説明

リードおよび心臓治療装置

【課題】神経刺激用の電極と除細動用の電極を低侵襲で植え込むことができ、かつ、神経に負荷をかけずに電極位置を保持して長期的な治療を適切に行う。
【解決手段】可撓性の導線を有するリード線15と、リード線15の末端に接続された少なくとも1つの神経刺激電極11と、リード線15の基端に設けられ、電極に電圧を加える装置本体に接続可能なコネクタ14と、神経刺激電極11とコネクタ14との間のリード線15に接続された除細動電極13と、神経刺激電極11と除細動電極13との間のリード線15上に設けられ、心膜上に配置することで神経刺激電極11と心膜の間のリード長を所定の長さ以上に保持するストッパ17とを備えるリード10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードおよび心臓治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、迷走神経に電極を接続し、迷走神経に電気刺激を与えて神経刺激治療を行う神経刺激用のリードと、心膜内あるいは心膜外に電極を取り付け、心臓に電気刺激を与えて除細動治療を行う除細動用のリードが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−220807号公報
【特許文献2】特開平6−197988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、神経刺激治療と除細動治療を同一患者に行う場合には、特許文献1に記載の神経刺激用のリードと特許文献2に記載の除細動用のリードをそれぞれ生体に別途取り付けなければならず、侵襲が大きくなるという不都合がある。また、仮にこれらの神経刺激用のリードと除細動用のリードを組み合わせたとしても、これらを単に組み合せたのでは、迷走神経および心膜にそれぞれ電極を固定すると、心臓の拍動やリードの自重によって迷走神経側のリード線が心臓側に落ち込んで、神経刺激を行う電極と共に迷走神経が引っ張られて、迷走神経に負荷を掛けてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、神経刺激用の電極と除細動用の電極を低侵襲で植え込むことができ、かつ、神経に負荷をかけずに電極位置を保持して長期的な治療を適切に行うことのできるリードおよび心臓治療装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、可撓性の導線を有するリード線と、該リード線の末端に接続された少なくとも1つの神経刺激電極と、前記リード線の基端に設けられ、電極に電圧を加える装置本体に接続可能な接続部と、前記神経刺激電極と前記接続部との間の前記リード線に接続された除細動電極と、前記神経刺激電極と前記除細動電極との間の前記リード線上に設けられ、心膜上に配置することで前記神経刺激電極と前記心膜の間のリード長を所定の長さ以上に保持する保持部とを備えるリードを提供する。
【0007】
本発明によれば、心膜にリード線を貫通させ、リード線の末端に設けられた神経刺激電極を迷走神経に取り付けるとともに、除細動電極をリード線の途上に設けることで、心膜と心臓の隙間に除細動電極を配置することができる。したがって、同一患者に対して1本のリード線により神経刺激電極と除細動電極を低侵襲で植え込み、神経刺激治療と除細動治療の両方を行うことができる。
【0008】
この場合において、心膜の表面に配置された保持部により神経刺激電極と心膜の間のリード長を所定の長さ以上に保持することで、心膜の外側に配置されているリード線の基端方向の移動が制限される。したがって、前記神経刺激電極と前記心膜の間のリード線の長さが余裕をもった状態のまま保持されるため、心臓の拍動やリード自身の自重により心膜の内側に配置されているリード線を介して心膜が内側に引っ張られても、リード線が落ち込むことなく、心膜の外側に配置されているリード線を介して迷走神経が引っ張られるのを抑制することができる。これにより、迷走神経に負荷をかけずに神経刺激電極および除細動電極を保持し、長期的な治療を適切に行うことができる。
【0009】
上記発明においては、前記保持部は、前記神経刺激電極を迷走神経に取り付けた状態で心膜の外側表面に配置され、前記リード線から半径方向外方に突出した形状を有するストッパであるとしてもよい。
このように構成することで、心膜の外側表面に配置された保持部が半径方向外側に突出して心膜の表面に張り出す形でリード線の保持を行うため、リードを介して基端側からの負荷を安定して抑えることができる。
【0010】
上記発明においては、前記保持部が、前記リード線を挿通させる筒状容器に収容可能であって、弾性部材により形成されており、外力が作用していない自然状態では該筒状容器の径寸法より大きい径寸法を有することとしてもよい。
このように構成することで、保持部に外力を加えることで筒状容器にリード線および保持部を収容した状態で、心膜の内側から外側に貫通させることができ、迷走神経に神経刺激電極を取り付けて保持部を心膜の外側に配置したら、筒状容器から保持部を解放して心膜上に保持部を配置することができる。これにより、心膜の外側に保持部を容易に配置することができ、術中での患者への負担を軽減することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記保持部と前記接続部との間の前記リード線に設けられ、前記神経刺激電極を前記迷走神経に取り付けた状態で前記心膜の内側に配置され、前記リード線から半径方向外方に突出した形状を有する他のストッパを備えることとしてもよい。
このように構成することで、他のストッパによりリード線の末端方向の移動も制限するため、除細動電極の位置を固定することができ、除細動治療をより適切に行うことができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記保持部の近傍にX線不透過性材料が設けられていることとしてもよい。
このように構成することで、X線観察した場合において、X線不透過性材料が表示されることにより、保持部の位置を把握することができる。X線不透過性材料としては、例えば、金属材料が挙げられる。
【0013】
また、本発明は、上記いずれかのリードと、前記神経刺激電極および前記除細動電極に電圧を加える装置本体とを備える心臓治療装置を提供する。
本発明によれば、装置本体により、迷走神経に取り付けた神経刺激電極に電圧を加えることで、迷走神経に電気的に刺激を与えて神経刺激治療を行い、心膜の表面に沿って配置した除細動電極に電圧を加えることで、心臓に電気的に刺激を与えて除細動治療を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、神経刺激用の電極と除細動用の電極を低侵襲で植え込むことができ、かつ、神経に負荷をかけずに電極位置を保持して長期的な治療を適切に行うことのできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は患者の体内に本発明の一実施形態に係る心臓治療装置が設置された様子を患者の正面から見た縦断面図であり、(b)は患者の体内にその心臓治療装置が設置された様子を患者の側面から見た縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るリードを示す概略構成図である。
【図3】迷走神経に神経刺激電極を取り付け心膜の表面に沿って除細動電極を配置した状態で、ストッパが心膜の外面に突き当てられた様子を示す縦断面図である。
【図4】図2のリードをアプリケータに挿通させた状態を示す縦断面図である。
【図5】X線遮蔽部材を示す概略構成図である。
【図6】X線撮影により、リードを投影した様子を示す図である。
【図7】迷走神経に神経刺激電極を巻き付けて取り付けた様子を示す縦断面図である。
【図8】図7の状態から、アプリケータを心膜の内側に引き戻し、心膜の外面にストッパを突き当てた様子を示す縦断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の変形例に係るストッパを2つ有するリードを示す概略構成図である。
【図10】図9のリードの一方のストッパが心膜の外面に突き当てられ、他方のストッパが心膜の内面に突き当てられた様子を示す縦断面図である。
【図11】図9のリードをアプリケータに収容した様子を示す縦断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の変形例に係るネット状の除細動電極を備えるリードをアプリケータに収容した様子を示す縦断面図である。
【図13】図12のリードのネット状の除細動電極を広げた様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るリードおよび心臓治療装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る心臓治療装置100は、図1(a),(b)に示すように、神経刺激電極11および除細動電極13を有するリード10と、神経刺激電極11および除細動電極13に電圧を加える装置本体30とを備える体内埋め込み式の装置である。
【0017】
リード10は、可撓性の導線であるリード線15を備えており、装置本体30と接続が可能となっている。
リード線15には、図2に示すように、その末端に神経刺激電極11が接続され、リード線15の基端には接続部であるコネクタ14が接続されている。また、神経刺激電極11とコネクタ14の間の途中位置、すなわち、神経刺激電極11からリード線15の基端側に向かって所定の間隔をあけた位置に除細動電極13が接続されている。コネクタ14を介して装置本体30とリード10は接続されている。また、リード線15における神経刺激電極11から除細動電極13までの間および除細動電極13からコネクタ14までの間には、それぞれ絶縁被膜(図示略)が施されている。
【0018】
神経刺激電極11は、例えば、リード線15の末端において、リード線15の一部を構成する裸線により構成されたヘリカル型バイポーラ電極である。この神経刺激電極11は迷走神経Vに巻きつけて取り付けることができるようになっており、螺旋形状を有する神経刺激電極11の内側には電極が露出して設けられている。神経刺激電極11を構成する裸線の先端は尖鋭状に形成されている。
【0019】
除細動電極13は、例えば、リード線15の一部を周方向に覆うように巻き付けられたコイル状の電極である。この除細動電極13は、心膜Pの内側にある心臓Hと心膜Pの間の隙間に、心膜P内側の表面に沿って配置することができるようになっている。
【0020】
また、リード10は、リード線15上の神経刺激電極11と除細動電極13との間に設けられたストッパ(保持部)17を備えている。
ストッパ17は、リード線15よりも半径方向に突出した形状の傘状の部材であり、例えば、シリコーン等の弾性を有する生体適合性材料により形成されている。
【0021】
このストッパ17は、神経刺激電極11が迷走神経Vに取り付けられ、除細動電極13が心臓Hと心膜Pの隙間にある状態で、心膜Pの外側に配置されるようになっている。また、ストッパ17は、心膜Pの外面に突き当たって配置されることにより、心膜Pの外側に配されるリード線15の基端方向の移動を制限することで、前記神経刺激電極と前記心膜の間のリード長を所定の長さ以上に保持することができるようになっている。以下、リード線15における神経刺激電極11からストッパ17までを符合15aで示し、リード線15におけるストッパ17から除細動電極214までを符合15bで示す。
【0022】
また、リード線15上における神経刺激電極11からストッパ17までの距離が、迷走神経Vの神経刺激電極11の取付位置から心膜Pまでの直線距離よりも十分に長くなるように、ストッパ17はリード線15上の神経刺激電極11から離れた位置に固定されている。これにより、図3に示すように、迷走神経Vに神経刺激電極11が取り付けられ、心膜Pの外面にストッパ17が突き当てられた状態で、心膜Pの外側に配されるリード線15の長さに十分に余裕を持たせることができるようになっている。
【0023】
また、ストッパ17は、アプリケータ19により外力が加えられて、半径方向内方に縮めることにより、リード10を挿通させる図4に示すような筒状に形成された細径のアプリケータ(筒状容器)19に収容させることができるようになっている。ストッパ17は、外力が作用していない自然状態、すなわち半径方向外方に広がった状態では、アプリケータ19の径寸法より大きい径寸法、例えば、アプリケータ19の径の倍以上の径寸法を有している。アプリケータ19は、弾性変形可能な材質により形成されている。
【0024】
また、例えば、図5に示すように、リード線15とストッパ17との接続部分には、環状のX線遮蔽部材(X線不透過性材料)21が設けられている。X線遮蔽部材21としては、例えば、金属材料が挙げられる。
【0025】
次に、本実施形態に係るリード10および心臓治療装置100の設置方法について説明する。
本実施形態に係るリード10および心臓治療装置100を患者Cの体内に設置するには、まず、図4に示すように、ストッパ17を外力を加えることで、半径方向内方に縮めてストッパ17と共にリード10をアプリケータ19内に挿通させ、神経刺激電極11、除細動電極13、ストッパ17およびリード線15をアプリケータ19内に収容する。
【0026】
次いで、切開器具により患者Cの腹部の剣状突起(図示略)の下部の皮膚を切開し、リード10が内包されたアプリケータ19を患者Cの体内に挿入する。アプリケータ19の挿入は、例えば、X線撮影により、リード10のおおよその位置を把握しながら行う。この場合において、図6に示すように、X線撮影において、神経刺激電極11、除細動電極13およびリード線15と共に、X線遮蔽部材21を投影することができる。
【0027】
次いで、心膜Pの一部を切開して心膜Pの内側にアプリケータ19を挿入し、心膜P内の心臓Hとの隙間にアプリケータ19を一旦通す。次に、心膜Pの別の一部を切開して心膜Pの内側から外側に向かってアプリケータ19を通し、アプリケータ19の先端を迷走神経Vの近傍に近付ける。
【0028】
次いで、アプリケータ19の先端から神経刺激電極11を押し出して露出させる。そして、リード線15を軸線回りに回転させながら、図7に示すように、神経刺激電極11を構成する裸線の先端から迷走神経Vに巻き付けていく。これにより、神経刺激電極11が迷走神経Vに取り付けられる。
【0029】
次いで、心膜Pの外側にアプリケータ19の先端側を十分に出した状態で、アプリケータ19の先端からストッパ17を押し出す。これにより、アプリケータ19から解放されたストッパ17が、外力が作用していない自然状態となるため、心膜Pの外側でリード線15の半径方向外方に広がる。
【0030】
心膜Pの外側でストッパ17が広がったことを確認したら、図8に示すように、アプリケータ19を心膜Pの内側に引き戻し、心膜Pの外面にストッパ17を突き当て、ストッパ17を心膜P上に配置する。この場合において、リード線15上の神経刺激電極11から基端側に向かって十分に離れた位置に配置した状態でストッパ17が心膜P上に保持されているので、神経刺激電極と前記心膜の間のリード長を所定の長さ以上に保持することができ、心膜Pの外側に配されるリード線15aの長さに十分に余裕を持たせることができる。
【0031】
次いで、心膜Pにリード線15を貫通させたまま心膜Pからアプリケータ19を完全に引き抜き、心膜Pの心臓Hとの隙間の所定の位置に除細動電極13を配置する。そして、剣状突起の下部に配置されているリード線15の一部を皮下に縫合して固定する。次に、リード線15を装置本体30に接続し、リード10の挿入時に切開した貫通孔を介して患者Cの剣状突起の内側に装置本体30を埋め込む。これにより、体内植込み型の心臓治療装置100が患者Cの体内に設置される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係るリード10および心臓治療装置100によれば、心膜Pにリード線15を貫通させ、迷走神経Vに神経刺激電極11を取り付けるとともに除細動電極13をリード線15の途上に設けることで、心膜Pと心臓Hの隙間に除細動電極を配置することができる。したがって、同一の患者Cに対して1本のリード線15により神経刺激電極11と除細動電極13を低侵襲で植え込むことができる。そして、装置本体30により、神経刺激電極11に電圧を加えることで迷走神経Vに電気的に刺激を与えて神経刺激治療を行い、除細動電極13に電圧を加えることで心臓Hに電気的に刺激を与えて除細動治療を行うことができる。
【0033】
この場合において、心膜Pの外側に配置されて半径方向外方に突出するストッパ17が心膜Pの外面に突き当たることにより、神経刺激電極11と心膜Pの間のリード長を所定の長さ以上に保持することで、心膜Pの外側に配されるリード線15aの基端方向への移動を制限することができる。そして、このリード線15aの長さに余裕を持たせておくことで、心臓Hの拍動により心膜Pの内側に配されるリード線15bを介して心膜Pが内側に引っ張られても、リード線15が落ち込むことなく、心膜Pの外側に配されるリード線15aを介して迷走神経Vが引っ張られるのを抑制することができる。これにより、迷走神経Vに負荷をかけずに神経刺激電極11および除細動電極13を保持し、長期的な治療を適切に行うことができる。
【0034】
また、リード線15とストッパ17との接続部分にX線遮蔽部材21を設けることで、X線観察した場合にX線不透過性材料21が表示されることにより、ストッパ17の位置を容易に把握することができる。
本実施形態においては、内視鏡観察しながら、患者Cの体内にリード10および心臓治療装置100を設置することとしてもよい。
【0035】
また、本実施形態においては、リード線15の途中位置にストッパ17を1つ設けることとしたが、例えば、図9に示すように、リード線15の途中位置にさらにもう1つ、外力が作用しない自然状態においてリード線15の半径方向外方に突出する他のストッパ27を設けることとしてもよい。
【0036】
この場合において、他のストッパ27は、神経刺激電極11を迷走神経Vに取り付け、除細動電極13を心膜Pの表面に沿って配置した状態で、心膜Pの内側にある心臓Hと心膜Pの隙間に配置されることとすればよい。そして、図10に示すように、他のストッパ27が心膜Pの内面に突き当たることにより、心膜Pの内側に配されるリード線15bの末端方向の移動が制限されるようにすればよい。また、他のストッパ27は、ストッパ17と同様に、シリコーン等の弾性を有する生体適合性材料により形成され、ストッパ17と同様の形状を有し、図11に示すように、外力が加えられて、半径方向内方に縮めることによりアプリケータ19に収容させることができるようにすればよい。
【0037】
このようにすることで、ストッパ17により迷走神経Vに負荷をかけずに神経刺激電極11および除細動電極13を保持しつつ、他のストッパ27により除細動電極13の位置を固定し、除細動治療をより適切に行うことができる。ストッパ17と他のストッパ27との間の距離は、心膜Pを挟んで互いに僅かに離れた程度とすることが好ましい。これにより、心膜Pの外側に配されるリード線15aの末端方向の移動も、心膜Pの内側に配されるリード線15bの基端方向の移動も適度に制限することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、除細動電極として、リード線15の周方向にコイル状に巻かれた除細動電極13を例示して説明したが、図12に示すように、半径方向内方に縮めることによりアプリケータ19に収容可能で、かつ、図13に示すように、アプリケータ19から解放することによりリード線15の長手方向に対して交差する方向に広がるネット状の除細動電極23を採用することとしてもよい。ネット状の除細動電極23によれば、コイル状の除細動電極13と比較して表面積が大きく、より効率的に除細動治療を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態においては、神経刺激電極として、ヘリカル型バイポーラ電極の神経刺激電極11を例示して説明したが、これに代えて、例えば、カフ型バイポーラ電極(図示略)を採用することとしてもよい。すなわち、周方向の1箇所に軸方向に沿って半径方向に貫通する切り込みが形成されており、切り込みを閉じる方向に曲がり癖を有する略円柱形状の電極であって、切り込みを開く方向に張力を掛けた状態で環状の内側に神経刺激電極11を入れ、張力を解放することにより切り込みを閉じて神経刺激電極11に取り付けることができるタイプのものを採用することとしてもよい。このタイプの電極は、環状の内側に電極が露出していればよい。また、神経刺激電極はリード線15の末端側に複数設けられていてもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、保持部として傘状の弾性素材でできたストッパ17を例示して説明したが、これに代えて、バルーンや網状に広がる部材等の、後からリード線15の半径方向に拡張可能な部材を用いてもよい。また、それに限らず、心膜P上に配置することで神経刺激電極11と心膜Pの間のリード長を所定の長さ以上に保持することができるならば、生体用の接着素材や、心膜Pに吸着する素材を用いてもよい。
【0041】
また、本実施例においては、リード線15上に固定されたストッパ17を用いたが、これに代えて、リード線15上を移動可能なストッパを用いてもよい。この場合、ストッパとリード線15の間の接続部位はねじ等により固定、非固定状態を変更することができるようになっている。これにより、手術前にストッパの位置をある程度変更可能なようになっている。
【符号の説明】
【0042】
V 迷走神経
P 心膜
10 リード
11 神経刺激電極
13 除細動電極
14 コネクタ(接続部)
15 リード線
17 ストッパ(保持部)
19 アプリケータ(筒状容器)
21 X線遮蔽部材(X線不透過性材料)
27 他のストッパ
30 装置本体
100 心臓治療装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の導線を有するリード線と、
該リード線の末端に接続された少なくとも1つの神経刺激電極と、
前記リード線の基端に設けられ、電極に電圧を加える装置本体に接続可能な接続部と、
前記神経刺激電極と前記接続部との間の前記リード線に接続された除細動電極と、
前記神経刺激電極と前記除細動電極との間の前記リード線上に設けられ、心膜上に配置することで前記神経刺激電極と前記心膜の間のリード長を所定の長さ以上に保持する保持部とを備えるリード。
【請求項2】
前記保持部は、前記神経刺激電極を迷走神経に取り付けた状態で前記心膜の外側表面に配置され、前記リード線から半径方向外方に突出した形状を有するストッパである請求項1に記載のリード。
【請求項3】
前記保持部が、前記リード線を挿通させる筒状容器に収容可能であって、弾性部材により形成されており、外力が作用していない自然状態では該筒状容器の径寸法より大きい径寸法を有する請求項2に記載のリード。
【請求項4】
前記保持部と前記接続部との間の前記リード線上に設けられ、前記神経刺激電極を前記迷走神経に取り付けた状態で前記心膜の内側に配置され、前記リード線から半径方向外方に突出した形状を有する他のストッパを備える請求項2または請求項3に記載のリード。
【請求項5】
前記保持部の近傍にX線不透過性材料が設けられている請求項1から請求項4のいずれかに記載のリード。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のリードと、
前記神経刺激電極および前記除細動電極に電圧を加える装置本体とを備える心臓治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−27561(P2013−27561A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165765(P2011−165765)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】