、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物である。また、これらの化合物を混合して用いてもよい。これら化合物の中でも、特に好ましい化合物はアルミナである。また、付着後に加熱を行ってもよい。
【0056】
上記の方法により得られるリチウム遷移金属複合酸化物は、正極活物質として有用であり、二次電池、特に非水電解質二次電池の正極に好適である。この二次電池に用いられる正極活物質は、上記の方法により得られるリチウム遷移金属複合酸化物が主成分であればよい。
【0057】
二次電池用の正極は、上記の方法により得られたリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として、公知の方法、例えば、国際公開第09/041722号パンフレットに記載の方法にて作製することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
<粉末X線回折測定>
粉末X線回折測定(XRD)は、株式会社リガク製 Ultima IVASC-10を用いて行う。測定は、粉末試料を専用の基板に充填し、CuKα線源を用いて、電圧40kV、電流40mAの条件で回折角2θ=10°〜90°の範囲にて行い、粉末X線回折図形を得る。
<BET比表面積測定>
粉末1gを窒素雰囲気中150℃、15分間乾燥した後、マイクロメトリックス製フローソーブII2300を用いて測定する。
【0060】
(実施例1)
攪拌槽内で、水酸化カリウム100重量部を、蒸留水535重量部に添加して、攪拌により水酸化カリウムを完全に溶解させ、水酸化カリウム水溶液(アルカリ水溶液)を調整する。
また、別の攪拌槽内で、蒸留水255重量部に、硫酸ニッケル(II)六水和物98.4重量部、硫酸マンガン(II)一水和物64.6重量部および硫酸鉄(II)七水和物11.1重量部を添加して、攪拌により溶解し、ニッケル−マンガン−鉄混合水溶液を得る。
次いで、別の攪拌槽に、蒸留水936重量部と前記水酸化カリウム水溶液15.8重量部を仕込んだ後、液温度を30℃にて攪拌しながら、前記水酸化カリウム水溶液165重量部と前記ニッケル−マンガン−鉄混合水溶液95.1重量部を滴下することにより、遷移金属水酸化物からなる沈殿物を生成させ、原液スラリーを得る。反応終点のpHを測定すると、pHは13となる。
次いで、フィルタープレスにて得られたスラリーの固液分離を行う。フィルタープレスには、「ロールフィット フィルタープレス・ドライヤー」(販売元:株式会社 ユーロテック)を使用する。スラリー100重量部をフィルタープレスに供給し、室温下、ろ過圧力0.4MPaG、ろ過時間50分の条件にてろ過する。
次いで、蒸留水を室温下、洗浄圧力0.4〜0.6MPaGにて供給し、水洗を行う。水洗後、圧搾圧力0.7MPaGにて、15分間の圧搾脱水を行う。次いで、減圧フィルタープレスのろ過室内を圧力10kPaとし、フィルタープレスの各ろ過室の流体供給路に90℃温水を通水して、170分間、予備乾燥を行う。予備乾燥後、フィルタープレスから排出したウェットケーク4.62重量部を回収する。この時のウェットケークの含水量は湿潤基準で30重量%となる。
得られたウェットケークを、乾燥用バットに仕込み、棚段乾燥機(汎用乾燥装置AT−20(製造元:旭科学株式会社))を用いて120℃、8時間の条件で乾燥後、フェザーミル粉砕を行い、粉末状の乾燥物X1を得る。得られた乾燥物X1の含水率は、3重量%となる。
乾燥物P1100重量部に対し、炭酸リチウム52.2重量部と、硫酸カリウム18.0重量部とを、アルミナボールを入れたロッキングミルで4時間混合し、原料混合物M1を得る。
【0061】
次いで、該原料混合物(M1)1.8kgをアルミナ製焼成容器に入れ、図1に示す熱風焼成炉10の製品加熱部12内に装入し、焼成を行う。なお、製品加熱部12の炉内の寸法は、縦2.1m×横2.1m×高さ1.6mである。
それぞれのバーナ15a,15bによる火炎の形成時には、燃料ガスのLPG(主成分はブタン約70体積%、プロパン約30体積%)を2〜10m3/h供給し、支燃性ガスとしての空気を400m3/h供給し、切替周期を15秒/回として運転を行う。焼成条件は、製品加熱部12の設定温度880℃、排出ガス温度250℃、保持時間6時間である。なお、製品加熱部12内の二酸化炭素濃度は1体積%以下となる。
上記条件にて原料混合物を焼成後、室温まで自然冷却し、焼成品を得た。次いで、焼成品を解砕し、純水でヌッチェろ過による洗浄を行い、ろ過した後に、300℃で6時間乾燥して、粉末B1を得る。
【0062】
(参考例1)
実施例1にて作製した原料混合物(M1)1.8kgをアルミナ製焼成容器に入れ、電気ヒータ加熱方式のローラーハースキルンにて焼成を行う。焼成条件は、炉の設定温度880℃、保持時間6時間である。
次いで、焼成品を粉砕し、蒸留水でデカンテーションによる洗浄を行い、ろ過した後に、300℃で6時間乾燥して、粉末B2を得る。
【0063】
<非水電解質二次電池の作製>
作製した粉末B1,B2を正極活物質として使用したコイン型の非水電解質二次電池を作製し、充放電試験を実施する。
正極活物質(粉末B1,B2)と導電材(アセチレンブラックと黒鉛を9:1で混合したもの)の混合物に、バインダーとしてPVdFのN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPということがある。)溶液を、活物質:導電材:バインダー=87:10:3(重量比)の組成となるように加えて混練することによりペーストとし、集電体となる厚さ40μmのAl箔に該ペーストを塗布して150℃で8時間真空乾燥を行い、正極を得る。
得られた正極に、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の30:35:35(体積比)混合液にLiPF6を1モル/リットルとなるように溶解したもの(LiPF6/EC+DMC+EMC)、セパレータとして積層フィルムを、また、負極として金属リチウムを組み合わせてコイン型電池(R2032)を作製する。
上記コイン型電池を用いて、25℃保持下、以下に示す条件で充放電試験を実施する。
【0064】
<充放電試験>
充電最大電圧4.3V、充電時間8時間、充電電流0.176mA/cm2
放電時は放電最小電圧を2.5Vで一定とし、各サイクルにおける放電電流を下記のように変えて放電を行う。各サイクルおける放電による放電容量が高ければ高いほど、高出力を示すことを意味する。
1サイクル目の放電(0.2C):放電電流0.176mA/cm2
2サイクル目の放電(1C) :放電電流0.879mA/cm2
3サイクル目の放電(2C) :放電電流1.76mA/cm2
4サイクル目の放電(5C) :放電電流4.40mA/cm2
【0065】
このような充放電試験を実施すると、正極活物質である粉末B1,B2において、実施例1と参考例1で同等の電池性能が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、炭化水素や含酸素炭化水素燃料の火炎を熱源とした熱風焼成炉を使用した場合においても、リチウム電池の正極活物質として高品質なリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 熱風焼成炉
11 原料混合物
12 製品加熱部
12a,12b 隔壁
13a,13b 蓄熱体収容部
14a,14b 蓄熱体
15a,15b バーナ
16 ガス供給源
17 空気供給源
18,18a,18b ガス流路
19,19a,19b 空気流路
20,21 三方切替弁
22,22a,22b 加熱用ガス供給路
23a,23b,26a,26b,27a,27b,29 開閉弁
24,24a,24b 使用後ガス流路
24c 使用後ガス排出路
25a,25b ブロワ
28a,28b 排ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム化合物と、遷移金属元素を含む化合物とを混合して得られた原料混合物を、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料と支燃性ガスとを燃焼させた火炎を熱源とする熱風焼成炉で焼成するリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法であって、
前記熱風焼成炉が、前記原料混合物を収容する製品加熱部と、蓄熱体が収容された蓄熱体収容部と、炭化水素および/または含酸素炭化水素燃料を燃焼させた火炎で前記蓄熱体を加熱するバーナと、を備え、前記蓄熱体収容部に導入され前記蓄熱体との接触によって昇温した加熱用ガスを前記製品加熱部へ供給して前記原料混合物を加熱することを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記製品加熱部から排出された使用後ガスの少なくとも一部を、前記蓄熱体収容部内へ導入して加熱用ガスとして再利用することを特徴とする請求項1記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記熱風焼成炉が、複数の前記蓄熱体収容部を備え、前記バーナが複数の前記蓄熱体収容部内の蓄熱体を交互に加熱可能であることを特徴とする請求項1または2記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記遷移金属元素が、NiおよびMnから選ばれる1以上の元素を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記遷移金属元素が、NiおよびMnから選ばれる1以上の元素に加え、CoおよびFeから選ばれる1以上の元素を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
【請求項6】
前記製品加熱部内の二酸化炭素濃度を4体積%以下に保持した状態で焼成を行う請求項1から5のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−201586(P2012−201586A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70911(P2011−70911)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】