説明

リング状の被検査体の搬送装置

【課題】 リング状被検査体を検査する被検査体を検査位置に供給する搬送コンベアからなる搬送装置を提供する。
【解決手段】 搬送用コンベア1のコンベア面1aのリブ間に1個の被検査体3を載置する複数のリブ2を離間して一体的に設け、リブ2の背面に当て板2aを有するコンベア面1aに水平搬送域1bで被検査体3のリング端面3aを載置し、上昇搬送域1cで傾斜したコンベア面1aから被検査体3をリブ2により転落防止し、被検査体3のリング側面3bをコンベア面1aに載置して被検査体3の重心がリブ2から外れた場合に転動落下し、被検査体3のリング端面3aをコンベア面1aに2個重ねた載置した場合、上側の被検査体3をコンベア面1aからリブ2に係止せずに落下させて搬送し、コンベア面1aを上部水平搬送域1dとした後、コンベアローラー4で回動させて被検査体落下域1eで被検査体3を下方のシュート5に供給する搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリング状鍛造製品、例えばリング側面である外径φ120〜200mmおよびリング幅30〜100mmを有するリング状鍛造製品の良否を検査機で所定のサイクルタイムで検査するために、リング状鍛造製品である被検査体を検査用コンベアにより検査ラインの所定方向に整列して自動的に搬送するために、容器から取り出したリング状鍛造製品である被検査体を、リング側面を上下とする正規方向として搬送用コンベアに載置して搬送し、さらに搬送用コンベアから検査のための検査用コンベアに供給するためのシュートへの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リング状鍛造製品、例えば種々のベアリングの内輪レースあるいは外輪レースを製造する際に、これらのリング状鍛造製品が規格どおりに正しい形状に鍛造されていることを検査する必要がある。このため、これらのリング状鍛造製品を搬送用コンベアに載置し、さらに搬送用コンベアから自動で検査する検査装置を有する検査ラインの検査用コンベアに移して搬送する。この場合、リング状鍛造製品を自動で的確に検査してその製品の良否を判定するためには、検査装置の前にリング状鍛造製品を正しい方向に配置して検査用コンベアで送給することが欠かせない。
【0003】
従来のリング状鍛造製品を製作する際の金属丸材の自動供給機として種々の機構のものが用いられている。この機構において、ときとしてコンベア上で複数個の金属丸材がそれらの軸心を平行にして並列状態で搬送されることがある。このような状態で搬送されると、金属丸材がコンベア上で隣どうしで押し合って停滞する搬送トラブルが生じていた。
【0004】
そこで、このようなトラブルの発生を防止するために、コンベアの上面を1個の金属丸材のみを載置することの可能な幅の平面からなるものとし、1個の金属丸材のみをこのコンベアに載置して押圧体で押し出して供給する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この装置は、径に比して長さの長い金属丸材を送給する手段であり、径に比して幅の短いベアリングの内輪レースあるいは外輪レースなどのリング状鍛造製品において、そのリング状鍛造製品のリング側面をコンベア面に対して垂直とし、かつ、リング状鍛造製品のリング端面をコンベア面に対して当接して平行として自動的に載置して送給する装置には適していなかった。
【0005】
【特許文献1】実開平7−42479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リング状鍛造製品である被検査体を所定のサイクルタイムで検査を行うために、リング状鍛造製品を収容した容器から被検査体を搬送コンベア上に取り出し、さらにシュートを介して、検査用コンベア上に搬送する際に、その搬送時に以下に記載の種々の問題点があった。
【0007】
その第1は、リング状鍛造製品である被検査体3の幅面すなわちリング側面3bの寸法が大きいため、図1の(b)に示すように、被検査体3のリング端面3aが搬送コンベア1のコンベア面1aに当接されない状態で載置されて搬送される結果、検査コンベア上に搬送されたときに、被検査体3の向きが検査装置による検査方向と整合しなくなって適正に検査されなくなる。
【0008】
その第2は、幅面すなわちリング側面3bの小さいリング状鍛造製品である被検査体3の場合、図1の(c)に示すように、複数の被検査体3がリング端面3aどうしで上下に重なり合った状態で搬送される結果、検査コンベア上に搬送されたときに、被検査体3の検査箇所が検査装置による検査方向と整合しなくなって正しく検査されなくなる。
【0009】
その第3は、リング状鍛造製品である被検査体3を配列するための搬送用コンベア1からシュート5を介して検査用コンベアに移し替えるため、搬送用コンベア1からシュート5に被検査体3を載置する際に、図2の(b)に示すように、被検査体3のリングの幅面すなわちリング側面3bが小さい場合、被検査体3が搬送用コンベア1とシュート5の手前の整列用ローラー6との間隙から落下してしまい、被検査体3がシュート5に正しく載置されないこととなる。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、リング状鍛造製品である被検査体3を検査するために、被検査体3のリング端面3aを水平にコンベア面1aに当接載置して検査位置に供給するものとし、さらに、外径すなわちリング端面3aがφ120〜200mmで、かつ、幅すなわちリング側面3bが30〜100mmである狭いレンジから広いレンジの大きさにわたるリング状鍛造製品である被検査体3を1種類の搬送コンベア1でカバー搬送できる搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の手段では、第1および第2の課題に対処するために、第1の発明に係る手段では、搬送用コンベアのコンベア面を水平とした水平搬送域と上方へ傾斜した上昇搬送域と上部位置で水平とした上部水平搬送域と下方へ傾斜した被検査体落下域から形成し、搬送用コンベアの進行方向と直角方向にコンベア面と一体化したリブの複数個を配設し、該複数個のリブの各リブ間に1個の被検査体を載置可能に該リブを離間して配設し、各リブの高さを、被検査体のリング端面をコンベア面に当接して載置した場合被検査体をリブで係止し、検査体のリング側面をコンベア面に当接して載置した場合被検査体をリブから転げ落し、かつ、リング端面をコンベア面に当接して載置した場合リング端面で重ねた2個の被検査体の上側の被検査体をリブから落す、高さとし、被検査体落下域の斜め下方に搬送用コンベアから放出された被検査体を受けるシュートを配設したことを特徴とするリング状の被検査体の搬送装置からなるものとする。
【0012】
さらに第3の課題に対処するために、第2の発明に係る手段では、搬送用コンベアの進行方向と直角方向にコンベア面と一体化したリブは被検査体の受け止め用の前方に傾斜した傾斜面を形成した当て板を背面に有し、該当て板の傾斜面の傾斜角度を下方に傾斜した被検査体落下域でコンベア面にリング端面で当接した被検査体が滑り落ちる角度に設定していることを特徴とする請求項1に記載のリング状の被検査体の搬送装置からなるものとする。
【0013】
すなわち、この第2の発明に係る手段では、この前方のリブの上端から滑って斜め下方に落下する際に、前方のリブの上端を滑るようにするために、図2の(c)に示すように、リブ2の背後に背面を傾斜面とした当て板2aを固定して設けている。その結果、図2の(a)に示すように、被検査体3は搬送用コンベア1のコンベアローラー4の前方斜め下方に配置の整列用ローラー6、7間のシュート5に的確に落下され、図2の(b)に示すようにコンベアローラー4と整列用ローラー6間に転落することが防止されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記の手段としたことで、リング状製品である被検査体を検査用コンベアの検査装置の位置へ搬送するために用いる搬送コンベアにおいて、リング状製品の外径および幅のレンジの広い被検査体でありながら1種類の搬送コンベアにより、被検査体のリング端面を搬送コンベア上に載置し、被検査体のリング端面を搬送コンベア上に載置しないものや、仮に載置しても二重に積み上げたものは搬送ベルトから除外するもとし、被検査体のリング端面を搬送コンベア上に正しく載置されたもののみを検査用コンベアへ送給するためのシュートの位置に搬送し、搬送コンベアとシュートの間に誤って落下すること事態を無くして、的確に正しい姿勢で被検査体をシュートに落下させて載置することができ、本発明は優れた効果を奏する装置である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を表および図面を参照して説明する。リング状鍛造製品である外径であるリング端面3aがφ120〜200mm、幅であるリング側面3bが30〜100mmからなるリング状の被検査体3の形状を検査するために、被検査体3のリング端面3aを搬送コンベア1のコンベア面1aに当接して載置し、検査コンベア(図示しない)の検査位置に供給するために搬送コンベア1で検査コンベアへ送給するためのシュート5に搬送するものとした。この搬送のために、幅広のコンベアベルトを搬送コンベア1として準備し、搬送コンベア1のコンベア面1aを水平として被検査体3を載置する水平搬送域1bと、この搬送コンベア1に載置の被検査体3を上方へ傾斜した上昇搬送域1cで傾斜して上方に送給した。さらに上部位置で水平とした上部水平搬送域1dで被検査体3を水平に送った後、下方へ傾斜した被検査体落下域1eで被検査体3を落下させた。このように搬送コンベア1をコンベアローラー4で下方に回動しながら被検査体3を搬送するためには、搬送コンベア1の表面に複数個のかき上げ用かつ排出用のリブ2を互いに離間して設けた。このリブ2とリブ2の間に被試験体3の1個を載置するものとした。このかき上げ用のリブの高さは25mmとした。これは、搬送コンベア1にリング端面3bで被検査体3を載置するので、載置した被検査体3の高さとなる被検査体3の幅30〜100mmの中の最小値の30mmに基づき、被検査体3の重心の位置を考慮してリブ2の高さを30mmよりやや低い25mmとした。
【0016】
本願発明の装置では、以上のようにしたことで、移送中の搬送用コンベア1のコンベア面1aを水平搬送域1bの水平の0°から傾けて上昇搬送域1cの例えば75°の急傾斜面に変化させた場合、図1の(b)および(c)に示すように正しく載置されない状態となった被検査体3を、図2の(a)に示すように、傾斜した搬送用コンベア1のコンベア面1aから後方のリブ2を乗り越えて落下させて排除するものとした。この場合、図1の(b)ではリング状の被検査体3はそのリング側面3bをコンベア面1aに載置したものであり、図1の(c)ではリング状の被検査体3がリング端面3aでコンベア面1aに載置されているが、さらにその被検査体3の上に他の被検査体3がそれらのリング端面3aどうしを重ねて載置されているものである。
【0017】
さらに、図1の(a)に示すように、上記の搬送方向の搬送用コンベア1のコンベア面1aの角度を水平面に対して上昇搬送域1cの例えば75°の急傾斜面としたことで、搬送用コンベア1に正規の方向で載置された被検査体3であってもコンベア面1aからずり落ちないようにするために、搬送用コンベア1にかき上げ用のリブ2を設けた。この場合、本発明のリング状鍛造製品である被検査体3のリングの幅が30〜100mmである被検査体3を、正規方向であるリング端面3aをコンベア面1aに当接させて載置した場合に、コンベア面1aから滑り落ちないものとするために、かき上げ用としてのリブ2の高さを、上記したように25mmに設定した。このようにかき上げ用としてのリブ2の高さを設定しても、図1の(b)に示すように、被検査体3のリング側面3bをコンベア面1aに当接した向きにして載置した場合には、上記のコンベア面1aの角度が上昇搬送域1cの急傾斜、例えば75°となった場合には、リング状の被検査体3の重心の位置がリブ2の先端位置よりも外側となるために、リブ2の先端で転動してコンベア面1aから落下して除外される。さらに図1の(c)に示すように、複数のリング状の被検査体3がリング端面3aを上下に重ねてコンベア面1aに載置された場合には、搬送コンベア1と当接する直上の被検査体3を除いて、その上に位置する他の被検査体3は、その重心の位置が急傾斜のコンベア面1aによりかき上げ用のリブ2の先端位置よりも外側となるので転動落下してコンベア面1aから除外される。
【0018】
さらに、図2の(c)に示すように、搬送コンベア1の進行方向側である高さ25mmのリブ2の前壁をコンベア面1aに対して垂直とし、かつ、リブ2の後壁側に一体化した当て板2aの形状をコンベア面1a側の底面を長くし、リブ2の上面側を短くして前方に傾斜したテーパー面とした。このように形状化した当て板2aを有するリブ2の複数個を1個のリング状の被検査体3が入るように間隔を空けて搬送コンベア1に一体化して設けたことで、図2の(a)に見られるように、搬送用コンベア1に水平搬送域1bで載置されたリング状鍛造製品の被検査体3は上昇搬送域1dの急傾斜の75°の角度となったコンベア面1a上で、図1の(b)や(c)の正しくない状態にある場合、上記のとおり被検査体3はリブ2から外れてコンベア面1aから転動落下してコンベア面1aから除去される。次いで搬送コンベア1が搬送されてコンベア面1aが上部水平搬送域1dで再度水平の0°となって、図1の(a)に示すように、正規方向で載置されたリング状の被検査体3は搬送コンベア1により前方へ送給され、最前端のコンベアローラー4の周囲をリング状の被検査体3を載置した状態で下方に回動されて被検査体落下域1eとなる。このとき、被検査体3はコンベア面1aを前方に滑って移動して前方のリブ2の後面の当て板2aに当接する。その状態でコンベアローラー4により搬送コンベア1と共に下方へさらに回動される。この回動によりリブ2の後面の当て板2aの傾斜面の角度とリング状の被検査体3の下面の角度とが一致したとき、リング状の被検査体3は、図2の(a)に示すように、リブ2の上端を斜め前の下方へ滑ってシュート5の上に排出される。
【0019】
さらに、上記の手段において、シュート5の上に排出された被検査体3を正規方向に整列させるために、シュート5の両脇に整列用ローラー6および整列用ローラー7を設け、その一方の搬送コンベア1側の整列用ローラー6を正逆転可能な整列用ローラー6として搬送用コンベア1から排出された被検査体3の向きを変えてシュート5に正しく載置するものとしている。
【0020】
実施例として、図3に示す種々の断面形状をした16種の大きさおよび形状の異なるリング状鍛造製品のうち、表1に示すNo.1〜14の14種のタイプのリング状鍛造製品の被検査体3について、図2の(a)に示す搬送用コンベア1とシュート5による搬送テストを実施したところ、いずれのタイプのリング状鍛造製品も問題なく正規の載置状態として搬送コンベア1およびシュート5に送給できることが確認された。
【0021】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】搬送用コンベアにリング状鍛造製品の被検査体を載置した状態を示す図で、(a)は正規方向にリング端面で1個被検査体を載置した図、(b)はNG状態であるリング側面で載置した図、(c)は正規方向にリング端面で載置されているがNG状態で積層された図である。
【図2】搬送用コンベアに被検査体を載置して搬送する図で、(a)は全体図で、(b)はコンベアローラーと整列用ローラー間に被検査体が落下する状態を示し、(c)は当て板をリブの背後に有する図である。
【図3】各種のリング状鍛造製品を断面図で示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 搬送コンベア
1a コンベア面
1b 水平搬送域
1c 上昇搬送域
1d 上部水平搬送域
1e 被検査体落下域
2 リブ
2a 当て板
3 被検査体
3a リング端面
3b リング側面
4 コンベアローラー
5 シュート
6 可逆転可能の整列用ローラー
7 整列用ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用コンベアにリング状の被検査体(以下、「被検査体」という。)を載置して搬送する搬送装置において、搬送用コンベアのコンベア面を水平とした水平搬送域と上方へ傾斜した上昇搬送域と上部位置で水平とした上部水平搬送域と下方へ傾斜した被検査体落下域から形成し、搬送用コンベアの進行方向と直角方向にコンベア面と一体化したリブの複数個を配設し、該複数個のリブの各リブ間に1個の被検査体を載置可能に該リブを離間して配設し、各リブの高さを、被検査体のリング端面をコンベア面に当接して載置した場合、被検査体をリブで係止し、検査体のリング側面をコンベア面に当接して載置した場合、被検査体をリブから転げ落し、かつ、リング端面をコンベア面に当接して載置した場合リング端面で重ねた2個の被検査体の上側の被検査体をリブから落す、高さとし、被検査体落下域の斜め下方に搬送用コンベアから放出された被検査体を受けるシュートを配設したことを特徴とするリング状の被検査体の搬送装置。
【請求項2】
搬送用コンベアの進行方向と直角方向にコンベア面と一体化したリブは被検査体の受け止め用の前方に傾斜した傾斜面を形成した当て板を背面に有し、該当て板の傾斜面の傾斜角度を下方に傾斜した被検査体落下域でコンベア面にリング端面で当接した被検査体が滑り落ちる角度に設定していることを特徴とする請求項1に記載のリング状の被検査体の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−195506(P2010−195506A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40020(P2009−40020)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】