説明

リンクアグリゲーション通信装置

【課題】 LACPフレームの生成及び送受信を行う冗長化されたデータ処理部の全てが故障した場合にも、上位装置との間の通信を確保し、上位装置からの復旧指示信号を受信することができるリンクアグリゲーション通信装置を提供する。
【解決手段】 データ処理部の各々が送信するLACPフレームを中継しつつ当該データ処理部の各々から送信されるべきLACPフレームを監視して当該データ処理部の各々の故障を検出し、当該データ処理部の全ての故障を検出した場合に当該データ処理部の全てのLACPフレーム処理を代行するリンクアグリゲーション通信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の物理通信経路を束ねて1つの論理通信経路として扱うリンクアグリゲーション方式による通信を行うリンクアグリゲーション通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二重化以上の冗長構成を有し、上位装置との間でリンクアグリゲーション方式による通信を行う通信装置が知られている(例えば特許文献1乃至4)。リンクアグリゲーションは複数の物理通信経路を束ねて1つの論理通信経路として扱う通信方式であり、IEEE802.1AX(旧IEEE802.3ad)に規定されている。当該通信方式には、(1)複数経路を束ねることによって通信帯域が拡大する、(2)冗長化構成されていることから、いずれかの経路が切断されても他の経路で継続通信可能となる、(3)1インターフェースあたりの負荷を低減できるといった利点がある。
【0003】
リンクアグリゲーション方式による通信を行う通信装置は、通信経路の構成、維持及び診断のためのプロトコルフレームであるLACP(Link Aggregation Control Protocol)フレームを上位装置との間で送受信する。通信装置内に冗長化構成された例えばCPUなどのデータ処理部の各々がそれぞれに対応する通信経路を介してLACPフレームを送受信し得る。例えば、通信装置と上位装置とがLACPフレームを定期的に相互に送受信することによって通信経路の正常性を判断する。ここで、上位装置が例えば3秒や90秒などの一定時間が経過しても、現在通信を行っている経路を介してLACPフレームを受信できなかった場合には通信経路異常と判断し、他の通信経路に切り替えて通信を継続する。かかる処理は、リンクアグリゲーション通信方式の機能によってなされるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−349764号公報
【特許文献2】特開2005−333549号公報
【特許文献3】特開2008−160227号公報
【特許文献4】特開2008−67085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リンクアグリゲーション通信装置内に冗長化構成された全てのデータ処理部が故障し、上位装置がいずれの通信経路からもLACPフレームを受信できない場合には、当該上位装置は正常な通信経路が無いと判断して一切の通信を遮断してしまう。かかる処理は、リンクアグリゲーション通信方式の正常な機能によってなされるものであるが、保守の観点からは以下の問題があった。すなわち、リンクアグリゲーション通信装置と上位装置との間の通信が一切不能となっているので、データ処理部を故障から復旧させるための例えばリセット制御信号や電源制御信号などの復旧信号を上位装置からリンクアグリゲーション通信装置へ送信することができないという問題があった。
【0006】
対策案として、リンクアグリゲーション通信装置と上位装置との間に保守専用の通信ネットワークを別途に設け、当該通信ネットワーク経由で復旧信号を上位装置からリンクアグリゲーション通信装置へ送信することも考えられるが、通信インターフェース数の増加による装置コストの増加や保守コストがさらに発生するという問題が生じるので、現実的ではなかった。
【0007】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、LACPフレームの生成及び送受信を行う冗長化されたデータ処理部の全てが故障した場合にも、上位装置との間の通信を確保し、上位装置からの復旧指示信号を受信することができるリンクアグリゲーション通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるリンクアグリゲーション通信装置は、複数の物理通信経路を1つの論理通信経路として扱うリンクアグリゲーション方式による通信を行うリンクアグリゲーション通信装置であって、前記物理通信経路のうちの自らに対応する1つを介して各々がLACPフレームを受信し且つ自らが生成したLACPフレームを送信する複数のデータ処理部と、前記データ処理部の各々が送信するLACPフレームを中継しつつ前記データ処理部の各々から送信されるべきLACPフレームを監視して前記データ処理部の各々の故障を検出するLACP監視故障検出部と、前記LACP監視故障検出部が前記データ処理部の全ての故障を検出したことの通知を受けた場合に前記データ処理部の全てのLACPフレーム処理を代行するLACPフレーム処理代行部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるリンクアグリゲーション通信装置によれば、LACPフレームの生成及び送受信を行う冗長化されたデータ処理部の全てが故障した場合にも、上位装置との間の通信を確保し、上位装置からの復旧指示信号を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】リンクアグリゲーション通信装置を上位装置とともに示すブロック図である。
【図2】図1のリンクアグリゲーション通信装置に含まれるネットワークインタフェース部とデータ処理部とをLACPフレームとともに示すブロック図である。
【図3】(a)は、通常送信時におけるリンクアグリゲーション通信装置を上位装置とともに示すブロック図である。(b)は、通常送信時におけるネットワークインタフェース部とデータ処理部とをLACPフレームとともに示すブロック図である。
【図4】図2のデータ処理部が故障しそれに対応する通信回線が通信断となった場合におけるリンクアグリゲーション通信装置を上位装置とともに示すブロック図である。
【図5】(a)は、全経路が通信断となった場合におけるリンクアグリゲーション通信装置を上位装置とともに示すブロック図である。(b)は、この場合におけるネットワークインタフェース部とデータ処理部とをLACPフレームとともに示すブロック図である。
【図6】復旧時におけるネットワークインタフェース部とデータ処理部とをLACPフレームとともに示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は本実施例によるリンクアグリゲーション通信装置(以下、単に通信装置と称する)1を上位装置7とともに示すブロック図である。通信装置1及び上位装置7の各々は例えばサーバなどのコンピュータシステムである。通信装置1と上位装置7とは、複数の物理的な通信経路である通信回線6−1〜6−n(nは2以上の整数)を1つの論理的な通信経路として扱うリンクアグリゲーション通信方式によって相互に通信する。
【0013】
通信装置1は、ネットワークインタフェース部(以下、単にIF部と称する)2−1〜2−nと、データ処理部(以下、単に処理部と称する)3−1〜3−nと、を含む。
【0014】
IF部2−1は、通信回線6−1を介して上位装置7との間で通信するための通信インターフェースである。IF部2−2〜2−nも同様にそれぞれ通信回線6−2〜6−nを介して上位装置7との間で通信できる。IF部2−1〜2−nの各々はインターフェース部間信号路(以下、IF部間信号路と称する)5を介して相互に所定の信号を送受信できる。
【0015】
処理部3−1〜3−nの各々は、例えばCPUなどのデータ処理部であり、データ演算処理やLACPフレームの生成及び送信などの種々のデータ処理を行う。処理部3−1〜3−nの各々は、定期的にLACPフレームを送信するアクティブモード、及び上位装置7からLACPフレームを受信したときにのみLACPフレームを返送するパッシブモードのいずれかのモードにより、LACPフレームを送信できる。
【0016】
IF部2−1と処理部3−1とはデータ通信路4−1を介して相互に接続されており、例えば処理部3−1がデータ処理した種々のデータやLACPフレームを相互に送受信できる。IF部2−2〜2−nとデータ処理部3−2〜3−nの各々も同様にデータ通信路4−2〜4−nを介してそれぞれ相互に接続されており、n重に冗長化されている。なお、図1では、図2に示される復旧信号路16については図示していない。
【0017】
図2は、IF部2−1と処理部3−1とをLACPフレームとともに示すブロック図である。IF部2−1は、LACP監視部11と、LACP処理代行部12と、復旧制御部13と、他装置IF部14と、スイッチ15と、復旧信号路16と、を含む。
【0018】
LACP監視部11は、上位装置7から通信回線6−1を介して到来したLACPフレーム等のデータを受信して、これをデータ通信路4−1を介して処理部3−1中継する。また、LACP監視部11は、処理部3−1からデータ通信路4−1を介して到来したデータを受信してこれを通信回線6−1へ中継しつつ、LACPフレームの受信状態を監視する。LACP監視部11はタイマーを備え、処理部3−1からのLACPフレームを受信した時点でタイマーを一旦リセットして時間計測を開始する。そして、LACP監視部11は、時間計測開始時点から所定の設定時間を経過しても後続のLACPフレームを受信できない場合には処理部3−1に故障が発生したと判別し、その旨を表わす故障検出信号を他装置IF部14からIF部間信号路5を介してIF部2−2〜2−nの各々に送信する。
【0019】
この場合には処理部3−1が故障しているので、LACP監視部11は処理部3−1からLACPフレーム等のデータを受信せず、通信回線6−1へのLACPフレーム等のデータの中継も行わない。LACP監視部11は、自身が処理部3−1の故障を検出した場合でも、自身以外の全てのIF部2−2〜2−nから故障検出信号を受信しなければ、処理部3−1及び上位装置7のいずれに対しても何も送信しない。LACP監視部11は、自身が処理部3−1の故障を検出し、且つ自身以外の全てのIF部2−2〜2−nから故障検出信号を受信した場合には、スイッチ15をLACP処理代行部12の側に切り替えるとともに、代行処理指示信号をLACP処理代行部12に与える。LACP監視部11は、処理部3−1から到来したLACPフレームに含まれる宛先アドレスについても常時監視しており、当該宛先アドレスを一時的に保持できる。LACP監視部11は、代行処理指示信号とともに当該宛先アドレスもLACP処理代行部12に与える。
【0020】
LACP監視部11は、当該代行処理指示信号を発した後、故障から復旧した処理部3−1からデータ通信路4−1を介して再びLACPフレームを受信したときに、スイッチ15を自身の側へ切り替え、上記したLACPフレーム受信状態の監視処理、及びLACPフレームやその他のデータの中継処理を再開する。また、LACP監視部11は、LACPフレームとは別の復旧通知信号を、復旧した処理部3−1から受信したときに当該監視及び中継処理を再開するようにしても良い。
【0021】
LACP処理代行部12は、LACP監視部11からの代行処理指示信号に応じて、処理部3−1によるLACPフレーム処理の代行処理を開始する。詳細には、LACP処理代行部12は、正常時の処理部3−1がアクティブモードでLACPフレームを送信していた場合には、LACPフレームを定期的に生成しこれを通信回線6−1を介して上位装置7へ送信する(すなわちアクティブモードでLACPフレームを送信する)。正常時の処理部3−1がパッシブモードでLACPフレームを送信していた場合には、LACP処理代行部12は、上位装置7からLACPフレームを受信したときにのみLACPフレームを返送する(すなわちパッシブモードでLACPフレームを送信する)。
【0022】
LACP処理代行部12は、正常時の処理部3−1からモード種別(アクティブモード及びパッシブモードのうちのいずれか)の通知を受けることにより、正常時の処理部3−1がいずれのモードでLACPフレームを送信しているのかを判別し、当該判別したモードによりLACPフレームを送受信する。なお、LACP処理代行部12は、正常時の処理部3−1から到来したLACPフレームの受信時間間隔に基づいて、正常時の処理部3−1がいずれのモードでLACPフレームを送信しているのかを判別し、当該判別したモードによりLACPフレームを送受信しても良い。詳細には、LACP処理代行部12は、正常時の処理部3−1から定期的にLACPフレームを受信した場合にはアクティブモードによる送信であると判別し、不定期的にLACPフレームを受信した場合にはパッシブモードによる送信であると判別する。
【0023】
LACP処理代行部12は、代行処理時には、フレーム種別識別子と、宛先アドレスと、送信元アドレスと、を含むLACPフレームを生成する。フレーム種別識別子は、当該フレームがLACPフレームであることを示す識別子である。LACP処理代行部12が当該識別子を生成する。宛先アドレスは、LACPフレームの宛先を示すアドレスであり、上位装置7のアドレスである。正常時の処理部3−1がアクティブモードで送信していた場合には、LACP処理代行部12は、LACP監視部11が正常時の処理部3−1から受信したLACPフレームに含まれていた宛先アドレス(上位装置7のアドレス)をそのまま宛先アドレスとする。正常時の処理部3−1がパッシブモードで送信していた場合には、LACP処理代行部12は、自身が上位装置7から受信したLACPフレームに含まれていた送信元アドレス(上位装置7のアドレス)を宛先アドレスとする。送信元アドレスは、LACPフレームの送信元を示すアドレスであり、LACP処理代行部12は、IF部2−1のアドレスを送信元アドレスとする。処理部3−1は、例えば通信装置1の電源投入時にIF部2−1のMACアドレス等の物理アドレスを取得し、LACPフレームの送信元アドレスとして使用する。これにより、正常時の処理部3−1が送信していたLACPフレームの送信元アドレスと、LACP処理代行部12が代行処理時に生成したLACPフレームの送信元アドレスとが同一になる。また、上記した処理により、フレーム種別識別子及び宛先アドレスについても、正常時及び代行処理時におけるフレームにおいて同一となる。このように、LACP処理代行部12は、正常時の処理部3−1が送信していたLACPフレームと同一内容のLACPフレームを生成し、これを上位装置7に送信する。
【0024】
上記した構成により、例え全ての処理部3−1〜3−nが故障した場合でも、LACP処理代行部12が、LACPフレームを上位装置7に送信することにより、ヘルスチェック信号であるLACPフレームの送受信を継続できるので通信装置1と上位装置7との間の通信が途絶えず、上位装置7から通信装置1への復旧指示信号の送信が可能となる。なお、通信装置1内の例えばRAMやハードディスクなどの記憶媒体(図示せず)に論理的な送信元アドレスを予め記憶させ、処理部3−1とLACP処理代行部12とがそれぞれ当該アドレスをLACPフレームの送信元アドレスとして使用するようにしても良い。このようにした場合にも、処理部3−1が送信するLACPフレームの送信元アドレスと、LACP処理代行部12が送信するLACPフレームの送信元アドレスとを同一にすることができる。上記の構成は、処理代行時にIF部2−1〜2−nの各々がLACPフレームを送受信するものであるが、これらのうちの1つがLACPフレームを送受信する構成としても良い。例えばIF部2−1が処理代行時にLACPフレームを送受信するように予め設定する。
【0025】
LACP処理代行部12は、上記したLACPフレーム代行処理の開始後、全ての処理部3−1〜3−nが故障したことを示す故障通知信号を通信回線6−1を介して上位装置7に送信する。なお、故障通知信号は、IF部2−1〜2−nのうちの少なくとも1つのLACP処理代行部12が送信できれば良い。上位装置7は、通信装置1からの故障通知信号に応じて通信回線6−1を介して復旧指示信号を通信装置1へ送信する。
【0026】
復旧制御部13は、通信回線6−1を介して受信した復旧指示信号に応じて、処理部3−1を復旧させるための復旧制御信号を復旧信号路16を介して処理部3−1へ供給する。復旧制御信号は、例えば、処理部3−1をソフトウェア的に一旦リセットして再起動させる信号や、処理部3−1の電源を再投入させる信号などである。図2には、IF部2−1の復旧制御部13と、IF部2−1に対応する処理部3−1とが復旧信号路16を介して1対1で接続された構成が示されている。これに代えて、IF部2−1の復旧制御部13と、処理部3−1〜3−nの各々とが復旧信号路16を介して接続された構成としても良い。この場合、IF部2−1の復旧制御部13が処理部3−1〜3−nの各々へ復旧制御信号を供給する。
【0027】
処理部3−1〜3−nに生じた故障がソフトウェア故障である場合には、復旧指示信号によるソフトウェアのリセット及び再起動や電源の再投入により、処理部3−1〜3−nを故障から復旧させ得る。処理部3−1〜3−nは、復旧後にLACPフレームやその他のデータの生成及び送信を再開する。LACP監視部11は、復旧した処理部3−1からデータ通信路4−1を介してLACPフレームを受信したときに、スイッチ15を自身の側へ切り替え、LACPフレーム受信状態の監視処理、及びLACPフレーム等の中継処理を再開する。また、処理部3−1は、LACPフレームとは別の復旧通知信号をIF部2−1に送信するようにしても良い。この場合、LACP監視部11は、当該復旧通知信号を受信したときに監視及び中継処理を再開する。
【0028】
IF部2−2〜2−nの各々もIF部2−1と同じ構成である。以下、IF部2−2〜2−nの各々のLACP監視部11からなる構成ブロックをLACP監視故障検出部と称する。また、IF部2−2〜2−nの各々のLACP処理代行部12からなる構成ブロックをLACPフレーム処理代行部と称する。更に、IF部2−2〜2−nの各々の復旧制御部13からなる構成ブロックを処理部復旧制御部と称する。IF部2−1〜2−nの各々は例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成できる。また、ソフトウェア非搭載のFPGAによっても構成できる。
【0029】
以下、図3〜図6を順次参照しつつ、通信装置1におけるLACPフレーム代行処理について説明する。
【0030】
図3(a)は、通常送信時における通信装置1を上位装置7とともに示すブロック図である。図3(b)は、通常送信時におけるIF部2−1と処理部3−1とをLACPフレームとともに示すブロック図である。
【0031】
図3(a)に示されるように、処理部3−1〜3−nは、いずれも故障しておらず、それぞれIF部2−1〜2−nとの間でデータを送受信できる状態にある。リンクアグリゲーションLAによって、物理的な通信回線6−1〜6−nは1つの論理的な回線として扱われる。処理部3−1〜3−nが上位装置7との間でリンクアグリゲーション処理を実行する。通信装置1と上位装置7とは、例えば通信回線6−1を介してLACPフレーム等のデータを送受信する。
【0032】
物理的な通信回線として通信回線6−1が用いられる場合、図3(b)に示されるように、IF部2−1のLACP監視部11は、上位装置7から通信回線6−1を介して到来したLACPフレーム等のデータを受信して、これをデータ通信路4−1を介して処理部3−1へ中継する。また、LACP監視部11は、処理部3−1からデータ通信路4−1を介して到来したLACPフレーム等のデータを受信してこれを通信回線6−1へ中継するとともに、LACPフレームの受信状態を監視する。LACP監視部11は、処理部3−1からのLACPフレームを受信した時点でタイマーを一旦リセットして時間計測を開始する。
【0033】
図4は、処理部3−1が故障し通信回線6−1が通信断となった場合における通信装置1を上位装置7とともに示すブロック図である。
【0034】
IF部2−1のLACP監視部11(図2)は、時間計測開始時点から所定の設定時間を経過しても処理部3−1から後続のLACPフレームを受信できない状態が続いた場合には、その旨を表わす故障検出信号SAを他装置IF部14からIF部間信号路5を介してIF部2−2〜2−nの各々に送信する。この場合には処理部3−1が故障しているので、LACP監視部11は処理部3−1からLACPフレームやその他のデータを受信せず、通信回線6−1へのデータ及びLACPフレームの中継も行わない。IF部2−1のLACP監視部11は、自身が処理部3−1の故障を検出した場合でも、自身以外の全てのIF部2−2〜2−nから故障検出信号を受信しなければ、処理部3−1及び上位装置7のいずれに対しても何も送信しない。
【0035】
処理部3−1が故障し通信回線6−1が通信断となった場合、処理部3−1以外の処理装置2−2〜2−nが上位装置7との間でリンクアグリゲーション処理を実行する。リンクアグリゲーションLAによって、通信回線6−1以外の物理的な通信回線6−2〜6−nが1つの論理的な回線として扱われる。通信装置1と上位装置7とは、例えば通信回線6−2を介してLACPフレーム等のデータを送受信する。この場合、IF部2−2のLACP監視部11は、上位装置7と処理部3−2との間でLACPフレーム等のデータを中継するとともに、LACPフレームの受信状態を監視する。
【0036】
図5(a)は、全ての通信回線6−1〜6−nが通信断となった場合における通信装置1を上位装置7とともに示すブロック図である。図5(b)は、この場合におけるIF部2−1と処理部3−1とをLACPフレームとともに示すブロック図である。
【0037】
IF部2−1のLACP監視部11は、自身が処理部3−1の故障を検出し、且つ自身以外の全てのIF部2−2〜2−nから故障検出信号SAを受信した場合には、スイッチ15をLACP処理代行部12の側に切り替えるとともに、代行処理指示信号SBをLACP処理代行部12に与える。IF部2−1のLACP監視部11は、処理部3−1から到来したLACPフレームに含まれる宛先アドレスについても常時監視しており、代行処理指示信号SBとともに当該宛先アドレスもLACP処理代行部12に与える。
【0038】
IF部2−1のLACP処理代行部12は、LACP監視部11からの代行処理指示信号SBに応じて、LACPフレーム処理の代行処理を開始する。LACP処理代行部12は、正常時の処理部3−1からモード種別としてアクティブモードの通知を受けていた場合には、LACPフレームを定期的に生成しこれを通信回線6−1を介して上位装置7へ送信する。LACP処理代行部12は、モード種別としてパッシブモードの通知を受けていた場合には、上位装置7からLACPフレームを受信したときにのみLACPフレームを返送する。なお、上記したように、LACP処理代行部12は、正常時の処理部3−1から到来したLACPフレームの受信時間間隔に基づいて、正常時の処理部3−1がいずれのモードでLACPフレームを送信しているのかを判別しても良い。
【0039】
IF部2−1のLACP処理代行部12は、上記したように、フレーム種別識別子と、宛先アドレスと、送信元アドレスと、を含むLACPフレームを生成し、これを上位装置7に送信する。LACP処理代行部12によって上位装置7へ送信されるLACPフレームは、正常時の処理部3−1が送信していたLACPフレームと同一内容である。
【0040】
IF部2−2〜2−nの各々のLACP監視部11及び復旧制御部13も上記と同様の処理を行う。かかる処理により、全ての処理部3−1〜3−nが故障した場合でも、LACP処理代行部12が、LACPフレームを上位装置7に送信することにより、LACPフレームの送受信を継続できる。これにより、通信装置1と上位装置7との間の通信が途絶えず、上位装置7から通信装置1への復旧指示信号の送信が可能となる。
【0041】
図6は、復旧時におけるIF部2−1と処理部3−1とをLACPフレームとともに示すブロック図である。
【0042】
IF部2−1のLACP処理代行部12は、上記したLACPフレーム代行処理の開始後、全ての処理部3−1〜3−nが故障したことを示す故障通知信号SCを通信回線6−1を介して上位装置7に送信する。上位装置7は、通信装置1からの故障通知信号に応じて通信回線6−1を介して復旧指示信号SDを通信装置1へ送信する。
【0043】
復旧制御部13は、通信回線6−1を介して受信した復旧指示信号SDに応じて、処理部3−1を復旧させるための例えば電源再投入信号などの復旧制御信号SEを復旧信号路16を介して処理部3−1へ供給する。IF部2−2〜2−nの各々の復旧制御部13もそれぞれ処理部3−2〜3−nに対して同様の処理を行う。かかる処理により、ソフトウェア故障を生じた処理部3−1〜3−nを故障から復旧させ得る。なお、例えばIF部2−1の復旧制御部13が、復旧信号路16を介して処理部3−1〜3−nの各々へ復旧制御信号を供給するようにしても良い。
【0044】
処理部3−1〜3−nは、復旧後にLACPフレーム等のデータの生成及び送信を再開する。IF部2−1のLACP監視部11は、復旧した処理部3−1からデータ通信路4−1を介してLACPフレームを受信したときに、スイッチ15を自身の側へ切り替え、LACPフレーム受信状態の監視処理、及びLACPフレーム等の中継処理を再開する。また、LACP監視部11は、復旧した処理部3−1からLACPフレームとは別の復旧通知信号を受信したときに監視及び中継処理を再開するようにしても良い。IF部2−2〜2−nの各々のLACP監視部11もそれぞれ同様の処理を行う。
【0045】
上記したように、本実施例の通信装置1は、LACPフレーム処理を行う冗長化された処理部3−1〜3−nの全てが故障した場合に、処理部3−1〜3−nにそれぞれ対応するIF部2−1〜2−nがLACPフレーム処理を代行処理することにより、上位装置7との間でLACPフレームの送受信を継続できる。これにより、通信装置1と上位装置7との間の通信が途絶えず、通信装置1は上位装置7からの復旧指示信号を受信することができる。通信装置1は当該復旧指示信号に応じて、自身の処理部3−1〜3−nに対して例えば電源再投入等の処理を行うことにより、これらをソフトウェア故障から回復させることができる。
【0046】
処理部3−1〜3−nの故障時におけるLACPフレームの送受信、及び上位装置7からの復旧指示信号の受信については、リンクアグリゲーション対象の回線である既存の通信回線6−1〜6−nを介して行うので、故障時保守用回線を別途設ける必要が無ない。故に、保守用回線の敷設コスト、通信インターフェース数増加分の装置コスト及び定期的な保守コストを発生させることなく、上位装置7からの指示に応じて処理部3−1〜3−nを故障から回復させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 リンクアグリゲーション通信装置(通信装置)
2−2〜2−n ネットワークインタフェース部(IF部)
3−1〜3−n データ処理部(処理部)
4−1〜4−n データ通信路
5 インターフェース部間信号路(IF部間信号路)
6−1〜6−n 通信回線
7 上位装置
11 LACP監視部(LACP監視ユニット)
12 LACP処理代行部
13 復旧制御部
14 他装置IF部
15 スイッチ
16 復旧信号路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物理通信経路を1つの論理通信経路として扱うリンクアグリゲーション方式による通信を行うリンクアグリゲーション通信装置であって、
前記物理通信経路のうちの自らに対応する1つを介して各々がLACPフレームを受信し且つ自らが生成したLACPフレームを送信する複数のデータ処理部と、
前記データ処理部の各々が送信するLACPフレームを中継しつつ前記データ処理部の各々から送信されるべきLACPフレームを監視して前記データ処理部の各々の故障を検出するLACP監視故障検出部と、
前記LACP監視故障検出部が前記データ処理部の全ての故障を検出したことの通知を受けた場合に前記データ処理部の全てのLACPフレーム処理を代行するLACPフレーム処理代行部と、を含むことを特徴とするリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項2】
前記LACP監視故障検出部は、前記データ処理部による1つのLACPフレームの送信時点から所定時間経過しても当該1つのデータ処理部からの後続のLACPフレームが送信されない場合に当該1つのデータ処理部が故障したと判別する複数のLACP監視ユニットからなることを特徴とする請求項1に記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項3】
前記LACP監視故障検出部は、複数のLACP監視ユニットからなり、
前記LACP監視ユニットの各々は、前記データ処理部のうちの自身に対応する1つが故障したと判別した場合に自身以外のLACP監視ユニットへ当該1つのデータ処理部の故障を検出したことを通知し、且つ自身以外の全てのLACP監視ユニットから各々が対応するデータ処理部の故障を検出したことの通知を受けた場合に前記LACPフレーム処理代行部に対して前記データ処理部の全ての故障を検出した旨を通知することを特徴とする請求項1又は2に記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、自身によるLACPフレーム送受信のモード種別がアクティブモードであるかパッシブモードであるかを示すモード種別を前記LACPフレーム処理代行部へ通知し、
前記LACPフレーム処理代行部は、前記モード種別が示すモードにより前記LACPフレームを送受信することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項5】
前記LACPフレーム処理代行部は、前記データ処理部よるLACPフレーム送受信間隔に基づいて当該データ処理部よるLACPフレーム送受信のモード種別がアクティブモードであるかパッシブモードであるかを判別し、当該判別したモード種別のモードにより前記LACPフレームを送受信することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項6】
前記LACPフレームは、フレーム種別識別子と、宛先アドレスと、送信元アドレスと、を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項7】
前記LACPフレーム処理代行部及び前記データ処理部の各々は前記LACPフレーム処理代行部の物理アドレスを前記送信元アドレスとすることを特徴とする請求項6に記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項8】
前記LACPフレーム処理代行部及び前記データ処理部の各々は所定の論理アドレスを前記送信元アドレスとすることを特徴とする請求項6に記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項9】
前記LACP監視故障検出部は、前記データ処理部の故障を検出した場合にその旨を表わす故障通知信号を前記論理通信経路を介して送信することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項10】
前記論理通信経路を介して到来した復旧指示信号に応じて前記データ処理部へ復旧制御信号を供給する処理部復旧制御部を更に含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項11】
前記復旧制御信号は、前記データ処理部をソフトウェア的に一旦リセットして再起動させる信号であることを特徴とする請求項10に記載のリンクアグリゲーション通信装置。
【請求項12】
前記復旧制御信号は、前記データ処理部の電源を再投入させる信号であることを特徴とする請求項10に記載のリンクアグリゲーション通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−4938(P2012−4938A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139201(P2010−139201)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】