説明

リビングラジカル重合添加剤及びそれを用いたリビングラジカル重合方法

【課題】ラジカル重合性モノマーの極性に依存せず、リビングラジカル重合のための高い活性を有するリビングラジカル重合添加剤を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるビホスフィンを含有することを特徴とするリビングラジカル重合添加剤。一般式(1)の式中のR1、R2、R3及びR4が同一の又は異なるアリール基、特にフェニル基であることが好ましい。本発明は、前記リビングラジカル重合添加剤を用いることを特徴とするリビングラジカル重合方法も提供する。使用するラジカル重合性モノマーは非極性モノマー及び極性モノマーのいずれでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なリビングラジカル重合添加剤及びそれを用いたリビングラジカル重合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のラジカル重合開始剤が提案されている。例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリルや2,2'−アゾビスイソブタン等のアゾ化合物系重合開始剤、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化2−クロロベンゾイル等の過酸化物系等が知られている。
【0003】
しかし、ラジカルは極めて高活性な化学種であるので、生長反応におけるポリマー末端ラジカルを、副反応を抑制しつつコントロールすることは難しいという問題があった。そこで、最近は種々のリビングラジカル重合法が提案されてきている。例えば、分子量及び分子量分布を制御し易い重合方法として、ハロゲノペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリアリールホスフィン)ルテニウム等の遷移金属錯体と、2−クロロ2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル等のハロゲン化合物と、ルイス酸又はアミン化合物とからなる重合開始剤系を用いたリビングラジカル重合法が提案されている(特許文献1参照)。また、特定のホスフィン化合物と、特定の有機ハロゲン化合物と、遷移金属錯体として特定のルテニウム錯体とを組み合わせたリビングラジカル重合法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかし、遷移金属を用いるリビングラジカル重合開始剤は、金属不純物が残存するおそれがあるとして、一般的に電子材料に用いるポリマーの重合には不向きなものと考えられている。また該リビングラジカル重合開始剤は水分を嫌うので、取り扱いに注意を要するものである。その他のリビングラジカル重合開始剤も、(イ)極性モノマーには使用できない、(ロ)重合温度が高すぎる、(ハ)長時間の反応時間が必要、(ニ)使用できるモノマーが限定される、(ホ)反応系が複雑、(ヘ)開始剤のハンドリングが面倒、(ト)モノマー・開始剤の他に第三成分を添加剤として加える必要がある等、一長一短があるものであった。
【0005】
このため、本出願人は、先に下記一般式(2)で表されるホスフィン誘導体を含有する新規なリビングラジカル重合開始剤を提案した(特許文献3参照)。
【0006】
【化1】

【0007】
【特許文献1】特開2001−316410号公報
【特許文献2】特開2004−277587号公報
【特許文献3】特開2006−233012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術よりもリビングラジカル重合のための高い活性を有する新規なリビングラジカル重合添加剤を提供することにある。
また本発明の目的は、分子量分布のそろったポリマーを得ることができるリビングラジカル重合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、更に新規なリビングラジカル重合開始剤系を探索する中で、特定の一般式で表される三価のビホスフィンがホスホラニルラジカルを形成し、ラジカル重合性モノマーの極性によらずリビングラジカル重合のための高い活性を有し、得られるポリマーの分子量分布は転化率によらずほぼ1であり、分子量分布のそろったポリマーを得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表されるビホスフィンを含有するリビングラジカル重合添加剤を提供するものである。
【0011】
【化2】

【0012】
また、本発明は、前記のリビングラジカル重合添加剤を用いることを特徴とするリビングラジカル重合方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリビングラジカル重合添加剤は、ラジカル重合性モノマーの極性に依存せず、リビングラジカル重合のための高い活性を有する。したがって、本発明のリビングラジカル重合添加剤を用いてリビングラジカル重合を行うと、得られるポリマーの分子量分布が転化率によらずほぼ1となり、分子量分布のそろったポリマーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のリビングラジカル重合添加剤(連鎖移動剤ともいう)は、前記一般式(1)で表されるビホスフィンを含有する。前記一般式(1)の式中のR1、R2、R3及びR4は、直鎖状又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R1、R2、R3及びR4は、同一の基でも異なる基であってもよい。
【0015】
アルキル基としては、炭素数1〜18、特に炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基等が挙げられる。アルキル基中の1つ又は2つ以上のメチレン基は−CH=CH−によって置き換えられていてもよい。そのような基としてはビニル基、アリル基、イソプロペニル基等が挙げられる。また、前記アルキル基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、フェニル基、アルコキシ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。
【0016】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらのシクロアルキル基は、フェニル基、アルコキシ基、シアノ基、水酸基等で置換されていてもよい。
【0017】
アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、アリール基又はアラルキル基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0018】
本発明においては、一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4は、同一の又は異なるアリール基が好ましく、とりわけフェニル基であることが、リビングラジカル重合のための高い活性を有し、化合物自体も安定であり、また、工業的に容易に入手することができることから特に好ましい。
【0019】
かかる一般式(1)で表されるビホスフィンは公知の方法により製造することができる。その一例を示せば、下記反応式(A)にしたがって第2級ホスフィン(化合物3)とホスフィンハライド(化合物4)から製造することができる(例えば、「ORANIC PHOSPHORUS COMPOUNDS Vol.1」,著G.M.KOSOLAPOFF,出版社John Wiley & Sons,Inc.1972年、314〜316頁参照)。
【化3】

【0020】
また、一般式(1)においてR1、R2、R3及びR4がすべてフェニル基である化合物、すなわちテトラフェニルビホスフィンとして、Aldrich社から市販されているビホスフィン(商品名)を用いることができる。
【0021】
次に、上述した一般式(1)で表される化合物を用いたリビングラジカル重合について説明する。本発明のリビングラジカル重合方法は、公知のリビングラジカル重合添加剤を使用するリビングラジカル重合開始剤系において、該重合添加剤に代えて、一般式(1)で表される化合物を含有するリビングラジカル重合添加剤を用いるものである。
【0022】
本発明のリビングラジカル重合反応で使用し得るラジカル重合性モノマーは、その種類に特に制限はない。特筆すべきは、ビニルエステル、不飽和カルボン酸(メタクリル酸及びアクリル酸等)又はそのエステル等の極性モノマー、共役ジエンモノマー及びビニル芳香族炭化水素モノマー等の非極性モノマーのいずれも好適に用いることができる点である。これに対して、従来公知のリビングラジカル重合添加剤は、モノマーの極性によっては、使用できるものが制限されていた。したがって、本発明のリビングラジカル重合添加剤が、モノマーの極性の有無によらずリビングラジカル重合を行い得ることは驚くべきことであり、それ故、本発明のリビングラジカル重合添加剤の工業的価値は極めて高いものである。
【0023】
本発明で使用し得る好ましいラジカル重合性モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、γ−(アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(アクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチル等のアクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物;メタクリル酸アミド、メタクリル酸置換アミド、アクリル酸アミド、アクリル酸置換アミド等の各種ビニル系単量体を挙げることができる。
【0024】
本発明のリビングラジカル重合方法において、重合反応系内の前記リビングラジカル重合添加剤の初期濃度に特に制限はないが、反応液が溶媒を含むか、含まないかにかかわらず、0.003〜1mol/l、特に0.01〜0.3mol/lであることが、適切な反応速度を確保すると共に、分子量分布のシャープなポリマーを得る点から好ましい。
【0025】
本発明のリビングラジカル重合方法においては、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、反応容器にモノマー及び必要により溶媒を計り入れ、そこに本発明のリビングラジカル重合添加剤を所定量添加して重合反応を開始する。重合温度はモノマー等の種類にもよるが、一般に40〜100℃の範囲であることが好ましい。
【0026】
リビングラジカル重合反応で使用する溶媒は、従来、リビングラジカル重合に用いられている溶媒と同様のものとすることができる。使用できる溶媒としては、モノマーの種類にもよるが、多くの場合、トルエン及びキシレンなどのような各種の芳香族系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのような各種のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール及びn−ブタノールなどのような各種のアルコール系溶剤;酢酸エチル及び酢酸ブチルなどのような各種のエステル系溶剤;エチルセロソルブ及びブチルセロソルブなどのような各種のグルコールエーテル系溶剤などを用いることができる。しかし、これの溶媒に特に限定されるものではない。また、モノマーが反応温度において、液体であれば無溶媒下で重合反応を行うこともできる。
【0027】
リビングラジカル重合においては、本発明のリビングラジカル重合添加剤を、公知のラジカル重合開始剤と併用すると、反応温度が好ましくは80℃以下、更に好ましくは50〜80℃程度でも、重合がリビング的に進行し分子量分布の狭いポリマーを効率的に得ることができるという利点があるので好ましい。使用できるラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤や過酸化物系ラジカル重合開始剤が典型的なものとして挙げられる。
【0028】
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、2,2'−アゾビスプロパン、2,2'−ジクロロ−2,2'−アゾビスプロパン、1,1'−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−アミノプロパン)硝酸塩、2,2'−アゾビスイソブタン、2,2'−アゾビスイソブチルアミド、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2'−ジクロロ−2,2'−アゾビスブタン、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1'−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−アリルマロノジニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1'−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2'−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1'−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2'−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1'−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1'−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1'−アゾビス−1−シクロヘプタンニトリル、1,1'−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1'−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1'−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4'−アゾビス−4−シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2'−アゾビスイソブチレート)等が挙げられる。
【0029】
過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2−クロロベンゾイル、過酸化3−クロロベンゾイル、過酸化4−クロロベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化4−ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過4−メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル等が挙げられる。
【0030】
これらラジカル重合開始剤の使用量は特に制限はないが、反応液が溶媒を含むか、含まないかにかかわらず、反応液1リットルに対して、好ましくは1mmol以上であり、より好ましくは、5ミリモルmmolであり、更に好ましくは10〜500mmolである。また、リビングラジカル重合添加剤との使用量の比率は、モル比で表して、リビングラジカル重合添加剤:ラジカル重合開始剤=1:0.01〜1:10、特に 1:0.05〜 1:5であることが好ましい。
【0031】
本発明のリビングラジカル重合添加剤による重合反応の挙動は、一般式(1)のビホスフィンからホスホラニルラジカルが形成され、このホスホラニルラジカルの形成によりポリマー生長末端ラジカルの反応性が抑制されるものと考えられる(図1参照)。また、ポリマー生長末端(活性点)はビホスフィンが付加した形になっているので、これにより得られたポリマー自体も重合添加剤として作用する。このためポリマー生長末端(活性点)にビホスフィンが付加したものと、別のモノマーとを、好ましくはラジカル重合開始剤を用いて新たに重合反応を行うことにより、ブロックポリマーを得ることができる。なお、図1はリビングラジカル重合添加剤としてテトラフェニルビホスフィンを用いたときの例である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
〔実施例1〕
アルゴン置換した反応管に、スチレンモノマー(東京化成社製)2.7g(2.62×10-2mol)、AIBN重合開始剤(和光純薬社製)8.6mg(5.24×10-2mmol)、重合添加剤としてテトラフェニルビホスフィン(ビホスフィン、Aldrich社製)19.4mg(5.24×10-2mmol)を加え、60℃で所定時間バルク重合を行い、ポリスチレンを得た。重合結果を以下の表1に示す。ポリスチレンの分子量は転化率とともに増加し、分子量分布は転化率によらずほぼ一定の値であった。このことにより,本反応系は、リビング的に進行し、単分散のポリマーが得られることが確認された。その結果を表1にまとめた。なお、表1中、Mnは数平均分子量を示し、Mwは重量平均分子量を示す(以下に示すすべての表について同じである)。Mn及びMwの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行った。
【0034】
【表1】

【0035】
〔実施例2〕
実施例1において用いた重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を9.7mg(2.62×10-2mmol)とする以外は、実施例1と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
〔実施例3〕
実施例1において用いた重合開始剤としてのビホスフィンの使用量を58mg(1.57×10-1mmol)とする以外は、実施例1と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
〔実施例4〕
実施例1において用いた重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を97mg(2.62×10-1mmol)とする以外は、実施例1と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表4に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
〔実施例5〕
実施例1において用いた重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を0.194g(5.24×10-1mmol)とする以外は、実施例1と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表5に示す。
【0042】
【表5】

【0043】
〔実施例6〕
実施例1において用いたAIBN重合開始剤の量を4.3mg(2.62×10-2mmol)に変更し、かつ重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を9.7mg(2.62×10-2mmol)とする以外は、実施例1と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表6に示す。
【0044】
【表6】

【0045】
〔実施例7〕
実施例1において用いたAIBN重合開始剤の量を43mg(2.62×10-1mmol)に変更し、かつ重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を97mg(2.62×10-1mmol)とする以外は、実施例1と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表7に示す。
【0046】
【表7】

【0047】
〔実施例8〕
実施例1において用いたAIBN重合開始剤の量を86mg(5.24×10-1mmol)に変更し、かつ重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を0.194g(5.24×10-1mmol)とする以外は、実施例1と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表8に示す。
【0048】
【表8】

【0049】
〔実施例9〕
バルク重合の温度を80℃とする以外は実施例1と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表9に示す。
【0050】
【表9】

【0051】
〔実施例10〕
実施例9において用いた重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を9.7mg(2.62×10-2mmol)とする以外は、実施例9と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表10に示す。
【0052】
【表10】

【0053】
〔実施例11〕
実施例9において用いた重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を97mg(2.62×10-1mmol)とする以外は、実施例9と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表11に示す。
【0054】
【表11】

【0055】
〔実施例12〕
アルゴン置換した反応管に、スチレンモノマー(東京化成社製)2.7g(2.62×10-2mol)、重合添加剤としてテトラフェニルビホスフィン(ビホスフィン、Aldrich社製)19.4mg(5.24×10-2mmol)を加え、100℃で所定時間バルク重合を行い、ポリスチレンを得た。重合結果を以下の表12に示す。
【0056】
【表12】

【0057】
〔実施例13〕
実施例12において用いた重合添加剤としてのビホスフィンの使用量を97mg(2.62×10-1mmol)とする以外は、実施例12と同様にしてポリスチレンを得た。重合結果を以下の表13に示す。
【0058】
【表13】

【0059】
〔実施例14〕
アルゴン置換した反応管に、メタクリル酸メチル2.8g(2.82×10-2mol)、AIBN重合開始剤9.3mg(5.64×10-2mmol)、重合添加剤としてビホスフィン(Aldrich社製)0.10g(2.82×10-1mmol)を加え、60℃で所定時間バルク重合を行い、ポリメタクリル酸メチルを得た。重合結果を以下の表14に示す。
【0060】
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のリビングラジカル重合添加剤を使用したときのリビングラジカル重合の反応機構を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるビホスフィンを含有することを特徴とするリビングラジカル重合添加剤。
【化1】

【請求項2】
前記一般式(1)の式中のR1、R2、R3及びR4が同一の又は異なるアリール基である請求項1記載のリビングラジカル重合添加剤。
【請求項3】
前記一般式(1)の式中のR1、R2、R3及びR4がフェニル基である請求項2記載のリビングラジカル重合添加剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のリビングラジカル重合添加剤を用いることを特徴とするリビングラジカル重合方法。
【請求項5】
更に、ラジカル重合開始剤を併用する請求項4記載のリビングラジカル重合方法。
【請求項6】
使用するラジカル重合性モノマーが非極性モノマーである請求項4又は5記載のリビングラジカル重合方法。
【請求項7】
前記非極性モノマーが共役ジエンモノマー又はビニル芳香族炭化水素モノマーである請求項6記載のリビングラジカル重合方法。
【請求項8】
前記非極性モノマーがスチレンである請求項7記載のリビングラジカル重合方法。
【請求項9】
使用するラジカル重合性モノマーが極性モノマーである請求項4又は5記載のリビングラジカル重合方法。
【請求項10】
前記極性モノマーがメタクリル酸、アクリル酸及びそれらのエステルである請求項9記載のリビングラジカル重合方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−203359(P2009−203359A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47436(P2008−47436)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月4日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集56巻2号」に発表
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】