説明

リワーク用エポキシ樹脂組成物

【課題】カチオン重合することにより、高い架橋密度を有する硬化物を形成することができ、硬化物としての機能が不要となった時には、特定条件下に曝すことにより容易に分解し、可溶化するリワーク用エポキシ樹脂組成物、及び前記リワーク用エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる、高い架橋密度を有し、特定条件下に曝すと容易に分解し溶剤可溶性を示す硬化物を提供する。
【解決手段】本発明のリワーク用エポキシ樹脂組成物は、下記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)を含むことを特徴とする。式中、R1、R2、R3は、同一又は異なって、脂環式エポキシ基を含む基を示し、R4は、脂環式エポキシ基を含む基、炭化水素基、又は水素原子の何れかを示す。本発明のリワーク用エポキシ樹脂組成物は、更に、硬化剤(B)及び硬化促進剤(C)、又はカチオン重合開始剤(D)を含むことが好ましい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカチオン重合することにより、高い架橋密度を有する硬化物を形成することができ、硬化物としての機能が不要となった時には、特定条件下に曝すことにより容易に分解し、可溶化するリワーク用エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂に代表される熱及び/又は光硬化性樹脂は、カチオン重合することにより、電気特性、耐湿性、耐熱性等に優れ、不溶性、不融性を有する硬化物を形成することが知られており、光学部品材料、機械部品材料、電気・電子部品(例えば、プリント配線基板)材料(例えば、封止材等)、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、コーティング材料、接着剤等に用いられている。
【0003】
しかし、上記硬化物の「不溶性」又は「不融性」という特性は、場合によっては問題点となり得る。例えば、プリント配線板上に配置された電子部品や配線回路は硬化性樹脂で封止され保護されるが、前記電子部品や配線回路を修理する場合や廃棄されるプリント配線板から電子部品や配線回路を回収する場合には、これらの電子部品や配線回路を傷つけることなく前記封止樹脂を取り除くことが必要となる。
【0004】
従来から用いられている封止樹脂の除去方法としては、強アルカリや強酸を使用した過酷な条件下で化学反応により分解して除去する方法や、有機溶剤により封止樹脂を膨潤させた後、機械的手段により除去する方法等がある。しかし、電子部品や配線回路を傷つけることなく封止樹脂のみを完全に除去するのは極めて困難であった。
【0005】
また、接着剤の分野においても、一度接着した後に被着体を破壊せずに剥がすことができる再剥離型接着剤が求められている。
【0006】
更に、近年、電気・電子部品材料の分野では、電気・電子部品の多機能・軽量化に対応するため、半導体素子の基板への実装化が進められており、特に、面実装型パッケージにおいては、半田が鉛フリー化されるのに伴い、鉛フリー半田実装にも適用可能なリフロー耐熱性を有する樹脂が求められている。
【0007】
以上より、重合することにより架橋・硬化し、耐熱性等の機能を有する硬化物を形成することができ、硬化物としての機能が不要となった時は、特定条件下に曝すことにより容易に分解し可溶化することにより、破壊することなく被着体を分離・回収できる硬化性樹脂(=リワーク用硬化性樹脂)は、再剥離型接着剤、塗膜、フォトレジスト、電子部品や配線回路の封止材等、様々な用途での応用が期待されている。
【0008】
従来、前記リワーク用硬化性樹脂を構成するモノマー成分としては、特許文献1に記載の2つのエポキシ基の間をアセタール又はケタール構造で連結したジエポキシドや特許文献2に記載の植物系バイオマス由来のタンニン系エポキシ化合物、非特許文献1に記載のエポキシ化合物が知られていた。これらのモノマー成分は重合することにより架橋・硬化し、特定の機能を有する硬化物を形成することができ、硬化物としての機能が不要となった時は、特定条件下に曝すことにより容易に分解し可溶化することができるが、更に優れたリワーク能、すなわち、従来に比べより高い架橋密度を有し、鉛フリー半田実装にも適用可能なリフロー耐熱性を有する硬化物を形成することができ、硬化物としての機能が不要となった時は、特定条件下に曝すことにより容易に分解し可溶化することができるリワーク用エポキシ樹脂が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−230335号公報
【特許文献2】特開2010−241855号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】高分子論文集 Vol.65,No.2,pp.113-123(Feb.,2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、カチオン重合することにより、高い架橋密度を有する硬化物を形成することができ、硬化物としての機能が不要となった時には、特定条件下に曝すことにより容易に分解し、可溶化するリワーク用エポキシ樹脂組成物、及び前記リワーク用エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる、高い架橋密度を有し、特定条件下に曝すと容易に分解し溶剤可溶性を示す硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、シクロヘキセン環を有するアルコールとシクロヘキセン環を有するアルデヒドとを縮合することにより、[−C(−O−)2−]部を介してシクロヘキセン環が3個以上結合してなるアセタール化合物を得ることができること、前記アセタール化合物を酸化することにより、[−C(−O−)2−]部を介して、脂環式エポキシ基(脂環を形成する隣接する炭素原子2個と酸素原子1個の3員環からなる基)が3個以上結合してなる新規のエポキシ化合物が得られることを見いだした。そして、前記新規のエポキシ化合物は1分子内に脂環式エポキシ基を3個以上有し、モノマー単位当たりの架橋点が多いため、重合すると、3次元架橋構造を密に有し、優れた耐熱性及び強靱性を有する硬化物を形成することができること、分子中の[−C(−O−)2−]部は求電子性及び求核性を示さないためエポキシ化合物の重合条件下では反応性を示さないが、湿熱条件及び/又は酸への暴露により容易に開裂し、溶剤可溶性を示すアルデヒド、ケトン、又はジオールを形成すること、すなわち前記新規のエポキシ化合物は優れたリワーク能を有することを見いだした。尚、本明細書において、「リワーク能」とは重合することにより架橋・硬化し、所定の機能を有する硬化物を形成することができると共に、硬化物としての機能が不要となった時は、特定条件下に曝すことにより容易に分解し可溶化することにより被着体を破壊することなく再利用可能な状態で分離・回収できることをいう。また、「リワーク用樹脂」とは、前記リワーク能を有する樹脂をいう。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3は、同一又は異なって、脂環式エポキシ基を含む基を示し、R4は、脂環式エポキシ基を含む基、炭化水素基、又は水素原子の何れかを示す]
で表されるエポキシ化合物(A)を含むことを特徴とするリワーク用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0014】
前記脂環式エポキシ基を含む基としては、下記式(2)
【化2】

(式中、R5は、単結合又は2価の炭化水素基を示す)
で表される基が好ましい。
【0015】
前記エポキシ化合物(A)としては、下記式(3)
【化3】

(式中、R5-1、R5-2、R5-3は、同一又は異なって、単結合又は炭素数1〜2のアルキレン基を示す)
で表される脂環式トリエポキシ化合物が好ましい。
【0016】
本発明のリワーク用エポキシ樹脂組成物は、更に、硬化剤(B)及び硬化促進剤(C)、又はカチオン重合開始剤(D)を含むことが好ましい。
【0017】
本発明は、また、前記リワーク用エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。
【0018】
本発明は、更に、前記リワーク用エポキシ樹脂組成物をカチオン重合して硬化物を得る工程、得られた硬化物を分解、可溶化する工程を含むリワーク用エポキシ樹脂組成物の使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物は、1分子内に脂環式エポキシ基を3個以上有する、架橋点が多いエポキシ化合物を含有するため、重合することにより架橋密度が高く極めて優れた耐熱性(鉛フリー半田実装にも適用可能なリフロー耐熱性)及び強靱性を有する硬化物を形成することができる。また、前記エポキシ化合物は分子中に[−C(−O−)2−]部を含むため、湿熱条件或いは酸への暴露により、速やかに開裂して溶剤可溶性を示すアルデヒド、ケトン、又はジオールを形成することができる。そのため、耐熱性及び強靱性を有する硬化物が必要とされる間は硬化物として使用することができ、硬化物としての機能が不要となった後は、湿熱条件及び/又は酸への暴露により速やかに分解して、溶剤に可溶性を示す分解物となり、溶剤に溶解して被着体表面から容易に除去することができる。被着体は傷つけることなく回収し、リワークすることが可能となる。
【0020】
本発明にリワーク用エポキシ樹脂組成物は、光学部品材料、機械部品材料、電気・電子部品材料(例えば、封止材)、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、コーティング材料、接着剤、繊維強化プラスチック(FRP:fiber reinforced plastics、例えばGFRP(glass fiber reinforced plastics)、CFRP(carbon fiber reinforced plastics)等)材料、プラスチック形成材料等、特に、半導体封止材、再剥離型接着剤、コーティング材料、フォトレジストに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のリワーク用エポキシ樹脂組成物は、上記式(1)表されるエポキシ化合物(A)を含むことを特徴とする。
【0022】
[エポキシ化合物(A)]
本発明のエポキシ化合物(A)は、上記式(1)で表される。式(1)中、R1、R2、R3は、同一又は異なって、脂環式エポキシ基を含む基を示し、R4は、脂環式エポキシ基を含む基、炭化水素基、又は水素原子の何れかを示す。R1〜R4が脂環式エポキシ基を含む基を示す場合、これらは同一であっても良く、異なっていても良い。
【0023】
前記脂環式エポキシ基を含む基としては、少なくとも1つの脂環式エポキシ基を含有する基であればよいが、本発明においては、なかでも、上記式(2)で表される基が好ましい。式(2)中、R5は単結合又は2価の炭化水素基を示す。
【0024】
前記2価の炭化水素基としては、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、ビフェニレン等の2価の芳香族炭化水素基;シクロヘキシリデン、1,2−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン等のシクロアルキレン基;2−シクロヘキセン−1,4−ジイル基等のシクロアルケニレン基;アダマンタン−1,3−ジイル基等の2価の橋かけ環式基;メチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基等の炭素数1〜6程度のアルキレン基;プロペニレン基等の炭素数2〜6程度のアルケニレン基;プロピニレン基等の炭素数2〜6程度のアルキニレン基等が挙げられる。
【0025】
本発明における脂環式エポキシ基を含む基としては、なかでも、上記式(2)で表され、式中のR5がアルキレン基[特に、R5-1、R5-2、又はR5-3で示される、炭素数1〜2のアルキレン基]である基が、架橋点間分子量が小さく、より架橋密度が高い硬化物を形成することができる点で好ましい。
【0026】
4における炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの基が結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基等を挙げることができる。
【0027】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基等の橋かけ環式炭化水素基等を挙げることができる。
【0028】
芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基等の炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0029】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基等のシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基等)等が含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基等)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基等)等が含まれる。
【0030】
前記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等)、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アミノ基、スルホ基、複素環式基等を有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0031】
本発明に係る式(1)で表されるエポキシ化合物(A)としては、なかでも、R1、R2、R3が、同一又は異なって、脂環式エポキシ基を含む基(特に、上記式(2)で表される基)を示し、R4が水素原子を示す化合物が好ましく、特に、上記式(3)で表される脂環式トリエポキシ化合物が好ましい。式(3)中、R5-1、R5-2、R5-3は、同一又は異なって、単結合又は炭素数1〜2のアルキレン基を示す。式(3)で表される脂環式トリエポキシ化合物の具体例としては下記化合物等を挙げることができる。
【0032】
【化4】

【0033】
本発明のエポキシ化合物(A)としては、なかでも、オキシラン酸素濃度が高く、架橋点間分子量が小さく、より架橋密度が高い硬化物を形成することができる点で、上記式(3)で表される脂環式トリエポキシ化合物におけるR5-1、R5-2、R5-3のうち少なくとも1つが単結合である化合物が好ましく、特に、高い耐熱性と強靱性とを兼ね備える硬化物を形成することができる点で、R5-1及びR5-2が同一又は異なって炭素数1〜2のアルキレン基(特に好ましくは、R5-1及びR5-2がメチレン基)であり、且つR5-3が単結合である化合物が好ましい。
【0034】
前記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)は、例えば、下記式(4)で表されるアセタール化合物を酸化剤を用いて酸化することにより製造することができる。式(4)中、R1'、R2'、R3'は、同一又は異なって、シクロへキセニル基を含む基を示し、R4'は、シクロへキセニル基を含む基、炭化水素基、又は水素原子の何れかを示す。
【0035】
【化5】

【0036】
本発明における上記式(4)で表されるアセタール化合物としては、なかでもR1'、R2'、R3'が、同一又は異なって、シクロへキセニル基を含む基を示し、R4'が水素原子を示す化合物が好ましく、特に、下記式(5)で表されるアセタール化合物が好ましい。式(5)中、R5-1、R5-2、R5-3は、同一又は異なって、単結合又は炭素数1〜2のアルキレン基を示し、上記式(3)中のR5-1、R5-2、R5-3に対応する。
【0037】
【化6】

【0038】
上記式(5)で表されるアセタール化合物の具体例としては下記化合物等を挙げることができる。
【化7】

【0039】
上記式(4)で表されるアセタール化合物を酸化する反応(以後、「酸化反応」と称する場合がある)に使用する酸化剤としては、過酸(例えば、過ギ酸、過酢酸、トリフルオロ過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、モノペルオキシフタル酸等の有機過酸;過マンガン酸等の無機過酸)や、過酸化物(例えば、過酸化水素、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキソ酸、ペルオキソ酸塩等)等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、触媒を使用することなく効率よくエポキシ化合物を得ることができる点で、過酸を使用することが好ましい。
【0040】
酸化剤の使用量としては、上記式(4)で表されるアセタール化合物1モルに対して、例えば3.0〜6.0モル程度、好ましくは3.1〜5.0モル程度、特に好ましくは3.2〜4.0モル程度である。酸化剤の使用量が上記範囲を上回ると、不経済となり、また、副反応が増加する傾向がある。一方、酸化剤の使用量が上記範囲を下回ると、モノエポキシド及び/又はジエポキシドの生成が増加する傾向がある。
【0041】
上記酸化反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、t−ブチルアルコール等のアルコール;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;エチルエーテル、テトラヒドロフラン等の鎖状又は環状エーテル;酢酸エチル等のエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;酢酸等の有機酸等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0042】
溶媒の使用量としては、例えば、上記式(4)で表されるアセタール化合物の3〜20重量倍程度、好ましくは8〜15重量倍程度である。
【0043】
反応温度は、例えば0〜90℃程度、好ましくは20〜70℃程度である。反応時間は、例えば1〜10時間程度、好ましくは、2〜6時間程度である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法で行うこともできる。
【0044】
酸化反応は、例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等を添加することにより反応を終了させることができる。
【0045】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0046】
また、上記式(4)で表されるアセタール化合物は、下記式(6-1)、及び下記式(6-2)で表されるアルコール化合物と、下記式(7)で表されるアルデヒド又はケトン化合物とを縮合させることにより合成することができる。下記式(6-1)、(6-2)、及び(7)中のR1'、R2'、R3'は、同一又は異なって、シクロへキセニル基を含む基を示し、R4'は、シクロへキセニル基を含む基、炭化水素基、又は水素原子の何れかを示す。式(6-1)、(6-2)、及び(7)中のR1'、R2'、R3'、R4'は、それぞれ、上記式(4)で表されるアセタール化合物におけるR1'、R2'、R3' 、R4'に対応する。
1'−OH (6-1)
2'−OH (6-2)
3'−(C=O)−R4' (7)
【0047】
特に上記式(5)で表されるアセタール化合物は、下記式(6-3)、及び下記式(6-4)で表されるアルコール化合物と、下記式(7-1)で表されるアルデヒド化合物とを縮合させることにより合成することができる。下記式(6-3)、(6-4)、及び(7-1)中のR5-1、R5-2、R5-3は、同一又は異なって、単結合又は炭素数1〜2のアルキレン基を示し、それぞれ、上記式(5)で表されるアセタール化合物におけるR5-1、R5-2、R5-3に対応する。
【化8】

【0048】
上記式(6-3)、及び上記式(6-4)で表されるアルコール化合物としては、例えば、下記式で表される化合物等を挙げることができる。上記式(6-3)で表されるアルコール化合物と下記式(6-4)で表されるアルコール化合物は同一であっても良く、異なっていても良い。
【化9】

【0049】
また、上記式(7-1)で表されるアルデヒド化合物としては、例えば、下記式で表される化合物等を挙げることができる。
【化10】

【0050】
上記式(7)で表されるアルデヒド又はケトン化合物の使用量は、例えば、上記式(6-1)、及び上記式(6-2)で表されるアルコール化合物の総和 1モルに対して、例えば0.2〜1.0モル程度、好ましくは0.3〜0.8モル程度、特に好ましくは0.4〜0.6モル程度である。上記式(6-1)、及び上記式(6-2)で表されるアルコール化合物の使用量が上記範囲を上回ると、不経済となる傾向がある。一方、上記式(7)で表されるアルデヒド又はケトン化合物の使用量が上記範囲を上回ると、反応中間体であるヘミアセタール体が増加する傾向があり、また副生物が増える傾向がある。
【0051】
上記縮合反応は酸触媒の存在下で行うことが、高収率で目的物を得ることができ、且つ副生物の生成を抑制することができる点で好ましい。前記酸触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルホン酸系強酸性イオン交換樹脂等のスルホン酸類等を挙げることができる。酸触媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。酸触媒の使用量は、例えば、上記式(6-1)、及び上記式(6-2)で表されるアルコール化合物の総和 100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部程度である。
【0052】
上記縮合反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0053】
反応温度は、例えば0〜100℃程度、好ましくは20〜50℃程度である。反応時間は、例えば1〜48時間程度、好ましくは5〜36時間程度、特に好ましくは10〜24時間程度である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法で行うこともできる。
【0054】
また、上記縮合反応は、反応中に生じる水を除去することが、反応を効率的に進めることができる点で好ましい。水の除去は、例えば、蒸留、共沸脱水、脱水剤(例えば、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブス等)の添加等により行うことができる。
【0055】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0056】
上記製造方法によれば、上記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)を効率よく合成することができる。
【0057】
[リワーク用エポキシ樹脂組成物]
本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物は、モノマー成分(カチオン重合性モノマー成分)をリワーク用エポキシ樹脂組成物全量(不揮発分全量)の例えば40〜100重量%程度含有する。そして、本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物は、上記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)を含むことを特徴とし、その含有量としては、例えば、リワーク用エポキシ樹脂組成物に含有する全モノマー成分の10重量%以上程度(好ましくは10〜100重量%程度、特に好ましくは15〜90重量%程度)である。モノマー単位当たりの架橋点の数が多い、上記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)を上記範囲で含有すると、重合することにより架橋密度が高く、耐熱性及び強靱性に優れる硬化物を形成することができる点で好ましい。一方、上記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)の含有量が上記範囲を下回ると、モノマー単位当たりの架橋点の数が減少し架橋密度が低下するため、得られる硬化物の耐熱性及び靱性が低下する傾向がある。
【0058】
本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物は、モノマー成分として、上記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)以外にも、上記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)と共重合可能な他のエポキシ化合物を含有していてもよい。他のエポキシ化合物としては、例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びフェノキシ樹脂等を挙げることができる。
【0059】
また、本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物は、上記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)以外に、更に、硬化剤(B)及び硬化促進剤(C)、又は硬化触媒(D)を含有することが好ましい。
【0060】
前記硬化剤(B)としては、エポキシ化合物の硬化剤として使用される周知慣用の化合物を挙げることができ、例えば、無水フタル酸、3又は4−メチル−1,2,3,6−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3又は4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、メチル無水ナジック酸、無水グルタル酸、水素化メチルナジック酸無水物、水素化ナジック酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−カルボン酸無水物等の酸無水物;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の鎖状脂肪族ポリアミン、N−アミノメチルピペラジン等の環状脂肪族アミン、メタキシレンジアミン、メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン等のアミン類;ポリアミド樹脂;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;アミンのBF3錯体化合物;脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びホスホニウム塩等のブレンステッド酸塩類;アジピン酸;セバシン酸;テレフタル酸;トリメリット酸;カルボキシル基含有ポリエステル等のポリカルボン酸類等である。
【0061】
本発明における硬化剤(B)としては、なかでも酸無水物(特に、3又は4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物)を使用することが、粘度が低く作業性に優れるリワーク用エポキシ樹脂組成物を調製することができ、重合することにより耐熱性、及び透明性に優れた硬化物を得ることができる点で好ましい。酸無水物としては、例えば、商品名「リカシッド MH−700」、「リカシッド MH」、「リカシッド HH」、「リカシッド TH」、「リカシッド MT−500」、「リカシッド HNA−100」(以上、新日本理化(株)製)、商品名「HN−2200」、「HN−2000」、「HN−5000」、「MHAC−P」、「無水ハイミック酸」(以上、日立化成工業(株)製)、商品名「クインハード200」(日本ゼオン(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0062】
硬化剤(B)の使用量としては、例えば、リワーク用エポキシ樹脂組成物に含有する全モノマー成分の50〜150重量%程度、好ましくは70〜120重量%程度である。
【0063】
前記硬化促進剤(C)としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のリン系化合物やその誘導体;ベンジルジメチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等の第3級アミン化合物やその誘導体;テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラベンジルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム化合物やその誘導体;2−エチル−4−メチル−イミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2a]ベンズイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチル−イミダゾール等のイミダゾール系化合物やその誘導体;有機金属塩類等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、第4級アンモニウム化合物やその誘導体を使用することが好ましく、例えば、商品名「U−CAT SA−1」、「U−CAT SA−102」、「U−CAT SA−5003」、「U−CAT SA−5002」、「U−CAT SA−603」、「U−CAT 18X」(以上、サンアプロ(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0064】
硬化促進剤(C)の使用量としては、上記硬化剤100重量部に対して0.05〜5.0重量部程度、好ましくは0.1〜4.0重量部程度である。
【0065】
前記硬化触媒(D)としては、光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等の重合開始剤を挙げることができる。
【0066】
光カチオン重合開始剤としては、公知慣用の光カチオン重合開始剤を使用することができ、例えば、スルホニウム塩(スルホニウムイオンとアニオンとの塩)、ヨードニウム塩(ヨードニウムイオンとアニオンとの塩)、セレニウム塩(セレニウムイオンとアニオンとの塩)、アンモニウム塩(アンモニウムイオンとアニオンとの塩)、ホスホニウム塩(ホスホニウムイオンとアニオンとの塩)、遷移金属錯体イオンとアニオンとの塩等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
前記スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム塩、トリ−p−トリルスルホニウム塩、トリ−o−トリルスルホニウム塩、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム塩、1−ナフチルジフェニルスルホニウム塩、2−ナフチルジフェニルスルホニウム塩、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム塩、トリ−1−ナフチルスルホニウム塩、トリ−2−ナフチルスルホニウム塩、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム塩、4−(p−トリルチオ)フェニルジ−(p−フェニル)スルホニウム塩等のトリアリールスルホニウム塩;ジフェニルフェナシルスルホニウム塩、ジフェニル4−ニトロフェナシルスルホニウム塩、ジフェニルベンジルスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩等のジアリールスルホニウム塩;フェニルメチルベンジルスルホニウム塩、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム塩、4−メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム塩等のモノアリールスルホニウム塩;ジメチルフェナシルスルホニウム塩、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム塩、ジメチルベンジルスルホニウム塩等のトリアルキルスルホニウム塩等を挙げることができる。
【0068】
前記ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム塩としては、商品名「CPI−101A」(サンアプロ(株)製、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート50%炭酸プロピレン溶液)、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート50%炭酸プロピレン溶液)、商品名「K1−S」(サンアプロ(株)製、非アンチモン系トリアリールスルホニウム塩)等の市販品を使用してもよい。
【0069】
前記ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩、ジ−p−トリルヨードニウム塩、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム塩、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム塩等を挙げることができる。
【0070】
前記セレニウム塩としては、例えば、トリフェニルセレニウム塩、トリ−p−トリルセレニウム塩、トリ−o−トリルセレニウム塩、トリス(4−メトキシフェニル)セレニウム塩、1−ナフチルジフェニルセレニウム塩等のトリアリールセレニウム塩;ジフェニルフェナシルセレニウム塩、ジフェニルベンジルセレニウム塩、ジフェニルメチルセレニウム塩等のジアリールセレニウム塩;フェニルメチルベンジルセレニウム塩等のモノアリールセレニウム塩;ジメチルフェナシルセレニウム塩等のトリアルキルセレニウム塩等を挙げることができる。
【0071】
前記アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、エチルトリメチルアンモニウム塩、ジエチルジメチルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリメチル−n−プロピルアンモニウム塩、トリメチル−n−ブチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム塩;N,N−ジメチルピロリジウム塩、N−エチル−N−メチルピロリジウム塩等のピロリジウム塩;N,N’−ジメチルイミダゾリニウム塩、N,N’−ジエチルイミダゾリニウム塩等のイミダゾリニウム塩;N,N’−ジメチルテトラヒドロピリミジウム塩、N,N’−ジエチルテトラヒドロピリミジウム塩等のテトラヒドロピリミジウム塩;N,N−ジメチルモルホリニウム塩、N,N−ジエチルモルホリニウム塩等のモルホリニウム塩;N,N−ジメチルピペリジニウム塩、N,N−ジエチルピペリジニウム塩;N−メチルピリジニウム塩、N−エチルピリジニウム塩等のピリジニウム塩;N,N’−ジメチルイミダゾリウム塩等のイミダゾリウム塩;N−メチルキノリウム塩等のキノリウム塩;N−メチルイソキノリウム塩等のイソキノリウム塩;ベンジルベンゾチアゾニウム塩等のチアゾニウム塩;ベンジルアクリジウム塩等のアクリジウム塩等を挙げることができる。
【0072】
前記ホスホニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスホニウム塩、テトラ−p−トリルホスホニウム塩、テトラキス(2−メトキシフェニル)ホスホニウム塩等のテトラアリールホスホニウム塩;トリフェニルベンジルホスホニウム塩等のトリアリールホスホニウム塩;トリエチルベンジルホスホニウム塩、トリブチルベンジルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリエチルフェナシルホスホニウム塩等のテトラアルキルホスホニウム塩等を挙げることができる。
【0073】
前記遷移金属錯体イオンの塩としては、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Cr+、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−キシレン)Cr+等のクロム錯体カチオンの塩;(η5−シクロペンタジエニル)(η6−トルエン)Fe+、(η5−シクロペンタジエニル)(η6−キシレン)Fe+等の鉄錯体カチオンの塩等を挙げることができる。
【0074】
前記カチオンと塩を形成するためのアニオン(対イオン)としては、例えば、SbF6-、PF6-、BF4-、(CF3CF23PF3-、(CF3CF2CF23PF3-、(C654-、(C654Ga-、スルホン酸アニオン(トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン)、(CF3SO23-、(CF3SO22-、過ハロゲン酸イオン、ハロゲン化スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、アルミン酸イオン、ヘキサフルオロビスマス酸イオン、カルボン酸イオン、アリールホウ酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン等を挙げることができる。
【0075】
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、アレン−イオン錯体、第4級アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等を挙げることができる。
【0076】
前記アリールスルホニウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩等を挙げることができる。本発明においては、例えば、商品名「SP−66」、「SP−77」(以上、(株)ADEKA製)、商品名「サンエイド SI−60L」、「サンエイド SI−80L」、「サンエイド SI−100L」(以上、三新化学工業(株)製)等の市販品を使用することができる。前記アルミニウムキレートとしては、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。また、前記三フッ化ホウ素アミン錯体としては、例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体等を挙げることができる。
【0077】
硬化触媒(D)の使用量としては、例えば、リワーク用エポキシ樹脂組成物に含有する全モノマー成分の0.1〜3.0重量%程度、好ましくは0.3〜1.0重量%程度である。
【0078】
さらに、本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、有機溶剤、硬化反応調整剤、カップリング剤、難燃剤、無機充填材、イオントラッパー剤、応力緩和剤(例えば、シリコーンゴム粉末等)、染料、着色剤(例えば、カーボンブラック等)、レベリング剤、消泡剤等を挙げることができる。これらの他の添加剤の配合量(2種以上組み合わせて使用する場合はその総量)はリワーク用エポキシ樹脂組成物全量(不揮発分全量)に対して、例えば5重量%以下程度である。
【0079】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のエーテル系溶剤等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。有機溶剤を添加することにより、リワーク用エポキシ樹脂組成物の粘度を調整することができ、塗布性を向上することができる。
【0080】
前記硬化反応調整剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の水酸基を有する化合物を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。硬化反応調整剤を添加することにより、反応を緩やかに進行させることができる。
【0081】
前記カップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、アルキルシラン、有機チタネート、アルミニウムアルキレート等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
前記難燃剤としては、例えば、赤燐、燐酸、燐酸エステル、メラミン、メラミン誘導体、トリアジン環を有する化合物、シアヌル誘導体、イソシアヌル誘導体、燐窒素含有化合物(例えば、シクロホスファゼン等)、金属化合物(例えば、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、フェロセン等)、酸化アンチモン(例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等)、臭素化エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
前記無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアライト、スピレル、ムライト、チタニア等の粉体又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等を挙げることができる。さらに、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等は、難燃効果のある無機充填材として使用することができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。無機充填材を添加することにより、得られる硬化物の吸湿性、熱伝導性、及び強度を向上し、熱膨張係数を低減することができる。
【0084】
前記イオントラッパー剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス等の元素の含水酸化物等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。イオントラッパー剤を添加することにより、得られる硬化物の耐湿性、耐熱性を向上することができる。
【0085】
本発明のリワーク用エポキシ樹脂組成物は、例えば、上記式(1)で表されるエポキシ化合物(A)、必要に応じて共重合可能な他のモノマー成分、硬化剤(B)及び硬化促進剤(C)、又は硬化触媒(D)、その他の添加剤等を配合して、必要に応じて真空下で気泡を排除しつつ、撹拌・混合することにより調製される。撹拌・混合する際の温度は、例えば、10〜60℃程度である。撹拌・混合には、混合した構成要素(材料)を均一に分散混合できる手段であればいかなる手段を用いて混合してもよく、例えば、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ヘンシルミキサー、プラネタリーミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、アトライター、高速ミキサー、自公転撹拌機等を使用することができる。
【0086】
上記方法により調製されたリワーク用エポキシ樹脂組成物は、例えば、周知慣用の成形方法により成形し、その後、加熱処理を行うことによってカチオン重合を促進し、硬化物を形成することができる。加熱温度としては、例えば50〜200℃程度、好ましくは60〜180℃程度である。加熱時間は、例えば0.5〜12時間程度、好ましくは、1〜10時間である。加熱手段としては、オーブン等が挙げられる。前記加熱処理後、さらにポストベークを行っても良い。ポストベークは、例えば、50〜200℃程度、好ましくは60〜180℃程度で、0.5〜12時間程度、好ましくは、1〜10時間程度加熱することにより行われる。
【0087】
上記重合反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
【0088】
こうして得られる本発明の硬化物は架橋密度が高く、耐熱性及び強靱性に優れる。動的粘弾性測定により求められる貯蔵弾性率(E’)が109Pa以下となる温度としては、エポキシ化合物(A)、硬化剤(B)及び硬化促進剤(C)からなるリワーク用エポキシ樹脂組成物の硬化物の場合、例えば170℃以上、好ましくは180℃以上、特に好ましくは200℃以上である。また、エポキシ化合物(A)及び硬化触媒(D)からなるリワーク用エポキシ樹脂組成物の硬化物の場合、例えば220℃以上、好ましくは230℃以上である。
【0089】
また、損失正接(tanδ=E''/E')のピークトップ温度(=変曲点温度:ガラス転移温度に相当する)としては、エポキシ化合物(A)、硬化剤(B)及び硬化促進剤(C)からなるリワーク用エポキシ樹脂組成物の硬化物の場合、例えば210℃以上、好ましくは220℃以上である。また、エポキシ化合物(A)及び硬化触媒(D)からなるリワーク用エポキシ樹脂組成物の硬化物の場合、例えば260℃以上、好ましくは270℃以上である。
【0090】
また、本発明の硬化物は、湿熱条件及び/又は酸への暴露により容易に[−C(−O−)2−]部が開裂して分解し、可溶化される。そのため、湿熱条件及び/又は酸への暴露後の硬化物における貯蔵弾性率(E’)が109Pa以下となる温度は、例えば100℃以下、好ましくは90℃以下(例えば50〜90℃、好ましくは60〜90℃、特に好ましくは70〜90℃)である。また、損失正接(tanδ=E''/E')のピークトップ温度(=変曲点温度:ガラス転移温度に相当する)は、例えば120℃以下、好ましくは90℃以下である。
【0091】
更に、湿熱条件及び/又は酸への暴露前後における硬化物の貯蔵弾性率(E’)が109Pa以下となる温度の差が大きいほど優れたリワーク能を有していることを意味する。本発明の硬化物は、湿熱条件及び/又は酸への暴露前後における硬化物の貯蔵弾性率(E’)が109Pa以下となる温度の差は、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上、最も好ましくは130℃以上である。
【0092】
前記湿熱条件への暴露は、例えば、23℃以上(好ましくは60〜90℃程度)の温度、50%RH以上(好ましくは60〜90%RH程度)の湿度で、100〜500時間程度(好ましくは200〜300時間程度)加熱することにより行われる。加熱手段としては、特に制限されるものではないが、例えばオーブン、ドライヤー、加熱蒸気、オイルバス、ウォーターバス、赤外線加熱炉、高周波加熱炉等を用いることができる。
【0093】
前記酸への暴露は、例えば、酸を溶解した溶液中(例えば、有機溶剤に酸及び水を混合して得られた溶液中)に、例えば1分〜24時間程度(好ましくは1〜20時間程度)浸漬することにより行われる。前記酸としては、例えば、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、クロロ酢酸、安息香酸等のカルボン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸等)、無機酸(例えば硫酸、リン酸、塩酸等)、及びルイス酸(例えば、ボロン・トリフルオリド・エーテラート、塩化アルミニウム、塩化第二スズ等)を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。本発明においては、なかでも、酸として有機酸を使用することが、樹脂分の溶解性に優れる点で好ましい。また、溶液中における酸の含有量(2種以上を組み合わせて使用する場合はその総量)としては、例えば、10〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。
【0094】
本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物は、上記のようにカチオン重合することにより、耐熱性及び強靱性を有する硬化物を形成することができる。また、前記硬化物は、不要となった時は、湿熱条件及び/又は酸への暴露等の温和な条件下に暴露することにより容易に分解し溶剤に可溶性を示す化合物にまで分解され、溶剤に溶解して除去することができる。
【0095】
本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物は、光学部品材料、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、コーティング材料、接着剤、封止材、繊維強化プラスチック(FRP:fiber reinforced plastics、例えばGFRP(glass fiber reinforced plastics)、CFRP(carbon fiber reinforced plastics)等)材料、プラスチック形成材料等、特に、半導体封止材、再剥離型接着剤、コーティング材料、フォトレジストに好適に用いられる。
【0096】
前記光学部品としては、例えば、カメラ(車載カメラ、デジタルカメラ、PC用カメラ、携帯電話用カメラ、監視カメラ等)の撮像用レンズ、メガネレンズ、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ、表示装置用カバーガラス、フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波路、光分割器、光ファイバー接着剤、表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム等を挙げることができる。
【0097】
更にまた、本発明の硬化物は上記のように耐熱性に優れるため、鉛フリー半田実装にも適用可能なリフロー耐熱性を有し、本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物により封止された半導体素子、本発明に係るリワーク用エポキシ樹脂組成物からなる光学部品等を基盤上に実装する工程において、他の電子部品の表面実装と同一の半田リフロープロセスにて、直接、非常に効率良く実装することができ、極めて効率的な製品の製造が可能となる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、実施例で使用される「部」は、特別の説明がない限り「重量部」を意味する。
【0099】
合成例1[1−ビス(3−シクロヘキセニルメトキシ)メチル−3−シクロヘキセン:化合物(II)の合成]
3−シクロヘキセン−1−メタノール(44.9g)、p−トルエンスルホン酸(97.3mg)、無水硫酸ナトリウム(9.02g)の混合液を撹拌しながら、25℃で3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(22.1g)を1時間かけて滴下した。20℃で20時間撹拌した後、p−トルエンスルホン酸(97.5mg)、無水硫酸マグネシウム(9.00g)、ヘキサン(12.0g)を添加し、さらに20℃で20時間撹拌した。ヘキサン(32.1g)を添加した後、不溶物をろ過し、ろ紙上の不溶物をヘキサン(43.2g)でリンスした。得られたろ液をまとめて7重量%炭酸水素ナトリウム水溶液(66.3g)1回、水(66.2g)3回で洗浄した後、減圧濃縮し、濃縮残渣 60.12gを無色透明の粘調な液体として得た。trans−スチルベンを内部標準物質として添加して測定した1H−NMRの結果から、化合物(II)の純度は92.6%だった。残渣中の化合物(II)の収率は、3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド基準で88.0%だった。
1H-NMR(500MHz,CDCl3,TMS基準)δ 5.72-5.63(br m,6H), 4.23(d,1H,J=6.9Hz), 3.58-3.46(m,2H), 3.35-3.27(m,2H), 2.19-1.69(m,18H), 1.38-1.23(m,3H)
【0100】
【化11】

【0101】
実施例1[3,4−エポキシ−1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメトキシ)メチルシクロヘキサン:化合物(I)の合成]
合成例1で得られた化合物(II)(1−ビス(3−シクロヘキセニルメトキシ)メチル−3−シクロヘキセン、58.6g)を塩化メチレン(775g)に溶解した溶液へ、30℃で含水のメタクロロ過安息香酸(170g)を87分かけて添加した後、30℃で4時間撹拌した。その後、30℃で20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液(214g)を18分かけて滴下した後30分撹拌した。さらに7重量%炭酸水素ナトリウム水溶液(814g)を添加した後、有機層を7重量%炭酸水素ナトリウム水溶液(816g)1回、水(597g)3回で洗浄し、濃縮した。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化合物(I)40.7gを無色透明の粘調な液体として得た。化合物(II)基準の収率は64%であった。1H−NMRでは、原料の2重結合に由来するδ5.72〜5.63ppmのピーク消失と、エポキシ基に由来するδ3.23〜3.05ppmのプロトンピーク生成が確認された。
1H-NMR(500MHz,CDCl3,TMS基準)δ 4.08-3.97(m,1H), 3.43-3.25(m,2H), 3.23-3.05(m,8H), 2.23-1.45(m,18H), 1.22-0.93(m,3H)
【0102】
【化12】

【0103】
臭化水素の酢酸溶液を用いた滴定により求めたオキシラン酸素濃度は12.85重量%であり、理論値(13.17重量%)の98%であった。
尚、下記化合物の構造式から求められる理論上のオキシラン酸素濃度は以下の通りである。
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシアルデヒド ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アセタールのオキシラン酸素濃度:11.81重量%
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「CEL 2021P」、ダイセル化学工業(株)製)のオキシラン酸素濃度:12.68重量%
【0104】
実施例2
実施例1で得られた化合物(I)100部に対し、熱カチオン重合開始剤としてアリールスルホニウム塩(商品名「サンエイドSI−100L」、三新化学工業(株)製、以後「SI−100L」と称する場合がある)0.6部を添加して樹脂組成物(1)を調製した。得られた樹脂組成物(1)を、65℃で2時間硬化した後、さらに150℃で1.5時間硬化させ、透明な硬化物(1)を得た。
【0105】
比較例1
化合物(I)に代えて下記式で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(商品名「CEL 2021P」、ダイセル化学工業(株)製、以後「CEL 2021P」と称する場合がある)100部を用いた以外は実施例2と同様にして樹脂組成物(2)を調製し、硬化物(2)を得た。
【0106】
【化13】

【0107】
実施例3
化合物(I)100部に対し、3or4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(商品名「HN2200」、日立化成工業(株)製、以後「HN2200」と称する場合がある)107部、硬化促進剤として第4級アンモニウム化合物(商品名「U−CAT 18X」、サンアプロ(株)製、以後「U−CAT 18X」と称する場合がある)2.14部、及びエチレングリコール(和光純薬工業(株)製試薬)1.07部を添加して樹脂組成物(3)を調製し、110℃で3時間硬化した後、150℃で2時間さらに硬化させて硬化物(3)を得た。
【0108】
比較例2
「CEL 2021P」100部に対し、「HN2200」130部、「U−CAT 18X」2.60部、及びエチレングリコール 1.30部を添加して樹脂組成物(4)を調製し、実施例3と同じ条件で硬化させて硬化物(4)を得た。
【0109】
実施例2、3、及び比較例1、2で得られた硬化物について、下記方法で貯蔵弾性率を測定し、実施例2、3、及び比較例1、2で得られた樹脂組成物のリワーク能を評価した。
【0110】
<貯蔵弾性率測定>
実施例2、3、及び比較例1、2で得られた硬化物を固体粘度弾性測定装置(商品名「RSA−III」、TA Instruments製)を用いて、窒素雰囲気下、10℃から350℃まで5℃/分で昇温しつつ、引っ張りモード、強制振動周波数10Hzで貯蔵弾性率(E')を測定し、貯蔵弾性率(E')が109Paとなる温度:T1(℃)を求めた。貯蔵弾性率が109Paとなる温度(T1)が高いほど耐熱性が高いことを意味する。
【0111】
また、実施例2、3、及び比較例1、2で得られた硬化物を、湿熱試験機(商品名「MTH−4400」、三洋電機(株)製)を用いて、温度:85℃、湿度:85%RHで250時間維持した後、貯蔵弾性率(E')を上記耐熱性評価に採用した方法により測定した。湿熱環境暴露後の硬化物について、貯蔵弾性率(E')が109Paとなる温度:T2(℃)を求めた。
【0112】
<リワーク能の評価>
実施例2、3、及び比較例1、2で得られた樹脂組成物のリワーク能を、下記基準に従って評価した。尚、湿熱環境暴露前後における硬化物の貯蔵弾性率が109Paとなる温度(℃)の差(T1−T2)が大きいほどリワーク能に優れること意味する。
評価基準
T1が200℃以上であり、且つ、T2が100℃以下:◎
T1が170℃以上、200℃未満であり、且つ、T2が100℃以下:○
T2が100℃を超える:×
【0113】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3は、同一又は異なって、脂環式エポキシ基を含む基を示し、R4は、脂環式エポキシ基を含む基、炭化水素基、又は水素原子の何れかを示す]
で表されるエポキシ化合物(A)を含むことを特徴とするリワーク用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
脂環式エポキシ基を含む基が、下記式(2)
【化2】

(式中、R5は、単結合又は2価の炭化水素基を示す)
で表される基である請求項1に記載のリワーク用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ化合物(A)が下記式(3)
【化3】

(式中、R5-1、R5-2、R5-3は、同一又は異なって、単結合又は炭素数1〜2のアルキレン基を示す)
で表される脂環式トリエポキシ化合物である請求項1に記載のリワーク用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
更に、硬化剤(B)及び硬化促進剤(C)を含む請求項1〜3の何れかの項に記載のリワーク用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
更に、カチオン重合開始剤(D)を含む請求項1〜3の何れかの項に記載のリワーク用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの項に記載のリワーク用エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかの項に記載のリワーク用エポキシ樹脂組成物をカチオン重合して硬化物を得る工程、得られた硬化物を分解、可溶化する工程を含むリワーク用エポキシ樹脂組成物の使用方法。

【公開番号】特開2013−56990(P2013−56990A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195632(P2011−195632)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】