説明

ルミネセント用途用のアントラセン化合物

本発明は、エレクトロルミネセント用途に有用であるアントラセン誘導体に関する。本発明はまた、活性層がこのようなアントラセン誘導体を含む電子デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年12月19日出願の、その全体が参照により援用される米国仮特許出願第61/138,989号明細書に基づく米国特許法119条(e)による優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、アントラセン誘導体であるエレクトロルミネセント化合物に関する。本発明はまた、活性層がこのような化合物を含む電子デバイスに関する。
【0003】
ディスプレイを形成する発光ダイオードなどの光を放射する有機電子デバイスは、多くの異なる種類の電子器具中に存在している。このようなデバイスのすべてにおいて、有機活性層は、2つの電気コンタクト層の間に挟まれている。電気コンタクト層の少なくとも一方は、光が電気コンタクト層を透過することが可能であるよう光透過性である。有機活性層は、電気コンタクト層に電流が印加されると、光透過性電気コンタクト層を通して光を放射する。
【0004】
有機エレクトロルミネセント化合物を発光ダイオードにおける活性成分として用いることは周知である。アントラセン、チアジアゾール誘導体およびクマリン誘導体などの単純な有機分子がエレクトロルミネセンスを示すことで知られている。半導電型共役ポリマーもまた、例えば、米国特許第5,247,190号明細書、米国特許第5,408,109号明細書および欧州特許出願公開第443 861号明細書に開示されているとおり、エレクトロルミネセント成分として用いられている。
【0005】
しかしながら、エレクトロルミネセント化合物、特に、青色または緑色発光性の化合物に対する要求が継続的に存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
式I:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中:
Ar1およびAr2は、同一であるかまたは異なっていると共に、アリールであり;
Ar3およびAr4は、同一であるかまたは異なっていると共に、単結合およびアリーレンからなる群から選択され;ならびに
1〜R4は、同一であるかまたは異なっていると共に、H、D、アルキルおよびアルコキシからなる群から選択され;
5は、各出現で同一であるかまたは異なると共に、D、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜4の整数である)
を有する化合物が提供されている。
【0009】
式Iの化合物を含む活性層を備える電子デバイスもまた提供されている。
【0010】
本明細書に提示されているコンセプトの理解を向上させるために、実施形態が添付の図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、一例の有機電子デバイスの図示を含む。
【0012】
当業者は、図中の対象物は簡潔性および明確性のために図示されており、必ずしも縮尺どおりに描画されていないことを理解しているであろう。例えば、図中の対象物の寸法は、実施形態の理解の向上を助けるために他の対象に比して強調されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多くの態様および実施形態が上記に記載されているが、これらは単に例示的であり、限定的ではない。この明細書を読了した後には、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく他の態様および実施形態も可能であることを理解している。
【0014】
1つまたは複数の実施形態のいずれかの他の特性および有益性は、以下の詳細な説明、および、特許請求の範囲から明らかになるであろう。詳細な説明は、先ず、用語の定義および明確化、続いて、エレクトロルミネセント組成物、電子デバイス、および、最後に実施例に言及している。
【0015】
1.用語の定義および明確化
以下に記載されている実施形態の詳細に言及する前に、いくつかの用語が定義または明確化されている。
【0016】
本明細書において用いられるところ、「脂肪族環」という用語は、非局在化π電子を有さない環式基を意味することが意図されている。いくつかの実施形態において、脂肪族環は不飽和を有さない。いくつかの実施形態において、環は、1つの二重結合または三重結合を有する。
【0017】
「アルコキシ」という用語は、基RO−を指し、ここで、Rはアルキルである。
【0018】
「アルキル」という用語は、1つの結合点を有する脂肪族炭化水素に由来する基を意味することが意図されており、直鎖、分岐または環式基を含む。この用語は、ヘテロアルキルを含むことが意図される。いくつかの実施形態において、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0019】
「アリール」という用語は、1つの結合点を有する芳香族炭化水素に由来する基を意味することが意図されている。「芳香族化合物」という用語は、非局在化π電子を有する不飽和環式基を少なくとも1個含む有機化合物を意味することが意図されている。この用語は、炭素原子および水素原子のみを有する芳香族化合物を意味することが意図されている。このアリールという用語は、単一の環を有する基、および、単結合により結合されていること、または、一緒に縮合されていることが可能である複数の環を有する基を含む。「アリーレン」という用語は、2つの結合点を有する芳香族炭化水素に由来する基を意味することが意図されている。いくつかの実施形態において、アリール基は3〜60個の炭素原子を有する。
【0020】
「分岐アルキル」という用語は、少なくとも1個の第2級または第3級炭素を有するアルキル基を指す。「第2級アルキル」という用語は、第2級炭素原子を有する分岐アルキル基を指す。「第3級アルキル」という用語は、第3級炭素原子を有する分岐アルキル基を指す。いくつかの実施形態において、分岐アルキル基は、第2級または第3級炭素を介して結合している。
【0021】
「化合物」という用語は、原子からさらに構成される分子により形成される電気的に無電荷の物質を意味することが意図されており、ここで、原子は物理的手段によっては分離されることが不可能である。「に隣接している」という句は、デバイスにおける層について用いられる場合、1つの層が他の層の直ぐ隣にあることを必ずしも意味しない。一方で、「隣接するR基」という句は、化学式において相互に隣にあるR基(すなわち、結合により結合された原子上のR基)を指すために用いられる。「光活性」という用語は、エレクトロルミネセンスおよび/または感光性を示すいずれかの材料を指す。
【0022】
接頭語「ヘテロ」は、1個または複数個の炭素原子が異なる原子で置き換えられていることを示す。いくつかの実施形態において、異なる原子はN、OまたはSである。
【0023】
「層」という用語は、用語「フィルム」と同義に用いられており、所望の領域を覆うコーティングを指す。この用語はサイズによっては限定されない。この領域は、デバイス全体と同程度の大きさであっても、または、実際のビジュアルディスプレイなどの特定の機能領域と同程度の小ささ、または、単一のサブピクセルと同程度の小ささであることが可能である。層およびフィルムは、蒸着、液相堆積(連続および非連続技術)、および、熱転写を含む従来の堆積技術のいずれかによって形成されることが可能である。連続堆積技術としては、これらに限定されないが、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロット−ダイコーティング、スプレーコーティング、および、連続ノズルコーティングが挙げられる。非連続堆積技術としては、これらに限定されないが、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0024】
「有機電子デバイス」、または、時々、単に「電子デバイス」という用語は、1つまたは複数の有機半導体層または材料を含むデバイスを意味することが意図されている。
【0025】
すべての基は、他に示されていない限りにおいて置換または非置換であることが可能である。いくつかの実施形態において、これらの置換基は、D、ハライド、アルキル、アルコキシ、アリールおよびシアノからなる群から選択される。
【0026】
そうでないと定義されていない限りにおいて、本明細書において用いられている技術用語および科学用語のすべては、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において本明細書に記載のものと類似のまたは同等の方法および材料を用いることが可能であるが、好適な方法および材料は以下に記載されている。本明細書に記載されているあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりそれらの全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。加えて、材料、方法および例は、単なる例示であり、限定的であることは意図されていない。
【0027】
IUPACによる番号付与が全体を通して用いられており、ここで、周期律表からの基には、左から右に1〜18が付与される(CRC Handbook of Chemistry and Physics,第81版,2000年)。
【0028】
2.エレクトロルミネセント化合物
本発明の一態様は、式Iの化合物である。
【0029】
【化2】

【0030】
(式中:
Ar1およびAr2は、同一であるかまたは異なっていると共に、アリールであり;
Ar3およびAr4は、同一であるかまたは異なっていると共に、単結合およびアリーレンからなる群から選択され;ならびに
1〜R4は、同一であるかまたは異なっていると共に、H、D、アルキルおよびアルコキシからなる群から選択され;
5は、各出現で同一であるかまたは異なると共に、D、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜4の整数である)
【0031】
いくつかの実施形態において、化合物は、青色または緑色の発光が可能である。
【0032】
いくつかの実施形態において、Ar1=Ar2である。いくつかの実施形態において、Ar1およびAr2は、ナフチル、ナフチルフェニル、フェニルナフチルおよび式IIを有する基:
【0033】
【化3】

【0034】
(式中:
5は、各出現で同一であるかまたは異なると共に、D、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜4の整数であり;
bは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜5の整数であり;ならびに
mは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜6の整数である)
からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態において、Ar1およびAr2は、式IIa:
【0036】
【化4】

【0037】
(式中、R5、a、bおよびmは上記に定義されているとおりである)
を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、Ar1およびAr2は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、およびビナフチルからなる群から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態において、Ar3およびAr4は、単結合、ナフチレン、ナフチルフェニレン、フェニルナフチレン、および、式IIIを有する基:
【0040】
【化5】

【0041】
(式中:
5は、各出現で同一であるかまたは異なると共に、D、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、0〜4の整数であり;ならびに
nは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、1〜6の整数である)
からなる群から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、Ar3およびAr4は、各々、単結合である。
【0043】
いくつかの実施形態において、R1=R3およびR2=R4である。いくつかの実施形態において、R1およびR3は、5〜15個の炭素原子を有する分岐アルキルおよびシクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、R2およびR4はHである。いくつかの実施形態において、R1=R3=R2=R4=Hである。
【0044】
いくつかの実施形態において、a=0である。
【0045】
いくつかの実施形態において、2種以上の異なる異性形態の混合物が存在する。
【0046】
式Iを有する化合物のいくつかの非限定的な例としては、以下の化合物E1〜E5が挙げられる。
【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
新規の化合物は、公知のカップリングおよび置換反応により調製されることが可能である。例示的な調製が実施例に示されている。
【0051】
本明細書に記載の化合物は、液相堆積技術を用いてフィルムに形成されることが可能である。ホストマトリックス中に分散されたこれらの材料の薄膜は、良好〜優れた光ルミンセンス特性および青色または緑色の発光を示す。
【0052】
3.電子デバイス
本明細書に記載のエレクトロルミネセント材料を含む1つ以上の層を有することにより利点がもたらされ得る有機電子デバイスとしては、これらに限定されないが、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイまたはダイオードレーザ)、(2)エレクトロニクスプロセス中のシグナルを検出するデバイス(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーに変換する(例えば、光起電力デバイスまたは太陽電池)デバイス、ならびに、(4)1つまたは複数の有機半導体層を有する1個または複数の容量型電子部品を備えるデバイス(例えば、トランジスタまたはダイオード)が挙げられる。
【0053】
有機電子デバイス構造の一例が図1に示されている。デバイス100は、第1の電気コンタクト層、陽極層110および第2の電気コンタクト層、陰極層160を有すると共に、これらの間に光活性層140を有する。陽極にはバッファ層120が隣接している。バッファ層には正孔輸送材料を含む正孔輸送層130が隣接している。陰極には、電子輸送材料を含む電子輸送層150が隣接していてもよい。任意で、デバイスは、1つまたは複数の追加の正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)を陽極110に隣接して、および/または、1つまたは複数の追加の電子注入層または電子輸送層(図示せず)を陰極160に隣接して用いていてもよい。
【0054】
層120〜150は、独立して、および、全体として、活性層と称される。
【0055】
一実施形態においては、異なる層は、以下の範囲の厚さを有する:陽極110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;バッファ層120、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;正孔輸送層130、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;光活性層140、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;層150、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;陰極160、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイスにおける電子−正孔再結合ゾーンの位置、それ故、デバイスの発光スペクトルは、各層の相対的な厚さによって影響されることが可能である。層厚の所望の比は、用いられる材料の正確な性質に依存することとなる。
【0056】
デバイス100の用途に応じて、光活性層140は、印加電圧により活性化される発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学電池などにおいて)であることが可能であり、または、放射エネルギーに応答すると共に、印加バイアス電圧を伴って、または、伴わずにシグナルを生成する材料の層(光検出器などにおいて)であることが可能である。光検出器の例としては、光伝導セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタおよび光電管、ならびに、光起電力電池が挙げられ、これらの用語は、Markus,John,Electronics and Nucleonics Dictionary,第470ページおよび第476ページ(McGraw−Hill,Inc.1966年)に記載されているとおりである。
【0057】
a.光活性層
式Iのエレクトロルミネセント化合物が、層140における光活性材料として有用である。この化合物は、単独で、または、ホスト材料との組み合わせで用いられることが可能である。
【0058】
いくつかの実施形態において、光活性層は、基本的に、ホスト材料および式Iを有するエレクトロルミネセント化合物から構成される。
【0059】
いくつかの実施形態において、ホストは、ビス−縮合環式芳香族化合物である。
【0060】
いくつかの実施形態において、ホストは、アントラセン誘導体化合物である。いくつかの実施形態において、化合物は式:
An−L−An
(式中:
Anはアントラセン部分であり;
Lは二価結合基である)
を有する。
【0061】
この式のいくつかの実施形態において、Lは、単結合、−O−、−S−、−N(R)−または芳香族基である。いくつかの実施形態において、Anは、モノまたはジフェニルアントリル部分である。
【0062】
いくつかの実施形態において、ホストは、式
A−An−A
(式中:
Anはアントラセン部分であり;
Aは、各出現で同一であるかまたは異なると共に、芳香族基である)
を有する。
【0063】
いくつかの実施形態において、A基は、アントラセン部分の9位および10位に結合している。いくつかの実施形態において、Aは、ナフチル、ナフチルフェニレンおよびナフチルナフチレンからなる基から選択される。いくつかの実施形態において、化合物は対称であると共に、いくつかの実施形態においては化合物は非対称である。
【0064】
いくつかの実施形態において、ホストは、式:
【0065】
【化9】

【0066】
(式中:
1およびA2は、各出現で同一であるかもしくは異なると共に、H、芳香族基、アルキル基およびアルケニル基からなる群から選択されるか、または、Aは1つまたは複数の縮合芳香族環を表し得;
pおよびqは、同一であるかまたは異なっていると共に、1〜3の整数である)
を有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、アントラセン誘導体は非対称である。いくつかの実施形態において、p=2およびq=1である。
【0068】
いくつかの実施形態において、A1およびA2の少なくとも一方がナフチル基である。いくつかの実施形態においては、追加の置換基が存在する。
【0069】
いくつかの実施形態において、ホストは
【0070】
【化10】

【0071】
およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0072】
式Iの化合物は、光活性層における発光性ドーパントとして有用であることに追加して、光活性層140における他の発光性ドーパント用の電荷担持ホストとしても作用することが可能である。
【0073】
b.他のデバイス層
デバイス中の他の層は、このような層において有用であると公知である任意の材料で形成されることが可能である。
【0074】
陽極110は、陽電荷キャリアを注入するために特に効率的である電極である。これは、例えば、金属、混合金属、合金、金属酸化物あるいは混合金属酸化物を含有する材料で形成されることが可能であり、または、導電性ポリマー、または、これらの混合物であることが可能である。好適な金属としては、第11族金属、第4〜6族の金属、および、第8〜10族遷移金属が挙げられる。陽極が光透過性である場合には、インジウム−錫−酸化物などの第12、13および14族金属の混合金属酸化物が一般に用いられる。陽極110はまた、「Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer」,Nature,第357巻、第477〜479ページ(1992年6月11日)に記載されているポリアニリンなどの有機材料を含んでいることが可能である。陽極および陰極の少なくとも一方は、生成された光が観察可能であるように少なくとも部分的に透明であることが望ましい。
【0075】
バッファ層120は、バッファ材料を含み、特にこれらに限定されないが、下位層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の掃去、ならびに、有機電子デバイスの性能を促進させるか向上させる他の態様を含む、有機電子デバイスにおける1つまたは複数の機能を有し得る。バッファ材料は、ポリマー、オリゴマーまたは小分子であり得る。これらは、蒸着されるか、または、溶液、分散体、懸濁液、エマルジョン、コロイド状混合物、あるいは、他の組成物の形態であり得る液体から堆積され得る。
【0076】
バッファ層は、ポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの、度々プロトン酸でドープされる高分子材料で形成されることが可能である。プロトン酸は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)等であることが可能である。
【0077】
バッファ層は、銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物等を含んでいることが可能である。
【0078】
いくつかの実施形態において、バッファ層は、少なくとも1種の導電性ポリマーおよび少なくとも1種のフッ素化酸ポリマーを含む。このような材料は、例えば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、米国特許出願公開第2004−0127637号明細書、および、米国特許出願公開第2005/205860号明細書に記載されている。
【0079】
層130用の正孔輸送材料の例は、例えば、Y.Wangによる、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版,第18巻,第837〜860ページ,1996年にまとめられている。正孔輸送分子およびポリマーの両方が用いられることが可能である。通例用いられる正孔輸送分子は:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチル−フェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB)、および、銅フタロシアニンなどのポリフィリン化合物である。通例用いられる正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)−ポリシランおよびポリアニリンである。ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマーに上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることにより正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。いくつかの場合において、トリアリールアミンポリマーが用いられ、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが用いられる。いくつかの場合において、ポリマーおよびコポリマーは架橋性である。架橋性正孔輸送ポリマーの例は、例えば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書および国際公開第2005/052027号パンフレットに見出されることが可能である。いくつかの実施形態において、正孔輸送層は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物などのp−ドーパントでドープされる。
【0080】
層150において用いられることが可能である追加の電子輸送材料の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノレート)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノレート)アルミニウム(III)(BAlQ);ならびに、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)および3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、ならびに、1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン誘導体;ならびに、これらの混合物が挙げられる。電子輸送層はまた、Csまたは他のアルカリ金属などのn−ドーパントでドープされ得る。層150は、電子輸送を促進すると共に、バッファ層または閉じ込め層としても機能して、層界面での励起子の消光を防止することが可能である。好ましくは、この層は、電子移動度を促進させると共に、励起子の消光を低減する。
【0081】
陰極160は、電子または陰電荷キャリアを注入するために特に効率的である電極である。陰極は、陽極より低い仕事関数を有する任意の金属または非金属であることが可能である。陰極用の材料は、第1族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)、第2族(アルカリ土類)金属、希土類元素およびランタノイドを含む第12族金属、ならびに、アクチニドから選択されることが可能である。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの材料、ならびに、組み合わせが用いられることが可能である。LiまたはCs含有有機金属化合物、LiF、CsF、およびLi2Oもまた、動作電圧を下げるために有機層と陰極層との間に配置されることが可能である。
【0082】
他の層を備える有機電子デバイスが公知である。例えば、注入される正電荷の量を制御するために、および/または、層のバンドギャップマッチングをもたらすために、または、保護層として機能するために、陽極110とバッファ層120との間に層(図示せず)が存在していることが可能である。銅フタロシアニン、ケイ素酸化−窒化物、フルオロカーボン、シラン、または、Ptなどの金属の超薄層などの、技術分野において公知である層を用いることが可能である。あるいは、陽極層110、活性層120、130、140、および150、または陰極層160のいくつかまたはすべてが、電荷キャリア輸送効率を高めるために表面処理されることが可能である。構成層の各々についての材料の選択は、デバイスのエレクトロルミネセンス効率を高めるための放射層における陽電荷および陰電荷のバランスにより決定されることが好ましい。
【0083】
各機能層は、2つ以上の層から形成されることが可能であることが理解される。
【0084】
このデバイスは、好適な基板上への個別の層の逐次的な蒸着を含む多様な技術によって調製されることが可能である。ガラス、プラスチックおよび金属などの基板が用いられることが可能である。熱蒸発、化学蒸着等などの従来の蒸着技術が用いられることが可能である。あるいは、有機層は、特にこれらに限定されないが、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール技術、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等を含む従来のコーティングまたは印刷技術を用いて、好適な溶剤中の溶液または分散体から適用されることが可能である。
【0085】
本発明はまた、2つの電気コンタクト層の間に位置された少なくとも1つの活性層を備える電子デバイスに関し、ここで、デバイスの少なくとも1つの活性層は、式1のクリセン化合物を含む。デバイスは、頻繁に、追加の正孔輸送層および電子輸送層を有する。
【0086】
高効率LEDを達成するために、正孔輸送材料のHOMO(最高被占軌道)は陽極の仕事関数と整合されていることが望ましく、および、電子輸送材料のLUMO(最低空分子軌道)は陰極の仕事関数と整合されていることが望ましい。材料の化学的親和性および昇華温度もまた電子輸送材料および正孔輸送材料の選択における重要な考慮事項である。
【0087】
本明細書に記載のクリセン化合物で形成されたデバイスの効率は、デバイスにおける他の層を最適化することによりさらに向上させることが可能であることが理解される。例えば、Ca、BaまたはLiFなどのより効率的な陰極が用いられることが可能である。動作電圧の低減または量子効率の増大をもたらす整形された基板および新規な正孔輸送材料もまた適用可能である。追加の層もまた、種々の層のエネルギーレベルの調整およびエレクトロルミネセンスの促進のために追加可能である。
【0088】
本発明の化合物は、度々、蛍光性および光ルミンセンス性であると共に、感酸素インジケータおよびバイオアッセイにおける蛍光性インジケータなどのOLED以外の用途に有用であることが可能である。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は、本発明の一定の特性および利点を示す。これらは、本発明を例示することを意図しており、限定的であることは意図していない。すべての割合は、他に示されていない限りにおいて重量を基準としている。
【0090】
実施例1
この実施例は、化合物E1.の調製を示す。
【0091】
1A:2,6−および2,7−ジ−(2−メチル−2−ヘキシル)−9,10−ジブロモアントラセンの調製
35g(300mM)2−メチル−2−ヘキサノールおよび17.8gアントラセン(100mM)を50mLトリフルオロ酢酸と一緒にして、窒素下で一晩還流する。溶液は急速に茶色に色が濃くなり、厚い白色の油状の材料が浮く。室温に冷却し、窒素流下で蒸発させ、および、塩化メチレンに抽出させる。有機層を分離すると共に無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させる。得られる固体をシリカカラムを通してヘキサンで抽出して、薄い黄色溶液を回収する。濃密な黄色の油まで蒸発させ、ゆっくりとした冷却によりアセトン/メタノールから再結晶させて、オフホワイトの結晶性固体を生成する。
【0092】
【化11】

【0093】
ジクロロメタン中でのNMRは所望の生成物と一致する。メタノール/アセトンから再度再結晶させる。微量の2,7−ジヘキシル化生成物が存在しており、再結晶からの母液はこの生成物で富化されている。2,6異性体材料は低融点固体であると共に、ヘキサン中にきわめて可溶性である。
【0094】
6.0g(16mM)の純粋な2,6−ジ−2−メチルヘキシル−アントラセンを100mLジクロロエタンに入れ、2.10mL臭素(40mM)を攪拌しながら、室温で、4時間かけて滴下する。4時間攪拌し、次いで、水に注ぎ入れ、亜硫酸ナトリウムを添加して、残留している臭素を消費する。塩化メチレン中に抽出すると共に、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られる材料を塩化メチレン溶出液と共にアルミナカラムに通し、次いで、蒸発させ、および、メタノールを添加して薄い黄色の固体を沈殿させる。収率は約7.2gである。
【0095】
【化12】

【0096】
クロロホルム中でのNMRスペクトルは、出発物質であるアントラセンに由来する微量の2,7異性体を伴う、所望のジブロミドに一致する。
【0097】
1B:N−4−ビフェニル,N−3−(9−カルバゾリル)フェニルアミンの調製
3.4gの4−ビフェニルアミン(0.02M)をグローブボックスに入れ、6.5g9−(3−ブロモフェニル)−カルバゾール(0.02M)を添加する。0.2g Pd2DBA3(0.216mM)、0.088g P(t−Bu)3(0.432mM)および2.0g t−BuONaを添加すると共に、すべてを25mLのトルエン中に溶解させる。触媒材料を添加すると、温和な発熱が生じる。
【0098】
【化13】

【0099】
マントル中のグローブボックス中で、80℃で、窒素下に1時間加熱して、濃い茶色溶液(濃密)とする。トルエンで溶出するシリカクロマトグラフィにより冷却および後処理すると共に、明るい紫色/青色のPLを伴う薄い茶色の溶液を回収する。窒素中で蒸発させて体積を減らすと共に、メタノールおよびアセトンを添加してオフホワイトの材料を再結晶させる。材料は、乾燥すると低融点結晶性固体である。約8gを回収する。NMR分析が予期した構造を裏付ける。
【0100】
1C:化合物E1の調製
2.65gの2,6−ジ−2−メチルヘキシル−9,10−ジブロモアントラセン(5mM)をグローブボックスに入れ、4.15g(10mM)N−4−ビフェニル、N−3−(9−カルバゾリル)−フェニル−アミンおよび1.0g t−BuONa(10mM)を100mLのトルエンと共に添加する。10mLのトルエン中に溶解された0.4g Pd2DBA3(0.4mM)、0.17g P(t−Bu)3(0.8mM)を添加する。すべてを混合すると、溶液は徐々に発熱すると共に黄色がかった茶色になる。マントル中のグローブボックス中で、80℃で、1時間、窒素下に混合すると共に加熱する。直後の溶液は濃い紫色であるが、約80℃に達すると、これは、顕著な緑色の蛍光の濃い黄緑色である。室温で一晩攪拌する。グローブボックスから取り出すことにより冷却および後処理すると共に、シリカプラグを通して塩化メチレンで溶出してろ過する。
【0101】
【化14】

【0102】
酸性アルミナクロマトグラフィカラム(ジクロロメタンを溶出液として用いて)を通し、蒸発およびアセトン/メタノールの添加により約0.6gの黄色の結晶性固体を回収する。トルエン中に再溶解させると共に、50%ヘキサン/トルエンで溶出するシリカに通し、次いで、最終的な清浄化として、同一の溶出液を用いて塩基性アルミナに再度通す。得られる材料はきわめて可溶性であると共に、NMRは予期される生成物に一致する。
【0103】
実施例2.
この実施例は、化合物E2の調製を示す。
ジアルキル−ジブロモアントラセンを、2−メチル−2−ヘキサノールの代わりに2−メチル−2−ブタノールを用いると共に、2,6および2,7ジアルキル化材料の混合物として単離したこと以外は実施例1Aのとおり調製した。窒素を充填したグローブボックス中において、0.477gのこの混合物(1mM)を、0.85g(2mM)N−4−ビフェニル、N−3−(9−カルバゾリル)−フェニル−アミン(実施例1B)および0.2g t−BuONa(2mM)に10mLの混合キシレンと共に添加した。10mLのキシレン中に溶解した0.1g Pd2DBA3(0.1mM)、0.04g P(t−Bu)3(0.2mM)を添加する。すべてを混合すると、溶液はゆっくりと発熱すると共に、黄色がかった茶色になる。マントル中のグローブボックス中で、110℃で、1時間、窒素下に混合すると共に加熱する。直後の溶液は濃い紫色であるが、約80℃に達すると、これは、顕著な緑色の蛍光を伴う濃い黄緑色である。室温で一晩攪拌する。グローブボックスから取り出すことにより冷却および後処理すると共に、塩化メチレンで溶出するシリカプラグを通してろ過する。
【0104】
【化15】

【0105】
生成物をアルミナカラム(ジクロロメタンを用いて)に通し、蒸発およびアセトン/メタノールの添加により、約0.1gの生成物を黄色のガラス状の固体として回収した。トルエン中に再溶解すると共に酸性アルミナに通して最もゆっくりと溶出される緑色光ルミンセンスバンドを単離する。単離した固体をnmrに供したところ、2,6および2,7異性体およびアントラセン−C−N結合回転異性体の混合物として予期される生成物が確認される。
【0106】
実施例3
この実施例は、化合物E3の調製を示す。
0.53gの2,6−ジ−2−メチル−2−ヘキシル−9,10−ジブロモアントラセン(1mM)(実施例1A)を窒素を充填したグローブボックスに入れ、1.0g(2.1mM)N−4−p−ターフェニル、N−3−(9−カルバゾリル)−フェニル−アミン(4−ビフェニルアミンの代わりに4−p−テルフェニルアミンを用いたこと以外は実施例1Bのとおり調製した)および0.22g t−BuONa(2.2mM)を、30mLのトルエンと共に添加する。0.2g Pd2DBA3(0.2mM)、および、10mLのトルエンに溶解された0.09g P(t−Bu)3(0.4mM)を添加する。すべてを混合すると、溶液はゆっくりと発熱すると共に、黄色がかった茶色になる。マントル中のグローブボックス中で、80℃で、1時間、窒素下に混合すると共に加熱する。直後の溶液は濃い紫色であるが、約80℃に達すると、これは、顕著な緑色の蛍光を伴う濃い黄緑色である。80℃で4時間攪拌する。グローブボックスから取り出すことにより冷却および後処理すると共に、トルエン/塩化メチレンで溶出するシリカ/セライトプラグを通してろ過する。
【0107】
【化16】

【0108】
シリカ/塩基性−アルミナ/フロリジルカラム(ジクロロメタンおよびトルエンを用いる)に通すと共に、蒸発およびアセトン/メタノールにより、約1.1gの黄色の結晶性固体を回収する。得られる材料はジクロロメタン中にきわめて可溶性であると共に、トルエン中に適度に可溶性である。ジクロロメタン中でのNMRrは予期された構造を裏付けるが、分子は、アントラセン−C−N結合についてきわめて制限された回転を有すると見られ、これがNMRタイムスケールでの回転異性体をもたらしている。
【0109】
実施例4
この実施例は、化合物E4の調製を示す。
0.45gの2,6−ジ−t−ブチル−9,10−ジブロモアントラセン(1mM)(2−メチル−2−ヘキサノールの代わりにt−ブタノールを用いて上記実施例1Aのとおり調製した)をグローブボックスに入れ、および、0.8g(2mM)4−t−ブチルフェニル、N−4−t−ブチル−フェニル、N−3−(9−カルバゾリル)−フェニル−アミン(4−ビフェニルアミンの代わりに4−t−ブチルアミンを用いて実施例1Bのとおり調製した)および0.2g t−BuONa(2mM)を40mLのトルエンと共に添加する。10mLのトルエン中に溶解させた0.15g Pd2DBA3(0.15mM)、および0.07g P(t−Bu)3(0.3mM)を添加する。すべてを混合すると、溶液はゆっくりと発熱すると共に、黄色がかった茶色になる。マントル中のグローブボックス中で、80℃で、1時間、窒素下に混合すると共に加熱する。直後の溶液は濃い紫色であるが、約80℃に達すると、これは、顕著な緑色の蛍光を伴う濃い黄緑色である。グローブボックスから取り出すことにより冷却および後処理すると共に、トルエンで溶出する塩基性アルミナプラグを通してろ過する。
【0110】
【化17】

【0111】
得られたトルエン溶液は明るい黄色であると共に、次いで、これをトルエン溶出液を用いるフロリジル*カラムを通すと共に、蒸発およびメタノールの添加により、約0.9gの明るい黄色結晶性固体を回収する。ジクロロメタン中でのNMRが予期された構造を裏付ける。材料はきわめて可溶性であると共に、溶液PL中に青味がかった緑色を呈する。NMRはアントラセン−C−N結合についていくつかの制限された回転を示し、これが、NMRタイムスケールでの回転異性体をもたらしている。
【0112】
実施例5
この実施例は、化合物E5の調製を示す。
0.94gの2,6−(1−アダマンチル)−9,10−ジブロモアントラセン(1.5mM)(1−アダマンタノールを2−メチル−2−ヘキサノールの代わりに用いたこと以外は実施例1Aのとおり調製した)をグローブボックスに入れ、1.25g(3.1mM)N−4−ビフェニル、N−3−(9−カルバゾリル)−フェニル−アミン(実施例1B)および0.32g t−BuONa(3.3mM)を10mLのトルエンと共に添加する。トルエン中に溶解された0.15g Pd2DBA3(0.15mM)、0.06g P(t−Bu)3(0.30mM)を添加する。マントル中のグローブボックス中で、80℃で、1時間、窒素下に混合すると共に加熱する。直後の溶液は濃い紫色であるが、約80℃に達っすると、これは、わずかに緑色の蛍光を伴う濃い赤茶色である。グローブボックスから取り出すことにより冷却および後処理すると共に、トルエンおよびクロロホルムで溶出する塩基性アルミナプラグを通してろ過する。生成物は黄色であると共に、難溶性である。緑色発光材料は、ソックスレー抽出から、トルエンおよび塩基性アルミナを用いて濃い黄色の溶液として溶離される。蒸発させて体積を減らすと共に、約0.5g収率で黄緑色のPLを伴うオレンジ色の固体をメタノールを添加して沈殿させる。TLCは、トルエン中の溶媒先端で流れる単一の緑色のスポットを示す。材料はトルエン中にきわめて難溶性である。
【0113】
【化18】

【0114】
オレンジ色の固体を回収すると共に、ヘキサン中の10% DCMで溶出するシリカでのクロマトグラフィに再度供して、緑色のPLを伴うオレンジ−黄色のバンドより先の一連の明るい青色バンドを溶出する。10% DCMを用いるフロリジル*での再度のクロマトグラフィは、わずかに0.35gの黄色−オレンジ色の固体をもたらす。明るい緑色のPL溶液としてジクロロメタンでのNMRに供する。NMRはアミン基の束縛回転を示さず、2,7−ジアダマンチル異性体はほとんど存在しないように見受けられる。
【0115】
実施例6
この実施例は、緑色の発光を有するデバイスの製作および性能を示す。以下の材料を用いた。
陽極=インジウム錫酸化物(50nm)
バッファ層=バッファ1(50nm)(これは、導電性ポリマーおよび高分子フッ素化スルホン酸の水性分散体である)。このような材料は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書および米国特許出願公開第2005/0205860号明細書に記載されている。
正孔輸送層=HT−1、ビ−ナフタレンポリマー(20nm)
光活性層=ホストH1およびドーパント(60nm)。ドーパントおよび比率は表に示されている。
電子輸送層=金属キノレート誘導体(10nm)
陰極=CsF/Al(0.7/100nm)
【0116】
OLEDデバイスを、溶液加工および熱蒸発技術の組み合わせにより製作した。Thin Film Devices,Inc製のパターン化されたインジウム錫酸化物(ITO)でコートされたガラス基板を用いた。これらのITO基板は、30ohms/squareの表面抵抗値および80%光透過率を有するITOがコートされたCorning1737ガラスをベースとしている。パターン化されたITO基板を洗剤水溶液中で超音波洗浄すると共に、蒸留水ですすいだ。その後、パターン化されたITOをアセトン中で超音波洗浄し、イソプロパノールですすぎ、および、窒素流中で乾燥させた。
【0117】
デバイス製作の直前に、清浄化したパターン化されたITO基板をUVオゾンで10分間処理した。冷却した直後、バッファ1の水性分散体をITO表面上にスピンコートすると共に、加熱して溶剤を除去した。冷却の後、次いで、基板を正孔輸送材料の溶液でスピンコートし、次いで、加熱して溶剤を除去した。冷却の後、基板を放射層溶液でスピンコートすると共に、加熱して溶剤を除去した。基板をマスクし、真空チャンバ中に入れた。ZrQ層を熱蒸発により堆積させ、続いてLifの層を堆積させた。次いで、マスクを減圧中で変更し、Alの層を熱蒸発により堆積させた。チャンバをベントし、デバイスを、ガラス蓋、乾燥剤およびUV硬化性エポキシを用いて封入した。
【0118】
OLEDサンプルを、(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネセンス輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネセンススペクトル対電圧を計測することにより特徴付けた。すべての3種の計測は同時に行うと共に、コンピュータで制御した。一定の電圧でのデバイスの電流効率は、LEDのエレクトロルミネセンス輝度をデバイスの動作に必要とされる電流密度で除することにより測定される。単位はcd/Aである。出力効率は、動作電圧で除された電流効率である。単位はlm/Wである。結果が表2に示されている。
【0119】
【表1】

【0120】
実施例7
この実施例は、異なるアーキテクチャを有するデバイスの製作および性能を示す。
【0121】
デバイスを、追加の層を電子輸送層の体積の前に形成したこと以外は実施例6に記載のとおり調製した。この層は、H1および以下に示すクリセン誘導体の6:1比での蒸着により形成した。
【0122】
【化19】

【0123】
結果が以下の表2に示されている。
【0124】
【表2】

【0125】
概要または実施例において上記されている作業のすべてが必要とされているわけではなく、特定の作業の一部分が必要でない場合があり、および、1つまたは複数のさらなる作業が記載されたものに追加して実施されてもよいことに注目すべきである。さらに、作業が列挙されている順番は、これらが実施される順番では必ずしもない。
【0126】
前述の明細書において、特定の実施形態を参照してコンセプトを記載してきた。しかしながら、技術分野における当業者は、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および変形をなすことが可能であることを理解している。従って、明細書および図面は、限定的ではなく、例示的であるとみなされるべきであり、すべてのこのような変更は発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0127】
有益性、他の利点および問題に対する解法が、特定の実施形態に関して上述されている。しかしながら、有益性、利点、問題に対する解法、および、利益、利点あるいは解法のいずれかを生じさせ得るか、もしくは、より顕著とさせ得るいずれかの特性は、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての決定的な、必要な、または、必須の特性としては解釈されるべきではない。
【0128】
明確さのために本明細書において個別の実施形態の文脈に記載されている一定の特性はまた、単一の実施形態において組み合わせで提供され得ることが認められるべきである。反対に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈に記載されている種々の特性はまた、個別にまたは任意のサブコンビネーションで提供され得る。さらに、範囲で記載されている値の参照は、その範囲内の値の各々およびすべてを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中:
Ar1およびAr2は、同一であるかまたは異なっており、アリールであり;
Ar3およびAr4は、同一であるかまたは異なっており、単結合およびアリーレンからなる群から選択され;ならびに
1〜R4は、同一であるかまたは異なっており、H、D、アルキルおよびアルコキシからなる群から選択され;
5は、各出現で同一であるかまたは異なっており、D、アルキル、アリールおよびアルコキシからなる群から選択され;
aは、各出現で同一であるかまたは異なっており、0〜4の整数である)
を有する化合物。
【請求項2】
1=R3およびR2=R4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1およびR3が、5〜15個の炭素原子を有する分岐アルキルおよびシクロアルキルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
2およびR4がHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Ar1およびAr2が、ナフチル、ナフチルフェニル、フェニルナフチル、および、式IIを有する基:
【化2】

(式中:
5は、各出現で同一であるかまたは異なっており、D、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現で同一であるかまたは異なっており、0〜4の整数であり;
bは、各出現で同一であるかまたは異なっており、0〜5の整数であり;ならびに
mは、各出現で同一であるかまたは異なっており、0〜6の整数である)
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Ar3およびAr4が、単結合、ナフチレン、ナフチルフェニレン、フェニルナフチレン、および、式IIIを有する基:
【化3】

(式中:
5は、各出現で同一であるかまたは異なっており、D、アルキル、アルコキシおよびアリールからなる群から選択され;
aは、各出現で同一であるかまたは異なっており、0〜4の整数であり;ならびに
nは、各出現で同一であるかまたは異なっており、0〜6の整数である)
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
E1、E2、E3、E4およびE5からなる群から選択される化合物。
【請求項8】
第1の電気コンタクト層、第2の電気コンタクト層、および、これらの間の少なくとも1つの活性層を含み、前記活性層が請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を含む有機電子デバイス。
【請求項9】
前記活性層が光活性層であり、ホスト材料をさらに含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の電気コンタクト層と前記活性層との間にバッファ層をさらに含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記バッファ層が、少なくとも1種の導電性ポリマーおよび少なくとも1種のフッ素化酸ポリマーを含む、請求項10に記載のデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2012−512912(P2012−512912A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542529(P2011−542529)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068916
【国際公開番号】WO2010/071871
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】