説明

リン酸エステルの合成

本発明は、リン酸エステルを製造する方法、および選択された化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸エステルの調製方法、および選択された化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
合成構成要素であるsyn−グリセロ−3−ホスホコリン(GPC)は、鏡像異性的に純粋なリン脂質の合成のための重要な前駆体である。
【0003】
【化1】

【0004】
すなわち、GPCは、例えば、製薬関連脂質および類脂質の合成のための重要な中間体である。さらに、GPCは、損傷された神経組織に正常化作用を及ぼすようであるので、アルツハイマー病の治療のための薬剤として用いられている。GPCの全合成は既知である。WO 2007/145476(特許文献1)は、塩化ホルホコリンとR−(+)−グリシドールとの反応を利用する、GPCの調製方法を記載している。EP 0486100 A1は、最初にイソプロピリデングリセロールを2−クロロ−2−オキサ−3,3,2−ジオキソホスホランと反応させる、GPCの調製方法を開示している。トリメチルアミンとの反応、および得られる産物の加水分解によりGPCが得られる。
【0005】
これらの既知の合成方法にもかかわらず、GPCは、通常、大豆/鶏卵レシチンから大規模に得られている。天然供給源からの単離は、既知の全合成改良法によりも廉価のようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/145476号パンフレット
【発明を実施するための形態】
【0007】
従って、本発明の目的は、リン酸エステルの調製のための別の合成法を提供することにある。
【0008】
従って、本発明は、式I:
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R1、R2およびR3は、各々互いに独立して下記a)、b)またはc)を表す:
a)式IIで示されるヘテロ芳香族化合物
【0011】
【化3】

【0012】
式中、(−X−Y−)は
−CH−CH−CH−、
−Z−CH−CH−、
−CH−Z−CH−、
−CH−CH−Z−、
−CH−Z−、
−Z−CH−または
−Z−Z−
を表し、
ここで、Zは、各々の場合互いに独立して、芳香族系を与えるようにO、S、NおよびNHからなる群より選択される;
b)−OR4、
式中、R4は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、2〜20個の炭素原子および一または二以上の二重結合を有する直鎖または分岐アルケニル、2〜20個の炭素原子および一または二以上の三重結合を有する直鎖または分岐アルキニル、または、炭素原子数1〜6のアルキル基により置換されていてよい3〜24個の炭素原子を有する飽和、部分的もしくは完全不飽和シクロアルキルを表し、
ここで、R4は、−OR、−NR、−CN、−C(O)NR、−COOR、−C(=O)R、−SONRまたは芳香族基のような置換基により置換されていてよく、これらは、任意に、従来の保護基が設けられ、一または二以上の炭素原子がヘテロ原子により置換されていてよく、Rは、H、C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルを表す;
c)−O
で示される化合物を調製する方法であって、第1のステップにおいて、オキシ塩化リンをN−含有ヘテロ芳香族化合物と反応させ、次のステップにおいて、ヘテロ芳香族化合物を、任意に、OH官能基を有する化合物により少なくとも部分的に置換することを特徴とする方法に関する。
【0013】
式Iで示される化合物が、式Ia、Ib、Ic、IdおよびIeから選択される方法が好ましい:
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R5およびR6は、各々互いに独立しておよびR4から独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、2〜20個の炭素原子および一または二以上の二重結合を有する直鎖または分岐アルケニル、2〜20個の炭素原子および一または二以上の三重結合を有する直鎖または分岐アルキニル、または、炭素原子数1〜6のアルキル基により置換されていてよい3〜24個の炭素原子を有する飽和、部分的もしくは完全不飽和シクロアルキルを表し、
ここで、R5およびR6は、−OR、−NR、−CN、−C(O)NR、−COOR、−C(=O)R、−SONRまたは芳香族基のような置換基により置換されていてよく、これらは、任意に、従来の保護基が設けられ、一または二以上の炭素原子がヘテロ原子により置換されていてよく、Rは、H、C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルを表し、
基X、YおよびR4は、先に定義した意味を有する)。
【0016】
1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキルは、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルであり、さらに、ペンチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、1−エチルペンチル、オクチル、1−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシルまたはエイコシルでもある。
【0017】
2〜20個の炭素原子を有し、さらに、複数の二重結合が存在してよい直鎖または分岐アルケニルは、例えば、アリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに、4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C17、−C1019〜−C2039;好ましくは、アリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに好ましくは、4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
【0018】
2〜20個の炭素原子を有し、さらに、複数の三重結合が存在してよい直鎖または分岐アルキニルは、例えば、エチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、さらに、4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C15、−C1017〜−C2037;好ましくは、エチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。
【0019】
3〜24個の炭素原子を有する飽和、部分的もしくは完全不飽和シクロアルキルは、従って、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、フェニルまたはシクロヘプテニルであり、その各々がC−〜C−アルキル基により置換されていてよい。
【0020】
本発明の意味における完全不飽和置換基は、芳香族置換基を意味するとも解される。その例は、ベンジル、フェニル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルである。
【0021】
基R4、R5およびR6は、好ましくは、互いに独立して、一または二以上のOH官能基、糖基、アミノ酸基または核酸基により任意に置換されていてよい炭化水素基からなる群より選択される。基R4、R5およびR6は、特に好ましくは、互いに独立して、以下の化合物から選択される。
【0022】
【化5】

【0023】
本発明の方法の第1のステップにおいて、オキシ塩化リンをN−含有ヘテロ芳香族化合物と反応させる。ヘテロ芳香族化合物は、例えば、
【0024】
【化6】

【0025】
からなる群より選択することができる。
【0026】
本発明の方法の第1のステップにおける反応は、好ましくは、非プロトン性溶媒中で行われる。アセトニトリル、酢酸エチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチルシラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、シクロヘキサン、ジメチルアセトアミド、スルホラン、N−メチルピロリドンおよびジクロロメタンからなる群より選択される溶媒が特に好ましい。溶媒は、非常に特に好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0027】
本発明の方法の第1のステップにおける反応は、さらに好ましくは、例えばアンモニア、第1、第2または第3アミンのようなN−含有塩基の存在下に行われる。塩基は、特に好ましくは、第3アルキルアミンから選択される。
【0028】
窒素含有塩基は、非常に特に好ましくは、ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)またはトリエチルアミンである。窒素含有塩基は、特に好ましくは、トリエチルアミンである、
記載した方法の第1のステップにおける反応は、室温でまたは冷却して行われる。反応は、好ましくは、0℃を超える温度で行われる。反応は、特に好ましくは、10〜0℃の間で行われる。
【0029】
本発明の方法のその後のステップにおいて、ヘテロ芳香族基を、OH官能基を有する化合物で部分的または完全に置換してよい。OH官能基を有する化合物は、好ましくは、生体分子または生体分子誘導体である。モノアルコール、ジオール、トリオール、テトラオール、糖、ポリオール、OH−含有アミノ酸またはOH−含有核酸からなる群より選択される化合物が特に好ましい。非常に特に好ましいのはグリセロールまたはコリン誘導体であり、特に、トシル酸コリンまたはイソプロピリデングリセロールである。
【0030】
OH−含有化合物との反応は、室温または低温で行うことができる。反応は、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−25℃未満の温度で行われる。
【0031】
さらに、本発明の方法は、式:
【0032】
【化7】

【0033】
で示される基を7以上のpHで加水分解することにより化合物Idを調製する最終的合成ステップを含んでよい。
【0034】
前述した個々のステップのそれぞれの産物は、各々、中間体として単離してよい。あるいは、合成をワンポット合成として行うことができる。ワンポットプロセスでの式Iで示される化合物の調製方法が好ましい。
【0035】
N−含有芳香族化合物が
【0036】
【化8】

【0037】
であり、式:
【0038】
【化9】

【0039】
で示される化合物が第1ステップで調製されることを特徴とする、前述の方法が特に好ましい。
【0040】
式Iで示される化合物がsyn−グリセロ−3−ホスホコリンであることを特徴とする方法が特別に好ましい。
【0041】
本発明の方法は、このように、syn−グリセロ−3−ホスホコリンの調製を可能にする。これをスキーム1に示す。
【0042】
【化10】

【0043】
この合成の出発点として、オキシ塩化リン(III)がトリエチルアミンの存在下にトリアゾール(IV)と反応してリン酸化剤(V)を得、これが、選択的に、その場で、キラル合成構成要素(VI)と反応してモノエステル(VII)を得る。次に、トシル酸コリン(VIII)を加え、付加体(IX)が形成し、これを続いて、3つの簡単なステップにおいて、所望の最終産物GPC(X)に変換する。この合成における中間体を、各々、単離することができる、あるいは、反応系列をワンポット合成として行うことができる。
【0044】
ここで、試薬(V)が非常に穏やかなリン酸化剤であることが有利である。POClを直接用いると、複数の変性産物が得られる。キラル合成構成要素(VI)はかなり酸感受性であり、POClとの直接反応には不適である。
【0045】
従って、本発明は、同様に、リン酸化試薬としての式:
【0046】
【化11】

【0047】
で示される化合物(試薬V)の使用に関する。
【0048】
さらに、ここに記載の合成により、全ステップを通して約70から90%を超える収率が達成可能になる。純度が高い結晶性のGPCを得ることができることが、さらなる利点である。
【0049】
本発明は、さらに、
【0050】
【化12】

【0051】
から選択されることを特徴とする、先に記載の式Iで示される化合物に関する。
【0052】
本発明の化合物は、本発明の方法を利用して調製することができ、例えば、医薬活性化合物の合成における価値ある中間体として適している。
【0053】
本発明の方法を利用して調製することができるさらなる化合物は、例えば、式(1)〜(5)で示される化合物である。
【0054】
【化13】

【0055】
コレステリルホスホコリン(1)は文献から知られている化合物である(Gotoh et al. Chemistry & Biodiversity 2006,3,198−209)。両親媒性の物質(1)は、リポソームの形成動態に強力な影響を及ぼすようである。
【0056】
式(2)〜(5)で示される化合物は、非常に広範囲の化合物の合成における価値ある出発材料として作用することができ、従って、同様に、本発明の課題である。式(2)で示される化合物は、例えばシャープレス(Sharpless)により導入された「クリックケミストリー」を利用して、末端アルキンの特異的官能化を奏するものである。式(3)で示される直交保護セリン誘導体は、例えば、特定の官能化により新規脂質または類脂質に直接変換することができる。式(4)で示される化合物は、脂質の配座的制限シクロペンタノイド類似体を提供できるようにする。化合物(4)を、例えばジオール誘導体に変換した後、複数の新規脂質化合物が調製されることが考えられる。不飽和フィチル誘導体(5)は、同様に、複数の新規エーテル脂質のための構成要素として作用することができる。
【0057】
以下の実施例は、本発明を、制限することなく説明しようとするものである。本発明は、特許請求された範囲において対応して実施することができる。実施例から出発して、可能な変形を設けることもできる。すなわち、実施例に記載の反応の特徴および条件は、詳細に記載されていないが請求の範囲の保護の範囲内には収まる他の反応に適用することもできる。
【実施例】
【0058】
(実施例1)グリセロホスホコリン(GPC)の合成
バッチ:
イソプロピリデングリセロール 25.83g
オキシ塩化リン 29.94g
トリエチルアミン 59.31g + 10g
トリアゾール 40.5g + 2g
THF(乾燥) 500ml
トシル酸コリン 53.79g
O 50ml
70%メタノール/水 300ml
0.1 N HCl 50ml
高純度アンバーライト混合床イオン交換体(Roth製) 900g
エタノール(無水) 400ml
(NHMoO 1g
Ce(IV)SO 20mg
10% HSO
【0059】
まず、THF400ml中のトリアゾール40.5g(0.564mol)をアルゴン雰囲気下に2リットルガラス装置に導入し、トリエチルアミン59.31g(0.564mol)を加え、混合物を5〜10℃で30分間攪拌する。次に、THF(無水)50ml中のオキシ塩化リン29.94g(0.194mol)を10分間かけて滴下する。添加中の温度は、10℃を超えて上昇してはならない。続いて、懸濁液を10℃でさらに2時間攪拌する。沈殿した結晶を濾過し、濾液を−10℃に冷却し、次に、THF50mlに溶解されたイソプロピリデングリセロール25.83g(0.195mol)を1時間かけて滴下する。添加中、温度を0℃未満に維持する。次に、混合物を0℃〜10℃でさらに5時間攪拌する。続いて、粉砕し乾燥されたトシル酸コリン53.79gを10分間かけて導入し、懸濁液を室温でさらに24時間攪拌する。HO50mlを添加後、バッチを室温でさらに5時間攪拌し、4℃で一晩放置する。沈殿を濾過し、溶液を真空下に20%まで減少させる。70%メタノール/水(300ml)を加え、0.1NのHClを用いてpHを2に調節する。続いて、溶液を一晩攪拌する。次に、溶液を混合床イオン交換体で処理(3×300g)し、精製を薄層クロマトグラフィー(Merck silica gel 60F254)によりモニターする(溶離液70%メタノール/水、R値GPC=0.25)。噴霧試薬:(NHMoO(1g)およびCe(IV)SO(20mg)を10%HSO20mlに溶解する。プレートに噴霧した後150〜200℃に加熱する。このようにしてリン化合物を青色に染める。イオン交換体で処理後、混合物をロータリーエバポレーター内で透明粘性油状物が形成するまで蒸発させる。ロータリーエバポレーター内で50℃にてエタノールを用いて繰り返して蒸発させると、まず、結晶スラリーが形成され、これは、オイルポンプ真空により乾燥後、完全に晶出する。収率:分散性の吸湿性の著しい無色結晶(スキーム1におけるX)22g(45%)。
【0060】
H−および31P−NMRスペクトル:
Bruker Advance 500(DRX)スペクトロメーター(H共鳴振動数500MHz);溶媒は特記しない限りCDCl;対照物質H−NMR:内部標準としてのテトラメチルシラン、31P−NMR:外部標準としてのDO中のリン酸
DMSO中の産物グリセロホスホコリン(X)のH−NMR:5.60ppm s,4.93ppm s,4.05ppm s,3.65−3.71ppm m,3.47−3.53ppm m,3.13ppm s。
【0061】
表1は、前記方法により調製された実施例として選択された化合物の特徴的31P−NMRシグナルを示す。
【0062】
【表1】

【0063】
(実施例2)コレステリルホスホコリンの合成
【0064】
【化14】

【0065】
まず、クロロホルム(乾燥)0.2リッター中のトリアゾール3.2g(0.038mol)を、アルゴン雰囲気下に1リッターガラス装置に導入し、ジイソプロピルエチルアミン6g(0.038mol)を加え、混合物を室温で20分間攪拌する。次に、混合物を0℃に冷却し、次に、オキシ塩化リン1.98g(0.013mol)(クロロホルム10ml中)を30分間かけて滴下する。続いて、懸濁液を0℃でさらに0.5時間攪拌し、次に、−40℃に冷却する。ジメチルアミノピリジン0.5gおよびジイソプロピルエチルアミン1.66g(0.013mol)を加える。次に、トシル酸コリン3.7g(0.129mol)を固体状で、激しく攪拌しつつ−40℃にて一度に加える。
【0066】
続いて、懸濁液をさらに2時間攪拌する。2時間後、コレステロール5.0g(0.0129mol)を−40℃にて10分間かけて導入する。次に、混合物を−40℃にてさらに1時間攪拌する。次に、HO200mlを加え、混合物を室温まで温める。メチルtert−ブチルエーテル0.5リッターを加えて、相分離を行う。有機相を廃棄し、水相を振とうしつつさらにクロロホルムで3回洗う。次に、混合床イオン交換体0.2kgを水溶液に加え、それを、次に、室温で2時間攪拌する。
【0067】
イオン交換体で処理後、混合物を濾過し、イオン交換体をさらに70%メタノール/水で2回洗う。併せた溶液をロータリーエバポレーター内で蒸発させて、白色固形物を得る。収率は、分散性の微結晶性産物としてコレステリルホスホコリン(1)4.6g(64%)である。
【0068】
産物のH−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm)=5.14(s,br,1H),4.05(s,(br),1H),3.70(m,1H),3.39(m,2H),3.05(s,9H),2.0(m,2H),1.80(m,3H),1.50−0.85(m,27H),0.75(d,j=7Hz,3H),0.69(d,j=6Hz,6H),0.50(s,3H)。
【0069】
(実施例3)リン酸2−(トリメチルアンモニオ)エチルウンデク−10−イニルの合成
【0070】
【化15】

【0071】
実施例2に記載と類似の手順により、リン酸2−(トリメチルアンモニオ)エチルウンデク−10−イニル(2)3.8gを無定形粉末として得る。収率:71%
産物のH−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm)=4.29(s,br,2H),3.90(m,2H),3.68(m,2H),3.24(s,9H),2.35(s,1H),2.22(m,2H),1.65(m,2H),1.53(m,2H),1.45−1.3(m,10H)。
【0072】
(実施例4)リン酸2−(tert−ブトキシカルボニルアミノン)−3−メトキシ−3−オキソプロピル2−(トリメチルアンモニオ)エチルの合成
【0073】
【化16】

【0074】
実施例2に記載と類似の手順により、リン酸2−(tert−ブトキシカルボニルアミノン)−3−メトキシ−3−オキソプロピル2−(トリメチルアンモニオ)エチル(3)3.8gを無色油状物として得る。収率:81%
産物のH−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm)=4.49(s,br,1H),4.28(m,3H),4.15(m,1H),3.67(m,2H),3.36(s,9H),3.36(s,3H),3.23(s,9H),1.46(s,9H)。
【0075】
(実施例5)リン酸シクロペント−3−エニル2−(トリメチルアンモニオ)エチルの合成
【0076】
【化17】

【0077】
実施例2に記載と類似の手順により、リン酸シクロペント−3−エニル2−(トリメチルアンモニオ)エチル(4)2.6gを無色油状物として得る。収率:61%
産物のH−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm)=5.75(s,2H),4.91(s,1H),4.21(m,2H),3.89(m,2H),3.21(s,9H),2.65(m,2H),2.45(m,2H)。
【0078】
(実施例6)フィチルホスホコリンの合成
【0079】
【化18】

【0080】
実施例2に記載と類似の手順により、フィチルホスホコリン(5)1.8gを無定形粉末として得る。収率:52%
産物のH−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm)=5.35(m,1H),4.40(m,2H),4.31(m,2H),3.81(m,2H),3.59(m,2H),3.31(s,9H),1.6(s,3H),1.6−0.9(m,18H),0.82(m,12H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は、各々互いに独立して下記a)、b)またはc)を表す:
a)式IIで示されるヘテロ芳香族化合物
【化2】

式中、(−X−Y−)は
−CH−CH−CH−、
−Z−CH−CH−、
−CH−Z−CH−、
−CH−CH−Z−、
−CH−Z−、
−Z−CH−または
−Z−Z−
を表し、
ここで、Zは、各々の場合互いに独立して、芳香族系を与えるようにO、S、NおよびNHからなる群より選択される;
b)−OR4、
式中、R4は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、2〜20個の炭素原子および一または二以上の二重結合を有する直鎖または分岐アルケニル、2〜20個の炭素原子および一または二以上の三重結合を有する直鎖または分岐アルキニル、または、炭素原子数1〜6のアルキル基により置換されていてよい3〜24個の炭素原子を有する飽和、部分的もしくは完全不飽和シクロアルキルを表し、
ここで、R4は、−OR、−NR、−CN、−C(O)NR、−COOR、−C(=O)R、−SONRまたは芳香族基のような置換基により置換されていてよく、これらは、任意に、従来の保護基が設けられ、一または二以上の炭素原子がヘテロ原子により置換されていてよく、Rは、H、C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルを表す;
c)−O
で示される化合物を調製する方法であって、第1のステップにおいて、オキシ塩化リンをN−含有ヘテロ芳香族化合物と反応させ、次のステップにおいて、ヘテロ芳香族化合物を、任意に、OH官能基を有する化合物により少なくとも部分的に置換することを特徴とする方法。
【請求項2】
式Iで示される化合物が、式Ia、Ib、Ic、IdおよびIeから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法:
【化3】

(式中、R5およびR6は、各々互いに独立しておよびR4から独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル、2〜20個の炭素原子および一または二以上の二重結合を有する直鎖または分岐アルケニル、2〜20個の炭素原子および一または二以上の三重結合を有する直鎖または分岐アルキニル、または、炭素原子数1〜6のアルキル基により置換されていてよい3〜24個の炭素原子を有する飽和、部分的もしくは完全不飽和シクロアルキルを表し、
ここで、R5およびR6は、−OR、−NR、−CN、−C(O)NR、−COOR、−C(=O)R、−SONRまたは芳香族基のような置換基により置換されていてよく、これらは、任意に、従来の保護基が設けられ、一または二以上の炭素原子がヘテロ原子により置換されていてよく、Rは、H、C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、非置換または置換フェニルを表し、
基X、YおよびR4は、請求項1による意味を有する)。
【請求項3】
第1のステップの反応を非プロトン性溶媒、好ましくはアセトニトリル、酢酸エチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチルシラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、シクロヘキサン、ジメチルアセトアミド、スルホラン、N−メチルピロリドンおよびジクロロメタンからなる群より選択される非プロトン性溶媒中で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1のステップの反応をN−含有塩基、好ましくは第3アルキルアミンから選択されるN−含有塩基の存在下に行うことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1のステップの反応を室温で、または冷却、好ましくは0℃よりは高い温度に冷却して行うことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
OH官能基を有する化合物が、生体分子または生体分子誘導体、好ましくはモノアルコール、ジオール、トリオール、テトラオール、糖、ポリオール、OH−含有アミノ酸またはOH−含有核酸から選択されるものであることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
OH−含有化合物との反応が、室温または低温、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−25℃未満の温度で行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
最終ステップにおいて式:
【化4】

で示される基を7以上のpHで加水分解することにより化合物Idを調製することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
N−含有芳香族化合物が
【化5】

であり、式:
【化6】

で示される化合物が第1ステップで調製されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
式Iで示される化合物がsyn−グリセロ−3−ホスホコリンであることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
リン酸化剤としての式:
【化7】

で示される化合物の使用。
【請求項12】
前記化合物が
【化8】

から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の式Iで示される化合物。
【請求項13】
式(2)、(3)、(4)または(5)で示される化合物から選択される化合物:
【化9】


【公表番号】特表2013−510102(P2013−510102A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537311(P2012−537311)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006158
【国際公開番号】WO2011/054429
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】