説明

リング部材の操作パネルへの取付構造

【課題】リング部材の操作パネルへの取付および取り外しが容易に行えて、高い装飾機能を有するリング部材の操作パネルへの取付構造を提供する。
【解決手段】円筒形状部2aを有するリング部材2の操作パネル1への取付構造において、操作パネル1に前記リング部材の取付中心軸を中心とする一端に広幅部1cを有する円弧形状溝1bを複数個設け、前記リング部材2の底面に前記広幅部1cを挿通可能な係止部を有するフック形状部2bを前記円弧形状溝1bに対応させて突出形成し、前記操作パネル1のリング部材取付面の裏面側と前記フック形状部2bの係止部との夫々に凸部を設け、前記リング部材のフック形状部の係止部を前記円弧形状溝の広幅部に挿通させた後、前記リング部材を回動させるときに前記凸部同士が互いに乗り越えることによりリング部材の回動抵抗に強弱感を与え、かつ、リング部材を回動させた状態で前記操作パネルの円弧形状溝の縁を前記リング部材の底面と前記リング部材のフック形状部の係止部とで挾持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子機器の操作パネルに係わり、特に、そのリング部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車載用オーディオ装置のボリュウムつまみ等操作パネルに取り付けられた回転つまみの周囲にはリング部材が配置されていた。このリング部材は装飾効果を高めるために合成樹脂部材に金属メッキするものが多く、金属メッキしたものはねじで締め付けると外面にクラックが入るためにねじ止めによる取付構造は採用できない。また、回転つまみの周囲はライティングするものが多く、光を透過しやすい合成樹脂の素材が多く用いられていた。
【0003】
そのようなリング部材の操作パネルへの取付構造の従来の例を図7により説明する。図7に示すリング部材12は円筒形状部12aの底面にボス12b、12b…が4本等間隔に立設されている。
【0004】
操作パネル10の背面側には採光板13が配置される。そして、操作パネル10の回転つまみ挿通穴10aの周囲に等間隔に4個設けられたボス挿通穴10b、10b…と採光板13のフランジ13a、13a…に夫々形成された穴13b、13b…とを操作パネル10の前面側に配置されたリング部材12のボス12b、12b…を挿通させ、ボス12b、12b…を採光板13のフランジ13a、13a…に熱溶着させてリング部材12と採光板13が操作パネル10に取り付けられる。
【0005】
図8に従来の操作パネルへの取付構造の他の例を示す。この例では、操作パネル14の回転つまみ挿通穴14aの周囲に両面テープ貼付面14bが形成されており、両面テープ貼付面14bとリング部材15の底面15aとで両面テープ16を挟むようにして両面テープ16によりリング部材15が操作パネル14に取り付けられる。
【0006】
図7に示す従来のリング部材の操作パネルへの取付構造では、組み立て時にリング部材15に傷が付く等して外観不良となった場合に、リング部材を交換することができず、操作パネルごと廃棄しなければならず、廃棄無駄が多くなり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
さらに、リング部材のボス12b、12b…が採光板13を挿通して採光板13の背後に配置されるプリント基板に近接するために、リング部材を金属メッキしている場合は、静電気対策のために板金部品を追加する必要があり、製造コストが高くなる要因となっていた。
【0008】
図8に示す従来のリング部材の操作パネルへの取付構造では、一旦取り付けたリング部材15を操作パネル14から外すことは容易ではなく、リング部材に傷が付いたときは、やはり操作パネルごと廃棄しなければならなかった。
【0009】
特開2008−47421号公報に開示された操作装置では、エンコーダ44を回転操作するノブ66の周囲にリング形状の操作部材33が配置される。操作部材33は押釦の機能および防水機能を備えるものであり、ゴム製である。
【0010】
この操作装置はリング形状部材がゴム製であるため、光透過性が劣り、装飾機能を十分に果たせないものであった。
【特許文献1】特開2008−47421号公報、段落0030、段落0034、図17〜図20、図25
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、リング部材の操作パネルへの取付および取り外しが容易に行えて、高い装飾機能を有するリング部材の操作パネルへの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の操作パネルへのリング部材の取付構造は、円筒形状部を有するリング部材の操作パネルへの取付構造において、操作パネルに前記リング部材の取付中心軸を中心とする一端に広幅部を有する円弧形状溝を複数個設け、前記リング部材の底面に前記広幅部を挿通可能な係止部を有するフック形状部を前記円弧形状溝に対応させて突出形成し、前記操作パネルのリング部材取付面の裏面側と前記フック形状部の係止部との夫々に凸部を設け、前記リング部材のフック形状部の係止部を前記円弧形状溝の広幅部に挿通させた後、前記リング部材を回動させるときに前記凸部同士が互いに乗り越えることによりリング部材の回動抵抗に強弱感を与え、かつ、リング部材を回動させた状態で前記操作パネルの円弧形状溝の縁を前記リング部材の底面と前記リング部材のフック形状部の係止部とで挾持させる挾持させるものである。
【0013】
また、前記操作パネルへのリング部材の取付構造において、前記リング部材を合成樹脂部材に金属メッキを施して形成したものである。
【0014】
また、前記各操作パネルへのリング部材の取付構造において、前記リング部材を操作パネルに取り付けられる回転つまみの周囲に配置される装飾部品としたものである。
【0015】
また、前記各操作パネルへのリング部材の取付構造において、前記操作パネルの前記リング部材取付面と反対側の面に採光板を締着し、前記採光板により前記リング部材が照明されるものである。
【0016】
また、前記操作パネルへのリング部材の取付構造において、前記採光板に凸部を設け、前記凸部により前記リング部材の取付時の回動と反対方向の回動が規制されると共に前記凸部と前記係止部との頂面に夫々C面またはR面を設け、前記C面またはR面により前記リング部材の取付時の回動が案内されるものである。
【0017】
また、同操作パネルへのリング部材の取付構造において、前記採光板に凹部を設け、前記凹部により前記リング部材の取付時の回動と反対方向の回動が規制されるものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の操作パネルへの取付構造によれば、リング部材の操作パネルへの取付および取り外しが容易に行えるため、組み立て不良が発生しにくく製造コストが安くなる。また、合成樹脂製のリング部材を使用するために、装飾効果が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1はこの発明の実施例1であるリング部材の操作パネルへの取付構造を斜め前方から見た分解斜視図、図2は同リング部材の操作パネルへの取付構造を斜め後方から見た分解斜視図、図3は同リング部材の操作パネルへの取付構造を示す断面図、図4(a)は同リング部材の操作パネルへの取付構造の円周方向断面を示す部分断面図、図4(b)は図4(a)おけるA−A断面を示す部分断面図である。
【0021】
図1および図2に示す操作パネル1は図示していない車載用音響機器の筐体の前面に配置されるが図1および図2では操作パネル1の部分が示されている。操作パネル1の前面側には、回転つまみ挿通穴1aの周囲に合成樹脂製のリング部材2が取付けられ、操作パネル1の背面側には、リング部材2の背後に位置する図示していないプリント基板に実装されたLED等の光源から放射される光をリング部材2に導く採光板3が取付けられる。図3にリング部材2と採光板3が操作パネル1に取付けられた状態が示されている。
【0022】
リング部材2の円筒形状部2aの底面には図4にも詳しく示すフック形状部2b、2bが対称位置2箇所に立設されている。フック形状部2b、2bは断面略逆L字形状であり、上部に係止部2cが横方向に延びている。係止部2cの下面には凸部2dが形成され、上面先端部にC面(チャンファー)2eが形成されている。
【0023】
操作パネル1の前記フック形状部2b、2bに対応する位置に広幅部1cを有する円弧形状溝1b、1bが設けられている。操作パネル1にはさらに円弧形状溝1bの近傍に凸部1e、1eが形成されている。
【0024】
採光板3はねじ4を挿通させる穴3bを有するフランジ3aが2箇所に設けられておりさらにリング部材2のフック形状部2bの係止部2cと近接する対称位置の2箇所に凸部3c、3cが設けられている。凸部3cの上面にはC面3dが形成されている。
【0025】
次に、リング部材2および採光板3の操作パネル1への取付け方法を説明する。先ず、リング部材2のフック形状部2bの係止部2c、2cを操作パネル1の円弧形状溝1bの広幅部1c、1cに挿通させた後、リング部材2を図1および図2に矢印で示す方向に回動させる。
【0026】
このとき、リング部材2は図4に矢印で示す方向に回動するが、その途中でリング部材2の凸部2dが操作パネル1の凸部1eを乗り越える。これによりリング部材2の回動操作にクリック感が生じ作業者がリング部材2を定位置まで回動させたことが判り、また、後で説明するように、採光板3によりリング部材2を固定する前の組立て作業中にリング部材2に物が当たってもリング部材2が操作パネル1から容易には外れない。
【0027】
リング部材2が操作パネル1に取付けられた後、採光板3の穴3b、3bを挿通させたねじ4、4を操作パネル1のボス1d、1dに設けられたねじ穴にねじ込むことにより採光板3が操作パネル1に取付けられる。このとき、採光板3のC面3dとリング部材2のC面2eとが当接して採光板3が回動方向に案内され、さらに、C面3dとC面2eが外れると、採光板3が操作パネル1に向けて押し込まれるので組立てが行いやすい。
【0028】
採光板3が操作パネル1に取付けられた状態では、リング部材2のフック形状部2bと採光板3の凸部3cが当接して、リング部材2の図4の矢印と反対方向の動きが規制されるので、リング部材2が操作パネル1に強固に固定される。
【0029】
このように、操作パネル1に取付けられたリング部材2は、採光板3を締着したねじ4、4を外して操作パネル1から除き、リング部材2を取付け時と逆方向に回動させて、円弧形状溝1bの広幅部1c、1cからリング部材2係止部2c、2cを抜き取ることにより操作パネル1から容易に外すことができる。
【0030】
このように、リング部材2を操作パネル1から容易に外すことができるので、組立て後にリング部材2の不良が見つかったときにも、操作パネル1ごと取り替える必要がなく、製造コストが削減される。また、製品を廃棄するときの分別も容易である。
【0031】
リング部材2は合成樹脂性であるため、装飾の効果や照明の効果を高めることができる。リング部材2は装飾効果を高めるために金属メッキすることが多いが、その場合にもリング部材2が採光板3を挿通してプリント基板と近接することがないので、静電気対策のために板金部品を追加する必要がない。
【実施例2】
【0032】
図5はこの発明の実施例2であるリング部材の操作パネルへの取付構造を斜め前方から見た分解斜視図、図6は同操作パネルへの取付構造を示す部分断面図である。この例で用いられる採光板5は、ねじ4を挿通させる穴5bを有するフランジ5aが2箇所に設けられておりさらにリング部材2のフック形状部2bの係止部2cと近接する対称位置の2箇所に凹部5c、5cが設けられている。凹部5cの上面の一方の縁にはC面5dが形成されている。
【0033】
この例では実施例1と同様の操作パネル1とリング部材2が用いられる。そして、実施例1と同様の方法で操作パネル1にリング部材2と採光板5が組み付けられるが、そのとき、凹部5cのC面5dとフック形状部2bのC面2eとの当接により採光板5の回動がガイドされる。
【0034】
図6に操作パネル1にリング部材2と採光板5が組み付けられた状態を示している。この例では実施例1と同様の効果を奏するが、さらに、採光板5が操作パネル1およびリング部材2に近接するので、リング部材2の照明効果が高められる。
【0035】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、この発明を回転つまみ以外の操作パネル1に配置される部材の装飾に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施例1であるリング部材の操作パネルへの取付構造を斜め前方から見た分解斜視図である。
【図2】同リング部材の操作パネルへの取付構造を斜め後方から見た分解斜視図である。
【図3】同リング部材の操作パネルへの取付構造を示す断面図である。
【図4】図4(a)は同リング部材の操作パネルへの取付構造の円周方向断面を示す部分断面図、図4(b)は図4(a)におけるA−A断面を示す部分断面図である。
【図5】この発明の実施例2であるリング部材の操作パネルへの取付構造を斜め前方から見た分解斜視図である。
【図6】同操作パネルへの取付構造を示す部分断面図である。
【図7】従来のリング部材の操作パネルへの取付構造の例を斜め前方から見た分解斜視図である。
【図8】従来のリング部材の操作パネルへの取付構造の他の例を斜め前方から見た分解斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 操作パネル、1a 回転つまみ挿通穴、1b 円弧形状溝、1c 広幅部
1d ボス、1e 凸部
2 リング部材、2a 円筒形状部、2b フック形状部、2c 係止部、2d 凸部、2e C面
3 採光板、3a フランジ、3b 穴、3c 凸部、3d C面
4 ねじ
5 採光板、5a フランジ、5b 穴、5c 凹部、5d C面
10 操作パネル、10a 回転つまみ挿通穴、10b ボス挿通穴
12 リング部材、12a 円筒形状部、12b ボス
13 採光板、13a フランジ、13b 穴
14 操作パネル、14a 回転つまみ挿通穴、14b両面テープ貼付面
15 リング部材、15a 底面
16両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状部を有するリング部材の操作パネルへの取付構造において、操作パネルに前記リング部材の取付中心軸を中心とする一端に広幅部を有する円弧形状溝を複数個設け、前記リング部材の底面に前記広幅部を挿通可能な係止部を有するフック形状部を前記円弧形状溝に対応させて突出形成し、前記操作パネルのリング部材取付面の裏面側と前記フックの係止部との夫々に凸部を設け、前記リング部材のフック形状部の係止部を前記円弧形状溝の広幅部に挿通させた後、前記リング部材を回動させるときに前記凸部同士が互いに乗り越えることによりリング部材の回動抵抗に強弱感を与え、かつ、リング部材を回動させた状態で前記操作パネルの円弧形状溝の縁を前記リング部材の底面と前記リング部材のフック形状部の係止部とで挾持させることを特徴とする操作パネルへのリング部材の取付構造。
【請求項2】
前記リング部材は合成樹脂部材に金属メッキを施して形成された請求項1の操作パネルへのリング部材の取付構造。
【請求項3】
前記リング部材が操作パネルに取り付けられる回転つまみの周囲に配置される装飾部品である請求項1または2の操作パネルへのリング部材の取付構造。
【請求項4】
前記操作パネルの前記リング部材取付面と反対側の面に採光板を締着し、前記採光板により前記リング部材が照明される請求項1から3のいずれかに記載した操作パネルへのリング部材の取付構造。
【請求項5】
前記採光板に凸部を設け、前記凸部により前記リング部材の取付時の回動と反対方向の回動が規制されると共に前記凸部と前記係止部との頂面に夫々C面またはR面を設け、前記C面またはR面により前記リング部材の取付時の回動が案内される請求項4の操作パネルへのリング部材の取付構造。
【請求項6】
前記採光板に凹部を設け、前記凹部により前記リング部材の取付時の回動と反対方向の回動が規制される請求項4の操作パネルへのリング部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−34107(P2010−34107A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191755(P2008−191755)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】