説明

リーダ又はリーダライタ

【課題】 デジタル周波数変換器により、複数の非接触情報記録媒体に割り当てられたサブキャリア周波数により複数チャネルの時分割多重信号に変換することにより、回路構成を簡略化し、且つMFMデコーダをハードウェアにより構成してMPUの負荷を軽減したリーダ又はリーダライタを提供する。
【解決手段】 受信部56は、アンテナ34から受信したRFタグ200の信号に含まれるキャリア周波数fcを除去するLPF42と、その出力信号を増幅する増幅器41と、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換して量子化信号とするA/D変換器40と、を備えて量子化処理部44を構成し、量子化信号を複数のRFタグ200毎に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換し、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号する復号化回路43と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ又はリーダライタに関し、さらに詳しくは、積層状態、混載状態等々、近接した状態にある複数の非接触情報記録媒体に記録されている夫々の情報を一括同時読み取りする受信部を備えたリーダ又はリーダライタにおける受信部の回路構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる情報記録媒体が市場に広く出回っている。ICカードは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等の如くカード状或いはシート状の形状を備え、カード内にICが組み込まれているものを総称した名称である。最近では、ICカードと同様の原理で情報を記録するRFタグが、各種物品に付されて物品の種別や内容の判別、分類整理、在庫管理等の多様な分野において効率化に貢献している。このRFタグとしては、最速3.5m/秒の搬送機でトンネルリーダライタを通過するRFタグの高速読み取り・書込みが可能なタイプや、トンネルリーダライタ内でRFタグが積層した状態(2mm間隔)において100枚重ね一括同時読み取り・書込みが約1秒で可能なタイプのものが出現している。そこで、積層状態、混載状態にあるRFタグを一括同時読み取り・書込みを行なうためのリーダライタが必要となる。
【0003】
図9は従来の積層状態のRFタグに対する一括同時読み取り・書込みが可能なリーダライタの機能ブロック図の一例である。このリーダライタ160は、キャリア周波数fcを発生する搬送波発振器120と、送信コマンドによりキャリア周波数fcを変調する変調器122と、増幅器121、123により送信部152を構成している。また、アンテナ124から受信したRFタグ200の信号のキャリア周波数fcを除去するLPF125と、複数のRFタグ200に割り当てられたサブキャリア周波数を発振する局部発振器127〜134と、受信信号と局部発振器の信号とをミキシングするミキサ154〜161と、ミキサの出力信号に含まれるサブキャリア周波数を除去するLPF135〜142と、増幅器126、143〜150とを備えて受信部153を構成している。また、全体を制御するMPU151を備えている。
【0004】
次に、複数のRFタグ200からのサブキャリア周波数を例えば8チャネルの周波数に分割して受信する「ISO18000−3 モード2」について説明する。「ISO18000−3 モード2」では、サブキャリア周波数として969kHz〜3013kHzを8チャネルの周波数に分割し多重して受信される。即ち、アンテナ124からはどのサブキャリア周波数のRFタグの信号を受信するかわからない。従って、8チャネルのどのサブキャリア周波数を受信してもよいように、並列に局部発振器127〜134、LPF135〜142及び増幅器143〜150が接続されている。例えば、969kHzのサブキャリア周波数の信号を受信すると、ミキサ154により局部発振器127から発振された969kHzとサブキャリア周波数とがミキシングされてその出力には、106kHzのベースバンドが出力される。更にその信号から残留したサブキャリア周波数をLPF135により除去して、MFM信号としてMPU151に入力される。このように、各チャネルから並列にMFM信号としてMPU151に入力される。MPU151では、このMFM信号を処理してNRZ符号に変換する。
また従来技術として特許文献1には、シンボル単位で高速にチャネル切替を行なうために、IF信号をA/D変換する際のサンプルタイミング毎にチャネル切替の有無を監視し、チャネル切替有りのときそのタイミングでランダムウォークフィルタの閾値を切り替える技術について開示されている。
【特許文献1】特開2001−103108公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、「ISO18000−3 モード2」のリーダライタにおいては、8チャネルのサブキャリアを同時に受信するために、8つの局部発振器、ミキサ、LPF及び増幅器が必要となり、回路規模が大きくなると共に、MPUが並列にMFM信号を処理しなければならないため負荷が大きくなるといった問題がある。
また特許文献1に開示されている従来技術は、複数のメモリが必要となるため、ハードウェアの規模が大きくなるばかりでなく、処理速度がメモリのアクセスタイムにより制限されるといった問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑み、デジタル周波数変換器により、複数の非接触情報記録媒体に割り当てられたサブキャリア周波数により複数チャネルの時分割多重信号に変換することにより、回路構成を簡略化し、且つMFMデコーダをハードウェアにより構成してMPUの負荷を軽減したリーダ又はリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、近接した位置関係にある複数の非接触情報記録媒体に記録されている夫々の情報を一括読み取りする受信部を備えたリーダ又はリーダライタであって、前記受信部は、アンテナから受信した搬送波を量子化信号に変換する量子化処理部と、前記量子化信号を前記複数の非接触情報記録媒体毎に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換し、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号する復号化回路と、を備えたことを特徴とする。
本発明の最も大きな特徴は、複数のサブキャリア周波数を検出する回路をデジタル化して時分割処理した点である。これにより、複数のサブキャリア周波数を検出する回路が不要となり、回路構成が大幅に簡略化される。また、受信信号をNRZ符号に復号する回路をハードウェアにより構成して、MPUの負荷を軽減する。ここで、MFM(Modified Frequency Modulation)とは、データが「1」のときはデータの中央の時点で極性を反転し、「0」が一つだけの時には何もせず「0」が連続するときにはその境目で極性を反転する変調方式である。その結果、反転間隔は、T、1.5T、2Tの3種類となる。またNRZ信号とは、データの0/1などを、物理的な信号波形で表し、1ビットの期間電圧がハイであるか、ローであるかによって、1と0とを区別する符号をいう。
【0008】
請求項2は、前記復号化回路は、前記量子化信号を前記複数の非接触情報記録媒体毎に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換するデジタル周波数変換器と、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号するMFMデコーダと、前記受信信号に含まれるプリアンブルを検出してフレームデータの先頭を検出する同期部と、を備えたことを特徴とする。
本発明の復号回路は、デジタル周波数変換器により時分割多重信号に変換し、その信号をMFMデコーダによりNRZ符号化方式の信号に復号してMPUに入力する。このとき、同期部によりフレームのプリアンブルを検出して同期をとる。
【0009】
請求項3は、前記デジタル周波数変換器は、前記量子化信号により変調されたサブキャリア周波数と前記複数の非接触情報記録媒体毎に割り当てられたサブキャリア周波数の中心周波数とをミキシングする第1のミキサと、前記各サブキャリア周波数から前記中心周波数を減算した差分周波数を時分割するマルチプレクサと、前記第1のミキサの出力信号と前記マルチプレクサの出力信号とをミキシングする第2のミキサと、選択された帯域以外を除去するフィルタと、を備えたことを特徴とする。
本発明のデジタル周波数変換器の構成としては、時分割多重処理のレートを削減するためにサブキャリア周波数とサブキャリア周波数の中心周波数を中間周波として第1のミキサによりミキシングする。これにより、もともとのサブキャリア周波数が中間周波数分だけ低周波側にシフトした信号となる。この信号は1フレーム単位で周波数分割多重されて入力されるが、サブキャリア周波数信号はランダムであり、どの信号が入力されるか不明な状態にあるため、マルチプレクサにより時分割するためには、処理速度をチャネル数の倍数に速める必要がある。そして、マルチプレクサが出力するサブキャリア周波数から中心周波数を引いた差分周波数と同じ周波数の信号があると、それを時分割多重化して出力する。
【0010】
請求項4は、前記第2のミキサは、前記第1のミキサの出力信号の1フレーム周期内に、前記複数チャネルのサブキャリア周波数による処理を完了するように構成されていることを特徴とする。
第1のミキサから出力される信号は、周波数分割多重され且つサブキャリア周波数がランダムな信号である。従って、その信号の1フレーム以内に信号を時分割多重化しなければならない。そこで本発明では、第2のミキサのクロック周波数を少なくともチャネル数の倍数にする必要がある。
【0011】
請求項5は、前記同期部は、前記プリアンブルの理想的な波形を生成するフラグ波形生成部と、該フラグ波形生成部から出力される波形と前記デジタル周波数変換器の出力波形との相関を演算する相関演算部と、前記デジタル周波数変換器の出力波形の電力値を積算する電力値積算部と、前記相関演算部の値を前記電力値積算部の積算値により正規化する正規化部と、所定の閾値により前記正規化部により正規化されたレベルを判定するレベル判定部と、該レベル判定部を通過した信号のピーク値を検出するピーク検出部と、を備え、前記レベル判定部は所定の閾値以下をノイズとして除去し、前記ピーク検出部では現在時刻t、t−i(i=1〜n)及びt+i(i=1〜n)での前記レベル判定部の出力を比較し、前記tでの値が最大であれば、ピークと判断してフレーム検出パルスを出力することを特徴とする。
受信信号はシリアルのフレーム信号である。そして各フレームの区切りを区別するためにプリアンブル信号が存在する。本発明の同期部は、このプリアンブル信号を検出してフレームを検出するものである。即ち、レベル判定部では閾値(Vth)以下をノイズとして除去する。ピーク検出部では現在時刻t、t−i(i=1〜n)及びt+i(i=1〜n)でのレベル判定部の出力を比較し、tでの値が最大であれば、ピークと判断する。ピークと判断したら、すなわちプリアンブルの理想的な波形と一致したと判断できるので、ピーク検出部はフレーム検出パルスを出力する。MFMデコーダはピーク検出パルスを受けて、フレームの始点を検出し、自らにリセットをかけてMFMデコードをスタートする。
【0012】
請求項6は、前記同期部は、前記プリアンブルの理想的な波形を生成するフラグ波形生成部と、該フラグ波形生成部から出力される波形と前記デジタル周波数変換器の出力波形との相関を演算する相関演算部と、前記デジタル周波数変換器の出力波形の振幅値の絶対値を積算する絶対値積算部と、前記相関演算部の出力と前記絶対値積算部の出力とを比較するレベル判定部と、該レベル判定部を通過した信号のピーク値を検出するピーク検出部と、を備え、前記相関演算部の出力信号と前記絶対値積算部の出力とを比較してレベルを判定し、前記絶対値積算部の出力レベルより高い信号を前記ピーク検出部に入力して、その信号の中からピークを検出することを特徴とする。
本発明は、請求項5の構成を簡略化するために、フラグの理想波形を1/−1のデジタル波形とする。また、演算処理を簡潔にするために電力値演算部を絶対値積算部に置き換える。即ち、フラグ波形生成部により生成された波形と、LPFの出力波形との相互相関値を相関演算部により演算する。相互相関値はフラグの波形がデジタル値であるため、ハイレベルを「1」、ローレベルを「−1」として演算することにより相互相関は足し算、引き算だけで構成できる。その出力信号と絶対値積算部の出力と比較してレベルを判定して、絶対値積算部の出力レベルより高い信号をピーク検出部に入力し、その信号の中からピークを検出する。
【0013】
請求項7は、前記同期部は、前記フラグ波形生成部から出力される波形を1/−1のデジタル波形とし、前記相関演算部による相互相関による演算をハイレベルを1、ローレベルを−1として加算減算器により演算することを特徴とする。
フラグの理想波形を1/−1のデジタル波形とし、ハイレベルを「1」、ローレベルを「−1」として演算することにより相互相関は足し算、引き算だけで構成できるので、同期部の回路構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信部は、アンテナから受信した搬送波を量子化信号に変換する量子化処理部と、この量子化処理部により量子化された信号を複数の非接触情報記録媒体に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換して、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号する復号化回路と、を備えたので、複数のサブキャリア周波数を検出する回路が不要となり、回路構成が大幅に簡略化されると共に、受信信号をNRZ符号に復号する回路をハードウェアにより構成して、MPUの負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。このリーダライタ100は、リーダライタ100との間でデータの授受を行ってシステム全体を制御するPC50によって制御される。リーダライタ100は、外部のPC50とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、操作コマンドを入力する入力装置5と、制御装置2により制御された情報を表示する表示装置6と、制御装置2からの交流信号である電力供給用信号と変調器4からの書き込みコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループアンテナ9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないRFタグとの電力用搬送波とデータの授受をするループアンテナ9とを備えて構成されている。
【0016】
次に、本構成によるリーダライタ100の動作を説明する前に、RFタグ(非接触情報記録媒体)の構成を先に説明しておく。図2は、RFタグの構成を示すブロック図である。このRFタグ200は、リーダライタ100からの電力用搬送波によりデータの授受をするアンテナ20と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路21と、アンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、RFタグ200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。
【0017】
次に、図1と図2を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、RFタグ200に供給する電力供給用信号と、ポーリング信号を交互に電力増幅器7から送信する。その信号は、ループアンテナ9から電磁波として外部に放射される。次に、RFタグ200がリーダライタ100に近接すると、アンテナ20が電力供給用信号を受信し、電力生成回路22によりその搬送波を整流して直流電力に変換して、RFタグ200内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って、制御を開始する。
【0018】
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ100がループアンテナ9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してRFタグ200が規格に合致したRFタグであると認識する。それにより、以後リーダライタ100とRFタグ200の間でポーリングが行われる。
【0019】
図3は本発明の一実施形態に係るリーダライタの機能ブロック図である。このリーダライタ110は、近接した位置関係にある複数のRFタグ200に記録されている夫々の情報を一括同時読み取りする受信部56と、複数のRFタグ200に情報を書き込む送信部55と、MPU35と、を備えて構成されている。
そして送信部55は、キャリア周波数fcを発生する搬送波発振器30と、送信コマンドによりキャリア周波数fcを変調する変調器32と、増幅器31、33により構成される。尚、送信部55は本発明の主旨ではないので、詳細な構成と説明は省略する。
また受信部56は、アンテナ34から受信したRFタグ200の信号に含まれるキャリア周波数fcを除去するLPF42と、その出力信号を増幅する増幅器41と、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換して量子化信号とするA/D変換器40と、を備えて量子化処理部44を構成し、量子化信号を複数のRFタグ200毎に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換し、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号する復号化回路43と、を備えて構成される。
【0020】
更に復号化回路43は、量子化信号をRFタグ200毎に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換するDDC(デジタル周波数変換器)39と、サブキャリア周波数を除去するLPF38と、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号するMFMデコーダ36と、受信信号に含まれるプリアンブルを検出してフレームデータの先頭を検出する同期部37と、を備えて構成される。
【0021】
次に、本発明のリーダライタ110の概略動作について説明する。近接配置された複数のRFタグ200には夫々サブキャリア周波数が配分されている。例えば「ISO18000−3 モード2」においては、969kHz〜3013kHzの周波数を8チャネルに割り当てられており、夫々のRFタグはそのサブキャリア周波数を変調してリーダライタと通信を行っている。従って、送信部55からアンテナ34を介して搬送波が送信されると、複数のRFタグ200はその搬送波を受信して活性化される。それにより、各RFタグから一斉にサブキャリア周波数を変調したデータが送信される。従って、リーダライタ110がその信号をアンテナ34を介して受信する順番はランダムである(サブキャリア周波数のチャネルの順番とは限らない)。そしてLPF42により信号に含まれるキャリア周波数fcを除去し、A/D変換器40により量子化信号に変換する。このときのサンプリング周波数fs1は13.56MHzである。この量子化信号はDDC39に入力され、サブキャリア周波数の順序で時分割多重化してシリアル信号として出力する(詳細は後述する)。その出力信号にはサブキャリア周波数が含まれているので、LPF38により除去してMFMデコーダ36と同期部37に入力する。MFMデコーダ36では、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号してMPU35に入力する(詳細は後述する)。このとき同期部37は、信号からプリアンブルを検出してフレームの同期をとるようにする。これにより、MPU35は受信したRFタグの順番に従ってデータを受信することができる。
【0022】
図4は本発明の一実施形態に係るDDCの機能ブロック図である。このDDC39は、A/D変換器40の出力信号と複数のRFタグ200毎に割り当てられたサブキャリア周波数の中心周波数fIFとをミキシングするミキサ(第1のミキサ)45と、信号に残存するキャリア周波数fcを除去するLPF47と、各サブキャリア周波数から中心周波数fIFを減算した差分周波数を時分割するマルチプレクサ(以下、MUXと記す)49と、LPF47の出力信号とMUX49の出力信号とをミキシングするミキサ(第2のミキサ)48と、選択された帯域以外を除去するLPF(フィルタ)60と、を備えて構成される。
尚、LPF47のサンプリング周波数fs2はfs1の1/4であり、ミキサ48のサンプリング周波数fs3はfs2の8倍の2fs1であり、LPF60のサンプリング周波数fs4はfs3の1/4のfs1/2である。また、MUX49の局部発振器LOの各チャネルの周波数は、LO#n=fsub#n−fIF(n=1〜8)により導かれる。
【0023】
次にDDCの動作について説明する。A/D変換器40の出力信号は13.56MHzの高い周波数によりサンプリングされているため、次段のMUX49とミキサ48の処理能力を高くしなければならない。そこで、低い処理能力でも可能なように、中間周波発振器46から13.56MHzの1/7の1.94MHzの中間周波数fIFとミキサ45によりミキシングする。ミキシングされた信号にはキャリア周波数fcが残存しているので、LPF47により除去する。このときデータの間引きによりサンプリングレートを落とすデシメーションの技術を使用する。このときのサンプリング周波数は3.39MHzである。このLPF47の出力信号は、RFタグ200からランダムなサブキャリア周波数によるデータが周波数分割多重されて入力されるので、ミキサ48は、LPF47の出力信号の1フレーム周期内に、8チャネルのサブキャリア周波数による処理を完了するように構成されなければならない。そこで本実施形態では、ミキサ48のサンプリング周波数fs3をfs2の8倍にして行なっている。即ち、1フレーム内にLO#1〜LO#8までサンプリングして、ヒットしたチャネルのサブキャリア周波数の位置に時分割してデータを出力する。そして選択された帯域以外を除去するLPF60を介して次段のLPF38に出力される。このとき、LPF60では以降の処理負担を軽くするためにサンプリング周波数を6.78MHzに落としている。尚、複数チャネルの多重化に加えてIとQの多重化も同時に行なっている。
【0024】
図5は本発明の第1の実施形態に係る同期部の機能ブロック図である。この同期部37aは、プリアンブルの理想的な波形を生成するフラグ波形生成部65と、フラグ波形生成部65から出力される波形とLPF38の出力波形との相関を演算する相関演算部66と、LPF38の出力波形の電力値を積算する電力値積算部67と、相関演算部66の値を電力値積算部67の積算値により正規化する正規化部75と、所定の閾値Vthにより正規化部75により正規化されたレベルを判定するレベル判定部68と、レベル判定部68を通過した信号のピーク値を検出するピーク検出部69と、を備えて構成される。
【0025】
そしてフラグ波形生成部65により生成された波形と、LPF38の出力波形との相互相関値を相関演算部66により演算する。相互相関値は信号の電力で変化するため、電力値を電力値積算部67により計算して正規化する。そして正規化された信号を閾値Vthにより判定して、そのレベルより高い信号をピーク検出部69に入力し、その信号の中からピークを検出する。またレベル判定部68では閾値(Vth)以下をノイズとして除去する。ピーク検出部69では現在時刻t、t−i(i=1〜n)及びt+i(i=1〜n)でのレベル判定部68の出力を比較し、tでの値が最大であれば、ピークと判断する。ピークと判断したら、すなわちプリアンブルの理想的な波形と一致したと判断できるので、ピーク検出部69はフレーム検出パルスを出力する。そしてMFMデコーダ36はピーク検出パルスを受けて、フレームの始点を検出し、自らにリセットをかけてMFMデコードをスタートする。
【0026】
図6は本発明の第2の実施形態に係る同期部の機能ブロック図である。この同期部37bは、プリアンブルの理想的な波形を生成するフラグ波形生成部70と、フラグ波形生成部70から出力される波形とLPF38の出力波形との相関を演算する相関演算部71と、LPF38の出力波形の振幅値の絶対値を積算する絶対値積算部72と、相関演算部71の出力と絶対値積算部72の出力とを比較するレベル判定部73と、レベル判定部73を通過した信号のピーク値を検出するピーク検出部74と、を備えて構成される。
【0027】
そしてフラグ波形生成部70により生成された波形と、LPF38の出力波形との相互相関値を相関演算部71により演算する。相互相関値はフラグの波形がデジタル値であるため、ハイレベルを「1」、ローレベルを「−1」として演算することにより相互相関は足し算、引き算だけで構成できる。その出力信号と絶対値積算部72の出力と比較してレベルを判定して、絶対値積算部72の出力レベルより高い信号をピーク検出部74に入力し、その信号の中からピークを検出する。この時、レベル判定部では、絶対値積算部72の出力を任意の1/n倍して閾値とし、その閾値以下をノイズとして除去する。ピーク検出部74では現在時刻t、t−i(i=1〜n)及びt+i(i=1〜n)でのレベル判定部73の出力を比較しtでの値が最大であれば、ピークと判断する。ピークと判断したら、すなわちプリアンブルの理想的な波形と一致したと判断したら、ピーク検出部74はフレーム検出パルスを出力する。MFMデコーダ36はピーク検出パルスを受けて、フレームの始点を検出し、自らにリセットをかけてMFMデコードスタートする。
【0028】
図7(a)は本発明の第1の実施形態に係るMFMデコーダの機能ブロック図であり、図7(b)はMFM変調方式を説明するためのタイミングチャートである。尚、図7(b)は説明を解りやすくするために、NRZ波形と対比して示している。ビット“0”のMFM波形をG0(t)とすると、ビット“0”の波形は(H)又は(L)であるから、ビットの1/4、3/4(SP(1/4)、SP(3/4))でサンプリングすると、G0(t)は図のビット“0”のようなパルス関数となる。この2つは絶対値をとると同じ値になるので、どちらか一方を考えればよい。即ち、G0(t)として図7(b)のビット“0”(B)を考える場合、図7(a)の相関演算部81の相関演算結果は、パルス関数の一方に対しては(a+bi)となり、パルス関数の他方に対しては(c+di)となる。またG1(t)は図のビット“1”のようなパルス関数となる。即ち、G1(t)として図7(b)のビット“1”(B)を考える場合、図7(a)の相関演算部83の相関演算結果は、上向きのパルス関数に対しては(a+bi)となり、下向きのパルス関数に対しては−(c+di)となる。即ち、G0(t)とG1(t)は直交であるため、LPF出力とG0(t)の相関及びLPF出力とG1(t)の相関はそれぞれ(a+bi)+(c+di)と(a+bi)−(c+di)と表される。そしてLPFの波形とG0(t)及びG1(t)との相関をとり、より相関の大きなビットを採用する。例えば、LPFのあるタイミングの出力と、G0(t)及びG1(t)との相関をとった結果、G0(t)との相関がより大きければ、そのタイミングでのデコード結果は「0」となる。
【0029】
図8は本発明の第2の実施形態に係るMFMデコーダの機能ブロック図である。このMFMデコーダ36bは、図7のMFMデコーダ36aを簡略化するものである。比較なので絶対値は2乗しても同じであるから、
|(a+bi)+(c+di)|と|(a+bi)−(c+di)|
を2乗して、
((a+bi)+(c+di))2と((a+bi)−(c+di))2は、(a+c)2+(b+d)2と(a+c)2−(b+d)2となり、即ち、acと−bdの比較となる。即ち、G0(t)とLPF出力信号から相関演算部95によりa、b、c、dを計算し、G0(t)とG1(t)は直交関係にあるので、相関の対象にはG0(t)を使ってもG1(t)を使ってもa、b、c、dの算出結果は同じである。
【0030】
以上の通り本発明によれば、受信部56は、アンテナ34から受信した搬送波を量子化信号に変換する量子化処理部44と、この量子化処理部44により量子化された信号を複数のRFタグ200に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換して、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号する復号化回路43と、を備えたので、複数のサブキャリア周波数を検出する回路が不要となり、回路構成が大幅に簡略化されると共に、受信信号をNRZ符号に復号する回路をハードウェアにより構成して、MPU35の負荷を軽減することができる。
また、復号回路43は、DDC39により時分割多重信号に変換し、その信号をMFMデコーダ36によりNRZ符号化方式の信号に復号してMPU35に入力し、同期部37によりフレームのプリアンブルを検出して同期をとるので、簡単な回路構成で且つすべての回路がデジタル化されて1チップ化が可能となる。
【0031】
また、DDC39は、量子化信号により変調されたサブキャリア周波数と複数のRFタグ200毎に割り当てられたサブキャリア周波数の中心周波数とをミキシングするミキサ45と、各サブキャリア周波数から中心周波数を減算した差分周波数を時分割するMUX49と、ミキサ45の出力信号とMUX49の出力信号とをミキシングするミキサ48と、選択された帯域以外を除去するLPF60と、を備えたので、周波数分割多重された受信信号からRFタグのサブキャリア周波数を識別して時分割多重信号に変換することができる。
また、ミキサ48は、LPF47の出力信号の1フレーム周期内に、複数チャネルのサブキャリア周波数による処理を完了するように構成されているので、確実に1フレーム期間内にサブキャリア周波数を見つけることができる。
【0032】
また、同期部37は、理想的なプリアンブル信号の波形と入力信号の波形との相関をとり、相関値のレベルをノイズと識別して判定し、その中から最大のピークのものをフレーム検出パルスとする。このとき、相互相関の値は信号の電力で変化するため、電力値を電力値積算部67により積算して正規化するので、RFタグ200とリーダライタ100の距離の変動による入力レベルを補正することができる。
また、フラグの理想波形を1/−1のデジタル波形とし、ハイレベルを「1」、ローレベルを「−1」として演算することにより相互相関は足し算、引き算だけで構成できるので、同期部37の回路構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一般的なリーダライタの構成を示すブロック図。
【図2】RFタグの構成を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施形態に係るリーダライタの機能ブロック図。
【図4】本発明の一実施形態に係るDDCの機能ブロック図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る同期部の機能ブロック図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る同期部の機能ブロック図。
【図7】(a)は本発明の第1の実施形態に係るMFMデコーダの機能ブロック図、(b)はMFM変調方式を説明するためのタイミングチャート。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るMFMデコーダの機能ブロック図。
【図9】従来の積層状態のRFタグを一括同時読み取り・書込みが可能なリーダライタの機能ブロックの一例を示す図。
【符号の説明】
【0034】
34 アンテナ、40 A/D変換器、41 増幅器、42 LPF、43 復号化回路、44 量子化処理部、45、48 ミキサ、47、60 LPF、49 MUX、56 受信部、200 RFタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接した位置関係にある複数の非接触情報記録媒体に記録されている夫々の情報を一括読み取りする受信部を備えたリーダ又はリーダライタであって、
前記受信部は、アンテナから受信した搬送波を量子化信号に変換する量子化処理部と、前記量子化信号を前記複数の非接触情報記録媒体毎に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換し、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号する復号化回路と、を備えたことを特徴とするリーダ又はリーダライタ。
【請求項2】
前記復号化回路は、前記量子化信号を前記複数の非接触情報記録媒体毎に割り当てられたサブキャリア周波数に基づいて、複数チャネルの時分割多重信号に変換するデジタル周波数変換器と、MFM符号化方式により符号化された受信信号をNRZ信号に復号するMFMデコーダと、前記受信信号に含まれるプリアンブルを検出してフレームデータの先頭を検出する同期部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のリーダ又はリーダライタ。
【請求項3】
前記デジタル周波数変換器は、前記量子化信号により変調されたサブキャリア周波数と前記複数の非接触情報記録媒体毎に割り当てられたサブキャリア周波数の中心周波数とをミキシングする第1のミキサと、前記各サブキャリア周波数から前記中心周波数を減算した差分周波数を時分割するマルチプレクサと、前記第1のミキサの出力信号と前記マルチプレクサの出力信号とをミキシングする第2のミキサと、選択された帯域以外を除去するフィルタと、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のリーダ又はリーダライタ。
【請求項4】
前記第2のミキサは、前記第1のミキサの出力信号の1フレーム周期内に、前記複数チャネルのサブキャリア周波数による処理を完了するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のリーダ又はリーダライタ。
【請求項5】
前記同期部は、前記プリアンブルの理想的な波形を生成するフラグ波形生成部と、該フラグ波形生成部から出力される波形と前記デジタル周波数変換器の出力波形との相関を演算する相関演算部と、前記デジタル周波数変換器の出力波形の電力値を積算する電力値積算部と、前記相関演算部の値を前記電力値積算部の積算値により正規化する正規化部と、所定の閾値により前記正規化部により正規化されたレベルを判定するレベル判定部と、該レベル判定部を通過した信号のピーク値を検出するピーク検出部と、を備え、
前記レベル判定部は所定の閾値以下をノイズとして除去し、前記ピーク検出部では現在時刻t、t−i(i=1〜n)及びt+i(i=1〜n)での前記レベル判定部の出力を比較し、前記tでの値が最大であれば、ピークと判断してフレーム検出パルスを出力することを特徴とする請求項2、3又は4に記載のリーダ又はリーダライタ。
【請求項6】
前記同期部は、前記プリアンブルの理想的な波形を生成するフラグ波形生成部と、該フラグ波形生成部から出力される波形と前記デジタル周波数変換器の出力波形との相関を演算する相関演算部と、前記デジタル周波数変換器の出力波形の電力値の絶対値を積算する絶対値積算部と、前記相関演算部の出力と前記絶対値積算部の出力とを比較するレベル判定部と、該レベル判定部を通過した信号のピーク値を検出するピーク検出部と、を備え、
前記相関演算部の出力信号と前記絶対値積算部の出力とを比較してレベルを判定し、前記絶対値積算部の出力レベルより高い信号を前記ピーク検出部に入力して、その信号の中からピークを検出することを特徴とする請求項2、3又は4に記載のリーダ又はリーダライタ。
【請求項7】
前記同期部は、前記フラグ波形生成部から出力される波形を1/−1のデジタル波形とし、前記相関演算部による相互相関による演算をハイレベルを1、ローレベルを−1として加算減算器により演算することを特徴とする請求項6に記載のリーダ又はリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−228082(P2007−228082A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44320(P2006−44320)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】