説明

リュックサック

【課題】使用者が歩行や走行等の運動を行う場合にも肩ベルトの装着感がよく、使用者の背中での揺れを十分に抑えることが可能なリュックサックを提供する。
【解決手段】左右一対の肩ベルト24の両端が、袋体12を有した背中面14の上端部と下端部に各々取り付けられている。肩ベルト24は、連結部材28によって連結される部分が最も近接するように、互いに内向きに屈曲した形状を有する。肩ベルト24は、連結部材28が連結されることによって、胸部面で交差したような形状に連結される。使用状態で、左右一対の肩ベルト24が使用者の体側から胸周りに面で接し、背中面14が使用者の背中に面で接する。使用者の腰周りに面で接する腰ベルト20を備え、腰ベルト20の上側の取り付け部22が、背中面14の下側部分に着脱自在に取り付けられる。腰ベルト20は、ストレッチ生地の部分を有し、使用者の腰周りを締め付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷物等の収容物を背負って持ち運ぶリュックサックに関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を収容するリュックサックのうち、例えばトレイルランニングと呼ばれる山岳を走破するスポーツに使用されるものがある。このトレイルランニングは、モンブランのような高地を、昼夜を問わず、100kmもの距離を走り続ける過酷な環境で行われるスポーツであり、選手はリュックサック内に設けたハイドレーションシステムを用いて給水する。このため、背面上の高い位置にリュックサックの袋体が位置するようにしなくてはならない。さらに、夜間照明具、ウォーキングストック、あるいは防寒衣類も袋体に入れることもあり、狭く、岩だらけの山道でのランニングによるリュックサックの横揺れは、選手に大きな負担となる。
【0003】
従来、トレイルランニング、あるいは登山等に使用されるリュックサックにおいては、使用者が背負った後、胸ベルトと腰ベルトを締め付け、水筒等の荷物を収容した袋体を使用者の背中から腰部分に密着させる構造が用いられている。一般に、このような構造にすることによって、使用者が歩行や走行等の運動をしたときに発生する荷物自体の揺れを抑え、また、肩ベルトを介して肩に加わる負荷を軽減する等の効果が期待できる。
【0004】
しかし、これまでのリュックサックを安定させるためのベルトは腹部上で締めており、締めすぎると苦しくなってしまうため、強く締めることができず、リュックサックの揺れを十分に抑えることができなかった。また、腹部上で締めるベルトは、歩行、走行中にベルトがずり上がり、結果的に緩めた状態になりやすかった。
【0005】
その他、特許文献1に開示されるようなトレイルランニング用のリュックサックがある。このリュックサックは、袋体に複数の収容部が設けられ、収容部を仕切る仕切り面のうち背中面と平行な一つの仕切り部分に、袋体を側面方向に貫通する貫通孔が形成され、腰ベルトが貫通孔に挿通されその両端部が貫通孔の開口部両側から突出し、使用状態で、貫通孔よりも背中面側に位置する収容部中の収納物を、使用者の背中と前記腰ベルトによって腰の背後に挟持可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−189430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のリュックサックの場合、ほぼ真っ直ぐな形状の肩ベルトが前記左右一対に設けられ、各々の両端が背中面の上端部と下端部に取り付けられ、一対の肩ベルトが上下に略平行に位置している。従って、使用状態で、使用者は左右の脇に肩ベルトが上下方向に当たって締め付けられ、さらに、一対の肩ベルトの連結部を引くことにより、一対の肩ベルトが互いに近づくように移動し、各肩ベルトの片側が肩から離れ、線状で肩に接した部分に集中して荷重がかかるために、違和感や不快感を感じてしまうものである。
【0008】
また、袋体の形状が上下に長く、その下端部が腰の背後にまで達する構造のため、トレイルランニング等の激しい運動をする場合、リュックサックの背中面が使用者の背中での揺れを十分に抑えることができず、背負い心地が悪く、袋体の振動が背中や腰に悪影響を与えるものであった。
【0009】
この発明は、上記背景技術に鑑みてなされたもので、使用者が歩行や走行等の運動を行う場合にも肩ベルトの装着感がよく、使用者の背中での揺れを十分に抑えることが可能なリュックサックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、荷物の収容部が設けられた袋体と、一方の側に前記袋体が取り付けられ、反対側が使用者の背中に対面する背中面と、前記背中面に取り付けられ、使用者の肩に接する左右一対の肩ベルトと、前記一対の肩ベルトの途中部分を互いに連結する連結部材と、使用者の腰周りに面で接する腰ベルトをとを備えたリュックサックであって、前記左右一対の肩ベルトは、両端が前記背中面の上端部と下端部に各々取り付けられ、前記連結部材によって連結される部分が最も近接するように、互いに内向きに屈曲した形状を有し、前記連結部材で着脱自在に連結されることによって胸部面で交差したような形状に連結され、使用状態で、前記左右一対の肩ベルトが使用者の体側から胸周りに面で接し、前記背中面が、使用者の背中に面で接して前記袋体と一体に保持されるリュックサックである。
【0011】
また、前記連結部材は、使用者の体形に合わせて長さを調節可能に設けられている。前記腰ベルトの上側部分は、前記背中面の下側部分で取り外し可能に設けられているものである。前記腰ベルトは、ストレッチ生地の部分を有し、当該ストレッチ生地が伸縮することによって使用者の腰周りを締め付けるように装着可能である。
【0012】
前記腰ベルトは、その中央部から一対の端部が延設された逆U字状の取付部が上方に設けられ、このU字の頂点部分が前記貫通孔内に挿通され、固定手段によって背中面に着脱自在に固定されるものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明のリュックサックは、左右一対の肩ベルトが連結部材で連結されることによって胸部面で交差したような形状に連結され、使用状態で、肩ベルトが使用者の体側から胸周りに面で接し、背中面が使用者の背中に面で接して袋体と一体に保持される。従って、肩ベルトによる不快な脇の締まりが軽減され装着感が良好で、激しい運動をしてもリュックサックの背中面が使用者の背中にフィットして、揺れを十分に抑え、背負い心地がよい。
【0014】
また、連結部材は連結長さを調節可能に設けられているので、使用者の体形に合わせて微調整することができる。
【0015】
さらに、必要に応じて、袋体の下側部分に腰ベルトの上側部分を取り付け、使用者の腰周りに腰ベルト装着すれば、袋体の下側部分が保持され上下の揺れを非常に小さく抑えることができる。
【0016】
また、腰ベルトの一部にストレッチ生地の部分を設けることによって、使用者の腰周りを適度に締め付け腰の動きをサポートし、疲労感を軽減する等の効用がある。腰ベルトは、骨盤部分で締めることができ、ストレッチ生地を使うことにより締め付けても苦しくなく、ずり上がりも防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明のリュックサックの一実施形態を背中面側から見た図である。
【図2】この実施形態のリュックサックを背後から見た図である。
【図3】この実施形態のリュックサックの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の一実施形態について、図1〜図3に基づいて説明する。この実施形態のリュックサック10は、図1、図2に示すように、内側に荷物の収容部を有する袋体12と、袋体12が一方の側に取り付けられ反対側が使用者の背中に対面する背中面14を有している。背中面14は、使用者の背中上部に位置可能な形状に形成され、袋体12が背中上部に位置するように設定されている。袋体12の内部は図示しない複数の収容部に区切られ、上開口部にはスライドファスナ12aが開閉自在に設けられている。
【0019】
背中面14は、通気性を良くするために、ナイロンやポリエステル等の網目状の編み地で構成されている。袋体12と背中面14との境界は、下側半分ほどが離間し、袋体12の下端部と背中面14の下端部とが、各部に設けられた面ファスナ18a,18bの係合によって接続され、左右方向に貫通する貫通孔16が形成されている。この貫通孔16の内側には、後述する腰ベルト20の取付部22が保持されている。ここで、トレイルランニングにこのリュックサック10を用いる場合、飲料水を入れたタンクであるリザーバーは、背中面14と袋体12の間に収納され、図示しないストローチューブを通し、使用者がリザーバーから飲料水を吸飲する。
【0020】
背中面14の上端部には、一対の肩ベルト24が上方に突出して設けられている。肩ベルト24は、背中面14及び袋体12が使用者の背中上方に位置するように形成されている。肩ベルト24は、図2に示すように、途中で互いに内向きに屈曲した形状に形成されているパット部24aと、パット部24aが外向きに広がった下端部を背中面14の下端部に連結固定する平紐24bとで構成されている。パット部24aは、使用者の肩に面で接する側の面が硬質パット材にて形成され、肩に加わる荷重を分散させる働きをする。平紐24bが背中面14に固定されている部分は、使用者の体形に合わせて平紐24bの長さを調節可能な構造になっている。また、パット部24aの所定部分に、飲料水を入れたフラスコなどを収容するポケット26が設けられている。
【0021】
一対の肩ベルト24は、パット部24bが内向きに屈曲し最も近接している部分が、連結部材28によって互いに連結される。連結部材28は比較的短く設けられることが好ましく、左右一対の肩ベルト24が連結部材28で連結されると、図3に示すように、肩ベルト24が胸部面で交差したような形状に連結される。ここで、連結部材28は、一対のベルトの先端に、雄雌のバックルがベルト長さを調節可能に取り付けられ、使用者の操作によりワンタッチで着脱できるようになっている。また、パット部24aに連結された一対のベルトの基端部は、パット部24a上で上下方向の位置が調節可能に設けられている。
【0022】
腰ベルト26は、使用者の腰周りのよりも長い布地の帯体であり、長手方向の中央部は、伸縮可能なストレッチ生地部30により形成され、ストレッチ生地部30の両側から一対のベルト部32,34が延設されている。腰ベルト26の長手方向ほぼ中央の領域には、逆U字状の取付部22が上方に延設され、このU字の頂点部分が上記の貫通孔16内に挿通され、図示しない面ファスナ又はバックル等の固定手段によって、背中面14に着脱自在に固定されている。また、腰ベルト26の一対のベルト部32,34の先端部には、使用者の腰に装着されたとき互いに係合する面ファスナ36a,36bが設けられ、また、外側の面には、小物などを出し入れするポケット38等が設けられている。
【0023】
このリュックサック10は、使用者が身につけた状態で、図3に示すように、左右一対の肩ベルト24が使用者の体側から胸周りにかけて、肩ベルト24の裏面側が良好に面で接し、背中面14も使用者の背中に面状に接して、袋体12と一体に保持される。また、腰ベルト20は、腰周りに巻かれ、ベルト部32,34同士が面ファスナ36a,36bによって固定され、背中面14の下側部分が腰ベルト20を介して腰周りに保持される。
【0024】
以上説明したリュックサック10は、左右一対の肩ベルト24が連結部材28で連結されることによって、使用者の胸部面で交差したような形状に連結され、使用状態では、肩ベルト24が使用者の体側から胸周りに面で接し、背中面14が使用者の背中に面状に接して袋体12と一体に保持される。従って、肩ベルト24による不快な脇の締まりが軽減され装着感が良好で、激しい運動をしてもリュックサック10の背中面14が使用者の背中での揺れを十分に抑え、袋体12の揺れが少なく背負い心地がよい。特に、袋体12の下側部分が取り付け部22を介して腰ベルト20によって保持されるので、袋体12の上下の揺れが非常に小さく抑えられる。
【0025】
また、腰ベルト20の一部にストレッチ生地部30が用いられているので、使用者の腰周りを適度に締め付け、腰の動きをサポートし、疲れを防止する等の効用がある。
【0026】
なお、この発明のリュックサックは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、一対の肩ベルトが内側に屈曲する形状は、連結部材で連結されることによって、概ね胸部面で交差したような形状であればよく、V字状、U字状その他のデザイン性を考慮した曲線状に屈曲するものであってもよく、幅寸法についても、多少の広い狭いがあってもよい。
【0027】
また、背中面や腰ベルトが使用者の身体に面で接する部分に、ナイロンやポリエステル等の繊維によって立体メッシュ構造の編み地を形成し、汗によって背中が蒸れたり濡れたりしないように、より通気性をよくした構造にしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 リュックサック
12 袋体
14 背中面
20 腰ベルト
24 肩ベルト
22 取付部
24a パット部
24b 平紐
28 連結部材
30 ストレッチ生地部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物の収容部が設けられた袋体と、一方の側に前記袋体が取り付けられ、反対側が使用者の背中に対面する背中面と、前記背中面に取り付けられ、使用者の肩に接する左右一対の肩ベルトと、前記一対の肩ベルトの途中部分を互いに連結する連結部材と、使用者の腰周りに面で接する腰ベルトをとを備えたリュックサックにおいて、
前記左右一対の肩ベルトは、両端が前記背中面の上端部と下端部に各々取り付けられ、前記連結部材によって連結される部分が最も近接するように、互いに内向きに屈曲した形状を有し、前記連結部材で着脱自在に連結されることによって胸部面で交差したような形状に連結され、
使用状態で、前記左右一対の肩ベルトが使用者の体側から胸周りに面で接し、前記背中面が、使用者の背中に面で接して前記袋体と一体に保持されることを特徴とするリュックサック。
【請求項2】
前記連結部材は、使用者の体形に合わせて長さを調節可能に設けられている請求項1記載のリュックサック。
【請求項3】
前記腰ベルトの上側部分が、前記背中面の下側部分で取り外し可能に設けられている請求項1又は2記載のリュックサック。
【請求項4】
前記腰ベルトは、ストレッチ生地の部分を有し、当該ストレッチ生地が伸縮することによって使用者の腰周りを締め付けるように装着可能な請求項3記載のリュックサック。
【請求項5】
前記腰ベルトは、その中央部から一対の端部が延設された逆U字状の取付部が上方に設けられ、このU字の頂点部分が前記貫通孔内に挿通され、固定手段によって背中面に着脱自在に固定される請求項3または4記載のリュックサック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−24420(P2012−24420A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167573(P2010−167573)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(594137960)株式会社ゴールドウイン (19)
【出願人】(592019523)株式会社ゴールドウインテクニカルセンター (35)
【Fターム(参考)】