説明

リードスイッチ

【課題】接点被膜層の亀裂を防止し、接点寿命の永い、安定したリードスイッチを提供する。
【解決手段】リード片の接点表面に、メッキにより厚さが0.2μm以上1.0μm以下(但し、0.5μm以上を除く)の遷移金属またはそれらの合金の少なくとも1種よりなる下地被膜層を設け、さらに、該下地被膜層表面側上層に、少なくともロジウム(Rh)を主成分とする単層、またはロジウム(Rh)を主成分とした層を含む複数の層からなる、応力緩和のための第2接点被膜層を配設し、さらにまた、該第2接点被膜層の表面側上層にイリジウム(Ir)を主成分とする厚さが0.5μm以上2.0μm以下(但し、1μm以上を除く)の第1接点被膜層を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリード片を接点とするリードスイッチ、特にその接点の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リードスイッチは、図3に示すように、一対の細長いリード片1、2のそれぞれの一端を接点部として、この接点部10、20を真空状態、または不活性ガスを封じ込めた状態のガラス管よりなる容器3に、封入した構造になっている。上記リード片1、2は、例えば、鉄ニッケル合金のような金属磁性体で形成されており、それぞれの接点部10、20は互いに所定の重なりと間隔を保って配置されている。また、それぞれの接点部が対向する面である接点面には、金(Au)を下地被膜層11、21に配した後、イリジウム(Ir)を主成分とする接点被膜層12、22が形成されていた。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−186953号公報(段落007、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のごとき従来のリードスイッチの接点構成では、接点部をガラスにより封止する際の熱によりリード片に熱膨張が発生し、リード片を構成する金属磁性体とイリジウム(Ir)を主成分とする接点被膜層間の熱膨張量の差による応力で、該イリジウム(Ir)を主成分とする接点被膜層に亀裂が生じ、これにより接点寿命が劣化するという問題点があった。従って、熱膨張差による接点被膜層の亀裂を防止し、接点寿命の永い、安定したリードスイッチの開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のリードスイッチは、リード片を接点とするリードスイッチであって、該リード片の接点表面に、メッキにより厚さが0.2μm以上1.0μm以下(但し、0.5μm以上を除く)の遷移金属またはそれらの合金の少なくとも1種よりなる下地被膜層を設け、さらに、該下地被膜層表面側上層に、少なくともロジウム(Rh)を主成分とする単層、またはロジウム(Rh)を主成分とした層を含む複数の層からなる、応力緩和のための第2接点被膜層を配設し、さらにまた、該第2接点被膜層の表面側上層にイリジウム(Ir)を主成分とする厚さが0.5μm以上2.0μm以下(但し、1μm以上を除く)の第1接点被膜層を配設してなるものである。
【0006】
また、本発明によるリードスイッチは、前記第2接点被膜層の厚さが0.5以上5.0μm以下(但し、2.5μm以上を除く)であるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、リード片の接点表面に、メッキにより厚さが0.2μm以上1.0μm以下(但し、0.5μm以上を除く)の遷移金属またはそれらの合金の少なくとも1種よりなる下地被膜層を設け、さらに、該下地被膜層表面側上層に、少なくともロジウム(Rh)を主成分とする単層、またはロジウム(Rh)を主成分とした層を含む複数の層からなる、応力緩和のための第2接点被膜層を配設し、さらにまた、該第2接点被膜層の表面側上層にイリジウム(Ir)を主成分とする厚さが0.5μm以上2.0μm以下(但し、1μm以上を除く)の第1接点被膜層を配設したことにより、接点被膜層の亀裂発生を防止し、接点寿命の永い、安定したリードスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における、構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態2における、構成を示す説明図である。
【図3】従来のリードスイッチの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1における、構成を示す説明図である。
図において、1、2はリード片、10、20は接点部、11、21は下地被膜層、13、23は第2接点被膜層、14、24は第1接点被膜層である。
接点部10と接点部20とが対向する接点面には、リード片1、2を構成する金属磁性体の表面に、遷移金属、特に金、銀、銅、ニッケル等を用いた下地被膜層11、12を形成する。尚、下地被膜層11、12の厚さは、0.2〜1.0μm程度にする。
【0010】
前記下地被膜層11、12の厚さは、第2接点被膜層13、23の金属磁性体への被膜の下地特性を有する範囲で成る可く薄い方が好ましい。ただ、0.2μm以下では下地特性が部分的にむら(主にメッキ法におけるピンホールなどによる)を生じることもあり、また、1.0μm以上であっても下地特性(密着性)に余り変化が無く、また負荷回路の開閉を行い接点損傷が進行した際に、損傷部の下地金属拡散濃度が上昇し、接点寿命を劣化させる粘着現象等の原因ともなる。従って、0.2〜1.0μm程度にするのが望ましい。
【0011】
上記下地処理の後、リード片1、2の接点部10、20に、第2接点被膜層13、23をロジウム(Rh)を用いて形成する。第2接点被膜層13、23の厚さは、0.5〜5.0μm程度の膜厚にする。
次に、第2接点被膜層13、23上に、第1接点被膜層14、24をイリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)またはロジウム(Rh)の内の1種を用いて形成する。第1接点被膜層14、24の厚さは0.5〜2.0μm程度とする。
【0012】
上記により接点構成されたリード片を用いてガラス封止を行う。この場合、封止熱によりリード片接点部10、20に熱膨張が発生する。
この際、熱膨張量の差により、金属磁性体−下地被膜層11、12間、下地被膜層11、12−第2接点被膜層13、23間、第2接点被膜層13、23−第1接点被膜層14、24間のそれぞれに膨張量に応じた応力が発生するが、第2接点被膜層13、23のロジウム(Rh)は、材料的に前記封止熱に充分耐えうる耐応力性を有しており、また、イリジウム(Ir)の膨張係数は約8×10-6/℃であり、また、ルテニウム(Ru)の膨張係数も約6.7×10-6/℃であり、これはロジウム(Rh)の膨張係数とほぼ同程度であることから、第1接点被膜層14、24にかかる応力を抑制することができ、延性の乏しいイリジウム(Ir)やルテニウム(Ru)を接点被膜に使用しても、熱による亀裂の発生を防ぐことができる。
【0013】
上記から、第1接点被膜層14、24の厚さは、使用頻度、要求寿命により1義的に決めることができ、通常の使用状態では0.5〜2.0μmの範囲で適宜選択することができる。
【0014】
また、第2接点被膜層層13、23の厚さは、熱応力を弛緩するための厚さを必要とし、第1接点被膜層14、24の境界面における剪断応力が許容応力内になるように選ばれなければならない。封止温度、各被膜層間の膨張係数の差、および第1接点被膜層14、24の許容剪断応力等により決められる。通常条件では第1接点被膜層14、24の厚さより厚く、0.5〜5.0μm程度の厚さとして選択される。
【0015】
以上のように、イリジウム(Ir)やルテニウム(Ru)のような延性の乏しい第1接点被膜層14、24の下層として、ロジウム等の熱応力を緩和するための予備接点被膜である第2接点被膜層13、23を形成することにより、封止熱などによる接点被膜の亀裂の発生が抑制される。このため、イリジウム(Ir)やルテニウム(Ru)の高融点・高硬度という物性を十分活かし、高負荷での用途や長寿命の用途に適したリードスイッチが得られる。
【0016】
[実施の形態2]
図2は本発明の実施の形態2における、構成を示す説明図である。
図において、15、25は拡散層である。なお、図1と同一の構成部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0017】
本実施の形態は、上述の実施の形態1においては応力緩和のためにロジウム(Rh)を使用するため、高コストになってしまう恐れがあるのに対し、ロジウム(Rh)を使用せずに、安価に同目的を達成せんとするものである。
【0018】
図2において、鉄ニッケル合金等の金属磁性体で形成されたリード片1、2の接点部10、20の表面に、遷移金属又はそれらの各合金、特には金、銀、銅、ニッケル等またはそれらの各合金、の少なくとも1種を使用して、1.0〜5.0μmの被膜を形成し、その後、800〜1000℃程度の高温水素雰囲気中で前記金属磁性体の表面に熱拡散し、拡散層15、25を形成する。
【0019】
次いで、後に施行される第1接点被膜層12、22の密着性を高めるために、前記被膜と同じ材質の遷移金属又はそれらの各合金、特には金、銀、銅、ニッケル等またはそれらの各合金、の少なくとも1種からなる、厚さ0.2〜0.5μm程度の下地被膜層11、21を形成する。該下地被膜層11、21の目的は、第1接点被膜層12、22の密着性を高めるところにあり、その厚さは厚い必要はなく、コスト的に均一に被覆される限界として0.2〜0.5μm程度が好ましい。
その後さらに、この下地被膜層11、21上に0.5〜2.0μm程度のイリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)またはロジウム(Rh)の内の1種を主成分とする第1接点被膜層12、22が形成される。
【0020】
前記のごとく、リード片1、2を用いてガラス封止を行うと、封止熱によりリード片接点部10、20に熱膨張が発生する。ここで、接点部10、20の表面には、あらかじめ、遷移金属又はそれらの各合金、特には金、銀、銅、ニッケル等またはそれらの各合金、の少なくとも1種を使用した拡散層を形成し、それにより熱膨張量が変化することにより、金属磁性体−第1接点被膜間に発生する熱応力を緩和・吸収する。
【0021】
以上のように、本実施の形態2によれば、イリジウム(Ir)やルテニウム(Ru)のような延性の乏しい第1接点被膜層12、22の下層に、遷移金属又はそれらの各合金、特には金、銀、銅、ニッケル等またはそれらの各合金、の少なくとも1種からなる下地被膜層11、21と、金属磁性体の拡散層を形成することにより、更に低コストで接点被膜の亀裂の発生を抑制することができる。
【0022】
[実施の形態3]
上記実施の形態1、2において、その接点構成は、第1接点被膜層12、22にイリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)またはロジウム(Rh)の内の1種を主成分として適用した場合について詳述されているが、同一目的をもってこれらに代わり、同じ白金系金属に属する接点材料を用いた場合にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1、2 リード片、10、20 接点部、11、21 下地被膜層、13、23 第2接点被膜層、14、24 第1接点被膜層、 15、25 拡散層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード片を接点とするリードスイッチであって、該リード片の接点表面に、
メッキにより厚さが0.2μm以上1.0μm以下(但し、0.5μm以上を除く)の遷移金属またはそれらの合金の少なくとも1種よりなる下地被膜層を設け、さらに、該下地被膜層表面側上層に、
少なくともロジウム(Rh)を主成分とする単層、またはロジウム(Rh)を主成分とした層を含む複数の層からなる、応力緩和のための第2接点被膜層を配設し、
さらにまた、該第2接点被膜層の表面側上層にイリジウム(Ir)を主成分とする厚さが0.5μm以上2.0μm以下(但し、1μm以上を除く)の第1接点被膜層を配設してなることを特徴とするリードスイッチ。
【請求項2】
前記第2接点被膜層の厚さが0.5以上5.0μm以下(但し、2.5μm以上を除く)であることを特徴とする請求項1に記載のリードスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−92880(P2010−92880A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287981(P2009−287981)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【分割の表示】特願2003−81727(P2003−81727)の分割
【原出願日】平成15年3月25日(2003.3.25)
【出願人】(501252238)株式会社沖センサデバイス (17)
【Fターム(参考)】