説明

ルータ加工方法、コンピュータプログラム、ルータ加工装置、プリント配線基板

【課題】プリント配線基板の位置決め凹穴が形成されている縁部を研削加工する場合でもバリが発生しないルータ加工装置を提供する。
【解決手段】プリント配線基板PBを研削加工するときに、位置決め凹穴UOから右側の縁部MPを研削加工するルータビット110を右側に移動させるとともに外面が右側に変位する方向に回転させ、位置決め凹穴UOから左側の縁部MPを研削加工するルータビット110を左側に移動させるとともに外面が左側に変位する方向に回転させる。このため、位置決め凹穴UOから右側と左側との縁部MPは、位置決め凹穴UOを拡張する方向に研削されるので、縁部MPから位置決め凹穴UOに突出するバリが発生することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するルータビットの外面でプリント配線基板の縁部を研削加工するルータ加工方法に関し、特に、平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されているプリント配線基板を研削加工するルータ加工方法、これを実現するコンピュータプログラムおよびルータ加工装置、プリント配線基板、に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プリント配線基板をルータ加工装置で研削加工することがある。このような位置決め凹穴は、例えば、矩形の集積回路が形成されているプリント配線基板の傾斜した角部に形成されており、平面形状で開口したU型などに形成されている。
【0003】
このような位置決め凹穴は、集積回路の対角線上に位置するO型の位置決め閉穴と一対に形成されている。位置決め凹穴は傾斜方向に余裕を持たせるためにU型に形成されている。
【0004】
現在、上述のようなルータ加工装置として各種の提案がある(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−283529号公報
【特許文献2】特開平10−034460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにルータ加工装置で研削加工するプリント配線基板などには、集積回路の位置合わせのために縁部に平面形状で凹型の位置決め凹穴が形成されていることがある。
【0007】
しかし、本発明者が実際に微細なプリント配線基板の縁部をルータ加工装置で研削加工したところ、位置決め凹穴に突出するバリが発生して集積回路の歩留りが低下することが判明した。
【0008】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、プリント配線基板の位置決め凹穴が形成されている縁部を研削加工する場合でもバリが発生しないルータ加工装置、そのコンピュータプログラムおよびルータ加工方法、プリント配線基板、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のルータ加工方法は、回転するルータビットの外面でプリント配線基板の縁部を研削加工するルータ加工方法であって、プリント配線基板に平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されており、位置決め凹穴から右側の縁部を研削加工するルータビットを右側に移動させるとともに外面が右側に変位する方向に回転させ、位置決め凹穴から左側の縁部を研削加工するルータビットを左側に移動させるとともに外面が左側に変位する方向に回転させる。
【0010】
従って、本発明のルータ加工方法では、プリント配線基板を研削加工するときに、位置決め凹穴から右側と左側との縁部は、位置決め凹穴を拡張する方向に研削されるので、縁部から位置決め凹穴に突出するバリが発生することがない。
【0011】
また、上述のようなルータ加工方法において、位置決め凹穴は、矩形の集積回路が形成されているプリント配線基板の傾斜した角部に形成されていてもよい。
【0012】
また、上述のようなルータ加工方法において、位置決め凹穴は、平面形状で開口したU型に形成されていてもよい。
【0013】
また、上述のようなルータ加工方法において、位置決め凹穴は、集積回路の対角線上に位置するO型の位置決め閉穴と一対に形成されていてもよい。
【0014】
本発明のコンピュータプログラムは、回転するルータビットの外面でプリント配線基板の縁部を研削加工するルータ加工装置のコンピュータプログラムであって、プリント配線基板に平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されており、位置決め凹穴から右側の縁部を研削加工するルータビットを右側に移動させるとともに外面が右側に変位する方向に回転させ、位置決め凹穴から左側の縁部を研削加工するルータビットを左側に移動させるとともに外面が左側に変位する方向に回転させる。
【0015】
本発明のルータ加工装置は、回転するルータビットの外面でプリント配線基板の縁部を研削加工するルータ加工装置であって、プリント配線基板に平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されており、ルータビットを左右に移動させる移動制御手段と、ルータビットを回転させる回転制御手段と、を有し、位置決め凹穴から右側の縁部を研削加工するルータビットを右側に移動させるとともに外面が右側に変位する方向に回転させ、位置決め凹穴から左側の縁部を研削加工するルータビットを左側に移動させるとともに外面が左側に変位する方向に回転させる。
【0016】
本発明のプリント配線基板は、ルータ加工装置の回転するルータビットの外面で縁部が研削加工されているプリント配線基板であって、平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されており、位置決め凹穴から右側の縁部が、右側に移動されるとともに外面が右側に変位する方向に回転されるルータビットで研削加工されており、位置決め凹穴から左側の縁部が、左側に移動されるとともに外面が左側に変位する方向に回転されるルータビットで研削加工されている。
【0017】
なお、本発明の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、例えば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたルータ加工装置、コンピュータプログラムによりルータ加工装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。
【0018】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0019】
また、本発明の製造方法は、複数の製造工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の製造工程を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の製造方法を実施するときには、その複数の製造工程の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【0020】
さらに、本発明では左右方向を規定しているが、これは本発明の構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定したものであり、本発明を実施する場合の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0021】
例えば、本発明で云う左右方向に変位するとは、変位の結果として左右方向に相違する位置に移動することを意味しており、変位の方向そのものが厳密に左右方向である必要はない。
【発明の効果】
【0022】
本発明のルータ加工方法では、プリント配線基板を研削加工するときに、位置決め凹穴から右側と左側との縁部は、位置決め凹穴を拡張する方向に研削されるので、縁部から位置決め凹穴に突出するバリが発生することがない。従って、微細なプリント配線基板などの場合でも、バリによる集積回路の歩留りの低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態のルータ加工装置によるルータ加工方法を示す模式的な平面図である。
【図2】ルータ加工装置の構造を示すブロック図である。
【図3】ルータ加工装置のコンピュータプログラムによるルータ加工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように左右方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0025】
本実施の形態のルータ加工装置100は、回転するルータビット110の外面でプリント配線基板PBの縁部MPを研削加工する。このため、本実施の形態のルータ加工装置100は、適正なコンピュータプログラムがマイクロコンピュータ(図示せず)に実装されている。
【0026】
そのコンピュータプログラムは、図3に示すように、位置決め凹穴UOから右側の縁部MPを研削加工するルータビット110を、右側に移動させるとともに外面が右側に変位する時計方向に回転させ(ステップS1−Y〜S3)、位置決め凹穴UOから左側の縁部MPを研削加工するルータビット110を、左側に移動させるとともに外面が左側に変位する反時計方向に回転させるように記述されている(ステップS1−N,S4,S5)。
【0027】
このようなコンピュータプログラムが実装されていることにより、本実施の形態のルータ加工装置100は、図2に示すように、位置決め凹穴UOから右側の縁部MPを研削加工するルータビット110を右側に移動させるとともに位置決め凹穴UOから左側の縁部MPを研削加工するルータビット110を左側に移動させる移動制御部120と、位置決め凹穴UOから右側の縁部MPを研削加工するルータビット110を外面が右側に変位する方向に回転させるとともに位置決め凹穴UOから左側の縁部MPを研削加工するルータビット110を外面が左側に変位する方向に回転させる回転制御部130と、を有する。
【0028】
なお、位置決め凹穴UOは、図1に示すように、矩形の集積回路ICが形成されているプリント配線基板PBの傾斜した角部に形成されており、平面形状で開口したU型に形成されている。
【0029】
このような位置決め凹穴UOは、集積回路ICの対角線上に位置するO型の位置決め閉穴OOと一対に形成されている。位置決め凹穴UOは傾斜方向に余裕を持たせるためにU型に形成されている。
【0030】
なお、プリント配線基板PBは多層構造に形成されているため、その板厚は部位により相違しており、約140〜280μmである。また、位置決め凹穴UOは、開口幅となる内径が0.5mmで深さが0.33mmに形成されている。一方、位置決め閉穴OOは直径0.4mmに形成されている。
【0031】
ルータビット110は、超硬合金で直径0.8mmの円筒状に形成されており、その回転速度は40000min−1、移動速度は0.2〜0.6m/minである。このようなルータビット110により研削される縁部MPの全長は0.2mmである。
【0032】
上述のような構成において、本実施の形態のルータ加工装置100では、図1に示すように、プリント配線基板PBの位置決め凹穴UOが形成されている縁部MPを研削加工する。
【0033】
このとき、位置決め凹穴UOから右側の縁部MPを研削加工する場合は、図1(b)に示すように、ルータビット110を外面が縁部MPを右側に変位する時計方向に回転させ、このルータビット110を縁部MPに当接させてから右側に移動させる。
【0034】
反対に、位置決め凹穴UOから左側の縁部MPを研削加工する場合は、図1(a)に示すように、ルータビット110を外面が縁部MPを左側に変位する反時計方向に回転させ、このルータビット110を縁部MPに当接させてから左側に移動させる。
【0035】
本実施の形態のルータ加工装置100では、上述のように位置決め凹穴UOから右側と左側との縁部MPは、位置決め凹穴UOを左右に拡張する方向に研削される。このため、縁部MPから位置決め凹穴UOに突出するバリが発生することがない。
【0036】
従って、微細なプリント配線基板PBを研削加工する場合でも、バリによる集積回路ICの歩留りの低下を防止することができる。なお、本発明は上記形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。
【符号の説明】
【0037】
100 ルータ加工装置
110 ルータビット
120 移動制御部
130 回転制御部
MP 縁部
OO 位置決め閉穴
PB プリント配線基板
UO 位置決め凹穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するルータビットの外面でプリント配線基板の縁部を研削加工するルータ加工方法であって、
前記プリント配線基板に平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されており、
前記位置決め凹穴から右側の前記縁部を研削加工する前記ルータビットを右側に移動させるとともに外面が右側に変位する方向に回転させ、
前記位置決め凹穴から左側の前記縁部を研削加工する前記ルータビットを左側に移動させるとともに外面が左側に変位する方向に回転させる、ルータ加工方法。
【請求項2】
前記位置決め凹穴は、矩形の集積回路が形成されている前記プリント配線基板の傾斜した角部に形成されている、請求項1に記載のルータ加工方法。
【請求項3】
前記位置決め凹穴は、平面形状で開口したU型に形成されている、請求項1または2に記載のルータ加工方法。
【請求項4】
前記位置決め凹穴は、前記集積回路の対角線上に位置するO型の位置決め閉穴と一対に形成されている請求項1ないし3の何れか一項に記載のルータ加工方法。
【請求項5】
回転するルータビットの外面でプリント配線基板の縁部を研削加工するルータ加工装置のコンピュータプログラムであって、
前記プリント配線基板に平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されており、
前記位置決め凹穴から右側の前記縁部を研削加工する前記ルータビットを右側に移動させるとともに外面が右側に変位する方向に回転させ、
前記位置決め凹穴から左側の前記縁部を研削加工する前記ルータビットを左側に移動させるとともに外面が左側に変位する方向に回転させる、コンピュータプログラム。
【請求項6】
回転するルータビットの外面でプリント配線基板の縁部を研削加工するルータ加工装置であって、
前記プリント配線基板に平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されており、
前記ルータビットを左右に移動させる移動制御手段と、
前記ルータビットを左右に回転させる回転制御手段と、を有し、
前記位置決め凹穴から右側の前記縁部を研削加工する前記ルータビットを右側に移動させるとともに外面が右側に変位する方向に回転させ、
前記位置決め凹穴から左側の前記縁部を研削加工する前記ルータビットを左側に移動させるとともに外面が左側に変位する方向に回転させる、ルータ加工装置。
【請求項7】
ルータ加工装置の回転するルータビットの外面で縁部が研削加工されているプリント配線基板であって、
平面形状で凹型の位置決め凹穴が縁部に形成されており、
前記位置決め凹穴から右側の前記縁部が、右側に移動されるとともに外面が右側に変位する方向に回転される前記ルータビットで研削加工されており、
前記位置決め凹穴から左側の前記縁部が、左側に移動されるとともに外面が左側に変位する方向に回転される前記ルータビットで研削加工されている、プリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76151(P2012−76151A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220524(P2010−220524)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】