説明

リハビリ用足裏刺激板及び当該リハビリ用足裏刺激板を備えたリハビリテーション装置

【課題】脳卒中や交通事故等の後遺症により歩行が困難となった患者に対し、認知運動療法を適用し、在宅や介護施設等でも使用できるリハビリ用足裏刺激板及びリハビリテーション装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のリハビリ用足裏刺激板は、患者の足裏を載置するための基板と、当該基板上の前記患者の足裏を載置した場合における少なくとも小趾、母趾、及び踵の3箇所に相当する位置に、足裏を刺激する刺激体と、を備えることを特徴とする。また、本発明のリハビリテーション装置は、患者の足裏に刺激を与えるリハビリ用足裏刺激板と、設定された刺激条件を前記足裏刺激板に指示する指示部と、前記足裏刺激板による刺激に対して、前記患者からの回答を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記回答の正否を判定する判定部と、前記判定部における判定結果を患者に連絡する連絡部と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリ用足裏刺激板及び当該リハビリ用足裏刺激板を備えたリハビリテーション装置に関する。さらに詳しくは、脳卒中や交通事故等で歩行が困難となった患者に対し、歩行に必要だと考えられている足裏の適切な感覚入力を促し、認知過程を活性化させ、歩行能力の向上を図ることができるリハビリ用足裏刺激板及び当該リハビリ用足裏刺激板を備えたリハビリテーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は、脳内の血管が詰まったり破れたりすることにより、当該血管の先の細胞に栄養が届かなくなって、細胞が死んでしまう病気である。かかる脳卒中は、病巣部位によって様々な症状を呈するが、その多くは、後遺症として右または左の片麻痺を呈し、その影響により、人体に運動障害などを引き起こすことになる。脳卒中による麻痺は、移動能力を制限し、人の歩行に必要な足裏の感覚情報の入力を遮断することになり、脳卒中の後遺症により下肢に麻痺が生じた場合にあっては、軽い麻痺では歩行が可能な患者もいるが、その歩行は、正常歩行とは異なって分廻し様の歩行になったり、足裏の接地が不十分なことが多い。
【0003】
このような患者に対するリハビリテーションでは、平行棒の中で繰り返し起立訓練を積極的に行うことにより、麻痺側下肢への荷重を促す方法や、支持性が低下した部位に対して装具を使用して固定するような方法が取られてきた。また、近年、いわゆるバイオフィードバック療法として、足裏圧の情報をモニター上に視覚的に呈示することで歩行の訓練を行う装置が提供されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
しかし、このような装置では、患者は足裏の感覚を認識するというよりも、視覚的に現在の自分の状態を呈示することしかできないため、認知的な脳内の処理過程を辿ることは少なかった。加えて、このような装置は、装置自体が大掛かりでかつ高額であることから、患者の自宅などで使用することは困難であるという問題もあった。
【0005】
患者に対するリハビリテーションとしては、近年、歩行補助装置等の導入も実施されている。代表的なものとしては、スリングで患者の体を固定し、立つことのできない患者をトレッドミル等で機械的に立たせて、歩行動作を自動かつ強制的に行わせる装置が提供されている(例えば、特許文献2を参照。)。しかし、このような歩行補助装置は、患者の意図で行われるものではないため、患者自身の認知的な側面へは反映されていない可能性が高く、また、歩行補助装置の設置面の問題などから、在宅で使用することはできないという問題もあった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−141275号公報
【特許文献2】特開2005−34481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、脳卒中や交通事故等が原因で運動麻痺を有する患者に対して認知課題を与える認知運動療法が注目されつつある。この認知運動療法における訓練では、リハビリテーション担当者によって、各身体に対し道具を使用して認知課題が与えられる。これらは位置、硬度、大きさなどを患者に回答させるものであり、患者はそれらの課題を通して脳内で認知過程を辿り回答することを要求される。この訓練は、患者とリハビリテーション担当者とのマンツーマンで訓練が行われる。よって、重度の麻痺を呈し、立位動作が困難な患者において、臥位や座位姿勢で訓練を受けることが可能である。
【0008】
また、認知運動療法にあっては、歩行時にバランスを大きく崩すような患者や、麻痺側の無視症状が大きく出現している患者に対し、認知課題を行うことでバランスの向上や歩行状態の改善の効果が得られる。加えて、患者は認知課題を通して、脳内での認知過程を活性化することとなり、運動の発現の基盤となる脳内処理過程が賦活することが考えられる。また、これらより、患者の実際の動作の改善へと結びついていると考えられる。
【0009】
一方、現在の医療制度の中での早期自宅退院の問題や、患者とのマンツーマンでの十分なリハビリテーションの提供が困難な状況を考えると、これらの訓練を積極的に提供できる施設は限られていることが考えられる。また、前記した歩行訓練装置の使用等は、スリングなどで体幹を固定して、重力を排除した状態で繰り返し歩行様の動作が機械的に行われ、歩行の際に必要となる、足裏の感覚情報の適切な処理を促すことは極めて困難であると考えられるため、歩行訓練が困難な状態である患者にあっても、足裏の訓練が可能となる手段の提供が望まれていた。
【0010】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、脳卒中や交通事故等の後遺症により歩行が困難となった患者に対し、認知運動療法を適用し、在宅や介護施設等でも使用できるリハビリ用足裏刺激板及びリハビリテーション装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明のリハビリ用足裏刺激板は、身体の一部が麻痺した患者をリハビリするためのリハビリ用足裏刺激板であって、患者の足裏を載置するための基板と、当該基板上の前記患者の足裏を載置した場合における少なくとも小趾、母趾、及び踵の3箇所に相当する位置に、足裏を刺激する刺激体と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のリハビリ用足裏刺激板は、足裏で最も重要である小趾、母趾、及び踵の3箇所に相当する位置に、足裏を刺激する刺激体を配設しているので、足裏の感覚情報の適切な入力が可能となり、足裏に対する認知リハビリテーション用具として使用することができる。
【0013】
本発明のリハビリ用足裏刺激板は、上記発明において、前記刺激体が、前記患者の足裏に対して押圧する及び/または振動を伝えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るリハビリ用足裏刺激板は、基板上に配設され、患者の足裏を刺激する刺激体が、患者の足裏に対して押圧する及び/または振動を伝えることとしているが、これらの刺激は、いずれも患者にとっても判断しやすいため、訓練を効率よく実施することができる。
【0015】
本発明に係るリハビリ用足裏刺激板は、請求項1または請求項2において、前記刺激体が、前記基板上の前記3箇所以外にも配設されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るリハビリ用足裏刺激板は、基板上に配設され、患者の足裏を刺激する刺激体が、基板上の3箇所(小趾、母趾、踵)以外にも配設されているので、小趾等の3箇所の周辺や、小趾等の3箇所以外の位置にも刺激を与えることができ、訓練のバリエーションが広がることになる。
【0017】
本発明のリハビリテーション装置は、身体の一部が麻痺した患者をリハビリするためのリハビリテーション装置であって、患者の足裏に刺激を与える前述のいずれかのリハビリ用足裏刺激板と、設定された刺激条件を前記足裏刺激板に指示する指示部と、前記足裏刺激板による刺激に対して、前記患者からの回答を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記回答の正否を判定する判定部と、前記判定部における判定結果を患者に連絡する連絡部と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明のリハビリテーション装置は、足裏における小趾、母趾、及び踵を刺激する、前記したいずれかのリハビリ用足裏刺激板を備え、かかる足裏刺激板から伝達される認知課題により、認知運動療法の方法に即して、患者を訓練する装置であるので、患者はかかる認知課題を通して、脳内での認知過程を活性化することができる。加えて、歩行が困難な状態である患者に対し、座位で訓練が行うことができ、単純な繰り返し動作による訓練ではなく、認知的な側面でのリハビリテーションを提供し、マンツーマンでの十分なリハビリテーションを行うことが困難な施設や在宅などでも、患者の家族などの操作により、容易にリハビリテーションを実施することができる。
【0019】
本発明に係るリハビリテーション装置は、上記発明において、前記刺激条件は、構成するパラメータが刺激を与える位置、刺激の程度、及び刺激を与える位置の移動を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るリハビリテーション装置は、刺激条件を構成するパラメータとして、刺激を与える位置、刺激の程度、及び刺激を与える位置の移動を含むようにしているが、これらのパラメータは、いずれも、足裏の訓練としては重要な要素であり、また、患者も課題を理解しやすく、訓練する側も判断がしやすいので、患者のリハビリを効率よく実施することができる。
【0021】
本発明に係るリハビリテーション装置は、上記発明において、さらに、前記患者への伝達事項を表示する表示部を備え、前記連絡部による判定結果の連絡が、当該判定結果を前記表示部に表示することにより実施されることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るリハビリテーション装置は、連絡部による判定結果の連絡が、判定結果を表示部に表示することにより実施されるので、患者自身が判定結果を明確に知ることができ、患者における自己の状態の認識度を高めることができる。
【0023】
本発明に係るリハビリテーション装置は、上記発明において、前記表示部が、前記回答の入力画面を表示できることを特徴とする。
【0024】
本発明に係るリハビリテーション装置は、表示部が、回答の入力画面を表示できるので、患者が回答すべき内容を明確に理解することができ、回答入力操作が効率よく実施される。
【発明の効果】
【0025】
本発明のリハビリ用足裏刺激板は、足裏を刺激する刺激体を配設しているので、足裏の感覚情報の適切な入力が可能となり、足裏に対する認知リハビリテーション用具として使用することができる。
【0026】
本発明のリハビリテーション装置は、足裏刺激板から伝達される認知課題により、認知運動療法を簡便な手段で実施して、患者を訓練する装置であるので、患者はかかる認知課題を通して、脳内での認知過程を活性化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明の一態様を説明する。図1は、本発明のリハビリテーション装置の概要を示した説明図である。図1に示すように、本発明のリハビリテーション装置にあっては、患者は設定された課題を、リハビリ用足裏刺激板を介して足裏に対して与えられる。また、患者は、与えられた課題に対して、認知過程を辿って回答を導き出す。そして、その回答を入力して後、判定結果を患者自らが知らされることにより、学習するという手順になっている。
【0028】
一般に、人間の歩行は足底接地がまず行われ、正常歩行の足底接地の過程では、踵から母趾、小趾への重心移動が行われる。そのため、脳卒中等で身体の一部が麻痺して、歩行が困難となった患者は、足裏(足底)からの情報が遮断されてしまうと、歩行訓練開始時にバランスを崩してしまうのが実情である。本発明のリハビリテーション装置は、かかる実情を踏まえ、足裏からの刺激を用いて患者に認知課題を与えることにより、バランスの向上や歩行状態の改善を図ることができる。
【0029】
図2は、本発明のリハビリテーション装置1の構成を示した概略図である。身体の一部が麻痺した患者をリハビリするためのリハビリテーション装置である本発明は、患者の足裏に刺激を与えるリハビリ用足裏刺激板2(以下、単に「足裏刺激板2」とすることもある。)と、設定された刺激条件を足裏刺激板2に指示する指示部11と、足裏刺激板2による刺激に対して、患者からの回答を受信する受信部12と、受信部12が受信した回答の正否を判定する判定部13と、判定部13における判定結果を患者に連絡する連絡部14と、を基本構成として備える。
【0030】
本発明のリハビリテーション装置1を構成する足裏刺激板2は、指示部11から送られた刺激条件の内容に従って、患者の足裏に対して刺激(認知課題)を与えるものである。
【0031】
図3は、足裏刺激板2の構成を示した正面図である。図3に示すように、足裏刺激板2は、基板21と、この基板21上に、患者の足裏3を載置した場合における小趾、母趾、及び踵の3箇所に相当する位置に足裏3を刺激する刺激体22を配設している。本実施形態にあっては、足裏刺激板2は、基板21に凹部24が形成され、刺激体22がかかる凹部24の内部に埋め込まれていることにより構成される。
【0032】
足裏刺激板2を構成する基板21は、患者の足裏3を載置するものであるから、足裏3を載置して患者の体重がかかっても破壊されず支えられる強度を有する材料で構成される必要があり、例えば、金属、合成樹脂、硬質木材等で構成されていることが好ましい。また、刺激体22は、本発明にあっては、足裏3で最も重要だと認識されている、小趾、母趾、及び踵の3箇所に相当する位置に載置されることになるが、例えば、刺激体22により足裏を押圧したり、振動を伝えたり、刺激体22から人体に悪影響を及ぼさない微弱な電流を流すことにより、患者の足裏3に対して刺激を与えることができる。刺激体22によるこれらの刺激は、いずれも患者にとっても判断しやすく、訓練を効率よく実施することができる。
【0033】
なお、刺激体22による足裏3の押圧、振動の伝達、及び微弱な電流を流すことは、それぞれの1種を単独で実施してもよく、または、これらの2種以上を組み合わせて実施してもよい。本実施形態にあっては、基板21の凹部24に埋め込まれている、先端に突起が形成された刺激体22が上昇することにより、患者の足裏3を押圧する態様を示している。図4は、図3のA−A断面図であるが、本実施形態にあっては、刺激体22が、指示部11からの指示により上昇して、患者の足裏3を押圧する。
【0034】
一方、刺激体22により足裏3に対して振動を伝えるには、例えば、刺激体22に図示しないモータを連接して、当該モータの回転運動を刺激体22の振動運動に変換して、刺激体から振動を発するようにすればよい。また、刺激体22から人体に悪影響を及ぼさない微弱な電流を流すには、金属等の導電体で構成された刺激体22に対して、適当な手段で微弱な電流を流すようにして、患者の足裏3に微弱な電流により刺激を与えるようにすればよい。
【0035】
なお、図3及び図4は、小趾、母趾、及び踵の3箇所に相当する位置に刺激体22を配設した態様を示したが、刺激体22は、基板におけるかかる3箇所以外の位置に配設してもよい。図5は、本発明のリハビリ用足裏刺激板2の構成の他の態様を示した正面図であり、刺激体22を小趾、母趾、及び踵以外の位置に配設した態様を示す図である。図5に示した足裏刺激板2を用いれば、小趾等の3箇所の周辺や、小趾等の3箇所以外の位置にも刺激を与えることができ、訓練のバリエーションが広がることになる。
【0036】
また、リハビリテーション装置1を構成する指示部11は、設定された刺激条件を足裏刺激板2に指示する。刺激条件を構成するパラメータ(刺激パラメータ)は、患者に対する認知課題となるものであり、本発明を実施するにあたっては、例えば、刺激を与える位置、刺激の程度、刺激を与える位置の移動等が挙げられる。これらのパラメータは、いずれも、足裏の訓練としては重要な要素であり、また、患者も課題を理解しやすく、訓練する側も判断がしやすいので、患者のリハビリを効率よく実施することができる。
【0037】
図6は、刺激パラメータの一例を示した説明図である。図6に示すように、刺激パラメータは、刺激を与える位置としては、前記した足裏刺激板2における刺激体22の位置にも対応して、「小趾」、「母趾」、「踵」の3基準のいずれかとなる。また、刺激の程度については、「大」、「中」、「小」の3基準のいずれかとなる。そして、刺激を与える位置の移動については、仮に当該移動があった場合には、「小趾→母趾」、「小趾→踵」、「母趾→小趾」、「母趾→踵」、「踵→小趾」、「踵→母趾」の6基準のいずれかとなる。
【0038】
本実施形態にあっては、刺激条件は、前記した3つの刺激パラメータを組み合わせてなるようにすればよく、例えば、「刺激を与える位置=踵」、「刺激の程度=中」、「刺激を与える位置の移動=移動なし」のように刺激条件の設定を行ってもよいが、パラメータに対する基準の設定は、患者の状態等を勘案して、適宜決定するようにすればよい。また、複数回(例えば、10回)の訓練を1つの課題として実施する場合にあっては、各回の条件をそれぞれ異なる内容としても問題はない。
【0039】
なお、本発明のリハビリテーション装置1を用いて、初めて訓練を行う患者については、患者が認知しやすい初期設定条件を用いるようにすることが好ましい。初期設定条件にあっては、前記した「刺激を与える位置」については、小趾、母趾、踵に刺激をランダムに加えるようにする一方、刺激の程度は、大、中、小のうち「中」の1基準を使用し、刺激を与える位置の移動は行わず、1点の圧力情報のみとする。精度を高めるために、母趾側、小趾側、踵の3箇所に刺激を与える位置をランダムに変化させ、同一課題を10回行うようにすればよく、以上の課題により、初期設定による患者の認知可能なレベルを検出する。ここから検出された情報を基にして患者にとって最適な刺激条件を設定し、実際の訓練へと入るようにする。
【0040】
また、他の初期設定条件としては、足裏3の最も認知しやすい位置から条件の難易度(患者のわかりにくさ)を徐々に上げていく方法をとる際に用いられ、具体的には、足裏3を刺激する位置を母趾・小趾側と踵付近の2箇所だけにする。その際、足裏刺激板2により、足裏3の母趾・小趾側と踵付近を中心に刺激を与えるようにする。これにより、ピンポイントでの刺激でなく、母趾・小趾側と踵付近といった広範囲での圧力を患者に認識させる方法をとることが可能となる。
【0041】
なお、指示部11は、足裏刺激板2に対して刺激条件を伝達し、足裏刺激板2は、かかる刺激条件に対応した認知課題を患者に伝えるのであるが、これらを効率よく実施するには、足裏刺激板2がマイクロコンピュータ等を備えた図示しない制御部を有し、指示部11からの刺激情報を受けて、足裏刺激板2を構成する刺激体22を刺激条件どおりに運転する指令を出す制御プログラムを有することが好ましい。
【0042】
本発明のリハビリテーション装置1を構成する受信部12は、患者に与えられる足裏刺激板2による刺激(認知課題)に対して、患者からの回答を受信し、判定部13に連絡する。受信部12は、例えば、図7に示すように、患者への伝達事項を表示する表示部15を介して入力画面151を表示して、患者に回答を入力させ、患者から入力された回答を受信するようにしてもよい。なお、かかる表示部15は、本実施形態にあっては、後記するように、患者に対して、連絡部14からの判定結果の連絡も表示するものである。
【0043】
図7は、回答の入力画面151の一例を示した概略図である。本実施形態にあっては、刺激パラメータとして、「刺激を与える位置」、「刺激の程度」、「刺激を与える位置の移動」という3基準のパラメータを採用しているので、図7に示すように、回答の入力画面151についてもそれに対応している。具体的には、「刺激を与える位置」については、入力画面151に表示された足型の「小趾」、「母趾」、「踵」のどの位置に圧力が加わったかを選択してもらう。また、「刺激の程度」については、入力画面151に表示された「大」、「中」、「小」の3基準の刺激の程度のうちのどれかを選択してもらう。そして、「刺激を与える位置の移動」については、仮に当該移動があった場合には、入力画面151に表示された、「小趾→母趾」、「小趾→踵」、「母趾→小趾」、「母趾→踵」、「踵→小趾」、「踵→母趾」の6基準の移動態様のうちのどれかを選択してもらい、移動がなかった場合には「移動なし」を選択してもらうことになる。なお、回答の入力については、患者が理解していないのに答えを入力してしまう可能性があるため、図7にあっては、各パラメータについて、「わからない」という選択肢も併せて設けている。
【0044】
回答の入力方法としては、特に制限はなく、図7にあっては、入力画面151に対してクリックマークをクリックして、回答を入力する態様を示している。患者は、全てのパラメータに対する回答が終了したら、入力画面151の「回答終了」をクリックすることにより、回答が終了することになる。患者から入力された回答は受信部12が受信し、受信部12から判定部13に送信されることになる。
【0045】
判定部13は、受信部12で受信した患者からの回答が、指示部11から出された指示(刺激条件)と合致するかどうか、その正否を判定する。本実施形態における判定部13は、刺激パラメータとして採用する3基準のパラメータ(刺激を与える位置、刺激の程度、刺激を与える位置の移動)について判定し、判定結果を連絡部14に送信する。
【0046】
連絡部14は、判定部13からの判定結果を患者に連絡するが、連絡部14による患者への連絡は、判定結果を画面152に表示することにより行うようにしてもよい。図8は、判定結果を表示した表示部15の画面152の一例を示した概略図である。本実施形態にあっては、刺激パラメータとして採用している刺激を与える位置、刺激の程度、刺激を与える位置の移動の3基準のパラメータについて、それぞれ判定結果が画面(判定を表示する画面)152に表示されることになる。
【0047】
なお、図2に示すように、本実施形態のリハビリテーション装置には、蓄積部であるレジスタ41及びハードディスク42を備えており、患者についての指示部11からの指令(刺激条件)、患者からの回答、判定結果等のデータがレジスタ41内に蓄積され、レジスタ41内に蓄積された全データは、連接されたハードディスク42内に保存されることになる。
【0048】
本発明のリハビリテーション装置1を用いた患者のリハビリテーションは、例えば、図9に示したフローチャートに従い、以下のような手順で行われる。図9は、本発明のリハビリテーション装置1を使用して患者のリハビリテーションを実施する手順の一例を示したフローチャートである。
【0049】
まず、本発明のリハビリテーション装置1を起動し、患者を訓練するに際しての刺激条件の設定を行う(S1)。本実施形態にあっては、刺激パラメータとして、「刺激を与える位置」、「刺激の程度」、「刺激を与える位置の移動」という3基準のパラメータを採用しているので、それぞれのパラメータについて、例えば、「刺激を与える位置=踵」、「刺激の程度=中」、「刺激を与える位置の移動=移動なし」のように刺激条件の設定を行い、これを、訓練を行う回数分(本実施形態にあっては10回)について設定する。刺激条件の設定が終わったら、設定された刺激条件を指示部11に入力する。入力された刺激条件は、指示部11から足裏刺激板2に伝達され(S2)、足裏刺激板2により患者を刺激し、患者に認知課題として与えられる(S3)。
【0050】
患者は、足裏刺激板2を介して与えられる認知課題に対し、認知過程を辿って導き出された回答を、図7に示した表示部15の入力画面151から、クリックマークをクリックすることにより入力する(S4)。入力された回答の情報は、受信部12が受信し、受信部12から判定部13に送信される(S5)。
【0051】
判定部13では、患者が入力した回答の正否を判定する(S6)。判定結果(正解・不正解)は、図8に示すように、表示部15の画面152に刺激パラメータごとに表示され、患者に連絡される(S7)。なお、回答が不正解だった場合には、刺激の程度を若干大きくする等して、患者に再度刺激を与えるようにしてもよい。
【0052】
患者に判定結果を連絡したら、訓練回数が規定回数(本実施形態では10回)に到達するまで訓練を繰り返す(S8の「N」、S9)。訓練を繰り返す場合には、あらかじめ設定された刺激条件の順序に準拠して、前回の訓練とは異なる刺激条件が指示部11から足裏刺激板2に指示され、患者に前回とは異なる認知課題として与えられる。一方、訓練が10回終わったら、訓練は終了する(S8の「Y」)。
【0053】
図10は、判定結果の分析方法の一例を示したフローチャートである。前記した訓練により、患者の認知課題に対する回答から得られた情報を分析(S10)し、足裏3における認知不能な位置が検出されたかを判断する(S11)。足裏3において認知不能な位置が検出された場合(S11の「Y」)、今度は認知困難であった位置を中心とした刺激条件の設定を行う(S12)。
【0054】
認知困難であった位置を中心にした刺激条件の設定は、例えば、図5に示した、刺激体を小趾、母趾、及び踵以外の位置にも配設したリハビリ用足裏刺激板2を使用して、認知困難だった位置及びその周辺に対して刺激を与える課題を設定し、再度、患者に課題を提示して訓練を実施するようにする(図9のS2)。一方、認知不能な位置が検出されなかった場合は、訓練を再度実施するか終了するかを選択する(S13)。訓練を再度実施する場合(S13の「Y」)は、図9のS1へ移行し、再度刺激条件を設定し、訓練を実施する。訓練を実施しない場合(S13の「N」)には、分析を終了する。なお、訓練は、所定の間隔ごとに実施して、一定の期間(例えば、1月)で得られた情報を分析して、回復の度合い等を判断するようにしてもよい。
【0055】
以上説明したように、本発明のリハビリテーション装置1は、足裏3における小趾、母趾、及び踵を刺激するリハビリ用足裏刺激板2を備え、かかる足裏刺激板2から伝達される認知課題により患者を訓練する装置であるので、患者はかかる認知課題を通して、患者は脳内での認知過程を活性化することができる。加えて、歩行が困難な状態である患者に対し、座位で訓練が行うことができ、単純な繰り返し動作による訓練ではなく、認知的な側面でのリハビリテーションを提供する。そして、本装置は、マンツーマンでの十分なリハビリテーションを行うことが困難な施設や在宅などでも、患者の家族などの操作により、容易にリハビリテーションを実施することができる。
【0056】
(第2実施形態)
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。
【0057】
例えば、前記した実施形態では、刺激パラメータとして、刺激を与える位置、刺激の程度、刺激を与える位置の移動の3つを例に挙げて説明したが、これには限定されず、例えば、刺激の種類(押圧、振動、電流)や、刺激の長さ、等を刺激パラメータとして用いるようにしてもよい。
【0058】
また、リハビリ用足裏刺激板2については、患者に対して足圧分布の測定を行い、足型を決定し、小趾、母趾、踵といった刺激を送る位置(足圧パターン)を決定して、刺激体22を設定する足圧パターンに応じて配設するようにしてもよく、これにより、足の形状によらず同一の足裏用刺激板2を使用することができる。
【0059】
なお、本発明のリハビリテーション装置1を用いたリハビリテーションは、患者の一方の足に対して実施した態様を示したが、麻痺した足裏3で認知困難な場合、麻痺していない側(非麻痺側)の他方の足裏3に課題を与えることで、非麻痺側に入る圧力を認識し、それを基に麻痺側で与えられた課題を照合させ、患者に麻痺の認識を学習させる手順を用いてもよい。あるいは、片足だけでなく、両足にリハビリ用足裏刺激板2を設置し、同時に刺激を与えることで、その情報を認識させる方法を用いてもよい。この場合には、課題は、足裏の1箇所(例えば母趾)にポイントを絞って提示して、この同じ課題を複数回(例えば10回)行い、患者には、課題に対して回答を出すというよりも、どの程度認識しているかを答えてもらうようにすればよい。
【0060】
前記した実施形態では、判定結果の連絡について、判定結果を表示部15の画面152に表示して患者に連絡するようにしていたが、これには限定されず、例えば、連絡部14から音声等を通して患者に連絡するようにしてもよい。
その他、本発明の実施における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、脳卒中や交通事故等で身体の一部が麻痺して、歩行が困難となった患者を在宅や介護施設等でリハビリするための装置として有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のリハビリテーション装置の概要を示した説明図である。
【図2】本発明のリハビリテーション装置の構成の一態様を示したブロック図である。
【図3】本発明のリハビリ用足裏刺激板の構成の一態様を示した正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】本発明のリハビリ用足裏刺激板の構成の他の態様を示した正面図である。
【図6】刺激パラメータの一例を示した説明図である。
【図7】回答の入力画面の一例を示した概略図である。
【図8】判定結果を表示した表示部の画面の一例を示した概略図である。
【図9】本発明のリハビリテーション装置を使用して患者のリハビリテーションを実施する手順の一例を示したフローチャートである。
【図10】判定結果の分析方法の一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 リハビリテーション装置
2 リハビリ用足裏刺激板
3 足(足裏)
11 指示部
12 受信部
13 判定部
14 連絡部
15 表示部
151 入力画面
152 画面(判定を表示する画面)
21 基板
22 刺激体
24 凹部
41 レジスタ(蓄積部)
42 ハードディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の一部が麻痺した患者をリハビリするためのリハビリ用足裏刺激板であって、
患者の足裏を載置するための基板と、
当該基板上の前記患者の足裏を載置した場合における少なくとも小趾、母趾、及び踵の3箇所に相当する位置に、足裏を刺激する刺激体と、
を備えることを特徴とするリハビリ用足裏刺激板。
【請求項2】
前記刺激体が、前記患者の足裏に対して押圧する及び/または振動を伝えることを特徴とする請求項1に記載のリハビリ用足裏刺激板。
【請求項3】
前記刺激体が、前記基板上の前記3箇所以外にも配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリハビリ用足裏刺激板。
【請求項4】
身体の一部が麻痺した患者をリハビリするためのリハビリテーション装置であって、
患者の足裏に刺激を与える請求項1から請求項3のいずれかに記載リハビリ用足裏刺激板と、
設定された刺激条件を前記足裏刺激板に指示する指示部と、
前記足裏刺激板による刺激に対して、前記患者からの回答を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記回答の正否を判定する判定部と、
前記判定部における判定結果を患者に連絡する連絡部と、
を含むことを特徴とするリハビリテーション装置。
【請求項5】
前記刺激条件は、構成するパラメータが刺激を与える位置、刺激の程度、及び刺激を与える位置の移動を含むことを特徴とする請求項4に記載のリハビリテーション装置。
【請求項6】
さらに、前記患者への伝達事項を表示する表示部を備え、
前記連絡部による判定結果の連絡が、当該判定結果を前記表示部に表示することにより実施されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のリハビリテーション装置。
【請求項7】
前記表示部が、前記回答の入力画面を表示できることを特徴とする請求項6に記載のリハビリテーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−106429(P2009−106429A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280102(P2007−280102)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】