説明

リンの回収方法及び回収装置

【課題】好気条件と嫌気条件の切り替えが容易で、下水等、リンを含有する液体からリンを除去するとともに、このリンを高濃度にして回収することができるリンの回収方法及び回収装置を提供することを目的とする。
【解決手段】リンの回収方法は、好気条件下でリンを摂取するとともに嫌気条件下でリンを放出する微生物を保持する微生物保持部材が内部に配置された処理容器内に、リンを含有する被処理液を導入し、被処理液を微生物保持部材に浸透させながら流下させて微生物にリンを摂取させる好気処理工程と、処理容器に有機物質含有液及び回収液を充填し微生物保持部材を埋没させる嫌気処理準備工程と、微生物が摂取したリンを回収液に放出させる嫌気処理工程と、リンが放出された回収液を前記処理容器から回収液貯留槽に回収する回収工程と、を具備し、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に繰り返し連続して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を用いて下水等の処理水に含まれるリンを回収するリン回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水や工場排水、し尿系汚水等にはリン化合物が含まれており、このリン化合物は川や湖の富栄養化の原因の一つとして知られている。下水等が川や海或いは湖沼に流入すると、リン化合物によって藻が大量発生する等、水質汚濁を起こし自然環境の悪化を招く。このため、下水等からリン化合物を除去する必要があるとともに、限りある資源として除去したリンを有効活用すべきであることから、除去したリンを高濃度にして回収することが求められる。
【0003】
特許文献1に、下水等からリンを除去し、リンを回収する方法が開示されている。このリンの回収方法は、ポリリン酸蓄積細菌群を用いた生物学的なリンの回収方法である。ポリリン酸蓄積細菌群は、好気条件及び嫌気条件が交互に繰り返されることで繁殖していく微生物として知られており、好気条件下でリンを摂取し、嫌気条件下では有機物質を摂取しつつリンを放出する特性を備えている。
【0004】
特許文献1のリンの回収方法では、まず、好気条件下で、下水等の被処理水を気相に配置されたポリリン酸蓄積細菌群に接触させて、被処理水に含まれるリンを摂取させている。そして、嫌気条件下で有機性排水にポリリン酸蓄積細菌群が捕捉したリンを放出して回収している。ここで、嫌気条件とするために窒素等の不活性ガスを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−178824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の方法は、酸素含有ガスを供給して好気条件を形成し、また、窒素等の不活性ガスを用いて嫌気条件を形成していることから、酸素含有ガス、不活性ガス及びこれらのガス供給装置等が必要になり、処理コストが高くなってしまう。
【0007】
また、酸素含有ガス、不活性ガスによる好気条件、嫌気条件相互の切り替えが煩雑であるとともに、時間を要するという問題もある。
【0008】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、好気条件と嫌気条件の切り替えが容易で、下水等、リンを含有する液体からリンを除去するとともに、このリンを高濃度にして回収することができるリンの回収方法及び回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るリンの回収方法は、
好気条件下でリンを摂取するとともに嫌気条件下でリンを放出する微生物を保持する微生物保持部材が内部に配置された処理容器内に、リンを含有する被処理液を導入し、前記被処理液を前記微生物保持部材に浸透させながら流下させて前記微生物に前記リンを摂取させる好気処理工程と、
前記処理容器に有機物質含有液及び回収液を充填し前記微生物保持部材を埋没させる嫌気処理準備工程と、
前記微生物が摂取した前記リンを前記回収液に放出させる嫌気処理工程と、
前記リンが放出された前記回収液を前記処理容器から回収液貯留槽に回収する回収工程と、を含み、
前記好気処理工程、前記嫌気処理準備工程、前記嫌気処理工程、前記回収工程の順に繰り返し連続して行うことを特徴とする。
【0010】
また、前記回収液貯留槽に回収した前記回収液の一部を前記処理容器内に再度充填することが望ましい。
【0011】
また、前記処理容器に充填した前記有機物質含有液と同量の前記回収液を前記回収液貯留槽から排出することが望ましい。
【0012】
また、通気孔が設けられた前記処理容器を用い、
前記好気処理工程では、被処理液供給ポンプを用いて前記被処理液を前記処理容器内に導入しつつ、前記被処理液から前記リンが除去された処理液を処理液排出ポンプを用いて前記処理容器から排出するとともに、
前記処理液排出ポンプの流量を前記被処理液供給ポンプの流量よりも多くして、前記通気孔から空気を導入することが望ましい。
【0013】
多孔質部材に前記微生物を保持させた前記微生物保持部材を用いることが望ましい。
【0014】
本発明に係るリンの回収装置は、
好気条件下でリンを摂取するとともに嫌気条件下でリンを放出する微生物が保持された微生物保持部材と、
前記微生物保持部材が内部に配置された処理容器と、
リンを含有する被処理液を前記処理容器に供給する被処理液供給流路と、
前記被処理液から前記リンが除去された処理液を前記処理容器から排出する処理液排出流路と、
前記リンが放出された回収液を貯留する回収液貯留槽と、
前記回収液貯留槽から前記処理容器に前記回収液を供給する回収液供給流路と、
前記処理容器から前記回収液貯留槽に前記回収液を送る回収液回収流路と、
有機物質含有液が貯留される有機物質含有液貯留槽と、
前記有機物質含有液貯留槽から前記処理容器に前記有機物質含有液を送る有機物質含有液供給流路と、
前記回収液貯留槽から前記回収液を排出する回収液排出流路と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記処理容器に通気孔が設けられ、
前記被処理液を前記処理容器に供給する被処理液供給ポンプと、
前記処理液を前記処理容器から排出する処理液排出ポンプと、を備え、
前記処理液排出ポンプの流量が前記被処理液供給ポンプの流量よりも大きいことが望ましい。
【0016】
また、前記微生物保持部材は、多孔質部材に前記微生物が保持されていてもよい。
【0017】
また、複数の前記微生物保持部材がそれぞれ離間して糸に連ねられて前記処理容器内に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るリンの回収方法では、微生物が保持された微生物保持部材を処理容器内に配置し、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に連続して繰り返し行う。そして、嫌気処理準備工程では、有機物質含有液及び回収液を充填し微生物保持部材を埋没させることで、容易に処理容器内を好気条件から嫌気条件に切り換えることができるので、不活性ガス等が不要である。
【0019】
また、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に連続して繰り返し行い、嫌気処理工程でリンが放出された回収液の一部を、後の嫌気処理工程にて用いるので、回収液のリン濃度を高めることができることはもちろんのこと、その回収液と有機物質含有液の量比を調整することにより、回収液中のリン濃度を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るリン回収方法の工程図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るリン回収装置の概略構成図である。
【図3】好気処理工程の様子を示すリン回収装置の概略構成図である。
【図4】嫌気処理準備工程及び嫌気処理工程の様子を示すリン回収装置の概略構成図である。
【図5】回収工程の様子を示すリン回収装置の概略構成図である。
【図6】実施例に用いた微生物保持部材を示す概略図である。
【図7】実施例において運転日数と回収液中のリン濃度との関係を示すグラフである。
【図8】実施例において嫌気処理工程の経過時間とリン濃度及びCOD濃度との関係を示すグラフである。
【図9】実施例において好気処理工程の経過時間とリン濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(リンの回収方法)
本実施の形態に係るリン回収方法は、図1の工程図に示すように、好気処理工程と、嫌気処理準備工程と、嫌気処理工程と、回収工程とから構成される。そして、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、及び回収工程を繰り返し連続して行い、被処理液からリンを除去するとともに、リンを高濃度にして回収する方法である。以下、詳細に説明する。
【0022】
(好気処理工程)
好気処理工程は、好気条件下で、被処理液に含まれるリンを微生物に摂取させてリンを除去する工程である。
【0023】
まず、好気条件下でリンを摂取するとともに嫌気条件下でリンを放出する微生物を保持させた微生物保持部材を準備する。そして、この微生物保持部材を処理容器の内部に配置する。
【0024】
処理容器として、被処理液の流入、及び被処理液からリンを除去した処理液の排出を行い得る容器を用いる。例えば、上方及び下方に2つの開口部を備え、上方の開口部から被処理液等を流入でき、下方の開口部から処理液を排出できる処理容器を用いるとよい。
【0025】
微生物保持部材に保持させる微生物として、好気条件下でリンを摂取し、嫌気条件下では有機物質を摂取しつつリンを放出する特性を備える微生物を用いる。この微生物は、好気条件及び嫌気条件が交互に繰り返されることで繁殖していく特性を有する。
【0026】
このような特性を有する微生物として、ロドサイクラス(Rhodocyclus)属ポリリン酸蓄積細菌群等の、ポリリン酸蓄積細菌群を用いることができる。なお、このような微生物は、一つの種を用いてもよく、複数の種を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記のように、微生物保持部材が配置された処理容器内に、被処理液を流入する。処理容器の上方から被処理液を流入することで、被処理液が微生物保持部材に浸透しつつ流下していく。この過程において、被処理液が微生物保持部材に保持されている微生物に接触するので、被処理液に含まれるリンが微生物に摂取される。これにより、被処理液からリンが除去される。
【0028】
被処理液として、下水、し尿系汚水、工場排水、或いは湖沼水等、リン化合物を含有する液体を用いることができ、いずれの液体中のリン化合物も除去することができる。
【0029】
リンが除去されて得られた処理液は、処理容器から排出し、回収容器等に回収すればよい。回収された処理液は、リン以外の環境汚染物質等が除去されていれば、河川等に放流することができる。或いは、中水として利用することも可能である。
【0030】
なお、処理容器から排出した処理液を再度処理容器に流入して好気処理工程を行ってもよい。例えば、排出した処理液にリンが残存している場合等、処理容器から排出した処理液を再度処理容器内に流入して好気処理工程を行い、処理液に残存しているリンを微生物に摂取させて、リンを完全に除去すればよい。
【0031】
微生物は、好気条件下でリンを摂取するので、被処理液で微生物保持部材が埋没されて微生物への酸素の供給が阻害されないよう、被処理液を一定の速度で少量ずつ処理容器に流入する。これにより、好気条件が維持され、微生物が被処理液中のリンを摂取する。
【0032】
更に、通気孔が設けられた処理容器を用いるとともに、被処理液供給ポンプを用いて被処理液を処理容器内に導入し、処理液排出ポンプを用いて処理液を処理容器外へ排出するとよい。そして、処理液排出ポンプの流量を被処理液供給ポンプの流量よりも多くして行うことにより、処理容器外部の空気を通気孔から処理容器内へ導入することができる。これにより、微生物保持部材に保持された微生物に空気中の酸素が十分に供給されることとなり、好適な好気条件を形成することができる。別途酸素供給装置等が不要であるため、処理コスト面にも優れる。
【0033】
通気孔を設ける場合、導入した空気を処理容器内に満遍なく行き渡らせ得る箇所に通気孔を配置するとよい。例えば、被処理液を処理容器の上方から流入させ、処理液を処理容器の下方から排出する場合、処理容器の下方に処理液排出ポンプを配置することになる。この場合、通気孔を処理容器の上部に設けることで、処理液排出ポンプの吸引により処理容器内に導入された空気は、処理容器内の端から端まで流通し、満遍なく行き渡ることとなる。
【0034】
なお、別途酸素供給装置等を用いて、処理容器内に酸素を満遍なく供給してもよい。
【0035】
処理容器内における被処理液の滞留時間(被処理液が処理容器内に供給され、被処理液からリンが除去された処理液が処理容器内から排出されるまでの時間)は、微生物が被処理液中のリンを十分に摂取できる時間に調節して行えばよい。
【0036】
また、微生物保持部材として、スポンジのような多孔質発泡部材、燒結金属のような粒子、或いは、繊維状の結合体を用いることができる。具体的には、微生物保持部材として、ポリウレタン製等のスポンジ状の多孔質部材や、セラミックス等の透液性の多孔質部材を用いることが好ましいが、不織布のような透液性のシートを用いてもよい。
【0037】
多孔質部材は空隙率が高く、比表面積が大きいので、多量の微生物を担持させ、繁殖させることができる。微生物が増殖することにより、処理能力を高めることができる。更に、多孔質部材は通気性及び通水性に優れる。これにより、空気中の酸素が多孔質部材内部に保持された微生物にも供給されるとともに、被処理液が多孔質部材内部にも浸透し流通する。このため、多孔質部材内部に保持された微生物にも空気中の酸素及び被処理液が接触するので、効果的に好気処理が行われ、被処理液からリンを除去できる。
【0038】
微生物保持部材に微生物を保持させるには、微生物が存在する液体に微生物保持部材を浸す等、種々の手段によって行うことができる。
【0039】
(嫌気処理準備工程)
まず、上述の好気処理工程を終えた後、回収液及び有機物質含有液を処理容器内に充填する。そして、この回収液及び有機物質含有液で、処理容器内に配置されている微生物保持部材を埋没させる。回収液とは、リンを放出させて回収することに用いる液体である。
【0040】
回収液及び有機物質含有液で微生物保持部材を埋没させることによって、微生物と空気との接触を断つことができる。したがって、微生物保持部材に保持されている微生物には、空気中の酸素が供給されることがない。このようにして、別途不活性ガス等を用いることなく、容易に嫌気条件を形成することができるとともに、処理コストの低減をも実現している。また、回収液と有機物質含有液との量比は、有機物質含有液の濃度、及び得ようとする濃縮後のリン濃度に応じて、適宜調節すればよいが、具体的には有機物質含有液量:回収液量=1:2〜1:200である。
【0041】
有機物質含有液として、例えば、水処理施設で排出される汚泥や、生ゴミ等が可溶化した液体等、微生物が摂取し得る有機物質を含有する液体を用いればよい。
【0042】
(嫌気処理工程)
嫌気処理工程は、上述の好気処理工程で微生物が摂取したリンを回収液に放出させる工程である。上述のように形成した嫌気条件下で、微生物が有機物質を摂取しつつ、好気処理工程で摂取したリンを回収液に放出してゆく。
【0043】
嫌気処理工程の時間については、微生物が好気処理工程で摂取したリンを、十分に回収液に放出する時間に調節し、処理容器内に回収液を留めた状態にしておけばよい。
【0044】
(回収工程)
回収液に微生物からリンを放出させた後、処理容器内の回収液を回収する。この回収液は、回収液貯留槽に回収しておく。
【0045】
回収液を処理容器内から排出することにより、処理容器内には空気が導入され、微生物保持部材が空気と接触することになるので、簡単に好気条件を形成することができる。
【0046】
なお、処理容器には回収液及び有機物質含有液を充填しており、回収工程ではこれらの混合した液体をすべて回収液貯留槽に回収し、後述のように、混合した液体を嫌気処理準備工程にて回収液として処理容器に充填を行うので、以後回収液貯留槽に回収した液体を総称して回収液として説明する。
【0047】
そして、上述した好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に連続して繰り返し行う。
【0048】
この際、嫌気処理準備工程では、前述の回収工程で回収液貯留槽に回収した回収液の一部を再度処理容器に充填する。この回収液には上述したように既にリンが放出されておりリンを含有している。このリンを含有する回収液を用いて再度嫌気処理工程を行うことにより、更にリンが新たに放出されるので、回収液中のリン濃度が高まる。
【0049】
このように、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に連続して繰り返し行い、回収液貯留槽に回収した回収液の一部を再度処理容器に充填することで、回収液のリン濃度を高くして回収することができる。
【0050】
また、上記のように各工程を繰り返し連続して行うことで、微生物保持部材に保持される微生物が繁殖してゆく。このため、徐々にリン負荷量を上げることができ、処理能力が向上する。
【0051】
嫌気処理準備工程においては、回収液と有機物質含有液とが混合されて処理容器内に充填されるため、回収工程において回収液貯留槽に回収される回収液は、回収工程を行うたびに処理容器に充填した有機物質含有液の分量だけ増量することになる。回収液貯留槽の容積は有限であるので、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程のいずれかの工程において、処理容器に充填した有機物質含有液と同量の回収液を回収液貯留槽から排出するとよい。これにより、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程を永続的に繰り返し行うことができる。
【0052】
すなわち、全体としては、被処理液中のリンは除去され、その除去されたリンは回収液中に高濃度に濃縮される。嫌気処理準備工程において供給した有機物質含有液と同量の回収液を回収液貯留槽から排出することにより、回収液を高濃度のリン含有液として取り出すことになる。
【0053】
上記のように、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に繰り返して行うが、これらの工程に要する時間については、処理容器や微生物保持部材の大きさ等に応じて、それぞれの処理が十分に行い得る時間に適宜設定して行えばよい。一般的には、好気処理工程2分〜24時間、嫌気処理工程10分〜20時間、時間比では、好気処理工程時間:嫌気処理工程時間=1:1〜1:20である。
【0054】
また、有機物質含有液は有機物質濃度(例えば、COD(Chemical Oxygen Demand)濃度)の高い液体を用いることが好ましい。有機物質含有液の有機物質濃度が高ければ、嫌気処理準備工程において、処理容器内へ充填する回収液の割合を多くする(有機物質含有液の割合を少なくする)ことができる。これにより、回収工程で回収液貯留槽へ回収する回収液の増量分が少なくなる。このため、回収液貯留槽の回収液を処理容器内に充填できる回数が増えるので、回収液中のリン濃度をより高めることができる。
【0055】
一般的な水処理では、リン等を除去する高度処理が行われているが、本実施の形態に係るリンの回収方法は、上述のように被処理液中のリンの除去ができるので、上述の水処理における高度処理として用いることができる。更に、上述のように、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に繰り返し永続的に行うことができるので、効率的な高度処理ができる。
【0056】
(リンの回収装置)
続いて、図面を参照して、前述のリンの回収方法を実施するために用いるリンの回収装置について説明する。図2に一例として、リンの回収装置の概略構成を示す。
【0057】
リン回収装置1は、主に、処理容器11と、微生物保持部材13と、被処理液供給流路24と、処理液排出流路27と、回収液貯留槽42と、回収液供給流路44と、回収液回収流路38と、有機物質含有液貯留槽32と、有機物質含有液供給流路34と、回収液排出流路45とから構成される。
【0058】
処理容器11は、内部において好気処理工程及び嫌気処理工程が行われる容器である。処理容器11は、内部中空の筒体であり、内部には微生物保持部材13が配置されている。微生物保持部材13には上述した微生物が保持されている。複数の微生物保持部材13がそれぞれ離間して防水性の糸14に連ねられており、糸14の両端が処理容器11の上部及び下部にそれぞれ固定されることで、微生物保持部材13が処理容器11内に配置されている。
【0059】
また、処理容器11の上部には、好気処理において要求される空気(酸素)が供給されるよう、通気孔12が設けられている。後述のように、処理液排出流路27に設けられた処理液排出ポンプ26の吸引により、通気孔12から導入した空気を処理容器11内に行き渡らせるため、処理液排出流路27と離間した位置(処理液が処理容器11から排出される箇所と対峙する位置)に通気孔12を設けている。これにより、通気孔12から導入された空気を処理容器11内を満遍なく流通させることができる。
【0060】
処理容器11の上部には、処理容器11にリンを含有する被処理液21を供給する被処理液供給流路24が接続している。被処理液供給流路24の他の端は、被処理液貯留槽22に挿入されている。
【0061】
また、処理容器11の下部は、三方バルブ35と接続している。三方バルブ35には、処理容器11のほか、処理液排出流路27と連接管36が接続している。
【0062】
被処理液供給流路24には被処理液21を処理容器11に送る被処理液供給ポンプ23が配置されており、処理液排出流路27には、被処理液からリンが除去された処理液を排出する処理液排出ポンプ26が配置されている。
【0063】
連接管36の他の端は三方バルブ37が接続されており、三方バルブ37には連接管36のほか、回収液供給流路44及び回収液回収流路38が接続されている。
【0064】
回収液供給流路44の他の端は回収液貯留槽42に挿入されている。また、回収液供給流路44には、回収液41を処理容器11に送る回収液供給ポンプ43が配置されている。また、回収液供給流路44には、有機物質含有液貯留槽32に貯留されている有機物質含有液31を処理容器11へと送る有機物質含有液供給流路34が接続されている。なお、有機物質含有液供給流路34は、回収液供給流路44に接続している必要はなく、直接処理容器11に接続するよう構成してもよい。
【0065】
回収液貯留槽42は、嫌気処理によってリンが放出された回収液41を一時的に貯留しておく容器である。また、回収液貯留槽42には回収液供給流路44のほか、回収液41を排出する回収液排出流路45が挿入されている。
【0066】
有機物質含有液供給流路34には、有機物質含有液31を供給するための有機物質含有液供給ポンプ33が配置されている。
【0067】
被処理液供給ポンプ23、及び処理液排出ポンプ26には、それぞれのポンプの駆動を制御するタイマー25が接続されている。
【0068】
また、回収液供給ポンプ43、回収液排出ポンプ46、及び有機物質含有液供給ポンプ33には、それぞれのポンプの駆動を制御するタイマー47が接続されている。
【0069】
また、回収液回収ポンプ39の駆動を制御するタイマー40が設けられている。
【0070】
続いて、リン回収装置1を用いたリンの回収手順について図3〜図5を参照して説明する。
【0071】
まず、図3に示すように、好気処理工程を行う。好気処理工程では、被処理液供給ポンプ23及び処理液排出ポンプ26を駆動することで、被処理液供給流路24を介して、被処理液21が処理容器11内に送り込まれる。処理容器11内に流入した被処理液21は、糸14を伝わり、配置されている全ての微生物保持部材13を順に通過して、下方へと流下していく。被処理液21が、処理容器11内を満たし、好気条件が損なわれることがないよう、被処理液供給ポンプ23の流量は、被処理液21を少量ずつ連続的して送り込むように調節されている。
【0072】
被処理液21が微生物保持部材13を通過する際に、被処理液21は微生物保持部材13に保持されている微生物に接触する。このため、被処理液21に含まれるリンが微生物に摂取される。
【0073】
被処理液21から微生物によってリンが除去された処理液は、処理液排出ポンプ26によって、処理容器11から処理液排出流路27を介して排出される。この排出された処理液は、他の有害物質等の処理が行われていれば、自然界に放流することが可能である。
【0074】
なお、処理液を再度処理容器11に流入させて好気処理工程を行ってもよい。例えば、被処理液21を一度処理容器11に通しただけでは、被処理液21中のリンが全て除去されていない場合等、処理容器11から排出した処理液を再度処理容器11内に流入して好気処理工程を行うとよい。これにより、処理液に残存していたリンを完全に除去することができる。
【0075】
処理液排出ポンプ26の流量は、被処理液供給ポンプ23の流量よりも大きくして行う。処理液排出ポンプ26が処理容器11内の処理液を排出する際に、通気孔12から空気を処理容器11内に吸引するので、処理容器11内に導入された空気中の酸素が微生物に供給される。このように、容易に好気条件を形成することができ、別途酸素ボンベや供給ポンプ等専用の装置を必要としないため、装置の製造コストが安くなるとともに、処理に要するランニングコストも安くすることができる。
【0076】
続いて、図4に示すように、嫌気処理準備工程及び嫌気処理工程を行う。上述した好気処理工程を終え、処理容器11内の処理液を全て処理液排出流路27から排出した後、回収液供給ポンプ43及び有機物質含有液供給ポンプ33を駆動して、回収液貯留槽42内の回収液41及び有機物質含有液貯留槽32内の有機物質含有液31をそれぞれ処理容器11内に流入する。
【0077】
ここで、回収液41と有機物質含有液31との量比は、有機物質含有液31の濃度、及び、得ようとする回収液41中のリン濃度に応じて、適宜調節すればよいが、具体的には有機物質含有液31量:回収液41量=1:2〜1:200である。
【0078】
そして、微生物保持部材13が全て回収液41及び有機物質含有液31で埋没するまで、有機物質含有液31を流入する。これにより、微生物保持部材13に保持されている微生物は、回収液41及び有機物質含有液31によって、空気との接触が断たれるので、微生物に空気中の酸素が供給されることはない。このようにして容易に嫌気条件が形成される。この嫌気条件下、微生物は有機物質含有液31中の有機物質を摂取しつつ、好気条件下で摂取したリンを回収液41に放出する。
【0079】
嫌気処理工程終了後、図5に示す回収工程を行う。リンが放出された回収液41を処理容器11内から回収する。回収液回収ポンプ39の駆動により、処理容器11内の回収液41が回収液回収流路38を経由し、回収液貯留槽42に回収される。
【0080】
また、その際に回収液排出ポンプ46を駆動し、処理容器11内に充填した有機物質含有液31と同量の回収液41を回収液貯留槽42から排出する。これにより、回収液貯留槽42内の回収液41の液量を一定に保つことができる。
【0081】
上記の、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に連続して繰り返し行い、回収液貯留槽42に回収した回収液41の一部を再度処理容器11に充填して行うことで、回収液41のリン濃度を高めることができる。
【0082】
なお、回収液貯留槽42から排出した回収液41は高濃度のリンを含有しているので、公知の方法にてリンの抽出処理等を行い、資源として有効利用することができる。
【0083】
また、リン回収装置1は、上述のように被処理液中のリンを除去できるので、一般的な水処理施設における高度処理装置として活用することもできる。
【実施例】
【0084】
図2に示すリン回収装置1を用い、被処理液21中のリンの除去及び回収を行った。
【0085】
処理容器11は、直径4.7cm、高さ50cm、両端のテーパー部分を含めて容積が1000cmの円柱状の容器を用いた。
【0086】
微生物保持部材13は、図6に示すように、一辺が2cmの略正立方体のポリウレタン製のスポンジに微生物を保持させて用いた。ポリウレタン製のスポンジを防水性の糸14で15個連ねて処理容器11内に配置した後、都市下水を処理して得られた返送汚泥約2Lを処理容器11内に流下し、スポンジに微生物を植種して微生物保持部材13を準備した。なお、全スポンジの溶液は、120cmである。
【0087】
被処理液21には、窒素源をアンモニアとし、リン濃度が5mg/Lの人工排水を用いた。
【0088】
有機物質含有液31には、酢酸:プロピオン酸=1:1を炭素源とした人工合成排水を用い、運転開始から徐々に負荷を加え、最終的に3000mgCOD/Lになるように調製した。
【0089】
なお、本実施例においては、回収液貯留槽42内に上記の被処理液21と同じリン濃度(5mg/L)の人工排水を充填した状態にして始めた。
【0090】
また、それぞれの人工排水には、ミネラル、微量元素を添加して用いた。
【0091】
好気処理工程では、被処理液21を処理容器11の上部から流下させた。そして、被処理液21が微生物保持部材13の最上部から最下部に達するまでの水理学的滞留時間を10分に設定した。ここで、水理学的滞留時間とは、微生物保持部材13の総容積を被処理液21の単位時間当たりの水量で割った値である。
【0092】
また、処理液排出ポンプ26の流量を、被処理液供給ポンプ23の流量の9倍にして運転した。処理容器11内に供給する被処理液の液量の約8倍の空気を通気孔12から処理容器11内に吸引し、好気条件を形成した。
【0093】
嫌気処理準備工程では、運転日数85日までは、有機物質含有液31の液量を0.08L、回収液41の液量を0.72Lとし、トータル0.8Lの液体を処理容器11内に流入させた。すなわち、有機物質含有液31の液量:回収液41の水量=1:9である。ここで、有機物質含有液31のCOD濃度が3000mgCOD/Lの場合、回収液41のCOD濃度が0mgCOD/Lであれば、処理容器11内に充填する有機物質含有液31を混合させた回収液41のCOD濃度は300mgCOD/Lとなる。
【0094】
また、運転日数86日以降は、有機物質含有液31の液量を0.04L、回収液41の液量を0.76Lとし、トータル0.8Lの液体を処理容器11内に流入させた。すなわち、有機物質含有液31の液量:回収液41の水量=1:19である。ここで、有機物質含有液31のCOD濃度が6000mg/Lの場合、回収液のCOD濃度が0mgCOD/Lであれば、処理容器11内に充填する有機物質含有液31を混合させた回収液41のCOD濃度は300mgCOD/Lとなる。
【0095】
嫌気処理工程は、回収液41及び有機物質含有液31を処理容器11内に充填した状態を維持して行った。
【0096】
回収工程では、嫌気処理準備工程で処理容器11に流入した液量と同量、すなわち0.8Lの回収液41を回収液貯留槽42に回収した。また、回収液貯留槽42からは、嫌気処理準備工程で処理容器11に流入した有機物質含有液31と同量の回収液41を排出した。
【0097】
好気処理工程:7時間55分、嫌気処理準備工程:5分、嫌気処理工程:3時間55分、回収工程:5分として、タイマー25,40,47を設定し、それぞれのポンプ23,26,33,39,43,46の駆動を制御して、好気処理工程、嫌気処理準備工程、嫌気処理工程、回収工程の順に繰り返し連続して運転を行った。
【0098】
なお、有機物質含有液31のCOD濃度は、運転日数に応じて以下のようにした。
運転日数0〜10日は、有機物質含有液31のCOD濃度を1000mgCOD/Lとし、処理容器11内に充填した回収液41のCOD濃度を100mgCOD/Lとして運転した。
運転日数11〜25日は、有機物質含有液31のCOD濃度を2000mgCOD/Lとし、処理容器11内に充填した回収液41及び有機物質含有液31の混合液のCOD濃度を200mgCOD/Lとして運転した。
運転日数26〜50日は、有機物質含有液31のCOD濃度を3000mgCOD/Lとし、処理容器11内に充填した回収液41及び有機物質含有液31の混合液のCOD濃度を300mgCOD/Lとして運転した。
運転日数51〜60日は、有機物質含有液31のCOD濃度を4000mgCOD/Lとし、処理容器11内に充填した回収液41及び有機物質含有液31の混合液のCOD濃度を400mgCOD/Lとして運転した。
運転日数61〜85日は、有機物質含有液31のCOD濃度を3000mgCOD/Lとし、処理容器11内に充填した回収液41及び有機物質含有液31の混合液のCOD濃度を300mgCOD/Lとして運転した。
運転日数86日以降は、有機物質含有液31のCOD濃度を6000mgCOD/Lとし、処理容器11内に充填した回収液41及び有機物質含有液31の混合液のCOD濃度を300mgCOD/Lとして運転した。
【0099】
上記のように、徐々に有機物質含有液31のCOD濃度を変え、負荷をあげていったのは以下の理由による。運転初期においては、微生物保持部材13に微生物がさほど存在しないので、嫌気処理における有機物質の必要量が少ない。このため、回収液41に有機物質が残ってしまい、COD濃度の制御が困難になるためである。
【0100】
リン回収装置1を20℃の恒温室内に設置し、上記条件の下で運転を行った。
【0101】
図7に、運転日数と回収液貯留槽42内の回収液41のリン濃度との関係を示す。運転日数50日までは運転日数の経過につれて、回収液41のリン濃度が高くなっており、リン濃度を高めた回収液41が得られていることがわかる。
【0102】
なお、運転日数50日以降では、リン濃度が低下しているが、これは有機物質含有液31のCOD濃度を4000mgCOD/Lで運転した際、嫌気処理工程で有機物質を全て処理できず、有機物質の蓄積が起こり、その結果として有機物質負荷が過大になったことから悪影響を及ぼしたためと考えられる。
【0103】
その後、運転日数85日までは、リン濃度は92〜95mg/Lと安定しており、回収液41のリン濃度は、結果として初期の回収液41のリン濃度(5mg/L)の18〜19倍に高まっている。
【0104】
86日以降は、運転日数の経過につれて回収液41のリン濃度が高くなっていることがわかる。
【0105】
図8は、運転80日目の処理容器11内に充填した、回収液41及び有機物質含有液31との混合液のリン濃度及びCOD濃度を示している。横軸は、嫌気処理工程開始時からの経過時間である。
【0106】
嫌気処理工程開始時のCOD濃度は300mgCOD/L程度であるが、嫌気処理終了時には、50mgCOD/L程度まで低下している。一方、リン濃度は80mg/Lであるが、嫌気処理終了時には95mg/Lまで上昇している。したがって、微生物が有機物質を摂取しつつ、先の好気処理工程で摂取したリンを回収液41に放出していることが確認できる。
【0107】
なお、処理容器11に流入した回収液41のリン濃度は凡そ95mg/Lであるが、嫌気処理工程開始時の処理容器11に流入した回収液41及び有機物質含有液31の混合液のリン濃度は凡そ80mg/Lと低下しているが、これは、リンを含まない有機物質含有液31を混合したこと、更には、本実施例では、嫌気処理準備工程で好気条件から嫌気条件へ切り替える際、微生物保持部材13が被処理液21(或いは処理液)を吸収した状態で嫌気条件へ移行しているため、好気処理工程で微生物保持部材13に吸収されている被処理液21(或いは処理液)が混合されることによって、リン濃度が希釈されたものと考えられる。
【0108】
このような理由から、嫌気処理準備工程においては、微生物保持部材13にリンリッチな回収液41を流して、微生物保持部材13が吸収している被処理液21(或いは処理液)を押し出し、処理液排出ポンプ26で放出した後に、嫌気処理準備工程を行うようにすることで、回収液41のリンの高濃度化をより高めることができると考えられる。
【0109】
図9は運転80日目の好気処理工程において、リン除去された処理液のリン濃度を示している。横軸は好気処理工程開始時からの経過時間を示しており、好気処理工程開始後すぐさまリン濃度が低下している。
【0110】
嫌気処理終了後、回収液41を回収した後、微生物保持部材13が吸収している回収液41はそのままにして好気処理工程を始めている。このため、好気処理工程開始から0.5時間(嫌気処理工程終了後0.5時間)の間は、微生物保持部材13がリンリッチな回収液41を吸収しているので、処理液のリン濃度が被処理液21よりも高くなったと考えられる。
【0111】
このような場合、初期の被処理液21の流入によって押し出される微生物保持部材13に吸収されていた回収液41を回収液貯留槽42へ回収すること、及び、回収液41が混ざったややリン濃度の高い処理液を、ポンプアップして再び処理容器11内に導入して好気処理工程を行い、確実にリン除去するようにすればよい。
【0112】
好気処理工程開始から0.5時間以降では、処理液のリン濃度は被処理液21よりも低くなっており、リンは平均して2.5mg/L除去されていることがわかる。リン含有水からリンを除去するという環境保全を目的とした見地では、リンは完全に除去されていることが好ましいので、リンが完全に除去されるよう、被処理液21が処理容器11内に滞留する時間や、微生物保持部材13等の配置数を適宜調節するとよい。
【0113】
有機物質含有液31のCOD濃度を高くして用い、処理容器11に充填する有機物質含有液31及び回収液41の液量を調節することによって、回収液41のリン濃度をより高めることができる。
【0114】
実際の実験で、図7における運転日数85〜120日の運転では、上述したように、嫌気処理準備工程において、有機物質含有液31の液量を0.04L、回収液41の液量を0.76Lとし、この混合した液体の液量を0.8Lとした。すなわち有機物質含有液31量:回収液41量=1:19となる。ここで有機物質含有液31のCOD濃度が6000mgCOD/Lで、回収液41のCOD濃度が0mgCOD/Lの場合、混合した液体のCOD濃度は300mgCOD/Lとなる。
【0115】
110日以降では、回収液41のリン濃度は155〜158mg/Lで安定するようになり、結果として、初期の回収液41に比較して約30倍のリン濃度へと濃縮することができた。回収液貯留槽42から排出する回収液41を1/2にしたため、嫌気処理開始時において、微生物保持部材13が被処理液21を保持していなければ、理論上では回収液41のリン濃度を2倍とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
上述のように、容易に下水や工場排水、し尿系汚水等からリンを除去できるとともに、リンを高濃度にして回収することができる。したがって、河川や湖沼、或いは、下水や工場排水等の水処理等に幅広く利用可能であり、更に、回収したリンを資源として有効活用することが期待できる。
【符号の説明】
【0117】
1 リン回収装置
11 処理容器
12 通気孔
13 微生物保持部材
14 糸
21 被処理液
22 被処理液貯留槽
23 被処理液供給ポンプ
24 被処理液供給流路
25 タイマー
26 処理液排出ポンプ
27 処理液排出流路
31 有機物質含有液
32 有機物質含有液貯留槽
33 有機物質含有液供給ポンプ
34 有機物質含有液供給流路
35 三方バルブ
36 連接管
37 三方バルブ
38 回収液回収流路
39 回収液回収ポンプ
40 タイマー
41 回収液
42 回収液貯留槽
43 回収液供給ポンプ
44 回収液供給流路
45 回収液排出流路
46 回収液排出ポンプ
47 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気条件下でリンを摂取するとともに嫌気条件下でリンを放出する微生物を保持する微生物保持部材が内部に配置された処理容器内に、リンを含有する被処理液を導入し、前記被処理液を前記微生物保持部材に浸透させながら流下させて前記微生物に前記リンを摂取させる好気処理工程と、
前記処理容器に有機物質含有液及び回収液を充填し前記微生物保持部材を埋没させる嫌気処理準備工程と、
前記微生物が摂取した前記リンを前記回収液に放出させる嫌気処理工程と、
前記リンが放出された前記回収液を前記処理容器から回収液貯留槽に回収する回収工程と、を含み、
前記好気処理工程、前記嫌気処理準備工程、前記嫌気処理工程、前記回収工程の順に繰り返し連続して行うことを特徴とするリンの回収方法。
【請求項2】
前記回収液貯留槽に回収した前記回収液の一部を前記処理容器内に再度充填することを特徴とする請求項1に記載のリンの回収方法。
【請求項3】
前記処理容器に充填した前記有機物質含有液と同量の前記回収液を前記回収液貯留槽から排出することを特徴とする請求項1に記載のリンの回収方法。
【請求項4】
通気孔が設けられた前記処理容器を用い、
前記好気処理工程では、被処理液供給ポンプを用いて前記被処理液を前記処理容器内に導入しつつ、前記被処理液から前記リンが除去された処理液を処理液排出ポンプを用いて前記処理容器から排出するとともに、
前記処理液排出ポンプの流量を前記被処理液供給ポンプの流量よりも多くして、前記通気孔から空気を導入することを特徴とする請求項1に記載のリンの回収方法。
【請求項5】
多孔質部材に前記微生物を保持させた前記微生物保持部材を用いることを特徴とする請求項1に記載のリンの回収方法。
【請求項6】
好気条件下でリンを摂取するとともに嫌気条件下でリンを放出する微生物が保持された微生物保持部材と、
前記微生物保持部材が内部に配置された処理容器と、
リンを含有する被処理液を前記処理容器に供給する被処理液供給流路と、
前記被処理液から前記リンが除去された処理液を前記処理容器から排出する処理液排出流路と、
前記リンが放出された回収液を貯留する回収液貯留槽と、
前記回収液貯留槽から前記処理容器に前記回収液を供給する回収液供給流路と、
前記処理容器から前記回収液貯留槽に前記回収液を送る回収液回収流路と、
有機物質含有液が貯留される有機物質含有液貯留槽と、
前記有機物質含有液貯留槽から前記処理容器に前記有機物質含有液を送る有機物質含有液供給流路と、
前記回収液貯留槽から前記回収液を排出する回収液排出流路と、
を備えることを特徴とするリンの回収装置。
【請求項7】
前記処理容器に通気孔が設けられ、
前記被処理液を前記処理容器に供給する被処理液供給ポンプと、
前記処理液を前記処理容器から排出する処理液排出ポンプと、を備え、
前記処理液排出ポンプの流量が前記被処理液供給ポンプの流量よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載のリンの回収装置。
【請求項8】
前記微生物保持部材は、多孔質部材に前記微生物が保持されていることを特徴とする請求項6に記載のリンの回収装置。
【請求項9】
複数の前記微生物保持部材がそれぞれ離間して糸に連ねられて前記処理容器内に配置されていることを特徴とする請求項8に記載のリンの回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−194499(P2010−194499A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44797(P2009−44797)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19〜21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、微生物機能を活用した環境調和型製造基盤技術開発/微生物群のデザイン化による高効率型環境バイオ処理技術開発/高濃度微生物保持DHSリアクターによる溶存メタン・亜酸化窒素温室効果ガスの処理およびリン回収技術の開発に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】