説明

リモコンシステム

【課題】送信機と受信機間で使用するチャンネルの相互通信が不要なリモコンシステムを提供する。
【解決手段】
リモコンシステムは、チャンネル1〜チャンネルNの全チャンネルで、操作に基づく信号を1チャンネル毎に順次送信する送信機と、定期的にチャンネル1〜チャンネルNのチャンネル毎にアンテナ電界強度を検出し、この強度がしきい値を越えないチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定する評価部を備える受信機とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線電波を使用して信号を送信する送信機と、送信機から送信される信号を受信して負荷装置を制御する受信機とで構成されるリモコンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電波を使用して信号の送受信を行うリモコンシステムでは、ユーザが送信装置を操作することで、遠隔にある負荷装置を制御するが、近傍に同一チャンネルを使用している他のリモコンシステムが存在していたり、雑音等のために通信環境が悪いチャンネルを使用していると通信が不確実となる問題がある。そこで、従来のリモコンシステムでは次のような対策を取っている。
【0003】
すなわち、典型的には、送信機、受信機それぞれにチャンネル選択スイッチを設け、通信を行う前に、ユーザが手動で、混信や雑音のあるチャンネルを回避する。
【0004】
しかし、通信環境は常に変動するために、手動でチャンネル設定を行うものは、一旦設定したチャンネルがその後に適切でなくなる可能性があり、何度も設定しなおさなければならないことがある。
【0005】
そこで、このような問題をなくすために、送信機と受信機間で相互通信出来る機能を設け、受信機が送信機からの信号を正しく受信できたときにアクノリッジ信号を返すことで、信号送受信の確実性を担保する案が提案されている。また、送信機にキャリアセンス機能を設けたりすることにより、通信環境の良いチャンネルを自動検出し、そのチャンネルを使って送受信機間で通信するシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−239262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、受信機が送信機からの信号を正しく受信できたときにアクノリッジ信号を返すシステムや、通信環境の良いチャンネルを自動検出して相手側に知らせるシステムでは、送信機と受信機間で通信環境の良いチャンネルを相互に知る機能が別途必要である。すなわち、実際の信号送受信に入るまでにチャンネル相互認識のための通信処理が必要であり、そのための通信時間が余分に必要であるとともに、送信機から受信機に対して、又は受信機から送信機に対してその機能を実現するためのハードウェアとソフトウエアが別途必要であった。特に、送信機での操作信号に応じて受信機において負荷装置を制御するリモコンシステムでは、上記の機能実現に要する余分な通信時間が負荷装置の制御動作に遅れを生じさせる可能性があり、リモコンシステムとしての全体の機能を低下させる不都合も生じさせる可能性があった。
【0008】
この発明の目的は、送信機と受信機間で使用するチャンネルの相互通信が不要なリモコンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、無線電波を使用して信号を送信する送信機と、前記送信機から送信される信号を受信して負荷装置を制御する受信機とで構成されるリモコンシステムにおいて、
前記受信機は、定期的にチャンネル1〜チャンネルN(Nは任意の整数)のチャンネル毎に受信強度を検出し、受信強度がしきい値を越えないチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定する評価部と、前記評価部で設定された待ち受けチャンネルで信号を受信する受信部とを備え、
前記送信機は、チャンネル1〜チャンネルNの全チャンネルで、前記信号を1チャンネル毎に順次送信する送信部を備えることを特徴とする。
【0010】
受信機は、待ち受けチャンネルを常時探していて、その待ち受けチャンネルで信号の受信を行う。送信機は、信号を全てのチャンネルで1チャンネル毎に送信する。したがって、送信機は、待ち受けチャンネルがどのチャンネルなのかを知る必要はなく、受信機側から何らかの情報を受信する機能を持つ必要がない。送信機が信号を全チャンネルで送信することにより、受信機では、最も通信環境の良いチャンネル(待ち受けチャンネル)で、その信号を受信できるから、混信や雑音による悪影響を最大限少なくできる。
【0011】
受信機の評価部は、受信強度を検出してしきい値と比較することでチャンネル毎の通信状況を評価できる。このような構成であればコストアップを招来することもない。また、評価に際しては統計的な処理を施すことで信頼性を高くできる。例えば、受信強度がしきい値を越える連続回数が一定値を越えるチャンネルを待ち受けチャンネルとして使用しないものとする。このような処理で、ノイズなどの単発的な影響により誤った判断が行われるのを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、受信機と送信機間で待ち受けチャンネルを相互に知るための機能を持つ必要がないため、信号の送受信前に待ち受けチャンネルを送受信するための特別の通信時間が不要である。このため、通信が遅れることはなく、送信機側で発生した信号は直ぐに受信機側に伝わる。また、受信機側に送信機能を持たせたり、送信機側に受信機能を持たせる必要がないため、コスト低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】リモコン送信機のブロック図
【図2】リモコン受信機のブロック図
【図3】高周波回路部のブロック図
【図4】送受信シーケンスの説明図
【図5】受信機の概略動作を示すフローチャート
【図6】評価部の概略動作を示すフローチャート
【図7】送信機の概略動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はリモコン送信機(送信機)の構成図である。また、図2はリモコン受信機(受信機)の構成図である。送信機と受信機でこの発明に係るリモコンシステムが構成される。このシステムでは、送信機でユーザにより操作された内容に応じて受信機側の負荷装置(例えばリレーと電球、ブザー、モータなどの組み合わせ)が駆動される。
【0015】
図1において、送信機は、ユーザにより操作される入出力インターフェイスであるキーパッド(液晶表示器付き)1と、全体の制御を行うマイコン2と、データ類やソフト類を記憶する記憶装置3と、信号を送信するための高周波信号処理を行う高周波回路部4と、前記信号を変調した高周波信号を電波にして送信するアンテナ5と、電力を供給する乾電池6とで構成されている。
【0016】
記憶装置3には、通信の相手方の各種情報や、送信制御に必要な付加情報などが記憶されている。高周波回路部4は、チャンネル1(CH1)〜チャンネルN(CHN)の全チャンネルで1チャンネル毎に信号を順次送信する機能を持つ。Nは任意の整数であり、システムの能力によって決定される(たとえば10以下)。全チャンネルの送信期間は3ミリ秒以内に設定され、操作されている間連続的に送信する。
【0017】
図2において、受信機は、アンテナ10と、アンテナで受信した高周波信号を処理し、信号を識別する高周波回路部11と、高周波回路部11から得られた信号を処理して、その内容を判別しリレー駆動信号を出力するマイコン12と、リレー制御及び受信機全体の制御に必要な付加情報や、後述の評価のための過去のアンテナ電界強度などが記憶されている記憶装置13と、負荷装置であるリレー14と商用交流電源に接続される電源回路15とを備えている。受信機は、送信機と同様の周波数帯域をカバーしていて、CH1〜CHNを受信することが可能である。
【0018】
図3は、一般市場に流通しているモデムICのブロック図であり、高周波回路部11と送信機の高周波回路部4に使用される。
【0019】
送信機の高周波回路部4では、マイコン2からインターフェイス50を経由して制御回路51に信号が入力すると、送信変調器52で前記信号を変調したFM信号を生成し、送信ミキサ53で周波数シンセサイザ60からの高周波信号と混合して目的とする周波数(CH)のFM信号を生成し、さらに、高周波アンプ54で所定の信号レベルまで増幅した後、この信号を図示しないインピーダンス整合回路を経てアンテナ5に給電される。
【0020】
受信機の高周波回路部11では、アンテナ10及び図示しないインピーダンス整合回路を経て給電された信号は、受信アンプ61で増幅された後に受信ミキサ62で周波数シンセサイザ回路60からの高周波信号と混合され、受信復調器63でベースバンド信号として復調される。この復調された信号は制御回路51及びインターフェイス50を通してマイコン12に入力される。
【0021】
また、受信機の高周波回路部11の制御回路51は、周波数シンセサイザ回路60を制御することにより、定期的に受信周波数(CH)をCH1〜CHNに順次切り換えていき、受信チャンネル毎にアンテナ電界強度を検出し、この強度がしきい値を越えないチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定する評価機能を備えている。後述のように、送信機からの信号は、この待ち受けチャンネルで受信する。
【0022】
周波数シンセサイザ回路60には基準用周波数を供給するための水晶発振器64が接続されている。
【0023】
次に、本システムの動作について説明する。
【0024】
図4は、本システムの概略動作を示す。
【0025】
送信機、受信機はそれぞれCH1〜CHNをカバーしている。送信機は、操作信号が発生すると、CH1からCHNまでその順に、又はランダムに全チャンネルがカバーできるよう、操作信号を送信する。全チャンネル分の送信期間は最大3ミリ秒である。さらに、全チャンネル分の送信を操作期間中、繰り返して行う。
【0026】
一方、受信機は、送信機とは非同期に、各チャンネルの通信環境の評価を行う。評価は、CH1〜CHNのチャンネル毎にアンテナ電界強度を検出することで行い、さらにアンテナ電界強度がしきい値を越えないチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定するところまで行う。
【0027】
図4に示すように、この評価はCH1から順に行う。評価は電界強度を検出するだけで行えるため、その時間は極めて短時間で可能である。例えば、100マイクロ秒で行うことが出来る。1サイクル(CH1〜CHNの評価)を終えると、再びCH1から順に評価する。評価の具体的手法のうち最も簡単なやり方は、CH1から順に評価を行っていき、アンテナ電界強度がしきい値を越えないことを最初に検出したチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定する。
【0028】
そして、そのチャンネルの次の評価時において、アンテナ電界強度がしきい値を越えない限り、同チャンネルを待ち受けチャンネルとして維持する。
【0029】
評価においては、好ましくは統計処理を採用する。例えば、連続する過去の100回の評価の間に所定のアンテナ電界強度がしきい値を越えている回数が30未満のチャンネルは通信環境が良いと判断し、その判断を最初にしたチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定する。
【0030】
このような処理を行うことで、待ち受けチャンネルが安定して通信状態も安定しやすくなり、待ち受けチャンネルの過度な変動によって受信レベルも変動して動作が不安定になることを防止できる。しかし、信号レベルを常に最も高く得たい場合には、全チャンネルの中から、アンテナ電界強度の最も小さいものを待ち受けチャンネルとして設定するか、又は、統計処理を行う場合は、しきい値を越えている回数の最も小さいものを常に抽出して、これを待ち受けチャンネルとして設定しても良い。
【0031】
図4に示す例では、CH2が待ち受けチャンネルとして設定されている。待ち受けチャンネルとして設定されていたチャンネルが次の評価時に通信環境が悪いと判断されたときには、待ち受けチャンネルを別のチャンネルに譲り渡すことになる。こうして、受信機では、一つの待ち受けチャンネルが自動的に設定される。
【0032】
このようにして連続的に且つ常時、チャンネル評価を繰り返すことにより、電源オン後、一定時間が経過すると(1サイクルの評価が99回終了すると)、次の1サイクル終了毎に、通信環境の良いチャンネルが待ち受けチャンネルとなっている。1サイクルに要する時間は100マイクロ秒×チャンネル数であるため、操作内容を送信する通常のリモコンシステムでは数百マイクロ秒毎に待ち受けチャンネルが設定される。
【0033】
このような、送信機と非同期で、且つ、各チャンネルの通信環境の評価を繰り返して連続的に行うことにより、受信機では常に通信環境の良いチャンネルが待ち受けチャンネルとして設定されている。
【0034】
一方、送信機では、操作信号が発生すると、CH1からCHNまでその順に、又はランダムに全チャンネルがカバーできるよう操作信号を送信するが、全チャンネル分の送信期間は最大3ミリ秒程度であるため、その期間は受信機での1サイクル評価時間である数百マイクロ秒に比べて十分に長い。このため、送信信号は、正しく受信機の待ち受けチャンネルで受信される。さらに、送信機での送信信号は繰り返し送信されるため、待ち受けチャンネルで送信信号を確実に受信することが可能である。
【0035】
図5、図6は、受信機の概略動作を示すフローチャートである。
【0036】
図5は周期的に実行される。ST1で、待ち受けチャンネル(R.CH)を有効化し、送信機からの信号を受信すると(ST2)、同信号に対する処理を行って終了する。
【0037】
図6は、100マイクロ秒毎に実行される。
【0038】
CHi(CH1〜CHNの中のいずれか)に対する評価をST10で行い、評価結果をメモリに記憶する(ST11)。メモリには、チャンネル毎に過去分〜現在までの100サンプルの評価結果が記憶される。次いで、メモリに記憶されている全体の情報から待ち受けチャンネルであるR.CHを設定する。評価手法は上記に示した通りである。
【0039】
図7は、送信機概略動作を示すフローチャートである。
【0040】
操作が行われると、ST20で操作に基づいた信号をCH1〜CHNの順に送信する。送信は操作が終わるまでの時間、繰り返して行われる(ST21)。
【0041】
以上の動作により、送信機と受信機間で使用するチャンネルの通信処理を行わなくても、受信機では常に通信環境の良いチャンネルで信号を受信することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電波を使用して信号を送信する送信機と、前記送信機から送信される信号を受信して負荷装置を制御する受信機とで構成されるリモコンシステムにおいて、
前記受信機は、
定期的にチャンネル1〜チャンネルN(Nは任意の整数)のチャンネル毎にアンテナ電界強度を検出し、アンテナ電界強度がしきい値を越えないチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定する評価部と、前記評価部で設定された待ち受けチャンネルで信号を受信する受信部とを備え、
前記送信機は、
チャンネル1〜チャンネルNの全チャンネルで、前記信号を1チャンネル毎に順次送信する送信部を備えることを特徴とするリモコンシステム。
【請求項2】
前記評価部は、アンテナ電界強度がしきい値を越えないことを最初に検出したチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定する、請求項1記載のリモコンシステム。
【請求項3】
前記評価部は、アンテナ電界強度がしきい値を越えない頻度が一定の率以下であることを最初に検出したチャンネルを待ち受けチャンネルとして設定する、請求項1記載のリモコンシステム。
【請求項4】
前記評価部は、アンテナ電界強度が最も低いチャンネルを受けチャンネルとして設定する、請求項1記載のリモコンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−42407(P2013−42407A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178735(P2011−178735)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(390004374)三和電子機器株式会社 (4)
【Fターム(参考)】