説明

リン酸化重縮合物を含有する硬化促進剤組成物

本発明は、水溶性カルシウム化合物と水溶性ケイ酸塩化合物との反応による、およびアルカリ条件下におけるカルシウム化合物と二酸化ケイ素含有成分との反応による、硬化促進剤組成物の製造方法であって、両方の場合において、当該反応が、ポリエーテル側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと、少なくとも1つのリン酸エステル基および/またはその塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットとを有する重縮合物の存在下において実施される、製造方法に関する。本発明は、ケイ酸カルシウム水和物および重縮合物の組成物、ならびに硬化促進剤としての使用および硬化した組成物の浸透性の低減のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化促進剤組成物の製造方法、当該硬化促進剤組成物、および当該硬化促進剤組成物の使用に関する。
【0002】
粉末状の無機物質または有機物質(例えば、粘土、ケイ酸塩粉末、白亜、カーボンブラック、粉末状岩石、および水硬性結合剤など)の水性スラリーに対して、それらのワーカビリティ(すなわち、混練性、展延性、噴霧適性、ポンプ圧送性、または流動性)を向上させるために、多くの場合、分散剤の形態の混和剤を添加することが知られている。そのような混和剤は、固体塊を崩壊させ、形成された粒子を分散させ、ならびにそれにより流動性を向上させ得る。さらにこの効果は、特に、水硬性結合剤(例えば、セメント、石灰、石膏、硫酸カルシウム半水和物(バサナイト)、無水硫酸カルシウム(無水石膏)など)または潜在性水硬性結合剤(例えば、フライアッシュ、高炉スラグ、またはポゾランなど)を含有する建築材料混合物の製造において、意図的に利用されている。
【0003】
そのような結合剤をベースとするこれらの建築材料混合物を、すぐに使用できる作業可能な形態に転換するためには、原則として、その後の水和および硬化プロセスにおいて必要とされるであろうよりも実質的により多量の練り混ぜ水が必要となる。当該過剰な水が後で気化することによってコンクリート躯体中に形成される空隙の割合により、著しく低い機械的強度および耐久性が生じる。
【0004】
所定の加工稠度でこれらの過剰な割合の水を減じるために、および/または所定の水/結合剤比でのワーカビリティを改善するために、一般的に、減水剤組成物または流動化剤と呼ばれる混和剤が使用される。特に、酸性モノマーとポリエステルマクロモノマーとのフリーラジカル共重合によって製造されるコポリマーが、そのような組成物として実際に使用されている。
【0005】
さらに、水硬性結合剤を含む建築材料混合物のための混和剤には、通常、水硬性結合剤の凝結時間を短くする硬化促進剤も含有される。国際公開公報第02/070425号によれば、そのような硬化促進剤として、特に分散された(微細に、または特に微細に分散された)形態で存在するケイ酸カルシウム水和物を使用することができる。しかしながら、市販されているケイ酸カルシウム水和物または相当するケイ酸カルシウム水和物分散液は、あまり効果がない硬化促進剤としてしか見なされない。
【0006】
リン酸化重縮合物が、セメント質組成物における高性能減水剤として有効であることは先行技術(米国特許出願公開第20080108732(A1)号)において公知である。米国特許出願公開第20080108732(A1)号には、5〜10個のC原子またはヘテロ原子を有し、少なくとも1つのオキシエチレン基またはオキシプロピレン基を有する芳香族またはヘテロ芳香族化合物(A)と、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、およびベンズアルデヒド、あるいはそれらの混合物からなる群より選択されるアルデヒド(C)とをベースとする重縮合物について記載されており、これらは結果として、従来において使用されている重縮合物と比較して、無機結合剤懸濁液の流動化効果を向上させ、ならびにこの効果は長期間にわたって維持される(「スランプ保持」)。特定の実施形態において、これらは、リン酸化重縮合物でもあり得る。しかしながら、当該重縮合物は、例えばケイ酸カルシウム水和物のような無機相に関しては、文献において公知ではない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、特に硬化促進剤としての役割を果たし、さらには流動化剤としても機能する組成物を提供することにある。
【0008】
この目的は、水溶性カルシウム化合物と水溶性ケイ酸塩化合物との反応による硬化促進剤組成物の製造方法であって、当該水溶性カルシウム化合物と当該水溶性ケイ酸塩化合物との反応が、重縮合物の水溶液の存在下において実施され、当該重縮合物が、
(I)ポリエーテル側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと、
(II)少なくとも1つのリン酸エステル基および/またはその塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと
を有する、製造方法によって達成される。
【0009】
原則として、比較的わずかしか水に溶けない化合物も、各場合において、水溶性カルシウム化合物および水溶性ケイ酸塩化合物として好適ではあるが、容易に水に溶ける(完全に、または実質的に完全に水に溶ける)化合物が、各場合において好ましい。ただし、対応する反応剤(水溶性カルシウム化合物または水溶性ケイ酸塩化合物のいずれか)と水中環境で反応するための十分な反応性が確保されなければならない。当該反応は、水溶液において生じるが、通常、反応生成物として水不溶性の無機化合物(ケイ酸カルシウム水和物)が存在することは想定されるべきである。
【0010】
通常、当該重縮合物は、(I)ポリエーテル側鎖、好ましくはポリアルキレングリコール側鎖、より好ましくはポリエチレングリコール側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニット、を有する。ポリエーテル側鎖、好ましくはポリエチレングリコール側鎖を芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる当該構造ユニットは、好ましくは、アルコキシル化、好ましくはエトキシ化されたヒドロキシ−官能化芳香族またはヘテロ芳香族(例えば、当該芳香族は、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、2−アルコキシフェノキシエタノール、4−アルコキシフェノキシエタノール、2−アルキルフェノキシエタノール、4−アルキルフェノキシエタノールから選択することができる)、ならびに/あるいは、アルコキシル化、好ましくはエトキシ化されたアミノ−官能化芳香族またはヘテロ芳香族(例えば、当該芳香族は、N,N−(ジヒドロキシエチル)アニリン、N,−(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−(ジヒドロキシプロピル)アニリン、N,−(ヒドロキシプロピル)アニリンから選択することができる)の群より選択される。より好ましいのは、アルコキシル化されたフェノール誘導体(例えば、フェノキシエタノールまたはフェノキシプロパノール)であり、最も好ましいのは、300g/mol〜10,000g/molの質量平均分子量を特徴とする、アルコキシル化、とりわけエトキシ化されたフェノール誘導体(例えば、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル)である。通常、当該重縮合物は、(II)少なくとも1つのリン酸エステル基および/またはリン酸エステル基の塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種のリン酸化構造ユニットを有し、当該ユニットは、好ましくは、アルコキシル化されたヒドロキシ−官能化芳香族またはヘテロ芳香族(例えば、フェノキシエタノールホスフェート、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテルホスフェートなど)ならびに/あるいはアルコキシル化されたアミノ−官能化芳香族またはヘテロ芳香族(例えば、N,N−(ジヒドロキシエチル)アニリンジホスフェート、N,N−(ジヒドロキシエチル)アニリンホスフェート、N,−(ヒドロキシプロピル)アニリンホスフェートなど)の群より選択され、(例えば、リン酸によるエステル化および任意による塩基の添加により)少なくとも1つのリン酸エステル基および/または当該リン酸エステル基の塩を有する。より好ましいのは、少なくとも1つのリン酸エステル基および/または当該リン酸エステル基の塩を有するアルコキシル化フェノール(例えば、25個未満のエチレングリコールユニットを有するポリエチレングリコールモノフェニルエーテルホスフェート)であり、最も好ましいのは、200g/mol〜600g/molの質量平均分子量を特徴とするそれぞれのアルコキシル化されたフェノール(例えば、フェノキシエタノールホスフェート、2〜10個のエチレングリコールユニットを有するポリエチレングリコールモノフェニルエーテルホスフェート)であり、当該アルコキシ化されたフェノールは、(例えば、リン酸によるエステル化および任意による塩基の添加により)少なくとも1つのリン酸エステル基および/または当該リン酸エステル基の塩を有する。
【0011】
本発明の別の実施形態において、当該方法は、重縮合物における構造ユニット(I)および(II)が、以下の一般式:
【化1】

[式中、
Aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに5〜10個のC原子を有する置換または非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、
Bは、同じであるかまたは異なっており、ならびにN、NH、またはOで表され、
BがNの場合、nは2であり、BがNHまたはOの場合、nは1であり、
およびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表され、
aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜300の整数で表され、
Xは、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはH、好ましくはHで表される]
【化2】

[式中、
Dは、同じであるかまたは異なっており、ならびに5〜10個のC原子を有する置換または非置換のヘテロ芳香族化合物で表され、
Eは、同じであるかまたは異なっており、ならびにN、NH、またはOで表され、
EがNの場合、mは2であり、EがNHまたはOの場合、mは1であり、
およびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表され、
bは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜300の整数で表され、
Mは、互いに独立して、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、および/またはHであり、aは1であるか、またはアルカリ土類金属イオンの場合には1/2である]
で表されることを特徴とする。
【0012】
重縮合物の一般式(I)および(II)における基AおよびDは、好ましくは、フェニル、2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、ナフチル、2−ヒドロキシナフチル、4−ヒドロキシナフチル、2−メトキシナフチル、4−メトキシナフチル、好ましくはフェニルで表され、AおよびDは、互いに独立して選択することが可能であり、ならびに、各場合において、当該化合物の混合物で構成することも可能である。基BおよびEは、互いに独立して、好ましくはOで表される。基R、R、R、およびRは、互いに独立して選択することが可能であり、ならびに、好ましくは、H、メチル、エチル、またはフェニル、特に好ましくは、Hまたはメチル、とりわけ好ましくは、Hで表される。
【0013】
一般式(I)において、aは、好ましくは1〜300、特に3〜200、特に好ましくは5〜150の整数で表され、ならびに一般式(II)におけるbは、1〜300、好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜10の整数で表される。長さがそれぞれaおよびbによって規定されるそれぞれの基は、この場合、同一の構築ブロックで構成され得るが、異なる構築ブロックの混合物も好都合であり得る。さらに、一般式(I)または(II)の基は、互いに独立して、それぞれ同じ鎖長を有していてもよく、aおよびbはそれぞれある数で表される。しかしながら、原則として、異なる鎖長を有する混合物が存在する場合、各場合において、重縮合物における構造ユニットの当該基が、aに対して、および独立してbに対して異なる数値を有することが好都合であろう。
【0014】
しばしば、本発明によるリン酸化重縮合物は、5,000g/mol〜200,000g/mol、好ましくは10,000〜100,000g/mol、および特に好ましくは15,000〜55,000g/molの質量平均分子量を有する。
【0015】
当該リン酸化重縮合物は、その塩形態において、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、有機アンモニウム塩、アンモニウム塩、および/またはカルシウム塩として、好ましくはナトリウム塩および/またはカルシウム塩としても存在し得る。
【0016】
通常、構造ユニットのモル比(I):(II)は、1:10〜10:1、好ましくは1:8〜1:1である。重縮合物において構造ユニット(II)が比較的高い割合を有することが有利であり、これは、当該ポリマーの比較的高い負電荷が、懸濁液の安定性に良い影響を有するためである。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、当該重縮合物は、以下の式:
【化3】

[式中、
Yは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに(I)、(II)、または重縮合物のさらなる構成要素で表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、CH、COOH、または5〜10個のC原子を有する置換もしくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族化合物、好ましくはHで表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、CH、COOH、または5〜10個のC原子を有する置換もしくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族化合物、好ましくはHで表される]で表されるさらなる構造ユニット(III)を有する。
【0018】
当該重縮合物は、通常、(I)ポリエーテル側鎖(例えば、ポリ(エチレングリコール)モノフェニルエーテル)を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1つの構造ユニットおよび(II)少なくとも1つのリン酸エステル基および/または当該リン酸エステル基の塩(例えば、フェノキシエタノールリン酸エステル)を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1つの構造ユニットを、(IIIa)ケト基を有するモノマーと反応させる方法によって製造される。好ましくは、ケト基を有する当該モノマーは、一般式(IIIa):
【化4】

[式中、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、CH、COOH、および/または5〜10個のC原子を有する置換もしくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族化合物、好ましくはHで表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、CH、COOH、および/または5〜10個のC原子を有する置換もしくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族化合物、好ましくはH、で表される]
で表される。好ましくは、ケト基を有する当該モノマーは、ケトンの群から選択され、好ましくはアルデヒドであり、最も好ましくはホルムアルデヒドである。一般構造(IIIa)による化学薬品の例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、グリオキシル酸、および/またはベンズアルデヒドである。中でもホルムアルデヒドが好ましい。
【0019】
通常、構造ユニット(III)におけるRおよびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに、H、COOH、および/またはメチルで表される。最も好ましいのはHである。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態において、構造ユニットのモル比[(I)+(II)]:(III)は、重縮合物において1:0.8〜3である。
【0021】
好ましくは、当該重縮合は、酸触媒の存在下において実施され、この触媒は、好ましくは、硫酸、メタンスルホン酸、パラ−トルエンスルホン酸、またはそれらの混合物である。当該重縮合およびリン酸化は、20〜150℃の温度および1〜10barの圧力において有利に実施される。特に、80〜130℃の温度範囲が好都合であることが分かっている。当該反応の所要時間は、温度、使用されるモノマーの化学的性質、および所望の架橋度に応じて、0.1〜24時間であり得る。架橋は、構造ユニットIおよび/またはIIの一置換モノマーが使用される場合に好ましく生じ得、これは、当該縮合反応が、2つのオルト位およびパラ位において生じ得るためである。所望の重縮合度に達したら(例えば、反応混合物の粘度を測定するなどによって特定することも可能)、当該反応混合物を冷却する。
【0022】
当該反応混合物は、縮合反応およびリン酸化反応の終了後に、pH8〜13ならびに60〜130℃の温度において熱後処理され得る。有利には5分〜5時間続く熱後処理により、当該反応溶液中のアルデヒド含有量、特にホルムアルデヒド含有量を減じることが実質的に可能である。あるいは、当該反応混合物を、減圧処理または先行技術において公知の他の方法に供することにより、(ホルム)アルデヒドの含有量を減じることができる。
【0023】
より良好な貯蔵寿命およびより良好な生成物特性を得るために、当該反応溶液を塩基性化合物で処理することが有利である。したがって、当該反応混合物を、反応終了後に、塩基性のナトリウム化合物、カリウム化合物、アンモニウム化合物、またはカルシウム化合物と反応させることが好ましいと考えられる。この場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、または水酸化カルシウムが特に好都合であることが分かっており、当該反応混合物を中和することが好ましいと考えられる。ただし、他のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩ならびに有機アミンの塩も、リン酸化重縮合物の塩として好適である。
【0024】
当該重縮合物と少なくとも2種の塩基性化合物との反応により、リン酸化重縮合物の混合塩も製造することができる。
【0025】
使用する触媒も分離することができる。これは、好都合なことに、中和反応の間に形成される塩によって行うことができる。触媒として硫酸が使用され、ならびに反応溶液が水酸化カルシウムで処理される場合、形成される硫酸カルシウムは、例えば、ろ過などによる簡単な方法において分離することができる。
【0026】
さらに、当該反応溶液のpHを1.0〜4.0、特に1.5〜2.0に調節することにより、リン酸化重縮合物を、相分離によって塩水溶液から分離し、ならびに単離することができる。当該リン酸化重縮合物は、次いで、所望の量の水に溶解させてもよい。しかしながら、当業者に既知の他の方法、例えば、透析、限外ろ過、またはイオン交換体の使用など、も触媒の分離に好適である。
【0027】
好ましくは、本発明による重縮合物は、工業標準規格EN 934−2(2002年2月)の要件を満たしている。
【0028】
原則として、促進剤は、無機成分および有機成分を含有する。当該無機成分は、微細に分散された改質ケイ酸カルシウム水和物と見なすことができ、これは、外来イオン(例えば、マグネシウムおよびアルミニウムなど)を含有し得る。当該ケイ酸カルシウム水和物は、本発明による重縮合物(有機成分)の存在下において生成される。通常、当該ケイ酸カルシウム水和物を微細分散状態において含有する懸濁液が得られ、この場合、懸濁液は、水硬性結合剤の硬化プロセスを効果的に促進し、ならびに流動化剤としても機能し得る。
【0029】
当該無機成分は、ほとんどの場合、以下の実験式:
aCaO、SiO、bAl、cHO、dX、eW
[式中、
Xは、アルカリ金属であり、
Wは、アルカリ土類金属であり、
0.1≦a≦2、好ましくは、0.66≦a≦1.8であり、
0≦b≦1、好ましくは、0≦b≦0.1であり、
1≦c≦6、好ましくは、1≦c≦6.0であり、
0≦d≦1、好ましくは、0≦d≦0.4であり、
0≦e≦2、好ましくは、0≦e≦0.1である]
により、その組成を説明することができる。
【0030】
好ましい実施形態において、当該水溶液は、さらに、ケイ酸塩およびカルシウムイオンに加えて、好ましくは溶存アルミニウム塩および/または溶存マグネシウム塩の形態において提供される溶存イオンも含有する。アルミニウム塩として、好ましくは、ハロゲン化アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、および/または硫酸アルミニウムを使用することができる。ハロゲン化アルミニウムの群の中でより好ましいのは、塩化アルミニウムである。マグネシウム塩は、好ましくは、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、および/または硫酸マグネシウムであり得る。
【0031】
アルミニウム塩およびマグネシウム塩の利点は、カルシウムおよびケイ素とは異なるイオンを導入することによってケイ酸カルシウム水和物中に欠陥を作り出すことができる点である。これにより、硬化促進効果が高まる。好ましくは、カルシウムおよびケイ素に対するアルミニウムおよび/またはマグネシウムのモル比は小さい。より好ましくは、当該モル比は、前述の実験式においてa、b、およびeの好ましい範囲が満たされるように選択される(0.66≦a≦1.8、0≦b≦0.1、0≦e≦0.1)。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、第一工程において、水溶性カルシウム化合物を、本発明による重縮合物を含有する水溶液と混合し、それによって、好ましくは溶液として存在する混合物を得、続く第二工程において水溶性ケイ酸塩化合物を当該混合物に添加する。第二工程の水溶性ケイ酸塩化合物は、本発明による重縮合物も含有していてもよい。
【0033】
当該水溶液は、水以外に、1種以上のさらなる溶媒(例えば、エタノールおよび/またはイソプロパノールなどのアルコール)も含有し得る。好ましくは、水およびさらなる溶媒(例えば、アルコール)の総量に対する水以外の溶媒の質量比は、最高20質量%まで、より好ましくは10質量%未満、最も好ましくは5質量%未満である。しかしながら、最も好ましいのは、いずれの溶媒も含有しない水系である。
【0034】
当該方法が実施される温度範囲は、特に限定されない。しかしながら、当該系の物理状態により、ある特定の制限が課せられる。0〜100℃、より好ましくは5〜80℃、最も好ましくは15〜35℃の範囲において作業することが好ましい。特に粉砕方法が適用されている場合は高温に達し得る。80℃を超えないことが好ましい。
【0035】
当該方法は、様々な圧力、好ましくは1〜5barの範囲の圧力においても実施することができる。
【0036】
pH値は、反応剤(水溶性カルシウム化合物および水溶性ケイ酸塩)の量、および沈殿したケイ酸カルシウム水和物の溶解性に応じて変わる。当該pH値は、合成の終了時に8より高いことが好ましく、8〜13.5の範囲にあることが好ましい。
【0037】
さらなる好ましい実施形態(実施形態1)において、重縮合物を含有する水溶液は、さらに、その中に溶存する成分として水溶性カルシウム化合物および水溶性ケイ酸塩化合物を含む。このことは、ケイ酸カルシウム水和物を沈殿させる水溶性カルシウム化合物と水溶性ケイ酸塩化合物との反応が、本発明による重縮合物を含有する水溶液の存在下において生じることを意味する。
【0038】
さらなる好ましい実施形態(実施形態2)は、水溶性カルシウム化合物の溶液および水溶性ケイ酸塩化合物の溶液が、当該重縮合物を含有する水溶液に、好ましくは別々に加えられることを特徴とする。本発明のこの局面の実施方法を示すために、例えば、3種の溶液(水溶性カルシウム化合物の溶液(I)、水溶性ケイ酸塩化合物の溶液(II)、および本発明による重縮合物の溶液(III))が別々に製造され得る。溶液(I)および(II)を、好ましくは、別々にかつ同時に溶液(III)に加える。この製造方法の利点は、その優れた実行可能性に加えて、比較的小さい粒子サイズを得られる点である。
【0039】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、水溶性カルシウム化合物の溶液および/または水溶性ケイ酸塩化合物の溶液が重縮合物を含有するように、前述の実施形態2を変更することができる。この場合、当該方法は、原則として、前述の実施形態2において説明したのと同じ方式において実施されるが、好ましくは、溶液(I)および/または溶液(II)が本発明による重縮合物も含有する。この場合、当業者は、本発明による重縮合物が少なくとも2つまたは3つの溶液に分配されることを理解するだろう。本発明による重縮合物の総量の1〜50%、好ましくは10〜25%が、カルシウム化合物溶液(例えば、溶液(I)および/またはケイ酸塩化合物溶液(例えば、溶液(II))に含有されていることが有利である。この製造方法は、本発明による重縮合物が、水溶性カルシウム化合物の溶液中および/または水溶性ケイ酸塩化合物の溶液中にも存在するという利点を有する。
【0040】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、本発明による重縮合物を含有する水溶液が、水溶性カルシウム化合物または水溶性ケイ酸塩化合物を含有するように、前述の実施形態2を変更することができる。
【0041】
この場合、当該方法は、原則として、前述の実施形態2において説明したのと同じ方式において実施されるが、溶液(III)は、水溶性カルシウム化合物または水溶性ケイ酸塩化合物を含有するであろう。この場合、当業者は、水溶性カルシウム化合物または水溶性ケイ酸塩化合物が、少なくとも2種の溶液に分配されるということを理解するであろう。
【0042】
好ましい実施形態において、当該方法は、重縮合物を含有する水溶液への水溶性カルシウム化合物の添加および水溶性ケイ酸塩化合物の添加が、第一および第二反応器により順番に循環半バッチ式において実施され、最初に第二反応器に重縮合物の水溶液が入れられており、水溶性ケイ酸塩化合物の溶液、水溶性カルシウム化合物の溶液、および第二反応器の内容物が第一反応器に供給され、第一反応器の流出物が第二反応器に加えられることを特徴とするか、あるいは、当該添加が、水溶性カルシウム化合物、水溶性ケイ酸塩化合物、および重縮合物を含有する水溶液が第一反応器において混合され、その結果として得られる流出物が混合流反応器または栓流反応器中へと供給される連続プロセスにおいて実施されることを特徴とする。
【0043】
好ましくは、第一反応器と第二反応器の体積比は、1/10〜1/20,000である。好ましくは、水溶性カルシウム化合物および水溶性ケイ酸塩化合物の質量流量は、第二反応器から流出して第一反応器に流入する質量流と比べて小さく、好ましくは当該比率は1/5〜1/1000である。通常、第一反応器は静的または動的混合装置であり得、好ましくは、第一反応器における混合が有効でなければならない。
【0044】
概して、当該成分は、以下の比率:
i)0.01〜75質量%、好ましくは0.01〜51質量%、最も好ましくは0.01〜15質量%の水溶性カルシウム化合物
ii)0.01〜75質量%、好ましくは0.01〜55質量%、最も好ましくは0.01〜10質量%の水溶性ケイ酸塩化合物
iii)0.001〜60質量%、好ましくは0.1〜30質量%、最も好ましくは0.1〜10質量%の重縮合物
iv)24〜99質量%、好ましくは50〜99質量%、最も好ましくは70〜99質量%の水
において使用される。
【0045】
好ましくは、硬化促進剤組成物は、水硬性結合剤、好ましくはセメントに対し、0.01〜10質量%、最も好ましくは0.1〜2質量%の固形分において添加される。当該固形分は、試料が一定質量に達するまで60℃のオーブンに入れて測定する。
【0046】
多くの場合、当該水溶性カルシウム化合物は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、重炭酸カルシウム、臭化カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩素酸カルシウム、フッ化カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、乳酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、硫化カルシウム、酒石酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、および/またはケイ酸二カルシウムとして存在する。好ましくは、当該水溶性カルシウム化合物は、ケイ酸カルシウムではない。ケイ酸塩であるケイ酸カルシウム、ケイ酸二カルシウム、および/またはケイ酸三カルシウムは、低溶解性(特に、ケイ酸カルシウムの場合)であることから、ならびに経済的理由(価格)から(特に、ケイ酸二カルシウムおよびケイ酸三カルシウムの場合)、あまり好ましくない。
【0047】
水溶性カルシウム化合物は、好ましくは、クエン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ギ酸カルシウムおよび/または硫酸カルシウムとして存在する。これらのカルシウム化合物の利点は、それらの非腐食性である。クエン酸カルシウムおよび/または酒石酸カルシウムは、高濃度において使用される場合にこれらのアニオンにより遅延効果を生じる可能があるため、好ましくは、他のカルシウム供給源と組み合わせて使用される。
【0048】
本発明のさらなる実施形態において、当該カルシウム化合物は、塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムとして存在する。これらのカルシウム化合物の利点は、それらの水に対する優れた溶解性、低価格、および優れた有用性である。
【0049】
多くの場合、当該水溶性ケイ酸塩化合物は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水ガラス、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸、メタケイ酸ナトリウム、および/またはメタケイ酸カリウムとして存在する。
【0050】
当該水溶性ケイ酸塩化合物は、好ましくは、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、および/または水ガラスとして存在する。これらのケイ酸塩化合物の利点は、それらの水に対する非常に優れた溶解性である。
【0051】
好ましくは、水溶性ケイ酸塩化合物として、および水溶性カルシウム化合物として、異なるタイプの種が使用される。
【0052】
好ましい方法では、水溶性アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)が、カチオン交換体によって硬化促進剤組成物から除去され、ならびに/あるいは水溶性硝酸イオンおよび/または塩化物イオンが、アニオン交換体によって硬化促進剤組成物から除去される。好ましくは、当該カチオンおよび/またはアニオンの除去は、硬化促進剤組成物の製造の後に、イオン交換体の使用により第二プロセス工程において実施される。カチオン交換体として好適な酸性イオン交換体は、例えば、ナトリウムポリスチレンスルホネートまたはポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ポリAMPS)をベースとする。塩基性イオン交換体は、例えば、ポリ(アクリルアミド−N−プロピルトリメチルアンモニウムクロリド)(ポリAPTAC)のようなアミノ基をベースとする。
【0053】
本発明は、アルカリ条件下での、カルシウム化合物、好ましくはカルシウム塩、最も好ましくは水溶性カルシウム塩、と、二酸化ケイ素含有成分との反応による硬化促進剤組成物の製造方法であって、当該反応が重縮合物の水溶液の存在下において実施され、当該重縮合物が、
(I)ポリエーテル側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1つの構造ユニットと
(II)少なくとも1つのリン酸エステル基またはその塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1つの構造ユニットと
を有する、製造方法にも関する。
【0054】
通常、カルシウム化合物は、カルシウム塩(例えば、カルボン酸のカルシウム塩)である。当該カルシウム塩は、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、重炭酸カルシウム、臭化カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩素酸カルシウム、フッ化カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、乳酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、硫化カルシウム、酒石酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、ケイ酸三カルシウムおよび/またはケイ酸二カルシウムであり得る。好ましいのは、強アルカリ特性を有することから、水酸化カルシウムおよび/または酸化カルシウムである。好ましくは、水溶性カルシウム化合物は、ケイ酸カルシウムではない。ケイ酸塩であるケイ酸カルシウム、ケイ酸二カルシウム、および/またはケイ酸三カルシウムは、低溶解性であることから(特に、ケイ酸カルシウムの場合)、および経済的理由(価格)から(特に、ケイ酸二カルシウムおよびケイ酸三カルシウムの場合)、あまり好ましくない。あまり良好な可溶性ではないカルシウム塩(例えば、炭酸カルシウムなど)、および遅延性アニオンを有するカルシウム塩(例えば、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩は、水硬性結合剤の硬化を遅延し得る)も、あまり好ましくない。中性または酸性のカルシウム塩(例えば、塩化カルシウムまたは硝酸カルシウム)の場合、好適な塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化マグネシウム、または任意の他のアルカリ土類水酸化物など)を使用して、pH値をアルカリ状態へと調節することが好ましい。好ましくは、pH値は8より高く、より好ましくは9より高く、最も好ましくは11より高い。pH値は、好ましくは25℃において、1質量%の固形分の懸濁液を用いて測定される。
【0055】
二酸化ケイ素を含有する任意の材料、例えば、マイクロシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、高炉スラグ、および/またはケイ砂など、を使用することができる。小さい粒子サイズ、特に1μm未満の粒子サイズの二酸化ケイ素含有材料が好ましい。さらに、水性アルカリ性環境において二酸化ケイ素(例えば、一般式Si(OR)のテトラアルコキシケイ素化合物など)に反応し得る化合物を使用することも可能である。Rは、同じであるかまたは異なっていてもよく、例えば、分岐鎖状または非分岐鎖状のC〜C10アルキル基から選択することができる。好ましくは、Rはメチルであり、特に好ましくはエチルである。
【0056】
好ましい実施形態において、二酸化ケイ素含有化合物は、マイクロシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、高炉スラグ、および/またはケイ砂の群から選択される。好ましいのは、マイクロシリカ、焼成シリカ、および/または沈降シリカであり、特に、沈降シリカおよび/または焼成シリカである。上記に列挙したタイプのシリカは、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Wiley−VCH,2009年出版,第7版,DOI 10.1002/14356007.a23_583.pub3において定義されている。
【0057】
カルシウム塩と通常は低水溶性の二酸化ケイ素含有成分との反応を活性化および/または促進するために、好ましくは粉砕処理により、当該反応混合物に対して機械的エネルギーを適用するのが好ましい。当該機械的エネルギーは、ケイ酸カルシウム水和物が所望の小さい粒子サイズに達するためにも有利である。「粉砕処理」なる表現は、本特許出願において、反応を促進するためおよび好適な粒子サイズを得るために、当該反応混合物に対して高い剪断力を加える任意の方法を意味する。例えば、粉砕処理は、連続的またはバッチ式操作モードにて、遊星ボールミルにおいて実施することができる。あるいは、超分散機を、5,000r.p.m超の回転数において使用することもできる。さらに、当該反応混合物と一緒に、好ましくは直径が1mm未満の小さい粉砕体を容器にいれて振とうする、いわゆる振とう機を適用することも可能である。それぞれの振とう機は、例えば、Skandex社から入手可能である。
【0058】
典型的には、硬化促進剤を製造する方法のpH値は9より高い。
【0059】
好ましくは、二酸化ケイ素含有成分に由来するケイ素に対する、カルシウム化合物に由来するカルシウムのモル比は、0.6〜2、好ましくは1.1〜1.8である。
【0060】
典型的には、カルシウム化合物および二酸化ケイ素含有成分の総量に対する水の質量比は、0.2〜50、好ましくは2〜10、最も好ましくは4〜6である。この文脈において、水とは、当該方法が実施される反応混合物中の水を意味する。当該方法の生産量を増やすために、当該方法を比較的少ない含水量において実施することが好ましい。さらに、それほど多くの量の水を除去する必要がないので、当該湿潤生成物から比較的便利に乾燥生成物を得ることも可能である。ペースト状の稠度の生成物を得られることから、2〜10、それぞれ4〜6の比率が特に好ましく、これは、粉砕処理法にとって好ましい。
【0061】
本発明よる方法は、コンクリート製造の現場(例えば、レディーミクストコンクリートコンクリートプラント、プレキャストコンクリートプラント、あるいはモルタル、コンクリート、または他の任意のセメント質製品が製造される任意の他のプラントなど)において実施するのが好ましく、得られた硬化促進剤組成物がバッチ水として使用されることを特徴とする。得られた硬化促進剤組成物は水系であり、特に現場の特定のニーズに従って硬化促進剤を設計する場合、バッチ水として直接使用することができる。
【0062】
この文脈において、バッチ水とは、コンクリート製造または同様のセメント質材料の製造において使用される水である。通常、バッチ水は、例えば、レディーミクストコンクリートプラントまたはプレキャストコンクリートプラント、建設現場、あるいはコンクリートまたは他のセメント質材料が製造される他の任意の場所において、セメントおよび、例えば骨材と混合される。通常、バッチ水は、広範な添加剤(例えば、流動化剤、硬化促進剤、遅延剤、収縮低減剤、空気連行剤、および/または消泡剤など)を含有し得る。それぞれの混和剤を輸送する必要がなくなるので、コンクリートまたは同様の材料の製造のためのバッチ水において本発明による硬化促進剤を製造するのが有利である。
【0063】
コンクリート製造の現場(例えば、レディーミクストコンクリートプラントまたはプレキャストコンクリートプラント)において好ましく実施される本発明のさらなる好ましい実施形態は、水、好ましくはバッチ水に対する、水溶性カルシウム化合物、水溶性ケイ酸塩化合物、および本発明による重縮合物の総量の質量比が1/1000〜1/10、より好ましくは1/500〜1/100であることを特徴とする。当該懸濁液の高希釈は、硬化促進剤の有効性にとって有利である。
【0064】
本発明の好ましい実施形態において、当該方法は、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマー、好ましくは不飽和モノマーのラジカル重合によって得られる櫛型ポリマーが、重縮合物を含有する水溶液中に存在し、当該重縮合物が、
(I)ポリエーテル側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1つの構造ユニットと、
(II)少なくとも1つのリン酸エステル基および/またはその塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1つの構造ユニットと
を有することを特徴とする。
【0065】
好ましくは、当該反応が実施される水溶液は、当該重縮合物以外に、第二ポリマーを含有する。当該第二ポリマーは、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマー、好ましくは不飽和モノマーのラジカル重合によって得られる櫛型ポリマーである。
【0066】
本発明の文脈において、櫛型ポリマーは、直鎖状の主鎖上におおよそ規則的な間隔で、(各場合において、少なくとも200g/mol、特に好ましくは少なくとも400g/molの分子量を有する)比較的長い側鎖を有するポリマーとして理解されたい。これらの側鎖の長さは、およそ同じであることが多いが、互いに大きく異なっていてもよい(例えば、異なる長さの側鎖を有するポリエーテルマクロモノマーが、重合ユニットの形態において組み入れられている場合など)。そのようなポリマーは、例えば、酸性モノマーとポリエステルマクロモノマーとのラジカル重合によって得られる。好適なモノヒドロキシ官能性またはモノアミノ官能性のポリアルキレングリコール、好ましくはアルキルポリエチレングリコールによる、ポリ(メタ)アクリル酸のそれぞれエステル化および/またはアミド化は、そのような櫛型ポリマーへの代替経路である。ポリ(メタ)アクリル酸のエステル化および/またはアミド化によって得られる櫛型ポリマーは、例えば、欧州特許第1138697(B1)号に記載されており、なお、当該特許の開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
好ましくは、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマーの、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した平均分子量Mは、5,000〜200,000g/mol、好ましくは10,000〜80,000g/mol、最も好ましくは20,000〜70,000g/molである。当該ポリマーは、平均モル質量および転化率に関してサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した(カラムの組み合わせ:OH−Pak SB−G、OH−Pak SB 804 HQ、およびOH−Pak SB 802.5 HQ(Shodex社、日本);溶離液:80体積%のHCONH水溶液(0.05モル/l)および20体積%のアセトニトリル;注入量:100μl;流速:0.5ml/分)。平均モル質量の測定のための較正は、直鎖状ポリ(エチレンオキシド)およびポリエチレングリコール標準物質を使用して行った。転化率の指標として、コポリマーのピークを相対高さ1に標準化し、残留モノマーの含有量の指標として、未転化マクロモノマー/PEG含有オリゴマーのピーク高さを使用する。
【0068】
好ましい実施形態において、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマーが、エーテル官能基および酸性官能基を有する側鎖を主鎖上に有するコポリマーとして存在する。
【0069】
好ましい実施形態において、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマーは、酸性モノマー、好ましくはカルボン酸モノマー、およびポリエーテルマクロモノマーの存在下におけるフリーラジカル重合によって生成されるコポリマーとして存在し、それにより、全体で、コポリマーのすべての構造ユニットの少なくとも45mol%、好ましくは少なくとも80mol%は、酸性モノマー、好ましくはカルボン酸モノマー、およびポリエーテルマクロモノマーを、重合ユニットの形態で組み入れることによって生成される。酸性モノマーは、フリーラジカル共重合が可能であり、少なくとも1つの炭素二重結合を有し、少なくとも1つの酸性基、好ましくはカルボン酸基を有し、ならびに水性媒体において酸として反応するモノマーを意味するものとして理解されたい。その上、酸性モノマーは、フリーラジカル共重合が可能であり、少なくとも1つの炭素二重結合を有し、加水分解反応の結果として水性媒体において少なくとも1つの酸性基、好ましくはカルボン酸基を形成し、ならびに水性媒体において酸として反応するモノマーを意味するものとしても理解されたい(例:無水マレイン酸、または(メタ)アクリル酸の加水分解性エステル)。
【0070】
本発明の文脈において、ポリエーテルマクロモノマーは、フリーラジカル共重合が可能であり、少なくとも1つの炭素二重結合を有し、ならびに少なくとも2個のエーテル酸素原子を有する化合物であり、ただし、当該コポリマー中に存在する当該ポリエーテルマクロモノマー構造ユニットは、少なくとも2個のエーテル酸素原子、好ましくは4個のエーテル酸素原子、より好ましくは少なくとも8個のエーテル酸素原子、最も好ましくは少なくとも15個のエーテル酸素原子を有する側鎖を有する。
【0071】
酸性モノマーまたはポリエーテルマクロモノマーを構成しない構造ユニットは、例えば、スチレンおよびスチレンの誘導体(例えば、メチル置換誘導体など)、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ブタジエン、プロピオン酸ビニル、不飽和炭化水素(例えば、エチレン、プロピレン、および/または(イソ)ブチレンなど)であり得る。この一覧は、非包括的列挙である。好ましいのは、1つ以下の炭素二重結合を有するモノマーである。
【0072】
本発明の好ましい実施形態において、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマーは、スチレンと、単官能性ポリアルキレングリコールによるマレイン酸の半エステルとのコポリマーである。好ましくは、そのようなコポリマーは、第一工程において、モノマースチレンと無水マレイン酸(またはマレイン酸)とのフリーラジカル重合によって生成され得る。第二工程において、ポリアルキレングリコール、好ましくはアルキルポリアルキレングリコール(好ましくはアルキルポリエチレングリコール、最も好ましくはメチルポリエチレングリコール)が、スチレンおよび無水マレイン酸によるコポリマーと反応して、当該酸性基のエステル化が達成される。スチレンは、スチレン誘導体(例えば、メチル置換誘導体など)によって完全にまたは部分的に代替することができる。この好ましい実施形態のコポリマーは、米国特許第5,158,996号に記載されており、なお、当該特許の開示は、本特許出願に組み入れられる。
【0073】
頻繁には、構造ユニットは、重合ユニットの形態における酸性モノマーの組み込みにより、コポリマーにおいて生成され、この場合、構造ユニットは、一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および/または(Id):
【化5】

[式中、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにHおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基で表され、
Xは、同じであるかまたは異なっており、ならびにNH−(C2n)(ここで、n=1、2、3、または4である)および/またはO−(C2n)(ここで、n=1、2、3、または4である)、および/または存在しないユニットで表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにOH、SOH、PO、O−PO、および/またはパラ−置換C−SOHで表されるが、ただし、Xが存在しないユニットの場合、RはOHで表される]
【化6】

[式中、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにHおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基で表され、
n=0、1、2、3、または4であり、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにSOH、PO、O−PO、および/またはパラ−置換C−SOHで表される]
【化7】

[式中、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにHおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基で表され、
Zは、同じであるかまたは異なっており、ならびにOおよび/またはNHで表される]
【化8】

[式中、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにHおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基で表され、
Qは、同じであるかまたは異なっており、ならびにNHおよび/またはOで表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、(C2n)−SOH(ここで、n=0、1、2、3、または4、好ましくは、1、2、3、または4である)、(C2n)−OH
(ここで、n=0、1、2、3、または4、好ましくは、1、2、3、または4である);(C2n)−PO(ここで、n=0、1、2、3、または4、好ましくは、1、2、3、または4である)、(C2n)−OPO(ここで、n=0、1、2、3、または4、好ましくは、1、2、3、または4である)、(C)−SOH、(C)−PO、(C)−OPO、および/または(C2m−O−(A’O)α−R(ここで、m=0、1、2、3、または4、好ましくは、1、2、3、または4であり、e=0、1、2、3、または4、好ましくは、1、2、3、または4であり、A’=Cx’2x’(ここで、x’=2、3、4、または5である)および/またはCHC(C)H−であり、α=1〜350の整数であり、Rは、同じであるかまたは異なっており、ならびに非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基によって表される)で表される]
に従う。
【0074】
典型的には、構造ユニットは、重合ユニットの形態においてポリエーテルマクロモノマーを組み込むことにより、コポリマー中に生成され、この場合、当該構造ユニットは、一般式(IIa)、(IIb)、および/または(IIc):
【化9】

[式中、
10、R11、およびR12は、各場合において、同じであるかまたは異なっており、ならびに、互いに独立して、Hおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基で表され、
Eは、同じであるかまたは異なっており、ならびに非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキレン基、好ましくはC〜Cアルキレン基、シクロヘキシレン基、CH−C10、オルト−置換、メタ−置換、もしくはパラ−置換C、および/または存在しないユニットで表され、
Gは、同じであるかまたは異なっており、ならびにO、NH、および/またはCO−NHで表されるが、ただし、Eが存在しないユニットの場合、Gも、存在しないユニットとして存在し、
Aは、同じであるかまたは異なっており、ならびにC2x(ここで、x=2、3、4および/または5(好ましくは、x=2)である)および/またはCHCH(C)で表され、
nは、同じであるかまたは異なっており、ならびに0、1、2、3、4および/または5で表され、
aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに2〜350(好ましくは、10〜200)の整数で表され、
13は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基、CO−NH、および/またはCOCHで表される]
【化10】

[式中、
14は、同じであるかまたは異なっており、ならびにHおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基で表され、
Eは、同じであるかまたは異なっており、ならびに非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキレン基、好ましくはC〜Cアルキレン基、シクロヘキシレン基、CH−C10、オルト−置換、メタ−置換、もしくはパラ−置換C、および/または存在しないユニットで表され、
Gは、同じであるかまたは異なっており、ならびに存在しないユニット、O、NH、および/またはCO−NHで表されるが、ただし、Eが存在しないユニットの場合、Gも、存在しないユニットとして存在し、
Aは、同じであるかまたは異なっており、ならびにC2x(ここで、x=2、3、4、および/または5である)および/またはCHCH(C)で表され、
nは、同じであるかまたは異なっており、ならびに0、1、2、3、4、および/または5で表され、
aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに2〜350の整数で表され、
Dは、同じであるかまたは異なっており、ならびに存在しないユニット、NH、および/またはOで表されるが、ただし、Dが、存在しないユニットの場合、b=0、1、2、3、または4であり、ならびにc=0、1、2、3、または4であり、この場合、b+c=3または4であり、ならびに、
ただし、Dが、NHおよび/またはOの場合、b=0、1、2、または3であり、c=0、1、2、または3であり、この場合、b+c=2または3であり、
15は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基、CO−NH、および/またはCOCHで表される]
【化11】

[式中、
16、R17、およびR18は、各場合において、同じであるかまたは異なっており、ならびに、互いに独立して、Hおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基で表され、
Eは、同じであるかまたは異なっており、ならびに非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキレン基、好ましくはC〜Cアルキレン基、シクロヘキシレン基、CH−C10、オルト−置換、メタ−置換、もしくはパラ−置換C、および/または存在しないユニットで表され、好ましくは、Eは、存在しないユニットではなく、
Aは、同じであるかまたは異なっており、ならびにC2x(ここで、x=2、3、4、および/または5である)および/またはCHCH(C)で表され、
nは、同じであるかまたは異なっており、ならびに0、1、2、3、4および/または5で表され、
Lは、同じであるかまたは異なっており、ならびにC2x(ここで、x=2、3、4、および/または5である)および/またはCH−CH(C)で表され、
aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに2〜350の整数で表され、
dは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜350の整数で表され、
19は、同じであるかまたは異なっており、ならびにHおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基によって表され、
20は、同じであるかまたは異なっており、ならびにHおよび/または非分岐鎖のC〜Cアルキル基によって表される]
に従う。
【0075】
本発明のさらなる実施形態において、構造ユニットは、重合ユニットの形態においてポリエーテルマクロモノマーを組み込むことにより、コポリマー中に生成され、この場合、当該構造ユニットは、一般式(IId):
【化12】

[式中、
21、R22、およびR23は、各場合において、同じであるかまたは異なっており、ならびに、互いに独立して、Hおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基で表され、
Aは、同じであるかまたは異なっており、ならびにC2x(ここで、x=2、3、4、および/または5である)および/またはCHCH(C)で表され、
aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに2〜350の整数で表され、
24は、同じであるかまたは異なっており、ならびにHおよび/または非分岐鎖もしくは分岐鎖状C〜Cアルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基で表される]
に従う。
【0076】
好ましくは各場合において4〜340の算術平均数のオキシアルキレン基を有するアルコキシル化イソプレノールおよび/またはアルコキシル化ヒドロキシブチルビニルエーテルおよび/またはアルコキシル化(メタ)アリルアルコールおよび/またはビニル化メチルポリアルキレングリコールが、好ましくは、ポリエーテルマクロモノマーとして使用される。メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のモノエステル、または複数のこれらの成分の混合物が、好ましくは酸性モノマーとして使用される。
【0077】
本発明のさらなる実施形態において、当該反応は、多糖類誘導体および/または500,000g/mol超、より好ましくは1,000,000g/mol超の平均分子量Mを有する(コ)ポリマーの群より選択される増粘剤ポリマーを含有する水溶液の存在下において、完全にまたは部分的に実施され、当該(コ)ポリマーは、(好ましくはフリーラジカル重合によって)非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体および/またはスルホン酸モノマー誘導体から誘導される構造ユニットを有する。当該増粘剤ポリマーは、当該方法の開始時、実施中、または終了時に添加することができる。例えば、当該増粘剤ポリマーは、櫛型ポリマーの水溶液に添加してもよく、カルシウム化合物および/またはケイ酸塩化合物に添加してもよい。当該増粘剤ポリマーは、カルシウム化合物、好ましくはカルシウム塩、最も好ましくは水溶性カルシウム塩と、二酸化ケイ素含有成分との反応によって硬化促進剤組成物を製造する方法の実施中に使用することもできる。好ましくは、当該増粘剤ポリマーは、任意の粒子が不安定化されるのを防ぐために、ならびに最良の安定性を維持するために、当該反応の終了時(反応剤添加の終了時)に添加される。増粘剤は、例えばケイ酸カルシウム水和物)の分離(凝集および沈殿)を防ぐことができるという点において、安定化機能を有している。好ましくは、当該増粘剤は、硬化促進剤懸濁液の質量に対して、0.001〜10質量%、より好ましくは0.001〜1質量%の添加量において使用される。当該増粘剤ポリマーは、好ましくは、80mPa・s超の硬化促進剤懸濁液の塑性粘度が得られるように添加されるべきである。
【0078】
多糖類誘導体として、好ましいのは、セルロースエーテル、例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、およびメチルエチルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースなど)、アルキルヒドロキシアルキルセルロース(例えば、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、およびプロピルヒドロキシプロピルセルロースなど)である。好ましいのは、当該セルロースエーテル誘導体メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)であり、特に好ましいのは、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)およびメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である。各場合において、セルロースの適切なアルキル化またはアルコキシル化によって得られる上述のセルロースエーテル誘導体は、好ましくは、非イオン構造体として存在するが、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)も使用できるであろう。加えて、非イオン性デンプンエーテル誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、およびメチルヒドロキシプロピルデンプンなど)の使用も好ましい。ヒドロキシプロピルデンプンが好ましい。微生物によって産生された多糖類(例えば、ウェランガムおよび/またはキサンタンなど)、ならびに天然に存在する多糖類(例えば、アルギン酸塩、カラゲナン、およびガラクトマンナンなど)も好ましい。これらは、抽出法によって、適切な天然物から(例えば、アルギン酸塩およびカラゲナンの場合には藻類から、ガラクトマンナンの場合にはカロブ種子から)得られる。
【0079】
500,000g/mol超の平均分子量、より好ましくは1,000,000g/mol超の平均分子量Mを有する増粘(コ)ポリマーは、(好ましくはフリーラジカル重合によって)非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体および/またはスルホン酸モノマー誘導体から製造することができる。それぞれのモノマーは、例えば、アクリルアミド、好ましくはアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよび/またはN−tert−ブチルアクリルアミドの群から選択することができ、ならびに/あるいは、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、および/または2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸、あるいは言及された酸の塩の群から選択されるスルホン酸モノマー誘導体であり得る。増粘剤は、非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体および/またはスルホン酸モノマー誘導体に由来する構造ユニットを、50mol%を超えて、より好ましくは70mol%を超えて含有していることが好ましい。当該コポリマー中に好ましく含有される他の構造ユニットは、例えば、モノマーである(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と分岐鎖状もしくは非分岐鎖状のC〜C10アルコールとのエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、および/またはスチレンなどに由来し得る。
【0080】
本発明のさらなる実施形態において、当該増粘剤ポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、および/または(コ)ポリマーの群から選択される多糖類誘導体であって、500,000g/mol超の平均分子量、より好ましくは1,000,000g/mol超の平均分子量Mを有する多糖類誘導体であり、当該(コ)ポリマーは、アクリルアミド、好ましくはアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよび/またはN−tert−ブチルアクリルアミドの群から選択される非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体、ならびに/あるいは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸、および/または2−アクリルアミド−2,4,4−トリメチルペンタンスルホン酸、あるいは言及された酸の塩の群から選択されるスルホン酸モノマー誘導体から(好ましくはフリーラジカル重合によって)誘導される構造ユニットを含有する。
【0081】
非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体の群のうち、メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、および/またはメタクリルアミドが好ましく、アクリルアミドが特に好ましい。スルホン酸モノマーの群のうち、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)およびその塩が好ましい。当該アミンは、当該プロセスの開始時または他の任意の時点において添加することができる。
【0082】
本発明のさらなる実施形態において、反応は、アルカノールアミン、好ましくはトリイソプロパノールアミン、および/またはテトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(THEED)の群から選択される硬化促進剤を含有する水溶液の存在下において、完全にまたは部分的に行われる。好ましくは、当該アルカノールアミンは、水硬性結合剤、好ましくはセメントの質量に対して、0.01〜2.5質量%の添加量において使用される。
【0083】
アミン、特にトリイソプロパノールアミンおよびテトラヒドロキシエチルエチレンジアミンを使用する場合、水硬性結合剤系、特にセメント質系の早期強度発現に関して相乗効果が認められ得るであろう。好ましくは、当該アミンは、反応の終了時に添加される。
【0084】
別の実施形態において、当該反応は、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、ホスホン酸、アミノ−トリメチルエンホスホン酸、エチレンジアミノテトラ(メチルエンホスホン)酸、ジエチレントリアミノペンタ(メチルエンホスホン)酸(各場合において、当該酸のそれぞれの塩を含む)、ピロリン酸塩、五ホウ酸塩、メタホウ酸塩、および/または糖類(例えば、グルコース、糖蜜など)の群から選択される凝結遅延剤を含有する水溶液の存在下において、完全にまたは部分的に行われる。凝結遅延剤を添加する利点は、解放時間を制御することができ、特に、必要に応じて延長も可能なことである。「解放時間」なる用語は、水硬性結合剤混合物を製造した後から、水硬性結合剤混合物の適切なワーカビリティおよび打設を可能とするにはもはや流動性が十分でないと見なされる時点までの時間間隔として当業者に理解されている。解放時間は、現場でのある特定の要件および適用のタイプに応じて変わる。原則として、プレキャスト産業の場合は30〜45分間、レディーミクストコンクリート産業の場合は約90分間の解放時間を必要とする。好ましくは、凝結遅延剤は、水硬性結合剤、好ましくはセメントの質量に対して、0.01〜0.5質量%の添加量において使用される。当該遅延剤は、当該方法の開始時または任意の他の時点において添加することができる。
【0085】
好ましい実施形態において、上記において言及した任意の実施形態により得られる硬化促進剤組成物を、好ましくは噴霧乾燥法によって乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、別の可能な乾燥方法は、例えば、流動層乾燥機の使用である。時期尚早に望ましくない水和プロセスが生じるので、たとえ少量でも、水は多くの結合剤にとって有害であるということは一般的に知られている。典型的に非常に低い含水量の粉末生成物は、セメントおよび/または他の結合剤(例えば、石膏、硫酸カルシウム半水和物(バサナイト)、無水硫酸カルシウム、スラグ、好ましくは粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、スルホアルミン酸カルシウムセメント、および/またはアルミン酸カルシウムセメントなど)に混ぜ込むことが可能であるので、水系と比べて有利である。
【0086】
本発明は、さらに、上記において説明した方法によって得られる硬化促進剤組成物に関する。
【0087】
本発明の別の態様によれば、ケイ酸カルシウム水和物および重縮合物を含有する組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液に関し、当該重縮合物は、
(I)ポリエーテル側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1つの構造ユニットと
(II)少なくとも1つのリン酸エステル基またはその塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1つの構造ユニットと
を有する。
【0088】
好ましくは、当該組成物は、水硬性結合剤を含有せず、特に、セメントを含有しない。生成物のケイ酸カルシウム水和物の相は回折パターンにおいて典型的なX線回折(XRD)反射によって特徴付けられるため、X線回折(XRD)により、ケイ酸カルシウム水和物の分析が可能である。Saito,F.;Mi,G.,Hanada,M.:Mechanochemical synthesis of hydrated calcium silicates by room temperature grinding,Solid State Ionics,1997,101−103,pp.37−43によれば、形成されるケイ酸カルシウム水和物の相に応じて、ピークは変わる。20nm未満の結晶サイズを有するトバモライトおよびゾノトライトなどの異なるケイ酸カルシウム水和物の層の混合物では、11〜14Å、5.0〜5.6Å、3.0〜3.1Å、および2.76〜2.83Åのd値において典型的な反射が見られる(図1の例と比較されたい)。
【0089】
図1は、80分間、遊星ボールミルによって粉砕処理することにより、櫛型ポリマーのMelflux(登録商標)267Lおよびリン酸化重縮合物P1(P1の構造については第1表を比較されたい)を含む懸濁液においてCa(OH)およびマイクロシリカから合成した、本発明によるケイ酸カルシウム水和物の試料のX線回折パターン(XRD)を示している(第3表のAcc.M3)。測定された曲線(2))は、トバモライト(ICSD:100405)の構造から計算された曲線(1))に匹敵しており、これは、トバモライトと、合成されたケイ酸カルシウム水和物試料との類似性を示している。当該計算は、ソフトウェアTopas4.2(Bruker社)を用いてリートベルト法により行った。
【0090】
図1:トバモライト回折パターン(計算による、1))と測定した本発明による促進剤組成物の回折パターン(2))の比較
【0091】
好ましい実施形態において、当該ケイ酸カルシウム水和物の粒径は、1,000nm未満、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満であり、当該ケイ酸カルシウム水和物の粒子サイズは、分析用超遠心法によって測定する。
【0092】
好ましくは、粒径の測定は、Beckman Coulter GmbH社製の分析用超遠心機Beckman Model Optima XLIにより、25℃の温度において行った。光散乱法などの方法は、特に本発明の小さな粒子(特に、約100nm未満の粒径)には適さないため、超遠心分離の分析方法を選択する。
【0093】
H.Coelfen,‘Analytical Ultracentrifugation of Nanoparticles’,in Encyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology,(American Scientific Publishers,2004),pp.67−88の説明に従い、粒度分布は、以下の章において説明されるような分析用超遠心法により測定される。測定には、市販の分析用超遠心機であるBeckman Coulter GmbH社製「Beckman Model Optima XLI」、47807 Krefeldを使用する。
【0094】
試料を水で好適な濃度に希釈する。この濃度は、典型的には、試料の固形分が1〜40g/lである(図2の試料は、30g/lの濃度に希釈されている)。好ましくは、比較的高い希釈が選択される。選択される濃度は、好ましくは、分析する試料中のケイ酸カルシウム水和物粒子の含有量に適合させる。好適な範囲は、当業者であれば容易に見出すことができ、特に、試料の透明度および測定感度といった因子により決定される。典型的には、当該超遠心機の回転速度は、2,000〜20,000回転/分の範囲で選択される(図2の例では、回転速度は10,000回転/分とした)。回転速度は、特定の試料の必要性に従って選択することができ、比較的小さい粒子の場合は好ましくは超遠心機のより速い速度が選択され、または大きい粒子の場合はより遅い速度が選択される。ケイ酸カルシウム水和物粒子の沈降速度sは、干渉顕微鏡により25℃において測定され、好適な評価ソフトウェア、例えば、Sedfit(http://www.analyticalultracentrifugation.com/default.htm)により、干渉データから抽出する。
【0095】
ストークス‐アインシュタイン方程式:
【数1】

により、測定された沈降速度sを用いて粒子の直径dを計算することができる。
【0096】
ηは、媒体の動粘度であり、Brookfield LVDV−I粘度計を用いて、スピンドル番号1により、5回転/分の回転速度で、25℃において測定した。sは、粒子の沈降速度である。
【0097】
Δρは、25℃でのケイ酸カルシウム水和物粒子と媒体の密度の差である。ケイ酸カルシウム水和物粒子の密度は、文献データとの比較から2.1g/cmと推定される。媒体の密度は、1g/cmと推定される(希釈水溶液の場合)。粒径dの絶対値に対してΔρが及ぼす影響は小さいと想定され、したがって、Δρが推定によるものであることの影響も小さい。
【0098】
図2:本発明により合成されたケイ酸カルシウム水和物(1)および現状技術水準により合成されたケイ酸カルシウム水和物(2)の粒度分布
【0099】
測定の条件は以下の通りであった:Acc.1の固形分量30g/l(これは、約10g/lの有効固形分に相当する)、超遠心機の回転速度10,000r.p.m、測定温度25℃、ケイ酸カルシウム水和物の密度は2.1g/cmと推定し、媒体の密度は1g/cmと推定した(希釈水溶液の場合)。希釈溶液の動粘度は25℃において8.9・10−4Pa・sであり、希釈水溶液に対応した。
【0100】
図2は、(粒子が球体であるとの仮定の下での)粒径の関数として、ケイ酸カルシウム水和物粒子のサイズ分布(質量加重信号(g(D))を示している。本発明による合成により(重縮合物(この場合、第2表のAcc.1)の存在下において合成されたケイ酸カルシウム水和物粒子)、1,000nm未満、好ましくは300nmおよび200nm未満の粒子サイズを達成することが可能である。当該測定において、約130nm超の直径の粒子は確認されなかった。0〜150nmの領域の総計は、100%に等しい。比較として、現状技術水準のケイ酸カルシウム水和物粒子(第2表のAcc.20)では、この領域において検出可能な粒子は確認されない。検出された粒子は、1,000nm超であった。
【0101】
好ましくは、当該水性硬化促進剤組成物は、
i)0.1〜75質量%、好ましくは0.1〜50質量%、最も好ましくは0.1〜10質量%のケイ酸カルシウム水和物
ii)0.001〜60質量%、好ましくは0.1〜30質量%、最も好ましくは0.1〜10質量%の重縮合物
iii)24〜99質量%、より好ましくは50〜99質量%、最も好ましくは70〜99質量%の水
を含有する。
【0102】
典型的には、当該組成物中、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液中のケイ酸カルシウム水和物は、フォシャグ石、ヒレブランド石、ゾノトライト、ネコ石、単斜トベルモリ石、9Å−トバモライト(リバーサイド石)、11Å−トバモライト、14Å−トバモライト(プロンビエル石)、ジェンニ石、メタジェンナイト、カルシウムコンドロダイト、アフィライト、α−CSH、デルライト、ジャフェ石、ローゼンハーン石、キララ石、および/またはスオルン石である。
【0103】
より好ましくは、当該組成物中、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液中のケイ酸カルシウム水和物は、ゾノトライト、9Å−トバモライト(リバーサイド石)、11Å−トバモライト、14Å−トバモライト(プロンビエル石)、ジェンニ石、メタジェンナイト、アフィライト、および/またはジャフェ石である。
【0104】
本発明の好ましい実施形態において、当該組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液中のケイ酸カルシウム水和物におけるケイ素に対するカルシウムのモル比は、0.6〜2、好ましくは1.1〜1.8である。
【0105】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、ケイ酸カルシウム水和物における水に対するカルシウムのモル比は、0.6〜6、好ましくは0.6〜2、より好ましくは0.8〜2である。当該範囲は、例えば、セメントの水和の際に形成されるケイ酸カルシウム水和物相において見出されるものに類似している。利点は、水硬性結合剤に対する良好な促進効果である。
【0106】
典型的には、当該重縮合物の構造ユニット(I)および(II)は、以下の一般式:
【化13】

[式中、
Aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに5〜10個のC原子を有する置換または非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、
Bは、同じであるかまたは異なっており、ならびにN、NH、またはOで表され
BがNの場合、nは2であり、BがNHまたはOの場合、nは1であり、
およびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表され、
aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜300の整数で表され、
Xは、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはH、好ましくはHで表される]
【化14】

[式中、
Dは、同じであるかまたは異なっており、ならびに5〜10個のC原子を有する置換または非置換のヘテロ芳香族化合物で表され、
Eは、同じであるかまたは異なっており、ならびにN、NH、またはOで表され、
EがNの場合、mは2であり、EがNHまたはOの場合、mは1であり、
およびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表され、
bは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜300の整数で表され、
Mは、互いに独立して、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、および/またはHであり、
aは、1であるか、またはアルカリ土類金属イオンの場合には1/2である]
で表される。
【0107】
典型的には、構造ユニットのモル比(I):(II)は、1:10〜10:1、好ましくは1:8〜1:1である。
【0108】
本発明のさらなる実施形態において、当該重縮合物は、以下の式:
【化15】

[式中、
Yは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに(I)、(II)、または重縮合物のさらなる構成要素で表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、CH、COOH、または5〜10個のC原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、CH、COOH、または5〜10個のC原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物によって表される]
で表されるさらなる構造ユニット(III)を有する。
【0109】
典型的には、構造ユニット(III)におけるRおよびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに、H、COOH、および/またはメチル、好ましくはHで表される。
【0110】
好ましくは、構造ユニットのモル比[(I)+(II)]:(III)は、当該重縮合物において1:0.8〜3である。
【0111】
好ましい実施形態において、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマー、好ましくは不飽和モノマーのラジカル重合によって得られる櫛型ポリマーは、組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液中に存在する。
【0112】
好ましくは、本発明による組成物は、重縮合物以外に第二のポリマーを含有する。当該第二のポリマーは、好ましくは、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマー、好ましくは不飽和モノマーのラジカル重合によって得られる櫛型ポリマーである。
【0113】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、組成物中、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液中における水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマーは、エーテル基および酸性基を有する側鎖を主鎖上に有するコポリマーとして存在する。
【0114】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、組成物中、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液中における水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマーは、酸性モノマー、好ましくはカルボン酸モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーの存在下でのフリーラジカル重合によって生成されるコポリマーとして存在し、それにより、全体で、コポリマーの全構造ユニットの少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも80モル%が、酸性モノマー、好ましくはカルボン酸モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーを重合ユニットの形態において組み入れることにより生成される。
【0115】
本発明のさらなる実施形態において、酸性モノマーを重合ユニットの形態で組み入れることによって構造ユニットがコポリマー中に生成される組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液であって、構造ユニットが一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および/または(Id)に従う、組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液が対象である。一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および/または(Id)は、前述の本文において詳細に説明されており、不要な反復を避けるためにここでは繰り返さない。当該式は、ここに詳細に挿入されているものとして見なされるべきである。
【0116】
本発明のさらなる実施形態において、ポリエーテルマクロモノマーを重合ユニットの形態で組み入れることよって構造ユニットがコポリマー中に生成される組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液であって、当該構造ユニットが、一般式(IIa)、(IIb)、および/または(IIc)に従う、組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液が対象である。
【0117】
ポリエーテルマクロモノマーは、一般式(IId)による構造ユニットであり得る。一般式(IIa)、(IIb)、および/または(IIc)、ならびに(IId)は、前述の本文において詳細に説明されており、不要な反復を避けるためにここでは繰り返さない。当該式は、ここに詳細に挿入されているものとして見なされるべきである。
【0118】
好ましくは、硬化促進剤懸濁液は、多糖類誘導体および/または500,000g/mol超、より好ましくは1,000,000g/mol超の平均分子量Mを有する(コ)ポリマーの群から選択される増粘剤ポリマーを含有し、当該(コ)ポリマーは、非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体および/またはスルホン酸モノマー誘導体から(好ましくはフリーラジカル重合によって)誘導される構造ユニットを有する。好ましくは、当該増粘剤は、硬化促進剤懸濁液の質量に対して、0.001〜10質量%、より好ましくは0.001〜1質量%の添加量において使用される。当該増粘剤ポリマーは、好ましくは、80mPa・s超の当該硬化促進剤懸濁液の塑性粘度が得られるように添加されるべきである。当該増粘剤ポリマーの詳細については、前述の本文(当該方法の説明)において示されており、ここで援用されるものとする。
【0119】
本発明による硬化促進剤を、比較的高い含有量(セメントに対して0.1〜5質量%)の可溶性硫酸塩を含有するセメントと組み合わせて使用することが、特に有利である。そのようなセメントは市販されているか、またはセメントに水溶性硫酸塩を添加することも可能である。当該セメントは、好ましくは、無水アルミン酸塩相が豊富である。好ましくは、当該水溶性硫酸塩は、硫酸ナトリウムおよび/または硫酸カリウムから選択される。当該可溶性硫酸塩と本発明による硬化促進剤とを組み合わせることにより、セメントの相乗的硬化促進効果が得られる。
【0120】
当該組成物、好ましくは硬化促進剤懸濁液は、好ましくは、アルカノールアミン(好ましくはトリイソプロパノールアミン)および/またはテトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(THEED)の群から選択される硬化促進剤を含有する。好ましくは、アルカノールアミンは、水硬性結合剤、好ましくはセメントの質量に対して、0.01〜2.5質量%の添加量で使用される。アミン、特にトリイソプロパノールアミンおよびテトラヒドロキシエチルエチレンジアミンを使用する場合、水硬性結合剤系、特にセメント質系の早期の強度発現に関して、相乗効果が認められ得る。
【0121】
当該組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液は、好ましくは、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、ホスホン酸、アミノ−トリメチルエンホスホン酸、エチレンジアミノテトラ(メチルエンホスホン酸)酸、ジエチルエントリアミノペンタ(メチルエンホスホン)酸(各場合において、当該酸のそれぞれの塩を含む)、ピロリン酸塩、五ホウ酸塩、メタホウ酸塩、および/または糖類(例えば、グルコース、糖蜜)の群から選択される凝結遅延剤を含有する。凝結遅延剤を添加する利点は、解放時間を制御することができ、特に必要であれば延長することができる点である。好ましくは、当該凝結遅延剤は、水硬性結合剤、好ましくはセメントの質量に対して、0.01〜0.5質量%の添加量において使用される。
【0122】
当該組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液は、建設化学品の分野において典型的に使用される任意の配合成分、好ましくは、消泡剤、空気連行剤、遅延剤、収縮低減剤、再分散性粉末、他の硬化促進剤、凍結防止剤、および/または風化防止剤も含有し得る。
【0123】
本発明の好ましい実施形態において、当該組成物は粉末状である。当該粉末生成物は、例えば噴霧乾燥または流動層乾燥機での乾燥により水性生成物から得られる。
【0124】
本発明は、セメント、石膏、無水石膏、スラグ、好ましくは粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、スルホアルミン酸カルシウムセメント、および/またはアルミン酸カルシウムセメントを含有する建築材料混合物における、好ましくは水硬性結合剤としてセメントを実質的に含有する建築材料混合物における、本発明のいずれかの方法により得られる硬化促進剤組成物の使用、または本発明による組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液の使用を含む。この文脈において、石膏は、異なる量の結晶水分子を有する全ての可能な硫酸カルシウム担持体(例えば、硫酸カルシウム半水和物など)を含む。
【0125】
本発明は、水性液体に対する硬化した建築材料混合物の浸透性(好ましくはDIN EN 12390−8による透水深度)を減じるための、本発明による硬化促進剤組成物の使用を含み、当該建築材料混合物は、セメント、石膏、無水石膏、スラグ、好ましくは粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、スルホアルミン酸カルシウムセメント、および/またはアルミン酸カルシウムセメントを含有し、好ましくは当該建築材料混合物は、水硬性結合剤としてセメントを実質的に含有する。
【0126】
水および水性液体に対する建築材料の浸透性は、コンクリートの耐久性に対して重要な影響を有するパラメータである。例えば、コンクリート構造体の損傷は、かなりの程度が環境からの水の進入などに起因している。「水性液体」なる用語は、この文脈において、塩(例えば、塩化物イオン、硫酸イオン)などの侵食性物質を含有し得る水を意味する。建築材料混合物にとって、より高い耐久性を得るためには、水の浸透を低減できることが決め手となる。
【0127】
透水深度の測定値は、環境による損傷(例えば、浸出、風化、または硫酸塩侵食)に対してセメント質材料がどれくらい耐えられるかを表す好適な指標である。当該試験は、侵食性の水性物質の浸透に対して材料がどの程度不浸透性であるかを示すものである。透水深度の低下は、結果としてコンクリートの耐久性についての情報である。長期間の耐久性は、コンクリート製造業者および施工業者が求める非常に重要な特性である。本発明の促進剤組成物を使用した実験的試験において見出された透水深度の低下は、非常に驚くべきものであった。この材料特性に対する促進剤の好ましい作用は、コンクリート中の水和生成物の異なる構造によるものであり、これが、コンクリートの間隙を減少させると考えられる。
【0128】
本発明の実施形態は、本発明の組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液、ならびにセメント、石膏、無水石膏、スラグ、好ましくは粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、スルホアルミン酸カルシウムセメント、および/またはアルミン酸カルシウムセメントを含有する建築材料混合物が対象である。好ましくは、当該建築材料混合物は、水硬性結合剤としてセメントを実質的に含有する。当該硬化促進剤組成物は、好ましくは、クリンカーの質量に対して0.05質量%〜5質量%の添加量において当該建築材料混合物中に含有される。
【0129】
例示では、建築材料混合物なる用語は、乾燥形態または水性形態において硬化状態または塑性状態にある混合物を意味し得る。乾燥建築材料混合物は、例えば、当該結合剤、好ましくはセメントと、本発明による(好ましくは粉末形態の)硬化促進剤組成物との混合物であり得る。結合剤成分および硬化促進剤組成物に水を添加することによって、水性形態(通常はスラリー、ペースト、フレッシュモルタル、またはフレッシュコンクリート形態)の混合物が生成され、次いで、塑性状態から硬化状態へと変わる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、トバモライト及び本発明によるケイ酸カルシウム水和物の試料のX線回折パターン(XRD)を示す。
【図2】図2は、粒径の関数として、ケイ酸カルシウム水和物粒子のサイズ分布(質量加重信号(g(D))を示す。
【図3】図3は、Karlstadtセメントの水和の熱流曲線を示す。
【0131】
実施例
リン酸化重縮合物の調製(基本手順)
加熱装置および攪拌機を備えた反応器に、構造ユニット(I)の化合物(例えば、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(以下、PhPEGと呼ぶ))と、構造ユニット(II)の化合物((例えば、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテルホスフェートまたはフェノキシエタノールホスフェート(以下、「ホスフェート」と呼ぶ))と、ケトン化合物(IIIa)(例えば、ホルムアルデヒドなど)水性ホルムアルデヒドまたはトリオキサンと同様、パラホルムアルデヒドを使用することもできる))とを充填する。当該反応混合物を、典型的には90℃〜120℃の温度まで加熱し、酸触媒(典型的には、硫酸またはメタンスルホン酸)を添加することによって、重縮合を開始する。所望の分子量範囲が達成されるまで、典型的には、当該反応混合物を1〜6時間攪拌する。次いで、当該重縮合物を水で希釈し、中和して、25〜80質量%の固形分の溶液を得る。当該基本手順による方法およびそれぞれのモノマーの詳細を第1表にまとめる。当該表において、「ホスフェート」のタイプAは、フェノキシエタノールホスフェートを意味し、Bは、平均で4〜5個のエチレングリコールユニットを有するポリエチレングリコールモノフェニルエーテルホスフェートであり、Cは、平均で3〜4個のエチレングリコールユニットを有するポリエチレングリコールモノフェニルエーテルホスフェートを意味する。ホルムアルデヒド供給源Fは、ホルムアルデヒドの30.5%水溶液であり、Pはパラホルムアルデヒドであり、Tはトリオキサンである。酸のタイプSは硫酸であり、Mはメタンスルホン酸である。
【表1】

【0132】
促進剤組成物の調製(カルシウム化合物とケイ酸塩化合物との反応)
第2表に、各促進剤組成物に使用される様々な配合および合成条件についての詳細を示す。促進剤組成物を製造において、2種類の溶液により作業することができる。この場合、それぞれの反応剤(溶液1はケイ酸塩化合物を含有し、溶液2はカルシウム化合物を含有し、溶液1または2の少なくとも一方は重縮合物および場合により櫛型ポリマーを含有する)を一緒に混合する。あるいは、第3の溶液(溶液3は、ポリマー、特に本発明による重縮合物を場合により櫛型ポリマーと組み合わせて含有する)を使用することもできる。当該ポリマーは、第2表に示す質量百分率に従って、溶液1、2および3に分配することも可能である。これらの溶液は、室温で水に当該水溶性の塩を溶解させ、次いで、ポリマーを混合して完全に溶解させることにより、反応開始前に調製する。反応は、第2表の混合手順の指示に従って、機械的に撹拌しながら、ある特定の添加速度においてそれぞれの溶液を供給することにより開始する。合成全体を通して、攪拌速度および温度を制御する。反応剤添加後、当該懸濁液をさらに30分間混合し、その後、回収して貯蔵する。合成の終了時に約1kgの懸濁液が得られるように、量を調整する。当該懸濁液の固形分は、3g+/−0.1gの懸濁液を、磁器製のるつぼにおいて、60℃のオーブンで24時間乾燥させることにより測定する。
【0133】
有効固形分は、以下の方法により計算する。本発明者らは、有効含有量は、(測定した固形分から得られる)全固体質量から、有機部分、ナトリウムイオン、および硝酸イオンを差し引いたものであると考える。有機物部分、ナトリウムイオン、および硝酸イオンは、単純に合成から差し引く。
【0134】
櫛型ポリマーのGlenium(登録商標) ACE30は、モノマーのマレイン酸、アクリル酸、ビニルオキシブチル−ポリエチレングリコール−5800をベースとする市販のポリカルボキシレートエーテル(BASF Italia S.p.A.から入手可能)である(M=40,000g/mol(G.P.Cにより測定);試料の固形分は45質量%)。表中、リン酸化重縮合物および櫛型流動化剤の量は、常に全溶液のgで表される。
【0135】
DF93は、市販の消泡剤である(BASF Construction Polymers GmbHから入手可能)。合成の際に使用されるDF93の量は、乾燥固体の質量で表している。促進剤組成物に関しては、硝酸カルシウムおよびケイ酸ナトリウム添加後、粉末として、31.2gのVM1を非常にゆっくり添加する。当該粘度調整剤VM1は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびN,N−ジメチルアクリルアミドから、モル比1において作製されるコポリマー(Mw=500,000g/mol)である。VM1の添加後、当該懸濁液を12時間攪拌した。
【0136】
比較例の合成
ここでは、比較例として促進剤組成物19、20、および21を合成するが、これらは、いかなる重縮合物、櫛型ポリマー、または他の有機添加剤も含有しない。得られる沈殿物は、ポリマーを含まないケイ酸カルシウム水和物である。促進剤21に関しては、水系合成の後、窒素ガスによる8barの圧力により、0.1マイクロメートル孔径のフィルターで当該懸濁液をろ過する。次いで、湿潤生成物を得て、これを、常にろ過しながら1リットルの飽和水酸化カルシウム溶液で洗浄する。ろ過の後、当該生成物を回収し、さらに、60℃のオーブンで24時間乾燥させる。この乾燥工程後、最後に、当該粉末を、乳鉢において乳棒により手作業で粉砕する。促進剤21は、ポリマーを含まないケイ酸カルシウム水和物の粉末である。
【表2】

【表3】

【0137】
促進剤組成物の調製(カルシウム化合物と二酸化ケイ素含有化合物との反応)
合成の出発材料として、Ca(OH)粉末およびフュームドシリカ(Sigma Aldrich社)を使用した。14.83gのCa(OH)を、5.37gの使用ポリマーを溶解させた153gのCO不含水と混合した。12.01gのヒュームドSiO(Sigma Aldrich社)をCa(OH)スラリーと混合した。得られたスラリーを、ZrO製の粉砕具を備えた250ml容量の遊星ボールミル(Fritsch Pulverisette 4)に投入した。直径10mmの粉砕体100個を使用した。粉砕工程時の回転の相対比は−2.18とした。総粉砕時間は80分間とし、ペーストの温度を70℃未満に維持するために20分ごとに停止した。粉砕処理後、ペーストを篩過し、CO不含水で洗浄して粉砕体を分離した。得られた懸濁液を45℃で14時間加熱して一定質量に達した後に測定した固形分は、13.5質量%である。
【0138】
ポリマーとして、以下を使用した:
(i)櫛形ポリマーMelflux(登録商標) PCE 267L/40% N.D.(市販のポリカルボキシレートエーテル、Mw=70,000g/mol(G.P.Cにより測定))、
(ii)本発明の実施例1による重縮合物(P1として示す)。
【0139】
第3表に、上記において説明した手順によって合成した様々な促進剤のタイプについてまとめる。ポリマーの質量は、ポリマー懸濁液の固形分を基にしている。
【表4】

【0140】
促進剤M1は、上記において説明した方法により、ポリマーを使用せずに合成したレファレンスの促進剤である。
【0141】
コンクリート試験:圧縮強度
調製およびコンクリートの配合
DIN−EN12390に従い、コンクリートミックスは、以下(1mの場合)からなる:
水対セメントの比(W/C)が0.47の場合、
320kgのセメント
123kgのケイ砂0/0.5
78kgのケイ砂0/1
715kgの砂0/4
424kgの砂利(4/8)
612kgの砂利(8/16)
150リットルの水
あるいは
水対セメントの比(W/C)が0.37の場合、
400kgのセメント
78kgのケイ砂0/0.5
97kgのケイ砂0/1
732kgの砂0/4
301kgの砂利(4/8)
681kgの砂利(8/16)
148リットルの水
ならびに流動化剤および促進剤などの添加剤。
【0142】
示される水の量には、添加された流動化剤および/または促進剤組成物中に含有される水も含まれる。
【0143】
Glenium(登録商標) ACE30は、通常、高性能減水剤として混合の終了時に添加し、その添加量は、セメント質量に対する固形分の質量百分率として表す。
【0144】
試験する促進剤組成物は、練り混ぜ水に添加した後にセメントと混合する。添加する促進剤の量は、セメント質量に対する懸濁液質量(水を含む)の百分率で示し、括弧内にセメント質量に対する有効固形分質量の百分率を示す。この注釈は、セメントとの配合物において促進剤を使用する場合全文書において適用される。
【0145】
テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン(THEED)およびトリイソプロパノールアミン(TIPA)を、セメント質量に対する固形分の百分率において添加する。
【0146】
コンクリートミックスの製造後、DIN−EN 12390−2に従って試験体[15cm辺長の立方体]を作製し、振動台で締固めて、所望の養生温度(5℃、20℃、または50℃)で保管し、様々な時間の後に圧縮強度を測定する。
【0147】
当該促進剤組成物を、周知の促進剤(例えば、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウム)と比較する。比較用の促進剤も、セメント質量に対する固形分の百分率において添加する。これらも、練り混ぜ水に直接混合する。
【0148】
4種類の異なるセメント(C1〜C4)、または同じセメントの異なるバッチを使用した。全てのセメントは、Schwenk社から市販されている。
【0149】
当該コンクリート実験の詳細および結果を第4表にまとめる。
【0150】
いかなる促進剤も含有しないコンクリートレファレンスミックス(第4表を参照されたい)は、ミックスNo.1、7、および15である。比較例としてここで使用する、通常の促進剤(現状技術水準の促進剤、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、またはアミン)を含有するコンクリートミックスは、ミックスNo.2〜4、8〜10、16〜19、24、25、31、および32である。本発明によるコンクリートミックスは、ミックスNo.5、6、11〜14、20〜23、26〜30、および33〜36である。
【表5】

【表6】

【0151】
第4表のコンクリート試験の結果について、次章で説明する。
【0152】
コンクリートミックスNo.1〜6(セメントC1含有、W/C=0.47、20℃で養生)
本発明によるミックス5および6は、レファレンス(ミックス1)および比較例2〜4と比較して、(比較例2〜4との比較において有効材料の含有量がはるかに少なくても)6、8、および10時間での初期の強度発現において著しい向上が認められる。このことは、現状技術水準の促進剤と比較した場合に、本発明による促進剤の有効性が驚くべきものであることを示している。
【0153】
第4表の結果は、20℃の温度において、初期材齢圧縮強度(6、8、10時間)の向上が、異なるタイプのセメント(C2、C3、およびC4)に対しても達成され得ることを示している。したがって、本発明による促進剤は、様々なセメントタイプに対してロバストである。これは、コンクリート産業において高く評価される特徴である。
【0154】
アミン(例えば、TIPAおよびTHEED)を含有する、本発明による多くの試料も試験した。実施例14、21、22、26〜29、および33〜36では、初期強度のさらなる向上が認められ、これは、アミンを含有しない本発明による促進剤と比較して、アミン(TIPAおよびTHEED)と本発明によるケイ酸カルシウム水和物との驚くべき相乗効果によるものである。アミンのみの使用では、比較的低い初期圧縮強度値しか得られない(実施例24、25、31、および32と比較されたい)。
【0155】
コンクリート試験−蒸気養生を用いる、または用いないプレキャストタイプ
プレキャストプラントでは、ある特定の圧縮強度(値は、工場の要件に応じて変わる)に達するために必要な時間により制御されるサイクルに従って、コンクリート型枠に打設する。このサイクルを促進するために、プレキャスト製造業者は、とりわけ冬場において、硬化プロセスが特に遅い場合、通常、ある特定の温度サイクルに従って高温でコンクリート型枠を養生する。硬化プロセスを促進することにより、1日当たりのターンオーバー数を増加させることが可能となり、したがってプラントの生産性を大幅に向上させることができる。一方、促進剤を使用すれば、プレキャスト製造業者は、高い養生温度の使用を抑えることが可能になり、エネルギーおよびコストを節減することができる。
【0156】
調製:
プレキャスト産業に関連する2種の異なるコンクリートミックス設計:S5タイプおよび自己充填型コンクリートタイプ(SCC)を使用した。
【0157】
DIN−EN12390によれば、S5コンクリートミックスは、以下のものからなる:
400kgのセメントMonselice CEM I 52.5
970kgの砂0/4
900kgの砂利(8/12)
2.8kgのGlenium(登録商標) ACE 30
190リットルの水総量。
【0158】
水対コンクリートの比は一定であり、0.48に相当する。
【0159】
DIN−EN12390によれば、SCCコンクリートミックスは、以下のものからなる:
400kgのセメントMonselice CEM I 52.5
910kgの砂0/4
800kgの砂利(8/12)
150kgの石灰石フィラー
3.4kgのGlenium(登録商標) ACE 30
190リットルの水総量。
【0160】
水対コンクリートの比は一定であり、0.48に相当する。
【0161】
示された水の量には、添加された流動化剤および/または促進剤組成物中に含有される水も含まれる。
【0162】
両タイプのコンクリートミックス設計について、プレキャストプラントの2つの代表的な養生法を試験した。第一の方法は、全硬化期間においてコンクリート型枠を20℃で保存するのみである。第二の方法(蒸気養生)は、コンクリートを打設した後に型枠を20℃で予備調整し、次いで20℃から60℃へ2時間かけて加熱し(速度:20℃/時)、次に60℃で1時間加熱し、最後に型枠を20℃で自然冷却させる温度サイクルに従う。
【0163】
結果
【表7】

【0164】
両方の養生法に対し、初期材齢時(この場合、最長7日間まで)に達成される圧縮強度は、レファレンスミックス(200および201)と比較して、本発明の促進剤組成物を使用した場合(ミックス202および203)の方が常に高い。この場合、プレキャスト製造業者が求める主要な特性である非常に初期(最初の6時間)の強度は、蒸気養生を用いず促進剤組成物1を添加する場合(202)、蒸気養生のみを用いたコンクリートミックス(201)に匹敵することが認められる。このことは、当該促進剤組成物により、プレキャスト製造業者は、非常に初期の強度に対するいかなる不都合も伴うことなく、蒸気養生を用いないで打設することができるため、大幅なエネルギー節減が可能となることを意味している。エネルギー節減によるコスト削減以外に、二酸化炭素の排出量も削減することができる。
【表8】

【0165】
第二のタイプのコンクリートミックス(自己充填型コンクリート)の結論も、S5コンクリートタイプについて前述において説明したのと同じである。当該促進剤組成物は、蒸気養生の有無にかかわらず、初期強度を大幅に向上させ、さらに、初期材齢時のコンクリート型枠の強度に対するいかなる不都合も伴うことなく、蒸気養生を減らすか、または完全に排除することも可能にし得る。促進剤組成物の挙動は、両方のタイプの養生法において非常に類似していることから、これは本方法にロバストネスをもたらし、プレキャストプラントにおいて非常に有益である。
【0166】
モルタル試験−圧縮強度および引張強度
モルタル試験がコンクリートの性能を定性的に表すものであることは、現状技術水準において知られている。したがって、モルタル試験を使用して、様々な促進剤組成物の有効性を、レファレンスモルタルミックス(いかなる促進剤も含有しない)および当業者に既知の通常の促進剤と比較する。
【0167】
調製
モルタルの調製は、欧州規格EN 196−1に従って行う。
【0168】
成分は以下の通りである:
225gの総水量
450gのセメント
1350gの標準砂。
【0169】
試験する促進剤組成物の添加量は、セメント質量に対する懸濁液の質量百分率として表し、有効含有量の対応する百分率を括弧内に示す(第3表を参照されたい)。
【0170】
2種の異なるセメントを使用した:
BB42.5R:Schwenk社のBernburg CEM I 42,5R(17.10.2008)
AA:Aalborg社のAalborg Whiteセメント。
【0171】
モルタル試験は、0.5で一定の水対セメント比(W/C)において行った。通常通り、促進剤に含有される水は、バッチ水から差し引くものとする。促進剤はバッチ水中に混合する。
【0172】
いくつかの実施例において無水硫酸ナトリウム粉末を使用するが、これは、セメント質量に対する質量百分率で添加し、完全に溶解するまでバッチ水に溶解させる。
【0173】
比較例(10、11)として、一緒に微粉シリカ(SiO)および酸化カルシウム(CaO)を混合した。当該シリカは、非常に反応性が高く非常に微細な沈降シリカであるAerosil 200(登録商標)(Degussa社)である。当該酸化カルシウムは、オーブンにおいて1,400℃で12時間VWR社の超高純度の炭酸カルシウム粉末を脱炭酸することにより、モルタル混合前に新たに合成した。
【0174】
さらに比較例として、ナノサイズシリカも試験した。このナノサイズシリカは、Eka社により市販されている製品Cembinder C50(登録商標)(C50と呼ぶ)である。
【0175】
スチール型枠にモルタルミックスを充填し、次いで、20℃で養生した。6、10、および24時間の時点で、圧縮強度および曲げ強度を測定する。
【0176】
モルタル試験の結果を第7表および第8表に示す。
【0177】
第7表および第8表において、いかなる促進剤も含有しないレファレンスモルタルミックスは、ミックスNo.1ならびにb−1、46、49〜51、58〜60、67、70〜72、79〜81、88〜90、および94〜96である。ここで比較例として用いられる、現状技術水準の促進剤を含有するモルタルミックスは、ミックス2〜12およびb−3である。本発明による促進剤組成物を使用するモルタルミックスは、第7表のミックス13〜39、b−2、およびb4、ならびに第8表の促進剤24を使用しているすべての試料である。
【表9】

【表10】

【0178】
第7表のモルタル試験の結果について、次章で説明する。
【0179】
モルタルミックスNo.13〜39(セメントBernburg 42,5Rを含有)
本発明によるミックス13〜39では、レファレンス(ミックス1)および比較例2〜6(先行技術の硬化促進剤)と比較して、6、10、および24時間の時点での初期強度発現(圧縮および曲げ強度)において著しい向上が認められる。本発明によるミックス(13〜39)も、現状技術水準のケイ酸カルシウム水和物促進剤(ミックス7、8、および9)より著しく有効である。他の比較例(ミックス10、11、および12)では、ミックス10のみが、本発明の促進剤に比較的匹敵する強度を達成しているが、有効固形分は10倍である。それ以外では、ミックス11および12の機能は、本発明の促進剤組成物よりも有効性がはるかに低い。これは、コンクリートミックスに対して前述において認められている促進効果を確認するものである。
【0180】
モルタルミックスNo.b−1〜b−4(セメントAalborg Whiteを含有)
モルタルミックスb−4(促進剤組成物1および硫酸ナトリウムのミックス)では、ミックスレファレンスb−1と比較して、最も高い強度発現が認められ、さらに比較例b−3(硫酸ナトリウムのみ)およびミックスb−2(促進剤組成物1のみ)と比較した場合、強い相乗効果も認められる。
【0181】
補助的セメント質材料(SCM)によるモルタル試験の結果
エネルギー節減およびコスト上の理由から、セメントおよびコンクリート製造業者が、セメントを何らかの補助的セメント質材料で代替することが増えてきている。この代替の欠点は、そのようなコンクリートミックスの強度発現が、特にコンクリートまたはモルタルの極初期材齢(<1日)において非常に遅いことである。したがって、これらのミックスの硬化を促進することは、特に有利である。(硬化に貢献し得る)潜在的反応性を有する主な補助的セメント質材料は、フライアッシュおよび高炉スラグである。
【0182】
調製方法およびモルタル組成物は、ポルトランドセメントを補助的セメント質材料(SCMと呼ぶ)によって部分的に置き換えることを除いて、ポルトランドセメントによるモルタル試験について前述に説明したのと同じある。当該組成の詳細およびSCMによるセメント置き換えの程度について、第8表にまとめる。結着剤に対する水の比(W/B)は0.5である。結合剤とは、セメントおよび検討されるSCMIの総量を意味する。3種の異なるSCM、すなわち2種の高炉スラグおよび1種のフライアッシュ、について試験した。使用する結合剤および略称は、以下の通りである:
C7:Karlstadt CEM I 42,5R 03.12.08
C8:Mergelstetten CEM I 42.5R 03.07.08
HSM1:スラグSchwelgern HSM 4000
HSM2:スラグHuckingen HSM 3000
F1:STEAGフライアッシュ
【表11】

【表12】

【0183】
第8表のモルタル試験の結果については、次章で説明する。
【0184】
ここでは、1種類の促進剤組成物(Acc.24)のみを試験した。ここで試験した両方のセメントでは、どのような程度(0%、20%、30%、50%)のセメント置き換えに対しても、ならびにここで試験したすべてのSCM(スラグおよびフライアッシュ)に対しても、促進剤組成物24を添加した場合に得られる8時間および10時間後の強度発現は、当該促進剤組成物を用いない対応するミックスよりも常に優れている。同様に、24時間後の強度発現も、同程度であるかまたはより優れている。ただし、同じセメント因子のモルタルミックスしか一緒には比較できないということは理解されたい。例えば、モルタルミックス49、52、および55しか比較することができない。この場合、(本発明の促進剤組成物を含む)モルタルミックス55および52では、レファレンスモルタルミックス49よりも速い強度発現が認められる。
【0185】
タイル−モルタルタイプのミックスにおける凝結促進剤
このようなミックスにおいて、モルタルは、ある特定の量の高アルミナセメント(CAC)を含有する。一般的に、アルミナセメントは水と混合するとすぐに極めて高い反応性を示すため、作業者は、そのようなモルタルミックスを容易に取り扱うことができない。この問題を解決するため、使用者は、ワーカビリティ期間を延ばすためにミックスに少量の遅延剤を加える。遅延剤は、モルタルの機械的特性を低下させるなどの欠点も有するため、いくつかの促進剤と組み合わされる。通常、先行技術のそのようなミックスにおける促進剤はLiCOである。
【0186】
タイルモルタルの調製
成分は以下の通りである:
800gのセメント
1200gの標準砂。
【0187】
促進剤は、セメント質量に対する固体の百分率において添加する。
【0188】
遅延剤は、セメント質量に対する百分率において添加する。
【0189】
セメントに対する水の比率は、0.46または0.5であり、同じ系列内で一定である。促進剤と共に添加される水は、バッチ水から差し引かなければならない。促進剤および遅延剤は、バッチ水に混合する。3種の異なるポルトランドセメントを、1種類の高アルミナセメントと組み合わせて試験した。凝結時間は、規格DIN EN 196−3に従って測定した。
【0190】
結果
第9表に、タイルモルタル試験の結果をまとめる。いかなる促進剤も含有しないレファレンスモルタルミックスは(第9表において)、100、104、および108である。先行技術の促進剤を含有するモルタルミックス(比較例)は、101、105、109である。本特許において権利を主張する本発明の促進剤組成物を使用したモルタルミックスは、102、103、106、107、110、および111である。
【表13】

【0191】
モルタルミックスNo.100〜103(ポルトランドセメントMilke含有、酒石酸により遅延、W/C=0.46)
本発明によるミックス102および103では、レファレンスミックス(100)と比較して、ならびに現状技術水準の硬化促進剤(LiCO)によって促進されたモルタルミックス(モルタルミックス101)と比較して、凝結時間の短縮が認められる。本発明者らは、本発明の促進剤組成物Acc.1の方が、凝結開始の発生もはるかに速く生じることも指摘する。本発明の促進剤組成物は、凝結促進剤としての役割も果たす。このことは、迅速な凝結により、垂直用途(壁面用途)においても、壁面にタイルを張り付けることが可能となることから、タイル接着モルタルにおける大きな利点である。
【0192】
モルタルミックスNo.104〜107(セメンとしてポルトランドセメントGeseke含有、酒石酸により遅延、W/C=0.46)
異なるセメントに対しても、前述と同じ結論が導き出される。したがって、本発明の促進剤組成物はセメントのタイプに対してロバストであると結論付けることができ、これは高く評価される資質である。詳細には、本発明の促進剤組成物(ミックス109、107)は、レファレンス(104)と比較して、ならびに現状技術水準の硬化促進剤(105)を含む配合物と比較して、凝結時間および凝結開始を促進する。
【0193】
モルタルミックスNo.108〜111(セメントとしてポルトランドセメントDyckerhoff Weissを含有、クエン酸により遅延、W/C=0.5)
ここでは、凝結時間の値が、全てのミックスにおいて極めて近い。それでもなお、LiCOのコストについては、現状技術水準の促進剤と比較して、本発明の硬化促進剤組成物を使用する方が、やはり有利であると思われる。
【0194】
本発明の促進剤組成物によって得られる凝結促進効果は、レファレンスミックスとは異なり、ならびにLiCOによりミックスとも異なり、一定に維持されている。実際に、凝結時間の値は、本発明の促進剤組成物によるミックス(103、107、および111)と比較する際に選択したセメントのタイプまたは遅延剤に対して比較的依存しておらず、このことは、モルタルの配合全体にロバストネスの利点をもたらす。
【0195】
特殊モルタル
通常、これらは、必要とされる全ての特性の複雑さゆえに、配合が複雑なモルタルミックス設計である。この配合物に必要ないくつかの成分は、通常、これらのモルタルミックスの凝結および強度発現に対して不都合な点を有する。
【0196】
調製物No.1(軽量タイル接着剤)
以下のドライモルタルを製造する(粉末):
70質量%のCEM I 52,5R acc. EN 197
20質量%の発泡ガラスフィラー「Poraver」、Poraver社
4質量%の石灰石粉末「Omyacarb 5 GU」、Omya社
4質量%のスチレンアクリルコポリマー「Acronal(登録商標) 6029」、BASF社
1質量%のメチル−ヒドロキシエチル−セルロース、10,000cps「Walocel(登録商標) MW 10.000 PF 40」、Wolff社
0.5質量%のセルロースファイバー「Arbocel(登録商標) ZZC 500」、Rettenmaier社
0.5質量%のベントナイト粘土「Optibent CP」、Suedchemie社
【0197】
当該粉末は、粉末に対する水総量の比が0.5に達するように適量の水と混合し、最後に促進剤と混合する。
【0198】
結果
いかなる促進剤も含まないそのような軽量タイル接着剤調製物(レファレンスミックス)では、水と混合してから23時間後に凝結が確認され、5時間継続する。セメント質量に対して2.85質量%の、ギ酸カルシウムである現状技術水準の凝結促進剤を添加することにより、凝結は、混合してから8時間後に始まり、4,5時間継続する。12.3質量%の促進剤5(1%の有効固形分)を混合することにより、凝結が、わずか4時間後に始まり、4.5時間継続する。24.6質量%の促進剤1(2%の有効含有量)と混合することにより、凝結は、3時間後にはすでに始まり、1.5時間継続する。軽量タイル接着剤型モルタルミックスにおいて、本発明の硬化促進剤組成物では、レファレンスと比較した場合、ならびに(有効固形分に基づいて)より多量のギ酸カルシウムと比較した場合、凝結時間の向上が認められる。
【0199】
調製物No.2(軽量補修モルタル)
以下のドライモルタルを調製し、これは粉末状である:
45質量%のCEM I 42,5R acc.、EN 197に準拠
35質量%のケイ砂0.5〜1mm、Euroquarz社
8質量%の軽量フィラー「Fillite 500」、Trelleborg社
5質量%の非晶質シリカ、Elkem社
4質量%の石灰石粉末「Omyacarb 10 AL」、Omya社
2質量%のスチレンアクリルコポリマー「Acronal 6095」、BASF社
0.5質量%のメラミンスルホネート「Melment F 10」、BASF社
0.5質量%のベントナイト粘土「Bentone LT」、Rockwood社
【0200】
当該粉末は、粉末に対する水総量の比が0.2に達するように適量の水と混合し、最後に促進剤と混合する。
【0201】
結果
このようないかなる促進剤も含まない軽量補修モルタル調製物(レファレンスミックス)では、水と混合してから10時間後および24時間後の圧縮強度は、それぞれ3.4MPaおよび18.4MPaである。同じ時点での曲げ強度は、それぞれ0.9MPaおよび3.9MPaである。凝結は、245分後に始まり、70分間継続する。15.1質量%の促進剤組成物1(1.22%の有効固形分)を添加することにより、水と混合してから10時間後および24時間後の圧縮強度は、それぞれ5.7MPaおよび20.1MPaである。同じ時点での曲げ強度は、1.4MPaおよび3.8MPaである。凝結は、220分後に始まり、70分間継続する。軽量補修型モルタルミックスにおいて、本発明の促進剤組成物が、凝結および強度発現の両方を向上させ得ることが明確に示されている。
【0202】
調製物No.3(高強度コンクリート補修モルタル)
以下のドライモルタルを製造する:
35質量%のCEM I 42,5R acc.、EN 197に準拠
55質量%のケイ砂0.1〜1.4mm、Sibelco社
4質量%の非晶質シリカ、Elkem社
3質量%の石灰石粉末「Omyacarb 10 AL」、Omya社
1質量%のスチレンアクリルコポリマー「Acronal(登録商標) 6031」、BASF社
0.5質量%のポリカルボキシレート「Melflux」、BASF社
0.5質量%の粘土「Pansil」、Omya社。
【0203】
当該粉末を、すべてのミックスにおいて粉末に対する水総量の比が0.15に達するように適量の水と混合し、場合により促進剤と混合する。
【0204】
結果
このようないかなる促進剤も含まない高強度コンクリート補修モルタル調製物(レファレンスミックス)では、水と混合してから12時間後および3日後の圧縮強度は、それぞれ6MPaおよび35.2MPaである。同じ時点での曲げ強度は、それぞれ1.6MPaおよび4.4MPaである。凝結は、200分後に始まり、80分間継続する。10.9質量%の促進剤組成物1(0.88%の有効固形分)を添加することにより、水と混合してから12時間後および3日後の圧縮強度は、それぞれ21.3MPaおよび45.5MPaとなる。同じ時点での曲げ強度は、それぞれ4MPaおよび4.9MPaである。凝結は、70分後に始まり、25分間継続する。高強度コンクリート補修型モルタルミックスにおいて、本発明の促進剤組成物が、凝結および強度発現の両方を向上させることが明確に示されている。
【0205】
モルタル試験「遅延型強度向上」(レディーミクストコンクリート用)
レディーミクストコンクリートなどの用途では、主に、フレッシュコンクリートを作業現場に輸送する時間に応じて、ある特定のワーカビリティ時間が必要となる。有利には、促進剤組成物をいくつかの遅延剤と組み合わせて使用することにより、ワーカビリティの期間を延ばすことが可能であり、したがって、所望の通りに、コンクリートの機械的特性の向上を遅延させることができる。通常、ワーカビリティは、スランプフローを測定することによって評価される。許容可能なワーカビリティのためには、水とセメントとを混合してから1.5〜2時間は、スランプフローが約22〜18センチメートルの範囲に維持されなければならない。
【0206】
調製
成分は以下の通りである:
211.5gの水総量
450gのセメント
1.350gの標準砂。
【0207】
促進剤は、セメント質量に対する乾燥固体の百分率で添加する。
【0208】
高性能減水剤Glenium(登録商標) SKY519(BASF Construction Chemicals GmbH社から入手可能)を使用し、当該添加量は、約20cmのスランプを有するように、各モルタルミックスに適合させる。Glenium(登録商標) SKY519における添加量は、セメント質量に対する溶液の百分率で表す。
【0209】
遅延剤Delvo(登録商標) Crete T(VZ)(BASF Construction Polymers GmbH社から入手可能)を促進剤と組み合わせて使用することにより、約20cmのスランプを2時間維持した。当該添加量は、セメント質量に対する溶液の百分率で表す。Delvo(登録商標) Crete Tは、主成分として1.3質量%のクエン酸および4.7質量%のHPOを含有する遅延剤である。
【0210】
ここで、2種類の異なるセメントを使用した:
Bernburg CEM I 42,5R(17.10.2008)、 Schwenk社
Le Havre 52.5N(11.06.2007)、Lafarge社。
【0211】
セメントに対する水の比率は、常に一定であり、W/C=0.47である。このことは、場合により促進剤組成物と共に、場合により遅延剤と共に、ならびに高性能減水剤と共に添加される水をバッチ水から差し引かなければならないことを意味している。促進剤組成物、高性能減水剤、ならびに最後に遅延剤を、バッチ水と混合する。促進剤組成物は、通常通り、セメント質量に対する溶液の質量%において添加する。VWR社の硝酸カルシウム四水和物粉末(純度99.5%)(現状技術水準の促進剤)は、セメント質量に対する硝酸カルシウム無水物固体の百分率において添加する。
【0212】
スランプフローは、欧州規格EN 1015−3に記載されている通りに、最大径10cm、最小径7cm、高さ6cmのコーンを使用して測定した。
【0213】
結果
いかなる促進剤も含有しないレファレンスモルタルミックス(レファレンスミックス)は、ミックス114、117である(第10表)。ここで比較例として使用する、現状技術水準の促進剤(硝酸カルシウム)を含有するコンクリートミックスは、ミックス116、119である。本特許において権利を主張する促進剤組成物を使用したモルタルミックスは、ミックス115、118である。
【表14】

【0214】
セメントBernburg、ミックス114、115、および116:
当該3種のミックスでは、スランプ値は、通常必要とされるように、1.5時間〜2時間許容可能な一定状態に維持されている。曲げ強度および圧縮強度は、本発明の促進剤組成物1(ミックス115)の添加により、レファレンスミックス(114)および現状技術水準で促進されたミックス(116)と比較して、特に16時間後において向上している。この結果は、有利には、本発明の促進剤組成物を遅延剤と組み合わせることにより、機械的特性の向上を遅らせることができることを意味している。さらに、本発明の促進剤組成物の使用は、極初期材齢(<2時間)でのフレッシュコンクリートのワーカビリティを妨げないことも極めて有利な重要点でもあり、これは一部のレディーミックス用途において必要不可である。
【0215】
セメントLe Havre、ミックス117、118、および119:
ここでも、結論は前述と同じであり、セメントを変更しても、本発明の硬化促進剤の挙動に重要な影響を及ぼすことはなく、ミックス118において最良の機械的特性が認められる。したがって、促進剤組成物による効果は、セメントに関してロバストである。強度の増加はわずか8時間後に生じ、現状技術水準の促進剤の性能(119)よりもすでに非常に優れていることが明らかである。
【0216】
熱流熱量測定法により測定されるセメント水和に対する効果(第3表の試料M1〜M3;試料はカルシウム化合物および二酸化ケイ素含有成分から得た)。
【0217】
試料M1〜M3(M2およびM3は本発明によるものであり、M1はポリマーを含まない比較例である)の合成の詳細について、第3表にまとめる。
【0218】
硬化促進剤の影響は、セメントKarlstadt 42.5Rに対して、熱流熱量測定法により放熱を測定し試験した。促進剤懸濁液をバッチ水と混合し、得られた懸濁液を20gのセメントと混合した。セメントに対する水の比(w/c)は0.32に設定した。試験する促進剤の添加量は、セメント質量に対する固形分の質量百分率として表す。図3に熱流曲線を示す。本発明に記載の硬化促進剤の添加により、促進期間(H.F.W.Taylor(1997):Cement Chemistry,第二版,p212ffにおいて定義される)が促進される。この効果を第11表にまとめる。
【0219】
図3:Karlstadtセメントの水和の熱流曲線
熱流曲線1は、ブランク(Karlstadtセメントのみ)を表わし、曲線2〜4は、0.6質量%のそれぞれの促進剤を添加したKarlstadtセメントの結果を示している(曲線2:Acc.M1(本発明によるものではない)、曲線3:Acc.M2、および曲線4:Acc.M3)。
【表15】

【0220】
モルタル試験:圧縮および引張強度
EN196−1に従って以下の原料から調製したモルタルについて、圧縮強度および引張強度を測定した:
225gの水総量
450gのセメント
1350gの標準砂。
【0221】
本発明による促進剤は、バッチ水と混合した後、セメントに加えた。促進剤懸濁液に由来する水は、総含水量に含まれる。
【0222】
当該促進剤の添加は、モルタルのセメント含有量に対する、当該促進懸濁液中の有効固形分(ケイ酸カルシウム水和物)で示す。
【0223】
スチール型枠にモルタルミックスを充填した後、20℃で養生した。
【0224】
圧縮強度および曲げ強度の測定は、6時間後、10時間後、および24時間後に実施した。
【表16】

【0225】
当該モルタル試験の結果は、初期の圧縮強度および曲げ強度の両方において著しい向上が得られることを示している。
【0226】
透水深度の測定
透水深度の測定値は、環境(例えば、浸出、風化、または硫酸塩侵食など)による損傷にセメント質材料がどの程度耐えることができるかを示す好適な指標である。したがって、これは、侵食性の物質の浸透に対して当該材料がどの程度不浸透性であり得るかを示すものである。透水深度の低下は、結果としてコンクリートの耐久性についての情報である。長期間の耐久性は、コンクリート製造業者および建設業者が求める極めて重要な特性である。
【0227】
結果
ミックス1は、以下のものからなる:
5kgのBernburg CEM I 42,5R
12.21kgの砂0/4
3.55kgの水。
【0228】
ミックス2は、以下のものからなる:
5kgのBernburg CEM I 42,5R
12.21kgの砂0/4
3.55kgの水、および
250gの促進剤組成物Acc.1。これは、セメント質量に対してAcc.1が5質量%である懸濁液を表わしている。両方のミックスにおいて、水とセメントの比率は一定でなければならない。促進剤と共に添加される水は、バッチ水から差し引かなければならない。
【0229】
透水深度は、測定を14日目以降から28日目までに実施した点を除いてDIN EN12390−8に従って測定する。レファレンスミックス1では、平均深度は4.2cmであるが、一方、本発明の促進剤組成物を含有するミックス2では、平均深度はわずか2.7cmである。この結果は、驚くべきことに本発明による促進剤組成物の使用により、これらの促進剤を使用して作製されるセメント質材料の透水性を著しく減少および改善することができるということを示している。本発明による促進剤組成物の別の利点は、侵食性物質によるコンクリートへの侵食をより良好に防ぎ、その結果としてコンクリートの耐久性を増強することができる能力である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性カルシウム化合物と水溶性ケイ酸塩化合物との反応による硬化促進剤組成物の製造方法であって、該水溶性カルシウム化合物と該水溶性ケイ酸塩化合物との該反応が、重縮合物の水溶液の存在下において実施され、該重縮合物が、
(I)ポリエーテル側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと
(II)少なくとも1つのリン酸エステル基および/またはその塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと
を有する、製造方法。
【請求項2】
前記成分が、以下の比率:
i)0.01〜75質量%、好ましくは0.01〜51質量%、最も好ましくは0.01〜15質量%の水溶性カルシウム化合物、
ii)0.01〜75質量%、好ましくは0.01〜55質量%、最も好ましくは0.01〜10質量%の水溶性ケイ酸塩化合物、
iii)0.001〜60質量%、好ましくは0.1〜30質量%、最も好ましくは0.1〜10質量%の重縮合物、
iv)24〜99質量%、好ましくは50〜99質量%、最も好ましくは70〜99質量%の水
において使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性カルシウム化合物が、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、重炭酸カルシウム、臭化カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩素酸カルシウム、フッ化カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、乳酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、硫化カルシウム、酒石酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、ケイ酸三カルシウムおよび/またはケイ酸二カルシウムとして存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶性カルシウム化合物が、クエン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ギ酸カルシウム、および/または硫酸カルシウムとして存在することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶性カルシウム化合物が、塩化カルシウムおよび/または硝酸カルシウムとして存在することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性ケイ酸塩化合物が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水ガラス、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸、メタケイ酸ナトリウム、および/またはメタケイ酸カリウムとして存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶性ケイ酸塩化合物が、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、および/または水ガラスとして存在することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アルカリ条件下でのカルシウム化合物と二酸化ケイ素含有成分との反応による硬化促進剤組成物の製造方法であって、該反応が、重縮合物の水溶液の存在下において実施され、該重縮合物が、
(I)ポリエーテル側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと
(II)少なくとも1つのリン酸エステル基および/またはその塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと
を有する、製造方法。
【請求項9】
前記カルシウム化合物が、水酸化カルシウムおよび/または酸化カルシウムであることを特徴とする、請求項8に記載の硬化促進剤の製造方法。
【請求項10】
前記二酸化ケイ素含有化合物が、マイクロシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、高炉スラグ、および/またはケイ砂の群から選択されることを特徴とする、請求項8または9に記載の硬化促進剤の製造方法。
【請求項11】
pH値が9よりも高いことを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の硬化促進剤の製造方法。
【請求項12】
前記二酸化ケイ素含有成分に由来するケイ素に対する、前記カルシウム化合物に由来するカルシウムのモル比が、0.6〜2、好ましくは1.1〜1.8であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
カルシウム化合物および二酸化ケイ素含有成分の総量に対する水の質量比が、0.2〜50であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記重縮合物において、前記構造ユニット(I)および(II)が、以下の一般式:
【化1】

[式中、
Aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに5〜10個のC原子を有する置換または非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、
Bは、同じであるかまたは異なっており、ならびにN、NH、またはOで表され、
BがNの場合、nは2であり、BがNHまたはOの場合、nは1であり
およびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表され、
aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜300の整数で表され、
Xは、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表される]
【化2】

[式中、
Dは、同じであるかまたは異なっており、ならびに5〜10個のC原子を有する置換または非置換のヘテロ芳香族化合物で表され、
Eは、同じであるかまたは異なっており、ならびにN、NH、またはOで表され、
EがNの場合、mは2であり、EがNHまたはOの場合、mは1であり、
およびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表され、
bは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜300の整数で表され、
Mは、互いに独立して、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、および/またはHであり、
aは、1であるか、またはアルカリ土類金属イオンの場合には1/2である]
で表されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記構造ユニットの前記モル比(I):(II)が、1:10〜10:1であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記重縮合物が、以下の式:
【化3】

[式中、
Yは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに(I)、(II)、または重縮合物のさらなる構成要素で表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、CH、COOH、または5〜10個のC原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、
は、同じであるかまたは異なっており、ならびにH、CH、COOH、または5〜10個のC原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物によって表される]
で表されるさらなる構造ユニット(III)を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
構造ユニット(III)におけるRおよびRが、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに、H、COOH、および/またはメチルで表されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記構造ユニットの前記モル比[(I)+(II)]:(III)が、前記重縮合物において1:0.8〜1:3であることを特徴とする、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応が、水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマー、好ましくは不飽和モノマーのラジカル重合によって得られる櫛型ポリマーの存在下において実施されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
水硬性結合剤のための流動化剤として好適な前記水溶性櫛型ポリマーが、エーテル官能基および酸性官能基を有する側鎖を主鎖上に有するコポリマーとして存在することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
水硬性結合剤のための流動化剤として好適な前記水溶性櫛型ポリマーが、酸性モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーの存在下におけるフリーラジカル重合によって生成されるコポリマーとして存在し、それにより、全体で、該コポリマーの全構造ユニットの少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも80モル%が、酸性モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーを重合ユニットの形態において組み入れることによって生成されることを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記反応が、多糖類誘導体および/または500,000g/mol超、より好ましくは1,000,000g/mol超の平均分子量Mを有する(コ)ポリマーの群より選択される増粘剤ポリマーを含有する水溶液の存在下において、完全にまたは部分的に実施され、該(コ)ポリマーが、(好ましくはフリーラジカル重合によって)非イオン性(メタ)アクリルアミドモノマー誘導体および/またはスルホン酸モノマー誘導体から誘導される構造ユニットを有することを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記硬化促進剤組成物が好ましくは噴霧乾燥法によって乾燥される方法工程が後に続く、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法によって得られる硬化促進剤組成物。
【請求項25】
ケイ酸カルシウム水和物および重縮合物を含有する組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液であって、該重縮合物が、
(I)ポリエーテル側鎖を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと
(II)少なくとも1つのリン酸エステル基および/またはその塩を有する芳香族部分もしくはヘテロ芳香族部分からなる少なくとも1種の構造ユニットと
を有する、組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液。
【請求項26】
前記ケイ酸カルシウム水和物の粒径が1,000nm未満であり、該ケイ酸カルシウム水和物の粒子サイズが分析用超遠心法によって測定されることを特徴とする、請求項25に記載の組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液。
【請求項27】
前記ケイ酸カルシウム水和物が、フォシャグ石、ヒレブランド石、ゾノトライト、ネコ石、単斜トベルモリ石、9Å−トバモライト(リバーサイド石)、11Å−トバモライト、14Å−トバモライト(プロンビエル石)、ジェンニ石、メタジェンナイト、カルシウムコンドロダイト、アフィライト、α−CSH、デルライト、ジャフェ石、ローゼンハーン石、キララ石、および/またはスオルン石である、請求項25または26に記載の組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液。
【請求項28】
前記ケイ酸カルシウム水和物が、ゾノトライト、9Å−トバモライト(リバーサイド石)、11Å−トバモライト、14Å−トバモライト(プロンビエル石)、ジェンニ石、メタジェンナイト、アフィライト、および/またはジャフェ石である、請求項27に記載の組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液。
【請求項29】
前記ケイ酸カルシウム水和物におけるSiに対するCaのモル比が、0.6〜2、好ましくは1〜1.7である、請求項25〜28のいずれか一項に記載の組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液。
【請求項30】
前記ケイ酸カルシウム水和物における水に対するCaのモル比が、0.6〜6、好ましくは0.6〜2、より好ましくは0.8〜2である、請求項25〜29のいずれか一項に記載の組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液。
【請求項31】
前記重縮合物において、前記構造ユニット(I)および(II)が、以下の一般式:
【化4】

[式中、
Aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに5〜10個のC原子を有する置換または非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、
Bは、同じであるかまたは異なっており、ならびにN、NH、またはOで表され、
BがNの場合、nは2であり、BがNHまたはOの場合、nは1であり、
およびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表され、
aは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜300の整数で表され、
Xは、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表される]
【化5】

[式中、
Dは、同じであるかまたは異なっており、ならびに5〜10個のC原子を有する置換または非置換のヘテロ芳香族化合物で表され、
Eは、同じであるかまたは異なっており、ならびにN、NH、またはOで表され、
EがNの場合、mは2であり、EがNHまたはOの場合、mは1であり、
およびRは、互いに独立して、同じであるかまたは異なっており、ならびに分岐鎖状または直鎖状のC−〜C10−アルキル基、C−〜C−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはHで表され、
bは、同じであるかまたは異なっており、ならびに1〜300の整数で表され、
Mは、互いに独立して、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、および/またはHであり、
aは、1であるか、またはアルカリ土類金属イオンの場合には1/2である]
で表されることを特徴とする、請求項25〜30のいずれか一項に記載の組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液。
【請求項32】
水硬性結合剤のための流動化剤として好適な水溶性櫛型ポリマー、好ましくは不飽和モノマーのラジカル重合によって得られる櫛型ポリマーが、前記重縮合体の水溶液中に存在する、請求項25〜31のいずれか一項に記載の組成物、好ましくは水性硬化促進剤懸濁液。
【請求項33】
水硬性結合剤のための流動化剤として好適な前記水溶性櫛型ポリマーが、エーテル官能基および酸性官能基を有する側鎖を主鎖上に有するコポリマーとして存在する、請求項32に記載の組成物、好ましくは硬化促進剤懸濁液。
【請求項34】
水硬性結合剤のための流動化剤として好適な前記水溶性櫛型ポリマーが、酸性モノマー、好ましくはカルボン酸モノマー、およびポリエーテルマクロモノマーの存在下においてフリーラジカル重合によって生成されるコポリマーとして存在し、それにより、全体で、該コポリマーの全構造ユニットの少なくとも45モル%、好ましくは少なくとも80モル%は、酸性モノマー、好ましくはカルボン酸モノマーおよびポリエーテルマクロモノマーを重合ユニットの形態において組み入れることによって生成される、請求項32または33に記載の組成物、好ましくは硬化促進剤懸濁液。
【請求項35】
粉末状の、請求項25〜34のいずれか一項に記載の組成物、好ましくは硬化促進剤組成物。
【請求項36】
セメント、石膏、無水石膏、スラグ、好ましくは粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、スルホアルミン酸カルシウムセメント、および/またはアルミン酸カルシウムセメントを含有する建築材料混合物における、好ましくは水硬性結合剤としてセメントを実質的に含有する建築材料混合物における、請求項24に記載の硬化促進剤組成物または請求項25〜35のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項37】
セメント、石膏、無水石膏、スラグ、好ましくは粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、スルホアルミン酸カルシウムセメント、および/またはアルミン酸カルシウムセメントを含有し、好ましくは水硬性結合剤としてセメントを実質的に含有する、硬式建築材料混合物の、水性液体に対する浸透性を低下させるための、請求項24に記載の硬化促進剤組成物または請求項25〜35のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項38】
請求項24に記載の硬化促進剤組成物または請求項25〜35のいずれか一項に記載の硬化促進剤組成物と、セメント、石膏、無水石膏、スラグ、好ましくは粉砕高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ粉塵、メタカオリン、天然ポゾラン、焼成オイルシェール、スルホアルミン酸カルシウムセメント、および/またはアルミン酸カルシウムセメントとを含有する建築材料混合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−503804(P2013−503804A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527272(P2012−527272)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061762
【国際公開番号】WO2011/026720
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】