リニアモータ
【課題】リニアモータを可動子の移動方向に複数並べた場合に、リニアモータの設置面積が大きくなる。
【解決手段】本発明のリニアモータは、隣り合う可動子51a,51bの間に設けられた固定子52cが一体に形成され、この一体化された固定子52cが、可動子51a,51bに対向する二面に、それぞれ突極50を有する。この構成により、固定子を固定するためのU字溝側面壁の削減が可能になり、単に、可動子の移動方向に対して並列に複数配置するリニアモータより設置面積を小さくすることができる。
【解決手段】本発明のリニアモータは、隣り合う可動子51a,51bの間に設けられた固定子52cが一体に形成され、この一体化された固定子52cが、可動子51a,51bに対向する二面に、それぞれ突極50を有する。この構成により、固定子を固定するためのU字溝側面壁の削減が可能になり、単に、可動子の移動方向に対して並列に複数配置するリニアモータより設置面積を小さくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の産業機械で使用されるリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機械等の産業機械では、高速、高精度を目的としてリニアモータが使用されている。このようなリニアモータの中で、特に長ストロークの機械において、高価な永久磁石を可動子側に配置することで、永久磁石の使用量を少なくして、リニアモータの低コスト化を実現したものがある(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
従来のリニアモータの一例について、図4から6を用いて説明する。図4(a)は、従来のリニアモータの概略構成を示す図であり、図4(b)と(c)は、永久磁石の配置を示す図である。図5は、図4(a)のC−C線による断面図である。図6は、リニアモータに巻回される巻線の結線図である。
【0004】
リニアモータは、並列して延びる二つの固定子52a,52bと、固定子52a,52b間を、これらの延びる方向に沿って移動可能な可動子51とを有する。
【0005】
固定子52a,52bは、電磁鋼板を積層して形成される。固定子52a,52bは、互いに対向する面に所定間隔、例えばピッチPの間隔で配置される突極50を有する。また、固定子52a,52bは、図4(a)で示されるように、所定の長さLで製作される。そして、固定子52a,52bは、可動子51のストローク長に渡り、可動子51の移動方向に複数個並べて設置される。固定子52a,52bは、例えば工作機械のベース72(図5に示す)に固定される。具体的には、図5で示されるように、ボルト71により、固定子52a,52bの下面74がベース72に接するように固定される。
【0006】
一方、可動子51は、ベース72とテーブル(図示せず)との間に設けられテーブルに固定されたころがりガイド等で図4中のX軸方向に移動可能に支持される。可動子51は、電磁鋼板を積層して形成される可動子ブロック53,54,55を有する。可動子ブロック53がU相の可動子ブロックであり、可動子ブロック54はW相の可動子ブロックであり、そして、可動子ブロック55がV相の可動子ブロックである。可動子ブロック53,54,55が、可動子51の進行方向であるX軸方向に相対的に120°、すなわち固定子52a,52bの磁極ピッチPの1/3だけズラして配置される。なお、可動子ブロック53,54,55はブロック間の寸法精度を維持するために、それらの一部が互いに機械的に結合されている場合もある。
【0007】
可動子ブロック53,54,55には、3相交流巻線がそれぞれ巻回される。すなわち、可動子ブロック53にはU相の3相交流巻線56が、可動子ブロック54にはW相の3相交流巻線57が、そして可動子ブロック55にはV相の3相交流巻線58が、それぞれ巻回される。3相交流巻線56,57,58が巻回された可動子ブロック53,54,55は、モールド樹脂76で一体に成形されている。
【0008】
可動子ブロック53,54,55の表面には永久磁石59,64がN,S,N,・・の順に交互に配置される。具体的には、図4(b),(c)に示すように、N,Sを一組とすると3組の永久磁石対がピッチPで配置されている。ここで、図4(a)に示されるように、固定子52a側をSIDE−A、固定子52b側をSIDE−Bとすると、SIDE−A側の永久磁石59とSIDE−B側の永久磁石64は、SIDE−A側から見た極性と、SIDE−B側から見た極性とが逆になるように配置されている。
【0009】
3相交流巻線56,57,58は、図6に示されるようにスター結線されている。図4(a)に示されるように、例えば、3相交流巻線56,57,58にUからVとWの方向に電流が印加されると、リニアモータに磁束62が励磁される。
【0010】
リニアモータの動作について説明する。3相交流巻線56,57,58に電流を印加すると、可動子ブロック53,54,55はY軸方向(図4(a)参照)のプラスあるいはマイナス方向に励磁される。その際、永久磁石59,64のうち、交流巻線の励磁方向と同一の磁性方向に配置された永久磁石の磁束は強められる。一方、励磁方向と反対の磁性方向に配置された永久磁石の磁束は弱められる。このため、永久磁石59と64とは、互いに極性が反対になるように、すなわち一方がN極になり他方がS極になるように励磁される。そして各可動子ブロック53,54,55および固定子側52a,52bを通過した磁束は、図4(a)の符号62に示すような磁路を形成する。この時、可動子51と固定子52a,52bとの位置に応じた磁気吸引力が生ずることで、可動子51に推力が発生し、可動子51が移動する。
【0011】
さらに詳しく磁束の流れについて説明する。3相交流巻線56,57,58に電流を流す。一例として、U相からV相とW相へ、すなわち3相交流巻線56は図4(a)に示される巻線方向、3相交流巻線57,58には図4(a)に示される巻線方向と反対方向に電流を流す。そうすると、可動子ブロック53においては、SIDE−A側がS極に、SIDE−B側がN極になる。一方、可動子ブロック54,55においては、逆に、SIDE−A側がN極になり、SIDE−B側がS極になる。したがって、図4(a)に示されるように、磁束が可動子ブロック53から固定子52bを経て可動子ブロック54,55に流れ、つぎに固定子52aを通って再び可動子ブロック53に戻るという磁路62を形成する。すると、可動子51にはX軸方向に磁気吸引力が働き推力が発生する。
【0012】
また、下記特許文献2には、上述したリニアモータを、工作機械のベースに取り付ける取付構造の改良に関する技術が開示されている。この取付構造について、図7,8を用いて説明する。なお、下記特許文献2においては、1つのリニアモータの取付構造について開示されているが、下記の説明では、リニアモータを、可動子の移動方向に垂直な方向に並列に配置した場合の取付構造について説明する。
【0013】
図8において、ベース72の各部位に示す符号の名称は、以下の通りである。85はベース72に形成されたU字溝、82はベース72の側壁に形成されたU字溝側面壁、107は隣り合う可動子51a,51bの間に設けられたU字溝側面壁、84、108はU字形状の端部,言い換えればベース72の上面に該当するベース上面である。ベース上面84、108は、固定子上面73の高さと略一致する高さになるように形成されている。ベース上面84、108と固定子上面73を橋渡しするように平板状の板状支持部材81が配置される。板状支持部材81には、図7に示されるように、ボルト穴77が複数形成されている。板状支持部材81は、ボルト83によりベース上面84、108に固定され、ボルト71により固定子上面73に固定される。これにより、固定子52a,52bは、ボルト71を介してベース72のU字溝85の底部に固定されるとともに、固定子上面73に固定された板状支持部材81を介してベース72のベース上面84、108に固定される。
【0014】
このような構造である理由は、電磁鋼板を積層して形成されている固定子の剛性を向上させるためである。これにより、磁気吸引力によるエアギャップの変化を防ぎ、モータ性能の低下を防ぐことができる。また、固定子の剛性の向上によって、モータ制御において、位置や速度のゲインを上げた場合、固定子が直ちに振動してしまうことを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−318839号公報
【特許文献2】特開2009−213211号公報
【特許文献3】特開2000−312464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上述したような従来のリニアモータには以下に説明するような課題があった。
【0017】
従来のリニアモータを用いて、例えば、重量ワークを搭載する大型工作機械のテーブルを駆動させるためには、その駆動に必要な大きな推力を得る必要がある。このような大推力を得るために、可動子51の移動方向に対して並列、すなわち図4(a)のY軸方向に、可動子51を複数個配置する構成を取る例がある。この場合、固定子52a,52bの間には、図8に示されるようなU字溝側面壁107が必要となるため、Y軸方向、すなわち複数の可動子51が並ぶ方向におけるリニアモータの設置面積が大きくなり、リニアモータが機械のスペースに入らなくなるという問題がある。
【0018】
また、工作機械等では、加工面品位や加工精度を向上させるために、推力リップルの小さいリニアモータが求められる。上記のように、可動子51を並列に複数個並べる場合には、推力リップルは単純に並べた台数に比例して大きくなってしまい、結果として加工面品位や加工精度が低下してしまうという問題がある。
【0019】
上記特許文献3においては、可動子を並列に複数個並べる場合に、各可動子により発生する推力リップルを互いに相殺させて減少させる方法が開示されている。具体的には、並列配置された複数の可動子をi組にグループ分けし、各組ごとに可動子をモータ電気角で360度/(2×i)度ずらして配置することにより、推力リップルの低減を図っている。しかしながら、複数のリニアモータを、可動子の移動方向に垂直な方向に並列に配置すると、上述した理由によりY軸方向、すなわち複数の可動子が並ぶ方向におけるリニアモータの設置面積が大きくなり、リニアモータが機械のスペースに入らなくなるという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、これら全ての課題を解決されるためになされたものであって、リニアモータを可動子の移動方向に対して垂直な方向に並列に複数配置した場合に、リニアモータの省スペース化を図るとともに、推力リップルを減少させて加工面品位や加工精度の向上を図ることができるリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、互いに対向する面に所定間隔で配列される突極を有し、並行して延びる二つの固定子と、三相交流巻線によりそれぞれ三相の磁極となる3種の可動子ブロックと、前記可動子ブロックの、前記二つの固定子にそれぞれ対向する二面に、極性を交互にして配列された永久磁石とを有し、前記二つの固定子の間を、固定子の延びる方向に沿って移動可能な可動子と、を有するリニアモータであって、複数のリニアモータが可動子の移動方向に対して並列に配置され、複数の可動子は互いにモータ電気角で360/(2×可動子組数)度の位置関係にあり、隣り合う可動子の間に設けられた二つの固定子は、それらの可動子に対向する二面にそれぞれ前記突極を有するように一体化されていることを特徴とする。
【0022】
また、前記一体化された固定子における、可動子の移動方向に対して垂直な方向の幅が、最外側固定子の幅を2倍した数値より小さくすることが好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のリニアモータによれば、リニアモータを可動子の移動方向に対して垂直な方向に並列に複数配置した場合に、リニアモータの省スペース化を図るとともに、推力リップルを減少させて加工面品位や加工精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態のリニアモータの概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態のリニアモータの取付構造を示す図である。
【図3(a)】突極の位置が異なるリニアモータに本発明を適用した構成の一例を示す図である。
【図3(b)】永久磁石の配置を示す図である。
【図3(c)】永久磁石の配置を示す図である。
【図4(a)】従来のリニアモータの概略構成を示す図である。
【図4(b)】永久磁石の配置を示す図である。
【図4(c)】永久磁石の配置を示す図である。
【図5】図4(a)のC−C線による断面図である。
【図6】リニアモータに巻回される巻線の結線図である。
【図7】固定子の斜視図である。
【図8】2つのリニアモータを、可動子の移動方向に垂直な方向に並列に配置した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るリニアモータの実施形態について説明する。一例として、可動子の移動方向に対して並列に2列に配置されたリニアモータについて説明する。なお、本発明は、上述のように2列に配置されたリニアモータに限らず、複数列に配置されたリニアモータにも適用可能である。
【0026】
図1は、本実施形態のリニアモータの概略構成を示す図である。図2は、本実施形態のリニアモータの取付構造を示す図である。ここで、従来技術で述べたリニアモータと同じ構成要素については、同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0027】
まず、リニアモータの固定子の取付構造について説明する。ベース72は、断面U字形状に形成される。図2において、ベース72の各部位に示す符号の名称は以下の通りである。すなわち、85はベース72に形成されたU字溝、82はベース72の側壁に成形されたU字溝面壁、84はU字形状の端部、言い換えればベース72の上面に該当するベース上面である。ベース上面84は、固定子上面73の高さと略一致する高さになるように形成されている。ベース上面84と、Y軸方向(図1参照)におけるリニアモータの外側に位置する固定子(以降、単に最外側固定子という)52a,52bの固定子上面73とを橋渡しするように平板状の板状支持部材81が配置される。板状支持部材81は、ボルト83によりベース上面84に固定され、ボルト71により最外側固定子52a,52bの固定子上面73に固定される。これにより、最外側固定子52a,52bは、ボルト71を介してベース72のU字溝85の底部に固定されるとともに、固定子上面73に固定された板状支持部材81を介してベース72のベース上面84に固定される。なお、本実施形態においては、最外側固定子は、Y軸方向(図1参照)におけるリニアモータの外側に位置する固定子である場合について説明したが、2列以上に並列配置されたリニアモータの場合、最外側固定子は、並列配置された複数のリニアモータの最も外側の、二つのリニアモータの固定子であって、Y軸方向の外側にそれぞれ位置する固定子である。
【0028】
図1,2では、隣り合う可動子51a,51bの間に設けられた2つの固定子が一体化されて形成されている。この一体化された一体化固定子を、以降、一体化固定子52cと記す。一体化固定子52cは、可動子51a,51bに対向する二面に、それぞれ突極50を有する。そして、一体化固定子52cは、図2に示されるように、ボルト71によりベース72に固定される。なお、従来のリニアモータを示す図4(a)に示した固定子52a,52bの境界部101は図示していない。
【0029】
また、並列配置された複数のリニアモータの推力リップルを互いに相殺するために、可動子51は、i組にグループ分けされ、各組ごとに可動子51をモータ電気角で360度/(2×i)度ずらして配置される。図1は、i=2組のため、隣り合う可動子51a,51bは、90度に相当するLsだけずらして配置されている。
【0030】
上記のように構成されたリニアモータにおいては、一体化固定子52cの面であって、可動子51a,51bに対向する各面に、突極50がそれぞれ形成されている。このため、可動子51aと一体化固定子52cとの間に働く磁気吸引力と、可動子51bと一体化固定子52cとの間に働く磁気吸引力とは、互いに同じ力で反対方向に働くので、磁気吸引力は相殺される。したがって、一体化固定子52cが可動子51a,51bの方向にそれぞれたわむことを防ぐことができる。
【0031】
また、一体化固定子52cは、最外側固定子52a,52bのように、可動子51a,51bに向かう一方向のみに磁気吸引力が働くことがないため、図8に示されるように、板状支持部材81を介してU字溝側面壁107に固定する必要がなくなる。よって、隣接するリニアモータの間に、U字溝側面壁107を設置する必要がなくなるため、可動子51の移動方向に対して並列に複数配置するリニアモータの設置面積を小さくすることができる。また、U字溝側面壁107や固定子52a,52bを固定する固定ボルト83用のタップが不要になるため加工コストを低減することができる。
【0032】
なお、本実施形態のリニアモータにおいては、リニアモータの設置面積を、U字溝側面壁107を無くした状態よりも、さらに小さくすることができる。以下に、具体的に説明する。
【0033】
上述したように、本実施形態においては、図1に示されるように、可動子51a,51bは、可動子の移動方向に相対的にモータ電気角で90度ずらして配置されている。可動子51a,51bには、それぞれ異なる2つの制御装置により、モータ電気角を90度ずらした位相の電流が印加される。例えば、可動子51aの3相交流巻線56,57,58にU相からV相とW相の方向に電流が印加された場合、可動子51aと最外側固定子52aと一体化固定子52cとには、図1に示される磁束111が励磁される。一方、可動子52bの3相交流巻線93,94,95には、モータ電気角を90度ずらしたV相からW相の方向に電流が印加され、可動子51bと最外側固定子52bと一体化固定子52cとには、磁束112が励磁される。この時、最外側固定子52a,52bの固定子ヨーク61の幅は、磁束111,112によって磁気飽和しないように所定の幅を確保する必要がある。
【0034】
一方、一体化固定子52cにも、磁束111と112がX軸方向、すなわち可動子移動方向に励磁される。しかし、可動子51a,51bには、モータ電気角で90度ずれた電流が印加されるため、一体型固定子52cには、磁束111と112が可動子移動方向にずれて励磁される。よって、一体化固定子52cの固定子ヨーク102の幅は、一方の最外側固定子52a,52bの固定子ヨーク61の幅を2倍した長さよりも小さくすることが可能となる。これにより、リニアモータの設置面積をさらに小さくすることができる。
【0035】
次に、一体化固定子52cの固定子ヨーク102の幅が、最外側固定子52a,52bの固定子ヨーク61の幅より、どの程度狭くできるかについて説明する。説明の前に、一体化固定子52cにおいてX軸に直交する仮想の面である仮想面130,131を、最外側固定子52aにおいてX軸に直交する仮想の面である仮想面132,133を設定する。これらの仮想面130,131,132,133は、X軸方向において、可動子51a,51bの各相ブロック間に位置し、一体化固定子52cと最外側固定子52aで磁束が最も集中する面である。ただし、仮想面130,131と仮想面132,133に励磁する磁束の大きさは、可動子51a,51bの位置により変化するため、今回は、仮想面131と仮想面132ついて、それぞれの仮想面で励磁される最大磁束を求め比較する。
【0036】
まず、仮想面132に励磁される最大磁束をΦとする。これに対して、仮想面131に励磁される磁束の大きさは、可動子ブロック53から一体化固定子52cへ流れ込む磁束と、可動子ブロック121から一体化固定子52cへ流れ込む磁束の和となる。電源周波数をfとし、可動子ブロック53から一体化固定子52cへ流れ込む方向を正とすると、可動子ブロック53に励磁される磁束は、Φ・sin(2π・f・t)で表わすことができる。一方、可動子ブロック121には可動子ブロック53に対してモータ電気角を90度ずらした電流が印加されるため、可動子ブロック121に励磁される磁束は−Φ・sin(2π・f・t−π/2)となる。そうすると、仮想面131を通過する磁束は、Φ・sin(2π・f・t)−Φ・sin(2π・f・t−π/2)=√2・Φ・cos(2π・f・t−π/4)となり、最大磁束は、√2・Φとなる。
【0037】
よって、一体化固定子52cをX軸方向に通過する磁束は、最外側固定子52a,52bを通過する磁束の√2倍となる。以上のことから、従来技術においては、図4(a)に示される1組のリニアモータを可動子の移動方向と垂直な方向に並列に並べると、2つの可動子に挟まれた固定子の幅は、通常の固定子(例えば最外側固定子)の幅の2倍となるが、本発明のリニアモータによれば、一体化固定子52cにおける可動子の移動方向に励磁される磁束の最大値は、最外側固定子52a,52bの√2倍であるため、磁気飽和しない一体化固定子52cの幅は、最外側固定子の1/√2倍に狭くすることができる。
【0038】
本実施形態によれば、リニアモータを、可動子の移動方向に対して並列に複数配置した場合に、リニアモータの設置面積をより小さくして、リニアモータの省スペース化を図ることができる。さらに、本実施形態によれば、各可動子51a,51bの発生する推力リップルを互いに相殺し、推力リップルを低減させて、加工面品位や加工精度の向上を図ることができる。
【0039】
なお、図1に示される最外側固定子52a,52bと一体化固定子52cの各突極50は、X軸方向において全て同じ位置に配置されている。しかしながら、これらの突極50は、そのように同じ位置に無くても、本発明と同様の効果を得ることができる。以下にその理由について説明する。
【0040】
図3は、各固定子の突極50の位置が、X軸方向においてそれぞれ異なるリニアモータに本発明を適用した構成の一例を示す図である。最外側固定子52aは、可動子51aに対向する面に突極50aを有する。最外側固定子52bは、可動子51bに対向する面に突極50bを有する。一体化固定子52cは、可動子51aに対向する面に突極50cbを有し、可動子51bに対向する面に突極50caを有する。突極50ca,50cbは、突極50a,50bに対して、ピッチPの1/2だけ、X軸方向にずらして配置されている。一方、可動子ブロック53,54,55のSIDE−A,SIDE−Bに配置した磁石64と59は、図3(b),図3(c)に示されるように配置される。これは、本発明に係るリニアモータの実施形態の磁石配置を示した図4(b),図4(c)に対して、図4(c)に示したSIDE−Bの磁石のみN極とS極が逆になる配置、すなわち磁石の磁極もピッチPの1/2だけずらすように配置されているということである。これにより、図3に示されるようなリニアモータの構成において、可動子51a,51bには図1と同じ磁気吸引力が発生し、同じ推力が発生する。
【0041】
以上のように、図3に示されるようなリニアモータの構成においても、リニアモータの性能に変わりはなく、一体化固定子52cの幅や、一体化固定子52c内に生成される磁束111,112も図1と同じであるため、本発明と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、突極50a,50ca,50cbは同じ位置で、突極50bだけピッチPの1/2ずらすといった構成や、突極50b,50ca,50cbは同じ位置で、突極50aだけピッチPの1/2ずらすといった構成でも同様である。以上のように、各固定子52の突極50の位置が可動子51の移動方向にずれている構成についても、本発明と同様の効果を得ることができるため本発明に包括される。
【0043】
上述した全ての実施形態においては、可動子51の構造が図1および図3に示されるような場合のリニアモータについて説明したが、これに限定されない。可動子51の構造が図1および図3と異なるタイプのリニアモータであっても、固定子52の形状が同様であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
50,50a,50b,50ca,50cb 突極、51,51a,51b 可動子、52,52a,52b,52c 固定子、53,54,55,121,122,123 可動子ブロック、56,57,58,93,94,95 3相交流巻線、59,64 永久磁石、62,111,112 磁束。
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等の産業機械で使用されるリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機械等の産業機械では、高速、高精度を目的としてリニアモータが使用されている。このようなリニアモータの中で、特に長ストロークの機械において、高価な永久磁石を可動子側に配置することで、永久磁石の使用量を少なくして、リニアモータの低コスト化を実現したものがある(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
従来のリニアモータの一例について、図4から6を用いて説明する。図4(a)は、従来のリニアモータの概略構成を示す図であり、図4(b)と(c)は、永久磁石の配置を示す図である。図5は、図4(a)のC−C線による断面図である。図6は、リニアモータに巻回される巻線の結線図である。
【0004】
リニアモータは、並列して延びる二つの固定子52a,52bと、固定子52a,52b間を、これらの延びる方向に沿って移動可能な可動子51とを有する。
【0005】
固定子52a,52bは、電磁鋼板を積層して形成される。固定子52a,52bは、互いに対向する面に所定間隔、例えばピッチPの間隔で配置される突極50を有する。また、固定子52a,52bは、図4(a)で示されるように、所定の長さLで製作される。そして、固定子52a,52bは、可動子51のストローク長に渡り、可動子51の移動方向に複数個並べて設置される。固定子52a,52bは、例えば工作機械のベース72(図5に示す)に固定される。具体的には、図5で示されるように、ボルト71により、固定子52a,52bの下面74がベース72に接するように固定される。
【0006】
一方、可動子51は、ベース72とテーブル(図示せず)との間に設けられテーブルに固定されたころがりガイド等で図4中のX軸方向に移動可能に支持される。可動子51は、電磁鋼板を積層して形成される可動子ブロック53,54,55を有する。可動子ブロック53がU相の可動子ブロックであり、可動子ブロック54はW相の可動子ブロックであり、そして、可動子ブロック55がV相の可動子ブロックである。可動子ブロック53,54,55が、可動子51の進行方向であるX軸方向に相対的に120°、すなわち固定子52a,52bの磁極ピッチPの1/3だけズラして配置される。なお、可動子ブロック53,54,55はブロック間の寸法精度を維持するために、それらの一部が互いに機械的に結合されている場合もある。
【0007】
可動子ブロック53,54,55には、3相交流巻線がそれぞれ巻回される。すなわち、可動子ブロック53にはU相の3相交流巻線56が、可動子ブロック54にはW相の3相交流巻線57が、そして可動子ブロック55にはV相の3相交流巻線58が、それぞれ巻回される。3相交流巻線56,57,58が巻回された可動子ブロック53,54,55は、モールド樹脂76で一体に成形されている。
【0008】
可動子ブロック53,54,55の表面には永久磁石59,64がN,S,N,・・の順に交互に配置される。具体的には、図4(b),(c)に示すように、N,Sを一組とすると3組の永久磁石対がピッチPで配置されている。ここで、図4(a)に示されるように、固定子52a側をSIDE−A、固定子52b側をSIDE−Bとすると、SIDE−A側の永久磁石59とSIDE−B側の永久磁石64は、SIDE−A側から見た極性と、SIDE−B側から見た極性とが逆になるように配置されている。
【0009】
3相交流巻線56,57,58は、図6に示されるようにスター結線されている。図4(a)に示されるように、例えば、3相交流巻線56,57,58にUからVとWの方向に電流が印加されると、リニアモータに磁束62が励磁される。
【0010】
リニアモータの動作について説明する。3相交流巻線56,57,58に電流を印加すると、可動子ブロック53,54,55はY軸方向(図4(a)参照)のプラスあるいはマイナス方向に励磁される。その際、永久磁石59,64のうち、交流巻線の励磁方向と同一の磁性方向に配置された永久磁石の磁束は強められる。一方、励磁方向と反対の磁性方向に配置された永久磁石の磁束は弱められる。このため、永久磁石59と64とは、互いに極性が反対になるように、すなわち一方がN極になり他方がS極になるように励磁される。そして各可動子ブロック53,54,55および固定子側52a,52bを通過した磁束は、図4(a)の符号62に示すような磁路を形成する。この時、可動子51と固定子52a,52bとの位置に応じた磁気吸引力が生ずることで、可動子51に推力が発生し、可動子51が移動する。
【0011】
さらに詳しく磁束の流れについて説明する。3相交流巻線56,57,58に電流を流す。一例として、U相からV相とW相へ、すなわち3相交流巻線56は図4(a)に示される巻線方向、3相交流巻線57,58には図4(a)に示される巻線方向と反対方向に電流を流す。そうすると、可動子ブロック53においては、SIDE−A側がS極に、SIDE−B側がN極になる。一方、可動子ブロック54,55においては、逆に、SIDE−A側がN極になり、SIDE−B側がS極になる。したがって、図4(a)に示されるように、磁束が可動子ブロック53から固定子52bを経て可動子ブロック54,55に流れ、つぎに固定子52aを通って再び可動子ブロック53に戻るという磁路62を形成する。すると、可動子51にはX軸方向に磁気吸引力が働き推力が発生する。
【0012】
また、下記特許文献2には、上述したリニアモータを、工作機械のベースに取り付ける取付構造の改良に関する技術が開示されている。この取付構造について、図7,8を用いて説明する。なお、下記特許文献2においては、1つのリニアモータの取付構造について開示されているが、下記の説明では、リニアモータを、可動子の移動方向に垂直な方向に並列に配置した場合の取付構造について説明する。
【0013】
図8において、ベース72の各部位に示す符号の名称は、以下の通りである。85はベース72に形成されたU字溝、82はベース72の側壁に形成されたU字溝側面壁、107は隣り合う可動子51a,51bの間に設けられたU字溝側面壁、84、108はU字形状の端部,言い換えればベース72の上面に該当するベース上面である。ベース上面84、108は、固定子上面73の高さと略一致する高さになるように形成されている。ベース上面84、108と固定子上面73を橋渡しするように平板状の板状支持部材81が配置される。板状支持部材81には、図7に示されるように、ボルト穴77が複数形成されている。板状支持部材81は、ボルト83によりベース上面84、108に固定され、ボルト71により固定子上面73に固定される。これにより、固定子52a,52bは、ボルト71を介してベース72のU字溝85の底部に固定されるとともに、固定子上面73に固定された板状支持部材81を介してベース72のベース上面84、108に固定される。
【0014】
このような構造である理由は、電磁鋼板を積層して形成されている固定子の剛性を向上させるためである。これにより、磁気吸引力によるエアギャップの変化を防ぎ、モータ性能の低下を防ぐことができる。また、固定子の剛性の向上によって、モータ制御において、位置や速度のゲインを上げた場合、固定子が直ちに振動してしまうことを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−318839号公報
【特許文献2】特開2009−213211号公報
【特許文献3】特開2000−312464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上述したような従来のリニアモータには以下に説明するような課題があった。
【0017】
従来のリニアモータを用いて、例えば、重量ワークを搭載する大型工作機械のテーブルを駆動させるためには、その駆動に必要な大きな推力を得る必要がある。このような大推力を得るために、可動子51の移動方向に対して並列、すなわち図4(a)のY軸方向に、可動子51を複数個配置する構成を取る例がある。この場合、固定子52a,52bの間には、図8に示されるようなU字溝側面壁107が必要となるため、Y軸方向、すなわち複数の可動子51が並ぶ方向におけるリニアモータの設置面積が大きくなり、リニアモータが機械のスペースに入らなくなるという問題がある。
【0018】
また、工作機械等では、加工面品位や加工精度を向上させるために、推力リップルの小さいリニアモータが求められる。上記のように、可動子51を並列に複数個並べる場合には、推力リップルは単純に並べた台数に比例して大きくなってしまい、結果として加工面品位や加工精度が低下してしまうという問題がある。
【0019】
上記特許文献3においては、可動子を並列に複数個並べる場合に、各可動子により発生する推力リップルを互いに相殺させて減少させる方法が開示されている。具体的には、並列配置された複数の可動子をi組にグループ分けし、各組ごとに可動子をモータ電気角で360度/(2×i)度ずらして配置することにより、推力リップルの低減を図っている。しかしながら、複数のリニアモータを、可動子の移動方向に垂直な方向に並列に配置すると、上述した理由によりY軸方向、すなわち複数の可動子が並ぶ方向におけるリニアモータの設置面積が大きくなり、リニアモータが機械のスペースに入らなくなるという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、これら全ての課題を解決されるためになされたものであって、リニアモータを可動子の移動方向に対して垂直な方向に並列に複数配置した場合に、リニアモータの省スペース化を図るとともに、推力リップルを減少させて加工面品位や加工精度の向上を図ることができるリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、互いに対向する面に所定間隔で配列される突極を有し、並行して延びる二つの固定子と、三相交流巻線によりそれぞれ三相の磁極となる3種の可動子ブロックと、前記可動子ブロックの、前記二つの固定子にそれぞれ対向する二面に、極性を交互にして配列された永久磁石とを有し、前記二つの固定子の間を、固定子の延びる方向に沿って移動可能な可動子と、を有するリニアモータであって、複数のリニアモータが可動子の移動方向に対して並列に配置され、複数の可動子は互いにモータ電気角で360/(2×可動子組数)度の位置関係にあり、隣り合う可動子の間に設けられた二つの固定子は、それらの可動子に対向する二面にそれぞれ前記突極を有するように一体化されていることを特徴とする。
【0022】
また、前記一体化された固定子における、可動子の移動方向に対して垂直な方向の幅が、最外側固定子の幅を2倍した数値より小さくすることが好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のリニアモータによれば、リニアモータを可動子の移動方向に対して垂直な方向に並列に複数配置した場合に、リニアモータの省スペース化を図るとともに、推力リップルを減少させて加工面品位や加工精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態のリニアモータの概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態のリニアモータの取付構造を示す図である。
【図3(a)】突極の位置が異なるリニアモータに本発明を適用した構成の一例を示す図である。
【図3(b)】永久磁石の配置を示す図である。
【図3(c)】永久磁石の配置を示す図である。
【図4(a)】従来のリニアモータの概略構成を示す図である。
【図4(b)】永久磁石の配置を示す図である。
【図4(c)】永久磁石の配置を示す図である。
【図5】図4(a)のC−C線による断面図である。
【図6】リニアモータに巻回される巻線の結線図である。
【図7】固定子の斜視図である。
【図8】2つのリニアモータを、可動子の移動方向に垂直な方向に並列に配置した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るリニアモータの実施形態について説明する。一例として、可動子の移動方向に対して並列に2列に配置されたリニアモータについて説明する。なお、本発明は、上述のように2列に配置されたリニアモータに限らず、複数列に配置されたリニアモータにも適用可能である。
【0026】
図1は、本実施形態のリニアモータの概略構成を示す図である。図2は、本実施形態のリニアモータの取付構造を示す図である。ここで、従来技術で述べたリニアモータと同じ構成要素については、同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0027】
まず、リニアモータの固定子の取付構造について説明する。ベース72は、断面U字形状に形成される。図2において、ベース72の各部位に示す符号の名称は以下の通りである。すなわち、85はベース72に形成されたU字溝、82はベース72の側壁に成形されたU字溝面壁、84はU字形状の端部、言い換えればベース72の上面に該当するベース上面である。ベース上面84は、固定子上面73の高さと略一致する高さになるように形成されている。ベース上面84と、Y軸方向(図1参照)におけるリニアモータの外側に位置する固定子(以降、単に最外側固定子という)52a,52bの固定子上面73とを橋渡しするように平板状の板状支持部材81が配置される。板状支持部材81は、ボルト83によりベース上面84に固定され、ボルト71により最外側固定子52a,52bの固定子上面73に固定される。これにより、最外側固定子52a,52bは、ボルト71を介してベース72のU字溝85の底部に固定されるとともに、固定子上面73に固定された板状支持部材81を介してベース72のベース上面84に固定される。なお、本実施形態においては、最外側固定子は、Y軸方向(図1参照)におけるリニアモータの外側に位置する固定子である場合について説明したが、2列以上に並列配置されたリニアモータの場合、最外側固定子は、並列配置された複数のリニアモータの最も外側の、二つのリニアモータの固定子であって、Y軸方向の外側にそれぞれ位置する固定子である。
【0028】
図1,2では、隣り合う可動子51a,51bの間に設けられた2つの固定子が一体化されて形成されている。この一体化された一体化固定子を、以降、一体化固定子52cと記す。一体化固定子52cは、可動子51a,51bに対向する二面に、それぞれ突極50を有する。そして、一体化固定子52cは、図2に示されるように、ボルト71によりベース72に固定される。なお、従来のリニアモータを示す図4(a)に示した固定子52a,52bの境界部101は図示していない。
【0029】
また、並列配置された複数のリニアモータの推力リップルを互いに相殺するために、可動子51は、i組にグループ分けされ、各組ごとに可動子51をモータ電気角で360度/(2×i)度ずらして配置される。図1は、i=2組のため、隣り合う可動子51a,51bは、90度に相当するLsだけずらして配置されている。
【0030】
上記のように構成されたリニアモータにおいては、一体化固定子52cの面であって、可動子51a,51bに対向する各面に、突極50がそれぞれ形成されている。このため、可動子51aと一体化固定子52cとの間に働く磁気吸引力と、可動子51bと一体化固定子52cとの間に働く磁気吸引力とは、互いに同じ力で反対方向に働くので、磁気吸引力は相殺される。したがって、一体化固定子52cが可動子51a,51bの方向にそれぞれたわむことを防ぐことができる。
【0031】
また、一体化固定子52cは、最外側固定子52a,52bのように、可動子51a,51bに向かう一方向のみに磁気吸引力が働くことがないため、図8に示されるように、板状支持部材81を介してU字溝側面壁107に固定する必要がなくなる。よって、隣接するリニアモータの間に、U字溝側面壁107を設置する必要がなくなるため、可動子51の移動方向に対して並列に複数配置するリニアモータの設置面積を小さくすることができる。また、U字溝側面壁107や固定子52a,52bを固定する固定ボルト83用のタップが不要になるため加工コストを低減することができる。
【0032】
なお、本実施形態のリニアモータにおいては、リニアモータの設置面積を、U字溝側面壁107を無くした状態よりも、さらに小さくすることができる。以下に、具体的に説明する。
【0033】
上述したように、本実施形態においては、図1に示されるように、可動子51a,51bは、可動子の移動方向に相対的にモータ電気角で90度ずらして配置されている。可動子51a,51bには、それぞれ異なる2つの制御装置により、モータ電気角を90度ずらした位相の電流が印加される。例えば、可動子51aの3相交流巻線56,57,58にU相からV相とW相の方向に電流が印加された場合、可動子51aと最外側固定子52aと一体化固定子52cとには、図1に示される磁束111が励磁される。一方、可動子52bの3相交流巻線93,94,95には、モータ電気角を90度ずらしたV相からW相の方向に電流が印加され、可動子51bと最外側固定子52bと一体化固定子52cとには、磁束112が励磁される。この時、最外側固定子52a,52bの固定子ヨーク61の幅は、磁束111,112によって磁気飽和しないように所定の幅を確保する必要がある。
【0034】
一方、一体化固定子52cにも、磁束111と112がX軸方向、すなわち可動子移動方向に励磁される。しかし、可動子51a,51bには、モータ電気角で90度ずれた電流が印加されるため、一体型固定子52cには、磁束111と112が可動子移動方向にずれて励磁される。よって、一体化固定子52cの固定子ヨーク102の幅は、一方の最外側固定子52a,52bの固定子ヨーク61の幅を2倍した長さよりも小さくすることが可能となる。これにより、リニアモータの設置面積をさらに小さくすることができる。
【0035】
次に、一体化固定子52cの固定子ヨーク102の幅が、最外側固定子52a,52bの固定子ヨーク61の幅より、どの程度狭くできるかについて説明する。説明の前に、一体化固定子52cにおいてX軸に直交する仮想の面である仮想面130,131を、最外側固定子52aにおいてX軸に直交する仮想の面である仮想面132,133を設定する。これらの仮想面130,131,132,133は、X軸方向において、可動子51a,51bの各相ブロック間に位置し、一体化固定子52cと最外側固定子52aで磁束が最も集中する面である。ただし、仮想面130,131と仮想面132,133に励磁する磁束の大きさは、可動子51a,51bの位置により変化するため、今回は、仮想面131と仮想面132ついて、それぞれの仮想面で励磁される最大磁束を求め比較する。
【0036】
まず、仮想面132に励磁される最大磁束をΦとする。これに対して、仮想面131に励磁される磁束の大きさは、可動子ブロック53から一体化固定子52cへ流れ込む磁束と、可動子ブロック121から一体化固定子52cへ流れ込む磁束の和となる。電源周波数をfとし、可動子ブロック53から一体化固定子52cへ流れ込む方向を正とすると、可動子ブロック53に励磁される磁束は、Φ・sin(2π・f・t)で表わすことができる。一方、可動子ブロック121には可動子ブロック53に対してモータ電気角を90度ずらした電流が印加されるため、可動子ブロック121に励磁される磁束は−Φ・sin(2π・f・t−π/2)となる。そうすると、仮想面131を通過する磁束は、Φ・sin(2π・f・t)−Φ・sin(2π・f・t−π/2)=√2・Φ・cos(2π・f・t−π/4)となり、最大磁束は、√2・Φとなる。
【0037】
よって、一体化固定子52cをX軸方向に通過する磁束は、最外側固定子52a,52bを通過する磁束の√2倍となる。以上のことから、従来技術においては、図4(a)に示される1組のリニアモータを可動子の移動方向と垂直な方向に並列に並べると、2つの可動子に挟まれた固定子の幅は、通常の固定子(例えば最外側固定子)の幅の2倍となるが、本発明のリニアモータによれば、一体化固定子52cにおける可動子の移動方向に励磁される磁束の最大値は、最外側固定子52a,52bの√2倍であるため、磁気飽和しない一体化固定子52cの幅は、最外側固定子の1/√2倍に狭くすることができる。
【0038】
本実施形態によれば、リニアモータを、可動子の移動方向に対して並列に複数配置した場合に、リニアモータの設置面積をより小さくして、リニアモータの省スペース化を図ることができる。さらに、本実施形態によれば、各可動子51a,51bの発生する推力リップルを互いに相殺し、推力リップルを低減させて、加工面品位や加工精度の向上を図ることができる。
【0039】
なお、図1に示される最外側固定子52a,52bと一体化固定子52cの各突極50は、X軸方向において全て同じ位置に配置されている。しかしながら、これらの突極50は、そのように同じ位置に無くても、本発明と同様の効果を得ることができる。以下にその理由について説明する。
【0040】
図3は、各固定子の突極50の位置が、X軸方向においてそれぞれ異なるリニアモータに本発明を適用した構成の一例を示す図である。最外側固定子52aは、可動子51aに対向する面に突極50aを有する。最外側固定子52bは、可動子51bに対向する面に突極50bを有する。一体化固定子52cは、可動子51aに対向する面に突極50cbを有し、可動子51bに対向する面に突極50caを有する。突極50ca,50cbは、突極50a,50bに対して、ピッチPの1/2だけ、X軸方向にずらして配置されている。一方、可動子ブロック53,54,55のSIDE−A,SIDE−Bに配置した磁石64と59は、図3(b),図3(c)に示されるように配置される。これは、本発明に係るリニアモータの実施形態の磁石配置を示した図4(b),図4(c)に対して、図4(c)に示したSIDE−Bの磁石のみN極とS極が逆になる配置、すなわち磁石の磁極もピッチPの1/2だけずらすように配置されているということである。これにより、図3に示されるようなリニアモータの構成において、可動子51a,51bには図1と同じ磁気吸引力が発生し、同じ推力が発生する。
【0041】
以上のように、図3に示されるようなリニアモータの構成においても、リニアモータの性能に変わりはなく、一体化固定子52cの幅や、一体化固定子52c内に生成される磁束111,112も図1と同じであるため、本発明と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、突極50a,50ca,50cbは同じ位置で、突極50bだけピッチPの1/2ずらすといった構成や、突極50b,50ca,50cbは同じ位置で、突極50aだけピッチPの1/2ずらすといった構成でも同様である。以上のように、各固定子52の突極50の位置が可動子51の移動方向にずれている構成についても、本発明と同様の効果を得ることができるため本発明に包括される。
【0043】
上述した全ての実施形態においては、可動子51の構造が図1および図3に示されるような場合のリニアモータについて説明したが、これに限定されない。可動子51の構造が図1および図3と異なるタイプのリニアモータであっても、固定子52の形状が同様であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
50,50a,50b,50ca,50cb 突極、51,51a,51b 可動子、52,52a,52b,52c 固定子、53,54,55,121,122,123 可動子ブロック、56,57,58,93,94,95 3相交流巻線、59,64 永久磁石、62,111,112 磁束。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する面に所定間隔で配列される突極を有し、並行して延びる二つの固定子と、
三相交流巻線によりそれぞれ三相の磁極となる3種の可動子ブロックと、前記可動子ブロックの、前記二つの固定子にそれぞれ対向する二面に、極性を交互にして配列された永久磁石とを有し、前記二つの固定子の間を、固定子の延びる方向に沿って移動可能な可動子と、
を有するリニアモータであって、
複数のリニアモータが可動子の移動方向に対して並列に配置され、
複数の可動子は互いにモータ電気角で360/(2×可動子組数)度の位置関係にあり、
隣り合う可動子の間に設けられた二つの固定子は、それらの可動子に対向する二面にそれぞれ前記突極を有するように一体化されている、
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアモータであって、
前記一体化された固定子における、可動子の移動方向に対して垂直な方向の幅が、最外側固定子の幅を2倍した数値より小さい、
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項1】
互いに対向する面に所定間隔で配列される突極を有し、並行して延びる二つの固定子と、
三相交流巻線によりそれぞれ三相の磁極となる3種の可動子ブロックと、前記可動子ブロックの、前記二つの固定子にそれぞれ対向する二面に、極性を交互にして配列された永久磁石とを有し、前記二つの固定子の間を、固定子の延びる方向に沿って移動可能な可動子と、
を有するリニアモータであって、
複数のリニアモータが可動子の移動方向に対して並列に配置され、
複数の可動子は互いにモータ電気角で360/(2×可動子組数)度の位置関係にあり、
隣り合う可動子の間に設けられた二つの固定子は、それらの可動子に対向する二面にそれぞれ前記突極を有するように一体化されている、
ことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアモータであって、
前記一体化された固定子における、可動子の移動方向に対して垂直な方向の幅が、最外側固定子の幅を2倍した数値より小さい、
ことを特徴とするリニアモータ。
【図1】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−44811(P2012−44811A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185422(P2010−185422)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】
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