説明

リニアモータ駆動式搬送トップチェーン

【課題】搬送トップチェーンの小型化と簡素化を図ることができるとともに、水処理環境下であっても錆びることなく耐環境性と衛生面に優れ、しかも、駆動時の接触騒音を抑制して静粛性を発揮することができるリニアモータ駆動式搬送トップチェーンを提供すること。
【解決手段】リニアモータ機構の二次側可動子120が、連結ピン130によって多数連結してなる非金属製トッププレート110にそれぞれ埋設されているリニアモータ駆動式搬送トップチェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送装置や仕分け装置などに用いられる搬送トップチェーンに関するものであり、さらに詳しくは、自己潤滑性があり、静粛な運行が可能で、衛生面においても優れた特性を有するリニアモータ駆動式搬送トップチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の搬送装置に用いるためのリニアモータ駆動式搬送チェーンが開発されており、たとえば、シート状基材の両側耳縁を保持して所定速度で連続的に移動処理するテンターに用いるための、リニアモータの可動子部を適宜間隔で連続して取り付けたテンターチェンからなるリニアモータ駆動式搬送チェーンがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−57618号公報(第1頁、図1−図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のリニアモータ駆動式搬送チェーンは、チェーン本体にリニアモータの可動子部を追加して張り付けなどにより取り付けていたため、可動子部が剥がれ易く、駆動斑が生じるという問題があったり、チェーン構造が複雑になって搬送装置も全体的に複雑な構造になり、搬送装置として全体的に大型化し、その設置スペースも多くなるという問題があった。
また、従来のリニアモータ駆動式搬送チェーンは、可動子部に金属製プレートを採用されているため、水処理などを伴うような物品搬送分野で使用する場合には防錆処理を施す必要があり、ガイドレールなどの周辺部材との接触騒音を生じ易いという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、従来の問題を解決するものであって、搬送トップチェーンの小型化と簡素化を図ることができるとともに、水処理環境下であっても錆びることなく耐環境性と衛生面に優れ、しかも、駆動時の接触騒音を抑制して静粛性を発揮することができるリニアモータ駆動式搬送トップチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的のため、本発明のリニアモータ駆動式搬送トップチェーンは、リニアモータ機構の二次側可動子が、連結ピンによって多数連結してなる非金属製トッププレートにそれぞれ埋設されている。
【0006】
ここで、本発明における非金属製トッププレートの素材については、エンジニアリングプラスチックであれば、如何なるプラスチック樹脂であっても何ら差し支えない。
【0007】
また、本発明における二次側可動子の素材として、非磁性導体であるアルミニウムや銅などの単一導体、あるいは、このような単一導体と鉄などの強磁性体と組み合わせた複合導体を用いた場合には、一次側固定子に発生する進行磁界の中で渦電流を誘起し推力を発生させる、「リニア誘導モータ(LIM)」と称するリニアモータ機構となり、また、磁界中に入れると磁化する磁性体として鉄などの突極鉄芯を用いた場合には、一次側固定子に発生する進行磁界の吸引力により、二次側に推力を発生させる、「リニアリラクタンスモータ(LRM)」と称するリニアモータ機構となり、さらに、永久磁石、あるいは、永久磁石を鉄などの強磁性体と組み合わせて用いた場合には、一次側固定子と二次側の界磁磁極との間で発生する吸引力と反発力により、進行磁界の移動速度に同期させて二次側を移動させる、「リニア同期モータ(LSM)」と称するリニアモータ機構となる。
なお、上述したようなリニア誘導モータ(LIM)やリニア同期モータ(LSM)と称するリニアモータ機構の二次側可動子側を複合導体で構成した場合には、強磁性体に磁路が形成されるため、二次側可動子側を単一導体で構成した場合よりも大きな推力が得られる。
【0008】
他方、本発明におけるリニアモータ機構の二次側可動子に相対させる一次側固定子は、これに発生する移動磁界によって二次側可動子側に推力を誘発させるものであれば、如何なるものでも良く、例えば、積層されたけい素鋼板にコイル(相巻線)を巻回したモータコイル、あるいは、コイル(相巻線)を非磁性部材でモールド成型したコアレス型モータコイルと称するものを採用することができ、特に、コアレス型モータコイルの場合には、コイル間に磁路が形成されるように二次側可動子の両側に配置すると良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリニアモータ駆動式搬送トップチェーンは、リニアモータ機構の二次側可動子が非金属製トッププレートに埋設されていることによって、二次側可動子の材質に係わらず、水処理環境下であっても錆びることなく耐環境性と衛生面に優れた物品搬送を実現でき、しかも、駆動時に搬送ラインに敷設されているガイドレールなどの周辺部材との接触騒音を抑制して静粛性を発揮することができる。
また、二次側可動子をトッププレートに張り付けていた構造の従来のリニアモータ駆動式搬送トップチェーンに比較すると、搬送トップチェーンの小型化と簡素化を図ることができるとともに、搬送ラインにリニアモータ機構を分散配置状態で据え付けて推力を得るため、噛み合い音の主因となる駆動用スプロケットを用いることなく低騒音で給油などの保守メンテナンスが著しく軽減され、しかも、チェーン張力が小さくなって長距離、重量物搬送を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1乃至図2に基づいて、本発明の実施例であるリニアモータ駆動式搬送トップチェーン100について説明する。図1は、本発明の実施例であるリニアモータ駆動式搬送トップチェーン100を示す正面図であり、図2は、図1に示すリニアモータ駆動式搬送トップチェーン100の側面図である。
【0011】
まず、本実施例のリニアモータ駆動式搬送トップチェーン100は、図1乃至図2に示すように、エンジニアリングプラスチックからなる非金属製トッププレート110にリニアモータ機構の二次側可動子120が射出成型加工時に埋設され、この二次側可動子120を埋設した非金属製トッププレート110が連結ピン130によって多数連結されて構成されている。
【0012】
そこで、前記二次側可動子120は、鉄鋼板などの強磁性体で形成されてリニア駆動の推力を助長するバックアイアンプレート121とこのバックアイアンプレート121に積層されてリニアモータ機構の一次側固定子PSに対向するリアクションプレート122とからなる複合導体で構成されており、バックアイアンプレート121に大きな磁路を形成して二次側可動子120に大きな推力が得られるようになっている。
【0013】
なお、リニアモータ機構の一次側固定子PSは、搬送ラインの復路側外周に設けられて、電磁鋼板でできた櫛形状の鉄心と巻線からなり、鉄心のスロット部分に一定の極間隔で空間的にずれた幾つかのコイル(相巻線)を構成する巻線が何重にも捲回され、このようなコイルに交流電流を流すことにより、時間と共に移動する進行磁界を発生できるようになっている。
【0014】
そして、前記リアクションプレート122は、非磁性導体であるアルミニウムや銅などの単一導体から構成され、前述した一次側固定子PSに進行磁界が発生すると、リアクションプレート122の表面に渦電流が誘起され、リアクションプレート122にフレミング則による推力が発生する「リニア誘導モータ(LIM)」と称するリニアモータ機構が形成される。
【0015】
このようにして得られた本実施例のリニアモータ駆動式搬送トップチェーン100は、リニアモータ機構の二次側可動子120が非金属製トッププレート110に埋設されていることによって、二次側可動子120の材質に係わらず、水処理環境下であっても錆びることなく耐環境性と衛生面に優れた物品搬送を実現できるとともに、非金属製トッププレート110が搬送ラインに敷設されているガイドレールなどの周辺部材との接触騒音を抑制して静粛性を発揮することができる。
【0016】
また、搬送ラインの復路側にリニアモータ機構を分散配置状態で据え付けて推力を得ることができ、噛み合い音の主因となる駆動用スプロケットを用いることなく低騒音で給油などの保守メンテナンスが著しく軽減され、しかも、走行速度の制御を一次側固定子PSに印加する電流の周波数制御により行うため、滑らかな速度制御が可能となり、さらに、チェーン張力が小さくなって長距離、重量物搬送を達成することができるなど、その効果は甚大である。
【0017】
なお、前述したリアクションプレート122のアルミニウムや銅などからなる導体に替えて、磁界中に入れると磁化する磁性体として鉄などの突極鉄芯を用いた場合には、一次側固定子PSに発生する進行磁界の吸引力により、二次側に推力を発生させる、「リニアリラクタンスモータ(LRM)」と称するリニアモータ機構が構成される。
【0018】
同様に、前述したリアクションプレート122のアルミニウムや銅などからなる導体に替えて永久磁石を用いた場合には、一次側固定子PSと二次側の界磁磁極との相互作用により、進行磁界の移動速度に同期させて二次側を移動させる、「リニア同期モータ(LSM)」と称するリニアモータ機構が構成され、定速搬送を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例であるリニアモータ駆動式搬送トップチェーン100を示す正面図。
【図2】図1に示すリニアモータ駆動式搬送トップチェーン100の側面図。
【符号の説明】
【0020】
100 ・・・ リニアモータ駆動式搬送トップチェーン
110 ・・・ 非金属製トッププレート
120 ・・・ 二次側可動子
121 ・・・ バックアイアンプレート
122 ・・・ リアクションプレート
130 ・・・ 連結ピン
PS ・・・ 一次側固定子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータ機構の二次側可動子が、連結ピンによって多数連結してなる非金属製トッププレートにそれぞれ埋設されていることを特徴とするリニアモータ駆動式搬送トップチェーン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−52051(P2006−52051A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234399(P2004−234399)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】