説明

リチウム電池用正極活物質、その製造方法及びそれを利用したリチウム電池

【課題】リチウム電池用正極活物質、その製造方法及びそれを利用したリチウム電池を提供する。
【解決手段】一次粒子と非晶質物質とを含む二次粒子を有するリチウム電池用正極活物質が開示され、該リチウム複合酸化物とリチウム塩とを混合する段階と、混合物を熱処理する段階と、を含むリチウム電池用正極活物質の製造方法、及び該正極活物質を含む正極と、これを採用したリチウム電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池用正極活物質、その製造方法及びそれを利用したリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム二次電池は、有機電解液を使用し、既存のアルカリ電解液を使用した電池より2倍以上の高い放電電圧を表すことによって、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの吸蔵/放出(absorbing/desorbing)が可能である物質を負極及び正極として使用し、前記正極及び負極間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造し、リチウムイオンが正極及び負極に/から吸蔵/放出されるときの酸化反応、還元反応によって電気的エネルギーを生成する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、LiCoOが広く使われる。
【0005】
ところで、LiCoOは、製造コストがかさみ、安定した供給が困難である。従って、これを代替する物質として、ニッケルまたはマンガンを複合的に使用した正極活物質が開発されている。
【0006】
しかしながら、現在まで開発された正極活物質は、残存容量、回復容量及び熱的安定性が満足すべきレベルに達しておらず、改善の余地が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面は、容量及び熱的安定性を同時に向上させることができるリチウム電池用正極活物質及びその製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の一側面は、正極活物質を備えた正極を提供することである。
【0009】
本発明の他の側面は、前記正極活物質を採用したリチウム電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によって、2個以上の一次粒子の凝集体と非晶質物質とを含む少なくとも一つの二次粒子を含み、前記一次粒子は、リチウム複合酸化物を含む正極活物質が提供される。
【0011】
前記一次粒子の組成(composition)は、リチウム複合酸化物である。
【0012】
本発明の他の側面によって、リチウム複合酸化物にリチウム塩を混合及び撹拌する段階と、前記結果物を700℃超過950℃以下で熱処理する段階と、を含み、2個以上の一次粒子の凝集体と非晶質物質とを含む二次粒子を含有し、前記一次粒子がリチウム複合酸化物であるリチウム電池用正極活物質を製造するリチウム電池用正極活物質の製造方法が提供される。
【0013】
前記一次粒子の組成は、リチウム複合酸化物である。
【0014】
本発明のさらに他の側面によって、正極、負極及びそれらの間に介在されたセパレータを含むリチウム電池において、前記正極が、前述の正極活物質を含むリチウム電池が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一具現例によるリチウム電池用正極活物質は、2個以上の一次粒子を含み、電解液に露出される正極活物質の比表面積が減少するように、前記一次粒子の平均粒径が制御され、熱的安定性、高温での残存容量及び保存容量がいずれも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一具現例によるリチウム電池用正極活物質において、二次粒子の微細構造を概念的に示した図面である。
【図2】本発明の一具現例によるリチウム電池の概略的な断面構造を示した概略図である。
【図3】製造例1による正極活物質の走査電子顕微鏡写真である。
【図4】製造例2による正極活物質の走査電子顕微鏡写真である。
【図5】比較製造例1による正極活物質の走査電子顕微鏡写真である。
【図6】製造例1及び比較製造例1による正極活物質の示差走査熱量計分析写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一具現例によるリチウム電池用正極活物質は、2個以上の一次粒子の凝集体と、非晶質物質と、を含む少なくとも1つの二次粒子を含み、前記一次粒子は、リチウム複合酸化物を含む。
【0018】
前記非晶質物質は、隣接する一次粒子間の界面(grain boundary)間に存在し、非晶質物質層状で存在可能である。前記用語「界面」は、2個の隣接した一次粒子の接触面(interface)をいう。このとき、前記一次粒子間の界面は、二次粒子の内部に存在する。
【0019】
用語「一次粒子」は、共に凝集して二次粒子を形成し、一次粒子は、ロッド(rod)型から四角形までの多様な形態を有することができる。
【0020】
用語「二次粒子」は、それ以上凝集しない粒子をいい、球形特性を有している。
【0021】
前記非晶質物質の非制限的な例として、リチウム塩を挙げることができる。
【0022】
前記リチウム塩としては、硫酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムがある。
【0023】
前記非晶質物質の含有量は、リチウム複合酸化物100重量部を基準として、0.01ないし10重量部、例えば、0.1ないし2重量部である。
【0024】
非晶質物質の含有量が前記範囲である場合、正極活物質の容量特性が優れている。
【0025】
前記一次粒子の平均粒径は、0.2ないし3μmであり、二次粒子の平均粒径は、10ないし15μmである。ここで、平均粒径の測定には、レーザ回折式の粒子分布測定装置を利用する。
【0026】
前記一次粒子の平均粒径が前記範囲である場合、電解液に露出される正極活物質の比表面積が減少し、正極活物質の熱的安定性及び容量特性が優れている。
【0027】
前記二次粒子の平均粒径が前記範囲である場合、正極活物質の熱的安定性及び容量特性が優れている。
【0028】
前記リチウム複合酸化物は、例えば、下記化学式1で表示される化合物である。
【0029】
(化1)
Li(NiCoMe2−a
【0030】
前記化学式中、0.5≦x≦1、0≦y≦0.5、0<z≦0.5、0.90<a≦1.15であり、Meは、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択される。例えば、0.5≦x≦0.6、0.1≦y≦0.3、0.2≦z≦0.3、0.90<a≦1.0であるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記リチウム複合酸化物の非制限的な例として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3またはLiNi0.6CO0.2Mn0.2を挙げることができる。
【0032】
図1は、本発明の一具現例によるリチウム電池用正極活物質において、二次粒子の微細構造を概念的に示した断面図である。
【0033】
これを参照すれば、一次粒子11が凝集されて二次粒子12を形成し、一次粒子11の表面にて、一次粒子11間の界面に、非晶質物質13(例えば、硫酸リチウム)が形成されている。
【0034】
以下、本発明の一具現例によるリチウム電池用正極活物質の製造方法について説明する。
【0035】
まず、リチウム複合酸化物とリチウム塩とを混合し、これを熱処理する。前記熱処理は、空気雰囲気または酸素雰囲気下で実施できる。
【0036】
前記リチウム複合酸化物は、前述のように、化学式1で表示される化合物を使用できる。
【0037】
前記リチウム塩としては、炭酸リチウム(LiCO)、硫酸リチウム(LiSO)、硝酸リチウム(LiNO)、水酸化リチウム(LiOH)などを使用する。
【0038】
前記リチウム塩の含有量は、最終的に得た正極活物質で、リチウム複合酸化物100重量部を基準として、0.01ないし10重量部のリチウム塩が含まれるように使用する。例えば、前記リチウム塩の含有量は、リチウム複合酸化物1モルを基準として、1ないし1.1モル、例えば、1ないし1.05モルを使用する。
【0039】
前記リチウム塩の含有量が前記範囲であるとき、最終的に得た正極活物質の熱的安定性及び容量特性が優れている。
【0040】
前記熱処理時温度は、700℃を超えて950℃以下の範囲、例えば、750ないし900℃、例えば、800ないし900℃である。熱処理温度が前記範囲であるとき、非晶質物質を有する正極活物質を得ることができる。
【0041】
前記過程によって製造された正極活物質に含まれた非晶質物質は、透過電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscope)を介した回折パターン(diffraction pattern)を利用して確認可能である。
【0042】
前記正極活物質で非晶質物質は、一次粒子であるリチウム複合酸化物の容量特性をそのまま維持させつつ、熱処理時に融剤として作用し、一次粒子の粒径を増大させる方向に制御する。このように、一次粒子の粒径が増大すれば、電解液に露出される正極活物質の比表面積が減少して熱的安定性が確保され、この場合、高温での残存容量及び回復容量が優れている。
【0043】
前記正極活物質は、容量が180mAh/g以上であり、容量特性が優れている。
【0044】
前記リチウム電池用正極活物質は、リチウム電池で、一般的に使用するリチウム遷移金属酸化物をさらに含むことができる。
【0045】
前記リチウム遷移金属活物質としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCo,LiCo1−YMn,LiNi1−YMn(ここで、0≦Y<1)、LiMn2−zNi,LiMn2−zCo(ここで、0<Z<2)、LiCoPO及びLiFePOからなる群から選択される一種以上を使用できる。
【0046】
本発明の一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiCoOを使用する。
【0047】
前記リチウム遷移金属酸化物の含有量は、前記一次粒子と非晶質物質とを含む二次粒子を有する正極活物質100重量部を基準として、0.1ないし90重量部である。
【0048】
前記リチウム遷移金属酸化物の含有量が前記範囲であるとき、正極活物質の容量特性が優れている。
【0049】
以下、前記リチウム電池用正極活物質を利用したリチウム電池を製造する過程について説明するが、ここでは、本発明の一具現例による正極、負極、リチウム塩含有非水電解質及びセパレータを有するリチウム二次電池の製造方法について述べる。
【0050】
正極及び負極は、集電体上に、正極活物質層形成用の組成物及び負極活物質層形成用の組成物をそれぞれ塗布して乾燥させて製造する。
【0051】
前記正極活物質形成用の組成物は、前述の正極活物質、導電剤、バインダー及び溶媒を混合して製造される。
【0052】
前記正極活物質としては、前述のように、リチウム電池の正極活物質として、一般的に使われるリチウム遷移金属酸化物を共に使用できる。
【0053】
前記バインダーは、活物質と導電剤との結合や、活物質と集電体との結合を補助する成分であり、正極活物質の総重量100重量部を基準として、1ないし50重量部で添加される。かようなバインダーの非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン・ターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ化ゴム、などの多様な共重合体などを挙げることができる。その含有量は、正極活物質の総重量100重量部を基準として、2ないし5重量部を使用する。バインダーの含有量が前記範囲であるとき、集電体に対する活物質層の結着力が良好である。
【0054】
前記導電剤としては、当該電池に化学的変化を誘発させずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボン・ブラック、アセチレン・ブラック、ケッチェン・ブラック、チャネル・ブラック、ファーネス・ブラック、ランプ・ブラック、サマー・ブラックなどのカーボン系物質;炭素ファイバや金属ファイバのような導電性ファイバ;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;フッ化カーボン粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ(whisker);酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使われうる。
【0055】
前記導電剤の含有量は、正極活物質の総重量100重量部を基準として、2ないし5重量部を使用する。導電剤の含有量が前記範囲であるとき、最終的に得られた電極の伝導度特性が優れている。
【0056】
前記溶媒の非制限的な例として、N−メチルピロリドンなどを使用する。
【0057】
前記溶媒の含有量は、正極活物質100重量部を基準として、1ないし10重量部を使用する。溶媒の含有量が前記範囲であるとき、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0058】
前記正極集電体は、3ないし500μm厚であり、当該電池に化学的変化を誘発させずに、高い導電性を有するものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、または熱処理炭素や、ステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウムの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使われうる。該集電体は、その表面に微細な凹凸を形成し、正極活物質の接着力を高めることができ、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0059】
これとは別途に、負極活物質、バインダー、導電剤、溶媒を混合し、負極活物質層形成用の組成物を準備する。
【0060】
前記負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる物質が使われる。前記負極活物質の非制限的な例として、黒鉛、炭素のような炭素系材料;リチウム金属およびその合金;シリコン酸化物系物質などを使用できる。本発明の一具現例によれば、酸化シリコンを使用する。
【0061】
前記バインダーは、負極活物質の総重量100重量部を基準で、1ないし50重量部で添加される。かようなバインダーの非制限的な例としては、正極と同じ種類を使用できる。
【0062】
前記導電剤は、負極活物質の総重量100重量部を基準として、1ないし5重量部を使用する。導電剤の含有量が前記範囲であるとき、最終的に得られた電極の伝導度特性が優れいている。
【0063】
前記溶媒の含有量は、負極活物質の総重量100重量部を基準として、1ないし10重量部を使用する。溶媒の含有量が前記範囲であるとき、負極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0064】
前記導電剤及び溶媒は、正極製造時と同じ種類の物質を使用できる。
【0065】
前記負極集電体は、一般的に、3ないし500μm厚に設けられる。かような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発させずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅;ステンレススチール;アルミニウム;ニッケル;チタン;熱処理炭素;銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの;アルミニウム−カドミウム合金などが使われうる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成させ、負極活物質の結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使われうる。
【0066】
前記過程によって製作された正極と負極との間に、セパレータを介在させる。
【0067】
前記セパレータは、気孔直径が0.01〜10μmであり、厚みは、一般的に、5〜300μmであるものを使用する。具体的な例として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー;またはガラスファイバから作られたシートや不織布などが使われる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使われる場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0068】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水系有機溶媒及びリチウム塩とからなる。非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが使われる。
【0069】
前記非水系有機溶媒として非制限的な例を挙げれば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使われうる。
【0070】
前記有機固体電解質として非制限的な例を挙げれば、ポリエチレン誘導体、酸化ポリエチレン誘導体、酸化ポリプロピレン誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使われうる。
【0071】
前記無機固体電解質として非制限的な例を挙げれば、LiN、LiI、LiNI、LiN−LiI−LiOH、LiSiO−LiI−LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiS−SiSなどのLiの窒化物;ハロゲン化物、硫化物(sulfides)などが使われうる。
【0072】
前記リチウム塩は、前記非水系有機溶媒に溶解されやすい物質であって、その非制限的な例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使われうる。
【0073】
図2は、本発明の一具現例によるリチウム電池30の代表的な構造を概略的に図示した断面図である。
【0074】
図2を参照すると、前記リチウム電池30は、正極23;負極22;前記正極23と負極22との間に配されたセパレータ24;前記正極23、負極22及びセパレータ24に含浸された電解質(図示せず);電池ケース25;前記電池ケース25を封止する封止部材26;を主な部分として構成されている。かようなリチウム電池30は、正極23、負極22及びセパレータ24を順に積層した後、スパイラル状に巻き取られた状態で、電池ケース25に収納して構成されうる。前記電池ケース25は、封止部材26と共にシーリングされ、電池30が完成する。
【0075】
以下、下記実施例を例に挙げて詳細に説明するが、本発明は、下記実施例にのみ限定されるものではない。
【0076】
製造例1:正極活物質の製造
12μmの平均粒径を有するリチウム複合酸化物であるLiNi0.6Co0.2Mn0.2 100gに、5μmの平均粒径を有する硫酸リチウム(LiSO)0.5gを付加して混合し、これを撹拌した。
【0077】
前記結果物に対して、800℃で空気雰囲気下で2時間熱処理し、一次粒子間の界面に、LiSO非晶質層が存在する二次粒子を有する正極活物質を製造した。
【0078】
製造例2:正極活物質の製造
熱処理温度が800℃から、900℃に変更されたことを除いては、製造例1と同じ方法によって正極活物質を製造した。
【0079】
製造例3:正極活物質の製造
熱処理温度が800℃から、750℃に変更されたことを除いては、製造例1と同じ方法によって正極活物質を製造した。
【0080】
製造例4:正極活物質の製造
熱処理温度が800℃から、950℃に変更されたことを除いては、製造例1と同じ方法によって正極活物質を製造した。
【0081】
製造例5:正極活物質の製造
LiSOの含有量が0.1gに変更されたことを除いては、製造例1と同じ方法によって正極活物質を製造した。
【0082】
製造例6:正極活物質の製造
熱処理温度が800℃から、850℃に変更されたことを除いては、製造例1と同じ方法によって正極活物質を製造した。
【0083】
比較製造例1:正極活物質の製造
熱処理温度が800℃から、1,000℃に変更されたことを除いては、製造例1と同じ方法によって正極活物質を製造した。
【0084】
比較製造例2:正極活物質の製造
熱処理温度が800℃から、650℃に変更されたことを除いては、製造例1と同じ方法によって正極活物質を製造した。
【0085】
前記製造例1及び2及び比較製造例1によって製造された正極活物質を、電子走査顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)を利用し、約40,000倍まで拡大して分析し、これを図3ないし図5に示した。
【0086】
図3及び図4は、それぞれ製造例1及び製造例2の正極活物質の電子走査顕微鏡写真であり、図5は、比較製造例1の正極活物質の電子走査顕微鏡写真である。
【0087】
これを参照すれば、製造例1及び2の正極活物質は一次粒子間に硫酸リチウムからなる非晶質層が形成されていることを確認することができたが、比較製造例1の場合は、一次粒子間に非晶質層が形成されていないことが分かった。
【0088】
前記製造例1ないし5及び比較製造例1によって製造された正極活物質の一次粒子の平均粒径及び二次粒子の平均粒径を測定し、その結果を下記表1に示した。前記一次粒子及び二次粒子の平均粒径は、電子走査顕微鏡(SEM)写真を介して測定した。
【0089】
【表1】

【0090】
前記表1から、熱処理温度が上昇することによって、特に、一次粒子のサイズが大きくなることが分かった。また、硫酸リチウムの含有量が増加するほど、一次粒子のサイズが増大するということが分かった。
【0091】
前記製造例1及び比較製造例1によって製造された正極活物質に対して、示差走査熱量計を利用して熱的安定性を評価した。
【0092】
前記評価結果は、図6に示されている。
【0093】
図6を参照し、製造例1の正極活物質は、比較製造例1の場合と比較し、全体的な発熱量が低下し、熱的安定性が改善するということが分かった。
【0094】
実施例1:正極及びそれを利用したリチウム二次電池の製造
製造例1による正極活物質4.75g、ポリフッ化ビニリデン0.15g及びカーボンブラック0.15gを、N−メチルピロリドン2.5gに分散させ、正極活物質層形成用の組成物を製造した。
【0095】
前記正極活物質層形成用の組成物を60μm厚に、アルミニウム箔上にコーティングし、薄い極板状にした後、135℃で3時間以上乾燥させた後、圧延(pressing)して正極を製造した。
【0096】
これと別途に、負極を下記過程によって製造した。
【0097】
SiO及びポリフッ化ビニリデンを96:4の重量比で、N−メチルピロリドン溶媒中で混合し、負極活物質層形成用の組成物を製造した。前記負極活物質層形成用の組成物を、14μm厚に銅箔(Cu−foil)上にコーティングし、薄い極板状にした後、135℃で3時間以上乾燥させた後、圧延して負極を製造した。
【0098】
電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)を1:1:1の体積比で混合した溶媒に、LiPFを添加し、1.3M LiPF溶液を製造した。
【0099】
前記過程によって得た正極及び負極間に、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレータを介在させて電極組立体を形成し、これを巻き取って圧縮して電池ケースに入れた後、前記電解液を注入し、2,600mAh容量のリチウム二次電池を製造した。
【0100】
実施例2ないし6:正極及びそれを利用したリチウム二次電池の製造
正極製造時、製造例1によって製造された正極活物質の代わりに、製造例2ないし6によって製造された正極活物質を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0101】
比較例1:正極及びそれを利用したリチウム二次電池の製造
正極活物質として、製造例1の正極活物質の代わりに、リチウム複合酸化物であるLi0.6Co0.2Mn0.2を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0102】
比較例2:正極及びそれを利用したリチウム二次電池の製造
正極活物質として、製造例1の正極活物質の代わりに、比較製造例1の正極活物質を使用した使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0103】
比較例3:正極及びそれを利用したリチウム二次電池の製造
正極活物質として、製造例1の正極活物質の代わりに、比較製造例2の正極活物質を使用した使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0104】
前記実施例1ないし6及び比較例1ないし3によって製造されたリチウム二次電池において、高温での残存容量及び回復容量を調べ、下記表2に示した。
【0105】
前記高温での残存容量及び回復容量の評価方法は、次の通りである。
【0106】
1)高温での残存容量
60℃で、0.1C充電及び放電を実施した後、0.5C充電後に高温で10−15日放置した後、放電容量を測定して評価する。
【0107】
2)高温での回復容量
60℃で、0.1C充電及び放電を実施した後、0.5C充電後に高温で10−15日放置した後、充放電容量を測定して評価する。
【0108】
【表2】

【0109】
前記表2から分かるように、実施例1ないし6のリチウム電池は、比較例1ないし3の場合と比較し、残存容量及び回復容量が増加するということが分かった。
【0110】
以上、本発明の望ましい製造例を参照しつつ説明したが、当該技術分野の当業者であるならば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から外れない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更させることができるということを理解することができるであろう。
【符号の説明】
【0111】
11 一次粒子
12 二次粒子
13 非晶質物質
22 負極
23 正極
24 セパレータ
25 電池ケース
26 封止部材
30 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上の一次粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子、及び非晶質物質を含み、
前記一次粒子は、リチウム複合酸化物を含むリチウム電池用正極活物質。
【請求項2】
前記非晶質物質は、隣接する前記一次粒子間に存在することを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項3】
前記非晶質物質は、
少なくとも隣接する一次粒子間の界面以上に存在することを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項4】
前記非晶質物質は、リチウム塩を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用活物質。
【請求項5】
前記リチウム塩は、
硫酸リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムであることを特徴とする請求項4に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム塩の含有量は、
前記リチウム複合酸化物100重量部を基準として、0.01ないし10重量部であることを特徴とする請求項4に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項7】
前記非晶質物質の含有量は、
前記リチウム複合酸化物100重量部を基準として、0.01ないし10重量部であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項8】
前記非晶質物質の含有量は、
前記リチウム複合酸化物100重量部を基準として、0.1ないし2重量部であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項9】
前記一次粒子の平均粒径は、0.2ないし3μmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項10】
前記二次粒子の平均粒径は、10ないし15μmであることを特徴とする請求項1に記載のチウム電池用正極活物質。
【請求項11】
前記リチウム複合酸化物が、
下記化学式1で表示される化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極活物質:
(化1)
Li(NiCoMe2−a
前記化学式中、0.5≦x≦1、0≦y≦0.5、0<z≦0.5、0.90<a≦1.15であり、Meは、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択される。
【請求項12】
0.5≦x≦0.6、0.1≦y≦0.3、0.2≦z≦0.3、0.90<a≦1.0であることを特徴とする請求項11に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項13】
前記リチウム複合酸化物が、
LiNi0.5Co0.2Mn0.3またはLiNi0.6CO0.2Mn0.2であることを特徴とする請求項11に記載のリチウム電池用正極活物質。
【請求項14】
リチウム複合酸化物にリチウム塩を混合して撹拌し、リチウム複合酸化物とリチウム塩との混合物を形成する段階と、
前記混合物を700℃超過950℃以下で熱処理する段階と、を含むリチウム電池用正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記リチウム複合酸化物が、
下記化学式1で表示される化合物を含むことを特徴とする請求項14に記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法:
(化1)
Li(NiCoMe2−a
前記化学式中、0.5≦x≦1、0≦y≦0.5、0<z≦0.5、0.90<a≦1.15であり、Meは、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)及びカルシウム(Ca)からなる群から選択される。
【請求項16】
前記混合物を熱処理する段階が、750ないし900℃で実施されることを特徴とする請求項14に記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記混合物を熱処理する段階が、800ないし900℃で実施されることを特徴とする請求項14に記載のリチウム電池用正極活物質の製造方法。
【請求項18】
2個以上の一次粒子の凝集体と非晶質物質とを含む少なくとも1つの二次粒子を含み、
前記一次粒子は、リチウム複合酸化物を含むリチウム電池用正極活物質を含有する正極。
【請求項19】
2個以上の一次粒子の凝集体と非晶質物質とを含む少なくとも1つの二次粒子を含み、
前記一次粒子は、リチウム複合酸化物を含むリチウム電池用正極活物質を含有する正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極と負極との間に介在されたセパレータと、を含むリチウム電池。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−124233(P2011−124233A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274540(P2010−274540)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】