説明

ルテニウム錯体触媒メタセシス反応による大環状化合物の製造方法

本発明は、下記式Iの大環状化合物:
【化1】


(式中、R1、R2、R3、A及びDは、請求項で与えられる意味を有する)
の改良された製造方法であって、
ベンジリデンルテニウム触媒(該フェニル基はニトロ基で置換されている)の存在下、
下記式IIIの対応するジエン:
【化2】


(式中、R1、R2、R3、A及びD'は請求項で与えられる意味を有する)
の閉環メタセシスによる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の背景)
1.技術分野
本発明は、下記式Iの大環状化合物の改良された製造方法に関する。
【化1】

【0002】
2.背景情報
式Iの大環状化合物は国際特許出願WO 00/59929から知られている。この出願で開示された化合物は、C型肝炎ウイルス感染症の治療に非常に活性な薬剤である。これら化合物の製造方法は、特定反応基の保護と脱保護を含む多くの合成工程を含み、不十分な全体的収率につながる。さらに、前記国際特許出願は、下記式から選択されるルテニウムベース触媒を用いてオレフィンメタセシスによって大環を形成することを示唆している。
【化2】

【0003】
不運なことに、この反応は極端に希釈した反応系でのみ実施することができ、完成に非常に長い時間がかかる。さらに、反応を完了するためには比較的多量のこれら触媒(5.5〜30モル%)が必要である。
最近、K. Grelaらは、フェニル基がニトロ基で置換されている新規なベンジリデンルテニウム触媒を示唆した(Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, No. 21 pp. 4038-4040)。
本発明の基礎になる課題は、工業規模で、より小量の触媒、より良い転換率、より高い収率及び改良されたルームタイム収率で式Iの大環状化合物の製造を可能にする方法を提供することだった。
驚くべきことに、ベンジリデンルテニウム触媒で環化メタセシス反応を実施すると、望ましくない副生物が少なく良い転換率を達成できることを見いだした。このベンジリデン基のフェニル基がニトロ基で置換されているベンジリデンルテニウム触媒は、1モル%未満の量で効率的に使用することができる。
【0004】
(発明の簡単な概要)
従って、本発明は、下記式Iの大環状化合物:
【化3】

(式中、
2は、ヒドロキシ基、脱離基又は下記式IIの基:
【化4】

(式中、WはCH又はNであり、
21はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、ヒドロキシ又はN(R23)2(各R23は独立的にH、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)であり;
22はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6 チオアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C2-7アルコキシアルキル、C3-6シクロアルキル、C6又は10アリール又はHet(Hetは、窒素、酸素及びイオウから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5-、6-、若しくは7-員飽和若しくは不飽和ヘテロ環である)であり;
前記シクロアルキル、アリール又はHetは、R24で置換されており、ここで、
24は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、NO2、N(R25)2、NH-C(O)-R25若しくはNH-C(O)-NH-R25(各R25は独立的にH、C1-6アルキル若しくはC3-6シクロアルキルである)であり;又は
24は、NH-C(O)-OR26(R26はC1-6アルキル若しくはC3-6シクロアルキルである)であり;
28は、H、ハロ又はC1-6アルキル、好ましくはHである)
であり;
3は、ヒドロキシ、NH2、又は式-NH-R31の基であり、式中、R31はC6又は10アリール、ヘテロアリール、-C(O)-R32、-C(O)-NHR32若しくは-C(O)-OR32(R32はC1-6アルキル若しくはC3-6シクロアルキルである)であり;
Dは、3〜7原子の飽和アルキレン鎖であり;かつ
Aは、式-C(O)-NH-R5のアミド(式中、R5は、C1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C6又は10アリール、C7-16アラルキル、及びSO25A(R5AはC1-8アルキル、C3-7シクロアルキル又は{C1-6アルキル-C3-7シクロアルキル}である)から成る群より選択される)であり、或いは
Aは、カルボン酸又はその薬学的に許容しうる塩若しくはエステルである)
の改良された製造方法に関する。
本方法は、下記式IIIのジエン化合物:
【化5】

(式中、R2、R3及びAは、前記定義どおりであり;かつ
D'は、3〜7原子の飽和アルキレン鎖を表す)を、
下記式IVのルテニウム触媒:
【化6】

(式中、
1及びX2は、それぞれ独立的にアニオン性リガンドを表し;
Lは、中性電子供与リガンドを表し;かつ
4は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル又はC6-12アリール-C1-6アルキル基を表す)
の存在下でメタセシス環化反応に供する工程を含む。
【0005】
(発明の詳細な説明)
使用する用語の定義及び慣例
本明細書で特に定義しない用語は、本開示及び文脈に照らして本技術の当業者がそれら用語に与えるであろう意味が与えるものとする。しかし、本明細書で使用する場合、反対の意味に指定しない限り、以下の用語は指示した意味を有し、かつ以下の慣例を守る。
以下に定義する基、遊離基(radical)、又は部分では、炭素原子の数はその基に先行して指定されることが多く、例えば、C1-6アルキルは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基又はアルキル遊離基を意味する。一般に、2又は3個のサブ基を含む基では、最後に命名される基はその遊離基の結合点であり、例えば、“チオアルキル”は、式HS-Alk-の一価遊離基を意味する。以下、特に指定しない限り、用語の通常の定義が支配し、かつすべての式及び基では、通常の安定した原子価が仮定かつ達成される。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“C1-6アルキル”は、1〜6個の炭素原子を含有する非環式の直鎖若しくは分岐鎖アルキル置換基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、1-メチルエチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、及び1,1-ジメチルエチルが挙げられる。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“C3-6シクロアルキル”は、3〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキル置換基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
本明細書で使用される用語“飽和アルキレン鎖”は、飽和した直鎖若しくは分岐鎖脂肪族炭化水素の各末端から1個の水素原子が除去されて誘導される二価アルキル置換基を意味し、例えば、CH2CH2C(CH3)2CH2CH2-が挙げられる。
【0006】
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“C1-6アルコキシ”は、置換基C1-6アルキル-O-を意味し、ここで、アルキルは6個までの炭素原子を含有する上記定義どおりの基である。アルコキシとして、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メトキシエトキシ、ブトキシ及び1,1-ジメチルエトキシが挙げられる。最後の置換基は一般的にtert-ブトキシとして知られている。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“C3-6シクロアルコキシ”は、3〜6個の炭素原子を含有する置換基C3-6シクロアルキル-O-を意味する。
本明細書で使用される用語“C2-7アルコキシ-C1-6アルキル”は、置換基C2-7アルキル-O-C1-6アルキルを意味し、ここで、アルキルは6個までの炭素原子を含有する上記定義どおりの基である。
本明細書で使用される用語“ハロ”は、ブロモ、クロロ、フルオロ又はヨードから選択されるハロゲン置換基を意味する。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“ハロアルキル”は、1個以上の水素原子がブロモ、クロロ、フルオロ又はヨードから選択されるハロゲンで置換されている非環式の直鎖若しくは分岐鎖アルキル置換基を意味する。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“チオアルキル”は、置換基としてチオール(HS)基を含有する非環式の直鎖若しくは分岐鎖アルキル置換基を意味する。チオアルキル基の例はチオプロピルであり、例えば、HS-CH2CH2CH2-はチオプロピルの一例である。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“C6又はC10アリール”は、6個の炭素原子を含有する芳香族単環系又は10個の炭素原子を含有する芳香族二環系を意味する。例えば、アリールには、フェニル又はナフチル環系が含まれる。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“C7-16アラルキル”は、アルキル基を介して結合されている上記定義どおりのアリールを意味し、ここで、アルキルは1〜6個の炭素原子を含有する上記定義どおりの基である。アラルキルとして、例えば、ベンジル、及びブチルフェニルが挙げられる。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“Het”は、炭素原子と、窒素、酸素及びイオウから選択される1〜4個の環ヘテロ原子とを含有する5-、6-、若しくは7-員の飽和又は不飽和(芳香族を含む)ヘテロ環から1個の水素原子が除去されて誘導される一価置換基を意味する。好適なヘテロ環の例として、テトラヒドロフラン、チオフェン、ジアゼピン、イソオキサゾール、ピペリジン、ジオキサン、モルフォリン、ピリミジン又は下記式のヘテロ環が挙げられる。
【化7】

【0007】
用語“Het”は、1個以上の他の環(ヘテロ環でもいずれの他の環でもよい)に縮合した上記定義どおりのヘテロ環をも包含する。用語“Het”で一般的にカバーされるが、本明細書で使用される用語“ヘテロアリール”は、二重結合が芳香族系を形成する不飽和ヘテロ環を正確に定義する。ヘテロ芳香族系の好適な例として、キノリン、インドール、ピリジン、又は下記式で示されるものが挙げられる。
【化8】

【0008】
用語“オキソ”は、置換基として結合されている二重結合基(=O)を意味する。
用語“チオ”は、置換基として結合されている二重結合基(=S)を意味する。
一般的に、化合物の名称又は構造で特定の立体化学又は異性形態が具体的に示されていない限り、個々の幾何異性体若しくは光学異性体又は異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物のいずれにしても、化学構造又は化合物のすべての互変異性形態並びに異性形態及び混合物を意図している。
単独又は別の置換基と組み合わせて本明細書で使用される用語“薬学的に許容しうるエステル”は、該分子のいずれかのカルボキシル官能、好ましくはカルボキシ末端が、下記式のアルコキシカルボニル官能:
【化9】

(式中、該エステルのR部分は、アルキル(例えばメチル、エチル、n-プロピル、t-ブチル、n-ブチル);アルコキシアルキル(例えばメトキシメチル);アルコキシアシル(例えばアセトキシメチル);アラルキル(例えばベンジル);アリールオキシアルキル(例えばフェノキシメチル);任意にハロゲン、C1-4アルキル又はC1-4アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えばフェニル)から選択される)
で置換されている、式Iの化合物のエステルを意味する。他の好適なプロドラッグエステルは文献(Design of prodrugs, Bundgaard, H. Ed. Elsevier (1985):引用によって本明細書に取り込まれる)に記載されている。このような薬学的に許容しうるエステルは、哺乳類に注入されて式Iの化合物の酸形態に変換されると、通常、生体内で加水分解される。上記エステルについては、特に指定しない限り、存在するいずれのアルキル部分も有利には1〜16個の炭素原子、特に1〜6個の炭素原子を含む。このようなエステル中に存在するいずれのアリール部分も有利にはフェニル基を含む。特に、エステルは、C1-16アルキルエステル、無置換ベンジルエステル、又は少なくとも1個のハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ニトロ若しくはトリフルオロメチルで置換されているベンジルエステルでよい。
本明細書で使用される用語“薬学的に許容しうる塩”は、薬学的に許容しうる塩基から誘導される当該塩を包含する。好適な塩基の例として、コリン、エタノールアミン及びエチレンジアミンが挙げられる。Na+、K+、及びCa++塩も本発明の範囲内であると考えられる(Pharmaceutical salts, Birge, S.M. et al., J. Pharm. Sci., (1977), 66, 1-19(引用によって本明細書に取り込まれる)も参照せよ)。
【0009】
(発明の実施形態)
以下の合成スキームでは、特に指定しない限り、化学式中のすべての置換基は、式(I)におけるのと同一の意味を有するものとする。以下で述べる合成スキームで使用する反応物質は、本明細書で述べるとおりに得ることができ、或いは本明細書で述べていない場合は、それ自体市販され、又は市販材料から技術的に既知の方法で調製することができる。特定の出発材料は、例えば、国際特許出願WO 00/59929、WO 00/09543及びWO 00/09558、米国特許6,323,180 B1及び米国特許6,608,027 B1に記載されている方法で得ることができる。
最適な反応条件及び反応時間は、使用する特定の反応物質によって変化しうる。特に指定しない限り、本技術の当業者は、溶媒、温度、圧力、及び他の反応条件を容易に選択することができる。合成例セクションで特有の手順を提供する。
【0010】
式IVの触媒を利用する式IIIのジエンから式Iの大環状化合物を製造する方法であって、式IV中、
Lが、トリヒドロカルビルホスフィン基、好ましくはトリ-(C1-6アルキル)-ホスフィン若しくはトリ-(C3-8シクロアルキル)-ホスフィン基、特にトリシクロヘキシルホスフィン基;又は下記式の基:
【化10】

(式中、
5及びR6は、それぞれ独立的に水素原子又はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C6-12アリール若しくはC6-12アリール-C1-6アルキル基、好ましくは水素原子を表し;又は
5とR6が一緒に二重結合を形成し;かつ
7及びR8は、それぞれ独立的に水素原子又はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C6-12アリール若しくはC6-12アリール-C1-6アルキル基、好ましくはフェニル基(ハロゲン原子、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシ基から選択される1、2又は3個の基で置換されていてもよい)を表す)であり;
1及びX2が、それぞれ独立的にハロゲン原子、好ましくは塩素原子を表し;かつ
4が、C1-6アルキル基、好ましくは分岐C3-6アルキル基を表す、
方法が好ましい。
【0011】
アルコキシ基R4-O-の結合点に対してパラ位にニトロ基が結合している式IVのルテニウム触媒がさらに好ましい。
特に好ましくは、ルテニウム触媒が下記式IVAの化合物である、式Iの大環状化合物の製造方法である。
【化11】

(式中、R7及びR8は、トリメチルフェニル基、特にメシチル基を表す。)
【0012】
さらに好ましくは、希釈剤の存在下、40〜120℃、好ましくは60〜100℃、特に約80℃の温度範囲でメタセシス反応を行う、本発明の式Iの大環状化合物の製造方法である。
本発明の別の好ましい実施形態では、n-ペンタン、n-ヘキサン又はn-ヘプタンのようなアルカン、ベンゼン、トルエン又はキシレンのような芳香族炭化水素、及びジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン又はジクロロエタンのような塩素化炭化水素から成る群より選択される希釈剤の存在下でメタセシス反応を行う。
さらに好ましくは、式IIIのジエン化合物の式IVの触媒に対するモル比が1000:1〜100:1、好ましくは500:1〜110:1、特に1:250〜1:150の範囲である、式Iの大環状化合物の製造方法である。
原則として、式Iの大環状化合物の製造方法は、式IIIのジエン化合物の希釈剤に対する質量比が1:400〜1:25、好ましくは1:200〜1:50、特に1:150〜1:75の範囲で行われる。
【0013】
式I中、
1部分が下記式(i)の基であり;
【化12】

2が式IIの基であり、かつ
WがNであり;
21がH、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、クロロであり;
22がH、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、フェニル又は下記式の基:
【化13】

(式中、R24はH、C1-6アルキル、NH-R25、NH-C(O)-R25;NH-C(O)-NH-R25であり、各R25は、独立的にH、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキル;又はNH-C(O)-OR26(R26はC1-6アルキルである)である);
から成る群より選択されるHetであり;
28がH、臭素又はメチル、好ましくはHであり;或いは
2が式-OSO2-R27の脱離基(R27は、p-トリル、p-ブロモフェニル、p-ニトロフェニル、メチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロブチル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選択される)である、式Iの大環状化合物の製造方法がさらに好ましい。
【0014】
式(I)の化合物の別の特有の実施形態では、式中、R1部分が式(i)の基であり;
Aがカルボン酸又はその薬学的に許容しうる塩若しくはエステル、最も好ましくはCOOHであり;
WがNであり;
21がC1-3アルコキシであり;
22が下記式:
【化14】

(式中R6はNH-(CO)m-(C1-4アルキル)又はNH-(CO)m-(C3-6シクロアルキル)、mは0又は1、好ましくは0である)であり;
28がH又はメチル、好ましくはHであり;
3がNH-C(O)-OR10(R10はブチル、シクロブチル又はシクロペンチルである)であり;
Dが5原子の飽和アルキレン鎖であり;かつ
Aがカルボン酸又はその薬学的に許容しうる塩若しくはエステルである。
【0015】
以下の表は、式(I)の化合物の代表的化合物を列挙する。
下記式の化合物:
【化15】

式中、シクロプロピル基に対する14位からの結合はCOOHに対してシン(syn)であり、前記13、14二重結合はシス(cis)であり、R28はHで、かつR13、R4及びR2は下表のように定義され;
【表1】

【表2】

或いはR28がメチルで、かつシクロプロピル基に対する14位からの結合がCOOHに対してシンであり、前記13、14二重結合がシスであり、かつR13、R4及びR2が下表のように定義される。
【表3】

【表4】

【0016】
表1の特に代表的な化合物は化合物番号822の化合物である。
式(I)の化合物の代表的なさらなる特有の化合物はWO 00/59929及び米国特許6,608,027(両特許は、引用によって本明細書に取り込まれる)で見つけることができる。
本発明の別の局面は、下記式IAの大環状化合物の製造方法である。
【化16】

式中、R1、R3、R21、R22、R28、W、A及びDは、式Iについて与えた意味を有し、本方法は、以下の工程を有する。
(i)上記定義どおりの式IVのルテニウム触媒の存在下、下記式IIIのジエン化合物:
【化17】

(式中、R1、R3、R27及びAは前記定義どおりであり;かつD'は、3〜7原子の飽和アルキレン鎖を表す)を大環化する工程;及び
(ii)その結果の式Iの大環状化合物:
【化18】

(式中、A、R1、R3、R27及びDは前記定義どおりである)を、下記式Vの化合物:
【化19】

(式中、R21、R22、R28及びWは前記定義どおりである)と反応させる工程。
式(V)のヒドロキシル置換キノリン化合物は、例えば、WO 00/59929、WO 00/09543及びWO 00/09558、米国特許6,323,180 B1及び米国特許6,608,027 B1から知られている。
【0017】
式IVの触媒は、K. Grelaらによって記載されている方法(Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, No. 21 pp. 4038-4040:引用によって全開示が本明細書に取り込まれる)に従って調製することができる。式IVの触媒は、好ましくは以下の反応スキームに従い、Cu(I)塩のような遷移金属塩、特にCuClの存在下で式Vの2-アルコキシ-ニトロ-スチルベン化合物を式VIのルテニウム化合物と反応させることによって調製される。
【化20】

【0018】
式IVの触媒の調製に好ましいルテニウム化合物は、グラブスの(Grubb's)触媒(L=トリシクロヘキシルホスフィン)、ノーランの(Nolan's)触媒(L=1,3-ジメシチル-ジヒドロ-イミダゾリン-2-イル)及び国際特許出願WO 00/71554に記載されているように調製しうる下記式のショールの(Scholl's)触媒(L=1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イル)である。
【化21】

【0019】
この発明をさらに理解してもらうため、以下に実施例を示す。これら実施例はこの発明の実施形態を説明する目的のためであり、いかなる場合にも本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
(実施例1)
工程A:(L)-N-Boc-trans-ヒドロキシプロリノールの調製
【化22】

(L)-trans-ヒドロキシプロリノール(249.8g,1.905mol)を水(375ml)と45%水素化ナトリウム溶液(203g,2.286mol)に溶かす。tert.-ブタノール(106g)を加える。反応混合物を50℃に加熱し、THF(425ml)に溶かした無水Boc2O(424g,1.943mol)にゆっくり添加する。添加後、反応混合物を50℃で1/2〜1時間維持し、この溶液からTHFを蒸留する。濃HCl(204g,2.076mol)でpHを約3に調整してから生成物をメチル-イソブチルケトン(MIBK)(1リットル)で抽出し、再びMIBK(375ml)で抽出する。有機層を加熱し、いくらかの溶媒を蒸留して微量の水を除去する。メチルシクロヘキサン(MCH,1.25リットル)を加えてこの溶液から生成物を結晶化し、単離し、MCH(375ml)で2回洗浄し、かつ40℃で一晩中乾燥させて1aを無色結晶として得る(収率:77〜78%、Fp=126〜128℃)。




【0020】
工程B:ラクトン化
【化23】

1a(416,3g,1.8mol)をテトラヒドロフラン(THF,2.08リットル)に溶かし、氷で-5〜-10℃に冷却する。メシルクロライド(392g,3.4mol)とN-メチルピロリジン(429g,5mol)を加え、混合物を-5℃で1.5時間撹拌する。混合物を水洗し、還流温度に加熱する。混合物をジオキサン(2,08リットル)に注ぎ、蒸留でTHFを除去する。室温に戻した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,233g,1.8mol)を加え、混合物を還流温度に加熱する。1時間後、蒸留で溶媒の一部(830ml)を除去し、周囲温度に戻し、KHSO4-溶液(2.08リットルの水中14.4g)に注ぎ、溶液を室温に戻す。結果の結晶を吸引ロートで単離し、水洗し、45℃で一晩中乾燥させて1bを無色針晶として得る(収率:78〜82%、Fp=111℃)。
【0021】
工程C:脱保護
【化24】

1b(267g,1.25mol)をMIBK(1467ml)に溶かす。この懸濁液を1bが完全に溶けるまで50℃に加熱し、蒸留で溶媒の一部(130ml)を除去して微量の水を除去する。反応混合物にメタンスルホン酸(240g,2.5mol)をゆっくり加える。反応混合物を室温に戻し、結果の結晶を吸引ロートで単離し、アセトンで2回(それぞれ400ml)洗浄し、4℃で一晩中乾燥させて1cを無色結晶として得る(収率:93〜98%、208〜210℃)。











【0022】
工程D:ジペプチド
【化25】

2-(N-シクロペンチルオキシカルボニル-アミノ)-ノン-8-エノイック(enoic)酸*ジシクロヘキシルアミン(61.4g,132mmol)をトルエン(160ml)に溶かし、結果溶液を希硫酸(80mlの水中5.3g)と水(80ml)で洗浄する。相分離後、溶液を木炭で処理し、結果溶液を室温で貯蔵する。1c(24.9g,119mmol)と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC*HCl,6.8g,140mmol)をジクロロメタン(140ml)に懸濁させ、室温に冷ます。前に生成した2-(N-シクロペンチルオキシカルボニル-アミノ)-ノン-8-エノイック酸で懸濁液を処理する。この懸濁液に、反応を窒素下20℃未満の温度で維持しながらDIPEA(16.3g,130mmol)をゆっくり添加する。懸濁液をろ過し、結果溶液を水(80ml)で洗浄し、希酢酸(80mlの水中1.3g)、5%炭酸水素ナトリウム溶液(80ml)及び再び水(80ml)で洗浄する。相分離後、減圧蒸留でジクロロメタンを除去する。この結果溶液は次工程で直接使用することができる。そうでなければ、生成物をMCHによる結晶化で単離して収率95%(GC)の1dを黄色っぽい溶液として得る(Fp=58〜60℃)。
【0023】
(実施例2)
工程A:トリペプチド2aの調製
【化26】

水(43ml)とトルエン(12ml)中1-アミノ-2-ビニル-シクロプロパ-1-イルカルボン酸メチル(10.0g,23.7mmol,1.0当量)、1d(7.6g,24.2mmol,1.02当量)及び2-エチルヘキサン酸ナトリウム(5.9g,35.6mmol,1.5当量)の混合物を80℃で2時間撹拌する。仕上げにトルエン(75ml)を80℃で加える。撹拌及び水層の分離後、有機層を1M Na2CO3(3×30ml)、0.5M HCl(30ml)及び水(2×30ml)で洗浄する。真空中溶媒を完全に除去して11.7g、22.5mmol(収率95%)の2a(純度:>95%(ピーク-エリア HPLC))をわずかに黄色の油として得る。
【0024】
工程B:2aのブロシル化(brosylation)
【化27】

2a(10.7g,18.5mmol,1.0当量)と1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO,3.3g,29.7mmol,1.6当量)とトルエン(23ml)の混合物に、トルエン(15ml)中ブロシルクロライド(6.6g,26.0mmol,1.4当量)の溶液を室温でゆっくり加える。混合物を2時間撹拌する。仕上げに有機層を1M Na2CO3(2×21ml)で洗浄し、THF(21ml)で希釈し、0.5M HCl(21ml)と水(2×21ml)で洗浄する。真空中溶媒を完全に除去して12.3g、16.7mmolの2b(収率90%;純度:>95%(ピーク-エリア HPLC))をわずかに橙色の油を得る。粗生成物の木炭処理を為しうる。
【0025】
実施例3:2bのメタセシス
【化28】












【0026】
工程A:触媒の調製
【化29】

【0027】
3a ルテニウム触媒
K. Grelaらによって開示されている方法(Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, No. 21 pp. 4038-4040)により、以下のようにルテニウム触媒を調製する。
0.8ml(8mmol)の2-ヨードプロパンを、1.1g(8mmol)の乾燥粉末炭酸カリウム、521mgの炭酸セシウム、668mg(4mmol)の2-ヒドロキシ-5-ニトロベンズアルデヒド及び25mLのジメチルホルミアミド(DMF)の撹拌混合物に加える。周囲温度で24時間撹拌後、真空中DMFを除去し、残留物を50mlの水中に注ぎ、25mlのtert-ブチルメチルエーテル(TBME)で4回抽出する。混ぜ合わせた有機抽出物を食塩水で洗浄し、乾燥させ、真空中濃縮する。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル:8:2)で精製し、850mgの2-イソプロポキシ-5-ニトロベンズアルデヒドを低融点の黄色結晶として得る。
ヘキサン中のn-ブチルリチウムの溶液(1.8mL,2.7mmol,1.5M)を、-78℃の2mLのテトラヒドロフラン(THF)中932mg(2.53mmol)のトリフェニルメチルホスホニウムブロマイドの撹拌溶液に添加する。この溶液に、2mLのTHF中379mg(1.81mmol)の2-イソプロピルオキシ-5-ニトロベンズアルデヒドの溶液を-78℃で加える。反応混合物を周囲温度に戻し、周囲温度で10時間撹拌する。反応混合物を塩化アンモニウムの飽和溶液に注ぎ、100mlのTBMEで希釈する。固体物質をろ過し、粗生成物をシリカのショートカラムに通し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いてシリカゲル上で精製し(シクロヘキサン:酢酸エチル:8:2)、236mg(63%)の2-イソプロポキシ-5-ニトロスチルベンを淡黄色油として得る。
4mLのジクロロメタン中の38mg(0.18mmol)の2-イソプロポキシ-5-ニトロスチルベンの溶液を、153mg(0.18mmol)のショールの触媒、18mg(0.18mmol)のCuCl及び18mLのジクロロメタンの混合物に加え、不活性ガス雰囲気下30℃で1時間撹拌する。結果の反応混合物を真空中濃縮し、シリカゲル上クロマトグラフィーで精製する。シクロヘキサン:酢酸エチル(5:2)で溶出し、100mg(83%)の触媒3aを緑色の微細結晶固体として得る。
分光データは、K. Grelaらによって同じ箇所に開示されている当該分光データとよく一致する。
3b THP溶液
23.5gのテトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライド(80%,98.7mmol)を窒素雰囲気下でイソプロパノール(35ml)に溶かす。次に、12.1g(98.7mmol)の45%KOH溶液を冷却しながら(温度20〜25℃)5分以内で添加する。窒素下さらに30分間懸濁液を撹拌後、混合物をろ過し、無機残留物を20mlの脱気したイソプロパノールで洗浄する。この混合イソプロパノール溶液は使用するまで窒素雰囲気下で貯蔵する。
【0028】
工程C メタセシス反応
窒素を介して泡立てることによって810mlのトルエンを脱気する。7.02g(9.5mmol)の2bを10mlの脱気トルエンに溶かし、反応フラスコに加える。溶液を80℃まで加熱し、0.032g(0.048mmol)の新たに調製した触媒3aを窒素下で4回に分けて3時間にわたって加える。同じ温度でさらに60分間撹拌後、転化率をHPLCでチェックする。60℃に冷却後、2.3g(2.8mmol)のTHP懸濁液3bを反応混合物に加える。60℃で5時間撹拌後、混合物を室温に冷まし、40mlの脱気した水で2回、40mlの0.5M HCl、40mlの0.5M NaHCO3溶液、及び40mlの水で抽出する。約695mlのトルエンを50℃で真空中(150mbar)蒸留し、残留物を50℃で1.4gの木炭(Acticarbon L2S)で処理する。残存液体を210mlの予冷メチルシクロヘキサン(5℃)に加える。5℃でさらに60分間撹拌後、沈殿をろ過し、100mlのメチルシクロヘキサン(2回)で洗浄する。白色固体を真空中30℃で乾燥させて5.78g(85.6%)の化合物(I)をほとんど白色の粉末として得る。
【0029】
実施例4:化合物4の合成
【化30】

N-メチルピロリドン(NMP)中の(1当量)Cs2CO3、(1当量)2-(2-イソプロピルアミノチアゾール-4-イル)-4-ヒドロキシ-7-メトキシキノリン(chinolin)及びI(1当量)の混合物を55〜65℃で8時間撹拌する。反応完了後、混合物を酢酸エチルで希釈し、2.5%NaHCO3溶液で抽出する。有機層を3回NaHCO3の2.5%溶液とNMPの混合物で抽出する。有機層を木炭で処理し、ろ過し、n-ヘプタン(又はメチルシクロヘキサン)を添加して生成物を結晶化する。懸濁液を5℃に冷却し、沈殿をろ過し、酢酸エチル/n-ヘプタン(又は酢酸エチル/メチルシクロヘキサン)で洗浄し、真空中乾燥させて収率60〜70%の化合物4を白色結晶として得る。必要な場合には(品質)、生成物を酢酸エチル/メチルシクロヘキサンから再結晶させることができる。












実施例5:化合物4の鹸化
【化31】

20g(0.025mol)の化合物4を160mlのTHFに溶かし、この溶液に2.45g(0.0583mmol)のLiOH*H2Oを加える。54mlの水を添加後、反応混合物を40〜45℃の温度で少なくとも8時間撹拌する。転化完了後(HPLC)混合物を20〜25℃に冷ます。層の分離(小量の水相を分離除去)後、有機層に54mlのエタノールを加え、かつ1M HCl溶液を添加してpHを5.5〜5.7に調整する。混合物を40〜45℃に温め、少なくとも30分かけて80mlの水を加える(40〜45℃)。40〜45℃の温度でさらに60分間混合物を撹拌する。40〜45℃で少なくとも30分かけてさらに80mlの水を添加し、同じ温度でさらに60分間混合物を撹拌する。この懸濁液を20〜25℃に冷却し、この温度で1時間撹拌する。ろ過後、沈殿を20mlの水で3回洗浄し、真空中35℃で乾燥させ(N2の微流)て17.7〜18.7gの粗生成物5を得る(90〜95%)。
10g(0.0129mol)の粗生成物5を100mlのエタノールに20〜25℃で溶かす。次いで、溶液を木炭(5〜20%)で処理し、ろ過し、70〜75℃で1時間にわたって240mlの水に添加する。混合物を少なくとも1時間かけて25〜30℃に冷却する。ろ過後、エタノール/水の1.7/1混合物40mlで沈殿を洗浄し、真空中45℃で乾燥させ(窒素の微流)、9.2〜9.7g(92〜97%)の純粋な生成物5(3〜5%の水を含む)を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの大環状化合物:
【化1】

(式中、
2は、ヒドロキシ基、脱離基又は下記式IIの基:
【化2】

(式中、WはCH又はNであり、
21はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、ヒドロキシ又はN(R23)2(各R23は独立的にH、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルである)であり;
22はH、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6 チオアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C2-7アルコキシアルキル、C3-6シクロアルキル、C6又は10アリール又はHet(Hetは、窒素、酸素及びイオウから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5-、6-、若しくは7-員飽和若しくは不飽和ヘテロ環である)であり;
前記シクロアルキル、アリール又はHetは、R24で置換されており、ここで、
24は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、NO2、N(R25)2、NH-C(O)-R25若しくはNH-C(O)-NH-R25(各R25は独立的にH、C1-6アルキル若しくはC3-6シクロアルキルである)であり;又は
24は、NH-C(O)-OR26(R26はC1-6アルキル若しくはC3-6シクロアルキルである)であり;
28は、H、ハロ又はC1-6アルキルである)
であり;
3は、ヒドロキシ、NH2、又は式-NH-R31の基であり、式中、R31はC6又は10アリール、ヘテロアリール、-C(O)-R32、-C(O)-NHR32若しくは-C(O)-OR32(R32はC1-6アルキル若しくはC3-6シクロアルキルである)であり;
Dは、3〜7原子の飽和アルキレン鎖であり;かつ
Aは、式-C(O)-NH-R5のアミド(式中、R5は、C1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C6又は10アリール、C7-16アラルキル、及びSO25A(R5AはC1-8アルキル、C3-7シクロアルキル又は{C1-6アルキル-C3-7シクロアルキル}である)から成る群より選択される)であり、或いは
Aは、カルボン酸又はその薬学的に許容しうる塩若しくはエステルである)
の製造方法であって、
下記式IIIのジエン化合物:
【化3】

(式中、R2、R3及びAは、前記定義どおりであり;かつ
D'は、3〜7原子の飽和アルキレン鎖を表す)を、
下記式IVのルテニウム触媒:
【化4】

(式中、
1及びX2は、それぞれ独立的にアニオン性リガンドを表し;
Lは、中性電子供与リガンドを表し;かつ
4は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル又はC6-12アリール-C1-6アルキル基を表す)
の存在下でメタセシス環化反応に供する工程を含む方法。
【請求項2】
式IVのLが、トリヒドロカルビルホスフィン基又は下記式の基:
【化5】

(式中、
5及びR6は、それぞれ独立的に水素原子又はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C6-12アリール若しくはC6-12アリール-C1-6アルキル基を表し;又は
5とR6が一緒に二重結合を形成し;かつ
7及びR8は、それぞれ独立的に水素原子又はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C6-12アリール若しくはC6-12アリール-C1-6アルキル基を表す)であり;
1及びX2が、それぞれ独立的にハロゲン原子を表し;かつ
4が、C1-6アルキル基を表す、
請求項1に記載の式Iの大環状化合物の製造方法。
【請求項3】
前記ルテニウム触媒が、下記式IVAの化合物である、請求項1又は2に記載の式Iの大環状化合物の製造方法。
【化6】

(式中、R7及びR8は、メシチル基を表す。)
【請求項4】
式I中、R1部分が、下記式(i)の基であり;
【化7】

2が式IIの基であり;かつ
WがNであり;
21がH、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、クロロであり;
22がH、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、フェニル又は下記式の基:
【化8】

(式中、R24はH、C1-6アルキル、NH-R25、NH-C(O)-R25;NH-C(O)-NH-R25であり、各R25は、独立的にH、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキル;又はNH-C(O)-OR26(R26はC1-6アルキルである)である);
から成る群より選択されるHetであり;
28がH、臭素又はメチルであり;或いは
2が式-OSO2-R27の脱離基(R27は、p-トリル、p-ブロモフェニル、p-ニトロフェニル、メチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロブチル及び2,2,2-トリフルオロエチルから選択される)である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの大環状化合物の製造方法。
【請求項5】
希釈剤の存在下、40〜120℃の温度範囲でメタセシス反応を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの大環状化合物の製造方法。
【請求項6】
アルカン、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素から成る群より選択される希釈剤の存在下でメタセシス反応を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式Iの大環状化合物の製造方法。
【請求項7】
式IIIのジエン化合物の式IVの触媒に対するモル比が、1000:1〜100:1の範囲である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式Iの大環状化合物の製造方法。
【請求項8】
式IIIのジエン化合物の希釈剤に対する質量比が、1:400〜1:25の範囲である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式Iの大環状化合物の製造方法。
【請求項9】
下記式Iの大環状化合物:
【化9】

(式中、R1、R3、R21、R22、R28、W、A及びDは、請求項1で与えた意味を有する)の製造方法であって、以下の工程を含む方法。
(i)下記式IIIのジエン化合物:
【化10】

(式中、R1、R3、及びAは請求項1又は2で定義したとおりであり、R27はp-トリル、p-ブロモフェニル、p-ニトロフェニル、メチル、トルフルオロメチル、ペルフルオロブチル及び2,2,2-トリルオロエチルから選択され;かつ
D'は、3〜7原子の飽和アルキレン鎖を表す)を、
下記式IVのルテニウム触媒:
【化11】

(式中、
1及びX2は、それぞれ独立的にアニオン性リガンドを表し;
Lは、中性電子供与リガンドを表し;かつ
4は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル又はC6-12アリール-C1-6アルキル基を表す)
の存在下で大環化する工程;及び
(ii)その結果の下記式Iの大環状化合物:
【化12】

(式中、A、R1、R3及びDは請求項1又は2で定義したとおりであり、かつR27は上記工程(i)で定義したとおりである)を、下記式Vの化合物:
【化13】

(式中、R21、R22、R28及びWは請求項1又は2で定義したとおりである)
と反応させる工程。

【公表番号】特表2007−523833(P2007−523833A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500076(P2006−500076)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003216
【国際公開番号】WO2004/089974
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】