説明

リップマンホログラムの真贋判定方法及びリップマンホログラムの真贋判定装置

【目的】 レーザー再生ホログラムをリップマンホログラムとして記録した場合に、容易に真贋判定を行うことができるリップマンホログラムの真贋判定方法及びリップマンホログラムの真贋判定装置を提供する。
【構成】 記録時の波長λ1のレーザー光を第1再生照明光161として判定対象ホログラム20に照射する記録時波長照射ステップと、記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長λ2のレーザー光を第2再生照明光162として判定対象ホログラムに照射する記録時波長以外照射ステップとを有し、前記記録時波長照射ステップと前記記録時波長以外照射ステップとの再生結果から、真のリップマンホログラムであるか判定する判定ステップを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップマンホログラムの真贋判定方法及びリップマンホログラムの真贋判定装置に係り、特にレーザー再生ホログラム(レーザー光などによる再生像のみが認識可能なフレネルホログラムやフーリエ変換ホログラムを意味する)をリップマンホログラムとして記録した場合のリップマンホログラムの真贋判定方法及びリップマンホログラムの真贋判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャッシュカード、クレジットカード、小切手カード等のカード類、金券類、身分証明書、重要書類等のような認証とともに偽造防止を必要とする物品に対して、従来から各種の偽造防止手段が図られている。例えば、クレジットカードにおいては、金属反射層を有するレリーフホログラムからなるレインボーホログラムが、目視によるカードの真贋判定のための認証構造としてカードの表面に設けられている。このようなホログラムの記録装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
しかしながら、白色光によって再生像が観察可能なレリーフホログラムの場合、偽造品と真正品の区別が容易でないという問題もあった。そこで、白色光下では物体像が認識困難であり、コヒーレンス性の高い光、例えば、レーザー光などによる再生像のみが認識可能なレーザー再生ホログラムを用いることが特許文献2にて提案されている。
【0004】
【特許文献1】特公昭60−30948号公報
【特許文献2】特開2005−115006号公報
【特許文献3】特開平6−301322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法において、レーザー再生ホログラムを用いた場合の真贋判定方法として、記録時の波長のレーザー光を記録時の角度にてホログラムに入射し、再生像を読み取る方法が提案されている。しかしながら、レーザー再生の技術が使用されていることが判明すれば、レリーフホログラムによる同様の偽造品を作製することは技術的に可能であり、偽造品の真贋判定を行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザー再生ホログラムを単一波長にてリップマンホログラムとして記録した場合に、容易に真贋判定を行うことができるリップマンホログラムの真贋判定方法及びリップマンホログラムの真贋判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するリップマンホログラムの真贋判定方法であって、記録時の波長のレーザー光を再生照明光として判定対象ホログラムに照射する記録時波長照射ステップと、記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長のレーザー光を再生照明光として判定対象ホログラムに照射する記録時波長以外照射ステップとを有し、前記記録時波長照射ステップと前記記録時波長以外照射ステップとの再生結果から、真のリップマンホログラムであるか判定する判定ステップを有することを特徴とする。
【0008】
また、前記判定ステップは、記録時波長照射ステップで正しく再生でき、且つ、記録時波長以外照射ステップで正しく再生できない場合、真のリップマンホログラムであると判定することを特徴とする。
【0009】
また、前記判定ステップは、記録時波長照射ステップで正しく再生でき、且つ、記録時波長以外照射ステップで正しく再生できる場合、贋のレリーフホログラムであると判定することを特徴とする。
【0010】
また、前記判定ステップは、記録時波長照射ステップで正しく再生できない場合、贋のホログラム等であると判定することを特徴とする。
【0011】
また、前記再生照明光の記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長は、前記真のリップマンホログラムの波長−透過率分布において、ピーク波長を中心に半値幅の倍より外の領域の波長であることを特徴とする。
【0012】
また、前記記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長の再生照明光の入射角度は、前記記録時の波長の再生照明光の入射角度と同一であることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、上記課題を解決するリップマンホログラムの真贋判定装置であって、記録時の波長のレーザー光を再生照明光として判定対象ホログラムに照射する記録時波長再生照明光照射手段と、記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長のレーザー光を再生照明光として判定対象ホログラムに照射する記録時波長以外再生照明光照射手段と、前記記録時波長再生照明光照射手段又は前記記録時波長以外再生照明光照射手段が照射した少なくとも一つの再生照明光により、前記判定対象ホログラムから再生された再生像を再生する再生手段と、前記再生手段の再生結果から、真のリップマンホログラムであるか判定する判定手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリップマンホログラムの真贋判定方法及びリップマンホログラムの真贋判定装置によれば、レーザー再生ホログラムをリップマンホログラムとして記録した場合に、容易に真贋判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施例に基づいて、本発明に係るリップマンホログラムの真贋判定方法及びリップマンホログラムの真贋判定装置を説明する。
【0016】
まず、本発明の前提であるリップマンホログラムによるレーザー再生ホログラムを作製する方法を簡単に説明する。図1は本発明に係るリップマンホログラムによるレーザー再生ホログラムを作製する方法を示す図である。
【0017】
図1において、1はマスクパターン版、2はホログラム感材、2’はリップマンホログラム、3は片平凸レンズ、11は物体照明光、12は物体光、13は参照光である。
【0018】
マスクパターン版1は、ホログラムに記録する情報を有する物体に相当するものである。ホログラム感材2は、フォトポリマー等からなり、マスクパターン版1の後方に所定距離離して配置する。マスクパターン版1及びホログラム感材2の間には、ホログラム感材2側に凸面を向けた集光用の片平凸レンズ3が設置される。なお、集光用の片平凸レンズ3は配置しなくても良い。
【0019】
次に、マスクパターン版1の背面より所定の波長λの物体照明光11を照明する。物体照明光11は、マスクパターン版1を透過し、物体光12となり、片平凸レンズ3により集光され、ホログラム感材2に入射する。
【0020】
一方、ホログラム感材2には、物体光12の入射側と反対側から物体照明光11と同一の光源からの同じ波長λの略平行光からなる参照光13を入射させ、物体光12と参照光13を干渉させて、ホログラム感材2を後処理してホログラム2’を作製する。
【0021】
このようなレーザー再生ホログラムを作製するのに、ホログラム感材2としては、緑色用として、特許文献3の実施例1のフォトポリマーを用いた。また、撮影に用いたレーザー及び波長は、DPSSレーザーの532nmである。
【0022】
なお、本実施例では、上記のリップマンホログラムの作製方法を用いたが、これに限らず、異なる方法を用いてもよい。
【0023】
次に、本発明に係るリップマンホログラム2’の再生方法を説明する。図2は、リップマンホログラムによるレーザー再生ホログラムを再生するための工程を説明するための図である。
【0024】
図2において、1’はマスクパターン、2’はリップマンホログラム、6は光散乱性スクリーン、16は再生照明光、17は再生光である。
【0025】
レーザー再生ホログラムを再生するためには、図1に示したリップマンホログラム2’の記録のときに用いた参照光13の入射側と反対側から参照光13と反対に進む同じ波長λの再生照明光16を入射する。
【0026】
すると、再生照明光16はリップマンホログラム2’によって再生光17に回折される。このとき、再生光17の光路に再生手段としての光散乱性スクリーン6を配置すれば、マスクパターン版1と相似のマスクパターン1’を観察することができる。なお、リップマンホログラム2’と光散乱性スクリーン6の間には、リップマンホログラム2’側に凸面を向けた片平凸レンズ3を配置しても良い。
【0027】
次に、本発明に係るリップマンホログラムの真贋判定方法を説明する。図3は、判定対象ホログラムによりパターンを観察できる場合を示す図、 図4は、判定対象ホログラムによりパターンを観察できない場合を示す図である。
【0028】
また、判定対象ホログラム20は、再生前の段階では、真のリップマンホログラム2’か、又は、贋のレリーフホログラム102’か、判定できない状態である。
【0029】
まず、記録時波長照射ステップにおいて、記録時波長再生照明光照射手段は、記録時の波長λ1のレーザー光を第1再生照明光161として判定対象ホログラム20に照射する。
【0030】
また、記録時波長以外照射ステップにおいて、記録時波長以外再生照明光照射手段は、少なくとも一つ以上の記録時の波長λ1以外の波長λ2のレーザー光を第2再生照明光162として判定対象ホログラム20に照射する。
【0031】
次に、判定ステップにおいて、図示しない判定手段により、記録時波長照射ステップ及び記録時波長以外照射ステップのそれぞれの場合で、再生手段としての光散乱性スクリーン6においてマスクパターン1’が正しく観察できるか判定する。
【0032】
なお、これら記録時波長照射ステップと記録時波長以外照射ステップは、順序を逆にしても、同時に実行してもよい。
【0033】
そして、判定ステップの結果、記録時波長照射ステップで、図3に示すように、光散乱性スクリーン6においてマスクパターン1’が正しく観察でき、且つ、記録時波長以外照射ステップで、図4に示すように、光散乱性スクリーン6においてマスクパターン1’を観察できない場合、判定対象ホログラム20は、真のリップマンホログラム2’であると判定する。
【0034】
また、記録時波長照射ステップで、図3に示すように、光散乱性スクリーン6においてマスクパターン1’が正しく観察でき、且つ、記録時波長以外照射ステップで、図3に示すように、光散乱性スクリーン6においてマスクパターン1’を観察できる場合、判定対象ホログラム20は、贋のレリーフホログラム102’であると判定する。
【0035】
さらに、記録時波長照射ステップで、図4に示すように、光散乱性スクリーン6においてマスクパターン1’が正しく観察できない場合、判定対象ホログラム20は、贋のホログラム202’等であると判定する。
【0036】
実際に、532nmで記録したレーザー再生ホログラムに、再生照明光として532nm以外に632nmのレーザー光を同時に照射したところ、532nmではパターンが正しく読めたが、632nmではパターンが読めなかった。
【0037】
一方、比較のためにレリーフホログラムのフーリエ変換ホログラムを532nm及び632nmの2波長で再生したところ、どちらの波長においてもパターンを正しく読むことができた。
【0038】
図5は、本実施例で作製したリップマンホログラムの波長−透過率分布を示すグラフである。図5に示すように、リップマンホログラム2’は、ある特定の波長付近で透過率が下がるものである。しかしながら、必ずしもある特定値の波長のみで透過率が下がるものではない。
【0039】
したがって、特定値である記録時の波長λ1に対して、記録時の波長λ1以外の波長λ2は、作製したリップマンホログラム2’の波長−透過率分布において、ピーク波長を中心に半値幅の倍より外の領域Aの波長が好ましい。
【0040】
このように、記録時の波長λ1以外の波長λ2を設定することで、記録時の波長λ1の透過率と明確に区別がつき、マスクパターン1’の観察時にも明確に判定することができる。
【0041】
また、本実施例で作製したリップマンホログラム2’では、再生照明光16の入射角度を約±10°ずらした際にもマスクパターン1’を観察することができた。
【0042】
したがって、再生照明光16をリップマンホログラム2’に照射する際、記録時波長再生照明光照射手段が照射する記録時の波長λ1の第1再生照明光161の入射角度と、記録時波長以外再生照明光照射手段が照射する記録時の波長λ1以外の波長λ2の第2再生照明光162の入射角度とを約±10°以内の範囲で異ならせて照射してもよい。
【0043】
このように、第1再生照明光161の入射角度と、記録時の波長λ1以外の波長λ2の第2再生照明光162の入射角度とを約±10°以内の範囲で異ならせて照射してもよいので、記録時波長再生照明光照射手段と、記録時波長再生照明光照射手段とを設置する際に、精密な精度を要求されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るリップマンホログラムの作製方法を示す図である。
【図2】本発明に係るリップマンホログラムの再生方法を示す図である。
【図3】判定対象ホログラムによりパターンを観察できる場合を示す図である。
【図4】判定対象ホログラムによりパターンを観察できない場合を示す図である。
【図5】本実施例で作製したリップマンホログラムの波長−透過率分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1…マスクパターン版、1’…マスクパターン、2…ホログラム感材、2’…リップマンホログラム、3…片平凸レンズ、6…光散乱性スクリーン、11…物体照明光、12…物体光、13…参照光、16…再生照明光、161…第1再生照明光、162…第2再生照明光、17…再生光、20…判定対象ホログラム、102’…贋のレリーフホログラム、202’…贋のホログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録時の波長のレーザー光を再生照明光として判定対象ホログラムに照射する記録時波長照射ステップと、記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長のレーザー光を再生照明光として判定対象ホログラムに照射する記録時波長以外照射ステップとを有し、前記記録時波長照射ステップと前記記録時波長以外照射ステップとの再生結果から、真のリップマンホログラムであるか判定する判定ステップを有することを特徴とするリップマンホログラムの真贋判定方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、記録時波長照射ステップで正しく再生でき、且つ、記録時波長以外照射ステップで正しく再生できない場合、真のリップマンホログラムであると判定することを特徴とする請求項1に記載のリップマンホログラムの真贋判定方法。
【請求項3】
前記判定ステップは、記録時波長照射ステップで正しく再生でき、且つ、記録時波長以外照射ステップで正しく再生できる場合、贋のレリーフホログラムであると判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリップマンホログラムの真贋判定方法。
【請求項4】
前記判定ステップは、記録時波長照射ステップで正しく再生できない場合、贋のホログラム等であると判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のリップマンホログラムの真贋判定方法。
【請求項5】
前記再生照明光の記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長は、前記真のリップマンホログラムの波長−透過率分布において、ピーク波長を中心に半値幅の倍より外の領域の波長であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のリップマンホログラムの真贋判定方法。
【請求項6】
前記記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長の再生照明光の入射角度は、前記記録時の波長の再生照明光の入射角度と異なることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のリップマンホログラムの真贋判定方法。
【請求項7】
記録時の波長のレーザー光を再生照明光として判定対象ホログラムに照射する記録時波長再生照明光照射手段と、記録時の波長以外の少なくとも一つ以上の波長のレーザー光を再生照明光として判定対象ホログラムに照射する記録時波長以外再生照明光照射手段と、前記記録時波長再生照明光照射手段又は前記記録時波長以外再生照明光照射手段が照射した少なくとも一つの再生照明光により、前記判定対象ホログラムから再生された再生像を再生する再生手段と、前記再生手段の再生結果から、真のリップマンホログラムであるか判定する判定手段を備えたことを特徴とするリップマンホログラムの真贋判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−139676(P2009−139676A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316613(P2007−316613)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】