説明

リン脂質で安定された分散し得るミクロ粒子

【課題】水不溶性の薬剤粒子を凝集しない及び/または塊になっていない状態で放出する治療投薬形態の提供。
【解決手段】ナノメーターまたはマイクロメーターの粒子固体として存在する水不溶性化合物を含む固体の乾燥した投薬形態であって、該粒子固体は、少なくとも1種のリン脂質の存在によって安定化されており、粒子固体は増量用マトリックス全体に分散されている投薬形態で、水性環境に導入されたときには、増量用マトリックスは実質的に完全に2分未満で溶解し、それによって水不溶性の粒子固体を凝集しない及び/または塊になっていない状態で放出する投薬形態。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質剤または該剤の組合せを有する、約0.05〜10マイクロメータのサイズの、水不溶性かまたは溶解性の乏しい薬剤粒子を含む組成物に関し、剤のうちの少なくとも1つは表面上に吸着されたリン脂質である、組成物に関する。この組成物は、凍結乾燥でき、かつ水性環境と接触したときに表面が被覆された薬剤粒子のその後の放出を許容するために十分な量で存在するマトリックス形成剤を含む。小さな表面被覆粒子は場合により、マイクロ結晶(米国特許第5091187号及び5091188号)、マイクロ粒子(WO98/07414号)、ナノ粒子(米国特許第5145684及び5302401号及び米国特許第5145684号)と呼ばれる。
【0002】
本発明はさらに、表面改質剤または剤の組合せを有する、水不溶性または溶解性の乏しい薬剤粒子の乾燥組成物を製造する方法を提供する。表面改質剤のうちの少なくとも1種は粒子及びマトリックス形成剤の表面上に吸着されたリン脂質である。マトリックス形成剤は、凍結乾燥のように凍結及び乾燥でき、かつ水性環境と接触したときに表面が被覆された薬剤粒子のその後の放出を許容するために十分な量で存在する。本方法は、リン脂質で被覆された粒子をマトリックス形成剤と、リン脂質被覆薬剤が凍結−乾燥されることを許容するために十分な時間及び条件下で、接触させることを含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
水不溶性の化合物の乏しい生物学的利用能は、医薬及び診断産業において長く問題でありつづけてきた。1重量%より大きい水溶解性を有する化合物は、溶解に関する生物学的利用能及び吸収の問題を示さないと期待されるが、多くの新しい化学物質はこの値よりもはるかに低い溶解性を示す(Pharmaceutical Dosage Forms - Tablets, Vol 1, page 13, Edited by H.Lieberman, Marcel Dekker, Inc, 1980を参照)。多くの高度に有用な化合物が、乏しい水溶性ゆえに、開発から落とされたり、また他の状況では望ましくない方法で配合されたりする。非常に多くのこれらの化合物は水性媒質中で不安定であり、そしていくつかのものは油への溶解性を必要とし、これは非経口投与での投薬にしばしば不快感または使用に痛みを伴わせる。このことは患者が服薬遵守し難いことにつながり、そして不必要な入院による治療における全体的な過剰な経費の可能性につながる。したがって、最も単純な可能な形態で投与できるこれらの水不溶性化合物の製剤、すなわち迅速に分散する固体投与形態を開発することが望ましい。
【0004】
迅速に分散する固体投与薬剤を製造するための多くの方法が存在する。この問題への伝統的なアプローチは、混合技術及び/または顆粒化技術を使用した、生物学的に活性な成分の医薬的に受容できる賦形剤による分散を含む。本技術において既知の具体的な機能性賦形剤(例えば、米国特許第5178878号によって教示される発泡性の崩壊剤)が、薬剤の放出を助けるために使用できる。
【0005】
薬剤を放出させるための、固体投与形態の崩壊を改善する方法として、凍結乾燥技術が、米国特許第4371516号、4758598号、5272137号に記述されるように、以前から使用されている。さらに、スプレードライ技術も類似の目的のために使用され、例えば米国特許第5776491号がポリマー成分、可溶化成分及びスプレードライの際のマトリックス形成組成物としての増量剤の使用を記述している。この粒子のマトリックスは、水性環境へ導入されたときに迅速に崩壊して、薬剤を放出する。これらのアプローチは迅速に薬剤を放出する固体投与形態をつくるが、それらは水に不溶性または溶解性の乏しい薬剤を使用すると多数の不利を被る。これらの場合には、水不溶性化合物のサスペンションは凍結乾燥またはスプレードライ法の完了前に沈殿する傾向があり、これは粒子の凝集及び不均質な乾燥投与形態の可能性に通じる。さらに、デキストラン類に典型的に例示される多糖類の大きなマクロ分子は、マトリックス形成剤として使用されたときに、リポソームの、再構成された、凍結乾燥サスペンション内で凝集する傾向がある(Miyajima, 1997)。従って、多糖類マトリックス形成剤の適切な選択及び採用は定義しにくいままであり、我々は、それが水不溶性粒子の表面の物理/化学的な性質につながると考えている。
【0006】
また、水不溶性化合物のサスペンションは、オストワルド熟成の過程の結果としての望まれない粒子サイズの成長を被る。この過程を縮小するために、水性環境中に懸濁されたこれらのミクロン化された物質の安定化は、本技術における当業者に既知の種々の医薬的に受容できる賦形剤を使用して達成できる。そのようなアプローチは例えば、一般的に譲渡された米国特許第5631023号、5302401号、及びEP0193208号中に見いだされる。
【0007】
例えば、米国特許第5631023号は、水不溶性薬剤粒子が分散した、懸濁及びフロキュレーション剤としてのキサンタンガム最大0.05重量%を、ゼラチンと共に使用した、迅速に溶解する錠剤(10秒)を製造する方法を開示する。マンニトールが好ましい凍結保護物質として使用される。このサスペンションはモールド内で凍結乾燥されて、固体投与形態をつくる。
【0008】
米国特許第5302401号は、凍結乾燥中の粒子サイズの成長を減じるための方法を記述する。これは、表面上に吸着された評件改質剤を有する粒子を、ナノ粒子−凍結保護剤組成物を形成するために十分な量で存在する凍結保護物質と共に含む組成物を開示する。好ましい表面改質剤はポリビニルピロリドンであり、好ましい凍結保護剤は蔗糖のような炭水化物である。また、表面上に吸着された表面改質剤及びこれと結合する凍結保護剤とを有する粒子を製造する方法も記述される。この特許は具体的に、5%のDanazolと、1.5%のPVP及び凍結保護剤としての蔗糖(2%)またはマンニトール(2%)について述べる。種々の凍結保護剤が入手でき、そして凍結乾燥中の活性化剤を保護するために適切に機能するが、得られた固体生成物はしばしば水性媒質中に再分散させるのが困難である。
【0009】
EP 0193208号は、凝集無しに再構成させるための、試薬をコートしたラテックス粒子を凍結乾燥する方法を記述し、アミノ酸のような双性イオン緩衝剤、PVP若しくは牛アルブミンのような安定化剤及びDextran T10または他の多糖類のような凍結保護剤を組み込む必要性を議論する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の概要
本発明は、賦形剤の特定の選択及び主たる粒子を回収するために必要な方法論を用いる、ミクロン化粒子の分散性における改善に関する。このアプローチにおいて固有のものは、水不溶性または溶解性の乏しい化合物のミクロンまたは準ミクロンサイズの粒子の、安定な水性サスペンションをつくる能力である。本発明において要求されるこれらの粒子は、米国特許第5091187号、5091188号並びにWO98/07414号に開示される方法によって製造でき、これらの開示は参照によってここに組み込まれる。要約すると、水不溶性または溶解性の乏しい化合物が、その表面に吸着された表面改質剤または表面改質剤の組合せの存在下に水性媒質中に分散される。表面改質剤の少なくと1つは表面に吸着されたリン脂質である。粒子の破砕は、前述のサスペンションが、超音波処理、ミル処理、マイクロ流動化、及び反溶媒及び溶媒沈殿を含む(これらに限定されない)本技術において既知の種々の方法を使用した処理の結果としての応力にかけられるときに起こる。このように製造された粒子をマイクロ粒子とよび、これはナノメータ〜マイクロメーターの名目上の直径を有する、不規則な、非球形の、または球形の固体粒子(その上には少なくとも1種の表面改質剤が吸着されている)と定義される。
【0011】
本発明に従い、このように製造されたマイクロ粒子サスペンションはさらに、表面改質剤(1種または多種)及び/またはマトリックス形成剤(1種または多種)と混合され、これらは、表面をコートされた薬剤粒子の凍結乾燥及びその後に水性環境と接触したときの放出を許容するために十分な量で存在する。これらの成分の選択は乾燥の際にマイクロ粒子の凝集する傾向を最小化するために役立つ。そのような凝集物は、不可逆の格子を生じる相互作用する粒子に利用できる、接触の程度を助長する非常に高い粒子の表面積によって、再分散するのが非常に困難である。
【0012】
薬剤の小さな粒子サイズはしばしば、表面積、生物学的利用能、及び溶解の必要性を最大化するために薬剤配合物の開発に必要である。上記の方法における適切なマトリックス形成剤の導入は、粒子の凝集または粒子の成長の傾向を抑えるために、凍結乾燥工程において及び得られた凍結乾燥生成物中において、リン脂質でコートされた薬剤粒子を安定化するために役立つ。
【0013】
本発明の説明
本発明は、水不溶性化合物のための固体投与形態を迅速に崩壊することを提供し、これは1種以上の表面改質剤(リン脂質を含むがこれに限定されない)で安定化された主たる粒子を放出する。いくつかの好ましい水不溶性薬剤はの例は、抗真菌剤、免疫抑制若しくは免疫賦活剤、抗ウイルス剤、抗新生物剤、鎮痛剤、または抗炎症剤、抗生剤、抗癲癇剤、麻酔剤、催眠剤、鎮静剤、抗精神病剤、神経弛緩剤、こう鬱剤、不安緩解剤、抗痙攣剤、拮抗剤、神経ブロッキング剤、抗コリン作用薬、コリン作用薬、抗ムスカリン剤、ムスカリン剤、抗アドレナリン剤、及び抗律動剤、抗高血圧剤、ホルモン及び栄養剤を含む。これらの薬剤の詳細な説明は、Remington's Pharmaceutical Science. 18th Edition, 1990, Mack Publishing Co., PA.に見いだせる。水不溶性の成分の水性サスペンション内の濃度は0.1〜60重量%、好ましくは5〜30重量%で変化できる。
【0014】
この水不溶性化合物は、最初に1種以上の表面安定化剤の存在下に調製され、この安定化剤の少なくとも1種はリン脂質である。リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホシファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リソホスホリピッド、卵または大豆リン脂質またはこれらの混合物を含む、いずれの天然または合成のリン脂質でもよい。リン脂質は、加塩、脱塩され、水素化され、若しくは部分的に水素化され、または天然か、半合成若しくは合成であることができる。水性サスペンション中のリン脂質の濃度は0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜20重量%に変化できる。
【0015】
いくつかの第2のそして追加の表面改質剤は、(a)天然界面活性剤、例えばカゼイン、ゼラチン、天然リン脂質、トラガカント、ワックス、腸溶樹脂、パラフィン、アカシア、ゼラチン及びコレステロール、(b)非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、polozamers、poloxamines、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶質セルロース、合成リン脂質、及び(c)アニオン性界面活性剤、例えばラウリン酸カリウム、トリエタノールアミンステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンサルフェート、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、負に荷電したリン脂質(ホルファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸及びそれらの塩)、及び負に荷電したグリセリルエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカルボキシメチルセルロースカルシウム、(d)カチオン性界面活性剤、例えば第4アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、及びラウリルジメチルベンジル−塩化アンモニウム、(e)コロイド状クレー、例えばベントナイト及びビーガム(veegum)を含む。これらの界面活性剤の詳細な説明は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, 1990, Mack Publishng Co., PA及びTheory and Practice of Industrial Pharmacy, Lachman et al 1986中に見いだせる。追加の界面活性剤の水性サスペンション中の濃度は、0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜20重量%に変化できる。これらの界面活性剤は、性質、濃度及び界面活性剤の数に依存して、配合中に最初に加えられるか、または凍結乾燥前に処理後に加えられるか、または両方を組み合わせて加えられ得る。
【0016】
得られた粗い分散物は主として、剪断、押し出し、攪拌、及びまたはキャビテーションを含む伝統的な混合方法を使用して、水性媒質全体に分布させることが意図される。この粗い分散物は、本開示のためにプレミックスと呼ばれる。
【0017】
このプレミックスは次に、超音波処理、ミル処理、均質化、マイクロ流動化、及び非溶媒及び溶媒沈殿を含むがこれらに限定されない、粒子の破砕を促進する処理にふされる。磨滅時間は変更でき、そして薬剤の物理・化学特性、界面活性剤の物理・化学的特性、及び選択した磨滅方法に依存する。一例として、高圧均質化法(APV Gaulin E15、Avestin C50またはMFIC Microfluidizer M110EHのような装置の使用によって典型化される)が使用できる。この方法において、プレミックス内の粒子は、薬剤及び/または界面活性剤の安定性を有意に犠牲にしない、温度及び圧力で、サイズにおいて減少される。約2000〜30000psi、好ましくは約5000〜20000psi、さらに好ましくは約10000〜18000psiの圧力、約2〜65℃、さらに好ましくは10〜45℃の操作温度が適切である。処理流体は、流体混合物の全体が離散均質化にふされてミクロンまたは準ミクロン粒子を生じることを確実にするような方法で、均質化室全体に循環される。得られた懸濁治療剤の平均体積加重粒子サイズは、レーザー光回折に基づく装置Malvern Maetersizer Microplusを使用して、0.05〜10μm、好ましくは0.2〜5μmと測定される。
【0018】
得られた、1種以上の表面改質剤によって安定化されたマイクロ粒子の均質なサスペンションは次に、マトリックス形成性の増量剤及び/または放出剤(乾燥または水性溶液として)と混合され、その後乾燥される。増量またはマトリックス形成剤は、薬剤が埋め込まれるかまたは保持される塊を与える。放出剤は、それが水性媒質と接触したときにマトリックスの崩壊を助ける。増量/放出剤は、乾燥したときに担体マトリックスをつくるように選択され、この担体マトリックスは、迅速に分散し得る錠剤を生じ、これは水性媒質中での再構成時に主たる粒子を放出する。マトリックス形成/放出剤の例は、(a)マンニトール、トレハロース、乳糖、蔗糖、ソルビトール、マルトースのような糖類、多糖類、(b)グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールのような保湿剤、(c)ゼラチン、デキストラン、澱粉、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー、アクリレートのような天然または合成ポリマー、(d)コロイド状シリカ、燐酸カルシウムのような無機添加剤、及び(e)微結晶セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースのようなセルロースポリマーを含む。マトリックス形成剤は、治療剤(配合物)のミクロン化した粒子の製造前に、または凍結乾燥前のマイクロ粒子の均質サスペンションに加えられる。マトリックス形成剤の水性サスペンション中の濃度は、0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜50重量%、そしてさらに好ましくは1〜20重量%に変わり得る。
【0019】
調製した水性サスペンションは、本技術において周知のいくつかの方法を使用して乾燥できる。スプレードライ、スプレーコーティング及び凍結乾燥は最も慣用の方法のものの1つである。表1に引用した例は、全て、乾燥方法として凍結乾燥を使用するが、いかなる方法においても限定することを意図しない。凍結乾燥の好ましい方法は、水性サスペンション媒質から減圧下に凍結水を昇華させることを含む方法による。このサスペンションの凍結乾燥は、ガラスバイアル、オープントレイ、単位投与形態モールドのような適切な容器内で実施され、または担体マトリックスへのその場でのスプレーによって実施され得る。凍結乾燥法の例として、マトリックス形成剤を含むマイクロ粒子の調製済サスペンションは、ステンレス鋼トレー内に散布され、このトレーは定格圧力密封室内で5℃で保持される予備平衡された棚内に置かれる。調製されたサスペンションは、次に5℃/分で、−50℃まで、全てのサスペンション媒質が完全に固化するまで温度低下にふされる。この手順は、異なる境界(棚−トレー−液体)間のエネルギー損失による、中等の温度勾配のみを用いる。一般に、希釈水性サスペンションの1cmの層を凍結するための典型的な時間は−50℃の温度で40〜90分である。凍結乾燥室の外側の凍結は、(a)冷却したプレート上での凍結、例えばトレー内またはドラムクーラー上での小粒子の形態、(b)液体窒素またはいくつかの他の冷却液体内への滴下、(c)液体CO2または液体窒素と共に同時スプレー、または(d)冷空気の循環による凍結によって達成し得る。
【0020】
別々の冷却が、連続した凍結乾燥の性能に必要である。溶液を液体窒素内に滴下することによって小さなペレットをつくる装置は、Cryopel(R)法(Buchmuller and Weyermans, 1990) として商業的に入手できる。凍結乾燥室の内側の直接凍結は、もし生成物が無菌条件下の操作を要求する場合(注射可能な乾燥製剤の調製においてそうであり得る)に、有利である。
【0021】
そのように得られた固体に調製されたサスペンションを、この温度に2時間、すべての結晶化が完了することを確実にするために、保持する。室内の圧力は、ほぼ5mmHgの圧力、及び好ましくは約0.1mmHgへ減じられる。凍結水の昇華は、凍結乾燥装置の棚温度を約−30℃〜−10℃に上げ、材料を主乾燥工程が完了するまで約20時間この温度に保持することによって達成される。乾燥時間は、多数の因子に依存し、このいくつかはかなり一定であり、氷の昇華熱、凍結サスペンションの熱伝導率、及び質量輸送係数として近似される。室内の温度または圧力のような他の因子はかなり変化し得る。棚の温度はさらに上げられ、試料の組成に従って必要とみなされる二次乾燥が実施される。
【0022】
室を凍結乾燥サイクルから周囲条件に戻すことによって、物質を取り出す。得られた乾燥物質を粗いミル操作を通して、取り扱いまたは望まれる固体投与形態を完成するために必要な他の賦形剤とブレンドする操作を容易化する。これらは、圧縮のための錠剤化用助剤、硬質ゼラチンカプセル化のための滑り剤、または乾燥粉末の吸入器を含み得る。
【0023】
本発明において使用されるマトリックス形成剤は、水性環境と接触した際に溶解または分散しなければならず、そしてリン脂質でコートした治療剤粒子を放出しなければならない。再構成の際、生成物は前もって乾燥されたサスペンションと同じ程度の分散性を有するサスペンションに戻り、これは好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、そして理想的には1重量%以下の凝集した主粒子が粒子サイズ測定及び本技術において既知の顕微鏡法によって示される。驚くことに、本発明に従って調製された凍結乾燥したサスペンションは、長期間、高温高湿においてさえ、再構成の際の再分散性の特性を失うことなく貯蔵でき、従って本質的に粒子の凝集がない。実施例6〜10の組成に従って調製された凍結乾燥サスペンションは、室温で少なくとも60日間貯蔵でき、これは医薬的な投与形態の寿命と一致する長期間の貯蔵の可能性を示す。
【0024】
本発明に従って製造された固体投与物質は、迅速に分散する特性を有すると定義される。この特性は、本発明から得られた凍結乾燥ケークの、投与形態のインビボ系への投与の際に起こるような水性媒質へさらされたときの、完全な崩壊のために必要な時間と決定される。崩壊時間は、37℃における崩壊時間を観察するようなインビトロ試験において実施することによって測定できる。投与物質は、水中に、強制的な攪拌無しに浸され、物質が観察によって実質的に分散するために必要な時間が記録される。「迅速」の定義において、崩壊時間は2分未満、好ましくは30秒未満、最も好ましくは10秒未満であると期待される。
【0025】
活性成分の溶解または放出の速度は、薬剤及びマイクロ粒子組成物の性質によって影響され、それは迅速(5〜60秒)または中等(15分以内に75%崩壊の程度)または持続放出であり得る。
【0026】
いくつかの場合には、視覚的な顕微鏡観察または走査電子顕微鏡写真が粒子の凝集の存在を示すが、これらの粒子はサイズにおいて小さく、そしてオリジナルの予備凍結乾燥された懸濁粒子の凝集体からなる。これらの凝集体は、短期間の超音波処理または物理的攪拌などのような低レベルのエネルギーによって容易に分散され、本発明の鍵となる特徴、すなわち粒子サイズの成長の防止及び不可逆の塊化及び/または凝集の防止を示す。
【実施例】
【0027】
実施例
本発明の、迅速に分散する固体の薬剤が、表1にまとめた実施例によって例示される。この表に記された組成物は乾燥生成物の重量基準の%によって示される。増量剤が、均質化前または乾燥工程前にサスペンションに加えられ得るとが理解される。
【0028】
【表1】



【0029】
表中略号及び注記:
CyA:シクロスポリン、E80:Lipoid E80、FEN:Fenofibrate、ITR:イトラコナゾール、MAN:マンニトール、NaDeox:ナトリウムデオキシコレート、P100H:Phospholipon 100H、PVP17:ポリビニルピロリドン、SOR:ソルビトール、SUC:蔗糖、TRE:トレハロース。
【0030】
上記表に示される配合物1及び2は、再構成され得る粒子が、これらの組成物から得ることができることを示し、これは比較的大きなサイズの粒状物(ほぼ10ミクロン)が凝集からの問題をほとんど提起しないことを示す。これらの比較的大きな粒子は容易に、伝統的な粒子破壊技術によって達成される。しかし、生物学的利用能に認識し得るように影響するために、サイズが小さい粒子が要求される。これらの粒状物は、米国特許第5091187号、5091188号に記述される手順を使用してマイクロ結晶として、WO98/07414によってマイクロ粒子として、そして米国特許第5145684号、米国特許第5302401号及び米国特許第5145684号によってナノ結晶として得られる。これらの組成物から生じた粒子が、オリジナルのサスペンション粒子を回収するための特定の賦形剤の選択及び処理条件を要求する。実施例3〜5は、ある種のマイクロ粒子組成物が、乳糖またはPVP17のような伝統的な凍結乾燥用保護剤が米国特許第5302401号のように使用されたときに、うまく再構成されないことを示す。これらの実施例において、主粒子に付着して大きな凝集体が形成される。
【0031】
実施例6〜10は、オリジナルのサスペンション粒子が容易に迅速に、過剰な攪拌を必要とせずに乾燥粉末から再構成され、回収されることを示す。これらの実施例は、配合物8中のトレハロース及び配合物10中のマンニトールのような、凍結保護剤及び保湿剤としても働く増量剤の注意深い選択を必要とする。
【0032】
かわりに、単一のマトリックス形成増量剤が適していないときには、例えば蔗糖の場合のように、組成物は、蔗糖、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、または乳糖のような医薬的に受容できる薬剤から選択される増量剤の混合物を含み得る。実施例の配合物6、7及び9は、このタイプの組成物を示す。fenofibrateの配合物6の体積加重平均粒子サイズ分布プロファイルを、それぞれ凍結乾燥/再構成工程の前と後の図6及び7に示す。この実施例は、凍結乾燥及び再構成後の粒子サイズ分布における変化を示さない理想的なシナリオを示す。
【0033】
いかなる特別な理論的説明を提案するものではないが、増量剤混合物の成分が、凍結乾燥/再構成の際の、凍結保護、保湿作用、分散性等の1以上の機構によって、粒子サイズの増加を禁止するために役立つのではないだろうか。
【0034】
これらの基準は、表面安定化剤の1つとしてリン脂質を含む乾燥投与形態の再構成につづく非凝集粒子サスペンションを回収しようと試みる際に驚くべき重要な考慮点である。
【0035】
上述の実施例の組成物に加えて、本発明の配合物はさらに、適切な量のpH緩衝塩、及びpH調節剤、例えば水酸化ナトリウム及び/または医薬的に受容できる酸も含み得る。4未満のpH及び10より高いpHでリン脂質分子が激しい加水分解をうけることは、リン脂質の化学における当業者に既知である。従って、サスペンションのpHは通常、均質化前にこの範囲内に調節される。もし必要であれば、pHは乾燥工程前に再調節できる。
【0036】
本発明と実施例を、現在最も実用的で好ましい態様と考えられるものと組み合わせて説明してきたが、本発明は開示した態様に限定されず、反対に、種々の修正及び均等なアレンジが特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
迅速に分散する固体の治療投薬形態であって、1種以上の表面改質剤によって表面安定化された、ナノメーターまたはマイクロメーターの粒子固体として存在する水不溶性化合物を含み、該表面改質剤の少なくとも1種はリン脂質であり得、該粒子固体は該増量用マトリックス全体に分散されており、該増量用マトリックスは乾燥されたときに治療投薬形態を形成する放出剤を所望によりさらに含み、投薬形態が水性環境に導入されたときに増量用/放出性のマトリックスは実質的に完全に2分未満で崩壊し、それによって凝集していない及び/または塊状になっていない状態の水不溶性の粒子固体を放出する、前記の治療投薬形態。
【請求項2】
該水不溶性の粒子固体成分が、
治療上有用な水不溶性または溶解性の乏しい化合物、
リン脂質、及び
所望によって少なくとも1種の非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性界面活性剤
を含む、水不溶性の物質の組成物から本質的になり、
水不溶性粒子の体積加重平均粒子サイズが5ミクロン以下である、請求項1に記載の迅速に分散する固体の投薬形態。
【請求項3】
増量用/放出性マトリックス成分が、糖類、多糖類、湿潤剤、天然若しくは合成のポリマー、無機添加剤、またはセルロース系ポリマーから選択される、請求項1に記載の迅速に分散する固体の投薬形態。
【請求項4】
ポリオール、糖類若しくは多糖類がマンニトール、トレハロース、乳糖、蔗糖、ソルビトール、デントロース(dentrose)、ムロデキストロース(mulodextrose)、またはマルトースである、請求項3に記載の迅速に分散する固体投薬形態。
【請求項5】
湿潤剤がグリセロール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールである、請求項3に記載の迅速に分散する固体の投薬形態。
【請求項6】
天然または合成のポリマーがゼラチン、デキストラン、澱粉、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー(poloxamer)またはアクリレートである、請求項3に記載の迅速に分散する固体の投薬形態。
【請求項7】
無機添加剤が、コロイド状シリカまたはリン酸カルシウムである、請求項3に記載の迅速に分散する固体投薬形態。
【請求項8】
セルロース系ポリマーが微結晶性セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはメチルセルロースである、請求項3に記載の迅速に分散する固体の投薬形態。
【請求項9】
水性媒質中の崩壊時間が2分未満、好ましくは60秒未満、さらに好ましくは30秒未満、もっとも好ましくは10秒未満である、請求項1に記載の迅速に分散する固体の投薬形態。
【請求項10】
さらに、起泡剤、結合剤、フレーバー、投薬形態の外表面上のポリマー被覆、着色剤またはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の迅速に分散する固体投薬形態。

【公開番号】特開2011−137031(P2011−137031A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−44696(P2011−44696)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【分割の表示】特願2000−583500(P2000−583500)の分割
【原出願日】平成11年11月19日(1999.11.19)
【出願人】(502381287)オバン・エナジー・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】