説明

リブ付きセメント系パネルの製造方法、リブ付きセメント系パネル、および構造物の製造方法

【課題】仕様の異なる多数の型枠を準備しなくても各種仕様のリブ付きセメント系パネルを製造することのできる製造方法、かかる方法で得たリブ付きセメント系パネル、およびかかるリブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法を提供すること。
【解決手段】リブ付きセメント系パネル1Aを製造するにあたって、予めパネル本体11を形成しておき、かかるパネル本体11の面上にリブ形成用の型枠21を配置した後、型枠21により区画されたリブ形成領域内に未硬化のセメント系材料16を充填し、硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リブ付きセメント系パネルの製造方法、リブ付きセメント系パネル、および当該リブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木製パネルやプラスチックパネルと同様、セメント系パネルにおいても、板状のパネル本体の面上にリブを形成すれば、強度を向上することができる。しかしながら、パネル本体とリブとを別々に形成した後、それらを接着剤などで接合してリブ付きセメント系パネルを形成しても、パネル本体とリブとの接合強度が低い。そこで、パネル本体を形成すべき型枠にリブを形成すべき部分を追加し、パネル本体とリブとを一体形成することが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−16478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、建築、土木などの分野で求められるセメント系パネルでは、パネル本体の厚さや大きさ、リブの幅、高さ、本数などが多岐にわたっているため、型枠内でパネル本体とリブとを一体形成する方法では、仕様の異なる多数の型枠を準備する必要があり、効率が悪いという問題点がある。
【0004】
また、リブ付きセメント系パネルの場合、リブ無しのセメント系パネルに比較して嵩張るため、輸送コストが大幅に増大するという問題がある。
【0005】
さらに、従来は、製造上の制約から、リブ付きセメント系パネルとしては、パネル本体が平板状のものしか製造できず、トンネルの内壁など、湾曲した面を構成するのに使用できるリブ付きセメント系パネルについては提供できないという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、仕様の異なる多数の型枠を準備しなくても各種仕様のリブ付きセメント系パネルを製造することのできる製造方法、かかる方法で得たリブ付きセメント系パネル、およびかかるリブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の課題は、トンネルの内壁など、湾曲した面を構成するのにも使用できるリブ付きセメント系パネルの製造方法、かかる方法で得たリブ付きセメント系パネル、およびかかるリブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、セメント系材料からなるパネル本体と、該パネル本体にセメント系材料により形成されたリブと、を有するリブ付きセメント系パネルの製造方法において、前記パネル本体を形成した後、当該パネル本体の面上に、前記リブを形成するための型枠を配置する型枠配置工程と、前記型枠により区画されたリブ形成領域内に未硬化のセメント系材料を充填する充填工程と、当該未硬化のセメント系材料を硬化させる硬化工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るリブ付きセメント系パネルは、セメント系材料からなる板状のパネル本体と、該パネル本体に打設してなるセメント系材料により形成されたリブと、を有することを特徴とする。すなわち、本発明に係るリブ付きセメント系パネルにおいて、リブはパネル本体に接着などにより付加した構成や、リブとパネル本体とを一体成形した構成ではなく、パネル本体の上に打設してリブを形成してなることを特徴とする。
【0010】
本発明では、予めパネル本体を形成しておき、かかるパネル本体の面上にリブ形成用に型枠を配置した後、型枠により区画されたリブ形成領域内に未硬化のセメント系材料を充填し、硬化させて、リブ付きセメント系パネルを製造する。このため、型枠内でパネル本体とリブとを同時形成する場合と違って、リブ付きセメント系パネルの仕様毎の型枠を準備しておく必要がない。すなわち、リブ付きセメント系パネルを形成する場合、およびリブ無しのセメント系パネルを形成する場合のいずれにおいても、パネル本体を形成する際には共通の型枠を用いることができるので、生産効率が高い。また、セメント系材料同士は接合強度が極めて高いので、リブがパネル本体の面上から脱落することがない。さらに、リブについては、リブ付きセメント系パネルを使用する現場で形成してもよく、かかる方法を採用すれば、リブ無しの状態でパネル本体を輸送すればよい。かかる方法によれば、輸送の際、パネル本体は、リブ無しの状態であるので、嵩張らず、輸送コストを低減することができる。
【0011】
本発明は、前記パネル本体が平板状である場合の他、前記パネル本体が湾曲している場合にも適用することができる。すなわち、本発明によれば、湾曲したパネル本体と、湾曲した型枠さえ準備することができれば、パネル本体が湾曲したリブ付きセメント系パネルを容易に製造することができる。リブ付きセメント系パネルにおいて、パネル本体が湾曲している場合には、トンネルの内壁などといった湾曲した面を効率よく構成するのに用いることができる。
【0012】
特に本発明をパネル本体が湾曲している場合に適用すると、セメント系パネルの強度を大幅に高めることができる。
【0013】
本発明において、前記パネル本体が湾曲している場合、前記リブは、前記パネル本体の両面のうち、湾曲により凸面になっている側、あるいは凹面になっている側のいずれに形成してもよい。
【0014】
本発明において、前記型枠は、前記リブを形成する領域を挟んで対向する位置の各々に配置される長尺部材であることが好ましい。このように構成すると、長尺部材を配置する際の対向距離を調整するだけで所望の幅寸法をもったリブを形成することができる。
【0015】
本発明において、前記型枠配置工程と前記充填工程とを行なった後、前記型枠上に別の前記パネル本体を配置し、当該別のパネル本体に対して前記型枠配置工程と前記充填工程とを行なうことが好ましい。このように形成すると、パネル本体を積み上げながら、リブ付きセメント系パネルを製造するので、狭いスペースでも、リブ付きセメント系パネルを効率よく製造することができる。
【0016】
本発明を適用したリブ付きセメント系パネルは、リブで挟まれた空間内をセメント系材料で埋めることなく使用することができるとともに、リブで挟まれた空間内をセメント系材料で埋めて使用することができる。後者の形態で構造物を製造する場合、前記リブの表面にシートを重ね、該シートと前記パネル本体との間にセメント系材料を充填した後、当該セメント系材料を硬化させることが好ましい。このように構成すると、リブで挟まれた空間内にセメント系材料を効率よく充填することができる。
【0017】
また、本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法では、予め構成された覆工面の側に前記リブを向けるように前記リブ付きセメント系パネルを配置するリブ付きセメント系パネル配置工程と、前記リブ付きセメント系パネルと前記覆工面とを固定するリブ付きセメント系パネル固定工程と、有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る構造物を製造方法では、構造物を新規に構成する場合の他、既設の構造物の修復にも適用することができる。この場合、前記覆工面は、予め構築された構造物の破損個所である。
【0019】
本発明において、前記リブ付きセメント系パネル固定工程では、前記リブと前記覆工面とを固定することが好ましい。リブ付きセメント系パネルでは、リブが形成された部分の強度が高いので、リブと覆工面とを固定すれば、リブ付きセメント系パネルを強固に覆工面に固定することができる。
【0020】
この場合、前記リブ付きセメント系パネル固定工程では、前記リブと前記覆工面とを接着剤により固定する構成を採用することができる。かかる構成の場合、覆工面の表面に多少の凹凸があっても、凹部に接着剤が入り込むので、不陸部分が発生しない。それ故、リブ付きセメント系パネルを強固に覆工面に固定することができる。
【0021】
本発明において、前記リブ付きセメント系パネル固定工程では、前記リブと前記覆工面とをアンカーボルトにより固定してもよい。かかる構成によれば、覆工面の表面に多少の凹凸があっても、リブ付きセメント系パネルを強固に覆工面に固定することができる。
【0022】
本発明においては、覆工面にリブ付きセメント系パネルを固定した状態で完成とすることができる。
【0023】
また、本発明においては、前記リブ付きセメント系パネルと、前記覆工面との間に未硬化のセメント系材料を充填した後、当該セメント系材料を硬化させてもよい。この場合、前記リブ付きセメント系パネルはそのまま埋設型枠として利用されることになる。
【0024】
本発明において、前記リブ付きセメント系パネル配置工程の前に前記覆工面に対する防水工程を行なっておくことが好ましい。前記防水工程では、例えば、前記覆工面に防水シートを覆う方法を採用することができる。
【0025】
本発明において、前記覆工面は、例えば、トンネルの内壁である。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、予めパネル本体を形成しておき、かかるパネル本体の面上にリブ形成用に型枠を配置した後、型枠により区画されたリブ形成領域内に未硬化のセメント系材料を充填し、硬化させて、リブ付きセメント系パネルを製造する。このため、型枠内でパネル本体とリブとを同時形成する場合と違って、リブ付きセメント系パネルの仕様毎の型枠を準備しておく必要がない。すなわち、リブ付きセメント系パネルを形成する場合、およびリブ無しのセメント系パネルを形成する場合のいずれにおいても、パネル本体を形成する際には共通の型枠を用いることができるので、生産効率が高い。また、セメント系材料同士は接合強度が極めて高いので、リブがパネル本体の面上から脱落することがない。さらに、リブについては、リブ付きセメント系パネルを使用する現場で形成してもよく、かかる方法を採用すれば、リブ無しの状態でパネル本体を輸送すればよい。かかる方法によれば、輸送の際、パネル本体は、リブ無しの状態であるので、嵩張らず、輸送コストを低減することができる。
【0027】
また、本発明に係るリブ付きセメント系パネルにおいて、パネル本体は湾曲していることを特徴とする。かかるリブ付きセメント系パネルによれば、トンネルの内壁などといった湾曲した面を効率よく構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の実施の形態1に係るリブ付きセメント系パネルの製造方法を示す説明図である。
【図2】(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の実施の形態2に係るリブ付きセメント系パネルの製造方法を示す説明図である。
【図3】(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の実施の形態3に係るリブ付きセメント系パネルの製造方法を示す説明図である。
【図4】(A)、(B)は各々、本発明の実施の形態4に係るリブ付きセメント系パネルの製造方法を示す斜視図および断面図である。
【図5】本発明の実施の形態5に係るリブ付きセメント系パネルの斜視図である。
【図6】本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを使用した構造物の製造方法1を示す説明図である。
【図7】本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを使用した構造物の製造方法2を示す説明図である。
【図8】本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを使用した構造物の製造方法3を示す説明図である。
【図9】本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを使用した構造物の製造方法4を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係るリブ付きセメント系パネルの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したリブ付きセメント系パネル、その製造方法、および使用方法などを説明する。
【0030】
[実施の形態1]
(構成および製造方法)
図1(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の実施の形態1に係るリブ付きセメント系パネルの製造方法を示す説明図である。
【0031】
図1(D)に示すように、本形態のリブ付きセメント系パネル1Aは、セメント系材料からなるパネル本体11と、このパネル本体11の一方の面110上にセメント系材料により形成された複数本のリブ16Aとを有しており、本形態において、パネル本体11は平板状である。かかるリブ付きセメント系パネル1Aにおいて、リブ16Aはパネル本体11に接着などにより付加した構成や、パネル本体11と一体成形した構成ではなく、パネル本体11の上にセメント系材料を打設してなる。
【0032】
本形態において、パネル本体11は、例えば、長さが1200mm、幅が910mm、板厚が4mmであり、リブ16Aは、幅が20mm、高さが40mmである。かかる構成のリブ付きセメント系パネル1Aは、リブ16Aを形成した分、リブ16Aを形成しないパネル本体11単体の状態に比較して、矢印Aで示す方向の曲げに対する強度が強い。特に、パネル本体11の板厚が4mmと薄いが、かかる板厚よりも幅寸法および高さ寸法が大きなリブ16Aを形成したので、軽量である割には強度が強い。
【0033】
かかるリブ付きセメント系パネル1Aを製造するには、図1(A)に示すように、予め、モルタルやコンクリートなどのセメント系材料でパネル本体11を形成しておく。次に、図1(B)に示すように、型枠配置工程では、パネル本体11の一方の面110上に、リブ16Aを形成するための型枠21を配置する。本形態において、型枠21は、リブ16Aを形成する領域を挟んで対向する位置の各々に配置される長尺部材であり、本形態では、1本のリブ16Aを形成するにあたって、2本の型枠21(長尺部材)が用いられている。その際、2本の型枠21の対向距離は、形成すべきリブ16Aの幅寸法に設定される。かかる対向距離の設定は、例えば、2本の型枠21の間にスペーサ(図示せず)を配置することによって容易かつ確実に行うことができる。型枠21としては、例えば、角パイプを用いることができ、かかる角パイプの端部とパネル本体11とを挟むようにクリップを取り付ければ、型枠21(角パイプ)をパネル本体11に取り付けた状態を保持できる。型枠21としては、角パイプの他、角棒や板材、断面L字形のアングルなどを用いることができる。
【0034】
次に、図1(C)に示すように、充填工程では、型枠21により区画されたリブ形成領域内に、モルタルやコンクリートなどの未硬化のセメント系材料16を充填する。その際、セメント系材料16は未硬化であっても粘性が高いので、リブ形成領域の両端が開放状態であっても、流出することはない。但し、リブ形成領域の両端を遮蔽部材で塞いだ状態で充填工程を行なってよい。
【0035】
次に、硬化工程では、未硬化のセメント系材料を硬化させ、しかる後に、脱型工程において、パネル本体11から型枠21を取り外す。その結果、図1(D)に示すリブ付きセメント系パネル1Aを得ることができる。
【0036】
(本形態の主な効果)
このように本形態では、予めパネル本体11を形成しておき、かかるパネル本体11の面上にリブ形成用の型枠21を配置した後、型枠21により区画されたリブ形成領域内に未硬化のセメント系材料16を充填し、硬化させて、リブ付きセメント系パネル1Aを製造する。このため、型枠内でパネル本体11とリブ16Aとを同時形成する場合と違って、リブ付きセメント系パネル1Aの仕様毎の型枠を準備しておく必要がない。すなわち、リブ付きセメント系パネル1Aを形成する場合、およびリブ無しのセメント系パネルを形成する場合のいずれにおいても、パネル本体11を形成する際には共通の型枠を用いることができるので、生産効率が高い。また、パネル本体11に対してリブ16Aを後で形成する場合でも、セメント系材料同士は接合強度が極めて高いので、リブ16Aがパネル本体11から脱落することがない。さらに、リブ16Aについては、リブ付きセメント系パネル1Aを使用する現場で形成してもよく、かかる方法を採用すれば、リブ無しの状態でパネル本体11を輸送することができる。かかる方法によれば、輸送の際、パネル本体11は、リブ無しの状態であるので、パネル本体11同士を重ねれば嵩張らず、輸送コストを低減することができる。
【0037】
[実施の形態2]
図2(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の実施の形態2に係るリブ付きセメント系パネルの製造方法を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して説明する。
【0038】
図2(D)に示すように、本形態のリブ付きセメント系パネル1Bは、セメント系材料からなるパネル本体12と、このパネル本体12の一方の面120上にセメント系材料により形成された複数本のリブ16Bとを有している。
【0039】
本形態において、パネル本体12は一方方向に湾曲した曲状であり、リブ16Bは、パネル本体12の両面のうち、湾曲方向とは反対側(側端部が向いている方向と反対側)に位置する一方の面120(凸面)上において、湾曲したパネル本体12の尾根を跨ぐように形成されている。かかるリブ付きセメント系パネル1Bにおいて、リブ16Bはパネル本体12に接着などにより付加した構成や、パネル本体12と一体成形した構成ではなく、パネル本体12の上にセメント系材料を打設してなる。
【0040】
かかる構成のリブ付きセメント系パネル1Bは、リブ16Bを形成した分、リブ16Bを形成しないパネル本体12単体の状態に比較して、矢印Bで示す面外方向からの圧力に対する強度が強い。
【0041】
特にパネル本体12は、長さが1200mm、幅が910mm、板厚が4mmであり、リブ16Bは、幅が20mm、高さが40mmであり、パネル本体12の板厚が4mmと薄いが、かかる板厚よりも幅寸法および高さ寸法が大きなリブ16Bを形成したので、軽量である割りには強度が強い。
【0042】
かかるリブ付きセメント系パネル1Bを製造するには、図2(A)に示すように、予め、モルタルやコンクリートなどのセメント系材料で湾曲したパネル本体12を形成しておく。次に、図2(B)に示すように、型枠配置工程では、パネル本体12の一方の面120上に、リブ16Bを形成するための型枠22を配置する。本形態において、型枠22は、リブ16Bを形成する領域を挟んで対向する位置の各々に配置される長尺部材であり、本形態でも、実施の形態1と同様、1本のリブ16Bを形成するにあたって、2本の型枠22(長尺部材)が用いられている。その際、2本の型枠22の対向距離は、形成すべきリブ16Bの幅寸法に設定される。かかる対向距離の設定は、例えば、2本の型枠22の間にスペーサ(図示せず)を配置することによって容易かつ確実に行うことができる。型枠22としては、例えば、湾曲した角パイプなどを用いることができ、かかる角パイプの端部とパネル本体12とを挟むようにクリップを取り付ければ、型枠22(角パイプ)をパネル本体12に取り付けた状態を保持できる。型枠22としては、角パイプの他、角棒や板材などを用いることができる。
【0043】
次に、図2(C)に示すように、充填工程では、型枠22により区画されたリブ形成領域内に、モルタルやコンクリートなどの未硬化のセメント系材料16を充填する。その際、セメント系材料16は未硬化であっても粘性が高いので、リブ形成領域の両端が開放状態であっても、流出することはない。但し、リブ形成領域の両端を遮蔽部材で塞いだ状態で充填工程を行なってよい。
【0044】
次に、硬化工程では、未硬化のセメント系材料16を硬化させてリブ16Bを形成し、しかる後に、脱型工程において、パネル本体12から型枠22を取り外す。その結果、図2(D)に示すリブ付きセメント系パネル1Bを得ることができる。
【0045】
このように本形態でも、実施の形態1と同様、予めパネル本体12を形成しておき、かかるパネル本体12の面上にリブ形成用の型枠22を配置した後、型枠22により区画されたリブ形成領域内に未硬化のセメント系材料16を充填し、硬化させて、リブ付きセメント系パネル1Bを製造する。このため、型枠内でパネル本体12とリブ16Bとを同時形成する場合と違って、リブ付きセメント系パネル1Bのリブ16B毎の型枠を準備しておく必要がないので、生産効率が高い。
【0046】
また、パネル本体12に対してリブ16Bを後で形成する場合でも、セメント系材料同士は接合強度が極めて高いので、リブ16Bがパネル本体12から脱落することがない。
【0047】
さらに、リブ16Bについては、リブ付きセメント系パネル1Bを使用する現場で形成してもよく、かかる方法を採用すれば、リブ無しの状態でパネル本体12を輸送することができる。かかる方法によれば、輸送の際、パネル本体12は、リブ無しの状態であるので、パネル本体12同士を重ねれば嵩張らず、輸送コストを低減することができる。
【0048】
[実施の形態3]
図3(A)、(B)、(C)、(D)は、本発明の実施の形態3に係るリブ付きセメント系パネルの製造方法を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して説明する。
【0049】
図3(D)に示すように、本形態のリブ付きセメント系パネル1Cは、セメント系材料からなるパネル本体13と、このパネル本体13の一方の面130上にセメント系材料により形成された複数本のリブ16Cとを有している。
【0050】
本形態において、パネル本体13は一方方向に湾曲した曲状であり、リブ16Cは、パネル本体13の両面のうち、湾曲方向の側(側端部が向いている側)に位置する一方の面130(凹面)上において、湾曲したパネル本体13の底部を跨ぐように形成されている。かかるリブ付きセメント系パネル1Cにおいて、リブ16Cはパネル本体13に接着などにより付加した構成や、パネル本体13と一体成形した構成ではなく、パネル本体13の上にセメント系材料を打設してなる。
【0051】
かかる構成のリブ付きセメント系パネル1Cは、リブ16Cを形成した分、リブ16Cを形成しないパネル本体13単体の状態に比較して、矢印Cで示す面外方向からの圧力に対する強度が強い。
【0052】
かかるリブ付きセメント系パネル1Cを製造するには、図3(A)に示すように、予め、モルタルやコンクリートなどのセメント系材料で湾曲したパネル本体13を形成しておく。次に、図3(B)に示すように、型枠配置工程では、パネル本体13の一方の面130上に、リブ16Cを形成するための型枠23を配置する。本形態において、型枠23は、リブ16Cを形成する領域を挟んで対向する位置の各々に配置される長尺部材であり、本形態でも、実施の形態1と同様、1本のリブ16Cを形成するにあたって、2本の型枠23(長尺部材)が用いられている。その際、2本の型枠23の対向距離は、形成すべきリブ16Cの幅寸法に設定される。かかる対向距離の設定は、例えば、2本の型枠23の間にスペーサ(図示せず)を配置することによって容易かつ確実に行うことができる。型枠23としては、例えば、湾曲した角パイプなどを用いることができ、かかる角パイプの端部とパネル本体13とを挟むようにクリップを取り付ければ、型枠23(角パイプ)をパネル本体13に取り付けた状態を保持できる。型枠23としては、角パイプの他、角棒や板材などを用いることができる。
【0053】
次に、図3(C)に示すように、充填工程では、型枠23により区画されたリブ形成領域内に、モルタルやコンクリートなどの未硬化のセメント系材料16を充填する。その際、セメント系材料16は未硬化であっても粘性が高く、かつ、リブ形成領域の両端がその中央部分よりも上方に位置しているので、流出することはない。但し、リブ形成領域の両端を遮蔽部材で塞いだ状態で充填工程を行なってよい。
【0054】
次に、硬化工程では、未硬化のセメント系材料16を硬化させてリブ16Cを形成し、しかる後に、脱型工程において、パネル本体12から型枠23を取り外す。その結果、図3(D)に示すリブ付きセメント系パネル1Cを得ることができる。
【0055】
このように本形態でも、実施の形態1、2と同様、予めパネル本体13を形成しておき、かかるパネル本体13の面上にリブ形成用の型枠23を配置した後、型枠23により区画されたリブ形成領域内に未硬化のセメント系材料16を充填し、硬化させて、リブ付きセメント系パネル1Cを製造する。このため、型枠内でパネル本体13とリブ16Cとを同時形成する場合と違って、リブ付きセメント系パネル1Cのリブ16C毎の型枠を準備しておく必要がないので、生産効率が高い。
【0056】
また、パネル本体13に対してリブ16Cを後で形成した場合でも、セメント系材料同士は接合強度が極めて高いので、リブ16Cがパネル本体13から脱落することがない。
【0057】
さらに、リブ16Cについては、リブ付きセメント系パネル1Cを使用する現場で形成してもよく、かかる方法を採用すれば、リブ無しの状態でパネル本体13を輸送することができる。かかる方法によれば、輸送の際、パネル本体13は、リブ無しの状態であるので、パネル本体13同士を重ねれば嵩張らず、輸送コストを低減することができる。
【0058】
[実施の形態4]
図4(A)、(B)は各々、本発明の実施の形態4に係るリブ付きセメント系パネルの製造方法を示す斜視図および断面図である。
【0059】
上記実施の形態1〜3では、リブ付きセメント系パネル1A、1B、1Cを1枚ずつ形成する例を説明したが、以下に説明するように、パネル本体を積み上げて複数枚のリブ付きセメント系パネルを形成してもよい。なお、本形態では、実施の形態1をベースに、複数枚のパネル本体を積み上げる構成を適用した例であるが、かかる構成は、実施の形態2、3に適用してもよい。
【0060】
図4(A)、(B)に示すように、本形態では、パネル本体11に対して、図1(B)、(C)を参照して説明した型枠配置工程と充填工程とを行なった後、型枠21の上に別のパネル本体11を配置し、この別のパネル本体11に対して型枠配置工程と充填工程とを行なう。
【0061】
より具体的には、まず、型枠21として用いられる角パイプを台40の上に配置した後、かかる型枠21の上に1枚目のパネル本体11を配置し(型枠配置工程)、次に、パネル本体11の上に角パイプからなる型枠21を配置する。そして、下側の型枠21の上面部、パネル本体11、および上側の型枠21の下面部をクリップ25で挟んで、下側の型枠21、パネル本体11、および上側の型枠21を固定する。この状態で上側の型枠21で挟まれた領域内に未硬化のセメント系材料16を充填する。
【0062】
次に、型枠21の上に2枚目のパネル本体11を配置し(型枠配置工程)、次に、パネル本体11の上に角パイプからなる型枠21を配置する。そして、2枚目のパネル本体11に対して下側の型枠21の上面部、2枚目のパネル本体11、および2枚目のパネル本体11の上側の型枠21の下面部をクリップ25で挟んで、下側の型枠21、パネル本体11、および上側の型枠21を固定する。この状態で上側の型枠21で挟まれた領域内に未硬化のセメント系材料16を充填する。
【0063】
以降、同様な操作を繰り返して、複数枚のパネル本体11を、型枠21を挟んで積み重ねる。その際、対をなす型枠21の間にはT字形状のスペーサ26を配置して、対をなす型枠21の対向距離を調整する。
【0064】
このように構成すると、複数枚のパネル本体11の各々の上で型枠21の間に充填したセメント系材料16を一括して硬化させることができる。それ故、狭いスペースでも、リブ付きセメント系パネル1Aを効率よく製造することができる。
【0065】
[実施の形態5]
図5は、本発明の実施の形態5に係るリブ付きセメント系パネルの斜視図である。上記実施の形態2、3に示すリブ付きセメント系パネル1B、1Cでは、湾曲したパネル本体12、13の湾曲方向(円周面でいえば、周方向)に延在して、尾根あるいは底部を跨ぐようにリブ16B、16Cを形成した例を説明したが、図5に示すリブ付きセメント系パネル1Dのように、湾曲したパネル本体12において、湾曲している方向と反対側に位置する一方の面120(凸面)において、湾曲方向と直交する方向(円周面でいえば、軸線方向)に延在するように、複数のリブ16Dを形成してもよい。なお、図5に示す例は、実施の形態2をベースにしたが、図5に示す構成は、実施の形態3に適用してもよい。
【0066】
[リブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法1]
図6は、本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを使用した構造物の製造方法1を示す説明図であり、図6(A)、(B)、(C)は各々、本発明を適用したリブ付きセメント系パネルの使用例において、リブで挟まれた空間内をセメント系材料で埋める前の状態を示す斜視図、リブで挟まれた空間内をセメント系材料で埋めた後の状態を示す斜視図、およびリブで挟まれた空間内にセメント系材料を充填する様子を示す説明図である。
【0067】
上記実施の形態に係るリブ付きセメント系パネル1A〜1Dは各々、リブ16A〜16Dで挟まれた領域をセメント系材料で埋めない状態で使用してもよいが、図6を参照して説明するように、リブ16A〜16Dで挟まれた領域をセメント系材料で埋めた状態で使用してもよい。以下、図2を参照して説明したリブ付きセメント系パネル1Bを例に本例を説明する。なお、以下に説明する方法は、リブ付きセメント系パネル1A、1C、1Dについても適用することができる。
【0068】
図6(A)に示すリブ付きセメント系パネル1Bは、図2を参照して説明した形態よりもパネル本体12がさらに大きく湾曲した形状になっており、その一方面(凸面/外面)には、複数のリブ16Bが形成されている。かかるリブ付きセメント系パネル1Bは、リブ16Bで挟まれた領域をセメント系材料18で埋めた状態で、水路やトンネル、ドームなどの構造物の製造に用いられる。その際、図6(C)に示すように、リブ16Bの表面にシート19を重ね、シート19とパネル本体12との間にセメント系材料18を充填し、しかる後にセメント系材料18を硬化させることが好ましい。このように構成すると、リブ16Bで挟まれた空間内にセメント系材料18を効率よく充填することができる。その際、シート19としてはメッシュシートを用いることが好ましい。
【0069】
[リブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法2]
図7は、本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを使用した構造物の製造方法2を示す説明図である。以下、上記実施の形態に係るリブ付きセメント系パネル1A〜1Dによって、予め構成した覆工面を覆って構造物を製造する場合を説明する。
【0070】
なお、以下に、図7〜図9を参照して説明するいずれの例も、上記実施の形態に係るリブ付きセメント系パネル1A〜1Dのいずれを用いた場合にも適用することができる。また、以下に、図7〜図9を参照して説明するいずれの例も、構造物を新規に構成する場合の他、既設の構造物の修復にも適用することができる。以下、図2を参照して説明したリブ付きセメント系パネル1Bを使用して、既設の構造物を修復する場合を説明する。また、以下の例で参照する図7〜図9は、リブの延在方向に直交する面で切断した様子を示してある。
【0071】
図7に示すように、本形態では、まず、リブ付きセメント系パネル配置工程において、予め構成された覆工面50の側にリブ16Bを向けるようにリブ付きセメント系パネル1Bを配置する。次に、リブ付きセメント系パネル固定工程では、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50とを固定する。本形態では、リブ付きセメント系パネル固定工程において、リブ付きセメント系パネル配置工程の前に、覆工面50およびリブ付きセメント系パネル1Bのうちの少なくとも一方にエポキシ系などの接着剤61を塗布しておき、リブ付きセメント系パネル固定工程において、接着剤61を硬化させる。その結果、リブ付きセメント系パネル1Bのリブ16Bと覆工面50とは、接着剤61により固定される。
【0072】
かかる構成によれば、覆工面50の表面に多少の凹凸があっても、凹部に接着剤61が入り込むので、不陸部分が発生しない。それ故、リブ付きセメント系パネル1Bを強固に覆工面50に固定することができる。
【0073】
かかる構造物においては、覆工面50をリブ付きセメント系パネル1Bで覆った状態を完成としてもよい。このような構成によれば、構造物および覆工面50がトンネルの内壁である場合、覆工面50から出た水をリブ16Bの間を通して下方に導くことができる。なお、リブ16Bの間を導水溝として利用した場合、鉄バクテリア等により導水溝が閉塞することが考えられるので、リブ付きセメント系パネル1Bに洗浄孔を設け、洗浄孔を介して導水溝を洗浄可能にしておくことが好ましい。
【0074】
また、リブ16Bの間からリブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間に未硬化のセメント系材料を充填した後、セメント系材料を硬化させてもよい。すなわち、リブ付きセメント系パネル1Bを埋設型枠として用いてもよい。かかる構成によれば、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間において、リブ16Bの間に充填されたセメント系材料によって、リブ付きセメント系パネル1B、およびリブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との接合面を補強することができる。なお、構造物および覆工面50がトンネルの内壁である場合、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間に透水性のセメント系材料を充填し、硬化させることが好ましい。このように構成すれば、透水性のセメント系材料層を介して覆工面50から出た水を下方に導くことができる。
【0075】
[リブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法3]
図8は、本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを使用した構造物の製造方法3を示す説明図である。図8に示すように、本形態では、まず、リブ付きセメント系パネル配置工程において、予め構成された覆工面50の側にリブ16Bを向けるようにリブ付きセメント系パネル1Bを配置する。次に、リブ付きセメント系パネル固定工程では、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50とを固定する。本形態では、リブ付きセメント系パネル固定工程において、リブ付きセメント系パネル1Bにおいてリブ16Bが形成されている部分にアンカーボルト62を打ち込んで、リブ付きセメント系パネル1Bにおいてリブ16Bが形成されている部分と覆工面50とを固定する。
【0076】
かかる構成によれば、覆工面50の表面に多少の凹凸があっても、リブ付きセメント系パネル1Bを強固に覆工面50に固定することができる。
【0077】
かかる構造物においては、覆工面50をリブ付きセメント系パネル1Bで覆った状態を完成としてもよい。このような構成によれば、構造物および覆工面50がトンネルの内壁である場合、覆工面50から出た水をリブ16Bの間を通して下方に導くことができる。なお、リブ16Bの間を導水溝として利用した場合、鉄バクテリア等により導水溝が閉塞することが考えられるので、リブ付きセメント系パネル1Bに洗浄孔を設け、洗浄孔を介して導水溝を洗浄可能にしておくことが好ましい。
【0078】
また、リブ16Bの間からリブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間に未硬化のセメント系材料を充填した後、セメント系材料を硬化させてもよい。すなわち、リブ付きセメント系パネル1Bを埋設型枠として用いてもよい。かかる構成によれば、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間において、リブ16Bの間に充填されたセメント系材料によって、リブ付きセメント系パネル1B、およびリブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との接合面を補強することができる。なお、構造物および覆工面50がトンネルの内壁である場合、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間に透水性のセメント系材料を充填し、硬化させることが好ましい。このように構成すれば、透水性のセメント系材料層を介して覆工面50から出た水を下方に導くことができる。
【0079】
[リブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法4]
図9は、本発明を適用したリブ付きセメント系パネルを使用した構造物の製造方法4を示す説明図である。図9に示すように、本形態では、まず、リブ付きセメント系パネル配置工程において、予め構成された覆工面50の側にリブ16Bを向けるようにリブ付きセメント系パネル1Bを配置する。次に、リブ付きセメント系パネル固定工程では、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50とを固定する。本形態では、リブ付きセメント系パネル固定工程において、リブ付きセメント系パネル1Bにおいてリブ16Bが形成されている部分にアンカーボルト62を打ち込んで、リブ付きセメント系パネル1Bにおいてリブ16Bが形成されている部分と覆工面50とを固定する。
【0080】
また、本形態では、リブ付きセメント系パネル配置工程を行なう前に、覆工面50に防水処理を行なっておく。かかる防水処理としては、覆工面50に防水剤などを塗布して防水層を形成する方法や、本形態のように、覆工面50を防水シート65で覆っておく方法を採用することができる。かかる構成によれば、覆工面50から出た水をリブ付きセメント系パネル1Bが配置された表面側に漏れ出すことを防止することができる。
【0081】
かかる構造物においては、覆工面50をリブ付きセメント系パネル1Bで覆った状態を完成としてもよい。
【0082】
また、本形態のように、リブ16Bの間からリブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間に未硬化のセメント系材料を充填した後、セメント系材料を硬化させて、セメント系材料層65を形成してもよい。すなわち、リブ付きセメント系パネル1Bを埋設型枠として用いてもよい。かかる構成によれば、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間において、リブ16Bの間に充填されたセメント系材料によって、リブ付きセメント系パネル1Bを補強することができる。
【0083】
また、本形態では、覆工面50の表面に大きな溝状の凹部51が形成されている。そこで、隣接するリブ付きセメント系パネル1Bの間に断面H形状の鋼材などの支持梁67を配置し、かかる支持梁67の一方の端部をセメント系材料層68に埋設させてある。また、支持梁67の他方の端部は、リブ付きセメント系パネル1Bの表面に被さっている。このため、リブ付きセメント系パネル1Bは、支持梁67およびセメント系材料層68によって強固に覆工面50に固定されている。
【0084】
なお、構造物および覆工面50がトンネルの内壁である場合、リブ付きセメント系パネル1Bと覆工面50との間に透水性のセメント系材料を充填し、硬化させることが好ましい。また、凹部51については、その底部などを防水シート65から露出させておくことが好ましい。このように構成すれば、覆工面50から出た溝を凹部51内の透水性のセメント系材料層65を介して下方に導くことができる。
【0085】
[その他の形態]
図10は、本発明の他の実施の形態に係るリブ付きセメント系パネルの説明図である。上記実施の形態では、パネル本体11、12、13にリブ16A、16B、16C、16Dを線状に形成したが、図10に示すリブ付きセメント系パネルリブ16A、16B、16Cのように、リブ16A、16B、16Cを格子状に形成してもよい。
【0086】
上記実施の形態において、パネル本体11、12、13としては、セメント系材料のみで形成したパネルを用いることができる他、セメント系材料内に各種繊維を分散させたパネル、セメント系材料内に各種繊維シートを敷設したパネル、セメント系材料内に各種芯材を配置したパネルなどを用いることができる。
【0087】
また、図7〜図9に参照して説明した工法は、パネル本体の上にセメント系材料を打設してリブを形成したリブ付きセメント系パネルだけでなく、パネル本体とリブとを一体成形したリブ付きセメント系パネルを用いた場合にも適用できる。
【0088】
さらに、リブ付きセメント系パネルの固定に当たっては、接着、アンカー、ロックボルト及びこれらの併用でも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1A、1B、1C、1D リブ付きセメント系パネル
11、12、13 パネル本体
16A、16B、16C、16D リブ
19 シート
21、22、23 型枠
50 覆工面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系材料からなるパネル本体と、該パネル本体にセメント系材料により形成されたリブと、を有するリブ付きセメント系パネルの製造方法において、
前記パネル本体を形成した後、当該パネル本体の面上に前記リブを形成するための型枠を配置する型枠配置工程と、
前記型枠により区画されたリブ形成領域内に未硬化のセメント系材料を充填する充填工程と、
当該未硬化のセメント系材料を硬化させる硬化工程と、
を有することを特徴とするリブ付きセメント系パネルの製造方法。
【請求項2】
前記パネル本体は、湾曲していることを特徴とする請求項1に記載のリブ付きセメント系パネルの製造方法。
【請求項3】
前記リブは、前記パネル本体の両面のうち、湾曲により凸面になっている側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のリブ付きセメント系パネルの製造方法。
【請求項4】
前記リブは、前記パネル本体の両面のうち、湾曲により凹面になっている側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のリブ付きセメント系パネルの製造方法。
【請求項5】
前記型枠は、前記リブを形成する領域を挟んで対向する位置の各々に配置される長尺部材であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のリブ付きセメント系パネルの製造方法。
【請求項6】
前記型枠配置工程と前記充填工程とを行なった後、
前記型枠上に別の前記パネル本体を配置し、当該別のパネル本体に対して前記型枠配置工程と前記充填工程とを行なうことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のリブ付きセメント系パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法で製造したことを特徴とするリブ付きセメント系パネル。
【請求項8】
セメント系材料からなる板状のパネル本体と、該パネル本体に打設してなるセメント系材料により形成されたリブと、を有することを特徴とするリブ付きセメント系パネル。
【請求項9】
前記パネル本体は、湾曲していることを特徴とする請求項8に記載のリブ付きセメント系パネル。
【請求項10】
前記リブは、前記パネル本体の両面のうち、湾曲により凸面になっている側に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のリブ付きセメント系パネル。
【請求項11】
前記リブは、前記パネル本体の両面のうち、湾曲により凹面になっている側に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のリブ付きセメント系パネル。
【請求項12】
請求項7乃至11の何れか一項に記載のリブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法であって、
前記リブの表面にシートを重ね、
該シートと前記パネル本体との間に未硬化のセメント系材料を充填した後、当該セメント系材料を硬化させることを特徴とする構造物の製造方法。
【請求項13】
請求項7乃至11の何れか一項に記載のリブ付きセメント系パネルを用いた構造物の製造方法であって、
予め構成された覆工面の側に前記リブを向けるように前記リブ付きセメント系パネルを配置するリブ付きセメント系パネル配置工程と、
前記リブ付きセメント系パネルと前記覆工面とを固定するリブ付きセメント系パネル固定工程と、
を有することを特徴とする構造物の製造方法。
【請求項14】
前記覆工面は、予め構築された構造物の破損個所であることを特徴とする請求項13に記載の構造物の製造方法。
【請求項15】
前記リブ付きセメント系パネル固定工程では、前記リブと前記覆工面とを固定することを特徴とする請求項13または14に記載の構造物の製造方法。
【請求項16】
前記リブ付きセメント系パネル固定工程では、前記リブと前記覆工面とを接着剤により固定することを特徴とする請求項15に記載の構造物の製造方法。
【請求項17】
前記リブ付きセメント系パネル固定工程では、前記リブと前記覆工面とをアンカーボルトにより固定することを特徴とする請求項15に記載の構造物の製造方法。
【請求項18】
前記リブ付きセメント系パネルと、前記覆工面との間に未硬化のセメント系材料を充填した後、当該セメント系材料を硬化させることを特徴とする請求項13乃至17の何れか一項に記載の構造物の製造方法。
【請求項19】
前記リブ付きセメント系パネル配置工程の前に前記覆工面に対する防水工程を行なっておくことを特徴とする請求項13乃至18の何れか一項に記載の構造物の製造方法。
【請求項20】
前記防水工程では、前記覆工面に防水シートを覆うことを特徴とする請求項19に記載の構造物の製造方法。
【請求項21】
前記覆工面は、トンネルの内壁であることを特徴とする請求項13乃至20の何れか一項に記載の構造物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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