説明

リン−硫黄難燃剤添加物およびそれを含むポリマー系

リン−硫黄化合物は有機ポリマー系において難燃剤活性を有する。リン−硫黄化合物は次の構造によって表わすことができる。


式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または窒素であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、mは各々独立に、X′が酸素であるときは0または1であり、そしてX′が硫黄であるときは0、1または2であり、nは少なくとも1、好ましくは少なくとも2であり、Rは各々独立に非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基であるか、または2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成し、そしてAは有機連結基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ポリマー用難燃剤添加物(flame retardant additives)、特にリン−硫黄火炎抑制添加物に関する。
【背景技術】
【0002】
火炎抑制添加物は、構築、自動車、電子、電気積層品、ワイヤーおよびケーブル、繊維製品ならびにその他の用途に使用されるポリマー製品に一般に添加される。難燃剤添加物(FR添加物)は、ポリマー系の限界酸素指数(LOI)を増加させ、それらのポリマー系から作られた物品が標準火災試験に合格することを可能にする。種々の低分子量(<約1500g/モル)の臭素化化合物は、有機ポリマー用FR添加物として使用される。これらの多くは、ヘキサブロモシクロドデカンおよびポリ臭素化ジフェニルエーテルのように、それらの使用に制約にもたらす規制および公共の圧力の下にあり、そしてそれらのための代替品を見つける動機がある。
【0003】
種々のリン化合物はFR添加物として使用されている。これらの中には有機燐酸塩、フォスフォン酸塩およびホスホルアミドがある。それらのいくつかは、米国特許第4,070,336号および米国特許第4,086,205号ならびにジェー・ダブリュー・ライオンズ(J.W. Lyons),「難燃剤の化学および使用(The Chemistry and Use of Flame Retardants)」,第2章,リン系難燃剤の化学,1987年,p.29−74に記載されている。もう1つの商業上入手可能なFR添加物は、2,2′−オキシビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン2,2′−ジスルフィド]であり、それは次の構造を有する。
【0004】
【化1】

【0005】
これらの化合物は、適度な耐着火性を与える傾向があり、概してヘキサブロモシクロドデカンまたはその他の臭素化FR添加物ほど有効ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機ポリマー用、特に発泡ポリマー用の代替FR添加物を提供することは望ましい。FR添加物は、かなり低含量でポリマーに含められたときにも、ポリマー系のLOIを上げることができなければならない。同様に、FR添加物は、かなり少ない含量で存在するときにも、ポリマー系に十分な消火性を与えることができなければならない。多くの場合、FR添加物は最も好都合には有機ポリマーの溶融物に加えられ、さもなくば(またはそれに加えて)それに続く溶融加工操作において存在するので、FR添加物は溶融ポリマーの温度で熱的に安定でなければならない。これは、典型的には、150℃以上の範囲にあり、しばしば220℃を超える。FR添加物は毒性が低いことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1つの態様において、構造Iによって表わされるリン−硫黄添加物を有効量混合した可燃性ポリマーを含むポリマー組成物である。
【0008】
【化2】

【0009】
式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は、水素、アルキル、不活性に置換されたアルキルまたはP(X)[(X)′mR]2基である。)であり、ただし、XとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、mは各々独立に、X′が酸素であるときは0または1、そしてX′が硫黄であるときは0、1または2であり、nは少なくとも1、好ましくは少なくとも2であり、Rは各々独立に非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基であるか、または2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成し、そしてAは有機連結基である。
【発明の効果】
【0010】
構造(I)の化合物は、多くの場合に非常に低い哺乳類毒性および優れた加水分解性および熱的安定性などの、非常に有用で驚くべき性質の組合わせをしばしば示す。それらの熱的安定性により、高温ポリマー配合物および加工作業の中にそれらを組み入れることができる。予想外に、これらの物質の多くは、様々なポリマーおよびポリマー発泡体構造に、特にポリビニル芳香族型発泡体に配合されたときに、顕著な難燃性能を付与することが見いだされた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの実施態様において、リン−硫黄添加物は構造IIまたはIIIによって表わされるものである。
【0012】
【化3】

【0013】
式中、R、X、T、Aおよびnは前に記載したとおりである。ただし、XとTの少なくとも一方は硫黄である。
【0014】
他の実施態様において、リン−硫黄添加物は構造IVによって表わされるものである。
【0015】
【化4】

【0016】
式中、X、X′、T、nおよびAは前に定義したとおりであり、R2は各々独立に水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルであり、そしてR3は共有結合または二価の連結基である。構造IVにおいて、各R2は好ましくは水素であり、R3は好ましくは隣接する(R22C基に直接結合する炭素原子の上に水素を有しないアルキレンジラジカルである。R3は、より好ましくはジアルキルメチレンであり、最も好ましくはジメチルメチレンである。
【0017】
さらに他の実施態様において、リン−硫黄添加物は構造Vによって表わされる。
【0018】
【化5】

【0019】
式中、X、X′、T、Aおよびnは前述のとおりである。
【0020】
他の点において、本発明は特定のリン−硫黄化合物である。いくつかの実施態様において、リン−硫黄化合物は構造IIIによって表わされる化合物である。他の実施態様において、リン−硫黄化合物は構造IVによって、または構造Vによって表わされる化合物である。さらに他の実施態様において、リン−硫黄化合物は構造IまたはIIによって表わされる。式中、Tは酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、そしてAは、
(1)有機ポリマー、
(2)ベンジルの炭素を介して−T−結合に結合した有機基、たとえば構造VIによって表わされる有機基、
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、R7はH、ヒドロカルビルまたは不活性置換基であり、そしてpは6−nである。)
(3)アクリルまたはメタクリル基を介して−T−結合に結合した有機基、たとえば構造VIによって表わされる有機基、
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、R8は−CH3または−Hであり、そしてA2は有機連結基である。)
(4)非芳香族の炭素−炭素不飽和を有しないジオールまたは二塩基酸のエステル(たとえばマレイン酸エステルまたはフマル酸エステル)の炭素−炭素二重結合にリン−硫黄基を付加した後の、ジオールまたは二塩基酸のエステルの残基、
(5)少なくとも1個の炭素−炭素不飽和部位を有する脂肪酸またはそのエステル(たとえば脂肪酸トリグリセリド)の炭素−炭素不飽和部位にリン−硫黄基を付加した後の、脂肪酸またはそのエステルの残基、または
(6)芳香族炭素原子を介して−T−結合に結合した芳香族基
である。
【0025】
リン−硫黄添加物は、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の硫黄、酸素または窒素原子(ただしそれらの原子の少なくとも1個は硫黄原子である。)に結合したリン原子を含有する少なくとも1個のリン−硫黄基を有することを特徴とする。その基は、単一の硫黄原子を含有していてもよく、たとえば次の種類(構造VIII)の基が挙げられる。
【0026】
【化8】

【0027】
リン−硫黄基は、リン原子に結合した2個の硫黄原子を含有していてもよく、たとえば次の種類(構造IX)の基が挙げられる。
【0028】
【化9】

【0029】
リン−硫黄基は、リン原子に結合した3個または4個の硫黄原子を含有していてもよく、たとえば構造Xに示されるようなものである。
【0030】
【化10】

【0031】
さらに、リン−硫黄基は、構造XIに示されるような、リン原子が(前記のA基および/またはR基の)炭素原子に直接結合したような基であってもよい。
【0032】
【化11】

【0033】
したがって、ある種の有用な種類の適切な非ハロゲン化リン−硫黄添加物は、構造IIおよびIIIによって表わすことができる。
【0034】
【化12】

【0035】
式中、R、X、T、Aおよびnは前述のとおりであり、そしてXとTの少なくとも一方は硫黄である。構造IIおよびIIIにおいて、Tは好ましくは酸素または硫黄であり、最も好ましくは硫黄である。Xは好ましくは硫黄であり、そしてnは好ましくは少なくとも2である。
【0036】
構造I、IIまたはIIIにおいて、R基は、例えば非置換または不活性に置換された脂肪族、脂環式または芳香族基であってもよい。
【0037】
この出願において、「不活性」な置換基とは、添加物の難燃性を妨害しない置換基である。不活性な置換基を含有する化合物は「不活性に置換された」と表現される。不活性な置換基は、例えばエーテル、エステル、カルボニル、水酸基、カルボン酸またはオキシラン基などのような酸素含有基であってもよい。不活性な置換基は、第一級、第二級もしくは第三級アミン基、イミン基、アミド基またはニトロ基のような窒素含有基であってもよい。不活性な置換基は、硫黄、リン、ケイ素(たとえばシランまたはシロキサン基)などのような他のヘテロ原子を含有していてもよい。不活性な置換基は好ましくはハロゲンではなく、かつハロゲンを含有しない。
【0038】
ヒドロカルビル基は、本発明の目的のためには、不活性な置換基を除いて、水素と炭素原子のみを含有する基である。ヒドロカルビル基は、脂肪族であってもよいし、脂環式であってもよいし、芳香族であってもよいし、またはそれらの2種以上の組合わせであってもよい。
【0039】
構造I、IIまたはIII中のR基は、好ましくは、非置換または不活性に置換された低級アルキルであり、低級アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチルなどが挙げられる。より好ましくは、2つのR基は一緒に、例えば上記の構造IVに示されるように、それぞれ−(X′)m−P−(X′)m−、−O−P−O−または−S−P−O−結合を含む環構造を完成する二価の有機ラジカルを形成する。特に好ましいリン−硫黄添加物は構造XIIによって表わされる化合物である。
【0040】
【化13】

【0041】
式中、X、n、R2、R3およびAは前述のとおりである(Xは好ましくは硫黄である。)。構造IVおよびXIIにおいて、R2基は好ましくは水素または低級アルキルであり、好ましくは水素である。R3は、好ましくは、直鎖または分岐ヒドロカルビル基、−O−または共有結合である。より好ましいR3基は、R2C基に直接結合した炭素原子(の同一炭素原子)上に2個の置換基を有する(gem-disubstituted)ヒドロカルビル基である。R3基は、最も好ましくは、R3基がジメチルメチレンである場合のように、ジアルキル置換メチレンである。
【0042】
特に好ましい種類のリン−硫黄添加物は構造XIIIによって表わされる。
【0043】
【化14】

【0044】
式中、X、nおよびAは前述のとおりである。Xは好ましくは硫黄である。
【0045】
別の種類のリン−硫黄添加物は構造Vによって表わされる。
【0046】
【化15】

【0047】
式中、X′、TおよびXは各々好ましくは硫黄であり、そしてAおよびnは前に定義したとおりである。
【0048】
構造I、II、III、IV、V、XIIおよびXIII中のA基は、有機連結基である。有機連結基は多種多様な可能な構造を有することができる。有機連結基は、(構造I〜VおよびXIII中の)−T−結合または(構造XII中の)−S−原子に共有結合で結合している。−T−または−S−結合は、有機連結基A上の炭素原子またはヘテロ原子に結合することができるが、好ましくは炭素原子に結合している。その炭素原子は、好ましくは第一級または第二級炭素原子である(すなわち1個または2個の他の炭素原子に結合している)が、第三級炭素原子(すなわち3個の他の炭素原子に結合しているもの)であることはあまり好ましくない。
【0049】
有機連結基Aの1つの種類は、非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基である。有機連結基Aはいかなる数の炭素原子を含有していてもよいが、リン−硫黄基1個当たりの分子量が約2000ドルトンを超えないことが好ましく、より好ましくは約1500ドルトンを超えず、そして特に好ましくは1000ドルトン未満である。リン−硫黄添加物は、5〜50質量%またはそれ以上の硫黄を含むことができ、そしてAが有機ポリマーであるときは、リン−硫黄FR添加物は好ましくは5〜30質量%の硫黄を含む。有機連結基Aは、脂肪族(直鎖または分岐)であってもよいし、脂環式であってもよいし、芳香族であってもよいし、これらの組合わせであってもよい。有機連結基Aの原子価はnに等しい。構造I〜V、XIIおよびXIIIの各々において、nは好ましくは少なくとも2である。
【0050】
有機連結基Aは、原子価がnに等しい直鎖または分岐の置換または非置換のアルキレン基であってもよい。そのアルキレン基にはいかなる数の炭素原子が含まれていてもよい。置換された(この場合はエーテル基で)アルキレン基であるA基を有する添加物の具体例は、構造XIVによって表わされる。
【0051】
【化16】

【0052】
有機連結基Aは不飽和ヒドロカルビル基であってもよい。そのような場合には、A基は、アリルのまたはベンジルの炭素原子を介して、各リン−硫黄基の−T−結合に結合されていることが好ましい。リン−硫黄基がアリルの炭素に結合されている化合物の具体例は、構造XVおよびXVI(式中、X、R、R2およびR3は前に定義したとおりである。)によって表わされる。
【0053】
【化17】

【0054】
構造XVおよびXVI中、R2基は好ましくは水素または低級アルキルであり、より好ましくは水素であり、そしてR3基は、R2C基に直接結合した炭素原子(の同一の炭素原子)上に2個の置換基を有するヒドロカルビル基であり、好ましくはジアルキル置換メチレンであり、特に(ジメチル)メチレンである。
【0055】
(場合に応じて)ベンジルの炭素原子を介して−T−または−S−結合に結合した、構造I〜V、XIIおよびXIIIのための連結基Aの別の種類は、上記の構造VIによって表わされる。この種のA基を含むリン−硫黄添加物の具体的な例は、次の構造XVII−XXIIIに示される。
【0056】
【化18】

【0057】
リン−硫黄基がA基の芳香環に直接結合することも可能である。
【0058】
構造I−V、XIIおよびXIII中の有機連結基Aの別の種類は、アクリレートまたはメタクリレート基の炭素−炭素二重結合にリン−硫黄出発原料が付加した後の、アクリレートまたはメタクリレート基を有する化合物の残基である。そのような場合には、連結基Aは上記の構造VIIによって表わすことができる。この種のリン−硫黄FR添加物の具体的な種類は、ポリオール化合物のアクリル酸エステルと5,5−ジメチル−2−チオキソ[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオールとの反応生成物である。
【0059】
構造I〜V、XIIおよびXIII中の有機連結基Aのさらに別の種類は、不飽和脂肪酸またはそのような脂肪酸のエステル(たとえば特にそのような脂肪酸のトリグリセリドであり、成分の脂肪酸の少なくとも一部は炭素−炭素不飽和を含む。)の残基であって、その脂肪酸またはエステルの炭素−炭素二重結合にリン−硫黄出発原料を付加した後にそのまま残っているものである。大豆、キャノーラ、オリーブおよびとうもろこし油のような植物油は、そのようなトリグリセリドの例である。
【0060】
構造I〜V、XIIおよびXIII中の有機連結基Aのさらに別の種類は、マレイン酸もしくはフマル酸エステルまたは非芳香族炭素−炭素不飽和を有する別のジオールまたは二塩基酸から作られたエステルの、炭素−炭素二重結合にリン−硫黄基を付加した後の、残基である。この種のリン−硫黄FR添加物の具体的な種類は、マレイン酸ジエステルと5,5−ジメチル−2−チオキソ[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオールとの反応生成物である。
【0061】
他の有機連結基Aは、酸素、リン、硫黄、窒素などの種々のヘテロ原子を含んでいてもよい。リンおよび酸素を含有する連結基Aの具体例は、構造XXIVによって表わされるホスフィン基である。
【0062】
【化19】

【0063】
式中、R5は各々、二価のアルキルまたは不活性に置換された二価のアルキル、好ましくはエチレンまたはメチレンである。ヘテロ原子を含有する有機連結基Aの中には、環構造の中にヘテロ原子を含有する複素環式化合物がある。複素環式化合物は脂肪族であってもよいし芳香族であってもよい。複素環式芳香族化合物は特に興味深い。そのような複素環式芳香族化合物の具体例はホスファゼンまたはトリアジン構造
【0064】
【化20】

【0065】
であり、その環炭素のいずれかまたはすべてがリン−硫黄基で置換されていてもよい。
【0066】
本発明のいくつかのリン−硫黄添加物としては、有機連結基Aが有機ポリマーであるような構造I〜V、XIIまたはXIIIのいずれかのものが挙げられる。ペンダントリン−硫黄基に結合したポリマー有機連結基Aは本発明の好ましい実施態様である。有機連結基Aを形成するために使用される有機ポリマーが(場合に応じて)リン−硫黄基の−T−または−S−結合と結合を形成するために反応することができる官能基を有する限り、広範囲の有機ポリマーが連結基Aとなり得る。
【0067】
A基を形成するポリマーまたはコポリマーは、質量平均分子量が約500〜300,000またはそれ以上であってもよい。しかし、1000〜20,000、特に2000〜10,000のようなより低い質量平均分子量を有するものが、多くのポリマー、特にスチレンホモポリマーおよびコポリマーによりよく分散する傾向があり、難燃性を付与するのにより効率的であり得る。
【0068】
有機連結基Aを形成するために使用することができる有機ポリマーの1つの適切な種類は、リン−硫黄基と結合を形成するために反応することができる脂肪族炭素−炭素不飽和を含むかまたは含むように改質される。脂肪族炭素−炭素不飽和を含む有機ポリマーの具体例としては、ブタジエン、イソプレンまたはシクロペンタジエンのような共役ジエンのホモポリマー、または2種以上の共役ジエンのコポリマー、または少なくとも1種の共役ジエンと少なくとも1種の他の共重合性モノマーのコポリマーが挙げられる。最後の種類の具体例としては、ブタジエンまたはイソプレンとスチレンのようなビニル芳香族モノマーとのコポリマーが挙げられる。脂肪族炭素−炭素不飽和を含む有機ポリマーの別の具体例としては、アクリル酸アリルおよびメタクリル酸アリルなどのような、反応性が等しくない2つのエチレン性不飽和基を有するモノマーのポリマーまたはコポリマーである。これらの基のうち反応性の高い方が優先的に重合し、ペンダントエチレン性不飽和を有するポリマーを形成することができる。脂肪族炭素−炭素不飽和を有する有機ポリマーのさらに別の具体例としては、マレイン酸またはフマル酸(または対応するジエステルまたは酸無水物)のような不飽和脂肪族二塩基酸のポリエステルである。
【0069】
有機ポリマーは、脂肪族炭素−炭素不飽和を導入するために種々の方法で改質することができ、そしてそのような改質されたポリマーは有機連結基Aを形成するために使用することができる。そのような不飽和を導入する便利な方法は、有機ポリマー上の反応性基と、エチレン性不飽和および有機ポリマー上の反応性基と反応し結合を形成する共反応性基(coreactive group)を含む不飽和化合物との反応による。例えば、種々の種類のアクリル、アクリレート、メタクリルおよびメタクリレート化合物は、ヒドロキシル、エステル、第一級または第二級アミノ基などのような反応性基と反応して、有機ポリマーにアクリレートまたはメタクリレート官能性を導入することができる。
【0070】
有機連結基Aを形成するために使用することができる他の有機ポリマーは、他の種類の反応部位を含み、その反応部位を介してそのポリマーがリン−硫黄基の−T−結合または−S−原子に結合することができるようなものである。そのような基の具体例としては、エポキシ基およびハロゲン(特に塩素または臭素)置換が挙げられる。
【0071】
種々様々なエポキシ樹脂を有機連結基Aを形成するために使用することができる。これらの具体例としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラメチルビフェノールのような多価フェノール化合物のジグリシジルエーテル、C2-24アルキレングリコールおよびポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドグリコールのジグリシジルエーテルのような脂肪族グリコールおよびポリエーテルグリコールのジグリシジルエーテル;フェノール・ホルムアルデヒドノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、アルキル置換フェノール・ホルムアルデヒド樹脂(エポキシノボラック樹脂)、フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン・フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン・置換フェノール樹脂などが挙げられる。
【0072】
有機連結基Aを形成するのに有用な、ハロゲンで置換された有機ポリマーとしては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニルベンジルなどのようなハロゲン化モノマーのポリマーおよびコポリマーが挙げられる。代わりに、ハロゲン基は多くの方法で前もって準備したポリマーに導入することもできる。塩化ビニルベンジルのポリマーが、リン−硫黄基がベンジルの炭素原子に結合したリン−硫黄添加物を形成することが注目される。
【0073】
特に興味深い有機ポリマー連結基Aは、共役ジエンのポリマーまたはコポリマー、特にブタジエンもしくはイソプレンのポリマーまたはブタジエンもしくはイソプレンとスチレンのような少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとのコポリマーの(ポリマーの炭素−炭素二重結合にリン−硫黄基を付加した後の)残基である。
コポリマーはランダムコポリマーであってもよいし、ブロックコポリマーであってもよい。特に興味深いブロックコポリマーは、中央のポリブタジエンブロックおよび末端のポリスチレンブロックを含むジブロックコポリマーおよびトリブロックコポリマーである。ジブロックコポリマーは、有機連結基Aを形成するのに使用するには、特にポリスチレンのようなポリビニル芳香族炭化水素における用途には、トリブロックコポリマーよりも多少好ましい。リン−硫黄基を導入する前に、コポリマーは重合したブタジエンを少なくとも10質量%を含む。ブタジエンは重合して2種類の反復単位を形成する。1つの種類は、ここでは「1,2−ブタジエン単位」というが、
【0074】
【化21】

【0075】
の形をとり、そのためポリマーにペンダント不飽和基を導入する。第2の種類は、ここでは「1,4−ブタジエン単位」というが、−CH2−CH=CH−CH2−の形をとり、ポリマー主鎖の中に不飽和を導入する。有機連結基Aとして使用されるブタジエン/ビニル芳香族ポリマーは、好ましくは、リン−硫黄基を付加する前に、少なくともいくらかの1,2−ブタジエン単位を含む。ブタジエン/ビニル芳香族ポリマー中のブタジエン単位のうち、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも25%が、リン−硫黄基を付加する前に、1,2−ブタジエン単位である。1,2−ブタジエン単位は、リン−硫黄基を付加する前に、ブタジエン/ビニル芳香族コポリマー中のブタジエン単位の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%または少なくとも70%を構成することができる。1,2−ブタジエン単位の割合は、出発原料コポリマー中のブタジエン単位の85%を超えていてもよいし、または90%さえも超えていてもよい。1,2−ブタジエン含有量がコントロールされたブタジエン/ビニル芳香族ポリマーを調製する方法は、ジェー・エフ・ヘンダーソン(J. F. Henderson)およびエム・シュワルツ(M. Szwarc),ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science)(D,高分子レビュー(Macromolecular Review)),1968年,第3巻,p.317、ワイ・タナカ(Y. Tanaka),ワイ・タケウチ(Y. Takeuchi),エム・コバヤシ(M. Kobayashi)およびエッチ・タドコロ(H. Tadokoro),ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(J. Polym. Sci.),1971年,A−2,9,p.43−57、ジェー・ジモナス(J. Zymonas),イー・アール・サンティー(E. R. Santee)およびエッチ・ジェームズ・ハーウッド(H. James Harwood),高分子(Macromolecules),1973年,第6巻,p.129−133、およびエッチ・アシタカ(H.Ashitaka)ら,ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(J. Polym. Sci.),ポリマー・ケミストリー(Polym. Chem.),1983年,第21巻,p.1853−1860に記載されている。
【0076】
1種またはそれ以上の共役ジエンのポリマーは、例えば、アリル基を臭素化した(allylically-brominated)ポリマーを与えるために、N−ブロモスクシンイミドで臭素化することができる。そのようなアリル基を臭素化したポリマーは、A基がアリルの炭素原子を介して−T−または−S−結合に結合した連結基Aをもたらすことができる。
【0077】
リン−硫黄添加物は、ほとんどの場合、簡単な化学を用いて直接調製することができる。リン−硫黄出発原料は、潤滑剤としておよび殺生物剤製造用原料として容易に入手できるP25とアルコールとを接触させることによって容易に調製される。アルコールは構造ROH(式中、Rは上記の構造Iにおいて定義されたとおりである。)を有する。生じるリン−硫黄出発原料は、次の構造XXVを有する。
【0078】
【化22】

【0079】
式中、XおよびRは前に定義したとおりである。HOC(R22−R3C(R22OH(式中、R2およびR3は構造IVに関して上に定義したとおりである。)の形のジアルコールはP25と反応して、構造XXVIを有する環状リン−硫黄出発原料を形成することができる。
【0080】
【化23】

【0081】
式中、X、X′、R2およびR3は前に定義したとおりである。この種の化合物は、エッチ・ピー・エス・チャウハン(Chauhan, H. P. S.),シー・ピー・バーシン(Bhasin, C. P.),ジー・スリバスタバ(Srivastava, G.),アール・シー・メヘロートラー(Mehrotra, R. C.),「2−メルカプト−2−チオキソ−1,3,2−ジオキサホスホランおよびジオキサホスホリナンの合成および特性決定(Synthesis and characterization of 2-mercapto-2-thioxo-1,3,2-dioxaphospholanes and dioxaphosphorinanes)」,リンおよび硫黄ならびにその関連元素(Phosphorus and Sulfur and the Related Elements),1983年,第15巻,第1号,p.99−104およびエドムンドソン(Edmundson),「環状有機リン化合物−III、いくらか立体的に込み合ったピロリン酸塩(Cyclic Organophosphorus Compounds-III, Some Sterically Hindered Pyrophosphates)」,テトラヘドロン(Tetrahedron),1965年,p.2379−2387に記載された方法を用いて調製することができる。特に好ましいリン−硫黄出発原料は次のものである。
【0082】
【化24】

【0083】
式中、Xは前記のとおりであり、好ましくは硫黄である。
【0084】
リン−硫黄出発化合物は、第一級、第二級、または好ましくは第三級アミン化合物と混合することによって、対応するアミン塩にすることができ、生じたアミン塩は、有機ハロゲン化物と反応して、リン−硫黄難燃剤を形成することができる。この反応系列は、好都合なことに、出発原料用の溶媒の中で行われ、室温で、低温で、または出発原料の分解温度より低いやや高温で行なわれる。10〜100℃の温度が適している。その反応は、理想化された反応スキームXXVIIによって図式的に示すことができる。
【0085】
【化25】

【0086】
式中、R13は各々独立に水素、ヒドロカルビルまたは不活性に置換されたヒドロカルビルであり、X′′はハロゲン、好ましくは塩素または臭素であり、そしてR、n、AおよびXは前に定義したとおりである。
【0087】
リン−硫黄出発化合物は、ビー・カボウディン(Kaboudin, B.),エッチ・ノロウジ(Norouzi, H.),合成(Synthesis),2004年,第12巻,p.2035−2039に記載されているように、最初にアンモニウム塩を生成せずに、オルトジキシリルジクロリド、1,4−ジブロモ−2−ブテンのような求電子剤と直接反応させることができる。
【0088】
試薬AX′′nは、例えば、1個以上、好ましくは2個以上、好ましくは2〜4個のハロゲン原子(ハロゲン原子は最も好ましくは塩素または臭素である。)で置換されたアルカンまたはアルケンであってもよい。そのような置換されたアルカンおよびアルケンの例としては、1,4−ブタンジクロリド、1,4−ブタンジブロミド、1,2−エチレンジクロリド、1,2−エチレンジブロミド、1,2−プロピレンジクロリド、1,2−プロピレンジブロミド、1,4−ジブロモ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテンなどが挙げられる。試薬AX′′nは、その代りに、1個以上のハロアルキル基、特にブロモメチルまたはクロロメチル基で置換されたそして所望により他の環置換された芳香族化合物であってもよい。そのような芳香族化合物の例としては、塩化ベンジル、o−、m−またはp−キシリルジクロリド、o−、m−またはp−キシリルジブロミド、1,2,4,6−テトラ(ブロモメチル)ベンゼン、1,2,4,6−テトラ(クロロメチル)ベンゼン、1,2,3,4,5,6−ヘキサ(ブロモメチル)ベンゼン、1,2,3,4,5,6−ヘキサ(クロロメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(ブロモメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス(クロロメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、ポリ(ビニルベンジルクロリド)、ポリ(ビニルベンジルブロミド)およびポリ(ビニルベンジルクロリド)および/またはポリ(ビニルベンジルクロリド)と少なくとも1種の他の共重合性モノマーとのコポリマー、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンのポリマーおよびコポリマーなどが挙げられる。
【0089】
リン−硫黄添加物を生成する別の経路においては、反応系列XXVIIIに図式的に示されるように、リン−硫黄出発原料は、1個以上の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する化合物と直接接触させられる。その反応は、出発原料用の溶媒の中で行うことができ、出発原料の分解温度より低いいかなる都合のよい温度でも行なうことができる。0〜100℃の温度が適している。反応系列XXVIIIは次のとおりである。
【0090】
【化26】

【0091】
式中、
【0092】
【化27】

【0093】
は、炭素−炭素二重結合を有する化合物を表わす。炭素−炭素二重結合はシス配置であってもよいし、トランス配置であってもよい。
この種の反応は、例えば、メーバー(Mehbah)ら,「リン、硫黄およびケイ素ならびにその関連元素」,1992年,第73巻,p.49−56に記載されている。
【0094】
不飽和化合物はたった1個の炭素−炭素二重結合を含んでもよいし、そのような二重結合を2個以上含んでもよい。多数の二重結合が存在する場合、それらは共役であってもよいし、共役でなくてもよいが、それらの少なくとも1個は芳香族性ではない。二重結合は非芳香族の環構造の中にあってもよい。適当なオレフィン化合物の例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−または2−ブテン、1−または2−ペンテン、より高級なα‐オレフィン、たとえば1−ヘキセンおよび1−オクテン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,5,9−ドデカトリエン、スチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ビニルシクロヘキサン、シクロオクタジエン、1,6−オクタジエン、アクリレートおよび/またはメタクリレート基を含有する化合物および付加物、ブタジエンおよび/またはイソプレンのポリマーおよびコポリマー(たとえばブタジエンとスチレンのようなビニル芳香族モノマーとのブロックまたはランダムコポリマー)、などが挙げられる。
【0095】
リン−硫黄出発原料は、本発明に有用なリン−硫黄難燃剤化合物を生成するために、前述したようなエポキシ樹脂のようなオキシラン化合物と接触させることができる。この場合、−T−H基は、エポキシ基と反応し、エポキシド環を開き、−OH基(オキシラン環の酸素原子に対応する)を形成する。この反応は、室温よりわずかに低い温度から出発原料の分解温度までの温度で、出発原料用の溶媒の中で行なうことができる。10℃〜100℃の温度が適している。この反応は、望むならば、触媒を用いて行なうことができる。
【0096】
リン−硫黄添加物は、様々な可燃性ポリマー用の難燃剤添加物として有用である。「可燃性」とは、ここでは単に、ポリマーが燃焼し得ることを意味する。可燃性ポリマーは熱可塑性ポリマーでも熱硬化性ポリマーでもよい。
【0097】
興味深い可燃性ポリマーとしては、ポリエチレンのようなポリオレフィン(エチレン−α−オレフィンコポリマーのようなエチレンのコポリマー、ポリプロピレンなどを含む。);ポリカーボネートおよびポリカーボネートとポリエステルとのブレンドのようなポリカーボネートのブレンド、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン樹脂、スチレン・アクリロニトリル樹脂またはポリスチレン;ポリアミド;ポリエステル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;ポリイソシアヌレート、およびビニル芳香族ポリマー(ビニル芳香族ホモポリマー、ビニル芳香族コポリマー、1種以上のビニル芳香族ホモポリマーおよび/またはビニル芳香族コポリマーとポリ(フェニレンオキシド)樹脂およびゴム変性ビニル芳香族ポリマーのような別のポリマーとのブレンドを含む。);ビニルエステル樹脂;熱可塑性または熱硬化性ビニルエステル樹脂、ならびにリン−硫黄添加物が溶解しまたは分散し得るその他の可燃性ポリマーが挙げられる。
【0098】
ポリオレフィンは特に興味深いポリマーである。ポリオレフィンポリマーは、α−オレフィンを重合することによって誘導される反復単位を含有するポリマーまたはインターポリマーである。特に適したα−オレフィンは、2〜約20個の炭素原子、好ましくは2〜約8個の炭素原子を有し、そしてエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。好ましいα−オレフィンポリマーは、エチレンまたはプロピレンのホモポリマー、およびエチレンとC3−C8α−オレフィンとのインターポリマーである。α−オレフィンポリマーは、α−オレフィンと共重合性することができかつ脂肪族または脂環式基を含有する1種またはそれ以上の他のモノマーを、重合された形で含むこともできる。そのようなモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルおよび無水マレイン酸のような酸無水物が挙げられる。α−オレフィンポリマーは好ましくは少なくとも75質量%、好ましくは少なくとも95質量%の重合したα−オレフィンモノマーを含む。より好ましくは、α−オレフィンポリマーは、少なくとも85質量%の重合されたエチレンと15質量%以下の別のα−オレフィンのインターポリマーである。特に適したα−オレフィンポリマーとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)(この用語はここでは高圧フリーラジカル重合法で作られたポリエチレンホモポリマーを示すために用いられる。)が挙げられる。線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)製品もまた、ここで有用である。コモノマーが均一に分布したLLDPEポリマーは、例えば、エルストン(Elston)の米国特許第3,645,992号明細書およびカニッチ(Canich)の米国特許第5,026,798号明細書および米国特許第5,055,438号明細書に記載されており、それもまた有用である。別の有用な種類のα−オレフィンポリマーは、米国特許第5,272,236号明細書および米国特許第5,278,272号明細書(引用によってこの明細書に組み込まれる。)に記載されているような実質的に線状のオレフィンポリマーである。さらに別の適したα−オレフィンポリマーはプロピレンのホモポリマーまたはインターポリマーである。プロピレンのインターポリマーは、プロピレンと、別のα−オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸および無水マレイン酸のような1種以上の他のモノマーとのインターポリマーであってもよい。
【0099】
特に興味深い別の可燃性ポリマーはビニル芳香族ポリマーである。「ビニル芳香族」ポリマーとは、芳香環の炭素原子に直接結合した重合し得るエチレン性不飽和基を有する芳香族化合物のポリマーである。適したビニル芳香族ポリマーとしては、ビニル芳香族モノマーのホモポリマー、およびそれと50質量%以下の1種以上の共重合し得るエチレン性不飽和化合物とのコポリマーが挙げられる。ビニル芳香族ポリマーまたはコポリマーは、単独で用いられてもよいし、または別のビニル芳香族ポリマーまたはコポリマーおよび/または異なる種類のポリマー(例えばポリ(フェニレンオキシド)またはポリ−1,6−(2,6−ジメチルフェニル)エーテルのような)とのブレンドとして用いられてもよい。ビニル芳香族ポリマーは、好ましくは、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて測定した質量平均分子量が100,000〜350,000である。適したビニル芳香族モノマーとしては、スチレン、ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンのような非置換の物質、ならびにエチレン性不飽和基の上に置換基を有する化合物(例えばα−メチルスチレンのような)、および/または環置換された化合物が挙げられる。環置換されたビニル芳香族モノマーとしては、芳香環の炭素原子に直接結合したハロゲン、アルコキシル、ニトロ、非置換のアルキル基または置換されたアルキル基を有するものが挙げられる。そのような環置換されたビニル芳香族モノマーの例としては、2−または4−ブロモスチレン、2−または4−クロロスチレン、2−または4−メトキシスチレン、2−または4−ニトロスチレン、2−または4−メチルスチレン、エチルスチレンおよび2,4−ジメチルスチレンが挙げられる。適した共重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ある種のアミドおよびブタジエンが挙げられる。これらの種類のいずれかの発泡ポリマーは興味深い。
【0100】
例えば、マーク(Mark)ら編,「ビニルエステルポリマー(Vinyl Ester Polymers)」,高分子の科学と工学の百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering),1989年,第17巻,p.393−445に記載されているような熱可塑性および熱硬化性ビニルエステル樹脂もまた特に興味深い。
【0101】
特に興味深い可燃性ポリマーは、前述したようなスチレンポリマーまたはコポリマー、スチレン・アクリロニトリルポリマー(SAN)、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレンのような)、またはスチレン・アクリロニトリル・ブタジエン(ABS)樹脂のようなビニル芳香族モノマーのポリマーまたはコポリマーである。ポリスチレンは特に好ましい可燃性ポリマーである。
【0102】
特に興味深い別の可燃性ポリマーは、ブタジエンと少なくとも1種のビニル芳香族モノマーのランダム、ブロックまたはグラフトコポリマーである。これらの中で、ブロックコポリマーが好ましく、ブタジエンとスチレンのジブロックまたはトリブロックのコポリマーが特に好ましい。
【0103】
可燃性ポリマーは、(リン−硫黄添加物を混合する前でも後でも)いかなる種類の二次加工品の形態であってもよく、二次加工品としては、限定するものではないが、フィルム、シート、繊維、発泡体または成形品が挙げられる。
【0104】
前述の種類のいずれかの発泡可燃性ポリマーは、それらが難燃特性の重要な乗り物と建築に用途を見つけるので、特に興味深い。発泡可燃性ポリマーは、適切には、約0.5〜約30ポンド/立方フィート(pcf)(8〜480kg/m3)、特に約0.8〜約10pcf(12.8〜160kg/m3)、そして最も好ましくは約1〜約4pcf(16〜64kg/m3)の発泡体密度を有する。発泡可燃性ポリマーは、任意の適当な方法によって作ることができ、その方法としては、押出法、反応発泡法および発泡ビーズ法が挙げられる。本発明のリン−硫黄添加物は、しばしば、押出法ポリマー発泡体を製造するのに適している。なぜならば、その化合物は、多くの場合に、発泡体を作る発泡体押出法に導入するのに十分な熱的安定性を有しているからであり、その熱的安定性は下記の5%減量温度試験によって示される。押出法ポリスチレン発泡体および発泡ポリスチレンビーズ発泡体は特に好ましい可燃性ポリマーである。
【0105】
十分な量のリン−硫黄添加物が1つ以上の標準火災試験において可燃性ポリマーの性能を改善するために用いられる。そのような1つの試験は限界酸素指数(LOI)試験であり、それはポリマーの燃焼を支援するために必要な大気中の最小の酸素含量を評価する。LOIは、好都合に、ASTM D2863に従って決定される。リン−硫黄化合物を含む可燃性ポリマーは、好ましくは、可燃性ポリマー単独よりも少なくとも2%、より好ましくは少なくとも3%高いLOIを有する。可燃性ポリマーがポリスチレンであるときは、ポリスチレン・FR添加物混合物のLOIは、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも23%、そしてさらに好ましくは少なくとも25%である。別の防火試験はFP−7として知られている消火時間測定であり、それは、エー・アール・イングラム(A. R. Ingram),ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンス(J. Appl. Poly. Sci.),1964年,第8巻,p.2485−2495に記載された方法に従って決定される。この試験は、火炎用のポリマー試料が指定された特定の条件下で点火炎にさらされ、そしてその後その点火源が除かれたときに火炎が消滅するのに必要とされる時間を測定する。一般に、FP−7値はできるだけ低いほうがよい。ここに記述されたFR添加物を含むポリスチレンポリマーについては、10秒未満、好ましくは5秒未満、さらに好ましくは2秒未満のFP−7値が望ましい。一般に、これらの結果は、リン−硫黄FR添加物が配合された可燃性ポリマーの1〜約15質量パーセント、好ましくは1〜約6質量パーセントを構成するとき、得ることができる。
【0106】
別の溶融加工操作(たとえば押出、発泡、成形など)の前またはその操作中のいずれかに、溶融した可燃性ポリマーにリン−硫黄FR添加物を混合することが多くの場合に都合がよい。このために、リン−硫黄FR添加物は、溶融ポリマーが加工される温度で熱的に安定であることが好ましい。この温度は、典型的には、多くの可燃性ポリマーについて、150℃超であり、そして、特に興味深い多くの可燃性ポリマー(たとえばポリスチレン)については、200℃超、さらには220℃以上である。
【0107】
熱的安定性の有用な指標は5%減量温度であり、それは熱重量分析によって以下のように測定される。リン−硫黄FR添加物の約10ミリグラムを、ティー・エイ・インスツルメント社(TA Instruments)製型式Hi−Res TGA 2950またはそれと等価な装置を用いて、60ミリリッター/分(mL/min)の窒素ガス流量で、加熱速度10℃/minで室温(名目上25℃)から600℃までの範囲にわたって分析する。試料によって失われた質量を、加熱ステップ中、監視し、試料がその初期の質量の5%を失った温度を5%減量温度(5%WLT)とする。この方法は、試料が、初期の試料の質量を基準として5質量%の累積的な減量を受ける温度を与える。リン−硫黄添加物は、好ましくは、可燃性ポリマーが溶融加工される(それをリン−硫黄FR添加物とブレンドするまたはそのブレンドを発泡体、押出品、成形品などのような物品に加工する)温度以上の5%WLTを示す。可燃性ポリマーの溶融加工操作で用いるときは、リン−硫黄FR添加物は少なくとも150℃の5%WLTを有するべきである。特に可燃性ポリマーがポリスチレンであるときは、5%WLTは、好ましくは、少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも225℃、さらに好ましくは少なくとも240℃、さらに好ましくは少なくとも250℃である。
【0108】
他の方法を用いて、リン−硫黄添加物を可燃性ポリマーにブレンドすることもできる。たとえば、可燃性ポリマーの溶液にそれを混合する方法、懸濁重合または乳化重合法の中にそれを加えることによる方法、またはその他の方法でブレンドすることもできる。可燃性ポリマーがリン−硫黄添加物の存在する状態で溶融加工されない場合は、そのような場合のリン−硫黄添加物は一般に加工中にそれほどの高温にさらされないので、リン−硫黄添加物の熱的安定性はそれほど重要ではない。
【0109】
本発明のポリマーブレンドは、他の難燃剤添加物、熱安定剤、紫外線安定剤、核剤、酸化防止剤、発泡剤、充填剤、架橋および/またはグラフト剤、酸掃去剤および着色剤のような他の添加物を含んでもよい。
【0110】
本発明のリン−硫黄FR添加物を含むポリマーブレンドは、種々様々の製品を形成するために溶融または溶液処理されてもよい。発泡(気泡または膨脹)製品は、難燃性能が重要な種々の建物および自動車の用途におけるそれらの使用のために、興味深い。前述したようなビニル芳香族ポリマーならびにブタジエンポリマーおよびコポリマーの発泡ポリマーは、特に興味深い。非発泡ポリマーも本発明に従って作ることができる。
【実施例】
【0111】
次の実施例は本発明を説明するために提供されるが、本発明の範囲を限定するものではない。別段の明示がない限り、部およびパーセントはすべて質量基準である。
【0112】
実施例1
トルエン(70mL)中に5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(10.0g、50ミリモル)を溶かした撹拌溶液に、トリエチルアミン(5.0g、50ミリモル)を加え、トリメチルアンモニウム塩を形成する。混合物を45℃に暖める。生じた混合物に、1,4−ジブロモ−2−ブテン(5.34g、25ミリモル)を加え、その混合物を還流しながら1時間加熱する。その後、その溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、白色固体を得る。未精製の生成物をエタノール(40mL)中でスラリーにし、濾過して、8.7g(80%)の白色固体の、次の構造を有する2,2′−[2−ブテン−1,4−ジイルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドを得る。
【0113】
【化28】

【0114】
2,2′−[2−ブテン−1,4−ジイルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドの熱的安定性を、前述したような熱重量分析によって評価する。試料はこの試験で241℃の5%WLTを示す。その試料についてのプロトンおよび31P NMRは次のピークを示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3,)δ:5.82(m,2H),4.17(m,4H),3.95(m,4H),3.62(m,4H),1.24(s,6H),0.93(s,6H)。
31P NMR(CDCl3 vs. H3PO4)δ:89.23。
【0115】
試料の一部をポリスチレン樹脂と質量比4:96で溶融ブレンドする。凝固した溶融ブレンドを、ウィリー研究所粉砕機および3ミリメートル(mm)の篩寸法を用いて粉砕する。粉砕した溶融ブレンドの25〜27gのアリコートを、設定温度180℃、加圧時間5分および加圧力25,000ポンド毎平方インチ(psi)(172MPa)で操作するパサデナ油圧定盤成形機(Pasadena Hydraulic Platen Press)(型式No.BL444C−6M2−DX2357)を用いて、100mm×100mm×1.5mmの大きさの円板試料(plaques)に圧縮成形する。成形した円板試料を、限界酸素指数(LOI)およびFP−7試験のための細長い試験片(strips)に裁断する。LOIをASTM D2863によって評価し、26.5%であることが分かる。FP−7を前記したように評価し、1.9秒であることが分かる。
【0116】
濃縮物の質量を基準として10質量%のリン−硫黄添加物をポリスチレン中に含む濃縮物を、2,2′−[2−ブテン−1,4−ジイルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドとポリスチレンをブレンドすることによって調製する。そのブレンドを、ストランド用ダイを備えたHaake RHEOCORD(登録商標)90円錐二軸押出機を用いて、ポリスチレンと一緒に溶融配合する。押出機は、設定温度135℃、170℃および180℃で運転される3つの温度ゾーンを有し、180℃のダイ設定温度を有する。押出されたストランドを水浴中で冷却し、長さ約5mmのペレットに切断する。ペレットを、順々に、3つの加熱ゾーン、発泡剤混合セクション、冷却セクションおよび調整可能1.5mm調整可能スリットダイを備えた25mm単軸押出機を用いて、発泡体に変える。3つの加熱ゾーンは、115℃、150℃および180℃の設定温度で運転し、混合ゾーンは200℃の設定温度で運転する。二酸化炭素(濃縮物ペレットと追加のポリスチレンペレットの合計質量100質量部につき4.5質量部)を、2本の異なるRUSKA(登録商標)(チャンドラー・エンジニアリング社(Chandler Engineering Co.))シリンジポンプを用いて、発泡剤混合セクションに供給する。濃縮物ペレットと追加のポリスチレンのペレットを、スクリュー潤滑剤としてステアリン酸バリウム0.05質量%(ドライブレンド質量基準)と共にドライブレンドする。濃縮物ペレットと追加のポリスチレンのペレットの比は、FR添加物の最終濃度が4.2質量%になるように選択する。ドライブレンドを押出機の供給ホッパーに加え、2.3kg/時間の流量で供給する。均一に混合されたポリマーゲルを提供しそして均一の横断面を有する発泡体の形成を促進するために、混合セクション内の圧力は、1500psi(10.4MPa)超に維持する。冷却器は、発泡性ゲル温度を120℃〜130℃に下げる。ダイ間隔は少なくとも1000psi(6.9MPa)のダイ背圧を維持するように調節する。発泡性ゲルは、ダイを出るときに発泡して、嵩密度が約2.5pcf(約40kg/m3)のポリスチレン発泡体を形成する。発泡体のLOIは24.7%であり、FP−7は4.9秒である。
【0117】
実施例2
N,N−ジエチルエタンアミニウム,5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−チオラート−2−オキシド(7.5g、27ミリモル)および1,4−ジブロモブテン(2.84g、13.2ミリモル)の混合物を、エタノール50mL中でスラリーにし、5時間還流する。反応混合物を冷却し減圧下で濃縮する。生じた残留物を塩化メチレン(100mL)中に溶解し、水(40mL)で洗浄し、乾燥し、濃縮して、3.60g(66%)の白色固体の、次の構造を有する2,2′−[2−ブテン−1,4−ジイルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジオキシドを得る。
【0118】
【化29】

【0119】
この物質の5%WLTは255℃である。その生成物4%とポリスチレン96%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが22%、FP−7値が5.7秒である。
【0120】
実施例3
80℃のエタノール(130mL)中にジチオリン酸O,O−ジエチルエステルのアンモニウム塩(15.8g、78ミリモル)を溶かした撹拌溶液に、1,4−ジブロモ−2−ブテン(7.55g、35ミリモル)を小分けして(in portions)加える。生じた混合物を冷却し、水(150mL)で希釈し、塩化メチレン(3×100mL)で抽出する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、15g(99%)の次の構造を有するS−[4−(ジエトキシチオホスホリルスルファニル)−2−ブテニル]ジチオリン酸O,O′−ジエチルエステルを得る。
【0121】
【化30】

【0122】
実施例4
トルエン(70mL)中に5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(8.0g、40ミリモル)を溶かした撹拌溶液に、トリエチルアミン(4.0g、40ミリモル)を加える。混合物を45℃に暖める。生じた混合物に、二塩化o−キシリル(3.51g、20ミリモル)を加え、その後、その混合物を還流しながら1時間加熱する。その溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、白色固体を得る。未精製の生成物をエタノール(40mL)中でスラリーにし、濾過して、7.8g(78%)の白色固体の次の構造を有する2,2′−[1,2−フェニレンビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドを得る。
【0123】
【化31】

【0124】
この物質の5%WLTは240℃である。その試料についてのプロトン、13Cおよび31P NMRは次のピークを示す。
1H NMR(CDCl3)δ:7.40(m,2H),7.25(m,2H),4.32(d,J=12Hz,4H),4.11(m,4H),3.88(m,4H),1.24(s,6H),0.86(s,6H)。
13C NMR(CDCl3)δ:135.22,135.12,131.20,128.76,77.75,77.64,34.57,34.54,32.72,32.64,22.34,22.14。
31P NMR(CDCl3)δ:87.49。
その生成物3%とポリスチレン97%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが23%、FP−7値が3.5秒である。同一のブレンドから作られたポリスチレン発泡体は、LOIが23.3%、FP−7値が5.3秒である。
【0125】
実施例5
N,N−ジエチルエタンアミニウム,5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−チオラート−2−オキシド(6.2g、22ミリモル)と二塩化o−キシリル(1.94g、11ミリモル)の混合物を、エタノール50mL中でスラリーにし、5時間還流する。反応混合物を冷却し、減圧下で濃縮する。生じた残留物を、塩化メチレン(100mL)中に溶解し、水(40mL)で洗浄し、乾燥し、濃縮し、3.6g(70%)の白色固体の次の構造を有する2,2′−[1,2−フェニレンビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジオキシドを得る。
【0126】
【化32】

【0127】
この物質の5%WLTは247℃である。その生成物2.5%とポリスチレン97.5%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが21.5、FP−7値が11.4秒である。
【0128】
実施例6
O,O−ジエチルジチオリン酸アンモニウム塩(14.13g、69.50ミリモル)をビーカーの中に量り取り、その後、エタノール(130mL)中に溶解する。その後、ビーカーを湯浴(80℃)に入れ、攪拌する。ビーカーの内容物が80℃に達したとき、α,α′−ジクロロ−o−キシレン(5.53g、31.59ミリモル)を小分けして(portionwise)加える。反応は撹拌しながら80℃で3時間行い、その後、反応ビーカーは沈殿した塩化アンモニウムを含む。ビーカーの内容物を分液漏斗に注ぎ、脱イオン水を加えて塩化アンモニウムを溶解する。水/エタノール相から生成物S,S′−(1,2−フェニレンジメチレン)−O,O,O′,O′,−テトラエチルジチオリン酸を抽出するために、塩化メチレンを(3回)用いる。単離した有機相を無水MgSO4で乾燥する。塩化メチレンはMgSO4から濾過し、ロータリーエバポレーターで乾燥し、油状物を残す。その後、油状物を数時間減圧下に置き、すべての残留するエタノールを除去する。数日間油状物を放置した後、フラスコ中にS,S′−(1,2−フェニレンジメチレン)−O,O,O′,O′,−テトラエチルジチオリン酸の結晶が形成する。これらの結晶を単離し、33〜34.5℃の融点を有することが見いだされる。その生成物は225℃の5%WLTを有する。理想的な反応式は次のとおりである。
【0129】
【化33】

【0130】
実施例7
トルエン(110mL)中に5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(9.70g、48ミリモル)を溶解した撹拌溶液に、トリエチルアミン(4.80g、48ミリモル)を加える。混合物を45℃に暖める。生じた混合物に1,2,4,6−テトラ(ブロモメチル)ベンゼン(5.0g、11ミリモル)を加え、その混合物を還流しながら14時間加熱する。その後、トルエン溶液を濾過し、沈殿を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)中でスラリーにする。沈殿を濾過し、乾燥して、白色固体の2,2′,2′′,2′′′−[1,2,4,6−フェニレンテトラ(メチルチオ)]テトラ[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′,2′′,2′′′−スルフィド)を得る。収率は9.4g(93%)である。生成物の構造は次のとおりである。
【0131】
【化34】

【0132】
この物質の5%のWLTは281℃である。その生成物2.8%とポリスチレン97.2%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.3%、FP−7値が5.6秒である。
【0133】
実施例8
トルエン(110mL)中に5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(8.19g、41ミリモル)を溶かした撹拌溶液に、トリエチルアミン(4.2g、41ミリモル)を加える。混合物を45℃に暖める。生じた混合物に1,3,5−トリス(ブロモメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン(5.0g、13ミリモル)を加え、その混合物を還流しながら14時間加熱する。その後、溶液を塩化メチレン(150mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、白色固体を得る。未精製の生成物をアセトニトリルから再結晶させ、収率8.0g(85%)の白色固体の2,2′,2′′−[2,4,6−トリメチル−1,3,5−フェニレントリス(メチルチオ)]トリス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′,2′′−ジスルフィドを得る。生成物の構造は次のとおりである。
【0134】
【化35】

【0135】
この物質の5%WLTは283℃である。その生成物3.1%とポリスチレン96.9%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.2%、FP−7値が2.8秒である。同一のブレンドから作られたポリスチレン発泡体(密度:2.54pcf、約40kg/m3)は、LOIが27%、FP−7値が1.1秒である。
【0136】
実施例9
570の報告Mnおよび約3.6エポキシド単位/分子(10.4g)を有するエポキシノボラック樹脂を、50mLのトルエンに撹拌しながら溶かす。これに、5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィド11.2gを、追加の40mLのトルエンと共に加える。その混合物を窒素雰囲気で撹拌する。30分後、塩化メチレン50mLを加え、均一混合物を形成する。室温で18時間撹拌した後、生成物をヘキサン600mL中で沈殿によって回収する。その生成物を、70℃の減圧乾燥器中で一晩乾燥する。理想的な反応は次のように図式的に表わされる。
【0137】
【化36】

【0138】
この物質の5%WLTは239℃である。
【0139】
実施例10
不飽和ポリエステルを、シクロヘキサンジメタノール(1,4および1,3−異性体の50/50混合物)、マレイン酸ジメチルおよびイソフタル酸から調製する。マレイン酸エステル/イソフタル酸エステルのモル比は48:52であり、不飽和ポリエステルの質量平均分子量(GPCによる、ポリスチレン標準)は2620であり、そのガラス転移温度(Tg)は20℃である。不飽和ポリエステル(30.0g)および無水ピリジン(4mL)を100mLの塩化メチレンに溶かし、その溶液に塩化テレフタロイル(4.5g)を加える。1時間窒素雰囲気で撹拌した後、メタノール(5mL)を加える。そのポリマー溶液を100mLの1.0N−HClで洗浄し、生成物をメタノール(1リットル)中で沈殿によって単離する。生成物を50℃の減圧乾燥器で一晩乾燥する。生じた不飽和ポリエステル(15.0g)および5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィド(8.0g、40ミリモル)を、1,2−ジクロロエタン20mLに溶かし、その溶液を19時間還流する。その溶液を、1,2−ジクロロエタン75mLの添加によって希釈し、生成物をメタノール500mL中で沈殿によって単離する。生成物を50℃の減圧乾燥器で一晩乾燥する。生成物の質量平均分子量は5620である。そのTgは50℃である。この生成物の5%WLTは276℃である。そのポリマーの反復単位の理想的な構造は、次のように表わされる。
【0140】
【化37】

【0141】
その生成物19%とポリスチレン81%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.3、FP−7値が1.3である。
【0142】
実施例11
撹拌軸、窒素注入口を有する還流冷却器および添加漏斗を装備した500mL三つ口丸底フラスコに、5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィド38.18g(0.195モル)およびトルエン60mLを加え、白いスラリーを形成する。その後、フラスコを85℃に加熱し、溶液を形成する。その後、室温でトルエン80mLに溶かしスチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)トリブロックコポリマー(10g、0.097モル)を、その加熱溶液に40分間かけて滴下して加える。この実施例で用いたSBSコポリマーは、平均53モノマー単位を有する中央ポリブタジエンブロックを含み、そのモノマー単位の約22%は1,4−ブタジエン単位であり、78%は1,2−ブタジエン単位である。末端ポリスチレンブロックは平均長さが23〜24モノマー単位である。その後、反応を、85℃で68時間窒素雰囲気で撹拌しながら行なう。その後、反応溶液を冷却し、トルエン200mLで希釈し、KOH水溶液で2度、水で1度洗浄する。その後、ポリマー溶液をメタノールに入れて沈殿させ、40℃の減圧乾燥器で5時間乾燥する。そのポリマーを、トルエン200mLに再度溶かし、MgSO4で乾燥し、水で2度洗浄し、メタノール2Lに入れて再度沈殿させ、40℃の減圧乾燥器で一晩乾燥する。白いポリマー粉末19.36gを採取する(収率67.12%)。理想的な反応は次のように図式的に表わすことができる。
【0143】
【化38】

【0144】
CDCl3のプロトンNMRは、出発原料ポリマー中の脂肪族二重結合の5%が未反応のままであることを示す。ポリスチレン基準に対するTHF中のGPC分析は、生成物が128,560のMnおよび147,330のMwを有するので、少量のポリマーカップリングが生じていることを示す。
【0145】
生成物の5%WLTは242℃である。その生成物3.6%とポリスチレン96.4%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.2、FP−7値が4.2である。
【0146】
実施例12
リン−硫黄基を、実施例11に記載した方法に類似した方法で、SBジブロックコポリマーの上に導入する。撹拌軸、窒素注入口を有する還流冷却器および添加漏斗を装備した500mL三つ口丸底フラスコに、5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィド27.85g(0.14モル)およびトルエン45mLを加える(白いスラリー)。反応混合物を85℃に設定した油浴に浸し、5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィドはトルエンに溶ける。その後、室温でトルエン80mLに溶かしたスチレン・ブタジエンジブロックコポリマー(ポリマー10g、ポリブタジエンブロック0.07モル)をその加熱溶液に35分間かけて滴下して加える。反応を、70時間窒素雰囲気で加熱、撹拌しながら進行させる。反応溶液を冷却し、水でトルエン200mLで希釈し、KOH水溶液で2度、水で1度洗浄する。ポリマーをメタノール2Lに入れて沈殿させ、70℃で減圧下で一晩乾燥する。ポリマーを、トルエン250mLに再度溶かし、MgSO4で乾燥し、濾過し、メタノール2Lの中に沈殿させ、70℃の減圧乾燥器で一晩乾燥する。白いポリマー粉末18.13gを採取する(収率76%)。
【0147】
この実施例におけるSBジブロックコポリマーは、平均長さが38モノマー単位のポリブタジエンブロックを有する。ブタジエン単位の約29%は1,4−単位である。ポリスチレンブロックは長さが約62単位である。生成物は、次の理想的な構造(生成物中の1,2−および1,4−ブタジエン構造を反映しない。)によって表わされる。
【0148】
【化39】

【0149】
この生成物の5%WLT温度は260℃である。その生成物8.4%とポリスチレン91.6%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが25、FP−7値が1.3秒である。
【0150】
実施例13
撹拌軸、窒素注入口を有する還流冷却器および添加漏斗を装備した500mL三つ口丸底フラスコに、5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィド19.82g(0.10モル)およびトルエン45mLを加え、白いスラリーを形成する。トリエチルアミン(10.12g、0.10モル)をスラリーに加え、スラリーを45℃に加熱し、溶液を形成する。その後、室温でトルエン80mLに溶かしたポリ塩化ビニルベンジル(15g、0.098モル)を、その加熱溶液に滴下して加える。ポリマー添加が完了した後、反応混合物を100分間還流しながら加熱する。反応溶液を冷却し、クロロホルム100mLで希釈し、水300mLで4回洗浄する。その後、ポリマー溶液をMgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮し、メタノール2Lの中に沈殿させる。生じた白いポリマー粉末を濾過によって採取し、70℃の減圧乾燥器で一晩乾燥し、27.2gの生成物を得る。理想的な反応スキームは次のように表わされる。
【0151】
【化40】

【0152】
生成物は、ポリスチレン基準でTHFでGPCによって測定したところ、Mnが51,859、Mwが120,880、PDIが2.33である。その5%WLTは292℃である。その生成物3.8%とポリスチレンの96.2%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが22、FP−7値が3.8である。
【0153】
実施例14
撹拌軸、窒素注入口を有する還流冷却器および添加漏斗を装備した500mL三つ口丸底フラスコに、5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィド41.82g(0.21モル)およびトルエン60mLを加え、白いスラリーを形成する。スラリーを85℃に加熱し、溶液を形成する。その後、室温でトルエン80mLに溶かしたスチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)トリブロックコポリマー(10g、0.105モル)を、その加熱溶液に40分間かけて滴下して加える。このポリマー中のブタジエン単位の10%は1,2−ブタジエン単位であり、90%は1,4−ブタジエン単位である。反応混合物は85℃で71時間窒素雰囲気で撹拌する。その後、反応溶液を冷却し、トルエン400mLで希釈し、水のKOH水溶液で2度、水で1度洗浄する。その後、ポリマー溶液をMgSO4で乾燥し、メタノール2Lの中に沈殿させ、40℃の減圧乾燥器で一晩乾燥する。生成物ポリマー(23g)をテトラヒドロフラン(THF)1Lに溶かして、濁った白い溶液を形成し、それを10〜20psiの空気圧を用いて、0.45μmHVHPフィルターを通して濾過する。透明なポリマー濾液をメタノール2Lの中に入れて再度沈殿させる。白いポリマー生成物を濾過によって採取し、40℃の減圧乾燥器で一晩乾燥する。白いポリマー粉末13.4gを採取する(収率43.5%)。理想的な反応スキームは次のように表わされる。
【0154】
【化41】

【0155】
CDCl3のプロトンNMRは、もとのポリマー中の脂肪族炭素−炭素二重結合の11.7%が未反応のままであることを示す。ポリスチレン基準に対するTHF中のGPC分析は、少量のポリマーカップリングが生じたことを示す。生成物は、Mnが124,860、Mwが137,030、多分散性が1.097である。生成物の5%WLTは244℃である。その生成物3.6%とポリスチレン96.4%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが22.3%、FP−7値が4.2秒である。
【0156】
実施例15
撹拌軸、窒素注入口を有する還流冷却器および添加漏斗を装備した250mL三つ口丸底フラスコに、5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィド8.36g(0.042モル)、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)トリブロックコポリマー(ポリブタジエンブロック0.021モル)3gおよびトルエン40mLを加え、白いスラリーを形成する。反応混合物を110℃に設定した油浴の中に浸し、固体をすべてトルエンに溶かす。反応混合物を、69時間窒素雰囲気で加熱し、撹拌する。反応溶液を40℃に冷却し、トルエン50mLで希釈する。トリエチルアミン(2.98mL、0.021モル)を未精製の溶液に直接加え、反応を1時間40℃で窒素雰囲気で撹拌しながら行い、その間に沈殿が生成する。未精製の混合物をシリカのプラグの中に通し、ポリマー濾液を回転蒸発によって濃縮する。その後、ポリマー溶液をメタノール1Lの中に入れて沈殿させ、70℃で減圧下で一晩乾燥する。白いポリマー粉末5.78gを採取する(収率80.5%)。
理想的な反応スキームは次のとおりである。
【0157】
【化42】

【0158】
この物質の5%WLTは248℃である。その生成物7.8%とポリスチレン92.2%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.5、FP−7値が0.9秒である。
【0159】
実施例16
ピリジン150mLに5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(18.77g、63ミリモル)のトリエチルアンモニウム塩の撹拌溶液に、トリスクロロメチルホスフィンオキシド(3.50g、18ミリモル)を加える。混合物を2時間105℃に加熱する。生じた暗黄色の溶液を、塩化メチレン(300mL)で希釈し、水(1L)、希HCl溶液(1M、250mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、淡黄色固体を得る。生じた未精製の物質を、最初に暖かいアセトニトリルの中でスラリーにしそして氷浴で冷却することによって精製し、次に濾過し、浅黄色固体を得る。メタノールからの再結晶により、次の構造によって表わされる白色生成物トリス[2−メチレンチオ−(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−チオキソ)ホスフィンオキシド3.96g(収率33%)を得る。
【0160】
【化43】

【0161】
生成物の5%WLTは243℃である。その生成物2.7%とポリスチレン97.3%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが22.8、FP−7値が4.4秒である。
【0162】
実施例17
アセトニトリル75mL中の塩化シアヌル(1.84g、10ミリモル)および5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(7.10g、33ミリモル)のアンモニウム塩の混合物を、4時間還流する。反応混合物を冷却し、減圧下で濃縮する。生じた固体を、塩化メチレン150mLで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、黄色固体を得る。この物質を、塩化メチレン(100mL)に溶かし、シリカゲルを通して濾過し、そして減圧下で溶媒を除去することによって精製し、4.60g(67%)の白色固体の次の構造を有する2,2′,2′′−[s−トリアジン−2,4,6−トリス(チオ)]トリス[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)−2,2′,2′′−スルフィドを得る。
【0163】
【化44】

【0164】
生成物の5%WLTは249℃である。その生成物2.7%とポリスチレン97.3%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが23.8、FP−7値が4秒である。
【0165】
実施例18
硫黄(3.52g、110ミリモル)をN−ベンジル−N−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−アミン(10.2g、27ミリモル)の溶液に小分けして加え、その混合物を一晩撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮する。残留物をクロロホルム(100mL)の中でスラリーにし、濾過し、濾液を冷凍庫の中に一晩貯蔵する。冷たい反応混合物を再び濾過し、濾液を濃縮し、白色固体を得る。エタノール中でのこの固体の再結晶により、4.81g(40%)の次の構造を有する白色固体N−ベンジル−N−(5,5−ジメチル−2−スルフィド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−アミン−2−スルフィドを得る。
【0166】
【化45】

【0167】
この物質の5%WLTは202℃である。その生成物4.8%とポリスチレン95.2%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが23、FP−7値が1.1秒である。
【0168】
実施例19
ネオペンチルグリコール(13.8g、132ミリモル)およびo−キシリルテトラクロロチオホスフェート(24.7g、66ミリモル)の混合物を、ピリジン(1mL)を含むクロロベンゼン(250mL)の中でスラリーにし、10時間115℃に加熱する。アリコートを31P NMRによって調べたところ、いまだ出発原料を含むことが分かる。反応混合物はさらに15時間加熱し撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、粘着性の褐色固体を得る。その固体を、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)混合物120mLに溶かし、シリカゲルを用いたクロマトグラフィーで分離し、黄色がかった褐色の固体(20.5g)を得る。その固体を酢酸エチル:ヘキサン混合物(1:3、50mL)で洗浄し、オフホワイトの固体7gを得る。さらに2gの物質を、濾液を濃縮し、それを酢酸エチル:ヘキサン混合物で洗浄することによって回収する。次の構造を有する[1,2−フェニレンビス(メチレン)]ビス[5,5−ジメチル[1,3,2]ジオキサホスホリナン]2,2′−ジスルフィドの合計収率は32%である。
【0169】
【化46】

【0170】
この物質の5%WLTは284℃である。その生成物5.1%とポリスチレン94.9%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが22.8、FP−7値が1.2秒である。
【0171】
実施例20
エタノール50mL中の1,4−ジブロモブタン(2.42g、11ミリモル)および5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(6.50g、30ミリモル)のアンモニウム塩の混合物を、4時間還流する。その後、反応混合物を冷却し、クロロホルム100mLで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、4.71g(93%)の白色固体2,2′−[1,4−ブチルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドを得る。その生成物は次の構造を有する。
【0172】
【化47】

【0173】
この物質の5%WLTは244℃である。その生成物2.9%とポリスチレン97.1%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが22.6、FP−7値が7.1秒である。
【0174】
実施例21
ビシクロ[2,2,1]2,5−ヘプタジエン(0.92g、10ミリモル)を、トルエン40mL中の5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(4.0g、20ミリモル)の撹拌溶液に加える。発熱反応が起こり、反応混合物の温度を56℃に上げ、白色沈殿を形成する。反応混合物を1時間さらに70℃に暖め、その後室温まで放冷する。混合物を濾過し、4.5gの生成物2,2′−[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(チオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]2,2′−ジスルフィドを得る。その化合物は、LC/MS法によって、次の構造を有するビス付加体であることが分かる。
【0175】
【化48】

【0176】
この物質の5%WLTは264℃である。その生成物3%とポリスチレン97%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが23、FP−7値が3.9秒である。
【0177】
実施例22
平均アクリレート官能価3.4および当量が89.34g/当量のペンタエリトリトールトリアクリレートおよびペンタエリトリトールテトラアクリレートの混合物を、磁気攪拌機および窒素注入口を装備した500mLの一口丸底フラスコの中に、塩化メチレン100mLと共に加える。5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(10.96g、0.055モル)を加え、生じた均質の溶液を48時間撹拌し続ける。追加の5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(1.0g、0.005モル)を加え、その混合物をさらに48時間撹拌し続ける。この時点で、NMR分析はアクリレート基の93%が反応したことを示す。溶媒を80℃に加熱されたロータリーエバポレーター経由で反応混合物から取り除く。残った物質を、約16時間80℃減圧乾燥器に置く。透明な無色のガラス質の物質13.6g(単離収率85%)が回収される。理想的な反応スキーム(テトラ付加体の形成)は次のとおりである。
【0178】
【化49】

【0179】
この物質の5%WLTは274℃である。その生成物3.5%とポリスチレン96.5%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが23.3、FP−7値が3.5秒である。
【0180】
実施例23
250mLの三つ口丸底フラスコにマレイン酸ジエチル(0.1モル、17.2g)を加える。5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(0.1モル、19.8g)を撹拌しながら加え、生じた混合物を100℃で2時間加熱する。理想的な反応スキームは以下のとおりである。
【0181】
【化50】

【0182】
この生成物の5%WLTは218℃である。その生成物4.6%とポリスチレン95.4%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが23.2、FP−7値が0.2秒である。
【0183】
実施例24
トルエン(75mL)中の1,9−デカジエン(5.0g、36.1ミリモル)および5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(14.33g、72.3ミリモル)の撹拌溶液を、6時間80℃に加熱する。アリコートの31P NMRは、原料チオールならびにモノ付加体およびビス付加体の存在を示す。混合物をその体積の半分に濃縮し、80℃でさらに6時間加熱する。混合物を塩化メチレンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、油状物をえる。その油状物はゆっくり固化し、18.5g(96%)の2,2′−[デカン−2,9−ジイルビス(チオ)]ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)2,2′−ジスルフィドを生じる。生成物は次の構造を有する。
【0184】
【化51】

【0185】
この生成物の5%WLTは239℃である。その生成物6.3%とポリスチレン93.7%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.3、FP−7値が2.6秒である。
【0186】
実施例25
5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(8.0g、40.4ミリモル)を、トルエン(100mL)に溶かす。トリエチルアミン(3.8g、40.4ミリモル)を加え、その混合物を10分間撹拌し続ける。その後、ブロモジフェニルメタン(10.5g、42.4ミリモル)を加え、反応混合物を2時間80℃に暖める。アリコートのHPLCは、原料ブロモ化合物の大部分が消費されることを示す。反応混合物を、塩化メチレン(100mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、白色固体を得る。未精製物質をトルエンから再結晶する。2−[(ジフェニルメチル)チオ]−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン2−スルフィドの収率は、13.2g(95%)であった。その化合物の構造は次のとおりである。
【0187】
【化52】

【0188】
この生成物の5%WLTは238℃である。その生成物8.3%とポリスチレン91.7%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが26、FP−7値が0.4秒である。
【0189】
実施例26
N,N−ジエチルエタンアミニウム6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン−6−メルカプト−6−オキシド(8.0g、22.9ミリモル)を、1,4−ジブロモ−2−ブテン(2.45g、11.5ミリモル)を含む塩化メチレン(75mL)に溶かし、生じた混合物を還流する。3時間の還流後に、出発原料の大部分が消費される。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、次の構造を有する白色固体の4.6g(73%)の6,6′−[(2E)−2−ブテン−1,4−ジイルビス(チオ)]ビス(6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン−6,6′−ジオキシドを得る。
【0190】
【化53】

【0191】
この生成物の5%WLTは270℃である。その生成物6.4%とポリスチレン93.6%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.8、FP−7値が1秒である。
【0192】
実施例27
トルエン40mL中の1,4−ビス[ジメチル[2−(5−ノルボルネン−2−イル)エチル]シリル]ベンゼン(5.0g、11.5ミリモル)の撹拌溶液に、5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(4.56g、23ミリモル)を加える。その混合物を6時間80℃に暖める。その後、透明な反応混合物を、炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、油状物を得る。その油状物は、ゆっくり固化して、白色固体(9.2g、96%)になる。生成物2,2′−{1,4−フェニレンビス[(ジメチルシランジイル)エタン−2,1−ジイルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−6,2−ジイルチオ]}ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)2,2′−ジスルフィドの構造は、次のとおりである。
【0193】
【化54】

【0194】
この生成物の5%WLTは285℃である。その生成物4.9%とポリスチレン95.1%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが21.7、FP−7値が4.4秒である。
【0195】
実施例28
トルエン(40mL)中の5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(2.06g、10ミリモル)の撹拌溶液に、トリエチルアミン(0.10g、10ミリモル)を加える。その混合物を45℃に暖め、5,5−ジメチル−2[(4−クロロメチルフェニル)メチル]−1,3,2−ジオキサホスホリナン2−オキシド(3.00g、10ミリモル)を加える。その後、その混合物を4時間90℃に加熱する。その溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、白色固体4.3g(92%)を得る。生成物2−({4−[(5,5−ジメチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]ベンジル}チオ)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−スルフィドは次の構造を有する。
【0196】
【化55】

【0197】
この物質の5%WLTは257℃である。その生成物4.8%とポリスチレン95.2%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが21.7、FP−7値が2.9秒である。
【0198】
実施例29
トルエン100mL中の6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン−6−オキシド(10g、46.3ミリモル)の撹拌懸濁液に、トリエチルアミン(4.68g、46.3ミリモル)を滴下して加える。その後、硫黄(1.48g、46.3ミリモル)を小分けして加える。反応混合物を1時間45℃で撹拌し続ける。反応混合物に二塩化o−キシリル(4.05g、23.1ミリモル)を加え、その後、5時間90℃に加熱する。反応混合物を、冷却し、減圧下で濃縮し、その残留物を塩化メチレン(120mL)で希釈する。その塩化メチレン溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液(1×100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、白色固体を得る。その生成物を、溶離剤として塩化メチレンおよび酢酸エチル(8:2)を用い、シリカゲルを通して濾過することによってさらに精製し、次の構造を有する白色固体の8.2g(59%)の6,6′−[1,2−フェニレンビス(メチレンチオ)]ビス(6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン)6,6′−ジオキシドを得る。
【0199】
【化56】

【0200】
この物質の5%WLTは262℃である。その生成物7%とポリスチレン93%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.8、FP−7値が3.2秒である。
【0201】
実施例30
トルエン100mL中の6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン−6−オキシド(10g、46.3ミリモル)の撹拌懸濁液に、トリエチルアミン(4.68g、46.3ミリモル)を加え、それに続けて、硫黄(1.48g、46.3ミリモル)を小分けして加える。反応混合物を1時間45℃で撹拌し続ける。1,3,5−トリス(ブロモメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン(6.09g、15.3ミリモル)をその反応混合物に加え、その後に5時間90℃に加熱する。反応混合物を冷却し、その後、減圧下で濃縮し、その残留物を塩化メチレン(120mL)で希釈する。その塩化メチレン溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、13.1g(95%)のオフホワイトの固体の生成物6,6′,6′′−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレンチオ)]トリス(6H−ジベンゾ−[c,e][1,2]オキサホスホリン)6,6′,6′′−トリオキシドを得る。提案される構造は以下のとおりである。
【0202】
【化57】

【0203】
この物質の5%WLTは219℃である。その生成物6.2%とポリスチレン93.8%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.8%、FP−7値が0.1秒である。
【0204】
実施例31
テトラアリルペンタエリトリトール(6.03g、20.3ミリモル)(アール・エム・ヌジェール(Nougier, R. M.)およびジェー・ムチッチ(Mchich J.),「相間移動触媒反応による2つの非常に親水性のポリオールであるペンタエリトリトールとトリメチロールプロパンのアルキル化(Alkylation of Pentaerythritol and Trimethylolpropane, Two Very Hydrophilic Polyols, by Phase-Transfer Catalysis)」,有機化学(Org. Chem.),1985年,第50巻,p.3296−3298の方法によって調製した。)および5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(19.91g、100.6ミリモル)を、窒素雰囲気で250mL丸底フラスコに加える。反応混合物を48時間加熱し、その時点で、NMR分析は、出発原料上のアリル基の完全転化を示す。その生成物を、塩化メチレン50mLおよびエーテル50mLの混合物に溶かし、50mLの飽和NaHCO3、亜ジチオン酸塩(25mL、10%水溶液)および20mLのNaHCO3で連続的に抽出する。各抽出の後、生じた乳濁液を、各抽出に飽和NaCl溶液20mLを加えることによって分ける。水層をデカンテーションで除き、有機相を無水MgSO4で乾燥する。その後、溶液をシリカパッド(3.1×7.5cm)を通して濾過し、塩化メチレン50mLで洗浄する。回転蒸発および真空乾燥により、透明な油状物の未精製生成物22gを得る。その生成物は1Hおよび31P NMRによってジアステレオマーの混合物であることが分かる。反応は、次のように図式的に表わすことができる。
【0205】
【化58】

【0206】
この生成物の5%WLTは241℃である。その生成物4.6%とポリスチレン95.4%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが23.5、FP−7値が2.0秒である。
【0207】
実施例32
撹拌軸、窒素注入口を有する還流冷却器および添加漏斗を装備した500mLの三つ口丸底フラスコに、5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン2−スルフィド76.96g(0.388モル)、トルエン60mLに溶かしたポリブタジエンホモポリマー7g(0.129モル)およびトルエン140mLを加える。ポリブタジエンポリマーは、20%の1,4−ブタジエン単位および80%の1,2−ブタジエン単位を含む。反応混合物を85℃に設定した油浴の中に浸し、固体をすべてトルエンに溶かす。反応混合物を75時間窒素雰囲気で加熱し撹拌し続ける。その後、反応溶液を40℃に冷却する。トリエチルアミン(37.35mL、0.268モル)を未精製の溶液に加え、その後その反応混合物を1時間40℃で窒素雰囲気で撹拌し続ける。白い沈殿が形成する。トルエンを回転蒸発によって未精製の混合物から取り除く。THF(200mL)を白い粘着性の固体に直接加え、その混合物を室温で一晩撹拌し続ける。白色固体をTHF溶液から濾過し、濾液をメタノール5Lの中に入れて沈殿させる。白いポリマーの沈殿を70℃で減圧下で一晩乾燥し、THF100mLに再度溶かし、メタノール2Lの中で再度沈殿させる。ポリマーを濾過によって採取し、65℃の減圧乾燥器の中で一晩乾燥する。白いポリマー粉末26.85gが採取される(収率82%)。
【0208】
CDCl3中の1H NMRは、最初の炭素−炭素二重結合の8.8%が未反応のままであることを示す。5.46(ビニル),5.18(ビニル),4.25(2H,ネオペンチル),3.97(2H,ネオペンチル),3.76(1H),3.50(1H),1.78(−CH2−主鎖),1.51(−CH2−主鎖),1.25(3H,−CH3),0.97(3H,−CH3)。31P NMR(CDCl3):s,90.95ppm
【0209】
理想的な反応スキームは次のとおりである。
【0210】
【化59】

【0211】
この生成物の5%WLTは252℃である。その生成物4.6%とポリスチレン95.4%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが23、FP−7値が2.3秒である。
【0212】
実施例33
トルエン(100mL)中のヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン(2.0g、3.2ミリモル)および5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(3.9g、19.8ミリモル)の撹拌溶液に、トリエチルアミン(2.0g、19.8ミリモル)を加える。その混合物を加熱して6時間還流し、その後、冷却し、濾過する。沈殿が生成し、その沈殿を塩化メチレン(100mL)に溶かし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、白色固体の2,2′,2′′,2′′′,2′′′′,2′′′′′−[ベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサイルヘキサキス(メチレンチオ)]ヘキサキス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)2,2′,2′′,2′′′,2′′′′,2′′′′′−ヘキサスルフィド(4.2g、99%)を得る。生成物の提案された構造は次のとおりである。
【0213】
【化60】

【0214】
この物質の5%WLTは262℃である。その生成物5.3%とポリスチレン94.7%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.3、FP−7値が1.4秒である。
【0215】
実施例34
シクロヘキサンジメタノール(1,4および1,3−異性体の50/50の混合物)およびフマル酸ジメチルから、不飽和ポリエステルを調製する。不飽和ポリエステルの質量平均分子量(GPCによる。ポリスチレン標準)は16,400であり、そのガラス転移温度(Tg)は16℃である。不飽和ポリエステル(10.0g)および無水ピリジン(2mL)を30mLの塩化メチレンに溶かし、その溶液に無水酢酸(3.0g)を加える。24時間窒素雰囲気で撹拌した後、ポリマー溶液を水30mLで洗浄し、生成物をメタノール(250mL)中で沈殿によって単離する。その生成物を70℃の減圧乾燥器の中で5時間乾燥する。生じた不飽和ポリエステル(5.0g)および5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン2−スルフィド(4.4g、22ミリモル)を、1,2−ジクロロエタン10mLに溶かし、その溶液を23時間還流する。その溶液に1,2−ジクロロエタン70mLを添加することによって希釈し、その溶液を1.0gの炭酸水素ナトリウムを含む水30mlで洗浄する。生成物をメタノール500mLの中で沈殿によって単離する。その生成物を50℃の減圧乾燥器の中で一晩乾燥する。その生成物の質量平均分子量は8800である。そのTgは45℃である。この生成物の5%WLTは271℃である。ポリマーの反復単位の理想的な構造は、次のように表わされる。
【0216】
【化61】

【0217】
その生成物10%とポリスチレン90%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが25.0、FP−7値が0.6秒である。
【0218】
実施例35
m−クレゾールノボラックのアリルエーテルを、m−クレゾールノボラック(質量平均分子量1600)および臭化アリルから調製する。m−クレゾールノボラック(9.80g)を70mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、その溶液に水素化ナトリウム(2.5g)を30分間かけて加える。その後、この混合物に臭化アリル(14.9g)を(30分間かけて)加える。窒素雰囲気で一晩撹拌した後、反応混合物を濾過し、70mLのトルエンで希釈し、70mLの水で洗浄する。生じたポリマー溶液を濃縮し、60℃の減圧乾燥器の中で一晩乾燥し、質量平均分子量1650のm−クレゾールノボラックのアリルエーテル13.0gを得る。m−クレゾールノボラック(8.0g)のアリルエーテルおよび5,5−ジメチル−2−メルカプト−1,3,2−ジオキサホスホリナン2−スルフィド(14.8g、75ミリモル)を、10mLのトルエンに溶かし、100℃で18時間加熱する。生じた混合物を、70mLのトルエンで希釈し、その後、4gの炭酸水素ナトリウムを含む50mLの水で洗浄する。トルエンを蒸発させることによって生成物を単離し、70℃の減圧乾燥器の中でさらに一晩乾燥する。その生成物の質量平均分子量は3100である。そのTgは450℃である。この生成物の5%WLTは277℃である。ポリマーの反復単位の理想的な構造は、次のように表わされる。
【0219】
【化62】

【0220】
その生成物9.4%とポリスチレン90.6%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.8、FP−7値が0.2秒である。
【0221】
実施例36
テトラヒドロフラン(THF)の70中のN,N′−メチレンビスアクリルアミド(7.0g、0.045モル)を、磁気攪拌機および窒素注入口を装備した250mLの三つ口丸底フラスコに加える。5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオール(18.0g、0.091モル)を加え、生じた混合物を24時間撹拌し続ける。生成物をTHFの蒸発によって単離し、その後、300mLのトルエンから再結晶する。生じた生成物は、融点65℃の結晶性白色固体である。理想的な構造は次のとおりである。
【0222】
【化63】

【0223】
この物質の5%WLTは220℃である。その生成物6.9%とポリスチレン93.1%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが24.5、FP−7値が0.8秒である。
【0224】
実施例37
トリエチルアミン(2.02g、20ミリモル)を、トルエン(70mL)中の1,3−ビス(クロロメチルフェニル)ベンゼン(3.27g、10ミリモル)および5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−チオール(3.96g、20ミリモル)の撹拌溶液に加える。その混合物を3時間加熱し還流する。その反応混合物を冷却し、炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、乾燥し、濃縮して、白色固体の2,2′−{1,3−フェニレンビス[(フェニルメチレン)チオ]}ビス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)2,2′−ジスルフィドを得る。その生成物の収率は4.8g(74%)である。その生成物の構造は次のとおりである。
【0225】
【化64】

【0226】
この物質の5%WLTは259℃である。その生成物8.1%とポリスチレン91.9%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが25.8%、FP−7値が1秒である。
【0227】
実施例38
塩化メチレン(50mL)中の2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン3,9−ジスルフィド(3g、11.5ミリモル)のスラリーに、トリエチルアミン(2.33g、23ミリモル)を加え、それに続けて硫黄(0.74g、23ミリモル)を小分けして加える。その混合物を40℃で1時間撹拌し続ける。ブロモジフェニルメタン(5.7g、23ミリモル)を加え、その混合物を4時間45℃に加熱する。反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮して、白色固体の生成物5.42g(72%)を得る。その生成物の構造は次のとおりである。
【0228】
【化65】

【0229】
この物質の5%WLTは240℃である。その生成物8.2%とポリスチレン91.8%のブレンドから作られた円板試料は、LOIが26.7%、FP−7値が1.4秒である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ポリマーおよび有効量の構造Iによって表わされるリン−硫黄添加物を含むポリマー組成物。
【化1】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は、水素、アルキル、不活性に置換されたアルキルまたはP(X)[(X)′mR]2基である。)であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、mは各々独立に、X′が酸素であるときは0または1であり、そしてX′が硫黄であるときは0、1または2であり、nは少なくとも1であり、Rは各々独立に非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基であるか、または2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成し、そしてAは有機連結基である。
【請求項2】
nが少なくとも2である請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
リン−硫黄添加物が次の構造によって表わされる、請求項2に記載のポリマー組成物。
【化2】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方が硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、nは少なくとも2であり、R2は各々独立に水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルであり、R3は共有結合または二価の連結基であり、そしてAは有機連結基である。
【請求項4】
Xが硫黄であり、そしてR3が(ジアルキル)メチレン基である、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
リン−硫黄添加物が次の構造によって表わされる、請求項3に記載のポリマー組成物。
【化3】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Aは有機連結基であり、そしてnは少なくとも2である。
【請求項6】
Aが有機ポリマーである、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
リン−硫黄添加物が5〜30質量%の硫黄を含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
Aがスチレンのポリマー、ブタジエンのポリマーまたはスチレンとブタジエンのコポリマーである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
リン−硫黄添加物が次の構造によって表わされる、請求項7に記載の組成物。
【化4】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方が硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、nは少なくとも2であり、R2は各々独立に水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルであり、R3は共有結合または二価の連結基であり、そしてAは有機連結基である。
【請求項10】
Tが硫黄であり、Xが硫黄であり、X′が各々酸素であり、R2が各々独立に水素またはアルキル基であり、そしてR3が(ジアルキル)メチレン基である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
Aがスチレンのポリマー、ブタジエンのポリマーまたはスチレンとブタジエンのコポリマーである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
Aがエポキシ樹脂の残基または不飽和ポリエステルの残基である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
リン−硫黄添加物が2,2′−[2−ブテン−1,4−ジイルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
リン−硫黄添加物が2,2′−[1,2−フェニレンビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
リン−硫黄添加物がO,O−ジエチルジチオホスフェートキシレンである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
リン−硫黄添加物が2,2′,2′′,2′′′−[1,2,4,6−フェニレンテトラ(メチルチオ)]テトラ[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′,2′′,2′′′−スルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
リン−硫黄添加物が2,2′,2′′−[2,4,6−トリメチル−1,3,5−フェニレントリス(メチルチオ)]トリス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′,2′′−ジスルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
Aが塩化ビニルベンジルのポリマーまたはコポリマーの残基である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
リン−硫黄添加物がN−ベンジル−N−(5,5−ジメチル−2−スルフィド−1,3,2−ジオキサホスフィナン−2−イル)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスフィナン−2−アミン2−スルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
リン−硫黄添加物が[1,2−フェニレンビス(メチレン)]ビス−[5,5−ジメチル[1,3,2]ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
リン−硫黄添加物が2,2′−[1,4−ブチルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
リン−硫黄添加物が6,6′,6′′−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレンチオ)]トリス(6H−ジベンゾ−[c,e][1,2]オキサホスホリン)6,6′,6′′−トリオキシドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
リン−硫黄添加物が2,2′−[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(チオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項24】
リン−硫黄添加物がポリオール化合物のアクリル酸エステルと5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオールの反応生成物である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項25】
リン−硫黄添加物がマレイン酸ジエステルと5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオールの反応生成物である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項26】
リン−硫黄添加物が次の構造によって表わされる、請求項1に記載のポリマー組成物。
【化5】

【請求項27】
リン−硫黄添加物が構造(V)によって表わされる、請求項1に記載のポリマー組成物。
【化6】

式中、Xは酸素または硫黄であり、
Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方が硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、nは少なくとも1であり、そしてAは有機連結基である。
【請求項28】
リン−硫黄添加物が2,2′,2′′−[s−トリアジン−2,4,6−トリス(チオ)]トリス[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)−2,2′,2′′−スルフィド]である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項29】
リン−硫黄添加物が2,2′,2′′,2′′′,2′′′′,2′′′′′−[ベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサイルヘキサキス(メチレンチオ)]ヘキサキス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)2,2′,2′′,2′′′,2′′′′,2′′′′′−ヘキサスルフィドである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項30】
可燃性ポリマーが、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリカーボネートとポリエステルのブレンド、ポリカーボネートとアクリロニトリル・スチレン・ブタジエンポリマーのブレンド、ポリカーボネートとスチレン・アクリロニトリルポリマーのブレンド、ポリカーボネートとポリスチレンのブレンド、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニル芳香族ポリマー、ゴム変性ビニル芳香族ポリマー、スチレン・アクリロニトリルポリマー、スチレン・ブタジエンコポリマーまたはそれらの2種以上の混合物である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項31】
可燃性ポリマーが二次加工品である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項32】
可燃性ポリマーが発泡体である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項33】
可燃性ポリマーが、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリカーボネートとポリエステルのブレンド、ポリカーボネートとアクリロニトリル・スチレン・ブタジエンポリマーのブレンド、ポリカーボネートとスチレン・アクリロニトリルポリマーのブレンド、ポリカーボネートとポリスチレンのブレンド、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはビニル芳香族ポリマー、ゴム変性ビニル芳香族ポリマー、スチレン・アクリロニトリルポリマー、スチレン・ブタジエンまたはそれらの2種以上の混合物である、請求項32に記載のポリマー組成物。
【請求項34】
可燃性ポリマーがポリスチレンである、請求項32に記載のポリマー組成物。
【請求項35】
可燃性ポリマーがポリスチレンである、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項36】
リン−硫黄添加物が2,2′−[2−ブテン−1,4−ジイルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項37】
リン−硫黄添加物が2,2′−[1,2−フェニレンビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項38】
リン−硫黄添加物がO,O−ジエチルジチオホスフェートキシレンである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項39】
リン−硫黄添加物が2,2′,2′′,2′′′−[1,2,4,6−フェニレンテトラ(メチルチオ)]テトラ[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′,2′′,2′′′−スルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項40】
リン−硫黄添加物が2,2′,2′′−[2,4,6−トリメチル−1,3,5−フェニレントリス(メチルチオ)]トリス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′,2′′−ジスルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項41】
Aが塩化ビニルベンジルのポリマーまたはコポリマーの残基である、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項42】
リン−硫黄添加物がN−ベンジル−N−(5,5−ジメチル−2−スルフィド−1,3,2−ジオキサホスフィナン−2−イル)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスフィナン−2−アミン2−スルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項43】
リン−硫黄添加物が[1,2−フェニレンビス(メチレン)]ビス−[5,5−ジメチル[1,3,2]ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項44】
リン−硫黄添加物が2,2′−[1,4−ブチルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項45】
リン−硫黄添加物が6,6′,6′′−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス(メチレンチオ)]トリス(6H−ジベンゾ−[c,e][1,2]オキサホスホリン)6,6′,6′′−トリオキシドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項46】
リン−硫黄添加物が2,2′−[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(チオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項47】
リン−硫黄添加物が、ポリオール化合物のアクリル酸エステルと5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオールの反応生成物である、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項48】
リン−硫黄添加物が、マレイン酸エステルジエステルと5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオールの反応生成物である、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項49】
リン−硫黄添加物が次の構造によって表わされる、請求項34に記載のポリマー組成物。
【化7】

【請求項50】
リン−硫黄添加物が構造(V)によって表わされる、請求項34に記載のポリマー組成物。
【化8】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方が硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、nは少なくとも1であり、そしてAは有機連結基である。
【請求項51】
リン−硫黄添加物が2,2′,2′′−[s−トリアジン−2,4,6−トリス(チオ)]トリス[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)−2,2′,2′′−スルフィド]である、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項52】
リン−硫黄添加物が2,2′,2′′,2′′′,2′′′′,2′′′′′−[ベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサイルヘキサキス(メチレンチオ)]ヘキサキス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)2,2′,2′′,2′′′,2′′′′,2′′′′′−ヘキサスルフィドである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項53】
次の構造によって表わされるリン−硫黄化合物。
【化9】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は酸素または硫黄であり、nは少なくとも1であり、Rは各々独立に非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基であるかまたは2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成し、そしてAは有機連結基である。
【請求項54】
X′が酸素である、請求項53に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項55】
Tが硫黄であり、nが少なくとも2であり、そして2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成している、請求項53に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項56】
A基がアリルまたはベンジルの炭素原子を介してT原子に結合している、請求項53に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項57】
A基が有機ポリマーである、請求項55に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項58】
次の構造によって表わされるリン−硫黄化合物。
【化10】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、nは少なくとも1であり、R2は各々独立に水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルであり、R3は共有結合または二価の連結基であり、そしてAは有機連結基である。
【請求項59】
X′が各々酸素であり、Tが硫黄であり、Xが硫黄であり、R2が各々水素であり、そしてR3が、隣接した(R22C基に直接結合した炭素原子上に水素を有しないアルキレンジラジカルである、請求項58に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項60】
A基がアリルまたはベンジルの炭素原子を介してT原子に結合している、請求項59に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項61】
A基が有機ポリマーである、請求項59に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項62】
次の構造によって表わされるリン−硫黄化合物。
【化11】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は酸素または硫黄であり、nは少なくとも1であり、そしてAは有機連結基である。
【請求項63】
A基がアリルまたはベンジルの炭素原子を介して−T−結合に結合している、請求項62に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項64】
A基が有機ポリマーである、請求項63に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項65】
次の構造のいずれかによって表わされるリン−硫黄化合物。
【化12】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、nは少なくとも1であり、Rは各々独立に非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基であるか、または2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成し、そしてAは、
(1)有機ポリマー、
(2)ベンジルの炭素を介して−T−結合に結合している有機基、
(3)アクリルまたはメタクリル基を介して−T−結合に結合している有機基、
(4)非芳香族の炭素−炭素不飽和を有するジオールまたは二塩基酸のエステルの炭素−炭素二重結合にリン−硫黄基を付加した後の、エステルの残基、
(5)少なくとも1個の炭素−炭素不飽和部位を有する脂肪酸またはそのエステル(脂肪酸トリグリセリドを含む。)の炭素−炭素不飽和部位にリン−硫黄基を付加した後の、脂肪酸またはそのエステルの残基、または
(6)芳香族の炭素原子を介して−T−結合に結合している芳香族基
である。
【請求項66】
A基がアリルまたはベンジルの炭素原子を介して−T−結合に結合している、請求項65に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項67】
A基が有機ポリマーである、請求項65に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項68】
2,2′−[2−ブテン−1,4−ジイルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィド。
【請求項69】
2,2′−[1,2−フェニレンビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィド。
【請求項70】
O,O−ジエチルジチオホスフェートキシレン。
【請求項71】
2,2′,2′′,2′′′−[1,2,4,6−フェニレンテトラ(メチルチオ)]テトラ[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′,2′′,2′′′−スルフィド。
【請求項72】
2,2′,2′′−[2,4,6−トリメチル−1,3,5−フェニレントリス(メチルチオ)]トリス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′,2′′−ジスルフィド。
【請求項73】
Aが塩化ビニルベンジルのポリマーまたはコポリマーである、請求項53に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項74】
Aが塩化ビニルベンジルのポリマーまたはコポリマーである、請求項57に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項75】
Aが塩化ビニルベンジルのポリマーまたはコポリマーである、請求項61に記載のリン−硫黄化合物。
【請求項76】
N−ベンジル−N−(5,5−ジメチル−2−スルフィド−1,3,2−ジオキサホスフィナン−2−イル)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスフィナン−2−アミン2−スルフィド。
【請求項77】
[1,2−フェニレンビス(メチレン)]ビス−[5,5−ジメチル[1,3,2]ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィド。
【請求項78】
2,2′−[1,4−ブチルビス(メチルチオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィド。
【請求項79】
6,6′,6′′−[(2,4,6−トリメチルベンゼン−1,3,5−トリイル)トリス](メチレンチオ)]トリス(6H−ジベンゾ−[c,e][1,2]オキサホスホリン)6,6′,6′′−トリオキシド。
【請求項80】
2,2′−[ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(チオ)]ビス[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン]−2,2′−ジスルフィド。
【請求項81】
ポリオール化合物のアクリル酸エステルと5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオールの反応で形成されたリン−硫黄化合物。
【請求項82】
マレイン酸ジエステルと5,5−ジメチル−2−チオキソ−[1,3,2]ジオキサホスホリナン−2−チオールの反応で形成されたリン−硫黄化合物。
【請求項83】
次の構造によって表わされるリン−硫黄化合物。
【化13】

【請求項84】
2,2′,2′′−[s−トリアジン−2,4,6−トリス(チオ)]トリス[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)−2,2′,2′′−スルフィド]。
【請求項85】
2,2′,2′′,2′′′,2′′′′,2′′′′′−[ベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサイルヘキサキス(メチレンチオ)]ヘキサキス(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン)2,2′,2′′,2′′′,2′′′′,2′′′′′−ヘキサスルフィド。
【請求項86】
可燃性ポリマーを溶融すること、およびその溶融ポリマーに構造Iによって表わされるリン−硫黄添加物をブレンドすることを含む方法。
【化14】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、mは各々独立に、X′が酸素であるときは0または1であり、そしてX′が硫黄であるときは0、1または2であり、nは少なくとも1であり、Rは各々独立に非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基であるか、または2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成し、そしてAは有機連結基である。
【請求項87】
可燃性ポリマー、少なくとも1種の発泡剤および構造Iによって表わされるリン−硫黄化合物の加圧された溶融混合物を形成すること、およびその後、溶融混合物が発泡しそして冷却してポリマー発泡体を形成するように、溶融混合物を減圧の領域にダイを通して押し出すことを含む方法。
【化15】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここで、R4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、mは各々独立に、X′が酸素であるときは0または1であり、そしてX′が硫黄であるときは0、1または2であり、nは少なくとも1であり、Rは各々独立に非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基であるか、または2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成し、そしてAは有機連結基である。
【請求項88】
可燃性ポリマー、発泡剤および構造Iによって表わされるリン−硫黄化合物を含む粒子を形成すること、およびその後、粒子が発泡しそして互いに付着して発泡ポリマー物品を形成するような条件下で粒子を加熱することを含む方法。
【化16】

式中、Xは酸素または硫黄であり、Tは、共有結合、酸素、硫黄または−NR4−(ここでR4は水素、アルキルまたは不活性に置換されたアルキルである。)であり、ただしXとTの少なくとも一方は硫黄であり、X′は各々独立に酸素または硫黄であり、mは各々独立に、X′が酸素であるときは0または1であり、そしてX′が硫黄であるときは0、1または2であり、nは少なくとも1であり、Rは各々独立に非置換または不活性に置換されたヒドロカルビル基であるか、または2つのR基が一緒に非置換または不活性に置換された二価の有機基を形成し、そしてAは有機連結基である。

【公表番号】特表2010−513662(P2010−513662A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542785(P2009−542785)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/024894
【国際公開番号】WO2008/088487
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】