説明

リハビリ用具

【課題】
持ち運びが容易で、操作性に優れた、嚥下障害の回復訓練用のリハビリ用具を提供する。
【解決手段】
本体部1と、口腔内に挿入される挿入部2とを備え、挿入部2は、本体部1から突き出すようにして本体部1に取り付けられ、内部が両端で開口している管部材13〜15と、その内部が管部材13〜15の内部と連通した状態で、管部材13〜15の突き出し方向側の端部に取り付けられたバルーン8とを備え、本体部1は、使用者が本体部1を把持できるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摂食・嚥下機能、特には舌機能の回復訓練に用いられるリハビリ用具に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中によって脳に障害を受けた人や、老人性痴呆症の高齢者においては、摂食・嚥下機能が低下していることがある。このような摂食・嚥下障害を持った患者に対する摂食・嚥下機能の回復訓練としては、実際に食物を食べさせる直接的訓練と、食べ物を与えないで行う間接的訓練とがある。
【0003】
このうち、後者の間接的訓練は、誤嚥による食物の気管への侵入を心配しなくても良く、この点で、前者の直接的訓練よりも安全性が高いと考えられる。具体的な間接的訓練としては、軟口蓋、舌根部、及び咽頭後壁等の嚥下誘発部位に、物理的な刺激を与えることによって、嚥下を誘発させる訓練が知られている。また、嚥下誘発部位への刺激を行うための専用の器具も開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、摂食・嚥下機能には舌の動きが深く関与しており、舌を口蓋に押し付けるときの圧力(舌圧)が、ある程度以上でないと、食塊の形成及び咽頭への送り込みは困難となる。このため、従来から舌圧測定装置を用いて舌圧の測定が行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
更に、舌圧の向上が摂食・嚥下機能の回復に繋がるため、舌圧測定装置を利用して、患者に、舌を口蓋に向けて押し付ける動作を繰り返し行わせて、舌の筋力を向上させる間接的訓練も提案されている(例えば、非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−287712号公報
【特許文献2】US5119831
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ジョアン・ロビンス(Joanne Robbins)、他5名「ザ・エフェクト・オブ・リンガル・エクササイズ・オン・スワローイング・イン・オルダー・アダルト(The Effects of Lingual Exercise on Swallowing in Older Adults)」JAGS(J. Am. Geriatr. Soc.)、米国老人病協会(American Geriatrics Society)、2005年9月、第53巻、第9号、p.1483−1489
【非特許文献2】歌野原有里、他8名、「ディスポーザブルプローブを用いて舌運動リハビリテーションを行った口腔癌症例(第33回 学術大会)」、日本顎口腔機能学会、日本顎口腔機能学会雑誌、2005年、第11巻、第2号、P158−159
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、嚥下誘発箇所を刺激する訓練では、嚥下誘発箇所が口腔の奥に有るため、医療知識の無い介護者や、運動機能の低下している患者自身が、嚥下誘発部位の正確な場所を特定することは困難である。よって、例え、専用の器具を利用したとしても、医療従事者以外の者が、嚥下誘発部位を正確に刺激して訓練を実行することは極めて困難である。
【0009】
一方、舌の筋力向上を目的とした訓練では、舌圧測定装置のセンサ部分を舌と口蓋との間に挟みこむだけで良く、上記のような問題は発生しないと考えられる。しかしながら、舌圧測定装置は、本来、リハビリを目的として設計されておらず、又、医療従事者によって操作されることを前提とした装置である。このため、特に、患者が自分で訓練を行う場合に、使い勝手が悪いという問題がある。
【0010】
更に、舌の筋力向上を目的とした訓練は、いつでも、どこででも行うのが好ましいが、舌圧測定装置は持ち運びを考慮したものではない。このため、どこにでも持ち運ぶことができる専用の器具の開発が求められている。
【0011】
本発明の目的は、上記問題を解消し、持ち運びが容易で、操作性に優れた、嚥下機能(特に舌機能)の回復訓練に用いられるリハビリ用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明におけるリハビリ用具は、本体部と、口腔内に挿入される挿入部とを備え、前記挿入部は、前記本体部から突き出すようにして前記本体部に取り付けられ、内部が両端で開口している管部材と、その内部が前記管部材の内部と連通した状態で、前記管部材の突き出し方向側の端部に取り付けられたバルーンとを備え、前記本体部は、使用者が前記本体部を把持できるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明のリハビリ用具においては、患者の口腔内に挿入する挿入部の角度が可変するようになっている。よって、本発明のリハビリ用具によれば、運動機能の低下している患者自身であっても、挿入部の先端の弾性部材を舌と口蓋との間に簡単に導くことができ、本発明のリハビリ用具は操作性に優れている。また、本発明のリハビリ用具は、簡単な構成で、持ち運びが容易であるため、いつでも、どこでも、介護者及び患者自身は回復訓練を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1におけるリハビリ用具の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すリハビリ用具を用いた回復訓練の様子を示す図である。
【図3】図3は、図1に示すリハビリ用具を構成する挿入部を示す分解図である。
【図4】図4は、図3に示す挿入部に設けられたポートを拡大して示す断面図である。
【図5】図5は、図4に示すポートを構成する隔壁を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1におけるリハビリ用具をプローブとして用いた舌圧測定装置の概略構成を示す構成図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2におけるリハビリ用具の使用時の状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2におけるリハビリ用具の収容時の状態を示す斜視図である。
【図9】図9は、リハビリ用具を構成する可変機構の他の例を示す分解斜視図である。
【図10】図10は、図9に示した可変機構を拡大して示す断面図である。
【図11】図11は、図9及び図10に示した可変機構に含まれる位置決め構造を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明におけるリハビリ用具は、本体部と、口腔内に挿入される挿入部とを備え、前記挿入部は、前記本体部から突き出すようにして前記本体部に取り付けられ、且つ、突き出し方向側の端部に、弾性部材を備え、前記本体部は、使用者が前記本体部を把持できるように形成され、且つ、前記挿入部の取り付け角度を可変させる可変機構を備えていることを特徴とする。
【0016】
また、上記本発明におけるリハビリ用具においては、前記挿入部が、前記本体部から突き出す管部材と、前記弾性部材として機能するバルーンとを備え、前記バルーンは、その内部が前記管部材の内部と連通した状態で、前記管部材の一端に取り付けられている態様であっても良い。
【0017】
上記態様においては、前記挿入部が、別の管部材を接続するためのポートを更に備え、前記ポートは、弾性材料によって形成された隔壁を備え、前記隔壁は、前記管部材の他端の開口を塞ぐように配置され、且つ、前記別の管部材を挿入可能な切り込みを備えているのが好ましい。この場合は、ポートを介して、バルーンの加圧や減圧を行ったり、舌圧の測定を行ったりすることができる。
【0018】
また、上記本発明におけるリハビリ用具においては、前記管部材が、複数本の管を接合して形成されているのが良い。この場合は、使用済みの弾性部材の交換を簡単に行うことができる。
【0019】
上記本発明におけるリハビリ用具は、前記本体部が、U字型のフレーム部材を備え、前記可変機構が、前記フレーム部材の対向する二つの部分によって回転可能な状態で保持された軸部材を備え、前記挿入部が、前記軸部材に固定され、前記挿入部の取り付け角度は、前記軸部材の回転によって可変する態様であっても良い。
【0020】
上記態様においては、前記フレーム部材は、前記軸部材から前記フレーム部材における前記軸部材に対向する部分までの長さが、前記軸部材から前記挿入部の先端までの長さよりも長くなるように形成できる。この場合、挿入部をフレーム部材内に収容できるため、使用していない場合のリハビリ用具の保管スペースを小さくできる。
【0021】
また、上記態様においては、前記軸部材の一方または両方の端部が筒状に形成され、前記筒状に形成された端部の側壁の一部は、前記軸部材の軸方向に垂直な方向に弾性変形可能に形成され、前記弾性変形可能に形成された前記側壁の一部には、前記軸部材の外側に向かって突き出す凸部が設けられ、前記可変機構が、前記凸部が設けられた前記端部を覆うキャップ部材を更に備え、前記キャップ部材は、前記フレーム部材に固定され、且つ、前記凸部が設けられた前記端部に対向する面に複数の凹部を備え、前記複数の凹部は、前記凸部が設けられた前記端部の外周に沿って配列され、且つ、それぞれが前記凸部に噛合うように形成されているのが好ましい。この場合は、使用者にクリック感が与えられるため、操作性の向上が図られる。
【0022】
更に、上記場合においては、前記軸部材の一方の端部の側壁にのみ、前記凸部が設けられ、前記軸部材の他方の端部には、弾性材料で形成された弾性部材が取り付けられ、前記可変機構が、前記他方の端部を覆う第2のキャップ部材を更に備え、前記第2のキャップ部材は、前記フレーム部材に固定され、且つ、前記弾性部材を弾性変形させた状態で前記軸部材の他方の端部を保持するのが好ましい。これにより、回転後の軸部材の位置が、確実に保持されることとなる。
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1におけるリハビリ用具について、図1〜図5を参照しながら説明する。先ず、リハビリ用具の全体構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるリハビリ用具の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示すリハビリ用具を用いた回復訓練の様子を示す図である。
【0024】
図1に示すように、リハビリ用具は、本体部1と、口腔内に挿入される挿入部2とを備えている。挿入部2は、本体部1から突き出すようにして、それに取り付けられている。また、挿入部2の突き出し方向側の端部には、弾性部材8が備えられている。本体部1は、使用者が本体部を把持できるように形成され、そして、挿入部2の取り付け角度を可変させる可変機構5を備えている。
【0025】
本実施の形態1では、弾性部材8はバルーンである。また、本実施の形態1では、本体部1は、可変機構5に加え、U字型のフレーム部材3と、棒状の把持部4とを備えている。把持部4は、フレーム部材3のU字の中央の部分に、U字の端部の向きと把持部4の先端の向きが正反対となるようにして固定されている。また、把持部4には、滑り止めのために、縦方向に沿って複数条の溝が形成されている。
【0026】
また、本実施の形態1では、可変機構5は軸部材6を備えている。軸部材6は、フレーム部材3の対向する二つの部分3aと3bとによって、回転可能な状態で保持されている。具体的には、軸部材6は、フレーム部材3の部分3aと部分3bとの間に挟み込まれた状態で、フレーム部材3と共に、両端をビス7によってねじ止めされている。なお、ビス7の締め付けは、軸部材6が人の手の力によって回転でき、且つ、軸部材6の回転後の位置が保持されるように行われている。
【0027】
更に、本実施の形態1では、挿入部2は軸部材6に取り付けられている。よって、軸部材6の回転により、挿入部2の取り付け角度は可変することとなる。具体的には、挿入部6の軸部材6への取り付けは、軸部材6の軸方向に垂直に設けられた貫通孔6a(後述の図3参照。)に挿入部2を挿入することによって行われている。
【0028】
このように、本実施の形態1におけるリハビリ用具では、口腔内に挿入される挿入部2の取り付け角度が可変可能となっている。よって、図2に示すように、患者10は無理な姿勢をとることなく、簡単に、挿入部2の先端の弾性部材8を舌11と口蓋12との間に簡単に導くことができる。本実施の形態1におけるリハビリ用具は、操作性に優れている。
【0029】
また、このため、本実施の形態1におけるリハビリ用具は、回復訓練の補助を行う介護者にとっても操作性に優れている。更に、本実施の形態1におけるリハビリ用具は、簡単な構成により、持ち運びが容易であるため、患者10及びその介護者は、いつでもどこでも回復訓練を実施することができる。
【0030】
ここで、リハビリ用具を構成する挿入部について図3〜図5を用いて具体的に説明する。図3は、図1に示すリハビリ用具を構成する挿入部を示す分解図である。図4は、図3に示す挿入部に設けられたポートを拡大して示す断面図である。図5は、図4に示すポートを構成する隔壁を示す斜視図である。
【0031】
図3に示すように、本実施の形態1では、挿入部2は、第1の管部材13と、第2の管部材14と、第3の管部材15とを備えている。第1の管部材13、第2の管部材14、及び第3の管部材15は、互いに接合され、本体部1から突き出す一つの管部材となる。また、上述したように弾性部材8はバルーンで構成されている。更に、バルーンの空気供給口には第1の管部材13の一端が挿入され、バルーンの内部は、これら管部材の内部と連通した状態にある。
【0032】
また、第2の管部材14と第3の管部材15との接合は、第2の管部材14を第3の管部材15の内部に挿入し、両者をきつく嵌合させることによって行われている。なお、両者は接着材によって接着されていいても良いし、一体的に形成されていても良い。一方、第1の管部材13と第2の管部材14との接合は、取り外しが容易なルアーロックによって行われている。
【0033】
具体的には、第1の管部材13は、筒状のロックナット16を備えている。第1の管部材13とロックナット16とは、第1の管部材13をロックナット16に挿入した状態で固定されている。ロックナット16の内面には、螺旋状の溝16aが形成され、第2の管部材14の先端には、溝16aに嵌合する凸部17が形成されている。
【0034】
また、第1の管部材13は、第2の管部材14の内部に挿入可能に形成されている。更に、第1の管部材13の挿入される部分は、先細り形状のオスルアーテーパ(ISO594−1及び2参照)となっている。第2の管部材14の内部は、第1の管部材13のオスルアーテーパに対応するメスルアーテーパ(ISO594−1及び2参照)となっている。
【0035】
よって、第1の管部材13を第2の管部材14の内部に挿入し、溝16aの入り口と凸部17との位置を合わせ、ロックナット16を時計方向に回転させると、凸部17が溝16aの奥へと進むと共に、第1の管部材13と第2の管部材14とは密着する。
【0036】
このように、本実施の形態1において、第1の管部材13と第2の管部材14との接合をルアーロックによって行っているのは、挿入部2を分割可能な構成として、使用済みの弾性部材8の取替えを容易なものとするためである。また、第1の管部材13と第2の管部材14との接合は、図3に示すように、第2の管部材14と第3の管部材15との接合体を軸部材6の貫通孔6aに挿入した後に行われる。なお、第1の管部材13と第2の管部材14との接合は、ロックナット16を用いない、単なるルアー接合であっても良い。
【0037】
また、図3及び図4に示すように、本実施の形態1においては、挿入部2は、別の管部材23を接続するためのポートを更に備えている。具体的には、ポートは、弾性材料によって形成された隔壁20と、キャップ22とを備えている。隔壁20は、第3の管部材15の一方の開口18を塞ぐように配置されており、キャップ22によって固定されている。また、図3〜図5に示すように隔壁20の中心には、別の管部材23を挿入可能な切り込み21が設けられている。
【0038】
よって、図4に示すように、管部材23を切り込み21から挿入でき、挿入部2と管部材23とはポートを介して接続される。また、このとき、隔壁20の切り込み21周辺は弾性変形して管部材23に密着するため、気体の漏洩は抑制される。
【0039】
このような構成により、管部材23を介して、弾性部材(バルーン)8内部に気体を送りこんだり、内部の気体を吸い出したりできる。つまり、弾性部材8内部の圧力を加圧したり、減圧したりできるため、患者の状況に合わせて、弾性部材8の硬さや大きさを調整することができる。また、管部材23を介した気体の送り込みや吸い出しは、人の口や、注射器、加圧・減圧ポンプ等によって行うことができるため、弾性部材8の硬さや大きさの調整も、いつでもどこでも行うことができる。
【0040】
また、このようなポートが設けられているため、本実施の形態1におけるリハビリ用具は、舌圧測定装置のプローブとして用いることもできる。この点について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態1におけるリハビリ用具をプローブとして用いた舌圧測定装置の概略構成を示す構成図である。
【0041】
図6に示すように、本実施の形態1におけるリハビリ用具18は、管部材23によって、舌圧測定装置25に接続されている。管部材23の一端は、図4に示したように隔壁20の切り込み21から挿入部2の内部に挿入されている。管部材23の他端は、舌圧測定装置25に備えられた三方弁29の一のポートに接続されている。
【0042】
また、図6に示すように、舌圧測定装置25は、加圧部26と、圧力検知部27と、制御部28とを備えている。加圧部26及び圧力検知部27は、それぞれ管部材30又は31によって、三方弁29の別々のポートに接続されている。また、三方弁29における流路の切り換えは、制御部28によって行われる。三方弁29は、制御部28の指示に応じて、管部材23と管部材31との間、または管部材23と管部材30との間を接続する。
【0043】
圧力検知部27は、管部材23及び31を介して伝達された圧力を電気信号に変換し、得られた電気信号を制御部28に出力する。制御部28は、圧力検知部27が電気信号を出力すると、電気信号の出力値を特定し、特定した出力値から実際の圧力を求める。また、制御部28は、求めた圧力を表示ディスプレイ32の表示画面に表示させる。このように、本実施の形態1におけるリハビリ用具は、舌圧測定装置のプローブとしても利用できる。
【0044】
また、加圧部26は、ポンプやシリンジ等の加圧機構を備えており、制御部28の指示に応じて、弾性部材(バルーン)8の内圧が設定圧力となるように加圧する。制御部28は、弾性部材8の内圧設定値が使用者から入力されると、弁の流路を切り換え、内圧が設定値となるように加圧部26を稼動させる。更に、このとき、制御部28は、入力された設定値も表示ディスプレイ32の表示画面に表示させる。
【0045】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2におけるリハビリ用具について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、本発明の実施の形態2におけるリハビリ用具の使用時の状態を示す斜視図である。図8は、本発明の実施の形態2におけるリハビリ用具の収容時の状態を示す斜視図である。
【0046】
図7及び図8に示すように、本実施の形態2におけるリハビリ用具は、実施の形態1におけるリハビリ用具と同様に、図1〜図5に示された挿入部2を備えている。また、本実施の形態2においても、挿入部2は、軸部材6に取り付けられている。
【0047】
但し、本実施の形態2は、本体部1の構成の点で、実施の形態1と異なっている。本実施の形態2においては、図7及び図8に示すように、本体部1の構成は、U字型のフレーム部材33が把持部を兼ねた構成となっている。
【0048】
また、図8に示すように、フレーム部材33は、軸部材6からフレーム部材33における軸部材6に対向する部分までの長さL1が、軸部材6から挿入部2の先端までの長さL2よりも長くなるように形成されている。
【0049】
よって、本実施の形態2によれば、フレーム部材の対向する二つの部分33aと33bとの間に挿入部2を収納できるため、使用していない時のリハビリ用具のコンパクト化を図ることができる。また、本実施の形態2では、実施の形態1に比べて本体部1の構成がシンプルになるため、製造コストの低減化を図ることもできる。
【0050】
上述した実施の形態1及び2においては、弾性部材8としてバルーンが用いられているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明においては、弾性部材8は、ゴム材料や軟質プラスチック等の塊で形成されたものであっても良い。但し、この場合は、本発明のリハビリ用具が嚥下障害の回復訓練に用いられることから、弾性部材8としては、厚みが40mm以下、特には10mm〜20mmのものを用いるのが好ましい。
【0051】
また、弾性部材8の具体的な構成材料としては、例えば、弾性部材がバルーンである場合においては、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム等ゴム材料が挙げられる。弾性部材が塊である場合においては、上記のゴム材料に加え、更に、例えば、ポリスチレン系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、軟質ポリ塩化ビニル等も挙げられる。
【0052】
また、上述した実施の形態1及び2において、可変機構5は、軸部材6をビス7によってフレーム部材3に取り付けることによって構成されているが、本発明はこの例に限定されるものではない。ここで、図9〜図11を用いて可変機構の他の例について説明する。
【0053】
図9は、リハビリ用具を構成する可変機構の他の例を示す分解斜視図である。図10は、図9に示した可変機構を拡大して示す断面図である。図11は、図9及び図10に示した可変機構に含まれる位置決め構造を拡大して示す断面図である。なお、図11においては、断面に現れた線のみを図示しており、断面に現れない線については省略している。
【0054】
図9及び図10に示すように、本例においても、軸部材35は、実施の形態1及び2に示した軸部材6と同様に、挿入部(図1〜図5参照)を取り付けるための貫通孔35aを備えている。但し、本例では、軸部材35の両方の端部35b及び35cは、筒状に形成されている。このうち、端部35bには、弾性材料で形成された弾性部材36が取り付けられている。具体的には、弾性部材36は、Oリングであり、端部35bにはめ込まれている。
【0055】
また、端部35cにおいては、その一部は、軸部材35の軸方向に垂直な方向に弾性変形可能に形成されている。具体的には、端部35cには、軸方向に沿った二つのスリット41が形成され、これらに挟まれた部分39は、軸部材6の軸方向に垂直な方向(半径方向)に撓む片持ち梁となっている。また、部分39には、軸部材6の外側に向かって突き出す凸部40が設けられている。
【0056】
また、図9及び図10に示すように、本例では、軸部材35は、端部35bを覆うキャップ部材37と、端部35cを覆うキャップ部材38とで、保持され、これらによってフレーム部材34に取り付けられる。更に、フレーム部材34は、実施の形態2において図7及び図8に示したフレーム部材33と同様の外形を備えているが、軸部材35の取り付けを容易にするため、対向する部分34a及び34bが分割可能な構成となっている。34cは、部分34aを構成する分割パーツであり、34dは、部分34bを構成する分割パーツである。
【0057】
具体的には、部分34aの本体側のパーツと、部分34aの分割パーツ34cとには、キャップ部材37の外形に適合する半円形の切り欠き42、及び軸部材35の断面形状に適合する半円形の切り欠き43が設けられている。更に、キャップ部材37の側面には、突起37aと37bとが対向する位置に形成され、これに対応して、突起37a又は37bと嵌合する切り欠き44も形成されている。
【0058】
同様に、部分34bの本体側のパーツと、部分34bの分割パーツ34dとには、キャップ部材38の外形に適合する半円形の切り欠き45、及び軸部材35の断面形状に適合する半円形の切り欠き46が設けられている。更に、キャップ部材38の側面にも、突起38a及び38bが対向する位置に形成され、これに対応して、突起38a又は38bと嵌合する切り欠き47も形成されている。
【0059】
よって、先ず、軸部材35にキャップ部材37及び38を差込み、そして、キャップ部材37の突起37aと部分34aの本体側のパーツの切り欠き44との位置合わせ、及びキャップ部材38の突起38aと本体側のパーツの切り欠き47との位置合わせを行う。次に、分割パーツ34c及び34dを本体側のパーツに取り付ければ、キャップ部材37及び38がフレーム部材34に固定される。軸部材35は回転可能な状態でフレーム部材34に取り付けられた状態となる。
【0060】
また、このとき、図10に示すように、キャップ部材37によって、軸部材35の端部35bに取り付けられた弾性部材(Oリング)36は、弾性変形し、キャップ部材37の内面と端部35bとを押圧する。このため、軸部材35の回転後の位置は保持されることとなる。
【0061】
更に、図9及び図11に示すように、キャップ部材38は、凸部40が設けられた端部35cに対向する面に複数の凹部38cを備えている。複数の凹部38cは、端部35cの外周に沿って、これを囲むように配列されている。具体的には、凹部38cは、軸部材35の軸方向に沿って形成された溝である。また、各凹部38cは、凸部40に噛合うように形成されている。
【0062】
このため、使用者が挿入部の角度を可変させると、即ち、軸部材35が回転すると、一定の角度毎(図11の例では、22.5°毎)に、凸40と凹部38cとが噛合い、位置決めが行われる。このように、本例においては、可変機構に位置決め構造が備えられている。使用者には、一定の角度毎にクリック感が与えられるため、一層の操作性の向上が図られる。
【0063】
なお、図9〜図11の例では、軸部材35の一方の端部に、弾性部材36が取り付けられ、軸部材35の他方の端部に、位置決め構造が備えられているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、軸部材35の両方の端部に弾性部材36が取り付けられた態様や、軸部材35の両方の端部に位置決め構造が備えられた態様であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明のリハビリ用具は、嚥下障害を持った患者の回復訓練に用いることができ、更に、持ち運びや操作性の点で優れている。本発明のリハビリ用具は産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0065】
1 本体部
2 挿入部
3 フレーム部材
3a、3b フレーム部材の対向する部分
4 把持部
5 可変機構
6 軸部材
6a 貫通孔
7 ビス
8 弾性部材(バルーン)
10 患者
11 舌
12 口蓋
13 第1の管部材
14 第2の管部材
15 第3の管部材
16 ロックナット
16a 溝
17 凸部
18 第3の管部材の一方の開口
20 隔壁
21 切り込み
22 キャップ
23、30、31 管部材
25 舌圧測定装置
26 加圧部
27 圧力検知部
28 制御部
29 三方弁
32 表示ディスプレイ
33 フレーム部材
33a、33b フレーム部材の対向する部分
34 フレーム部材
34a、34b フレーム部材の対向する部分
34c、34d フレーム部材の分割パーツ
35 軸部材
35a 貫通孔
35b、35c 軸部材の端部
36 弾性部材(Oリング)
37、38 キャップ部材
37a、37b、38a、38b 突起
38c キャップ部材の内面に設けられた凹部
39 二つのスリットで挟まれた部分
40 凸部
41 スリット
42、43、44、45、46、47 半円形の切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、口腔内に挿入される挿入部とを備え、
前記挿入部は、前記本体部から突き出すようにして前記本体部に取り付けられ、内部が両端で開口している管部材と、その内部が前記管部材の内部と連通した状態で、前記管部材の突き出し方向側の端部に取り付けられたバルーンとを備え、
前記本体部は、使用者が前記本体部を把持できるように形成されていることを特徴とするリハビリ用具。
【請求項2】
前記本体部は、前記挿入部の取り付け角度を可変させる可変機構を備えた請求項1記載のリハビリ用具。
【請求項3】
前記管部材が、複数本の管を接合して形成されている請求項1または2に記載のリハビリ用具。
【請求項4】
前記本体部が、U字型のフレーム部材を備え、
前記可変機構が、前記フレーム部材の対向する二つの部分によって回転可能な状態で保持された軸部材を備え、
前記挿入部が、前記軸部材に固定され、前記挿入部の取り付け角度は、前記軸部材の回転によって可変する請求項1または2に記載のリハビリ用具。
【請求項5】
前記フレーム部材は、前記軸部材から前記フレーム部材における前記軸部材に対向する部分までの長さが、前記軸部材から前記挿入部の先端までの長さよりも長くなるように形成されている請求項4に記載のリハビリ用具。
【請求項6】
前記軸部材の一方または両方の端部が筒状に形成され、
前記筒状に形成された端部の側壁の一部は、前記軸部材の軸方向に垂直な方向に弾性変形可能に形成され、
前記弾性変形可能に形成された前記側壁の一部には、前記軸部材の外側に向かって突き出す凸部が設けられ、
前記可変機構が、前記凸部が設けられた前記端部を覆うキャップ部材を更に備え、
前記キャップ部材は、前記フレーム部材に固定され、且つ、前記凸部が設けられた前記端部に対向する面に複数の凹部を備え、
前記複数の凹部は、前記凸部が設けられた前記端部の外周に沿って配列され、且つ、それぞれが前記凸部に噛合うように形成されている請求項4に記載のリハビリ用具。
【請求項7】
前記軸部材の一方の端部の側壁にのみ、前記凸部が設けられ、
前記軸部材の他方の端部には、弾性材料で形成された弾性部材が取り付けられ、
前記可変機構が、前記他方の端部を覆う第2のキャップ部材を更に備え、
前記第2のキャップ部材は、前記フレーム部材に固定され、且つ、前記弾性部材を弾性変形させた状態で前記軸部材の他方の端部を保持する請求項6に記載のリハビリ用具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−172996(P2011−172996A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122280(P2011−122280)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【分割の表示】特願2006−294446(P2006−294446)の分割
【原出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】