説明

リブ編み組織の伸縮性調整方法

【課題】汎用のフライス編機の編針のバッド部分を若干加工することにより所望の伸縮性を有するリブ編み組織を得る方法を提供する。
【解決手段】リブ編み組織の伸縮性の調整において、フライス編機のシリンダ側編針13cの上下ストロークを制御して伸縮性を調整するものであり、詳しくは、上記シリンダ針13cのバッド14の幅を調整することによりリブ編み組織の伸縮性を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフライス編機により編成されるリブ編み組織の伸縮性調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フライス編機で編成されるリブ編み組織の伸縮性調整に関する先行技術として特許文献1がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−336148号公報(要約および選択図面)
【0004】
上記先行技術は、溶剤紡糸セルロース繊維の特性を損なうことなく、フィット感が優れた伸長回復性の優れた編み地を得る。溶剤紡糸セルロース繊維には、綿のような天然クリンプや合成繊維の仮撚加工糸のようなクリンプがなく、編地を収縮させる力はないが、紡績糸の撚りを多くすることにより、その撚りを解撚しようとする力がクリンプと同様の働きをして、伸長生と伸長回復性の優れた編地を得ることができる。本発明は、肌着、Tシャツやアウター用として好適に用いられ、伸長回復性が良好で体にフィットし、長期間着用してもその特性が低下しない編地を提供することを課題とし、撚り係数が4.0以上である溶剤紡糸セルロース繊維を主成分とする紡績糸を使用して、編針がフライス出会いで配置された両面丸編機で編成するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術では、編み糸の限定と編針の配置を特定するもので汎用性が乏しく、一般的な編み糸を用いて編み組織の伸縮性を調整できないものであった。
【0006】
一般的に編み組織を緩くするにはニッドループを大きく(長く)すれば良く、逆に締めるにはニッドループを小さく(短く)すればよいことは分かっている。
【0007】
そこでフライス編機を見ると、図2に示すようにシリンダ11の周囲に針溝12が設けれ、この針溝12にシリンダ針13cが装填され、シリンダ11の上面で放射方向にダイヤル針13dが前記シリンダ針13cの間に位置するように装填されている。
【0008】
上記シリンダ針13cとダイヤル針13dには図1に示すようにバッド14と鈎15とベラ16が設けられ、上記バッド14はシリンダ11に沿って配置されたカム17a、17b、17c、17d(展開形状で表している)に嵌り、編針13を押し上げ、あるいは押し下げて、シリンダ針13cは上下に、ダイヤル針13dは水平放射方向にストロークする。
【0009】
上記フライス編機のシリンダ針13cとダイヤル針13dの運動は図4に示すように同図(a)で前段の表編み、裏編みが終わった状態から(b)でシリンダ針13cがベラ16を開いて給糸18に向かい鈎15で引っ掛け、ベラ16を閉じて既に編んだループを潜る。
【0010】
次いで上記ループを潜った給糸18にダイヤル針13dがベラ16を開いて向かい、鈎15で給糸18を引っ掛けベラ16を閉じて後退して新しいリブ編みが形成される。このような一連の動作をくり返して表編み裏編みがくり返されて図5に示す表編み24、裏編み25からなるリブ編みが編成される。
【0011】
ここでシリンダ針13c、ダイヤル針13dのストロークは、図3に示すカム17の上げ山19u、下げ山19dの形状によって決まるが、上記カム17の形状はフライス編機を提供するメーカーから提供されるもので、フライス編機のオペレーターにおいて勝手に変えられるものではない。
【0012】
そこで考えられるのは編針13のバッド14の幅Wを変えるならばカム19の上げ山19uと下げ山19dとの間にギャップができ、そのギャップ分だけストロークが少なくなることに気付いた。
【0013】
この発明は上記先行技術の問題と一般的なフライス編機の問題点に鑑み、また、上記知見により、汎用のフライス編機の編針13のバッド14部分を若干加工することにより所望の伸縮性を有するリブ編み組織を得る方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためにこの発明は、リブ編み組織の伸縮性の調整において、フライス編機のシリンダ側編針13cの上下ストロークを制御して伸縮性を調整するものであり、詳しくは、上記シリンダ針13cのバッド14の幅を調整することによりリブ編み組織の伸縮性を調整するものである。
【発明の効果】
【0015】
上記の如く構成するこの発明によれば、フライス編機のシリンダ編針のバッドの幅を調節することにより、上記編針の上下ストロークが大きく、または、小さくなってリブ編み組織の伸縮性を調整できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示すように、シリンダ11周囲に配置されたカム19の上げ山19u・下げ山19d間に嵌まるバッド14との間のギャップが小さいときはシリンダ針13のストロークが大きくなり、ギャップが大きいときは、そのギャップ分だけストロークが小さくなる。
【0017】
上記のようにシリンダ針13cのストロークが大きいときはニットループが大きくなってリブ編み組織が緩くなり、ストロークが小さいときはニットループが小さくなってリブ編み組織が締ることになる。
【0018】
ところが、カム17の上げ山19u・下げ山19d間に嵌まるバッド14とのギャップが大き過ぎるとシリンダ針13cが完全に下がらすダイヤル針と干渉しあって編成できなくなる。
【0019】
上記編針13のバッド14の最大幅と最小幅の差は、編針13の先端がシリンダ11に沈んだ状態からシリンダの上縁まで寸法差とする。
【0020】
この実施例で用いたフライス編機は、大島機械株式会社(大阪府高石市)製、10インチ、20ゲージ、876本針で、通常のバッド幅は8.5mmであるが、狭めたバッド幅を8.2mm、その差δ=0.3mmで、本フライス編機の場合上記寸法差δは0.6mmが限度である。それ以上ギャップを大きくするとシリンダ針13cとダイヤル針13dとが干渉しあって編成できなくなる。なお、上記バッド幅の差(δ)の限度は、フライス編機のメーカーや仕様によって相違するので、使用する機械により適宜変更されるものである。
【0021】
ここで編み糸に伸縮性の大きいものを採用するならばウエストを引き締める効果が得られ、靴下の場合では足首にフィットして着心地肌着、履き心地の良い靴下が得られる。
【0022】
図6は本発明の方法で上記機械を用いてショーツ20を編成したもので、ヒップ部分21から脚挿入部22までは、シリンダ針13cのバッド14の幅は、機械メーカーが提供したものをそのまま使用して編成し、胴部23はシリンダ針13cのバッド14の幅を0.6mm狭くしたものに置き換えて編成した。
【0023】
上記のようにショーツ20を編成したところヒップ部分21から脚挿入部22までは、通常の締り具合に編成され、下腹部を巻く胴部23では締り具合が強くなって着用したとき体形が修正されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上説明したとおりこの発明によれば、一般的に使用されているフライス編機でもって、その編機の編針に若干の手を加えるだけでリブ編み組織の伸縮性調整ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明で使用する編針の(a)通常の正面図(b)締めて編むときの正面図
【図2】シリンダに編針を装填した状態の部分図
【図3】カムと編針のバッドおよび針先の動きの説明図
【図4】シリンダ針とダイヤル針の動作説明図
【図5】編成されたリブ編み組織図
【図6】本発明により編成したショーツの正面図
【符号の説明】
【0026】
11 シリンダ
12 針溝
13 編針
13c シリンダ針
13d ダイヤル針
14 バッド
15 鈎
16 ベラ
17a,17b,17c,17d カム
18 給糸
19u 上げ山
19d 下げ山
20 ショーツ
21 ヒップ部分
22 脚挿入部
23 胴部
δ バッドの幅の差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リブ編み組織の伸縮性の調整において、フライス編機のシリンダ側編針の上下ストロークを制御して伸縮性を調整することを特徴とするリブ編み組織の伸縮性調整方法。
【請求項2】
上記シリンダ編針の上下ストロークの制御をニードルのバッドの幅を調整することにより行うことを特徴とするリブ編み組織の伸縮性調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−113131(P2007−113131A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304507(P2005−304507)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(503193616)有限会社イシコ (1)
【Fターム(参考)】