説明

リフレクタおよび試験装置

【課題】電磁波ならびに赤外線、可視光あるいは紫外線の双方を用いた試験を行い得るリフレクタおよび試験装置を提供すること。
【解決手段】この試験装置1は、電波を発するRF波源4と、RF波源4からの電波を反射するリフレクタ2と、リフレクタ2に対して正対する位置に配置される電波センサー31とを含み、RF波源4からの電波がリフレクタ2の前面にて反射されて電波センサー31により検出される。また、試験装置1は、赤外線を発するIR波源5と、電波反射特性および赤外線透過特性を有すると共にリフレクタ2の電波の反射面内に配置される選択性窓21と、IR波源5に対して選択性窓21を挟んで正対する位置に配置される赤外線センサー32とを含み構成される。そして、IR波源5からの赤外線がリフレクタ2の背面側から選択性窓21を透過して赤外線センサー32により検出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リフレクタおよび試験装置に関し、さらに詳しくは、電磁波ならびに赤外線、可視光あるいは紫外線の双方を用いた試験を行い得るリフレクタおよび試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の試験装置(コンパクトレンジ)には、特許文献1に記載される技術が知られている。従来の試験装置は、電磁波的な遠方界を形成するパラボラリフレクタと、少なくとも前記パラボラリフレクタからの入射電磁波を該電磁波の入射方向に反射する無方向性反射体と、前記無方向性反射体を前記パラボラリフレクタに正対する平面内で移動する手段と、送信アンテナと受信アンテナが一体化され、該送信アンテナと受信アンテナを前記パラボラリフレクタに向けて前記パラボラリフレクタの焦点に配置されたアンテナモジュールと、前記アンテナモジュールを接続するための送受信源となる2つのポートを有すると共に、前記送信アンテナに供給した高周波電流と前記受信アンテナで受信した高周波電流に対してS21法による演算処理測定を行って該演算処理結果を出力するベクトルネットワークアナライザと、前記無方向性反射体の位置情報を取得して、前記演算処理結果から前記無方向性反射体の位置における電磁波の振幅と位相の情報を取得して出力する手段とを備えている。かかる従来の試験装置は、パラボラリフレクタにより電磁波的な遠方界を形成して、前記パラボラリフレクタに正対する所定平面内の放射界分布を測定できる。
【0003】
しかしながら、電磁波および赤外線の双方を用いた試験を行い得る試験装置は提供されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−315440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、電磁波ならびに赤外線、可視光あるいは紫外線の双方を用いた試験を行い得るリフレクタおよび試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかるリフレクタは、RF波源からの電波を反射するリフレクタであって、電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓を備え、前面側から入射した電波を反射すると共に、背面側から入射した赤外線、可視光あるいは紫外線を前記選択性窓にて前面側に透過させることを特徴とする。
【0007】
このリフレクタは、電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓を有するので、例えば、電磁波ならびに赤外線、可視光あるいは紫外線の双方を行い得る試験装置に適用され得る利点がある。
【0008】
また、この発明にかかる前記選択性窓は、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する基材部に導電性コーティングから成るシールド部が形成されることにより、構成される。
【0009】
このリフレクタでは、赤外線、可視光あるいは紫外線が基材部を透過し、また、電波が導電性コーティングから成るシールド部により反射される。これにより、電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓が構成される。
【0010】
また、この発明にかかるリフレクタでは、前記選択性窓は、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する基材部にメタルメッシュから成るシールド部が形成されることにより、構成される。
【0011】
このリフレクタでは、赤外線、可視光あるいは紫外線が基材部を透過し、また、電波がメタルメッシュから成るシールド部により反射される。これにより、電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓が構成される。
【0012】
また、この発明にかかるリフレクタは、前記選択性窓は、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する基材部にメタルグリッドから成るシールド部が形成されることにより、構成される。
【0013】
このリフレクタでは、赤外線、可視光あるいは紫外線が基材部を透過し、また、電波がメタルグリッドから成るシールド部により反射される。これにより、電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓が構成される。
【0014】
また、この発明にかかるリフレクタでは、前記選性窓は、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する基材部に対してドープ処理が施されることにより、構成される。
【0015】
このリフレクタでは、赤外線、可視光あるいは紫外線が基材部を透過し、また、基材部ではドープ処理により導電性が付与されているので電波が反射される。これにより、電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓が構成される。
【0016】
また、この発明にかかる試験装置では、上記のいずれかに記載のリフレクタと、電波を発するRF波源と、赤外線、可視光あるいは紫外線を発するIR波源とを含み、且つ、前記RF波源からの電波がリフレクタの前面にて反射され、前記IR波源からの赤外線、可視光あるいは紫外線がリフレクタの背面側から選択性窓を透過し、これらの電波、赤外線、可視光あるいは紫外線にかかる模擬遠方界領域が形成されることを特徴とする。
【0017】
この試験装置では、RF波源およびIR波源の双方が設置されており、また、リフレクタが電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓を有するので、電磁波ならびに赤外線、可視光あるいは紫外線の双方を用いた試験を行い得る利点がある。なお、電磁波を用いた試験と、赤外線、可視光あるいは紫外線を用いた試験とは、同時に行われても良いし、別個独立して行われても良い。
【0018】
また、この発明にかかる試験装置は、前記リフレクタがパラボラリフレクタから成り、且つ、前記RF波源から発された球面波状の電波が前記リフレクタにより平面波に変換されて反射されることにより、擬似遠方界の電波環境が前記リフレクタ近傍に形成される。
【0019】
この試験装置では、リフレクタがパラボラリフレクタから成り、擬似遠方界の電波環境がリフレクタ近傍に形成される。これにより、コンパクトレンジが構成されて、短いレンジ距離Rでの電波測定が可能となる利点がある。
【発明の効果】
【0020】
この発明にかかるリフレクタでは、電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓が設置されているので、例えば、電磁波ならびに赤外線、可視光あるいは紫外線の双方を行い得る試験装置に適用され得る利点がある。
【0021】
また、この発明にかかる試験装置では、RF波源およびIR波源の双方が設置されており、また、リフレクタが電波反射特性ならびに赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓を有するので、電磁波ならびに赤外線、可視光あるいは紫外線の双方を用いた試験を行い得る利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的同一のものが含まれる。また、この実施例に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【実施例】
【0023】
図1は、この発明の実施例1にかかる試験装置を示す構成図である。図2〜図7は、図1に記載した試験装置の選択性窓を示す説明図である。この試験装置1は、電磁波ならびに赤外線、可視光あるいは紫外線の双方を用いた試験を行い得る点に特徴を有する。この実施例では、試験装置1の一例として、電磁波および赤外線の双方を用いた試験を行い得るコンパクトレンジについて説明する。また、赤外線に代えて、可視光あるいは紫外線が使用されても良い。例えば、この試験装置1は、電磁波および可視光の双方を用いた試験、あるいは、電磁波および紫外線の双方を用いた試験を行い得るように構成されても良い(図示省略)。
【0024】
[コンパクトレンジ]
アンテナ/レドームの測定やRCS(Radar Cross Section:レーダ散乱断面積)の測定を行う環境としては、高所レンジ(Elevated Range)、スラントレンジ(Slant Range)、電波暗室(Anechoic Chamber)などがある(図示省略)。これらの環境では、いずれにおいても平面波近似を行う環境、すなわち、クワイエットゾーン(擬似遠方界)の条件としてのレンジ距離R(リフレクタから受信アンテナあるいは供試体までの距離)が必要となる。このレンジ距離Rは、この範囲での波面の位相変動Δがλ/16以下(すなわち、π/8[rad]=22.5[deg])であることから、受信アンテナあるいは供試体の寸法Dを用いて、R≧2D2/λとなる。
【0025】
例えば、システムのアンテナ径が915[mm]、最小波長が約25[mm]である場合には、レンジ距離Rとして約67[m]が必要となる。しかし、かかるレンジ距離Rを有する試験装置では、一般に電波暗室として屋内に設置することが困難である。
【0026】
このため、試験装置では、かかるスペース上の問題点を解決するために、コンパクトレンジが用いられる。コンパクトレンジでは、パラボラリフレクタの使用により電波がコリメートされ、波源から生ずる球面波が平面波に変換される。これにより、擬似遠方界がリフレクタの照射領域に形成されるので、短いレンジ距離Rでの電波測定が可能となる。
【0027】
[試験装置]
この試験装置1は、リフレクタ2と、検出手段3と、RF波源4と、IR波源5と、計測装置6と、制御装置7とを含み構成される(図1参照)。
【0028】
リフレクタ2は、RF波源4が発する球面波状の電波を平面波に変換して、検出手段3側に反射する機能を有する。このリフレクタ2は、例えば、パラボラリフレクタにより構成される。また、リフレクタ2は、選択性窓21を有する。この選択性窓21は、電波反射特性あるいは赤外線透過特性(可視光透過特性あるいは紫外線透過特性。以下同じ。)を有し、リフレクタ2の電波反射面内であって検出手段3に正対する位置(略中央)に配置される。リフレクタ2は、この選択性窓21を介してIR波源5が発する赤外線(可視光あるいは紫外線。以下同じ。)を背面側から前面側(検出手段3側)に透過させ得る。なお、選択性窓21の構成については、後述する。
【0029】
検出手段3は、電波センサー31および赤外線センサー(可視光センサーあるいは紫外線センサー。以下同じ。)32の双方を含み構成され、リフレクタ2に対して正対する位置に配置される。この検出手段3では、例えば、電波センサー31がミリ波レーダにより構成され、赤外線センサー32がパッシブ赤外線センサーにより構成される。なお、図1中では、電波センサー31および赤外線センサー32が単一構造の検出手段3として表示されているが、これらが別個に分離されて配置されても良い(図示省略)。また、例えば、試験装置1がミサイルシュミレータ・システムである場合には、検出手段3が近距離用ミサイルなどの供試体に搭載されて配置される(図示省略)。
【0030】
RF波源4は、電波(RF:Radio Frequency)を発する波源であり、リフレクタ2の焦点位置に配置される。IR波源5は、赤外線(IR:Infra Red)を発する波源であり、リフレクタ2の背面側であって選択性窓21を挟んで検出手段3に正対する位置に配置される。言い換えると、IR波源5と検出手段3(赤外線センサー32)とを結ぶ直線上に、リフレクタ2の選択性窓21が位置する。このIR波源5は、例えば、IRイメージャや熱源により構成される。
【0031】
計測装置6は、検出手段3、RF波源4およびIR波源5に接続されており、検出手段3により検出された電波あるいは赤外線のデータ(例えば、位相や振幅)を処理する。この計測装置6は、例えば、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(Vector Network Analyzer)を含み構成される。制御装置7は、計測装置6に接続されており、計測装置6から取得した電波あるいは赤外線のデータやユーザーからの外部入力に基づいて、RF波源4およびIR波源5の制御や他の付加的な要素(図示省略)の制御を行う。この制御装置7は、例えば、PC(personal computer)により構成される。
【0032】
この試験装置1において、まず、電波を用いた試験では、RF波源4が球面波状の電波を発し、この電波がリフレクタ2にて平面波に変換されて検出手段3側に反射される(図1参照)。これにより、擬似遠方界の電波環境がリフレクタの照射領域に形成され、この電波を検出手段3が検出する。一方、赤外線を用いた試験では、IR波源5が赤外線を発し、この赤外線がリフレクタ2の背面側から選択性窓21を透過して検出手段3により検出される。そして、電波および赤外線の検出結果に基づいて、計測装置6および制御装置7により、所定の処理および制御が行われる。
【0033】
[効果]
この試験装置1では、上記のように、RF波源4およびIR波源5の双方が設置されており、また、リフレクタ2が電波反射特性および赤外線透過特性を有する選択性窓21を有する。そして、RF波源4からの電波がリフレクタ2の前面にて反射されて検出手段3(電波センサー31)により検出される。また、IR波源5からの赤外線がリフレクタ2の背面側から選択性窓21を透過して検出手段3(赤外線センサー32)により検出される。これにより、電磁波および赤外線の双方を用いた試験を行い得る利点がある。なお、電磁波を用いた試験と、赤外線を用いた試験とは、同時に行われても良いし、別個独立して行われても良い。
【0034】
この試験装置1では、リフレクタ2がパラボラリフレクタから成り、擬似遠方界の電波環境がリフレクタ2の照射領域(電波センサー31の前方)に形成される。これにより、コンパクトレンジが構成されて、短いレンジ距離R(リフレクタ2から電波センサー31までの距離)での電波測定が可能となる利点がある。
【0035】
[リフレクタ]
また、この試験装置1を構成するリフレクタ2は、電波反射特性および赤外線透過特性を有する選択性窓21を備え、前面側のRF波源4から入射した電波を反射すると共に、背面側のIR波源5から入射した赤外線を選択性窓21にて前面側に透過させる。これにより、電磁波および赤外線の双方を用いた試験を行い得る利点がある。また、リフレクタ2がパラボラリフレクタから成る構成では、擬似遠方界の電波環境がリフレクタ2の照射領域に形成される。これにより、コンパクトレンジが構成されて、短いレンジ距離Rでの電波測定が可能となる利点がある。
【0036】
[選択性窓]
ここで、リフレクタ2の選択性窓21は、赤外線透過特性を有する基材部(窓材)の表面に、電波を反射するシールド部が形成されることにより構成される(図示省略)。赤外線透過特性を有する基材部は、例えば、Ge、ZnSe、ZnS、GaAs、Diamond、Sapphire等により構成される。シールド部は、例えば、インジウム錫、その他の導電性材料のコーティング(導電性コーティング)により形成される。
【0037】
かかる構成では、赤外線が基材部を透過可能であり、また、電波が導電性コーティングから成るシールド部により反射される。これにより、赤外線透過特性および電波反射特性を有する選択性窓21が構成される。
【0038】
また、一般に、選択性窓21の表面抵抗は、電波のシールド性能に対して所定の相関性を有する(図2参照)。また、電波のシールド性能は、電波の反射性能に対して相対関係にある。例えば、選択性窓21が20[dB]のシールド性能を有する場合には、選択性窓21を透過する電磁波(電波)が1[%]となる。すなわち、ほぼ99[%]の電波が選択性窓21によって反射される。また、選択性窓21が10[dB]のシールド性能を有する場合には、透過する電磁波が10[%]となり、90[%]の電波が反射される。
【0039】
したがって、選択性窓21は、電波のシールド性能との相互関係を考慮しつつ、その表面抵抗が選択されることが好ましい。例えば、電磁波の反射性能を90[%]以上とするのであれば、選択性窓21の表面抵抗を50[Ω/□]以下とすることが好ましい。これにより、十分な電波反射特性を得られるので、電波測定を良好に行い得る利点がある。
【0040】
[変形例1]
なお、この試験装置1では、選択性窓21のシールド部211が、メタルメッシュにより構成されても良い(図3参照)。すなわち、選択性窓21は、赤外線透過特性を有する基材部の表面にメタルメッシュ(シールド部211)が形成されることにより、構成されても良い。かかるシールド部211は、例えば、CVD法(chemical vapor deposition)、PVD法(physical vapor deposition)、その他の薄膜形成法により形成される。
【0041】
かかる構成では、赤外線が基材部を透過可能であり、また、電波がメタルメッシュから成るシールド部211により反射される。これにより、赤外線透過特性および電波反射特性を有する選択性窓21が構成される。また、かかる構成は、導電性コーティングによりシールド部が形成される選択性窓21と比較して、製造が容易な点で好ましい。
【0042】
ここで、透過すべき赤外線の波長に対して開口幅Wが十分に大きい(例えば、数倍以上の波長を有する)場合には、赤外線の透過率が(シールド部211の開口部212の総面積)/(シールド部211の総面積)により与えられる。また、選択性窓21のシールド部211が正方形を有する格子状に形成される場合(図3参照)には、シールド部211の開口周期Pを用いて、赤外線の透過率が約(W/P)2となる。
【0043】
したがって、シールド部211の開口幅W(開口部212の総面積)は、上記の点を踏まえつつ必要な赤外線の透過率に応じて、適宜選択されることが好ましい。ただし、シールド部211の開口幅Wは、電波(マイクロ波)の波長と比較して、十分に小さいことを要する。具体的には、開口幅Wが電波の波長λに対してW≦λ/10であることが好ましい。
【0044】
また、シールド部211は、基材部表面に形成された導電性薄膜に対して所望の赤外線の波長に応じた開口部(共振孔)212が形成されることにより、構成されても良い(図4参照)。かかる構成では、FSS(Frequency Selective Surface:周波数選択的表面)を有する選択性窓21が構成される。これにより、透過可能な赤外線の帯域を任意に選択できるので、赤外線の透過率が低下し難い選択性窓21を任意に構成できる利点がある。なお、赤外線の波長と透過率とは、図5に示す関係を有する。
【0045】
[変形例2]
また、この試験装置1では、選択性窓21のシールド部211がメタルグリッドにより構成されても良い(図6参照)。すなわち、選択性窓21は、赤外線透過特性を有する基材部213にメタルグリッド(シールド部)211が形成されることにより、構成されても良い。かかるシールド部211は、メタルメッシュの場合と同様に、CVD法、PVD法、リソグラフ、その他の薄膜形成法により形成される。
【0046】
かかる構成では、赤外線が基材部を透過可能であり、また、電波がメタルグリッドから成るシールド部211により反射される。これにより、赤外線透過特性および電波反射特性を有する選択性窓21が構成される。また、かかる構成は、基材部213への導電性コーティングにより選択性窓21が形成される構成と比較して、製造が容易な点で好ましい。なお、選択性窓21の表面には、さらに、アルミナ層その他の保護層214が形成されても良いし、さらに、その表面に非反射層215が形成されても良い。
【0047】
[変形例3]
また、この試験装置1では、選択性窓21が、赤外線透過特性を有する基材部に対してドープ処理が施されることにより、構成されても良い(図示省略)。具体的には、GaAsあるいはGeから成る基材部に対してドープ処理が施されることにより、基材部上に導電性が付与されてシールド部が形成される。
【0048】
かかる構成では、赤外線が基材部を透過可能であり、また、基材部ではドープ処理により導電性が付与されているので電波が反射される。これにより、赤外線透過特性および電波反射特性を有する選択性窓21が構成される。
【0049】
また、例えば、GaAsの基材部にドープ処理を施して成る選択性窓21では、赤外線の透過率と電波の周波数とが図7に示す関係を有する。同図に示すように、かかる構成では、電波の周波数を109[Hz]以下とすることにより、選択性窓21における電波の反射率が向上する。これにより、選択性窓21の赤外線透過特性および電波反射特性を高い次元で両立できる利点がある。
【0050】
[適用例]
【0051】
この実施例では、試験装置1がコンパクトレンジに適用される場合について説明した。しかし、これに限らず、この試験装置1は、放射界分布の測定試験、アンテナの特性試験、マルチスペクトル特性試験、その他の試験を行う試験装置に適用されても良い。かかる他の試験装置への適用は、当業者自明の範囲内にて任意に為し得る。
【0052】
例えば、近距離用ミサイルでは、そのセンサーとしてパッシブ赤外線(PIR:Passive Infra Red)が多く用いられる。かかる近距離用ミサイルの性能やセンサーの性能を実証するための試験装置には、赤外線イメージャや黒体炉を備えた三軸あるいは五軸のミサイルシュミレータ・システムが知られている(防衛庁技本3研ホームページ参照:http://www.jda-trdi.go.jp/japanese/3rdj.html)。ミサイルシュミレータ・システムは、ミサイルのフィジカル・シュミレーション試験を評価するための装置であり、フライトテーブル、アンテナアレイ、電波暗室およびシュミレーション計算機により構成される。このミサイルシュミレータ・システムは、例えば、光波誘導ミサイルの誘導制御装置の試験に使用される。
【0053】
ここで、近年の近距離用ミサイルでは、ミリ波等を検出する電波センサーを赤外線センサーと共に搭載する機運が高まっている。しかしながら、従来のミサイルシュミレータ・システムでは、赤外線および電波の双方について同時シュミレーションを行うことができない。このため、赤外線に対する性能評価と、電波に対する性能評価とは、別々の試験装置により行われていた。例えば、赤外線に対する性能評価は、上記のミサイルシュミレータ・システムでの性能試験により行われ、電波に対する性能評価は、電波暗室での性能試験により行われていた。
【0054】
この点において、この試験装置1は、赤外線および電波の双方を用いてシュミレーションを行い得るので、かかるミサイルシュミレータ・システムに適用されることが特に好ましい。これにより、評価試験およびデータ解析の精度が著しく向上すると共に、開発効率が飛躍的に向上する利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかるリフレクタおよび試験装置は、電磁波および赤外線の双方を用いた試験を行い得る点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の実施例1にかかる試験装置を示す構成図である。
【図2】図1に記載した試験装置の選択性窓を示す説明図である。
【図3】図1に記載した試験装置の選択性窓を示す説明図である。
【図4】図1に記載した試験装置の選択性窓を示す説明図である。
【図5】図1に記載した試験装置の選択性窓を示す説明図である。
【図6】図1に記載した試験装置の選択性窓を示す説明図である。
【図7】図1に記載した試験装置の選択性窓を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 試験装置
2 リフレクタ
21 選択性窓
211 シールド部
212 開口部
213 基材部
214 保護層
215 非反射層
3 検出手段
31 電波センサー
32 赤外線センサー
4 RF波源
5 IR波源
6 計測装置
7 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF波源からの電波を反射するリフレクタであって、
電波反射特性、ならびに、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する選択性窓を備え、前面側から入射した電波を反射すると共に、背面側から入射した赤外線、可視光あるいは紫外線を前記選択性窓にて前面側に透過させることを特徴とするリフレクタ。
【請求項2】
前記選択性窓は、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する基材部に導電性コーティングから成るシールド部が形成されることにより、構成される請求項1に記載のリフレクタ。
【請求項3】
前記選択性窓は、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する基材部にメタルメッシュから成るシールド部が形成されることにより、構成される請求項1に記載のリフレクタ。
【請求項4】
前記選択性窓は、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する基材部にメタルグリッドから成るシールド部が形成されることにより、構成される請求項1に記載のリフレクタ。
【請求項5】
前記選性窓は、赤外線透過特性、可視光透過特性あるいは紫外線透過特性を有する基材部に対してドープ処理が施されることにより、構成される請求項1に記載のリフレクタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のリフレクタと、電波を発するRF波源と、赤外線、可視光あるいは紫外線を発するIR波源とを含み、且つ、
前記RF波源からの電波がリフレクタの前面にて反射され、前記IR波源からの赤外線、可視光あるいは紫外線がリフレクタの背面側から選択性窓を透過し、これらの電波、赤外線、可視光あるいは紫外線にかかる模擬遠方界領域が形成されることを特徴とする試験装置。
【請求項7】
前記リフレクタがパラボラリフレクタから成り、且つ、前記RF波源から発された球面波状の電波が前記リフレクタにより平面波に変換されて反射されることにより、擬似遠方界の電波環境が前記リフレクタ近傍に形成される請求項6に記載の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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