説明

リニアモータ駆動式仕分け装置

【課題】制御コストが低いリニアモータ駆動式仕分け装置を提供する。
【解決手段】複数のリニアモータによってエンドレス状の搬送路に沿って循環駆動される搬送機構を介して物品を搬送し所望の場所にて排出するリニアモータ駆動式仕分け装置において、複数のリニアモータの一部がインバータ回路に接続されインバータ制御されるとともに、残余のリニアモータが直接商用電源に接続され定常駆動されることにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は仕分け装置に関し、特に、多数のリニアモータを用いて物品をエンドレス状の搬送路に沿って搬送し、所望の場所にて排出するリニアモータ駆動式仕分け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送路の任意位置に物品の供給位置及び多数の排出区分ラインを附設したエンドレス状のガイドレールに沿ってリニアモータコイルの複数個を任意の間隔で配設すると共に傾転自在としたトレーを具備したトレー台車を多数連結してガイドレールに沿って循環走行するようにし、且つこれらトレー台車に台車がどの位置に停車してもいずれかのリニアモータコイルにて推力が作用するようにしてリアクションプレートを設け、トレー台車をガイドレールに沿って循環駆動するようにしたリニアモータ駆動式仕分け装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、リニアモータで循環駆動されるスラットコンベヤの各スラットの長手方向に移動可能に設けられたスライドシューの移動により、物品を所定の排出シュートに排出するスライドシュー式物品仕分け装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらのリニアモータを使用した仕分け装置は、リニアモータの長所である静粛性・メンテナンスのし易さ、安定性が高く評価されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−137218号公報
【特許文献2】特開2006−273469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のリニアモータ駆動式仕分け装置は、図4に示すように、複数のリニアモータLIM1〜LIM8をそれぞれインバータ回路を用いて分散制御しているため、制御コストが高くなるという課題が指摘されていた。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、制御コストが低いリニアモータ駆動式仕分け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本請求項1に係る発明は、複数のリニアモータによってエンドレス状の搬送路に沿って循環駆動される搬送機構を介して物品を搬送し所望の場所にて排出するリニアモータ駆動式仕分け装置において、前記複数のリニアモータの一部がインバータ回路に接続されインバータ制御されるとともに、残余のリニアモータが直接商用電源に接続され定常駆動されることにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係るリニアモータ駆動式仕分け装置において、前記インバータ回路に接続されるリニアモータの数が、全体の半数であることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0010】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係るリニアモータ駆動式仕分け装置において、前記インバータ回路に接続されるリニアモータと直接商用電源に接続されるリニアモータとがランダムに配設されることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
本請求項1に係る発明によれば、複数のリニアモータによってエンドレス状の搬送路に沿って循環駆動される搬送機構を介して物品を搬送し所望の場所にて排出するリニアモータ駆動式仕分け装置において、複数のリニアモータの一部がインバータ回路に接続されインバータ制御されるとともに、残余のリニアモータが直接商用電源に接続され定常駆動されることにより、制御コストに占める割合の多いインバータの台数を削減できるので、制御コストが低いリニアモータ駆動式仕分け装置を提供することができる。
【0012】
そして、本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係るリニアモータ駆動式仕分け装置において、インバータ回路に接続されるリニアモータの数が、全体の半数であることにより、制御コストに占める割合の多いインバータの台数を半減できるので、制御コストがより低いリニアモータ駆動式仕分け装置を提供することができる。
【0013】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係るリニアモータ駆動式仕分け装置において、インバータ回路に接続されるリニアモータと直接商用電源に接続されるリニアモータとがランダムに配設されることにより、エンドレス状の搬送路の全体がムラなく速度フィードバック制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のリニアモータ駆動式仕分け装置の駆動回路の概念図。
【図2】本発明の実施例1の要部構造を示す側面図。
【図3】本発明の実施例2の全体構造を示す斜視図。
【図4】従来のリニアモータ駆動式仕分け装置の駆動回路の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のリニアモータ駆動式仕分け装置は、複数のリニアモータによってエンドレス状の搬送路に沿って循環駆動される搬送機構を介して物品を搬送し所望の場所にて排出するリニアモータ駆動式仕分け装置において、複数のリニアモータの一部がインバータ回路に接続されインバータ制御されるとともに、残余のリニアモータが直接商用電源に接続され定常駆動されるものであって、制御コストが低いリニアモータ駆動式仕分け装置を提供するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0016】
例えば、本発明のリニアモータ駆動式仕分け装置の駆動源であるリニアモータには、リニア誘導モータ(LIM)を使用することもできるしリニア同期モータ(LSM)を使用することもできる。
【0017】
ここで、本発明のリニアモータ駆動式仕分け装置の基本原理について、図1に基づいて説明する。図1に示した例では、仕分け装置を8台のリニア誘導モータLIM1〜LIM8で駆動している。そのうち、半数にあたる4台のリニア誘導モータLIM1〜LIM4は、インバータ回路に接続されて、インバータ制御盤からの指令を受けて速度制御される。一方、残余の4台のリニア誘導モータLIM5〜LIM8は、商用電源に直接接続される。従来のように、全てのリニア誘導モータ(LIM)をインバータ回路に接続して速度制御しなくても、一部のリニア誘導モータ(LIM)をインバータ回路に接続して速度制御することによって、速度制御が可能になる。これによって、インバータ回路の数を半減でき、制御コストを大幅に削減できる。
【0018】
なお、リニア誘導モータ(LIM)は、商用電源に直接接続したときに効率よく動作するように定格電圧200V、最適周波数50/60Hzのものを用いることが好ましい。また、インバータ回路に接続するリニア誘導モータLIM1〜LIM4と商用電源に直接接続するリニア誘導モータLIM5〜LIM8は、ランダムに配設することにより、エンドレス状の循環軌道における速度ムラを少なくすることができるため好ましい。
【実施例1】
【0019】
本発明の一実施例を図2に基づいて説明する。
ここで、図2は、本発明の実施例1であるリニアモータ駆動式仕分け装置の要部構造の側面図である。
【0020】
本発明の実施例1のリニアモータ駆動式仕分け装置100は、搬送物の載ったパン(トレイ)が指示された行き先で傾倒し、確実に仕分ける、いわゆるパン式ソータに分類される仕分け装置である。
【0021】
リニアモータ駆動式仕分け装置100は、水平な連結軸140で相互に屈曲自在にエンドレス状に連結されて上下に平行した水平部分を有する走行経路に沿って垂直面内で循環駆動され走行経路の内周側がリニアモータの2次側となるリアクションプレート120で構成されている多数の連結リンク110A、110Bと、それぞれの連結軸140の両端部に設けられ、走行経路の左右両側に配置された一対のレールの走行ローラ支持面に案内される回転自在な走行ローラ150と、連結リンク110A、110Bの走行経路外周側に固定され、物品を載置する仕分けトレイ170を側方に傾倒可能に支持するキャリッジ160と、連結リンク110A、110Bと仕分けトレイ170のそれぞれの通過位置の間で走行経路の左右両側に配置された一対のレールのガイドローラ案内面で案内され、連結リンク110A、110Bの走行方向と連結軸140の軸方向の両方に直交する軸回りに回転自在にキャリッジ160に支持されたガイドローラ165と、リアクションプレート120が通過時に対向するように走行経路内内側の複数の定位置に設けられ、リアクションプレート120を介して連結リンク110A、110Bを駆動する一次側固定子ユニット130とを備えている。
【0022】
本実施例においては、それぞれの一次側固定子ユニット130に対して一つずつ冷却ファン180を設けているが、大容量の冷却ファンによって複数の一次側固定子ユニット130が発生する熱を機枠外部にまとめて排出するようにしてもよい。さらに、一次側固定子ユニット130の発熱量が小さく、機枠内への通気が良好に行われる場合には、冷却ファン180は省略してもよい。
【0023】
そして、複数の一次側固定子ユニット130のうち半数が、インバータ回路に接続されインバータ制御盤により速度制御される。残余の半数の一次側固定子ユニット130が、直接商用電源に接続され定常駆動される。
【実施例2】
【0024】
次に、本発明の別の実施例を図3に基づいて説明する。
ここで、図3は、本発明の実施例2であるリニアモータ駆動式仕分け装置の全体構造の斜視図である。
【0025】
本発明の実施例2のリニアモータ駆動式仕分け装置200は、スライドシューと呼ばれる横移動するユニットが順々に作動し、滑らかに指示された行き先に押し出して仕分けする、いわゆるシュー式ソータに分類される仕分け装置である。
【0026】
実施例2のリニアモータ駆動式仕分け装置200は、インダクションコンベヤ220を用いて物品Wをスラットコンベヤ240上に投入し、スラットコンベヤ240の各スラット241の長手方向に移動可能に設けられたスライドシュー242の移動により、物品Wを所定の排出シュート250に排出する構造をしている。また、インダクションコンベヤ220の上流には、物品Wをインダクションコンベヤ220まで搬送する搬送コンベヤ210が設置されている。スラットコンベヤ240は、図示されていないが、各スラットの裏側に固着された二次側導体と、その二次側導体と向き合うようにスラットの背後に複数設置された一次側固定子ユニットによって、リニア駆動されている。
【0027】
そして、複数の一次側固定子ユニットのうち半数が、インバータ回路に接続されインバータ制御盤により速度制御される。残余の半数の一次側固定子ユニットが、直接商用電源に接続され定常駆動される。
【0028】
以上のように、本発明のリニアモータ駆動式仕分け装置によれば、複数のリニアモータによってエンドレス状の搬送路に沿って循環駆動される搬送機構を介して物品を搬送し所望の場所にて排出し、複数のリニアモータの一部がインバータ回路に接続されインバータ制御されるとともに、残余のリニアモータが直接商用電源に接続され定常駆動されることにより、制御コストに占める割合の多いインバータの台数を削減できるので、制御コストが低いリニアモータ駆動式仕分け装置を提供することができ、その効果は絶大である。
【符号の説明】
【0029】
100、200 ・・・ リニアモータ駆動式仕分け装置
110A、110B ・・・ 歯部プレート
120 ・・・ リアクションプレート
130 ・・・ 一次側固定子ユニット
140 ・・・ 連結軸
150 ・・・ 走行ローラ
160 ・・・ キャリッジ
165 ・・・ ガイドローラ
170 ・・・ 仕分けトレイ
180 ・・・ 冷却ファン
210 ・・・ 搬送コンベヤ
220 ・・・ インダクションコンベヤ
240 ・・・ スラットコンベヤ
241 ・・・ スラット
242 ・・・ スライドシュー
250 ・・・ 排出シュート
W ・・・ 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリニアモータによってエンドレス状の搬送路に沿って循環駆動される搬送機構を介して物品を搬送し所望の場所にて排出するリニアモータ駆動式仕分け装置において、
前記複数のリニアモータの一部がインバータ回路に接続されインバータ制御されるとともに、残余のリニアモータが直接商用電源に接続され定常駆動されることを特徴とするリニアモータ駆動式仕分け装置。
【請求項2】
前記インバータ回路に接続されるリニアモータの数が、全体の半数であることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ駆動式仕分け装置。
【請求項3】
前記インバータ回路に接続されるリニアモータと直接商用電源に接続されるリニアモータとがランダムに配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリニアモータ駆動式仕分け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−265049(P2010−265049A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115594(P2009−115594)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】