説明

リラクシン遺伝子を含む遺伝子伝達システム及びリラクシンを用いた薬剤学的組成物

本発明は、リラクシン(relaxin)−エンコーディングヌクレオチド序列を追加的に含み、前記リラクシンは、前記目的ヌクレオチド序列の細胞内運搬効率を増加させる作用をすることを特徴とする遺伝子伝達システム、リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列を含む組み換えアデノウイルス、これを含む抗腫瘍薬剤学的組成物、改善された組織浸透性を有する薬剤学的組成物、及び細胞外基質の過度なる蓄積に係る疾患または状態の治療用薬剤学的組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子伝達システム及び組み替えアデノウイルスに関するものであって、より詳細には、リラクシン遺伝子を含む遺伝子伝達システム、組み替えアデノウイルス及び前記組み換えアデノウイルスを含む抗腫瘍薬剤学的組成物、改善された組織浸透性を有する薬剤学的組成物、及び細胞外基質の過度なる蓄積に係る疾病または疾患の治療用薬剤学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、外来の遺伝子を細胞または組織に移入させて病的状態を治療する手法である。鎌状赤血球症、α1抗トリプシン欠乏症、フェニルケトン尿症、血友病、及び嚢胞性線維症のような遺伝病において、遺伝子治療の目標は、欠乏遺伝子を代替して細胞または組織が正常的に機能するようにすることである。また、遺伝子治療は、非正常的細胞を除去することにも利用される。癌、炎症、自己免疫疾患のような病的状態において、遺伝子治療は、ターゲット非正常細胞の死滅を引き起こす遺伝子を移入して、これらの疾病の治療を可能にする。
【0003】
このような遺伝子治療の可能性にも拘わらず、細胞または組織への遺伝子の不十分な伝達は、遺伝子治療の重要な障害要因である。例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアデノ-関連ウイルス(Adeno-associated viruses: AAV)を利用した遺伝子伝達に対する多くの研究がなされてきたが、実際、個体に適用された時または特定組織(例えば、腫瘍組織)に適用された時は、十分な遺伝子伝達効率を奏しなくなり、遺伝子治療の効用性を低下させている。
【0004】
したがって、現在開発された遺伝子伝達システムより改善された遺伝子伝達効率を示す新しい遺伝子伝達方法の開発は、成功的な遺伝子治療のために、絶対的に必要である。
【0005】
一方、アデノウイルスを利用した初期の遺伝子治療は、アデノウイルスの複製に必須的なE1遺伝子の代わりに、治療用遺伝子を挿入した複製不能アデノウイルスを主に利用したが、これらのアデノウイルスは、感染された細胞とその周辺でのみ制限的に抗腫瘍効果を誘導して、臨床的な実用性の側面において制約が多かった。
【0006】
これを克服するための一つの方案として、癌細胞でのみ選択的に増殖して癌細胞を殺傷する腫瘍特異的殺傷アデノウイルスであるONYX−015(dl1520)が開発された。ONYX−015は、E1B 55 kDa遺伝子が部分的に欠損されたアデノウイルスであって、p53が、機能的に非活性化された細胞でのみ増殖が可能である。即ち、正常細胞では、ONYX−015アデノウイルスがp53を非活性化することができなく、ウイルスの増殖が抑えられ、細胞殺傷を誘導することができない反面、p53の機能が抑えられている癌細胞では、ウイルスの増殖が活発に起こり、究極的に癌細胞だけを選択的に殺傷するようになる(Chang, F., et al., J Clin Oncol 13:1009-22(1995))。
【0007】
最近、頭頸部癌を対象に進行されたphase−II/III臨床試験の結果、腫瘍特異的殺傷アデノウイルスの優れた治療効果が報告された(Kirn, D., et al., Nat Med 4:1341-2(1998); Nemunaitis, J. et al., Cancer Res 60:6359-66(2000); Ganly, I. et al., Clin Cancer Res 6:798-806(2000))。しかしながら、これらのウイルスの投与により、頭頸部腫瘍の成長が部分的に抑制されたのは事実であるが、完全に消滅されたわけではなく、一定期間が過ぎた後には、腫瘍の成長がさらに速やかに進行された。
【0008】
このような結果は、局所的に腫瘍内投与されたアデノウイルスが一部周辺にのみ拡散されて、腫瘍組織の全体に広がらなかったため、抗腫瘍効果が制限的に誘導されて、ウイルスに感染されていない腫瘍細胞が再び速やかに成長したからであると考えられる。最近の研究報告によると、ヌードマウスに形成された人体腫瘍内に投与されたアデノウイルスは、ウイルスの投与後、100日が経った場合にも、腫瘍内で複製が起こり、腫瘍組織から生きているウイルスを抽出することができたにも拘わらず、腫瘍を完全に消滅させることはできなかった(Sauthoff, H. et al., Human Gene Therapy 14:425-433(2003))。
【0009】
したがって、理想的な腫瘍特異的殺傷アデノウイルスは、強力な細胞殺傷能を誘導することができるだけではなく、投与されたアデノウイルスが腫瘍組織の全体によく拡散されて、周辺の癌細胞を効率的に感染することができなければならない。
【0010】
本明細書全体にかけて多数の特許文献及び論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、遺伝子伝達システムの伝達効率、特に、組織内における遺伝子伝達システムの浸透性(あるいは拡散性)を増加させるために鋭意研究した結果、リラクシンが遺伝子伝達効率を大きく改善できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、リラクシン(relaxin)−エンコーディングヌクレオチド序列を含む新規遺伝子伝達システムを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、伝達効率の改善された遺伝子伝達方法を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、腫瘍組織浸透能及び腫瘍細胞アポトーシス能の改善された組み換えアデノウイルスを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、上述の組み換えアデノウイルスを含む薬剤学的抗腫瘍組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、上述の薬剤学的抗腫瘍組成物を利用した癌の治療方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、改善された組織浸透性を有する薬剤学的組成物を提供することにある。
【0018】
本発明のまた他の目的は、細胞外基質の過度なる蓄積に係る疾病または疾患の治療用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲、及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一様態によると、本発明は、細胞内に運搬しようとする目的ヌクレオチド序列を含む遺伝子伝達システムにおいて、前記遺伝子伝達システムは、リラクシン(relaxin)−エンコーディングヌクレオチド序列を追加的に含み、前記リラクシンは、前記目的ヌクレオチド序列の細胞内運搬効率を増加させる作用をすることを特徴とする遺伝子伝達システムを提供する。
【0021】
本発明者らは、遺伝子伝達システムの伝達効率、特に、組織内における遺伝子伝達システムの浸透性(あるいは、拡散性)を増加させるために鋭意研究した。このような研究の方向は、細胞外基質(ECM)の構成成分の合成を阻害するかまたは分解を促進し、細胞外基質の構成成分を減少させれば、組織内における遺伝子伝達システムの拡散を増大させることができるという仮説に基づいたものである。結局、本発明者らは、リラクシンが遺伝子伝達効率を大きく改善できるという驚くべき事実を見出した。
【0022】
本明細書において、用語“リラクシン”は、実施例に示されたリラクシンだけではなく、本発明で目標とする遺伝子伝達効率を増加させることのできるリラクシンのあらゆる擬似体(homologues)を含む。
【0023】
本発明において、遺伝子伝達効率を改善するリラクシン(Relaxin:RLX)は、インシュリンとインシュリン様成長因子(IGF)部類に属する6kDaのペプチドホルモンとして知られているものであって、主に黄体と子宮内膜で作られて、妊娠期間中に血漿内濃度が大きく増加する(Sherwood, O. D., et al., Dynamic changes of multiple forms of serum immunoactive relaxin during pregnancy in the rat. Endocrinology 114:806-13(1984))。初期研究結果で、リラクシンは、妊娠期間中にのみ生殖器官で活性を示すと報告されて、“妊娠ホルモン”として分類されていたが、最近の研究結果により、リラクシンは、生殖器官以外の他の組織でも生物学的活性を示すと報告されて、“マスターホルモン”として分類されている(Hisaw, F. L., et al., Effects of relaxin on the endothelium of endometrial blood vessels in monkeys (Macaca mulatta). Endocrinology 81:375-85(1967))。
【0024】
リラクシンは、妊娠ホルモンと呼ばれているように、胎盤と子宮との成長と再生を促進し、子宮頸部を柔らかくして、分娩時、産道を広げる機能をする。これは、産道組織において、MMP2、MMP3、及びMMP9などのような数種のMMPの発現を促進してコラーゲンを分解し、結締組織さらには基底膜までも破壊して、産道細胞外基質の分解を誘導することができるからである。だけではなく、肺、心臓、皮膚、乳頭、小腸、乳腺、血管、精管でもリラクシンによるMMP1とMMP3の促進が観察されて、これらの組織において、リラクシンは、コラーゲンの過発現を防ぐ抑制剤として作用すると報告された (Qin, X., et al., Biol Reprod 56:800-11(1997); Qin, X., et al., Biol Reprod 56:812-20(1997);及びPalejwala, S. et al., Endocrinology 142:3405-13(2001))。
【0025】
本発明の遺伝子伝達システムにおいて、リラクシンが遺伝子伝達効率を増加させるメカニズムの一つは、リラクシンが、細胞を囲んでいる細胞外基質成分の大部分を占めているコラーゲンを分解し、 結締組織さらには基底膜までも破壊して、細胞外基質の分解を誘導することができるからであると判断されて、このようなメカニズムは、下記の実施例により検証される。
【0026】
したがって、上述のリラクシンの作用を参照すると、本発明の遺伝子伝達システムは、細胞外基質により連結された細胞からなる組織内の細胞において、その長所が顕著に現れる。特に、結締組織により堅固に囲まれている腫瘍組織に本発明の遺伝子伝達システムが適用されると、従来のいかなる伝達体よりも改善された伝達効率を示す。
【0027】
本明細書において、用語“遺伝子伝達”は、遺伝子が細胞内に運搬されることを意味し、遺伝子の細胞内浸透(transduction)と同一な意味を有する。組織水準において、前記遺伝子伝達は、遺伝子の拡散(spread)と同一な意味を有する。したがって、本発明の遺伝子伝達システムは、遺伝子浸透システム及び遺伝子拡散システムとも記載できる。
【0028】
本発明の遺伝子伝達システムを製造するために、リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列は、適合した発現コンストラクト(Expression construct)内に存在することが好ましい。前記発現コンストラクトにおいて、リラクシン遺伝子は、プロモーターに作動的に連結されることが好ましい。本明細書において、用語“作動的に結合された”は、核酸発現調節序列(例えば、プロモーター、シグナル序列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸序列との間の機能的な結合を意味し、これにより、前記調節序列は、前記他の核酸序列の転写及び/または解読を調節するようになる。本発明において、リラクシン遺伝子に結合されたプロモーターは、好ましくは、動物細胞、より好ましくは、哺乳動物細胞で作動し、リラクシン遺伝子の転写を調節することができるものであって、哺乳動物ウイルス由来のプロモーター及び哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーターを含み、例えば、CMV(Cytomegalo virus)プロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、RSVプロモーター、EF1アルファプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ベータ−アクチンプロモーター、ヒトIL−2遺伝子のプロモーター、ヒトIFN遺伝子のプロモーター、ヒトIL−4遺伝子のプロモーター、ヒトリンホトキシン遺伝子のプロモーター、及びヒトGM−CSF遺伝子のプロモーターを含むが、これに限定されるものではない。最も好ましくは、CMVプロモーターである。
【0029】
好ましくは、本発明に利用される発現コンストラクトは、ポリアデニル化序列を含む(例えば、牛成長ホルモンターミネーター及びSV40由来ポリアデニル化序列)。
【0030】
本発明の好ましい具現例によると、本発明に利用されるリラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列は、“プロモーター−リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列−ポリアデニル化序列”の構造を有する。
【0031】
本発明の遺伝子伝達システムにおいて、細胞内に運搬しようとする目的のヌクレオチド序列も、上述のリラクシン遺伝子の発現コンストラクトと同一な方法により発現コンストラクトに構築することができる。
【0032】
本発明で細胞内に運搬しようとする目的ヌクレオチド序列は、いかなるヌクレオチド序列でも可能であって、例えば、癌細胞の死滅を誘導して、究極的に腫瘍を退化させる癌治療遺伝子として、腫瘍抑制遺伝子、免疫調節遺伝子[例えば、サイトカイン遺伝子、ケモカイン遺伝子、及び共刺激因子(Costimulatory factor:B7.1とB7.2のようなT細胞活性に必要な補助分子)]、抗原性遺伝子、自殺遺伝子、細胞毒性遺伝子、細胞増殖抑制遺伝子、親−細胞死滅遺伝子、及び抗−新生血管生成遺伝子が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0033】
自殺遺伝子は、細胞が外部因子により殺傷され易くなるように誘導する物質を発現するか、細胞に毒性条件を誘発する核酸序列である。このような自殺遺伝子としてよく知られているものは、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子である(米国特許第5,631,236号及び第5,601,818号)。TK遺伝子産物を発現する細胞は、ガンシクロビル(gancyclovir)の投与により選択的な死滅に敏感である。腫瘍抑制遺伝子は、腫瘍の形成を抑制するポリペプチドを暗号化する遺伝子を意味する。腫瘍抑制遺伝子は、哺乳動物において自然発生遺伝子であり、この遺伝子の欠失または不活性化は、腫瘍発生に必須前提とされている。腫瘍抑制遺伝子の例としては、APC、DPC4、NF−1、NF−2、MTS1、WT1、BRCA1、BRCA2、VHL、p53、Rb、MMAC−1、MMSC−2、網膜芽細胞腫遺伝子(Lee et al. Nature, 329:642(1987))、大腸腺腫症遺伝子蛋白質(adenomatous polyposis coli protein;米国特許第5,783,666号)、染色体3p21.3に位置した鼻咽喉腫瘍抑制因子遺伝子(Cheng et al. Proc. Nat .Acad. Sci., 95:3042-3047(1998))、欠損された血漿腫瘍(DCC)遺伝子、MTS1、CDK4、VHL、p110Rb、p16、及びp21を含む腫瘍抑制遺伝子のINK4系列の一員及びこれの治療学的に有効な断片(例えば、p56Rb、p94Rbなど)が含まれる。当業者なら、前記例示した遺伝子に限定されず、その他に知られたあらゆる抗腫瘍遺伝子が本発明に使用できるということが分かるだろう。
【0034】
本明細書において、用語“抗原性遺伝子(antigenic gene)”は、ターゲット細胞内で発現されて、免疫システムで認識できる細胞表面抗原性蛋白質を生産するヌクレオチド序列を意味する。このような抗原性遺伝子の例には、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen, CEA)及びPSA(prostate specific antigen)、AFP(α-feto protein)、p53(WO 94/02167)が含まれる。免疫システムが容易に認識するようにするために、前記抗原性遺伝子をMHC第I型抗原に結合させることができる。
【0035】
本明細書において、用語“細胞毒性遺伝子(Cytotoxic gene)”は、細胞内で発現されて毒性効果を示すヌクレオチド序列を意味する。このような細胞毒性遺伝子の例には、シュードモナス外毒素(exotoxin)、リシン毒素、ジフテリア毒素などをコーディングするヌクレオチド序列が含まれる。
【0036】
本明細書において、用語“細胞増殖抑制遺伝子(cytostatic gene)”は、細胞内で発現されて、細胞周期途中に細胞周期を停止させるヌクレオチド序列を意味する。このような細胞増殖抑制遺伝子の例には、p21、網膜芽細胞腫遺伝子、E2F−Rb融合蛋白質遺伝子、シクリン−従属性キナーゼ抑制因子をコーディングする遺伝子(例えば、p16、p15、p18及びp19)、成長中止特異性ホメオボックス(growth arrest specific homeobox, GAX)遺伝子(WO 97/16459及びWO 96/30385)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0037】
また、各種疾患を治療するに有用に使用できる種々の治療遺伝子も、本発明のシステムにより運搬される。例えば、サイトカイン(例えば、インターフェロン−α、−β、−δ、−γ)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-19、及びIL-20)、及びコロニー刺激因子(例えば、GM-CSF及びG-CSF)を暗号化する遺伝子、ケモカイングループ(単球走化性蛋白質1(MCP-1)、単球走化性蛋白質2(MCP-2)、単球走化性蛋白質3(MCP-3)、単球走化性蛋白質4(MCP-4)、マクロファージ炎症性蛋白質1α(MIP-1α)、マクロファージ炎症性蛋白質1β(MIP-1β)、マクロファージ炎症性蛋白質1γ(MIP-1γ)、マクロファージ炎症性蛋白質3α(MIP-3α)、マクロファージ炎症性蛋白質3β(MIP-3β)、ケモカイン(ELC)、マクロファージ炎症性蛋白質4(MIP-4)、マクロファージ炎症性蛋白質5(MIP-5)、LD78β、RANTES、SIS−イプシロン(p500)、胸腺活性化調節されるケモカイン(TARC)、エオタキシン、I−309、ヒト蛋白質HCC−1/NCC−2、ヒト蛋白質HCC−3、マウス蛋白質C10など)が含まれる。また、組織プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼを発現する遺伝子及び持続的な血栓効果を提供して、高コレステロール血症を予防するLAL生成遺伝子が含まれる。また、嚢胞性線維症、アデノシンデアミナーゼ欠乏症及びAIDSのようなウイルス、悪性または炎症疾患を治療するための数種のポリヌクレオチドが知られている。
【0038】
本明細書において、用語“親−細胞死滅遺伝子(Pro-apoptotic gene)”は、発現されて、プログラムされた細胞消滅を誘導するヌクレオチド序列を意味する。このような親−細胞死滅遺伝子の例には、p53、アデノウイルスE3−11.6K(Ad2及びAd5由来)またはアデノウイルスE3−10.5K(Ad由来)、アデノウイルスE4遺伝子、Fasリガンド、TNF−α、TRAIL、p53経路遺伝子及びカスパーゼをコーディングする遺伝子が含まれる。
【0039】
本発明の明細書において、用語“抗−新生血管生成遺伝子(anti-angiogenic gene)”は、発現されて、抗−新生血管生成因子を細胞外に放出するヌクレオチド序列を意味する。抗−新生血管生成因子には、アンジオスタチン、Tie 2(PNAS, 1998, 95,8795-800)のような血管内皮成長因子(VEGF)の抑制因子、エンドスタチンなどが含まれる。
【0040】
上述の目的のヌクレオチド序列は、GenBankまたはEMBLのようなDNA序列データバンクから入手できる。
【0041】
本発明の遺伝子伝達システムは、多様な形態に製作することができるが、これは、(i)ネーキッド(naked)組み換えDNA分子、(ii)プラスミド、(iii)ウイルスベクター、そして(iv)前記ネーキッド組み換えDNA分子またはプラスミドを内包するリポソームまたはネオソームの形態に製作することができる。
【0042】
リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列は、通常的な遺伝子治療に利用される全ての遺伝子伝達システムに適用できて、好ましくは、プラスミド、アデノウイルス(Lockett LJ, et al., Clin. Cancer Res. 3:2075-2080(1997))、アデノ−関連ウイルス(Adeno-associated viruses: AAV, Lashford LS., et al., Gene Therapy Technologies, Applications and Regulations Ed. A. Meager, 1999)、レトロウイルス(Gunzburg WH, et al., Retroviral vectors. Gene Therapy Technologies, Applications and Regulations Ed. A. Meager, 1999)、レンチウイルス(Wang G. et al., J. Clin. Invest. 104(11):R55-62(1999))、単純ヘルペスウイルス(Chamber R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:1411-1415(1995))、ワクシニアウイルス(Puhlmann M. et al., Human Gene Therapy 10:649-657(1999))、リポソーム(Methods in Molecular Biology, Vol 199, S.C. Basu and M. Basu (Eds.), Human Press 2002)、またはネオソームに適用できる。最も好ましくは、本発明の遺伝子伝達システムは、リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列をアデノウイルスに適用して製造される。
【0043】
i.アデノウイルス
アデノウイルスは、中間程度のゲノムサイズ、操作の便宜性、高いタイター、広範囲のターゲット細胞、及び優れた感染性から、遺伝子伝達ベクターとしてよく利用されている。ゲノムの両末端は、100〜200bpのITR(inverted terminal repeat)を含み、これは、DNA複製及びパッケージングに必須的なシスエレメントである。ゲノムのE1領域(E1A及びE1B)は、転写及び宿主細胞遺伝子の転写を調節する蛋白質をコーディングする。E2領域(E2A及びE2B)は、ウイルスDNA複製に関与する蛋白質をコーディングする。
【0044】
現在開発されたアデノウイルスベクターの中で、E1領域の欠如された複製不能アデノウイルスがよく利用されている。一方、E3領域は、通常的なアデノウイルスベクターから除去され、外来遺伝子が挿入される座を提供する(Thimmappaya, B. et al., Cell, 31:543-551(1982); Riordan, J. R. et al., Science, 245:1066-1073(1989))。したがって、本発明のリラクシン遺伝子は、欠失されたE1領域(E1A領域及び/またはE1B領域、好ましくは、E1B領域)、またはE3領域に挿入されることが好ましく、より好ましくは、欠失されたE3領域に挿入される。一方、細胞内に運搬しようとする目的ヌクレオチド序列は、欠失されたE1領域(E1A領域及び/またはE1B領域、好ましくは、E1B領域)、またはE3領域に挿入されることが好ましく、より好ましくは、欠失されたE1領域に挿入される。また、前記挿入序列は、欠失されたE4領域にも挿入できる。本明細書において、ウイルスゲノム序列と関連して使用される用語、“欠失”は、該当序列が完全に欠失されたものだけではなく、部分的に欠失されたものも含む意味を有する。
【0045】
本発明の最も好ましい具現例によると、本発明のアデノウイルス遺伝子伝達システムは、“プロモーター−目的ヌクレオチド序列−ポリA序列”と“プロモーター−リラクシン遺伝子−ポリA序列”とが連結された構造を有して、前記“プロモーター−目的ヌクレオチド序列−ポリA序列”は、欠失されたE1領域(E1A領域及び/またはE1B領域、好ましくは、E1B領域)、またはE3領域、好ましくは、欠失されたE1領域に挿入されたものであり、前記“プロモーター−リラクシン遺伝子−ポリA序列”は、欠失されたE1領域(E1A領域及び/またはE1B領域、好ましくは、E1B領域)、またはE3領域、好ましくは、欠失されたE3領域に挿入されたものである。また、“プロモーター−目的ヌクレオチド序列−ポリA序列−IRES−リラクシン遺伝子−ポリA序列”のように、目的ヌクレオチドとリラクシン遺伝子がIRES(internal ribosome entry site)により連結されたバイシストロン(bicistronic)発現システムによっても発現可能である。
【0046】
また、アデノウイルスは、野生型ゲノムの約105%までパッケージングすることができるため、約2kbを追加的にパッケージングすることができる(Ghosh-Choudhury et al., EMBO J., 6:1733-1739(1987))。したがって、アデノウイルスに挿入される上述の外来序列は、アデノウイルスのゲノムに追加的に結合させることもできる。
【0047】
アデノウイルスは、42個の相異なる血清型及びA〜Fのサブグループを有する。この中で、サブグループCに属するアデノウイルスタイプ5が、本発明のアデノウイルスベクターを得るための最も好ましい出発物質である。アデノウイルスタイプ5に対する生化学的及び遺伝的情報は、よく知られている。
【0048】
アデノウイルスにより運搬される外来遺伝子は、エピソームと同一な方式により複製されて、そのため、宿主細胞に対して遺伝的毒性が非常に低い。したがって、本発明のアデノウイルス遺伝子伝達システムを利用した遺伝子治療が非常に安全であると判断される。
【0049】
ii.レトロウイルス
レトロウイルスは、自分の遺伝子を宿主のゲノムに挿入させて、大量の外来遺伝物質を運搬することができ、感染できる細胞のスペクトルが広いため、遺伝子伝達ベクターとしてよく利用されている。
【0050】
レトロウイルスベクターを構築するために、リラクシン遺伝子及び運搬しようする目的ヌクレオチド序列は、レトロウイルスの序列の代わりにレトロウイルスゲノムに挿入されて、複製不能のウイルスを生産する。ビリオンを生産するために、gag、pol及びenv遺伝子を含むが、LTR(long terminal repeat)とΨ序列は含まないパッケージング細胞株を構築する(Mann et al., Cell, 33:153-159(1983))。リラクシン遺伝子、運搬しようとする目的ヌクレオチド序列、LTR及びΨ序列を含む組み換えプラスミドを前記細胞株に移入すると、Ψ序列は、組み換えプラスミドのRNA転写体の生産を可能にして、この転写体は、ウイルスにパッケージングされて、ウイルスは、培地に排出される(Nicolas and Rubinstein "Retroviral vectors," In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses, Rodriguez and Denhardt (eds.), Stoneham: Butterworth, 494-513(1988))。組み換えレトロウイルスを含有する培地を収集して濃縮し、遺伝子伝達システムに利用する。
【0051】
2世帯レトロウイルスベクターを利用した遺伝子伝達が発表された。Kasaharaら(Science, 266:1373-1376(1994))は、モロニーマウス白血病ウイルス(moloney-murine leukemia virus)の変異体を製造して、ここで、EPO(erythropoietin)序列をエンベロープ部位に挿入して、新しい結合特性を有するキメリック蛋白質(Chimeric proteins)を生産した。本発明の遺伝子伝達システムも、このような2世帯レトロウイルスベクターの構築戦略により製造することができる。
【0052】
iii.AAVベクター
アデノ関連ウイルス(AAV)は、非分裂細胞を感染させることができて、多様な種類の細胞に感染できる能力を有しているため、本発明の遺伝子伝達システムに適合している。AAVベクターの製造及び用途に対する詳細な説明は、米国特許第5,139,941号及び第4,797,368号に詳細に開示されている。
【0053】
遺伝子伝達システムとしてのAAVに対する研究は、LaFace et al, Viology, 162:483486(1988), Zhou et al., Exp. Hematol. (NY), 21:928-933(1993), Walsh et al, J. Clin. Invest., 94:1440-1448(1994)、及びFlotte et al., Gene Therapy, 2:29-37(1995)に開示されている。最近、AAVベクターは、嚢胞性線維症の治療剤として臨床Iを施している。
【0054】
典型的に、AAVウイルスは、二つのAAV末端リピートが両側に位置されている目的の遺伝子序列(リラクシン遺伝子及び運搬しようとする目的ヌクレオチド序列)を含むプラスミド(McLaughlin et al., J. Virol., 62:1963-1973(1988);及びSamulski et al., J. Virol., 63:3822-3828(1989))及び末端リピートのない野生型AAVコーディング序列を含む発現プラスミド(McCarty et al., J. Virol., 65:2936-2945( 1991))を同時形質転換させて製造される。
【0055】
iv.他のウイルスベクター
他のウイルスベクターも、本発明の遺伝子伝達システムとして利用することができる。ワクシニアウイルス(Puhlmann M. et al., Human Gene Therapy 10:649-657(1999); Ridgeway, "Mammalian expression vectors," In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses. Rodriguez and Denhardt, eds. Stoneham: Butterworth, 467-492(1988); Baichwal and Sugden, "Vectors for gene transfer derived from animal DNA viruses: Transient and stable expression of transferred genes," In: Kucherlapati R, ed. Gene transfer. New York: Plenum Press, 117-148( 1986)及びCoupar et al., Gene, 68:1-10(1988))、レンチウイルス(Wang G. et al., J. Clin. Invest. 104(11):R55-62(1999))、または単純ヘルペスウイルス(Chamber R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:1411-1415(1995))由来のベクターも、リラクシン遺伝子及び運搬しようとする目的ヌクレオチド序列を細胞内に運搬することができる運搬システムとして利用することができる。
【0056】
v.リポソーム
リポソームは、水上に分散された燐脂質により自然に形成される。外来DNA分子をリポソームにより成功的に細胞内に運搬した例は、Nicolau及びSene, Biochim. Biophys. Acta, 721:185-190(1982)、及びNicolau et al., Methods Enzymol., 149:157-176(1987)に開示されている。一方、リポソームを利用した動物細胞の形質転換に最もよく利用される試薬としては、Lipofectamine(Gibco BRL)がある。リラクシン遺伝子及び運搬しようとする目的ヌクレオチド序列を内包したリポソームは、エンドサイトーシス、細胞表面への吸着またはプラズマ細胞膜との融合などのメカニズムを通じて細胞と相互作用し、細胞内にリラクシン遺伝子及び運搬しようとする目的ヌクレオチド序列を運搬する。
【0057】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明の遺伝子伝達システムを、細胞を含むバイオサンプルに接触させる段階を含む遺伝子伝達方法を提供する。
【0058】
本発明において、遺伝子伝達システムがウイルスベクターに基づいて製作された場合は、前記接触させる段階は、当業界に公知されたウイルス感染方法により行われる。ウイルスベクターを利用した宿主細胞の感染は、上述の引用文献に記載されている。
【0059】
本発明において、遺伝子伝達システムがネーキッド(naked)組み換えDNA分子またはプラスミドの場合は、微細注入法(Capecchi, M.R., Cell, 22:479(1980);及びHarlandとWeintraub, J. Cell Biol. 101:1094-1099(1985))、カルシウムフォスフェート沈殿法(Graham, F.L. et al., Virology, 52:456(1973);及びChenとOkayama, Mol. Cell. Biol. 7:2745-2752(1987))、電気穿孔法(Neumann, E. et al., EMBO J., 1:841(1982);及びTur-Kaspa et al., Mol. Cell Biol., 6:716-718(1986))、リポソーム−媒介形質感染法(Wong, T.K. et al., Gene, 10:87(1980); Nicolau及びSene, Biochim. Biophys. Acta, 721:185-190(1982);及びNicolau et al., Methods Enzymol., 149:157-176(1987))、DEAE−デキストラン処理法(Gopal, Mol. Cell Biol., 5:1188-1190(1985))、及び遺伝子ボンバードメント(Yang et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:9568-9572(1990))方法により、遺伝子を細胞内に移入させることができる。
【0060】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、アデノウイルスのITR(inverted terminal repeat)ヌクレオチド序列及びリラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列を含み、前記リラクシンは、アデノウイルスの腫瘍組織浸透能及び腫瘍細胞アポトーシス能を増大させる作用をすることを特徴とする組み換えアデノウイルスを提供する。
【0061】
本発明の組み換えアデノウイルスは、従来の組み換えアデノウイルスにリラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列を追加的に結合させ、アデノウイルスの腫瘍組織浸透能及び腫瘍細胞アポトーシス能を増大させて、アデノウイルスによる癌治療効能を大きく増加させる。
【0062】
アデノウイルスゲノムの小さい部分だけがcisで必要であると知られているため(Tooza, J. Molecular biology of DNA Tumor viruses, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.(1981))、アデノウイルスは、大量の外来DNA分子を運搬できる能力があり、これは特に、293のような特定細胞株を利用する場合にそうである。このような側面で、本発明の組み換えアデノウイルスにおいて、リラクシン遺伝子以外の他のアデノウイルスの序列は、少なくともITR序列を含む。
【0063】
リラクシン遺伝子は、E1領域(E1A領域及び/またはE1B領域、好ましくは、E1B領域)、またはE3領域に挿入されることが好ましく、より好ましくは、E3領域に挿入される。一方、他の外来ヌクレオチド序列(例えば、サイトカイン、免疫−共刺激因子、自殺遺伝子、及び腫瘍抑制遺伝子)も追加的にアデノウイルスに含めることができて、これは、E1領域(E1A領域及び/またはE1B領域、好ましくは、E1B領域)またはE3領域に挿入されることが好ましく、より好ましくは、E1領域(E1A領域及び/またはE1B領域、好ましくは、E1B領域)に挿入される。また、前記挿入序列は、E4領域にも挿入できる。
【0064】
また、アデノウイルスは、野生型ゲノムの約105%までパッケージングすることができるため、約2kbを追加的にパッケージングすることができる。したがって、アデノウイルスに挿入される上述の外来序列は、アデノウイルスのゲノムに追加的に結合させることもできる。
【0065】
本発明の好ましい具現例において、本発明の組み換えアデノウイルスは、非活性化されたE1B 19遺伝子、E1B 55遺伝子、またはE1B 19/E1B 55遺伝子を有する。本明細書において、遺伝子と関連して使用される用語“非活性化”は、その遺伝子の転写及び/または解読が正常的になされず、その遺伝子によりコーディングされる正常的な蛋白質の機能が現れないことを意味する。例えば、非活性化E1B 19遺伝子は、その遺伝子に変異(置換、付加、部分的欠失、または全体的欠失)が発生され、活性のE1B 19kDa蛋白質を生成できない遺伝子である。E1B 19が欠如された場合は、細胞アポトーシス能を増加させることができて、E1B 55遺伝子が欠如された場合は、腫瘍細胞特異性を持たせる(参照:大韓民国特許出願第2002−23760号)。
【0066】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組み換えアデノウイルスは、活性のE1A遺伝子を含む。E1A遺伝子を含む組み換えアデノウイルスは、複製可能な特性を有するようになる。本発明のより好ましい具現例によると、本発明の組み換えアデノウイルスは、非活性化されたE1B 19/E1B 55遺伝子及び活性のE1A遺伝子を含む。本発明の最も好ましい具現例によると、本発明の組み換えアデノウイルスは、非活性化されたE1B 19/E1B 55遺伝子及び活性のE1A遺伝子を含み、リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列は、欠失されたE3領域に挿入される。
【0067】
本発明の最も好ましい具現例によると、本発明の組み換えアデノウイルスは、“ITR−E1A−ΔE1B−プロモーター−リラクシン遺伝子−ポリA序列”構造を有して、前記“プロモーター−リラクシン遺伝子−ポリA序列”は、欠失されたE3領域に挿入される。本発明の組み換えアデノウイルスの好ましい一実施例は、図1において、Ad−ΔE1B−RLXで表された遺伝子地図を有する。
【0068】
本発明の組み換えアデノウイルスにおいて、従来の抗腫瘍アデノウイルスの局所的腫瘍浸透力が大きく改善されて、細胞アポトーシス能も大きく改善される。このような効果は、本発明で利用されたリラクシンが細胞外基質を効果的に分解して、細胞アポトーシス能を増加させるためであり、最終的に本発明の組み換えアデノウイルスは、大きく改善された腫瘍細胞殺傷能を示す。
【0069】
大部分の腫瘍組織は、癌細胞が単純に群集されているのではなく、血管と正常組織とを含んでなっている。特に、癌組織内に存在する結締組織は硬くて、且つ癌細胞の外部周囲に硬い細胞外基質が形成されているため、ウイルスはもちろん抗癌治療剤が腫瘍に円滑に浸透できず、抗腫瘍効果を十分発揮できない場合が多い。このような問題点は、リラクシン遺伝子を含む本発明の組み換えアデノウイルスを利用した場合に成功的に克服される。
【0070】
下記の実施例で証明されたように、リラクシンの挿入されたアデノウイルスは、腫瘍球の表面だけではなく、腫瘍球の内側まで活発に拡散される。生体内の癌組織においても、リラクシンを発現する本発明のアデノウイルスは、投与部位(injection site, needle track)からさらに遠く且つさらに広く広がっていく。リラクシンの発現による遺伝子伝達効率の増加は、肉眼でも容易に確認できるほど差が大きく、既存になされた数々の研究によるコラゲナーゼ/ディスパーゼ、またはトリプシンのような蛋白質分解酵素の前処理、エラスチンを分解できるエラスターゼ、または細胞外基質を分解できるヒアルロニダーゼによる約2〜3倍の遺伝子伝達効率の増大に比べ、著しく優れた遺伝子伝達効率を示す。
【0071】
そして、このようなリラクシンの著しい組織内ウイルス拡散増進効果は、腫瘍特異的殺傷アデノウイルスにも適用されて、抗腫瘍効果を大きく増大させる結果を誘導する。このような抗腫瘍効果の改善は、複製可能組み換えアデノウイルスだけではなく、複製不能組み換えアデノウイルスでも現れる。一方、リラクシンによる組み換えアデノウイルスの細胞アポトーシスの格段の改善は、全く予期しなかった効果である。
【0072】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明の組み換えアデノウイルスの治療学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的抗腫瘍組成物を提供する。
【0073】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明の薬剤学的抗腫瘍組成物を動物に投与する段階を含む癌の治療方法を提供する。
【0074】
本発明の薬剤学的組成物に有効成分として含まれる組み換えアデノウイルスは、上述の本発明の組み換えアデノウイルスと同一なものであるため、組み換えアデノウイルスに対する詳細な説明は、本発明の薬剤学的組成物にも同様に適用される。したがって、本明細書の不要な重複記載による過度なる複雑性を避けるために、共通事項は、その記載を省略する。
【0075】
組み換えアデノウイルスを利用した効果的な抗腫瘍効果を誘導するためには、速い速度で成長する癌細胞に比べさらに速いウイルスの増殖と隣接細胞への拡散を通じて、効果的な細胞殺傷効果を誘発することができなければならない。また、アデノウイルスを利用した癌遺伝子治療が成功的になされるためには、高い治療効果と共に、安全性を高めるための方案が開発されなければならない。本発明で開発されたリラクシン遺伝子を含む組み換えアデノウイルスは、ウイルス組織内拡散増大と細胞アポトーシス促進を通じて抗腫瘍効果が著しく増大されて、特に、E1B 55遺伝子が消失された場合は、癌細胞特異的に細胞殺傷能を示す。これは、結果的に癌治療に必要なウイルス投与量を減少させることができ、ウイルスによる生体内毒性と免疫反応を大きく減らすことができる。
【0076】
本発明の組成物に含まれる組み換えアデノウイルスは、上述のように、多様な腫瘍細胞に対して殺傷効能を示すため、本発明の薬剤学的組成物は、腫瘍に係る様々な疾病または疾患、例えば、胃癌、肺癌、乳房癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、及び子宮頸部癌などの治療に利用できる。本明細書において、“治療”は、(i)腫瘍細胞形成の予防;(ii)腫瘍細胞の除去による、腫瘍に係る疾病または疾患の抑制;及び(iii)腫瘍細胞の除去による、腫瘍に係る疾病または疾患の軽減を意味する。したがって、本明細書における用語“治療学的有効量”は、上記した薬理学的効果を達成するに十分な量を意味する。
【0077】
本発明の組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0078】
本発明の薬剤学的組成物は、非経口投与が好ましく、例えば、静脈内投与、 腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、または、局部投与を利用して投与することができる。卵巣癌で腹腔内に投与する場合及び肝癌で門脈に投与する場合は、注入方法により投与することができて、乳房癌の場合は、腫瘍塊に直接注射して投与することができ、結腸癌の場合は、浣腸で直接注射して投与することができて、膀胱癌の場合は、カテーテル内に直接注射して投与することができる。
【0079】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、疾病症状の程度、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により様々であり、普通に熟練した医者は、目的する治療に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。一般に、本発明の薬剤学的組成物は、1×105〜1×1015pfu/mlの組み換えアデノウイルスを含み、通常、1×1010pfuを二日に一回、2週間注射する。
【0080】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態で製造するか、または多用量容器内に入れて製造する。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エリキシル剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であり、分散剤または安定化剤をさらに含むこともできる。
【0081】
本発明の薬剤学的組成物は、単独の療法として利用してもよいが、他の通常的な化学療法または放射療法と共に利用してもよく、このような並行療法を施す場合は、より効果的に癌治療をすることができる。本発明の組成物と共に利用できる化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチニウム(transplatinum)、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びメトトレキサートなどを含む、本発明の組成物と共に利用できる放射療法は、X−線照射及びγ−線照射などである。
【0082】
本発明の他の様態によると、本発明は、(a)薬物の組織浸透性を改善するためのリラクシンタンパク質;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む改善された組織浸透性を有する薬剤学的組成物を提供する。
【0083】
本発明で利用されるリラクシンタンパク質は、天然ソース(natural source)から分離されたリラクシンタンパク質及び組み替え技術で得られたリラクシンタンパク質を含み、細胞外基質分解活性を有する範囲内で、前記タンパク質の断片も含まれる。
【0084】
本発明の組成物は、薬物が投与される前または薬物と同時に投与することができる。また、本発明の組成物は、薬物を追加的に含むことができる。本発明の薬剤学的組成物は、薬物が適用される生体組織の細胞外基質を分解することにより、薬物の組織浸透性を大きく改善して、薬物の薬理学的効果を増加させる。
【0085】
本発明の薬剤学的組成物において、薬剤学的に許容される担体、投与方法及び製剤化方法などは、上述の抗腫瘍薬剤学的組成物の内容が適用される。特に、本発明の薬剤学的組成物は、非経口投与が好ましいが、例えば、静脈内投与、 腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、または組織内直接投与(例えば、頭頸部癌または乳房癌腫塊内への直接投与)を利用して投与することができる。一般に、本発明の薬剤学的組成物の投与量は、0.0001〜100mg/kgである。
【0086】
本発明の組成物により組織浸透性が改善される前記薬物は、化学薬物及びバイオ薬物(biodrug)を含むが、好ましくは、細胞外基質により組織浸透性が問題となる薬物、例えば、上述の癌に対する化学療法剤である。
【0087】
本発明の他の様態によると、本発明は、(a)リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列を含む遺伝子伝達システムまたはリラクシンタンパク質の治療学的有効量;及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む細胞外基質の過度なる蓄積(accumulation)に係る疾患または状態の治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0088】
本発明の薬剤学的組成物は、生体組織の細胞外基質を効果的に分解して、細胞外基質の過度なる蓄積または沈着(deposition)が関与する疾病または疾患を治療することができる。本明細書における表現“細胞外基質の過度なる蓄積”は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、及びプロテオグリカンのような細胞外基質成分が、組織または器官機能を損傷し、終局的に線維症疾患を招来する程度に沈着されたことを意味する。
【0089】
本発明の薬剤学的組成物が適用される、細胞外基質の過度なる蓄積に係る疾患または状態は、線維症状態と関連したものであって、斑痕、肝硬変症、肺線維症、糸球体腎炎、成人または急性呼吸困難症、肝線維症、腎線維症、後心筋梗塞線維症、 嚢胞性線維症、線維症癌、静脈閉塞症、または腎間質線維症を含むが、これに限定されるものではない。
【0090】
本発明の薬剤学的組成物が適用される斑痕(scar)は、傷、火傷、または手術により生じた斑痕及びケロイドのような過度な斑痕である。
【0091】
本発明の薬剤学的組成物において、リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列を含む遺伝子伝達システムは、上述した本発明の遺伝子伝達システムにより説明される。一方、本発明の薬剤学的組成物で利用されるリラクシンタンパク質は、天然ソース(natural source)から分離されたリラクシンタンパク質及び組み替え技術により得られたリラクシンタンパク質を含み、細胞外基質分解活性を有する範囲内で、前記タンパク質の断片も含まれる。
【0092】
本発明の薬剤学的組成物において、薬剤学的に許容される担体、投与方法及び製剤化方法などは、上述の抗腫瘍薬剤学的組成物の内容が適用される。特に、本発明の薬剤学的組成物が斑痕の治療のために利用される場合は、経皮投与が最も適合しており、軟膏、ゲル、クリーム、液体、スプレー、パッチ、またはローションの剤形で製造することが最も好ましい。一般に、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、0.001〜100mg/kgである。
【0093】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明なことであろう。
【発明の効果】
【0094】
本発明は、リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列を含む新規な遺伝子伝達システム、組み替えアデノウイルス、前記遺伝子伝達システムを利用した遺伝子伝達方法、前記組み換えアデノウイルスを含む薬剤学的抗腫瘍組成物、改善された組織浸透性を有する薬剤学的組成物、及び細胞外基質の過度なる蓄積に係る疾病または疾患の治療用薬剤学的組成物を提供する。本発明によると、リラクシンが遺伝子伝達効率を改善させるだけではなく、腫瘍細胞で細胞アポトーシスを増加させて、優れた腫瘍細胞殺傷能を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
[実験材料及び実験方法]
<対象細胞株及び細胞培養>
実験に使用された細胞株は、人体脳癌細胞株(U343, U87MG)、子宮頸部癌細胞株(C33A)、肝癌細胞株(Hep3B)、肺癌細胞株(A549)、そしてアデノウイルス初期発現遺伝子であるE1部位が宿主遺伝体内に内在されている293細胞株であり、これらは全てATCC(American Type Culture Collection)から購入した。全ての細胞株は、10%の牛胎児血清(Gibco BRL)の含有されたDMEM培地(Gibco BRL)を培養液とし、抗生剤ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco BRL)を添加して、5%CO2の存在下で37℃恒温培養器で培養した。
【0096】
<組み換えアデノウイルスの製作、生産及び力価算出>
LacZ遺伝子を標識遺伝子として発現し且つリラクシン遺伝子を発現する、E1とE3遺伝子の消失された複製不能アデノウイルスを製作するために、まずvmdl324Bst(スイスのFribourgh大学のVerca博士から購入; Heider, H. et al., Biotechniques, 28(2):260-265, 268-270(2000))における消失されたE1部位に標識遺伝子のLacZが挿入されたウイルスベクターであるpdl−LacZを製作した。このために、まず、LacZを発現するpcDNA−hygro−LacZ(Invitrogen, Carlsbad, CA,米国) プラスミドからCMVプロモーター、LacZ、及びpolA部位をHindIIIとNaeIとで処理し分離した後、これをE1アデノウイルスシャトルベクターであるpΔE1sp1Aに挿入し、pΔE1sp1A/CMV−LacZシャトルベクターを製作した。製作されたpΔE1sp1A/CMV−LacZシャトルベクターをXmnI制限酵素で切断した後、BstBI制限酵素により単一筋となったアデノウイルスvmdl324BstBIと共に大腸菌BJ5183(Dr. Verca, University of Fribourg, スイス)で同時形質転換させて、遺伝子相同組み換えを誘導し、pdl−LacZアデノウイルスを製作した。
【0097】
リラクシン遺伝子を発現するアデノウイルスを製作するために、pDNR−LIB−RLX(ATCC, # MGC-14599)をSalIとHindIII制限酵素で処理して得られた1kb DNA切片を、pCA14ベクター(Microbix, Ontario, Canada)に挿入させて、pCA14−RLXベクターを製作した。本実験で利用されるリラクシン遺伝子の序列は、 Genbank accession No. BC005956に開示されている。製作されたpCA14−RLXをBglII制限酵素で処理しCMV−RLX−pol A発現カセットを切り出して、これをアデノウイルスE3シャトルベクターであるpSP72ΔE3(Promega, Madison, WI, USA)に挿入して、pSP72ΔE3−cRLX E3シャトルベクターを製作した。製作されたpSP72ΔE3−cRLX E3シャトルベクターをXmnI制限酵素で処理して単一筋とした後、トータルベクターである前記pdl−LacZと共に大腸菌BJ5183(Dr. Verca, University of Fribourg,スイス)で 同時形質転換させて、遺伝子相同組み換え(homologous recombination)を誘導し、dl−LacZ−RLX(またはdl−Z−RLX)アデノウイルスベクターを製作した(図1)。前記dl−Z−RLXアデノウイルスは、寄託機関韓国微生物保存センターに2004年3月19日付にて寄託して、寄託番号KCCM−10567を付与された。
【0098】
リラクシン遺伝子が発現される複製可能アデノウイルスを製作するために、上記製作されたpSP72ΔE3−cRLX E3シャトルベクターをXmnI制限酵素で処理して単一筋とした後、SpeI制限酵素を処理して単一筋となった、E1B 19 kDa遺伝子とE1B 55 kDa遺伝子とが共に消失されたpAdΔE1B19/55アデノウイルストータルベクター(KFCC 11288)と共に大腸菌BJ5183で同時形質転換させて、遺伝子相同組み換えを誘導し、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスベクターを製作した(図1)。前記Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスは、寄託機関韓国微生物保存センターに2004年3月19日付にて寄託して、寄託番号KCCM−10566を付与された。
【0099】
図1において、Ψは、ITR(inverted terminal repeat)及びパッケージシグナルを含む序列を示し、記号Adは、アデノウイルスを示して、CMVは、CMVプロモーターを示し、Pol Aは、ポリA序列であり、IXは、タンパク質IX遺伝子を示す。
【0100】
相同組み換えされたプラスミドDNAを収得して、HindIII制限酵素で処理し、相同組み換え有無を確認した後、確認されたプラスミドは、PacIで切断した後、293細胞株に形質転換して、dl−LacZ−RLX及びAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスをそれぞれ生産した。これらのアデノウイルスは、293細胞株で増殖させて、制限希釈またはプラーク分析によりウイルスの力価を決定(Hitt, M. et. al., Construction and propagation of human adenovirus vectors. Cell biology: a laboratory handbook. New York: Academic Press Inc, 479-490(1994))して、CsCl濃度勾配で濃縮し分離した。また、対照群ウイルスであるAd−ΔE1B(E1B領域全体が欠失されたもの)は、pCA14をE1シャトルベクターとして利用し、同一な方法により製作及び生産した。
【0101】
<dl−LacZ−RLX及びAd−ΔE1B19/55−RLXアデノウイルスのリラクシン発現様相の調査>
人体子宮癌細胞株であるC33Aに、dl−LacZ−RLXまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスと、対照群としてdl−LacZまたはAd−ΔE1B(KFCC-11288)アデノウイルスを、それぞれMOI(multiplicity of infection)1〜50で感染させて、24時間後、細胞から培地を回収し、ELISAキット(Immune diognostik, Benshem, Germany)を利用して、製造会社の提示方法にしたがってリラクシンのELISA分析を行った。
【0102】
<dl−LacZ−RLXアデノウイルスの腫瘍球内組織浸透性の検証>
約6〜8週のヌードマウスの腹壁に数種の人体腫瘍細胞株(U343、U87MG、C33A、及びA549)を皮下注射した後、腫瘍の大きさが約150〜200mm3程度になった時、腫瘍を摘出した。摘出した腫瘍は、約1〜2mm径の切片にして、0.75%アガロースがコーティングされたプレートで5%牛胎児血清(Gibco BRL)の含有されたDMEM培地(GIBCO BRL)を培養液として、抗生剤ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco BRL)を添加し、5%CO2の存在下、37℃恒温培養器で培養した。培養液は、一週間に1〜2回入れ替えて、1週間以上腫瘍球を培養した。アデノウイルスを感染させる前に、約2mm程度の直径を有した腫瘍球を0.75%アガロースのコーティングされた48ウェルプレートに移した後、150μlのDMEM培地(5%牛胎児血清)を添加して、ウイルスを1×106、1×107、及び1×108PFUで培地に添加した。ウイルスの添加後、48時間頃に培地を除去して、腫瘍球を固定溶液に入れて固定させた後、X−gal染色を施した。立体顕微鏡を利用して腫瘍球表面を観察したが、腫瘍球内へのアデノウイルスの浸透程度を確認するためには、まず、X−gal染色された腫瘍球をO.C.T.compound(Sakura Finetec, Torrance, CA)で凍結薄片した後、8μm厚に切断して、ゼラチンのコーティングされたスライドガラス上に付着して観察した。
【0103】
<dl−LacZ−RLXアデノウイルスの生体内癌組織浸透性の検証>
約6〜8週のヌードマウスの腹壁に数種の人体腫瘍細胞株(U343、U87MG、C33A、Hep3B、及びA549)を皮下注射した後、腫瘍の大きさが約150〜200mm3程度になった時、dl−LacZ−RLXアデノウイルスを5×107〜1×108PFU/50μlの力価で3回、腫瘍内に直接注射した。ウイルス投与後3日頃に腫瘍を摘出して、4%パラホルムアルデヒド溶液に入れ、4℃で4〜8時間固定させた後、30%スクロース溶液で12時間程度脱水させた。脱水された組織は、O.C.T.compound(Sakura Finetec, Torrance, CA)で凍結薄片した後、8μm厚に切断して、ゼラチンのコーティングされたスライドガラス上に付着して、X−gal染色を施した。
【0104】
<Ad−ΔE1B−RLXウイルスの細胞変性効果(CPE)の分析>
リラクシンを発現するアデノウイルスの癌細胞に対する細胞殺傷能力を検証するために、数種の人体腫瘍細胞株(U343, U87MG, C33A, Hep3B、及びA549)を24−ウェルプレートに分株して、24時間後、Ad−ΔE1、Ad−ΔE1B、またはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスをMOI 0.1〜10力価で処理した。3種のウイルスの中でいずれか一つのウイルスが0.1〜0.5MOIの力価で感染細胞を完全に死滅させた時点で全ての培地を除去し、0.5%クリスタルバイオレット(in 50%メタノール)で残存した細胞を固定して染色した後、分析した。
【0105】
<プラーク形成分析>
リラクシン発現によるプラークの大きさの変化を観察するために、6ウェルプレートに3×105個のHep3B細胞株を分株して、翌日Ad−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスを3PFUの力価で処理した。ウイルス感染後、約4時間頃に、37℃の2X DMEM(10%牛胎児血清と抗生剤ペニシリン/ストレプトマイシン含み)と42℃の1.4%アガロースとが1:1で混合されたアガロース−DMEMを、感染された細胞株上に添加した後、37℃、5%CO2恒温培養器で培養した。培養後、約10日頃にプレートに形成されたプラークの大きさを確認して、アガロースオーバーレイ上に10%TCA(trichoroacetic acid)を1ml入れて30分間放置した後、アガロースオーバーレイを除去し、0.5%クリスタルバイオレット(in 50%メタノール)で固定させて染色した。
【0106】
<フローサイトメトリー分析による細胞アポトーシス観察>
リラクシンにより誘導される細胞アポトーシスを確認するために、数種の人体腫瘍細胞株のU343、U87MG、C33A、Hep3B、及びA549を25T培養器に分株した後、24時間頃にAd−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスを0.5〜5MOIでそれぞれ感染させた。陽性対照群としては、0.1〜1μm CPT−11(camptothecin)、陰性対照群としては、PBSを処理して、48時間、72時間、そして96時間後に感染された細胞を回収し、70%エタノールで4℃で24時間以上固定させた。固定が終わったら、PI(propidium iodide, 50μg/μl)とRNaseとが混合された溶液を入れて、15分間反応させた後、フローサイトメトリー分析を行った。また、リラクシンにより誘導される初期細胞アポトーシスを検証するために、上記のような方法により、数種の人体腫瘍細胞株をAd−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスでそれぞれ感染させた。ウイルス感染後、細胞を回収して、ApoAlert V−FITC細胞アポトーシスキット(CLONTECH, Polo Alto, CA)を利用し、製造会社の提示方法にしたがってAnnexin V/PI二重染色して、フローサイトメトリー分析を行った。
【0107】
<TUNEL分析>
数種の人体腫瘍細胞株U343(5x104)、U87MG(5x104)、C33A(5x105)、Hep3B(4x105)、及びA549(5x104)をそれぞれチャンバースライドに分株して、アデノウイルスを0.2〜20MOIで感染させた後、24時間と48時間頃に培地を除去して、ApoTagキット(intergen, Purchase, NY)を用いて、製造会社の提示方法にしたがってTUNEL分析を行った。発色有無を確認するために、ペロキシダーゼと結合されたアビジンを使用して、ジアミノベンチジン(DAKO, Carpinteria, CA)と反応させた後、細胞が褐色に変わるのが肉眼で確認されたら、0.5%メチルグリーンで10分間染色して、顕微鏡で観察した。顕微鏡上で四ヶ所以上の部位を無作為に選定して、全体細胞の中で染色された細胞の比率を計算した。
【0108】
<リラクシンを発現する複製可能アデノウイルスの生体内抗腫瘍効果の検証>
ヌードマウスに形成された人体癌腫塊の成長にAd−ΔE1B−RLXが及ぼす影響を検証するために、生後6〜8週のヌードマウスの腹壁に、皮下に1×107個の数種の人体腫瘍細胞株(U343、U87MG、C33A、Hep3B、及びA549)をそれぞれ注射した後、腫瘍が約50〜80mm3程度に成長した時、5×107〜5×108PFUのAd−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスを陰性対照群のPBSと共に、それぞれ二日間隔で3回腫瘍に直接注射した後、腫瘍の成長を観察した。腫瘍の容積は、キャリパスを利用して腫瘍の長軸と短軸を測定した後、次のような公式で算出した:腫瘍の容積=(短軸mm)2×長軸mm×0.523
【0109】
<リラクシンを発現する複製可能アデノウイルス投与による腫瘍の変化観察>
ヌードマウスの腹壁に形成されたC33A腫瘍が約50〜80mm3程度に成長した時、5×107PFUのAd−ΔE1B−RLXまたはAd−ΔE1Bアデノウイルスを陰性対照群のPBSと共に3回腫瘍内注射した後、三日後に腫瘍組織を摘出してパラフィンブロックを製作した。製作されたパラフィンブロックを4μm厚のスライドに切断した後、これを、キシレン100%、95%、80%、70%エタノール溶液に順に浸してパラフィンを除去した後、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。生体内結締組織の構成成分であるコラーゲンの分布を観察するためには、4μm厚のパラフィンブロックスライドをボウリン(boulin)、ヘマトキシリンとbiebrich's scarlet acid fuchsinで染色して観察した。
【0110】
また、同一部位のパラフィンブロックを利用して、アデノウイルスのヘキソン(hexon)部位を検出できる免疫組織化学染色を行った。上記のような方法によりスライドを脱パラフィン化した後、アデノウイルスのヘキソン部位と選択的に結合する抗体(AB1056F; chemicon, Temecula, CA)を一次抗体として、そして、ヤギanti−ラットIgG−HRP(Sata Cruz Biotechnology, Inc., Sata Cruz, CA)を二次抗体として反応させて、DAB(DAKO, Carpinteria, CA)を添加し発色させて観察した。
【0111】
腫瘍内の細胞アポトーシスも、同一な部位のパラフィンブロックスライドを利用して観察した。ApoTagキット(intergen, Purchase, NY)を利用して、製造会社の提示方法にしたがってTUNEL分析を行い、ペロキシダーゼと結合されたアビジンを使用してジアミノベンチジン(DAKO, Carpinteria, CA)と反応させた後、細胞が褐色に変わるのが肉眼で確認されたら、0.5%メチルグリーンで10分間染色して顕微鏡で観察した。
【0112】
<マウスのB16BL6自然肺癌転移モデル>
自然癌転移モデルを利用して、リラクシン遺伝子の投与が腫瘍転移に及ぼす影響を調査した。詳細には、B16BL6細胞(2×105/マウス)を6週齢の雄性C57BL/6マウス(Charles River Korea, Seoul, Korea)の後ろ右足パッドに皮下投与して、一次腫瘍を形成した。一次腫瘍の容積が100〜200mm3に到達すると、実験動物をそれぞれ5匹ずつ三つのグループ(PBS, Ad-ΔE1B及びAd-ΔE1B-RLX)に任意に分けて、処理を開始した。処理一日目を一日目(day 1)に指定し、アデノウイルス(5 x 108 PFU per tumor in PBS 50μl)またはPBSを腫瘍に一日、三日、及び五日目に直接注入した。七日目に、一次腫瘍を、マイルドな麻酔下で膝の下部を切断することにより、外科的に除去した。一次腫瘍を除去した後25日目に、マウスの肺で転移腫瘍部位の重量を評価した。
【0113】
<ケロイド細胞、細胞球及び組織球に対する遺伝子伝達効率の検証>
本発明のリラクシン発現組み換えアデノウイルスのケロイド治療効能を分析するために、ケロイド細胞、細胞球、及び組織球に対する遺伝子伝達効率及びウイルスの組織内浸透性を調査した。
【0114】
ケロイド細胞に対する遺伝子伝達効率は、次のようにして調査した:ケロイド患者の組織から得られた継代培養2世代の初期(primary)ケロイド細胞株を24ウェルプレートに分株して、Ad−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXウイルスを10、50MOIでそれぞれ感染させて、ウイルス感染後、二日後にx−gal染色を施した。
【0115】
ケロイド細胞球に対する遺伝子伝達効率は、次のようにして調査した:ケロイド患者からケロイド組織を摘出した。摘出された組織から得られた継代培養2世代の1×105/ml初期細胞を培養チューブに入れて、500×gで5分間遠心分離した後、37℃で培養した。1〜5日間培養する間、チューブの底から離れた丸い形態のペレットが細胞組織球状をなすと、0.75%アガロースコーティングされた48ウェルプレートに移した後、150μlDMEM(5%牛胎児血清含有)を添加して、1×107PFUのアデノウイルスを感染させた。ウイルス感染後3日目に培地を除去して、ケロイド球を固定溶液に入れて固定させた後、x−gal染色を施した。x−gal染色されたケロイド球を立体顕微鏡を利用して表面を観察した後、アデノウイルスの浸透程度を確認するために、O.C.T.化合物で凍結薄片した後、10μm厚に切断し、ゼラチンのコーティングされたスライド上に付着して光学顕微鏡で観察した。
【0116】
ケロイド組織球に対するウイルスの組織内浸透性は、次のようにして調査した:ケロイド患者からケロイド組織を摘出した。摘出された組織を1〜2mm径の片に切断して、0.75%アガロースコーティングされた培養器で、5%牛胎児血清の含有されたDMEMと抗生剤ペニシリン/ストレプトマイシンとを添加して培養した。培養液は、一週間に約1〜2回入れ替えて、1週間以上ケロイド組織球を培養した。アデノウイルスを感染させる前に、約2mm程度の直径を有するケロイド組織球を、0.75%アガロースでコーティングされた48ウェルプレートに移した後、150μlDMEM(5%牛胎児血清含有)を添加して、1×108PFUのアデノウイルスを感染させた。ウイルス感染後3日目に培地を除去して、ケロイド組織球を固定溶液に入れて固定させた後、x−gal染色を施した。x−gal染色されたケロイド球を立体顕微鏡を利用して表面を観察した後、アデノウイルスの組織内浸透程度を確認するために、O.C.T.化合物で凍結薄片した後、10μm厚に切断して、ゼラチンのコーティングされたスライド上に付着して光学顕微鏡で観察した。
【0117】
<統計分析>
データは、平均±標準誤差(SEM)で示した。統計的比較は、Stat Viewソフトウェア(Abacus Concepts, Inc., Berkeley, CA)及びマンホイットニー(Mann-Whitney)試験(ノンパラメトリックな順位和検定)を利用して行った。統計的有意性に対する基準は、P<0.05とした。
【0118】
[実験結果]
<リラクシンを発現するアデノウイルスの製作とリラクシン発現様相の糾明>
リラクシン遺伝子の発現による組織内浸透力の変化を可視的に観察するために、標識遺伝子としてLacZ遺伝子を発現するdl−LacZ−RLX複製不能アデノウイルスを製作して、また、複製可能アデノウイルスの組織内浸透力を向上させるために、Ad−ΔE1B−RLX腫瘍特異的殺傷アデノウイルスを製作した(図1)。製作されたアデノウイルスにより発現されるリラクシンの発現様相を検証するために、子宮癌細胞株であるC33Aにdl−LacZ、dl−LacZ−RLX、Ad−ΔE1B、またはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスを多様な力価でそれぞれ感染させて、細胞から培地を回収し、ELISAを行った(図2)。複製不能アデノウイルスの陰性対照群であるdl−LacZと腫瘍特異的殺傷アデノウイルスの陰性対照群であるAd−ΔE1Bアデノウイルスで感染された細胞では、リラクシンの発現を観察することができない反面、dl−LacZ−RLXまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスで感染された細胞では、投与されたアデノウイルスの力価が増加するにつれて、リラクシンの発現量が容量依存的に増加することを観察することができた。
【0119】
<腫瘍球を利用したdl−LacZ−RLXアデノウイルスの生体外癌組織浸透性の検証>
dl−LacZ−RLXの腫瘍球内に遺伝子伝達効率と組織浸透性を調べるために、種々の人体腫瘍細胞株をヌードマウスに皮下注射した後、腫瘍の大きさが約150〜200mm3になった時、腫瘍を摘出した。摘出された腫瘍組織は、1〜2mm程度の直径になるように細かく切って培養液に入れた後、1×106、1×107、または1×108PFUのアデノウイルスをそれぞれ培地に添加して、48時間後にX−gal染色を施した。腫瘍球を光学顕微鏡で観察した結果、1×106PFUのdl−LacZアデノウイルスを投与した場合に比べ、同力価のdl−LacZ−RLXアデノウイルスを投与した腫瘍球の表面にX−galが濃く染色されたことを観察することができ、1×107または1×108PFUのアデノウイルスを培地に添加した場合は、全ての腫瘍球の表面全体がX−galで濃く染色されていることを観察した。アデノウイルスの腫瘍球内への浸透程度をより綿密に観察するために、X−gal染色された腫瘍球を凍結薄片して観察した。その結果、1×106、1×107、または1×108PFUのdl−LacZが投与された癌組織の場合、LacZの発現程度が微弱であり、ウイルスが腫瘍球表面に留まっている反面、同力価のdl−LacZ−RLXが投与された癌組織におけるLacZ発現度がdl−LacZの場合より著しく高くて、アデノウイルスが腫瘍球表面に局限されず、腫瘍球の内側部位へウイルスが広がっていくことを確認することができた(図3)。このような実験結果を通じて、リラクシンを発現するdl−LacZ−RLXアデノウイルスの遺伝子伝達効率が腫瘍球内で、対照群dl−LacZに比べ、大きく増加されたことが分かった。
【0120】
<dl−LacZ−RLXアデノウイルスの生体内癌組織浸透性の検証>
生体外腫瘍球を利用した実験結果を通じて確認したdl−LacZ−RLXアデノウイルスの増加された組織浸透力を、異種移植(xenograft)モデルを利用して検証してみた。ヌードマウスの腹壁に形成された腫瘍にdl−LacZまたはdl−LacZ−RLXアデノウイルスを5×107または1×108PFUの 力価で腫瘍内に直接注射した後、三日頃に腫瘍を摘出して凍結薄片した後、X−gal染色を施した。その結果、dl−LacZを投与した組織の場合は、LacZの発現程度が微弱であり、染色部位がウイルスの投与された組織付近に限定されている反面、dl−LacZ−RLXを投与した組織のLacZ発現度は、dl−LacZを投与した組織に比べ顕著に高く、X−galで染色された部位がウイルスの投与されたところに局限されず、広い部位に広がっていることが確認できた(図4)。特に、U87MGまたはC33Aの場合は、腫瘍組織全体でLacZが発現されて、濃いブルーに染色されたことが確認できた。このような実験結果を通じて、生体内でも、腫瘍球を利用した実験と同様に、dl−LacZ−RLXアデノウイルスの組織浸透性が、リラクシンを発現しない対照群アデノウイルスのdl−LacZに比べ、大きく増加したことが分かった。
【0121】
<リラクシンを発現する腫瘍特異的殺傷アデノウイルスの細胞殺傷能の検証>
先行の実験から既に確認されたリラクシンの発現によるアデノウイルスの拡散能の増加により、腫瘍特異的殺傷アデノウイルスの細胞殺傷能が増加されるのかを調べるために、CPE分析を行った。陰性対照群として複製不能アデノウイルスのdl−LacZと、腫瘍特異的殺傷アデノウイルスであるAd−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXを、0.1〜10MOIの力価で種々の人体腫瘍細胞株(U343、U87MG、C33A、Hep3B、及びA549)をそれぞれ感染させた後、細胞の殺傷程度を比較観察した。図5から分かるように、陰性対照群のdl−LacZで感染された種々の癌細胞では、ウイルスの増殖による細胞殺傷効果が観察されなかったが、Ad−ΔE1B−RLXで感染された場合は、リラクシンが発現されない対照群ウイルスのAd−ΔE1Bに比べ、約2〜10倍程度高い癌細胞殺傷効果が観察された。即ち、Hep3B細胞株では、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスがAd−ΔE1Bアデノウイルスに比べ約10倍程度高い癌細胞殺傷効果を示し、U87MG、C33A、そしてA549では、約5倍程度高い癌細胞殺傷効果を示した。このような実験結果から、リラクシンの発現がアデノウイルスの複製能に否定的な影響を及ぼさないばかりか、却ってリラクシンの発現により癌細胞特異的殺傷アデノウイルスの細胞殺傷能が増加されることが分かった。
【0122】
<リラクシン発現によるプラーク形成の比較>
リラクシンの発現が細胞殺傷と周辺細胞へのウイルス拡散に及ぼす影響を可視化するために、アガロースの含有された固体培地で、アデノウイルスの増殖と周辺細胞への拡散によるプラークの形成を比較検証した。Ad−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスをそれぞれ3MOIの力価でHep3B細胞株に感染させて、プラーク形成の進行速度を観察した。図6から分かるように、Ad−ΔE1Bに感染された場合に比べ、Ad−ΔE1B−RLXで感染されたHep3B細胞株でプラークの形成が速く進行されて、形成されたプラークの大きさも増加したことが観察できた。即ち、Ad−ΔE1Bアデノウイルスを投与した場合は、ウイルス感染後16日が経ってから漸くプラークの形成を肉眼で確認することができたのに比べ、Ad−ΔE1B−RLXを感染させた場合は、ウイルス感染後4日頃から、形成されたプラークを確認することができた。このような結果は、リラクシンを発現するアデノウイルスの増加された細胞殺傷能と、隣接した細胞へのウイルス拡散によりプラークの形成が速く進行されて、また形成されたプラークの大きさが増加したことを意味する。
【0123】
<リラクシンを発現するアデノウイルスによる細胞アポトーシスの誘導>
リラクシンの発現様相を調べるために、複製不能アデノウイルスのdl−LacZ−RLXで細胞を感染させた場合、細胞が死滅されて細胞培養プレートの底から離れていくことが観察されたため、リラクシンにより細胞殺傷が起こるのかを調べた。まず、リラクシンにより細胞アポトーシスが誘導されるのかを検証するために、細胞アポトーシスが起こるとDNAが無作為的に切片化されて現れるsubG1細胞群の増加率を、PI染色後フローサイトメトリー分析を行って測定した。種々の人体腫瘍細胞株をAd−ΔE1B−RLXまたはAd−ΔE1Bアデノウイルスでそれぞれ感染させて、48〜96時間後に細胞を回収してsubG1細胞群の増加を観察した(図7)。細胞アポトーシスを誘導する陽性対照群としては、細胞アポトーシス誘導化学物質であるCPT−11を使用した。Ad−ΔE1Bにより感染されたA549細胞においてsubG1細胞群が約3.11%であるのに比べ、リラクシンを発現するアデノウイルスのAd−ΔE1B−RLXにより感染された場合は、subG1細胞群が約22.90%に大きく増加した。このようなAd−ΔE1B−RLXアデノウイルス感染によるsubG1細胞群の増加は、他の種々の細胞株(U343、U87MG、C33A、及びHep3B)でも観察された。
【0124】
また、リラクシン遺伝子が細胞殺傷に及ぼす影響をさらに綿密に観察するために、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスによる細胞アポトーシスの進行程度をAnnexin−VとPIで二重染色して確認した。Annexin−Vは、細胞アポトーシス初期に細胞膜外に流出されてきたフォスファチジルセリン (phosphatidylserine: PS)を検出することができる反面、PIは、細胞アポトーシス後期に細胞膜の破壊により細胞内に入って、核内にあるクロマチンと結合することができて、細胞壊死(necrosis)の特徴を確認することができる。したがって、Annexin−V-/PI-は、健康な細胞を意味して、 Annexin−V+/PI-は、細胞アポトーシスが起こった細胞、そしてPI+細胞は、細胞壊死が起こった細胞を意味する。
【0125】
細胞アポトーシスを誘導する陽性対照群として利用されたCPT−11を処理したC33A細胞株の場合、約57.10%(Annexin−V+/PI-)の細胞が細胞アポトーシスに進行されて、Ad−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXにより感染された場合は、それぞれ21.99%と33.03%の細胞で細胞アポトーシスが誘導されて、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスによる細胞アポトーシス頻度がAd−ΔE1Bアデノウイルスに比べ増加したことを観察した(図8)。その他にも、U343、U87MG、Hep3B、そしてA549細胞株でも、対照群Ad−ΔE1Bアデノウイルスに比べ、リラクシンを発現するアデノウイルスにより遥かに高い頻度で細胞アポトーシスが誘導されることを確認することができた。また、細胞死を総括的に測定できる細胞アポトーシス及び細胞アポトーシス頻度を全部合わせた場合(Annexin−V+/PI-+PI+)にも、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスにより誘導される細胞死頻度がAd−ΔE1Bアデノウイルスに比べ著しく増加した。
【0126】
以上のような結果から、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスにより感染された場合、対照群のAd−ΔE1Bアデノウイルスにより感染された場合に比べ、細胞アポトーシスが著しく高い頻度で進行され、結果的に細胞死が増加することが分かる。
【0127】
初期細胞内アポトーシスの特徴であるDNA切片化を確認することができるまた他の分析方法であるTUNEL分析を行った。図9から分かるように、陽性対照群として使用されたCPT−11を処理した全ての細胞株の場合は、ほとんどの細胞が濃い褐色に染色され、細胞アポトーシスが活発に進行されていることを確認した。U343細胞株をAd−ΔE1Bアデノウイルスで感染させた場合、約32.5±12.5%の細胞が褐色に淡く染色された反面、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスで感染させた場合は、約69.7±5.40%の細胞が濃い褐色に染色されて、Ad−ΔE1Bアデノウイルスが遥かに高い頻度で細胞アポトーシスを誘導した(表1)。このようなリラクシン発現による細胞アポトーシス頻度の増加現象は、他の細胞株でもほぼ等しい傾向を示した。
【0128】
[表1]

【0129】
<リラクシンを発現する腫瘍特異的殺傷アデノウイルスの生体内抗腫瘍効果の検証>
リラクシンを発現するAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスの生体内抗腫瘍効果を検証するために、種々の人体腫瘍細胞株をヌードマウスに接種した後、形成された腫瘍に5×107〜5×108PFUのAd−ΔE1B−RLXまたはAd−ΔE1Bアデノウイルスを陰性対照群のPBSと共に二日間隔で3回腫瘍内投与した後、腫瘍の成長を観察した。人体脳腫瘍U87MGの場合、PBSを投与された時は、ウイルス投与後19日頃に腫瘍の大きさが約1089±167.22mm3で、腫瘍が急激に成長した反面、腫瘍特異的殺傷アデノウイルスであるAd−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXを投与された時は、それぞれ115.70±19.60mm3と55.63±28.42mm3で、腫瘍の成長が顕著に遅延されることを観察することができた(図10)。
【0130】
即ち、Ad−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスを投与された腫瘍で、PBSを投与された場合に比べ、約10〜30倍程度の明らかな抗腫瘍効果が現れた。また、ウイルスの投与後25日頃には、PBSを投与した9匹のマウスが全部死んで、それ以上腫瘍の成長を測定することができず、ウイルスの投与後33日頃には、Ad−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXアデノウイルスを投与した場合は、腫瘍の大きさがそれぞれ399.68±96.95mm3と64.51±36.73mm3で、リラクシンを発現するアデノウイルスによる抗腫瘍効果が対照群のAd−ΔE1Bアデノウイルスに比べ優れていることを確認した。また、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスを投与した場合、ウイルス投与後19日頃に7匹のマウスの中で2匹から、そして41日頃には5匹から、腫瘍が完全に消えたことを観察することができて、60日が経っても腫瘍の再成長は、観察されなかった。
【0131】
このようなAd−ΔE1B−RLXの卓越な抗腫瘍効果が他の人体腫瘍モデルにも適用できるのかを調べるために、C33A、A549、Hep3B、そしてU343異種移植(xenograft)で前記の方法と同一な方法により抗腫瘍効果を検証した。図10から分かるように、陰性対照群のPBSを投与した群に比べ、腫瘍特異的殺傷アデノウイルスのAd−ΔE1B−RLXまたはAd−ΔE1Bを投与した群で明らかな抗腫瘍効果が観察されて、リラクシンを発現するアデノウイルスを投与された場合、腫瘍の大きさが対照群ウイルスのAd−ΔE1Bを投与された場合に比べ著しく減少し、リラクシンによる明らかな抗腫瘍効果を観察することができた。例えば、PBSで処理されたC33A保有マウスの場合、処理後32日目に2252±392mm3の平均腫瘍体積を示したが、同一期間において、Ad−ΔE1B及びAd−ΔE1B−RLXは、それぞれ917±354mm3及び77±27mm3の平均腫瘍体積を示した。腫瘍の退行と関連し、処理後45日目に、Ad−ΔE1B処理したマウスの25%は、完全な腫瘍退化を示したが、Ad−ΔE1B−RLX処理したマウスでは、50%が完全な腫瘍退化を示した。
【0132】
一方、リラクシンを発現するアデノウイルスを腫瘍に投与時、マウスの生存率を調査した(参照:図11)。C33A異種移植モデルにおいてAd−ΔE1B−RLXを投与時、80日経過後100%のマウスが生存した反面、Ad−ΔE1Bを投与した場合、同じ期間に50%のマウスのみが生存した。そして、六ヶ月が経過しても、Ad−ΔE1B−RLXを投与したマウスの50%では、腫瘍が完全に除去された。Ad−ΔE1B−RLXの生存率増加は、他のU343、U87MG、Hep3B、またはA549異種移植モデルでも同様な結果を示した。また、全ての異種移植モデルにおいて、Ad−ΔE1B−RLXで処理された腫瘍保有マウスは、Ad−ΔE1Bで処理されたマウスより長く生存した。本実験全体にかけて、下痢、体重減少、悪液質のような全身性毒性は観察されなかった。上述の結果から、Ad−ΔE1B−RLXがイン−ビボで腫瘍減少を招来し、かつ生存率を改善させるということが分かる。
【0133】
<リラクシンを発現する複製可能アデノウイルス投与による腫瘍の変化観察>
人体子宮癌細胞株C33Aをヌードマウス腹壁皮下に接種した後、形成された腫瘍にAd−ΔE1B−RLXまたはAd−ΔE1Bアデノウイルスを陰性対照群のPBSと共に3回腫瘍内注射した後、三日後に腫瘍組織を摘出してヘマトキシリンとエオシンで染色し、組織の状態を検証した(図12)。Ad−ΔE1Bを投与した腫瘍の場合は、腫塊の中心部位で細胞壊死が進行され細胞が死んでいる反面、Ad−ΔE1B−RLXを投与した腫瘍の場合は、ウイルスを投与した腫瘍の周縁で細胞壊死が進行されることを確認した。
【0134】
また、腫瘍組織内における癌細胞特異的殺傷アデノウイルスの複製様相を検証するために、アデノウイルスのヘキソン部位と選択的に結合する抗体を利用して、免疫組織化学染色を施した。図12から分かるように、Ad−ΔE1B−RLXを投与した腫瘍の場合、細胞壊死が進行されている腫瘍の周縁からアデノウイルスを検出することができて、細胞アポトーシスを確認できるTUNEL分析を行った場合も、同じ部位で細胞アポトーシスが活発に進行されることを確認することができた。これとは対照的に、Ad−ΔE1Bを投与した腫瘍の場合は、腫瘍組織の中心部位で細胞壊死または細胞アポトーシスが進行されていた。
【0135】
以上の結果をまとめてみると、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスが投与された部位でウイルスの複製が活発に起こって、その結果、細胞アポトーシス及び細胞壊死が誘導されることが分かる。
【0136】
<マッソン・トリクローム(Masson's trichrome)染色を利用した腫瘍内コラーゲン分布の検証>
人体脳癌細胞株U343をヌードマウスに接種した後、形成された腫瘍にAd−ΔE1B−RLXまたはAd−ΔE1Bアデノウイルスを陰性対照群のPBSと共に3回腫瘍内注射した後、三日後に腫瘍組織を摘出しマッソン・トリクロームで染色して、青色に染色される細胞外基質の主成分のコラーゲンの分布を観察した。その結果、PBSまたはAd−ΔE1Bアデノウイルスを投与した場合は、腫瘍内部において青色染色が腫瘍細胞の間で顕著に多く観察された反面、Ad−ΔE1B−RLXアデノウイルスを投与した場合は、腫瘍内部では青色をほとんど観察できず、腫瘍の周囲を囲んでいる正常組織でのみコラーゲンカプセルのような形態を観察することができた(図13)。
【0137】
<リラクシン発現腫瘍分解アデノウイルスによる腫瘍転移の抑制>
リラクシンは、MMP発現を誘導すると知られているが、このようなMMP発現により癌転移可能性が増加される可能性がある。このような可能性を検証するために、本発明者らは、自然癌転移モデルを利用して、リラクシンを発現する腫瘍特異的殺傷アデノウイルスが腫瘍転移に及ぼす影響を評価した。B16BL6黒色腫細胞をC57BL/6マウスの右後ろ足の裏の皮下に移植して、局部的な一次腫瘍を形成するようにして、一次腫瘍の大きさが約100〜200mm程度に成長した時、PBS、Ad−ΔE1B、またはAd−ΔE1B−RLXを二日間隔で3回腫瘍内投与した。最後の投与後5日頃にマウスの右足首以下を切断して、一次腫瘍を除去した後、20日頃にマウスを全部犠牲させて、肺に転移された腫塊の重量を測定し、離隔の組織に対する癌転移促進程度を調べた。図14から分かるように、Ad−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXを投与されたマウスの肺に転移された腫塊の平均重量は、それぞれ48±0.05mgと10±0.01mgであって、これは、PBS処理対照群(268±0.27mg)と比較して、それぞれ82%及び96%抑制されたものである。また、処理された6匹のマウスの中で4匹において、Ad−ΔE1B及びAd−ΔE1B−RLXは、癌転移部位の形成を完全に抑制した。上述の実験結果を通じて、一次腫瘍部位でリラクシンを発現する腫瘍特異的殺傷アデノウイルスの腫瘍内注入は、離隔部位における癌転移病変部位の形成を強化させず、大きく抑制することが分かる。
【0138】
<リラクシン発現組み換えアデノウイルスのケロイド浸透性の調査>
上記の実施例を通じて(特に、マッソン・トリクローム(Masson's trichrome)染色を利用した腫瘍内コラーゲン分布の検証)、リラクシンの腫瘍組織内発現により、細胞外基質の主成分であるコラーゲンの発現頻度が著しく低下できることが分かった。ケロイドは、過多なる細胞外基質が形成されて現れる疾患であって、リラクシンの細胞外基質分解能を利用してケロイド疾患を治療することができるかどうかを調べるために、まず、ケロイド患者の組織から採取した一次ケロイド細胞株をdl−LacZまたはdl−LacZ−RLXアデノウイルスで10、50MOIの力価でそれぞれ感染させて、二日後にX−gal染色を施して観察した結果、dl−LacZ−RLX感染によるLacZ発現程度が対照群のdl−LacZに比べ増加し、リラクシンの発現により、ケロイド細胞への遺伝子伝達効率が大きく増加することを確認した(図15)。
【0139】
また、ケロイド細胞球を利用した本発明のリラクシン発現組み換えアデノウイルスの組織浸透性を調査した。リラクシン発現によるアデノウイルスのケロイド組織における遺伝子伝達の増加を調べるために、ケロイド患者の組織から採取した継代培養2世代の初期ケロイド細胞を利用して製作されたケロイド細胞球を1×107PFUのdl−LacZまたはdl−LacZ−RLXアデノウイルスでそれぞれ感染させた後、X−gal染色を施して組織表面を光学顕微鏡で観察した。その結果、対照群ウイルスのdl−LacZを投与した場合に比べ、リラクシンを発現するdl−LacZ−RLXアデノウイルスを投与したケロイド細胞球の表面にX−galが非常に濃く染色されていることを観察した(図15)。
【0140】
ケロイド細胞から構成されたケロイド細胞球を利用した先行の実施例を通じて確認したdl−LacZ−RLXアデノウイルスの増加された遺伝子伝達効率が、実際ケロイド患者から採取したケロイド組織でも現れるのかを調べるために、ケロイド患者の組織から採取したケロイド組織を1×108PFUのdl−LacZまたはdl−LacZ−RLXアデノウイルスで感染させて、X−gal染色を施した後、まず、ケロイド組織の表面を観察した(図15)。その結果、dl−LacZを投与したケロイド組織の場合は、LacZの発現程度が非常に微弱である反面、dl−LacZ−RLXを投与したケロイド組織の表面は、X−galが濃く染色されていることを観察した。また、アデノウイルスのケロイド組織内浸透程度を確認するために、O.C.T.化合物で凍結薄片した後、光学顕微鏡で観察した結果、dl−LacZを投与したケロイド組織の場合は、表面と同様に、ケロイド組織の内部もほとんど染色されていない反面、dl−LacZ−RLXを投与した腫瘍組織のLacZ発現度は、dl−LacZを投与した場合に比べ著しく高く、X−galで染色された部位が、ウイルスの投与された部位に局限されず、広い部位に広がっていることを確認することができた(図15)。このような結果から、細胞外基質の分解を誘導できるリラクシンを発現するアデノウイルスを利用する場合、ケロイド組織における遺伝子伝達効率が著しく増大されるだけではなく、細胞外基質の分解により、ケロイド疾患治療剤として利用することができることを確認した。
【0141】
以上、本発明の望ましい具現例を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】実施例で利用された組み換えアデノウイルスの遺伝子地図である。
【図2】リラクシンを発現する本発明の組み換えアデノウイルスのリラクシン発現様相を示すグラフである。
【図3】本発明のリラクシン発現アデノウイルスのイン−ビトロ腫瘍組織浸透性を示す写真である。図3は、それぞれ、U343、U87MG、C33A、及びA549に対する浸透性を示す。
【図4】本発明のリラクシン発現アデノウイルスのイン−ビボ腫瘍組織浸透性を示す写真である。図4は、それぞれ、U343、U87MG、C33A、Hep3B及びA549に対する浸透性を示す。
【図5】本発明のリラクシン発現組み換えアデノウイルスの細胞殺傷能を検証するCPE(cytopathy effect)分析写真である。
【図6】本発明の組み換えアデノウイルスのプラーク形成能を示す写真及びグラフである。
【図7】本発明の組み換えアデノウイルスの細胞アポトーシス誘導能を検証するために、subG1細胞群の増加率を試験したフローサイトメトリー分析の結果である。
【図8】本発明の組み換えアデノウイルスの細胞アポトーシス誘導能を検証するために、Annexin-VとPIとで二重染色して実施したフローサイトメトリー分析の結果である。
【図9】本発明の組み換えアデノウイルスの細胞アポトーシス誘導能を検証するために、DNA切片化を確認したTunel分析結果を示す写真である。
【図10】リラクシンを発現する本発明の組み換えアデノウイルスが生体内で奏する抗腫瘍効能を検証した実験結果である。
【図11】リラクシンを発現する本発明の組み換えアデノウイルスが腫瘍投与マウスにおいて生存率を向上させることを示すグラフである。
【図12】リラクシンを発現する本発明の組み換えアデノウイルスを投与したマウスにおいて、腫瘍の変化を示す写真である。
【図13】本発明の組み換えアデノウイルスが投与されたマウスにおいて、腫瘍内コラーゲン分布を示す写真である。
【図14】リラクシンを発現する本発明の組み換えアデノウイルスの、自然肺癌転移に対する抑制効果を示す。B16BL6腫瘍保有マウスをPBS、Ad−ΔE1BまたはAd−ΔE1B−RLXで二日に一回ずつ、3回処理して、次いで、一次腫瘍を外科的に除去した。一次腫瘍の除去後25日目に、マウスの肺で癌転移部位の重量を測定した。それぞれの点は、それぞれのマウス(グループ当たり5匹)に対する腫瘍バードン(burden)を示し、各グループにおいて癌転移部位の平均重量は、線で表示されている。*P<0.01vs.PBS処理対照群及び*P<0.05vs.Ad−ΔE1B−RLX処理群。
【図15】本発明のリラクシン発現組み換えアデノウイルスのケロイド細胞、細胞球及び組織球に対する遺伝子伝達効率性及び浸透性を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内に運搬しようとする目的ヌクレオチド序列を含む遺伝子伝達システムにおいて、前記遺伝子伝達システムは、リラクシン(relaxin)−エンコーディングヌクレオチド序列を追加的に含み、前記リラクシンは、前記目的ヌクレオチド序列の細胞内運搬効率を増加させる作用をすることを特徴とする遺伝子伝達システム。
【請求項2】
前記細胞は、細胞外基質により連結された細胞からなる組織内の細胞であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子伝達システム。
【請求項3】
前記組織は、腫瘍組織であることを特徴とする請求項2に記載の遺伝子伝達システム。
【請求項4】
前記遺伝子伝達システムは、プラスミド、組み換えアデノウイルス、アデノ−関連ウイルス(Adeno-associated viruses: AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、リポソーム、またはネオソーム(neosome)であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子伝達システム。
【請求項5】
前記遺伝子伝達システムは、組み換えアデノウイルスであることを特徴とする請求項4に記載の遺伝子伝達システム。
【請求項6】
前記組み換えアデノウイルスは、E3領域が欠失されたものであって、前記リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列は、E3領域の位置に挿入されたことを特徴とする請求項5に記載の遺伝子伝達システム。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の遺伝子伝達システムを、細胞を含むバイオサンプル(biosample)に接触させる段階を含むことを特徴とする遺伝子伝達方法。
【請求項8】
アデノウイルスのITR(inverted terminal repeat)ヌクレオチド序列及びリラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列を含み、前記リラクシンは、アデノウイルスの腫瘍組織浸透能及び腫瘍細胞アポトーシス能を増大させる作用をすることを特徴とする組み換えアデノウイルス。
【請求項9】
前記組み換えアデノウイルスは、E3遺伝子領域が欠失されたものであって、前記リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列は、前記E3遺伝子領域の位置に挿入されたことを特徴とする請求項8に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項10】
前記組み換えアデノウイルスは、非活性化されたE1B 19遺伝子、E1B55遺伝子、またはE1B 19/E1B 55遺伝子を有することを特徴とする請求項8に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項11】
前記組み換えアデノウイルスは、活性のE1A遺伝子を含むことを特徴とする請求項8に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項12】
(a)請求項8〜11のいずれかに記載の組み換えアデノウイルスの治療学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含むことを特徴とする薬剤学的抗腫瘍組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の薬剤学的組成物を動物に投与する段階を含むことを特徴とする癌の治療方法。
【請求項14】
(a)薬物の組織浸透性を改善するためのリラクシンタンパク質、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含むことを特徴とする改善された組織浸透性を有する薬剤学的組成物。
【請求項15】
(a)リラクシン−エンコーディングヌクレオチド序列を含む遺伝子伝達システムまたはリラクシンタンパク質の治療学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含むことを特徴とする、細胞外基質の過度なる蓄積に係る疾患または状態の治療用薬剤学的組成物。
【請求項16】
前記細胞外基質の過度なる蓄積に係る疾病または疾患は、斑痕、肝硬変症、肺線維症、糸球体腎炎、成人または急性呼吸困難症、肝線維症、腎線維症、後心筋梗塞線維症、 嚢胞性線維症、線維症癌、静脈閉塞症、または腎間質線維症であることを特徴とする請求項15に記載の薬剤学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−531519(P2007−531519A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506082(P2007−506082)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000921
【国際公開番号】WO2006/075819
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(506327586)インダストリー−アカデミック コオペレイション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ (3)
【Fターム(参考)】