説明

リフォーム時期演算方法、リフォーム時期演算システム、及びリフォーム時期提案シート

【課題】耐用年数の推定が可能な設備機器の交換を含むリフォームの最適な時期を提案することのできるリフォーム時期演算方法、リフォーム時期演算システム、及びリフォーム時期提案シートを提供する。
【解決手段】リフォーム時期演算システムの演算装置は、建築物の居住者が当該建築物の使用を終了する使用終了時期に関する情報を取得する情報取得ステップS16,S22と、情報取得ステップS16,S22で取得した使用終了時期に関する情報に基づいて、当該使用終了時期を推定する使用終了時期推定ステップS24と、使用終了時期推定ステップS24によって推定された使用終了時期から、リフォームに伴って新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期に基づいて、リフォームの時期を演算するリフォーム時期演算ステップS30とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物のリフォームを行う時期を演算するリフォーム時期演算方法、リフォーム時期演算システム、及び建築物のリフォームを行う時期を提案するリフォーム時期提案シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンションや戸建住宅などの建築物を建築する際に、建築物の耐用年数や建築費用、及び将来のメンテナンス費用と、居住者の将来の家族構成とを重ね合わせることによる長期間のライフプランニングの提案が行われている。例えば、特許文献1では、建築物の耐用年数などを記載した建築物年表の下側に、スライド可能に構成された居住者の家族年表が配置されており、当該家族年表を移動させることによってライフプランニングの容易化を図っている。このような方法を用いることによって、新たな建築物を建てるときに、将来のメンテナンスや居住者の家族構成を総合的に考慮した最適なプランニングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−265458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、マンション等の長期修繕計画に組み込まれている修繕工事や戸建住宅の建築時にプランニングすることのできる工事は塗装防水等、必要最小限のメンテナンスのための工事である。設備機器のリフォーム工事(例えば、設備機器の交換を伴うキッチン、浴室、洗面所等の水回りのリフォーム工事)は計画に無く、故障等の必要性により行うことが多い。また、故障はないものの内装のリフォーム工事も計画的には行われないことが一般的である。故障によって突発的に発生するリフォームは居住者の年齢に関係なく発生するため次のようなデメリットがある。すなわち、リフォーム工事は居住者が生活を続けながら行うものであるため、家具等の備品の移動や整理が必要となり、高齢の居住者にとっては負担が重いという問題がある。更に、高齢に達してからリフォーム工事を行うと、リフォームされた住まいで生活する期間が短くなる虞があるという問題がある。すなわち、最新の設備機器を導入したにも関わらず、居住者が寿命に達することで、その設備機器を十分に使いきる前に、建築物の使用自体が終了してしまい、最新の設備機器を利用した快適な生活を送る期間が限られてしまう虞がある。この問題は、居住者の寿命に起因するのみでなく、例えば、都市計画(道路道路等)の実施に伴う立ち退き、定年に伴う郷里への引越し、建築物の耐用年数到達に伴う建て替えなどによっても起こりうるものである。
【0005】
ここで、特許文献1においては、建築物を建てる前におけるプランニングを行うことができるものの、建築物を建てた後におけるリフォームの最適な時期の提案までは対応していない。従って、耐用年数の推定が可能な設備機器の交換を含むリフォームの最適な時期を提案することが要求されていた。特に、近年においては、諸性能の向上によって建築物の耐用年数が長期化し、建築物が耐用年数に到達する前に当該建築物の使用自体が終了する傾向にあり、このような要求は一層強くなる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、耐用年数の推定が可能な設備機器の交換を含むリフォームの最適な時期を提案することのできるリフォーム時期演算方法、リフォーム時期演算システム、及びリフォーム時期提案シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリフォーム時期演算方法は、建築物のリフォームを行う時期を演算するリフォーム時期演算方法であって、建築物の居住者が当該建築物の使用を終了する使用終了時期に関する情報を取得する情報取得ステップと、情報取得ステップで取得した使用終了時期に関する情報に基づいて、当該使用終了時期を推定する使用終了時期推定ステップと、使用終了時期推定ステップによって推定された使用終了時期から、リフォームに伴って新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期に基づいて、リフォームの時期を演算するリフォーム時期演算ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るリフォーム時期演算システムは、建築物のリフォームを行う時期を演算するリフォーム時期演算システムであって、建築物の居住者が当該建築物の使用を終了する使用終了時期に関する情報が入力される入力手段と、入力手段によって入力された使用終了時期に関する情報に基づいて、当該使用終了時期を推定する使用終了時期推定手段と、使用終了時期推定手段によって推定された使用終了時期から、リフォームに伴って新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期に基づいて、リフォームの時期を演算するリフォーム時期演算手段と、リフォーム時期演算手段によって演算されたリフォームの時期を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るリフォーム時期演算方法及びリフォーム時期演算システムによれば、例えば、建築物の居住者の余命(例えば、現状の日本人の性別の平均寿命から居住者の年齢を差し引いた平均余命)や引越し・建て替え時期などの情報に基づいて建築物の使用の終了時期が推定されている。従って、単に現在導入されている設備機器の物理的な残存耐用年数のみならず、建築物の居住者の余命や将来計画に基づく使用年数の概念を入れて、部位毎のリフォーム工事の時期を設定することができる。ここで、リフォームによって新設される設備機器は、建築物の耐久性を維持するためのメンテナンス(屋根防水や外壁塗装等)のように、主に性能面から改修サイクルが決定されるものとは異なり、その機能(あるいは、デザインなど)が日常生活の快適性に大きな影響を与えるものであり、設備機器の交換を含むリフォームのリフォーム時期の適確な提案は、建築物の居住者の満足に直結する重要なファクターである。本発明においては、推定した使用終了時期から、新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期を、リフォーム時期の提案の際に考慮することで、新設される設備機器が長期間使用でき快適な生活を長く送ることが可能となるリフォーム時期の提案ができる。また、単に快適性が向上するのみならず、例えば、身体機能の衰えによって既存の設備機器では生活に支障があるにも拘らず、まだ使えるから、という理由でリフォーム(例えば、身体機能の衰えをカバーし得る新設設備機器への交換)をためらう高齢者(または将来的な高齢者)に適切な提案をすることができる。更に、このような適切な提案を行うことによって、望ましい時期でのリフォームが実現されることで、リフォームに伴う居住者の負荷を低減させることができる。以上によって、本発明に係るリフォーム時期演算方法及びリフォーム時期演算システムで演算することによって、最適なリフォーム時期を提案することができる。
【0010】
また、本発明に係るリフォーム時期演算方法では、リフォーム時期演算ステップにおいて、建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報、または居住者に関する情報に基づいて、リフォームの時期を演算することが好ましい。建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報や建築物の居住者に関する情報(例えば将来の家族構成やライフイベントなど)に基づいてリフォーム時期を演算することによって、将来の支出や生活の状況にあわせてリフォーム時期を一層最適化して提案することができる。
【0011】
本発明に係るリフォーム時期演算シートは、建築物のリフォームを行う時期を提案するリフォーム時期提案シートであって、建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報を表示する第一表示部と、建築物の居住者に関する情報を表示する第二表示部と、上述のリフォーム時期演算方法によって演算されたリフォームの時期、あるいは上述のリフォーム時期演算システムによって演算されたリフォームの時期を表示する第三表示部と、を有することを特徴とする。このようなリフォーム時期演算シートを用いることによって、上述のようなリフォーム時期演算方法またはリフォーム時期演算システムで得られる効果と同様の効果が得られる。また、リフォーム時期演算シートは、リフォーム時期が提案された第三表示部のみならず、第一表示部及び第二表示部を有しているため、提案されたリフォーム時期を、例えば、年齢、家族構成、塗装防水のメンテナンス時期、ローン等の要素と共に、全体のバランスの中で再度検討することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐用年数の推定が可能な設備機器の交換を含むリフォームの最適な時期を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るリフォーム時期演算システムの構成を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリフォーム時期演算システム及びリフォーム時期演算方法によって作成されたリフォーム時期提案シートの一例である。
【図3】本発明の実施形態に係るリフォーム時期演算システムによる処理内容を示すフロー図である。
【図4】図3に示す処理内容を実行しているときに表示される入力用表示画面の一例である。
【図5】リフォーム時期を演算する際の演算モードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るリフォーム時期演算方法、リフォーム時期演算システム、及びリフォーム時期提案シートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るリフォーム時期演算システムの構成を示すブロック構成図である。図2は、本実施形態に係るリフォーム時期演算システム及びリフォーム時期演算方法によって作成されたリフォーム時期提案シートの一例である。図1に示すように、リフォーム時期演算システム1は、リフォーム時期の演算やその他の処理を行うPCなどの演算装置(使用終了時期推定手段、リフォーム時期演算手段)2と、利用者が情報を入力するキーボードなどの入力部(入力手段)3と、各種情報を表示するディスプレイなどの表示部(出力手段)4と、演算結果に基づいて作成したリフォーム時期提案シートを作成するプリンタなどのシート作成部(出力手段)5とを備えて構成されている。このリフォーム時期演算システム1は、マンションや戸建住宅などの建築物の居住者がWEB上で提供されるサービスとして用いることができ、あるいは、建築物の居住者にリフォーム時期の提案を行う提案者が、居住者から得た情報に基づいてリフォーム時期の提案を行う際に用いることができる。
【0016】
リフォーム時期演算システム1の演算装置2は、リフォーム時期の演算を行うために必要な情報を取得するとともに、これらの情報に基づいて最適なリフォーム時期を演算する機能を有している。本実施形態では、建築物の居住者の余命(例えば現状の日本人の性別の平均寿命から居住者の年齢を差し引いた平均余命)や引越し・建て替え時期などを考慮して建築物の使用終了時期を推定し、推定した当該使用終了時期から、リフォームに伴って新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期に基づいて、リフォーム時期を演算することができる。更に、このとき、演算装置2は、建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報や建築物の居住者の構成やライフイベントなどに関する情報に基づいて、リフォームの時期を演算することができる。
【0017】
このリフォーム時期演算システム1を用いることによって、図2に示すようなリフォーム時期提案シートが作成される。なお、図2の内容を表示部4に示しても良い。図2に示すように、リフォーム時期提案シートは、建築物のメンテナンス計画、居住者の構成やライフイベントの計画、及びリフォーム時期の計画を示す年表であり、第一表示部Z1、第二表示部Z2、第三表示部Z3の三つのゾーンで構成されている。
【0018】
第一表示部Z1は、建築物の塗装や防水など、建築物の耐久性を維持するために必須となるメンテナンスの計画が記載された年表である。建築物の耐久性を維持するために必須となるメンテナンスとは、気温変化や紫外線などによる劣化により必要とされる改修工事で、物理的な耐用年数を超えた場合に雨漏りや重大な欠陥につながるため、物理的な耐用年数で一律に計画が作成され、マンションなどでは長期修繕計画に組み込まれる。例えば、屋根・屋上の防水シートの交換工事や塗装工事や瓦の交換工事、ベランダの防水シートの交換工事、外壁の塗装やシーリング工事などが挙げられる。
【0019】
第二表示部Z2は、居住者に関する情報、すなわち居住者の構成の変化や居住者のライフイベントが記載された年表である。第二表示部Z2には、現在同居はしていないが、将来同居の可能性がある祖父・祖母などの同居予定者の情報も入れることができる。第二表示部Z2には、居住者の人数、居住者の学校、就職、結婚、出産、退職、寿命などのライフイベントを表示することができ、教育費、ローン、車、旅行などの家庭における支出を表示することもできる。
【0020】
第三表示部Z3は、第一表示部Z1に示すような建築物の耐久性自体に関わる必須のメンテナンスではなく、建築物の内装や設備機器の交換などのリフォームについての時期が記載された年表である。すなわち、本実施形態による演算方法や演算装置による演算結果が示される部分である。ここでのリフォームは、耐用年数の推定が可能な設備機器の交換を伴うものであり、例えば、浴室、洗面台、キッチン、トイレ、給湯器、太陽光発電システムなどが挙げられる。また、リビングルーム等の各部屋の美観向上の為の内装材のリフォームや、バリアフリー化などの将来の備えのためのリフォームなども挙げられる。ここで、設備機器の耐用年数として、設備機器メーカー側が公表している年数、同一あるいは類似の設備機器を備えた住宅を大量に管理する住宅メーカー(のアフターサービス部門)などが保有する過去の交換実績の統計的データに基づく年数、交換用パーツの保有年数、などを用いることができる。また、単純な年数に限らず、使用環境や使用頻度(使用回数や延べ使用時間など)を考慮した年数であってもよい。
【0021】
次に、図2〜図5を参照して、本実施形態に係るリフォーム時期演算システム1によるリフォーム時期の演算処理、すなわち、本実施形態に係るリフォーム時期演算方法の内容について説明する。図3は、リフォーム時期演算システム1による処理内容を示すフロー図である。図3の処理は、演算装置2において所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、図3に示す処理は一例であり、当該処理に限定されない。
【0022】
図3に示すように、演算装置2は、演算のために用いる情報を入力させるために、表示部4に入力用画面を表示する(ステップS10)。S10で表示される入力用画面の一例を図4に示す。なお、図4は表示画面の一例であり、これに限定されない。図4に示す「(1)メンテナンスデータ入力」の項目に対して利用者が入力部3を介して入力を行うことによって、演算装置2は、建築物に関する情報を取得する(ステップS12)。ここでは、主に、建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報を取得することができる。図4に示す例では、建築物の築年数、及び次回のメンテナンスの際に用いる予定の塗装や防水シートなどの耐久性、更に建築物の建築規模を入力することができる。なお、ここで屋根や外壁などの各部位における現状の耐用年数を入力させてもよく、あるいは建築物の建築時における仕様から各部位における現状の耐用年数を取得してもよい。次に、S12で取得した情報に基づいて、建築物の耐久性を維持するために必須となるメンテナンス計画を作成する(ステップS14)。これによって、図2の年表における第一表示部Z1が作成される。ここでは、第一表示部Z1に各部位に対するメンテナンス時期を表示することができ、更に、塗装・防水が不要な安心時期を表示することもできる。
【0023】
次に、図4に示す「(2)家族データ入力」の項目に対して利用者が入力部3を介して入力を行うことによって、演算装置2は、建築物の居住者に関する情報を取得する(ステップS16:情報取得ステップ)。ここでは、主に、建築物の居住者の構成、居住者状況、居住者のライフイベントに関する情報を取得することができる。図4に示す例では、建築物の所有者(「ご主人様」)、配偶者(「奥様」)、子供、その他居住者となりうる人物(「お父様、お母様」)など、建築物の居住者それぞれに対する、名前、性別、年齢、同別居(同居・別居の区分)、最終学歴、独立予定(独立予定の有無や時期)、同居予定(同居予定の有無や時期)などの情報を入力することができる。例えば、性別、年齢から居住者のライフイベントの計画を作成することができる。ここでは、各ライフイベントに対する性別ごとの平均的な年齢を用いることができる。例えば、大学入学を19歳、就職を23歳、女性の結婚を28歳、男性の結婚を29歳、初出産を30歳、退職を60歳、男性の寿命を82歳(現状の日本人男性の平均寿命)、女性の寿命を88歳(現状の日本人女性の平均寿命)、等と設定することができる。あるいは、ライフイベントのタイミングを所定の年齢に適宜変更することもできる。また、最終学歴から学費の計画を作成することができる。また、独立予定時期情報(例えば、同居中の子供が就職や結婚などのライフイベントのうちどのタイミングで独立し別居するか)に基づいて、居住者の人数の計画を作成することができる。また、同居予定者(「お父様、お母様」など)の同居予定時期情報からも、居住者の人数の計画を作成することができる。
【0024】
次に、S16で取得した情報に基づいて、建築物の居住者のライフイベント計画を作成する(ステップS18)。これによって、図2の年表における第二表示部Z2が作成される。ここでは、第二表示部Z2に居住者それぞれについて節目となる年齢を表示すると共に、それに対応するライフイベント(結婚や出産など)を表示することができる。図2の例では、長女が28歳で結婚すると共に独立し、長男が30で結婚すると共に独立し、ご主人が82歳で寿命となるという計画が表示され、それに基づいた家族(居住者)人数が表示されている。更に、第二表示部Z2に対して、教育費が必要となる期間を表示してもよい。
【0025】
次に、図4に示す「(3)主な支出の入力」の項目に対して利用者が入力部3を介して入力を行うことによって、演算装置2は、建築物の居住者に関する情報を取得する(ステップS20)。ここでは、主に、建築物の居住者の支出に関する情報を取得することができる。図4に示す例では、住宅ローン、新車購入、旅行、その他、大きな出費を伴うイベントに対し、それらの発生期間、及びその価格を入力することができる。ここで、ステップS20で取得した支出計画を図2の年表における第二表示部Z2に表示してもよい。
【0026】
次に、図4に示す「(4)その他」の項目に対して利用者が入力部3を介して入力を行うことによって、演算装置2は、建築物の使用終了時期に関する情報を取得する(ステップS22:情報取得ステップ)。図4に示す例では、将来、引越し予定があるか否か、及び建築物の建て替えを行う予定があるか否かを入力することができる。更に、予定がある場合は、その予定時期を入力させることができる。S16及びS22で取得した情報に基づいて、演算装置2は、建築物の使用終了時期を推定する(ステップS24:使用終了時期推定ステップ)。S24において、演算装置2は、S22で引越しや建て替えの予定があるとの情報を取得した場合、当該時期を使用終了時期として推定する。一方、演算装置2はS22で引越しや建て替えの予定がないとの情報を取得した場合、建築物の居住者の推定寿命に基づいて使用終了時期を推定する。図2に示す例では、「奥様」の推定寿命(現状の日本人女性の平均寿命である88歳)を使用終了時期として推定している。このとき、図2に示すように、今までの建築物の使用年数(築年数に等しい)と、今後の推定使用年数を表示することができる。
【0027】
次に、図4に示す「(5)リフォーム」の項目に対して利用者が入力部3を介して入力を行うことによって、演算装置2は、リフォームに関する情報を取得する(ステップS26)。図4に示す例では、これまでの使用年数(すなわち築年数)と今後の推定使用年数(すなわち推定される使用終了時期までの時間)を表示すると共に、浴室、洗面台、キッチン、トイレ、給湯器、太陽光発電システム等の設備機器のリフォーム、リビングルーム等の各部屋の内装材のリフォーム、バリアフリー化などの将来の備えのためのリフォームなどの各リフォームについて、リフォームを行うか否か、及びリフォーム回数をそれぞれ取得する。なお、図4の(5)の部分に、設備機器交換に係るリフォーム部位についてのリフォーム時期の演算結果(以下の説明に係る演算により導き出される)を表示してもよい。
【0028】
更に、演算装置2は、利用者の入力に基づいて、リフォーム時期を演算するための演算モードを取得することができる(ステップS28)。また、演算装置2は、S28で取得した演算モードに従ってリフォーム時期の演算を行う(ステップS30:リフォーム時期演算ステップ)。ここで、演算モードとはリフォーム時期の演算を行う際の演算方式であり、本実施形態では図5に示すように、演算モードA,B,C,Dの四タイプのモードを選択することができる。このうち、演算モードA,B,Cでは、S24で演算された使用終了時期から、リフォームに伴って新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期に基づいてリフォーム時期が演算される。なお、S28において演算モードA,B,C,Dを選択せず、第一表示部Z1や第二表示部Z2を見ながら、耐久性維持のためのメンテナンス計画、ライフスタイル計画、将来の支出の状況を考慮して、利用者が自由にリフォーム時期を入力することもできる。なお、図5に示す例は、所定の設備機器の交換に係るリフォームを新築から使用終了時期までに一回のみ行う場合を例にして説明している。従って、新築後に一度、該当設備機器の交換を行っている場合は、図5における「新築」の基準ラインは、「現行設備機器の導入時期」となる。
【0029】
具体的に、演算モードAでは、使用終了時期から新設される設備機器の耐用年数だけ遡った時期P1が、リフォーム時期として設定される。演算モードBでは、現行の設備機器の導入時期(ここでは新築時)と、建築物の使用終了時期との間の中間点に係る時期P2が、リフォーム時期として設定される。このとき、使用終了時期から新設される設備機器の耐用年数だけ遡った時期(P1と同じ)、及び現行設備機器の残存耐用年数(後述のP4と同じ)を演算することによって採用可能範囲が設定される。更に、求めた時期P2が採用可能範囲の範囲内に入っている場合は、当該時期P2をリフォーム時期として設定し、範囲外である場合は別の演算モードを設定する。
【0030】
演算モードCでは、使用終了時期から新設される設備機器の耐用年数だけ遡った時期を演算した後、メンテナンスに関する情報や建築物の居住者に関する情報に基づいて最適化された時期P3がリフォーム時期として設定される。具体的には、S14で作成されたメンテナンス計画、S18で作成されたライフイベント計画、及びS20で取得した支出情報と照らし合わせ、全体のバランスの中でリフォーム時期を居住者にとって最適な時期に設定することができる。例えば、リフォーム時期を、耐久性を維持するためのメンテナンスの時期や大きな支出がある時期を避けるように(あるいは支出をまとめるように)設定することができ、更に、居住者の構成や変化に合わせて設定することができる。なお、演算モードCにおいては、リフォーム時期の最適化における調整範囲として、使用終了時期から新設される設備機器の耐用年数だけ遡った時期(時期P1と同じ)と、現行設備機器の残存耐用年数(後述の時期P4と同じ)との間の範囲が設定される。演算モードCでは、演算装置2の内部で条件を考慮することで最適なリフォーム時期を提案してもよく、あるいは、第一表示部Z1や第二表示部Z2を見ながら利用者が適宜調整できるようにしてもよい。
【0031】
演算モードDでは、現行設備機器の残存耐用年数に基づいた時期P4がリフォーム時期として設定される。具体的には、現行設備機器の導入時(すなわち新築時)から当該現行設備機器の残存耐用年数が経過した時期P4がリフォーム時期として設定される。
【0032】
S30において、全てのリフォーム部位についてのリフォーム時期の演算が終了したら、演算装置2は、第三表示部Z3に演算したリフォーム時期が反映された提案シートを表示部4に出力する(ステップS32)。利用者が再度の演算を要求した場合は(ステップS34:NO)、再びS26へ戻り再びリフォーム時期の演算を行う。このとき、指定したリフォーム部位のみを再演算することもできる。一方、例えば、利用者が完了ボタンを入力した場合は、演算装置2はリフォーム時期の演算が完了したと判定し(ステップS34:YES)、シート作成部5でプリントアウトすることによって、リフォーム時期提案シートを作成する(ステップS36)。S36の処理が終了すると、図3に示す処理が終了する。
【0033】
次に、本実施形態に係るリフォーム時期演算システム1、リフォーム時期演算方法、及びリフォーム時期提案シートの作用・効果について説明する。
【0034】
本実施形態に係るリフォーム時期演算方法及びリフォーム時期演算システム1によれば、演算装置2がステップS24(使用終了時期推定ステップ)において、建築物の居住者の余命や引越し・建て替えなどの情報に基づいて建築物の使用の終了時期を推定している。従って、単に現在導入されている設備機器の物理的な残存耐用年数のみならず、建築物の居住者の余命や将来計画に基づく使用年数の概念を入れて、部位毎のリフォーム工事の時期を設定することができる。ここで、リフォームによって新設される設備機器は、建築物の耐久性を維持するためのメンテナンス(屋根防水や外壁塗装等)のように、主に性能面から改修サイクルが決定されるものとは異なり、その機能(あるいは、デザインなど)が日常生活の快適性に大きな影響を与えるものであり、設備機器の交換を含むリフォームのリフォーム時期の適確な提案は、建築物の居住者の満足に直結する重要なファクターである。本実施形態においては、演算装置2がステップS30(リフォーム時期演算ステップ)において、推定した使用終了時期から、新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期を、リフォーム時期の提案の際に考慮することで、新設される設備機器が長期間使用でき快適な生活を長く送ることが可能となるリフォーム時期の提案ができる。また、単に快適性が向上するのみならず、例えば、身体機能の衰えによって既存の設備機器では生活に支障があるにも拘らず、まだ使えるから、という理由でリフォーム(例えば、身体機能の衰えをカバーし得る設備機器への交換)をためらう高齢者(または将来的な高齢者)に適切な提案をすることができる。更に、このような適切な提案を行うことによって、望ましい時期でのリフォームが実現されることで、リフォームに伴う居住者の負荷を低減させることができる。以上によって、本実施形態に係るリフォーム時期演算システム1を用いて本実施形態に係るリフォーム時期演算方法によって演算することによって、最適なリフォーム時期を提案することができる。
【0035】
また、実施形態に係るリフォーム時期演算方法では、ステップS30(リフォーム時期演算ステップ)において、建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報、または居住者に関する情報に基づいて、リフォームの時期を演算することができる。建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報や建築物の居住者に関する情報(例えば将来の家族構成やライフイベントなど)に基づいてリフォーム時期を演算することによって、将来の支出や生活の状況にあわせてリフォーム時期を一層最適化して提案することができる。
【0036】
本実施形態に係るリフォーム時期演算シートは、建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報を表示する第一表示部Z1と、建築物の居住者に関する情報を表示する第二表示部Z2と、上述のリフォーム時期演算方法によって演算されたリフォームの時期、あるいは上述のリフォーム時期演算システム1によって演算されたリフォームの時期を表示する第三表示部Z3と、を有している。このようなリフォーム時期演算シートを用いることによって、上述のようなリフォーム時期演算方法またはリフォーム時期演算システム1で得られる効果と同様の効果が得られる。また、リフォーム時期演算シートは、リフォーム時期が提案された第三表示部Z3のみならず、第一表示部Z1及び第二表示部Z2を有しているため、提案されたリフォーム時期を、例えば、居住者の構成や年齢、塗装防水のメンテナンス時期、ローン等の要素と共に、全体のバランスの中で再度検討することが可能となる。
【0037】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、図3で示すフローは一例にすぎず、各ステップの順番が異なっていてもよい。また、図2で示したリフォーム時期提案シートは一例にすぎず、表示されている項目や表示内容を状況や居住者に応じて適宜変更することができる。また、図4に示される入力用の表示画面も一例にすぎず、適宜変更することができる。また、図3においてS12〜S24での情報取得や演算を予め行っておき、データベース化しておき、リフォームの提案の対象となる居住者ごとにデータベースを読み出すことで、情報入力や演算処理を省略することもできる。このとき、入力用の表示画面ではリフォームに関する内容のみを入力すればよい。
【符号の説明】
【0038】
1…リフォーム時期演算システム1、2…演算装置(使用終了時期推定手段、リフォーム時期演算手段)、3…入力部(入力手段)、4…表示部(出力手段)、5…シート作成部(出力手段)、Z1…第一表示部、Z2…第二表示部、Z3…第三表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のリフォームを行う時期を演算するリフォーム時期演算方法であって、
前記建築物の居住者が当該建築物の使用を終了する使用終了時期に関する情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップで取得した前記使用終了時期に関する情報に基づいて、当該使用終了時期を推定する使用終了時期推定ステップと、
前記使用終了時期推定ステップによって推定された前記使用終了時期から、前記リフォームに伴って新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期に基づいて、前記リフォームの時期を演算するリフォーム時期演算ステップと、を有することを特徴とするリフォーム時期演算方法。
【請求項2】
前記リフォーム時期演算ステップにおいて、前記建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報、または前記居住者に関する情報に基づいて、前記リフォームの時期を演算することを特徴とする請求項1記載のリフォーム時期演算方法。
【請求項3】
建築物のリフォームを行う時期を演算するリフォーム時期演算システムであって、
前記建築物の居住者が当該建築物の使用を終了する使用終了時期に関する情報が入力される入力手段と、
前記入力手段によって入力された前記使用終了時期に関する情報に基づいて、当該使用終了時期を推定する使用終了時期推定手段と、
前記使用終了時期推定手段によって推定された前記使用終了時期から、前記リフォームに伴って新設される設備機器の耐用年数を遡ることによって得られる時期に基づいて、前記リフォームの時期を演算するリフォーム時期演算手段と、
前記リフォーム時期演算手段によって演算された前記リフォームの時期を出力する出力手段と、を備えることを特徴とするリフォーム時期演算システム。
【請求項4】
建築物のリフォームを行う時期を提案するリフォーム時期提案シートであって、
前記建築物の耐久性を維持するためのメンテナンスに関する情報を表示する第一表示部と、
前記建築物の居住者に関する情報を表示する第二表示部と、
請求項1または2記載のリフォーム時期演算方法によって演算された前記リフォームの時期、あるいは請求項3記載のリフォーム時期演算システムによって演算された前記リフォームの時期を表示する第三表示部と、を有することを特徴とするリフォーム時期提案シート。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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