説明

リミッタ回路

【課題】 回路規模が小さく、クリップ精度が高く、しかも、大きな容量のコンデンサを必要としないリミッタ回路を提供する。
【解決手段】 制御端子30にクリップ電圧として例えば+2Vを加えると、この電圧+2VはFET28のソースに加えられると共に、オペアンプ31の−入力端へ加えられ、オペアンプ31から電圧−2Vが出力され、FET23のソースへ加えられる。この状態において、入力端子21の入力信号が−2V〜+2Vの範囲にある場合は、FET25、26が共にオフとなり、回路が入力信号に影響を与えることはない。入力信号が+2V以上になると、FET26のソース電圧がゲート電圧より高くなり、FET26がオン状態となり、入力信号が+2Vでクリップされる。また、入力信号が−2V以下になると、FET25のソース電圧がゲート電圧より低くなり、FET25がオン状態となり、入力信号が−2Vでクリップされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルアンプの入力部等に用いて好適なリミッタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ディジタルアンプ等においては、最大出力は電源電圧によって制限される。したがって、過大な入力信号が入力されると、出力は飽和してしまう。このため、ディジタルアンプには、出力レベルを制限するリミッタ回路を設けるのが好ましい。このリミッタ回路として、電源電圧を制御する回路を設けても勿論よいが、電源電圧を制御する回路は回路構成が大きくなってしまう問題がある。
【0003】
そこで、この出願の発明者は、オペアンプを使用し、入力信号を一定レベル以下にクリップするリミッタ回路を考えた。図6および図7はこのオペアンプによるリミッタ回路の構成を示す回路図である。図6において、符号1はディジタルアンプの入力端子、2はNチャネルFET(電界効果トランジスタ)、3はPチャネルFET、4〜6はオペアンプ、7、8は抵抗、9はクリップ電圧が加えられる制御端子である。また、図7において、10はPチャネルFET、11はNチャネルFETであり、他の構成要素1、4〜
9は図6と同じである。
【0004】
このような構成において、例えば、制御端子9に3Vのクリップ電圧を加えると、入力端子1の信号が−3V〜+3Vの時はFET2、3(10、11)がオフとなり、このリミッタ回路は動作しないが、入力端子1の信号が+3Vを越えると、FET3(11)がオンとなり、入力信号が+3Vにクリップされる。同様に、入力信号が−3V以下になると、FET2(10)がオンとなり、入力信号が−3Vにクリップされる。
また、ダイオードやトランジスタによるリミッタ回路も知られているが、これらのリミッタ回路はオペアンプによる上述した回路に比較し、クリップの精度が悪い欠点がある。
【特許文献1】特開平1-109810号公報
【特許文献2】特許弟3162889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したオペアンプによるリミッタ回路は精度が良く、また、比較的回路構成を小さいが、未だ次の問題がある。すなわち、図8はオペアンプの内部構成の一例を示す図である。オペアンプは一般にゲインが高く(80以上)、このため、フィードバックループを構成するためには、図に示す位相補償用コンデンサC1、C2として例えば100pFというかなり大きい容量のコンデンサが必要となる。しかし、このような大容量のコンデンサをIC(集積回路)内に作成すると、コンデンサによっておおきな面積が占められてしまい極めて好ましくない。
【0006】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、回路規模が小さく、クリップ精度が高く、しかも、大きな容量のコンデンサを必要としないリミッタ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、入力端子へ加えられる入力信号を外部から入力される制御電圧によって一定電圧でクリップするリミッタ回路において、電源端子および前記入力端子間に接続された制御素子と、前記制御素子を常時はオフとし、前記入力信号が前記一定電圧を越えた時前記制御素子をオン状態に制御する制御回路とを具備することを特徴とするリミッタ回路である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、入力端子へ加えられる入力信号を外部から入力される制御電圧によって一定電圧でクリップするリミッタ回路において、電源端子間に直列接続され、相互接続点が前記入力端子に接続された第1、第2の制御素子と、前記第1の制御素子を常時はオフとし、前記入力信号が第1の制御電圧を越えた時前記第1の制御素子をオン状態に制御する第1の制御回路と、前記第2の制御素子を常時はオフとし、前記入力信号が第2の制御電圧以下となった時前記第2の制御素子をオン状態に制御する第2の制御回路とを具備することを特徴とするリミッタ回路である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のリミッタ回路において、前記第2の制御電圧は、前記第1の制御電圧を反転した電圧であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、入力端子へ加えられる入力信号を制御端子へ加えられる電圧のレベルでクリップするリミッタ回路において、電源端子間に直列接続され、相互接続点が前記入力端子に接続された第1、第2のトランジスタと、前記第1トランジスタと共にカレントミラー回路を構成する第3のトランジスタおよび該第3のトランジスタと電源端子間に挿入された第1、第2の定電流回路と、前記第2トランジスタと共にカレントミラー回路を構成する第4のトランジスタおよび該第4のトランジスタと電源端子間に挿入された第3、第4の定電流回路と、前記制御端子の電圧を反転する反転回路とを具備し、前記制御端子の電圧を前記第3のトランジスタおよび前記第1の定電流回路の接続点へ加え、前記反転回路の出力電圧を前記第4のトランジスタおよび前記第3の定電流回路の接続点へ加えたことを特徴とするリミッタ回路である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、入力端子へ加えられる入力信号を外部から入力される制御電圧によって一定電圧でクリップするリミッタ回路において、電源端子間に直列接続された第1、第2のトランジスタと、前記第1トランジスタと共にカレントミラー回路を構成する第3のトランジスタおよび該第3のトランジスタと電源端子間に挿入された第1、第2の定電流回路と、前記第2トランジスタと共にカレントミラー回路を構成する第4のトランジスタおよび該第4のトランジスタと電源端子間に挿入された第3、第4の定電流回路と、電源端子間に直列接続され、前記第1のトランジスタによって制御される第5のトランジスタおよび前記第2のトランジスタによって制御される第6のトランジスタとを具備し、第1の制御電圧を前記第3のトランジスタおよび前記第1の定電流回路の接続点へ加え、第2の制御電圧を前記第4のトランジスタおよび前記第3の定電流回路の接続点へ加え、前記入力端子を前記第5のトランジスタおよび第6のトランジスタの相互接続点に接続したことを特徴とするリミッタ回路である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のリミッタ回路において、前記第2の制御電圧は、前記第1の制御電圧を反転した電圧であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、回路規模が小さく、クリップ精度が高く、しかも、大きな容量のコンデンサを必要としない利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の第1の実施の形態によるリミッタ回路の構成を示すブロック図である。この図において、21はディジタルアンプの入力端子である。22は10μAの定電流回路、23はNチャネルFET、24は10μAの定電流回路であり、定電流回路22の一端が+5V電源に接続され、他端がFET23のドレインおよびゲートに接続され、FET23のソースが定電流回路24を介して−5V電源に接続されている。25はNチャネルFETであり、そのドレインが+5V電源に接続され、ゲートがFET23のゲートに接続され、ソースが入力端子21に接続されている。そして、上述したFET23、25がカレントミラー回路を構成している。
【0013】
26はPチャネルFETであり、そのソースが入力端子21に接続され、ベース(基板)が+5V電源に接続され、ゲートがPチャネルFET28のゲートおよびドレインに接続され、ドレインが−5V電源に接続されている。FET28のソースは制御端子30に接続されると共に10μAの定電流回路27を介して+5V電源に接続され、ベースが+5V電源に接続され、ドレインが10μAの定電流街路29を介して−5V電源に接続されている。そして、上述したFET26、28がカレントミラー回路を構成している。31はオペアンプであり、その+入力端が接地され、−入力端が抵抗32を介して出力端に接続されると共に、抵抗33を介して制御端子30に接続され、出力端がFET23と定電流回路24の接続点に接続されている。ここで、抵抗32、33の値は同じである。これは、制御端子30に加えられた電圧を反転するものであり、FET23と24の接続点へ制御電圧(下限側)を加える場合は必要ない。
【0014】
このような構成において、制御端子30にクリップ電圧として、例えば+2Vが加えられたとする。この電圧+2VはFET28のソースに加えられると共に、抵抗33を介してオペアンプ31の−入力端へ加えられる。これにより、オペアンプ31から電圧−2Vが出力され、FET23のソースへ加えられる。この状態において、入力端子21の入力信号が−2V〜+2Vの範囲にある場合は、FET25、26が共にオフとなり、クリップ回路が入力信号に影響を与えることはない。
【0015】
次に、入力信号が+2V以上になると、FET28とFET26はカレントミラー回路を構成し、FET26のソースは+2Vになるように働く。すなわち、FET26のソース電圧がゲート電圧(スレショルド電圧Vt)より高くなり、FET26がオン状態となる。これにより、入力信号が+2Vでクリップされる。また、入力信号が−2V以下になると、FET25のソース電圧がゲート電圧より低くなり、FET25がオン状態となり、入力信号が−2Vでクリップされる。
【0016】
上述した第1の実施形態は、回路構成が簡単で、かつ、動作スピードが速くクリップ電圧において入力信号を正確にクリップすることができる。また、ゲインが比較的小さいので、位相補償回路が不要であり、位相補償用コンデンサを設ける必要がない。また、FET26,28(または、23,25)のVt(スレショルド電圧)特性がばらついた場合においても、FET26,28(または、23,25)の相対的ばらつきが問題になるだけであり、絶対的ばらつきは問題にならない。この結果、FET26,28(または、23,25)として同じ特性のものを揃えれば、高精度のクリップ特性を得ることができる。
しかし、上記の回路はFET25、26に流れる電流が最大で10μAであり、このため、図3(イ)に示すように、クリップ状態のきれが悪く、だらだらしたクリップになる。このクリップのきれが悪いことは、通常はあまり問題にならないが、使用状態によっては次のような問題が生じる。すなわち、図3の破線以上の部分の量は制御することができず、このため、+側と−側とで破線を越える量に違いがあるとオフセットが生じてしまう。このオフセットは後段のスピーカ等に余分な負荷をかける問題がある。
【0017】
そこで、このような問題を解決したこの発明の第2の実施形態について説明する。
図2はこの発明の第2の実施形態の構成を示す回路図であり、この図において、図1の各部に対応する部分には同一の符号を付しその説明を省略する。この図において、41は10μAの定電流回路であり、FET25のドレインと+5V電源との間に挿入されている。42はPチャネルFETであり、そのソースが+5V電源に接続され、そのゲートがFET25のドレインに接続され、そのドレインが入力端子21に接続されている。43はNチャネルFETであり、そのドレインが入力端子21に接続され、ゲートがFET26のドレインに接続され、ソースが−5V電源に接続されている。44は10μAの定電流回路であり、FET26のドレインと−5V電源との間に挿入されている。
【0018】
このような構成において、制御端子30にクリップ電圧として、例えば+2Vが加えられると、FET28のソースへ+2Vが、また、オペアンプ31によりFET23のソースへ−2Vが加えられる。この状態において、入力端子21の入力信号が−2V〜+2Vの範囲にある場合は、FET25、26が共にオフとなり、したがって、FET42、43もオフとなり、クリップ回路が入力信号に影響を与えることはない。
【0019】
次に、入力信号が+2V以上になると、FET26のソース電圧がゲート電圧より高くなり、FET26がオン状態となる。これにより、FET43のゲートがソースよりハイレベルとなり、FET43がオンし、入力信号が+2Vでクリップされる。また、入力信号が−2V以下になると、FET25のソース電圧がゲート電圧より低くなり、FET25がオン状態となる。これにより、FET42のゲートがソースよりローレベルとなり、FET42がオンし、入力信号が−2Vでクリップされる。
【0020】
このように、上記第2の実施形態によれば、クリップ時においてFET42または43によって大きな電流を流すことができ、この結果、図3(ロ)に示すように、クリップ電圧において、だらだらすることなく直線的にクリップすることができる。
【0021】
図4および図5は上記第2の実施形態の効果を示す図であり、これらの図において、横軸は時間、縦軸は電圧である。図4に示す曲線L1はピーク−ピークが11Vの正弦波を抵抗を介して入力端子21へ加え、また、制御端子30にクリップ電圧として5Vを加えた場合の、入力端子21に得られる電圧を示しており、また、L1a〜L1dはそれぞれ入力信号は同一で、クリップ電圧を4V、3V、2V、1Vとした場合の入力端子21に得られる電圧を示している。また、図4において、曲線L2はピーク−ピークが24Vの正弦波を抵抗を介して入力端子21へ加え、また、制御端子30にクリップ電圧として3Vを加えた場合の、入力端子21に得られる電圧を示している。
【0022】
また、図5において、曲線L3は実効値が2.3Vの正弦波を抵抗を介して入力端子21へ加え、また、制御端子30にクリップ電圧として3Vを加えた場合の、入力端子21に得られる電圧を示しており、また、L3a〜L3fはそれぞれ入力信号は曲線L3と同一で、クリップ電圧を2.5V、2V、1.5V、1V、0.5V、0Vとした場合の入力端子21に得られる電圧を示している。これらの図から明らかなように、上記第2の実施形態によれば、制御端子30に加えたクリップ電圧によって、入力信号を正確に、かつ、だらだら状態がない直線性の良い状態でクリップすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、ディジタルアンプ、その他種々の分野において用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1の実施形態によるリミッタ回路の構成を示す回路図である。
【図2】この発明の第2の実施形態によるリミッタ回路の構成を示す回路図である。
【図3】第1、第2の実施形態の特性を説明するための波形図である。
【図4】第2の実施形態の効果を説明するための波形図である。
【図5】第2の実施形態の効果を説明するための波形図である。
【図6】オペアンプを使用したリミッタ回路の構成例を示す回路図である。
【図7】オペアンプを使用したリミッタ回路の他の構成例を示す回路図である。
【図8】オペアンプの内部構成の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0025】
21…入力端子、22、24、27、29、41、44…定電流回路、23、25、43…NチャネルFET、26、28、42…PチャネルFET、30…制御端子、31…オペアンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子へ加えられる入力信号を外部から入力される制御電圧によって一定電圧でクリップするリミッタ回路において、
電源端子および前記入力端子間に接続された制御素子と、
前記制御素子を常時はオフとし、前記入力信号が前記一定電圧を越えた時前記制御素子をオン状態に制御する制御回路と、
を具備することを特徴とするリミッタ回路。
【請求項2】
入力端子へ加えられる入力信号を外部から入力される制御電圧によって一定電圧でクリップするリミッタ回路において、
電源端子間に直列接続され、相互接続点が前記入力端子に接続された第1、第2の制御素子と、
前記第1の制御素子を常時はオフとし、前記入力信号が第1の制御電圧を越えた時前記第1の制御素子をオン状態に制御する第1の制御回路と、
前記第2の制御素子を常時はオフとし、前記入力信号が第2の制御電圧以下となった時前記第2の制御素子をオン状態に制御する第2の制御回路と、
を具備することを特徴とするリミッタ回路。
【請求項3】
前記第2の制御電圧は、前記第1の制御電圧を反転した電圧であることを特徴とする請求項2に記載のリミッタ回路。
【請求項4】
入力端子へ加えられる入力信号を制御端子へ加えられる電圧のレベルでクリップするリミッタ回路において、
電源端子間に直列接続され、相互接続点が前記入力端子に接続された第1、第2のトランジスタと、
前記第1トランジスタと共にカレントミラー回路を構成する第3のトランジスタおよび該第3のトランジスタと電源端子間に挿入された第1、第2の定電流回路と、
前記第2トランジスタと共にカレントミラー回路を構成する第4のトランジスタおよび該第4のトランジスタと電源端子間に挿入された第3、第4の定電流回路と、
前記制御端子の電圧を反転する反転回路と、
を具備し、前記制御端子の電圧を前記第3のトランジスタおよび前記第1の定電流回路の接続点へ加え、前記反転回路の出力電圧を前記第4のトランジスタおよび前記第3の定電流回路の接続点へ加えたことを特徴とするリミッタ回路。
【請求項5】
入力端子へ加えられる入力信号を外部から入力される制御電圧によって一定電圧でクリップするリミッタ回路において、
電源端子間に直列接続された第1、第2のトランジスタと、
前記第1トランジスタと共にカレントミラー回路を構成する第3のトランジスタおよび該第3のトランジスタと電源端子間に挿入された第1、第2の定電流回路と、
前記第2トランジスタと共にカレントミラー回路を構成する第4のトランジスタおよび該第4のトランジスタと電源端子間に挿入された第3、第4の定電流回路と、
電源端子間に直列接続され、前記第1のトランジスタによって制御される第5のトランジスタおよび前記第2のトランジスタによって制御される第6のトランジスタと、
を具備し、第1の制御電圧を前記第3のトランジスタおよび前記第1の定電流回路の接続点へ加え、第2の制御電圧を前記第4のトランジスタおよび前記第3の定電流回路の接続点へ加え、前記入力端子を前記第5のトランジスタおよび第6のトランジスタの相互接続点に接続したことを特徴とするリミッタ回路。
【請求項6】
前記第2の制御電圧は、前記第1の制御電圧を反転した電圧であることを特徴とする請求項5に記載のリミッタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−5741(P2006−5741A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181149(P2004−181149)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】