説明

リモコン操作式コンバインの制御装置

【課題】遠隔操作装置である無線リモコンにより機体の外からその前後進走行を操作する場合について、無線リモコンによる不測の事態を回避して搭乗者の安全を確保することができるリモコン操作式コンバインの制御装置を提供することにある。
【解決手段】リモコン操作式コンバインの制御装置は、操縦席fに配置された機体機器操作用の本体操作具による本体操作具信号および無線リモコン1によるリモコン操作信号に応じて機体の前後進走行動作を制御する制御部11を備えて構成され、上記機体には、搭乗者の不在を検出する無人センサを設け、この無人センサの検出信号を上記制御部11に受けるとともに、同制御部11によりその検出信号を条件に上記リモコン操作信号に対応して機体走行動作を制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦席のほかに機外から無線リモコンによって機体の前後進走行を可能とするリモコン操作式コンバインの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の記載のように、排出オーガを操作するための遠隔操作装置をコンバイン本体と排出オーガに設けた例が知られている。上記遠隔操作装置は、その操作信号を受ける制御装置を介していずれからも排出オーガを操作することができるので、作業能率を向上することができる。
【0003】
しかし、コンバイン本体と排出オーガの遠隔操作装置が競合するように同時に操作された場合は、排出オーガの動作が不確実となるのみならず、不測の事態をも招くという問題がある。この問題は、排出オーガの動作に限らず、機体の前後進走行や操舵を遠隔操作装置によって行う場合も同様である。
【特許文献1】特開2001−231343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、遠隔操作装置である無線リモコンにより機体の外からその前後進走行を操作する場合について、無線リモコンによる不測の事態を回避して搭乗者の安全を確保することができるリモコン操作式コンバインの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、操縦席に配置された本体操作具による本体操作具信号および無線リモコンによるリモコン操作信号に応じて機体の前後進走行動作を制御する制御部を備えるリモコン操作式コンバインの制御装置において、上記機体には、搭乗者の不在を検出する無人センサを設け、この無人センサの検出信号を上記制御部に受けるとともに、同制御部によりその検出信号を条件に上記リモコン操作信号に対応して機体走行動作を制御することを特徴とする。
【0006】
上記構成により、操縦席に配置された本体操作具をオペレータが操作すると、その本体操作具信号に応じて制御部が機体の前後進走行動作を制御し、また、無人センサが搭乗者の不在を検出すると、その場合に限り制御部がリモコン操作信号に応じて機体走行動作を制御する。
【0007】
請求項2の発明は、操縦席に配置された本体操作具による本体操作具信号および無線リモコンによるリモコン操作信号に応じて機体の前後進走行動作を制御する制御部を備えるリモコン操作式コンバインの制御装置において、上記操縦席には、機体の搭乗者による操作が可能なリモコン許可スイッチを設け、このリモコン許可スイッチによる許可信号を上記制御部に受けるとともに、同制御部によりその許可信号を条件に上記リモコン操作信号に対応して機体走行動作を制御することを特徴とする。
【0008】
上記構成により、操縦席に配置された本体操作具をオペレータが操作すると、その本体操作具信号に応じて制御部が機体の前後進走行動作を制御し、また、オペレータがリモコン許可スイッチを操作してその許可信号を制御部が受けた場合に限り、制御部がリモコン操作信号に応じて機体走行動作を制御する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、前記制御部は、前記本体操作具信号が前記リモコン操作信号に優先して機体の前後進走行動作を制御することを特徴とする。このように構成することにより、機体走行に関し、本体操作具と無線リモコンの操作が競合した場合は本体操作具による本体操作具信号に沿って制御部が動作制御する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明により、無人センサが搭乗者の不在を検出すると、その場合に限り制御部がリモコン操作信号に応じて機体走行動作を制御することから、機体側に搭乗者がいない時に限定して無線リモコンの操作で機体の前後進走行動作が可能となるので、無線リモコンの誤操作によって搭乗者を害する不測の事態を回避することができる。
【0011】
請求項2の発明により、オペレータがリモコン許可スイッチを操作してその許可信号を制御部が受けた場合に限り、制御部がリモコン操作信号に応じて機体走行動作を制御することから、操縦席でオペレータがリモコン許可の操作をした時に限定して無線リモコンの操作で機体の前後進走行動作が可能となるので、無線リモコンの誤操作によって搭乗者を害する不測の事態を回避することができる。
【0012】
請求項3の発明により、機体走行に関し、本体操作具と無線リモコンの操作が競合した場合は本体操作具による本体操作具信号に沿って制御部が動作制御することから、操縦席のオペレータが無線リモコンの許可を与えた場合においても、機体側に搭乗した操縦者の判断操作が反映されるので、その安全性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、以下に図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の制御装置の適用対象となるリモコン操作式コンバインの左側面図である。
コンバインは、穀稈を分草する分草杆gおよび分草杆gにより分草された穀稈を刈取る刈刃h等を備えて昇降調節可能な刈取部a、この刈取部aから搬送装置を介して受けた穀稈を脱穀する脱穀部b、この脱穀部bにより脱穀分離された籾を一時貯留する収納部c、貯留された籾を機外に排出する排出オーガによる搬出部d等の作業機器、走行用の左右のクローラe,e、機体の前部で作業機および機体の走行を運転操作するための操縦席に運転操作部f等を備える。また、変速伝動部(不図示)を左右のクローラe,eの間に搭載し、左右のクローラe,eの回動速度を無段階に調節する変速機構と旋回走行のために左右のクローラe,eの回動速度を左右個別に調節する旋回機構を内設するほか、後述の無線リモコン用の通信アンテナjを機体上部に備える。
【0014】
図2は、運転操作部fの操作盤の機器配置俯瞰図である。
運転操作部fは、図2に示すように、オペレータの前側Fの操作パネルに各機器の操作用の本体操作具を配置して構成される。操作パネルには機体旋回操作用に左右の傾倒動作が可能な旋回操作具および刈取昇降操作用に前後の傾倒動作が可能な昇降操作具を一体化してワンレバーで操作できるいわゆるパワステレバーpを備え、オペレ―タの側方には、変速操作具として前後方向の操作によって傾倒保持される前後進無段変速用のHSTレバーq、緩・標準・急の旋回パターン切替用の旋回モード切替レバーr、刈取脱穀用の刈脱レバーs、速度レンジ設定用の副変速レバーt等を中心に、各種レバー・スイッチ類、モニタ表示部u等を配置することにより、制御装置を介して機体走行と作業機の操作を一人のオペレータ操作によって可能とする。
【0015】
また、遠隔操作装置として、排出オーガdの各種動作のほかに、機体走行その他の操作機能を統合した多機能型の無線リモコン1を備える。
無線リモコン1は、例えば、図3のスイッチ配置図に示すように、排出オーガdの操作用のスイッチボタンを上段に、機体走行操作用スイッチボタンを中段に、その他のスイッチボタンを下段に、それぞれまとめて構成する。
【0016】
排出オーガ操作用は、昇降および左右旋回のボタンによる上下左右4方向スイッチセット2、伸長動作および縮小動作のボタンによる伸縮用二択スイッチセット3、排出動作の起動と停止の切替ボタンによる排出用切替スイッチ4、自動張出と自動収納の切替ボタンによる張出収納用切替スイッチ5を配置する。
【0017】
機体走行操作用は、前後進および左右旋回のボタンによる前後左右4方向スイッチセット6を配置し、その他の機能として、エンジン稼動の始動と停止のボタンによる始動停止用二択スイッチセット7、ステップの張出と収納のボタンによる張出収納用二択スイッチセット8、ナローガイドの張出と収納のボタンによる張出収納用二択スイッチセット9、キャビンドアの開閉切替ボタンによるドア開閉用切替スイッチ10を統合配置する。
【0018】
無線リモコン1による機器制御は、図4の制御系統図に示すように、制御部11の入力側に、排出オーガ操作に関し、張出収納用の切替スイッチ5、左右旋回および昇降の4方向スイッチセット2、伸縮用の二択スイッチセット3、排出用の切替スイッチ4、機体走行操作に関し、前後走行および左右旋回の4方向スイッチセット6、その他の機器操作に関し、エンジン始動停止用の二択スイッチセット7、ステップ張出収納用の二択スイッチセット8、ナローガイド張出収納用の二択スイッチセット9、キャビンドア開閉用の切替スイッチ10の信号を受ける。
【0019】
制御部11の出力側は、排出オーガdの左右旋回リレー12aおよび上下ソレノイド12b、排出リレー14、機体走行の前後進リレー16、エンジン始動停止ソレノイド17、ステップの張出収納リレー18、ナローガイドの張出収納リレー19、キャビンドアの開閉リレー20の駆動回路をそれぞれ接続し、入力信号および関係する条件に応じて制御部11が対応の機器動作を制御する。
【0020】
上記構成の制御装置により、排出オーガdの取扱い、操舵を含む機体走行の取扱い、機体のキャビンドアのロック・アンロック、エンジンの始動停止、ナローガイドの張出収納、ステップの張出収納を無線リモコン1から操作することができる。その結果、コンバインの効率的な運転が可能となる。
【0021】
また、条件に応じて機器を制御する例については、コンバインの機体には、搭乗者の不在を検出する無人センサを設け、この無人センサの検出信号を制御部11に受けるとともに、同制御部11によりその検出信号を条件にリモコン操作信号に対応して機体走行の前後進リレー16と左右旋回操舵を制御するべく制御装置を構成する。無人センサは、感圧式着席センサ、赤外線センサ等により構成し、操縦席f、キャビン内等、必要な範囲について無人状態を検出する。
【0022】
上記構成の制御装置により、操縦席fに配置された本体操作具をオペレータが操作すると、その本体操作具信号に応じて制御部11が機体の前後進走行動作と左右旋回操舵を制御し、また、無人センサが搭乗者の不在を検出すると、その場合に限り制御部11がリモコン操作信号に応じて機体走行動作を制御する。したがって、機体に搭乗者がいない時に限定して無線リモコンの操作で機体の前後進走行動作等が可能となるので、無線リモコンの誤操作等によって搭乗者を害する不測の事態を回避することができる。
【0023】
また、上記に代えて、操縦席fには、機体の搭乗者による操作が可能なリモコン許可スイッチを設け、このリモコン許可スイッチによる許可信号を制御部11に受けるとともに、同制御部11によりその許可信号を条件にリモコン操作信号に対応して機体走行の前後進リレー16と左右旋回操舵を制御するべく制御装置を構成する。
【0024】
上記構成の制御装置により、操縦席fに配置された本体操作具をオペレータが操作すると、その本体操作具信号に応じて制御部11が機体の前後進走行動作および左右旋回操舵を制御し、また、オペレータがリモコン許可スイッチを操作してその許可信号を制御部11が受けた場合に限り、制御部11がリモコン操作信号に応じて機体走行動作を制御する。したがって、操縦席fでオペレータがリモコン許可の操作をした時に限定して無線リモコンの操作で機体の前後進走行動作等が可能となるので、無線リモコンの誤操作等によって搭乗者を害する不測の事態を回避することができる。
【0025】
また、上記の構成において、制御部11は、本体操作具信号がリモコン操作信号に優先して機体走行の前後進リレー16と左右旋回操舵を制御するべく制御装置を構成する。このように構成することにより、機体走行に関し、本体操作具と無線リモコン1の操作が競合した場合に、本体操作具による本体操作具信号に沿って制御部11が動作制御することから、操縦席fのオペレータが無線リモコンの許可を与えた場合においても、機体側に搭乗した操縦者の判断操作が反映されるので、安全性を向上することができる。
【0026】
さらに、無線リモコン1による機体走行操作に関し、個人別の登録照合等により、取扱い者を限定するべく構成し、或いは、無線リモコン1の裏に生体認証用の窓を設け、例えば、指紋や虹彩等により人を特定する認証手段を介して取扱いを登録者に限定するべく構成する。このように、特定の者に取扱いを限定することにより、所定の技能レベルを確保して取扱い上の安全性を向上することができる。
【0027】
その他に、機体走行操作について取扱い者を限定する方法として、個別の無線リモコン1について特定のスイッチ操作を条件として設定し、その限定を解除する際も、特定のスイッチ操作を条件とするべく制御装置を構成する。例えば、前後左右4方向スイッチセット6の前進と後退のボタンを同時に押した後に、左旋回と右旋回のボタンを同時に押すことを条件とし、所定の運転技術が認定された特定者にのみこの操作方法を開示することにより、取扱いを特定者に限定することができる。
【0028】
次に、排出オーガdの操作用のスイッチボタンの構成例について説明する。
1個の操作つまみ21を備える集合スイッチにより、排出オーガdの操作を可能とする操作具を構成する。
操作つまみ21は、その平面図(a)、正面図(b)を図5にそれぞれ示すように、略円盤状に形成し、その中心軸線について左右方向の回動動作L,Rをオーガdの左右の旋回移動、中心軸線に沿う押下げ動作Pをオーガ自動旋回の起動と停止の切替え、前後スライド動作の奥行方向Uをオーガdの上昇、手前方向Dをオーガdの下降、右方と左方のスライド動作E,Cをオーガdの伸縮として対応付ける。
【0029】
上記操作つまみ21を備えた集合スイッチは、その制御系統図を図6に示すように、操作つまみ21による集合スイッチの要素スイッチについて、前後スライド動作U,Dと対応する昇降スイッチ22b、左右スライド動作E,Cと対応する伸縮スイッチ23、左右回動動作L,Rと対応する左右旋回スイッチ22a、押下げ動作Pと対応する自動旋回の起動と停止の切替スイッチ25の操作信号を制御部11aに受け、上下動作ソレノイド12b、伸縮動作リレー13、左右旋回リレー12aを出力として制御する。
【0030】
上記構成の単一の操作つまみ21を備えた集合スイッチにより、オーガ排出の起動と停止を除く全ての操作、すなわち、押下げ操作Pによるオーガ自動旋回の起動と停止、前後スライド操作U、Dによるオーガdの昇降、左右の回動操作L,Rによるオーガdの左右の旋回、左右スライド操作E,Cによるオーガdの伸縮が可能となる。
【0031】
このように、オーガ手動関係レバーを1個のスイッチにまとめ、また、自動動作用のスイッチを合わせてまとめることにより、操作席周りががすっきりし、オペレータが操作するときも、スイッチを探すことなく簡単に素早く操作できるようになる。特に、従来、オーガ旋回の場合にオーガの位置によりスイッチの操作に対する旋回方向が判りにくかったが、つまみの旋回方向とオーガdの旋回方向を合わせることで、簡単に分かる。また、スライドさせることによりオーガdの上下、伸縮を行わせるので、スイッチの誤操作を減らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の制御装置を備えるリモコン操作式コンバインの左側面図である。
【図2】運転操作部の操作盤の機器配置俯瞰図である。
【図3】無線リモコンのスイッチ配置図である。
【図4】無線リモコンによる機器制御の制御系統図である。
【図5】操作つまみの平面図(a)、正面図(b)である。
【図6】集合スイッチの制御系統図である。
【符号の説明】
【0033】
1 無線リモコン
2 4方向スイッチセット
3 伸縮用二択スイッチセット
4 排出用切替スイッチ
5 張出収納用切替スイッチ
6 4方向スイッチセット
11、11a 制御部
12a 左右旋回リレー
12b 上下動作ソレノイド
13 伸縮動作リレー
14 排出リレー
16 前後進リレー
d 搬出部(オーガ排出装置)
e クローラ(走行装置)
f 操縦席(運転操作部)
p パワステレバー
q HSTレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦席に配置された機体機器操作用の本体操作具による本体操作具信号および無線リモコンによるリモコン操作信号に応じて機体の前後進走行動作を制御する制御部を備えるリモコン操作式コンバインの制御装置において、
上記機体には、搭乗者の不在を検出する無人センサを設け、この無人センサの検出信号を上記制御部に受けるとともに、同制御部によりその検出信号を条件に上記リモコン操作信号に対応して機体走行動作を制御することを特徴とするリモコン操作式コンバインの制御装置。
【請求項2】
操縦席に配置された機体機器操作用の本体操作具による本体操作具信号および無線リモコンによるリモコン操作信号に応じて機体の前後進走行動作を制御する制御部を備えるリモコン操作式コンバインの制御装置において、
上記操縦席には、機体の搭乗者による操作が可能なリモコン許可スイッチを設け、このリモコン許可スイッチによる許可信号を上記制御部に受けるとともに、同制御部によりその許可信号を条件に上記リモコン操作信号に対応して機体走行動作を制御することを特徴とするリモコン操作式コンバインの制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記本体操作具信号が前記リモコン操作信号に優先して機体の前後進走行動作を制御することを特徴とする請求項2記載のリモコン操作式コンバインの制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−296371(P2006−296371A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126670(P2005−126670)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】