説明

ルーバーフィルム及びその製造方法

【課題】視野角の拡大を抑えつつ輝度の向上を可能とするルーバーフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
ルーバーフィルム10では、可視光を透過する透過帯11と、赤色吸収帯12R、緑色吸収帯12G、及び青色吸収帯12Bからなって可視光を吸収する吸収帯12R,12G,12Bがフィルム面10a、10bを形成するように交互に配置されている。これら3色の吸収帯12R,12G,12Bは、透過帯11を挟んで隣り合う吸収帯12R,12G,12B同士が互いに異なる吸収特性を持ち、且つ、所定の順序をもって配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
携帯電話や携帯情報端末等に設けられた表示体に貼着されて、この表示体から所定の入射角で入射した光を吸収するとともにそれ以外の光を透過することにより、光が透過される範囲に限って表示体に表示された内容を把握可能とするルーバーフィルム及びこうしたルーバーフィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に記載のように、発光体から所定の入射角で入射する光のみを透過してそれ以外の光を吸収するフィルムとして、いわゆるルーバーフィルムが知られている。ルーバーフィルムが有するこのような光制御性は、そもそも表示内容に高い保護性が求められる携帯電話や携帯情報端末等の表示体(例えば液晶ディスプレイ)に対して開発されたものであり、表示体の視野角を狭くするものとして機能する。例えば、液晶ディスプレイの表示面にルーバーフィルムが貼着されると、液晶ディスプレイの表示内容を視認できる範囲、つまり視野角が、ルーバーフィルムを透過可能な上記入射角に制限されることになる。そして、ルーバーフィルムを透過可能な入射角が携帯電話や携帯情報端末等の使用者の視野に基づいて設計されることにより、不特定多数の他者への表示内容の漏れが抑制可能になる。
【0003】
こうしたルーバーフィルムは、所定の入射角で入射する光のみを透過するルーバー層が、これを保護する透明樹脂層と、粘着性を有して上記液晶ディスプレイとの貼着面となる粘着層とに挟まれるかたちで構成されている。これらのうち、入射光を吸収あるいは透過するルーバー層は、透明樹脂により直方体状に形成されて上記入射光を透過する透過帯と、黒色顔料として例えばカーボンブラックが添加された透明樹脂により同じく直方体状に形成されて入射光を吸収する吸収帯とが、交互に配置されてフィルム状をなすものである。これら透過帯と吸収帯とは、その厚さ及び長さが同一となるかたちに構成されて各々がその幅方向に交互に配列されることにより1枚のフィルムを構成可能にしている。
【0004】
このように構成されるルーバーフィルムによれば、透過帯の厚さに対する幅の比が大きくなるほど上記視野角が狭くなり、また透過帯の幅に対する吸収帯の幅の比が小さくなるほどルーバーフィルムの透過率が大きくなる。そして、液晶ディスプレイからの光は、その入射角により、透過層及び透明樹脂に入射して透過されるものと、吸収帯に入射して吸収されるものとに分けられる。これにより視野角を超える範囲からルーバーフィルムを見るときには、上記吸収帯の光吸収作用により表示内容が視認不能になる。これに対して、視野角の範囲内からルーバーフィルムを見るときには、上記透過帯及び透明樹脂層の光透過作用により、上記透過率に応じた強度で表示内容が視認可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−199624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記黒色の吸収帯は、これに入射する光を可視光の全帯域で吸収する。そのため、こうした吸収帯が視点方向にある表示部位では、その表示内容が視認不能となる。それゆえ、上述したような目的でルーバーフィルムが用いられる場合、その効果は顕著なものとなる。
【0007】
他方、黒色の吸収帯はこれに入射した光を可視光の全帯域で吸収するが故に、こうして吸収帯によって吸収された光の分だけ、液晶ディスプレイ自体が発する光よりもその輝度が低下することとなる。そのため、上述した透過率の低下の程度によっては、上記情報機器の使用者等、これに表示される内容を視認すべき対象に対しての視認性が低下する虞がある。こうした輝度の低下は、ルーバーフィルムの透過率を増大させることにより解決することはできる。つまり、透過帯の幅に対する吸収帯の幅の比を小さくする、言い換えれば吸収帯同士の距離を拡大することにより、ルーバーフィルムにおいて輝度自体は向上可能であり、上記視認性の問題は解消可能である。しかしながら、上記対策によれば、透過帯の厚さに対する幅の比が必然的に大きくなってしまい、つまり視野角がより広角になってしまい、表示内容の他者への漏れを抑制するといったルーバーフィルム自体の機能が損なわれるという問題が生じてしまう。このように、ルーバーフィルムにおける輝度の向上と視野角の狭角化とは、いわばトレードオフの関係にあり、いずれかに関して所望とする条件を満たそうとすれば、他方の条件がより低いものにならざるを得ない。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、視野角の拡大を抑えつつ輝度の向上を可能にしたルーバーフィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このルーバーフィルムは、光を透過する透過帯と光を吸収する吸収帯とが交互に配置されるものであり、異なる吸収特性を有して協働により可視光を遮光する複数の吸収帯を備え、該複数の吸収帯の各々が前記透過帯を介して連続的に配置される。
【0010】
このルーバーフィルムによれば、ルーバーフィルムにおける光の進行方向に吸収帯が存在するか否か、また吸収帯が存在するとすれば、その数が複数であるか否かによって、同光の出射状態が異なる。まず第1に、光の進行方向に吸収帯が存在しなければ、その光は透過帯を通過してそれが示す内容を把握可能にする。第2に、ルーバーフィルムへ入射する光の進行方向に1つだけ吸収帯がある場合には、その吸収帯の吸収特性に基づく透過成分のみがルーバーフィルムを透過することになる。このような透過成分は、入射光がそもそも示す内容を失ってはいるものの、その強度に応じた輝度を有するものである。第3に、ルーバーフィルムへ入射する光の進行方向に複数の吸収帯がある場合には、1番目の吸収帯からはその吸収特性に基づく透過成分が透過するものの、このような透過成分は、他の吸収帯の吸収特性により吸収されることとなる。
【0011】
そして、上記構成によれば、透過帯からの透過光が観測される視点方向では、言い換えれば、視野角内に視野方向が含まれる状態では、透過帯からの透過光に加え、上述する吸収帯からの透過成分までも観測可能になる。そのため、透過帯からの透過光のみが観測される構成に比べ、こうした視点方向における輝度が向上されることになる。この際、複数の吸収帯によりその全てが吸収された光は当然のこと、吸収帯により特定成分が吸収された光も、入射光が本来示す内容を欠いたものであることから、こうした光のみが観測される視野方向からルーバーフィルムを見たとしても、入射光が本来示す内容は把握不能である。それゆえ、ルーバーフィルムに入射する光が示す内容は、結局のところ、透過帯からの透過光のみが有することになり、上述するように、こうした透過光が観測できる視野方向では、その輝度が向上されることになる。したがって、上記構成によれば、視野角の拡大を抑えつつ輝度の向上が可能となる。
【0012】
このルーバーフィルムは、前記複数の吸収帯が、可視光に対して異なる複数の吸収特性を同順に繰り返すものである。
このルーバーフィルムによれば、透過帯を挟んで連続する複数の吸収帯がその吸収特性を同順に繰り返すため、複数の吸収帯からの透過成分は、異なる光学特性を同順に繰り返
すことになる。このため、吸収帯からの透過成分の偏りが抑えられることになり、こうした偏りにより発生し得る光学的なむらが軽減可能になる。例えば、複数の異なる吸収帯が赤色、緑色、青色のフィルタからなる場合には、1つの吸収帯のみを透過した光、すなわち、赤色光、緑色光、及び青色光が同順に繰り返して出射されることになる。その結果、これらの光によってルーバーフィルムに表現されるものは、その混色である白色光がルーバーフィルムの全体に広がったものとなる。それゆえ、透過帯を挟んで連続する複数の吸収帯が可視光に対して異なる吸収特性を有するとはいえ、これによる輝度むらや色むらなどが発生し難くもなる。
【0013】
このルーバーフィルムでは、前記異なる吸収特性とは、異なる波長成分を可視光領域にて吸収するものである。
このルーバーフィルムによれば、1つの吸収帯からの透過成分が可視光領域における特定の波長成分からなるため、複数の吸収帯からの透過成分が多色となることにより、その意匠性を向上させることも可能である。
【0014】
このルーバーフィルムでは、前記異なる吸収特性とは、異なる偏光成分を可視光領域にて吸収にするものである。
このルーバーフィルムによれば、1つの吸収帯からの透過成分が可視光領域における特定の偏光成分からなるため、吸収帯の構成材料に関する自由度は当然のこと、こうした光制御性を有するルーバーフィルムの適用対象をも拡張させることができる。
【0015】
このルーバーフィルムでは、前記透過帯と前記吸収帯との境界面は、フィルム面の法線方向から所定の角度だけ傾斜している。
吸収帯の主面がフィルム面の法線方向に沿う構成では、周期的な構造をなす透過帯からの透過光と、同じく周期的な構造をなす表示体の画素からの光とが互いに干渉しあい、周期的な縞状のパターンであるモアレが発生し、入射光が示す内容を把握不能にする虞がある。
【0016】
そこで、上記構成のルーバーフィルムでは、透過帯と吸収帯との境界面が、当該ルーバーフィルムにおけるフィルム面の法線方向から所定の角度だけ傾いている。これにより、上述する干渉が回避可能になるため、モアレの発生が防止可能にもなる。
【0017】
このルーバーフィルムの製造方法は、光を透過する透過帯と光を吸収する吸収帯とが交互に配置されるルーバーフィルムの製造方法であり、前記透過帯の構成材料を含む液滴を基体に向けて吐出して透過帯膜を形成する工程と、前記吸収帯の構成材料を含む液滴を基体に向けて吐出して吸収帯膜を形成する工程と、を含んで、前記透過帯膜を形成する工程と前記吸収帯膜を形成する工程とを繰り返して前記透過帯膜と前記吸収帯膜とが交互に積層されてなる積層膜を前記基体上に形成する工程と、前記積層膜をその厚さ方向に沿って切断することによりフィルム面を形成して前記積層膜から前記ルーバーフィルムを切り出す工程とを備え、前記積層膜を形成する工程では、前記透過帯膜を挟んで連続する複数の前記吸収帯膜の協働により可視光が遮光されるかたちで、可視光に対して異なる吸収特性を該複数の吸収帯膜の各々に付与するものである。
【0018】
このルーバーフィルムの製造方法によれば、透過帯を挟んで連続する複数の吸収帯がこれらの協働により可視光を遮光するかたちで該複数の吸収帯の各々が可視光に対して異なる吸収特性を有するルーバーフィルムが製造可能になる。こうしたルーバーフィルムにおいては、透過帯からの透過光が観測される視野方向では、透過帯からの透過光に加え、吸収帯からの透過成分についても観測可能となるため、上述の製造方法によれば、輝度を向上可能なルーバーフィルムが製造可能になる。しかも、吸収帯からの透過成分については入射光の示す内容を把握不能にするため、上述の製造方法によれば、視野角の拡大を抑え
つつ、その輝度を向上可能なルーバーフィルムが製造可能になる。
【0019】
なお、吸収帯からの透過成分は、視野角から観測可能であるとはいえ、ある特定の光学成分に限り透過されたものであることから、この透過成分のみを観測可能な角度からルーバーフィルムをみたとしても、入射光が本来示す内容は把握不能であり、故に同透過成分は、視野角における輝度向上にのみ寄与するものであると言える。すなわち、上記方法によれば、入射される光の全てが透過される入射角の拡大、すなわち視野角の拡大を抑えつつ、輝度の向上を可能にしたルーバーフィルムが製造可能となる。
【0020】
加えて、上記製造方法では、透過帯膜及び吸収帯膜の各々の構成材料を含む液滴を吐出する、いわゆる液滴吐出法を用いてルーバーフィルムを製造するようにしているため、上記複数の吸収帯が可視光に対して異なる吸収特性を含むものとするようにしても、上記透過帯をも含めて、吐出する材料を変更するのみでこれら複数種類の吸収帯及び透過帯を形成することが可能となり、上述のような構成を有するルーバーフィルムを容易に形成することができるようになる。
【0021】
そのうえ、積層膜をその厚さ方向に沿って切断することによりルーバーフィルムを形成する方法にあっては、ルーバーフィルムの幅に相当する厚みの積層膜が必要となり、こうした積層膜を形成する場合には、非常に多くの透過帯膜と吸収帯膜とが積層されなければならない。このような積層膜を形成する1つの方法としては、別途形成された透過帯膜及び吸収帯膜のそれぞれをラミネート法により積層させる方法が考えられるが、こうした方法では、ラミネート回数に相当するしわなどの積層不良が発生し得る。この点、上述するルーバーフィルムの製造方法によれば、積層する透過帯膜あるいは吸収帯膜ごとに液滴を吐出して積層膜を形成することから、上記の問題を解消することもできる。
【0022】
このルーバーフィルムの製造方法では、紫外線硬化性樹脂からなる前記液滴を前記基板に向けて吐出し、該基板に向けて紫外線を照射することにより、前記透過帯膜及び前記吸収帯膜を形成する。
【0023】
例えば、上記透過帯や吸収帯を熱硬化性の樹脂にて形成した場合、透過帯あるいは吸収帯それぞれの形成毎、あるいはこれら透過帯及び吸収帯を形成した後に、これらを硬化させるために加熱する工程が必須となる。このように熱を加えてルーバーフィルムを製造する場合、透過帯の形成材料と吸収帯の形成材料との熱膨張係数が異なること、また、加熱後に冷却むらが生じること等により、所望するルーバーフィルムが得られない虞がある。すなわち、こうした事態を回避するためには、ルーバーフィルムの製造に係る条件設定を適切なものとしなければならない。しかも、上記透過帯及び吸収帯を形成する材料は耐熱性でなければならないといった制約も自ずと生じることとなる。
【0024】
このルーバーフィルムの製造方法によれば、上記透過帯及び吸収帯を紫外線硬化性樹脂から形成するようにしているため、上述のように煩雑な条件設定を必要とせず容易に製造可能となるとともに、該ルーバーフィルムの形成材料は、紫外線硬化性さえ有する材料であればよいため、その選択に係る自由度も向上することとなる。
【0025】
ちなみに、紫外線照射装置をこれら形成材料としての液滴を吐出する液滴吐出装置に設けるようにすれば、液滴を吐出しつつ紫外線を照射する、あるいは、透過帯膜若しくは吸収帯膜を成膜した後に紫外線を照射する、またあるいは、上記積層膜の形成が完了してからこれを形成する膜に一括して紫外線を照射する等、任意のタイミングで紫外線の照射を行うことが可能である。
【0026】
このルーバーフィルムの製造方法における前記積層膜を形成する工程では、下地となる
少なくとも一つの膜においてその膜厚を一方向に連続的に変更させ、前記ルーバーフィルムを切り出す工程では、前記一方向と交差する方向に沿って前記積層膜を切断する。
【0027】
吸収帯の主面がフィルム面の法線方向に沿う構成では、周期的な構造をなす透過帯からの透過光と、同じく周期的な構造をなす表示体の画素からの光とが互いに干渉しあい、周期的な縞状のパターンであるモアレが発生し、入射光が本来示す内容を把握不能にする虞がある。
【0028】
そこで、このルーバーフィルムの製造方法によれば、下地となる透過帯膜あるいは吸収帯膜の形成に際し、その膜厚を一方向に連続的に変更する。例えば、液滴の吐出を開始したときの膜厚が最も厚くなり、且つ液滴の吐出を終了するときの膜厚が最も薄くなるように、若しくはこの逆の膜厚となるように液滴を吐出する。そして、膜厚が連続的に変化する方向と交差する方向に沿って積層膜が切断される。こうした方法によれば、切断面であるフィルム面の法線方向に対して、透過帯と吸収帯との境界面が傾斜するかたちでルーバーフィルムが製造される。それゆえ、当該ルーバーフィルムにおける透過帯と吸収帯との境界面がフィルム面の法線方向から所定の角度だけ傾くかたちに形成されて、これにより、上述する干渉が回避可能になるため、モアレの発生が防止可能にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るルーバーフィルムにおける一実施の形態の斜視構造を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線における断面構造を示す部分断面図。
【図3】(a)〜(d)ルーバーフィルム目視時の視野方向と、観測される光の色及びその領域との関係を示す説明図。
【図4】(a)〜(d)同実施の形態のルーバーフィルムを製造する工程を示す製造工程図。
【図5】(a)〜(d)同実施の形態のルーバーフィルムを製造する工程を示す製造工程図。
【図6】(a)〜(c)変形例の一部斜視構造を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係るルーバーフィルムの一実施の形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、ルーバーフィルムの斜視構造を示している。この図1に示されるように、ルーバーフィルム10は、可視光を透過する透過帯11と、可視光に含まれる特定波長の光を吸収する吸収帯12R,12G,12Bとを備え、これらは、同一フィルム面10a,10bを形成するように交互に配置されている。
【0031】
より詳細には、吸収帯12R,12G,12Bは、赤色光のみを透過するとともにそれ以外の光を吸収する赤色吸収帯12R、緑色光のみを透過するとともにそれ以外の光を吸収する緑色吸収帯12G、及び青色光のみを透過するとともにそれ以外の光を吸収する青色吸収帯12Bからなり、これら吸収帯12R,12G,12Bが、例えば青色吸収帯12B、赤色吸収帯12R、緑色吸収帯12Gの順に上記透過帯11を挟んで配置されている。フィルム面10aは、透過帯11や吸収帯12R,12G,12Bから透過する光の透過面として機能するものであり、図示しない保護フィルムなどの表面基材がこのフィルム面10aに積層されている。フィルム面10bは、透過帯11や吸収帯12R,12G,12Bに入射する光の入射面として機能するものであり、図示しない粘着フィルムなどの裏面基材がこのフィルム面10bに積層されている。このように構成されたルーバーフィルム10は、この裏面フィルムを介して携帯電話や携帯情報端末等が備える表示体に貼着される。なお、ルーバーフィルム10としては、フィルム面10bが表示体に直接貼着
される構成であってもよく、上記表面基材や裏面基材を有しない構成であってもよい。
【0032】
図2は、この図1に記載のA−A線に沿った断面構造、すなわちルーバーフィルム10の部分断面構造と、上記表示体から白色光が発せられたときに、ルーバーフィルム10に入射した光の進行方向を示す入射角と、ルーバーフィルム10から透過した透過光の色との関係を示している。同図2に示されるように、ルーバーフィルム10に入射した光は、それがルーバーフィルム10を透過可能か否かが、その光の入射角に応じて定められ、さらに透過可能な場合には、その光の透過状態が、その光の入射角に応じて定められる。
【0033】
例えば、赤色吸収帯12Rと緑色吸収帯12Gとに挟まれた透過帯11に入射した白色光の中で、この透過帯11の幅方向における中点から上記赤色吸収帯12Rと緑色吸収帯12Gとに入射しない光は、可視光の全波長を含む白色光Wとして透過する。また、同じく透過帯11の幅方向における中点から赤色吸収帯12Rに入射し、且つ透過帯11を挟んでこれと隣り合う青色吸収帯12Bには入射しない白色光は、このうち波長成分である赤色光Rのみが透過し、そして、緑色吸収帯12Gに入射し、且つ透過帯11を挟んでこれと隣り合う青色吸収帯12Bには入射しない白色光は、このうち波長成分である緑色光Gのみが透過する。一方、同じく透過帯11の幅方向における中点から該透過帯11と隣り合う赤色吸収帯12R、あるいは緑色吸収帯12Gに入射し、且つこれら赤色吸収帯12Rあるいは緑色吸収帯12Gと透過帯11を挟んで隣り合う青色吸収帯12Bにも入射する白色光は、2つの吸収帯12Rと12Bとによって、あるいは吸収帯12Gと12Bとによって完全に吸収される。
【0034】
このように、ルーバーフィルム10に入射した白色光のうち、透過帯11のみに入射する入射角を有した成分が、白色光Wとして透過しまた、1つの吸収帯12R,12G,12Bのみに入射する入射角を有した成分が、吸収帯12R,12G,12Bと同色の光R,G,Bとして透過する。そして、2つ以上の吸収帯12R,12G,12Bに入射する入射角を有した成分が、これら2つの吸収帯12R,12G,12Bの協働により、同吸収帯に完全に吸収される。
【0035】
ここで、上記透過帯11のみに入射する光は、これを発する表示体にて表示される情報を担保した状態で透過する。すなわち、この白色光Wが透過する範囲に包含される視野方向から、ルーバーフィルム10を介して表示体が目視された場合、この表示内容は視認されることとなるため、この透過帯11のみに入射する光の入射角度の範囲を視野角θとして定めることができる。他方、1つの吸収帯12R,12G,12Bに入射して透過した光は、上記表示体に表示される情報のうち、特定の波長、換言すれば吸収帯12R,12G,12Bと同色の情報のみを有した光となる。すなわち、単色光R,G,Bは、表示体の情報の大部分を欠落した状態であることから、これらが透過する範囲に包含される視野方向からルーバーフィルム10を介して表示体が目視された場合、表示内容が視認されることはない。しかしながらこうした単色光R,G,Bは、その光強度の分だけルーバーフィルム10から透過する光の強度、すなわち輝度に寄与するものである。しかも、上記単色光R,G,Bの色は赤色、緑色,及び青色の3色、いわゆる光の三原色であり、そのうえ吸収帯12R,12G,12Bが配列される方向に沿ってこうした色の光が同順に透過することから、これら光の混合光である白色光が表示体の全体に均一に広がることとなり、ルーバーフィルム10の装着により表示体の表示内容に輝度むらや色むら等が発生することをも抑制可能である。
【0036】
図3は、こうしたルーバーフィルム10における目視時の視野方向と観測される透過光の色及びその領域との関係(図3(a)、図3(b))、及び、従来構造のルーバーフィルム20、すなわち、吸収帯が黒色であるルーバーフィルム20(図3(c)、図3(d))における目視時の視野方向と観測される透過光の色及びその領域を示している。図3
(a)は、本実施の形態に係るルーバーフィルム10が、視野角θに含まれ、且つルーバーフィルム10のフィルム面10a,10bの法線となす角が最も大きくなる視野方向から目視されたときの透過光の色及びその領域を示すものであり、図3(b)は、同ルーバーフィルム10がそのフィルム面10a,10bの法線方向から目視されたときの透過光の色及びその領域である。
【0037】
これら図3(a)及び図3(b)から明らかなように、ルーバーフィルム10を透過する白色光Wが観測される領域は、上記法線方向から目視されるときに(図3(b))最も広くなるとともに、この法線とのなす角が最も大きくなる視野方向から目視されるときに最も小さくなる(図3(a))。換言すれば、ルーバーフィルム10のフィルム面10a、10bの法線方向が目視方向と一致するときに、これを介して透過される表示体の表示内容における視認性が最も高くなり、この法線とのなす角が最も大きくなる視野方向で目視されるときに視認性が最も低くなる。ただし、本実施の形態に係るルーバーフィルム10では、こうして白色光Wが観測される領域、すなわち視認性が変化するとはいえ、白色光Wの観測領域間においては必ず単色光R,G,Bのいずれかが透過するため、これによりルーバーフィルム10としての輝度は担保されることとなる。
【0038】
他方、図3(c)は、従来構造のルーバーフィルム20が、先の図3(a)と同様の視野方向から目視されたときに観測される透過光の光及びその領域を示すとともに、図3(d)は、同ルーバーフィルム20が、先の図3(b)と同様の視野方向から目視されたときに観測される透過光の光及びその領域を示している。
【0039】
これら図3(c)、図3(d)から明らかなように、目視時の視野方向と、ルーバーフィルム20を透過する白色光Wの観測領域、すなわちこのルーバーフィルム20が貼着される表示体の表示内容の視認性との関係は、先の図3(a)、図3(b)に示すルーバーフィルム10と同等である。しかしながら、この黒色吸収帯22BLを有するルーバーフィルム20においては、黒色吸収帯22BLに入射した可視光の全てが吸収されるため、上記ルーバーフィルム10にて単色光R,G,Bのいずれかが透過する領域では、光の透過が皆無になる。しかも、図3(d)に示すように、視野方向とルーバーフィルム20のフィルム面の法線とがなす角が大きくなるほど、光の透過しない領域が観測領域に占める割合が高くなり、ルーバーフィルム20としての輝度の低下は免れ得ない。
【0040】
このように、本実施の形態に係るルーバーフィルム10とは、従来構造のルーバーフィルム20とその視野角が同一としながらも、換言すれば目視による視認可能な範囲(視野角)に対する制限が同一としながらも、ルーバーフィルム10としての輝度を担保可能とするものである。
【0041】
次に、こうしたルーバーフィルム10の製造方法を、図4、図5を参照して説明する。
図4、図5は、当該ルーバーフィルム10を製造する方法を、その工程の順に示すものである。図4(a)に示すように、この製造方法ではまず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基体33に、周知の液滴吐出装置40によって、青色吸収帯12Bの構成材料である透明な紫外線硬化性樹脂と青色顔料とを含む液滴を吐出し、例えば5μmの厚さを有する青色吸収帯膜32Bを形成する。そして、図4(b)に示すように、透過帯11の構成材料である透明な紫外線硬化性樹脂を含む液滴を、これも液滴吐出装置40によって上記青色吸収帯膜32B上に吐出し、例えば15μmの厚さを有する透過帯膜31を形成する。その後、図4(c)に示すように、赤色吸収帯12Rの構成材料である紫外線硬化性樹脂と赤色顔料とを含む液滴を吐出して、例えば5μmの赤色吸収帯膜32Rを形成するとともに、図4(d)に示すように、この赤色吸収帯膜32Rの上に上述のようにして透過帯膜31を形成する。
【0042】
さらに、図5(a)に示すように、この透過帯膜31の上に、緑色吸収帯12Gの構成材料である紫外線硬化性樹脂と緑色顔料とを含む液滴を吐出して、例えば5μmの緑色吸収帯膜32Gを形成するとともに、図5(b)に示すように、この緑色吸収帯膜32Gの上に透過帯膜31を形成する。次いで、この図4(a)〜図5(b)に示す工程を順次繰り返すことにより、透過帯膜31を挟んで所定の順序、例えば青色吸収帯膜32B、赤色吸収帯膜32R、緑色吸収帯膜32Gの順に形成し、図5(c)に示すように、所望の厚さあるいは層数、例えば3mmあるいは120層程度となるまでこれら透過帯膜31と各色の吸収帯膜32R,32G,32Bを積層し、積層膜30を形成して、この積層膜30から基体33を剥離する。
【0043】
その後、積層膜30をその厚さ方向に沿って、且つ積層膜30を構成する透過帯膜31及び吸収帯膜32R,32G,32Bの長さが例えば500μmとなるように積層膜30を切断し、図5(d)に示すようなルーバーフィルム10を切り出す。なお、上記各透過帯膜31及び吸収帯膜32R,32G,32Bに対して紫外線を照射して硬化する工程は、これら透過帯膜31及び吸収帯膜32R,32G,32Bのそれぞれを成膜した段階で実行するようにしてもよいし、透過帯膜31及び吸収帯膜32R,32G,32Bの全てを積層して積層膜30を形成した後に実行するようにしてもよい。また、こうして紫外線を照射する装置は、上記液滴吐出装置40が備えるようにしてもよいし、これとは別体の装置であってもよい。特に、紫外線照射装置を液滴吐出装置40に設けるようにした場合には上述のように、ルーバーフィルム10の構成材料を含む液滴を吐出しつつ紫外線を照射する、あるいは、透過帯膜31若しくは吸収帯膜32R,32G,32Bを成膜した後に紫外線を照射する、またあるいは、上記積層膜30の形成が完了してからこれを形成する膜に一括して紫外線を照射する等、任意のタイミングで紫外線の照射を行うことが可能である。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係るルーバーフィルム10及びこの製造方法によれば、以下に列挙する効果が得られるようになる。
(1)ルーバーフィルム10を、透過帯11及び3色の吸収帯12R,12G,12Bにより構成するとともに、これら吸収帯12R,12G,12Bは、透過帯11を挟んで同一の色を有する吸収帯12R,12G,12Bが連続しないように配置した。これにより、ルーバーフィルム10に入射する光を、その入射角によって、透過帯11を通過する光、1つの吸収帯12R,12G,12Bを透過する光、及び、1番目に入射した吸収帯12R,12G,12Bを透過した後に、2番目に入射した吸収帯12R,12G,12Bにより吸収される光とすることができる。
【0045】
すなわち、透過帯11からの透過光が観測される視野方向では、換言すれば、視野角内から上記ルーバーフィルム10が目視される場合には、透過帯11からの透過光に加え、吸収帯12R,12G,12Bからの透過成分までも観測可能となる。そのため、透過帯11からの透過光のみが観測される構成に比べ、こうした視野方向における輝度が向上されることになる。この際、吸収帯12R,12G,12Bにより特定成分が吸収された光も、入射光が本来示す内容、すなわち表示体の表示内容の大部分を欠いたものであるから、こうした光のみが観測される視野方向からルーバーフィルム10が目視されたとしても、表示体における表示内容は視認できない。結局のところ、ルーバーフィルム10に入射する光が示す内容は、透過帯11からの透過光のみが有することとなり、こうした透過光が観測できる視野方向では、その輝度が向上されることになる。従って、視野角θの拡大を抑えつつ輝度の向上が可能となる。
【0046】
(2)透過帯11を挟んで連続する吸収帯12R,12G,12Bが、例えば青色吸収帯12B、赤色吸収帯12R、緑色吸収帯12Gの順に配置されることとした。換言すれば、これら吸収帯12R,12G,12Bから透過する光の光学特性、すなわち色若しく
は波長もこれと同じ順序で繰り返されるようにした。これにより、吸収帯12R,12G,12Bからの透過光における色(波長)の偏りが抑えられることとなり、こうした偏りに起因する光学的なむらが軽減可能になる。
【0047】
(3)しかも上記吸収帯12R,12G,12Bが赤色吸収帯12R、緑色吸収帯12G、及び青色吸収帯12Bからなるようにしているため、これらの光R,G,Bによってルーバーフィルム10には、その混色である白色光Wがルーバーフィルム10の全体に表示されることとなる。それゆえ、透過帯11を挟んで配置された吸収帯12R,12G,12Bがそれぞれ、可視光に対して異なる吸収特性を有するとはいえ、これによる輝度むらや色むらなどが発生し難くなる。
【0048】
(4)吸収帯12R,12G,12Bを赤色吸収帯12R、緑色吸収帯12G、及び青色吸収帯12Bからなるようにした。これにより、ルーバーフィルム10からの透過光がこれら3色の色を有することとなり、これらの透過光が十分な強度を個別に有する場合には、上述するような混色である白色光Wに代わり、ルーバーフィルム10の意匠性を向上させることができる。
【0049】
(5)透過帯膜31及び吸収帯膜32R,32G,32Bの形成に際しては、これらの構成材料を含む液滴を吐出する、いわゆる液滴吐出法を用いるようにした。これにより、上記吸収帯12R,12G,12Bが赤色吸収帯12R、緑色吸収帯12G,及び青色吸収帯12Bからなるようにしても、透過帯11をも含めて、吐出する材料を変更するのみでこれら複数種類の吸収帯12R,12G,12B及び透過帯11を形成することが可能となり、上記構成を有するルーバーフィルム10を容易に形成することができるようになる。
【0050】
(6)加えて、積層膜30をその厚さ方向に沿って切断することによりルーバーフィルム10を形成する製造方法にあっては、ルーバーフィルム10の幅に相当するだけの厚みを有する積層膜30が必要となり、こうした積層膜30を形成する場合には、非常に多くの透過帯膜31と吸収帯膜32R,32G,32Bとが積層されなければならない。このような積層膜30を形成する1つの方法としては、別途形成された透過帯膜31及び吸収帯膜32R,32G,32Bをラミネート法等により積層させる方法が考えられる。しかしながらこうした方法では、ラミネート回数に相当するしわなどの積層不良が発生し得る。この点、上記ルーバーフィルム10の製造方法によれば、積層する透過帯膜31あるいは吸収帯膜32R,32G,32Bごとに液滴を吐出して積層膜30を形成することから、こうした問題を解消することもできる。
【0051】
(7)透過帯11及び吸収帯12R,12G,12Bを紫外線硬化性樹脂から形成するようにした。これにより、例えば熱効果性樹脂によりこれら透過帯11及び吸収帯12R,12G,12Bを形成する場合のように煩雑な条件設定を必要とせず容易に製造可能となるとともに、ルーバーフィルム10の形成材料は、紫外線硬化性さえ有する材料であればよいため、その選択に係る自由度も向上することともなる。
【0052】
なお、上記実施の形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実行することも可能である。
・透過帯11及び吸収帯12R,12G,12Bのそれぞれは、ルーバーフィルム10のフィルム面10a,10bの法線方向に一致させて配置するようにした。これに限らず、図6(a)に示すように、透過帯11及び吸収帯12R,12G,12Bのそれぞれを上記法線方向から所定の角度αだけ傾斜させて配置する、すなわち、透過帯11と吸収帯12R,12G,12Bとの境界面が同法線方向から所定の角度αだけ傾斜するようにしてもよい。こうした構成によれば、上記(1)〜(7)の効果に加えて、
(8)吸収帯12R,12G,12Bのそれぞれが、フィルム面10a,10bの法線方向に一致して配置される構成では、周期的に配置された透過帯11を透過する光と、同じく周期的に配置された表示体の画素からの光との相互干渉が回避可能になるため、こうした干渉に起因する周期的な縞状のパターンであるモアレの発生を防止することが可能ともなる。
といった効果も得られるようになる。なお、こうした構成を有するルーバーフィルム40を製造するに際しては、例えば、最初に成膜される吸収帯膜32R,32G,32Bあるいは透過帯膜31(図4(a)においては吸収帯膜32B)を、液滴の吐出を開始したときの膜厚が最も厚くなり、且つ液滴の吐出を終了するときの膜厚が最も薄くなるように、若しくはこの逆の膜厚となるように液滴を吐出して形成することにより、その膜厚が一方向に連続的に変化するような膜を成膜する。すなわち、当該ルーバーフィルム40の製造に際して成膜される少なくとも一つの膜を、その厚さについて上述したような勾配を有する膜として形成する。その後、均一な膜厚を有する透過帯膜31あるいは吸収帯膜32R,32G,32Bを順次形成して積層膜30を形成する。そして、この積層膜30からルーバーフィルム40を切り出す際には、上記膜厚の勾配方向と切り出しの方向とを交差させる。これにより、図6(a)に示されるような、フィルム面に対して透過帯11と吸収帯12R,12G,12Bとが所定の傾斜をもって配置されたルーバーフィルム40を製造することができる。
【0053】
・吸収帯12R,12G,12Bを、ルーバーフィルム10の全体に渡り配置するようにした。これに限らず、図6(b)に示すように、ルーバーフィルム50の所定の領域、例えば、これが貼着される表示体のうち、不特定の他者に視認されることを防止したい情報が表示される領域に限って吸収帯12R,12G,12Bを配置するようにしてもよい。
【0054】
・吸収帯12R,12G,12Bは、赤色、緑色、及び青色の3色の吸収帯からなるようにした。これに限らず、黒色以外の他の3色の組み合わせからなる吸収帯であってもよい。
【0055】
・吸収帯12R,12G,12Bを、赤色吸収帯12R、緑色吸収帯12G、及び青色吸収帯12Bの3色の吸収帯からなるようにした。これに限らず、吸収帯を2色の吸収帯、例えば、赤色吸収帯12Rと緑色吸収帯12G、赤色吸収帯12Rと青色吸収帯12B、あるいは、青色吸収帯12Bと緑色吸収帯12G等の組み合わせからなる2色の吸収帯を含んで構成されることとしても、上記目的、すなわち、ルーバーフィルムの視野角θを拡大することなく、ルーバーフィルムとしての輝度を向上させることは可能である。また、吸収帯における色の組み合わせは、これら赤色、緑色、及び青色から選択した組み合わせに限らず、黒色以外の任意の組み合わせが採用可能である。
【0056】
・吸収帯12R,12G,12Bは、赤色吸収帯12R、緑色吸収帯12G、及び青色吸収帯12B、すなわち、可視光の特定波長の光のみを透過し、それ以外については吸収する特性を有するものとした。これに限らず、図6(c)に示すように、吸収帯が、可視光に含まれる異なる偏光成分、つまり白色のP偏光のみを透過する偏光帯61aと、白色のS偏光のみを透過する偏光帯61bからなるようにし、上記透過帯11を挟んでこれら偏光成分の異なる偏光帯61a,61b同士が隣り合うように配置してルーバーフィルム60を構成するようにしてもよい。つまり、吸収帯としては、それを透過する光が波長成分または偏光成分を異にするものであって、それらの協働によって可視光を遮断可能とするものであればよい。例えば、これら白色のP偏光のみを透過する偏光帯61aと、白色のS偏光のみを透過する偏光帯61bとの間に、赤色のP偏光のみを透過する偏光帯をさらに挟入する構成であってもよい。
【0057】
上記吸収帯の光吸収特性が、可視光の波長に依存するもの、あるいは可視光の偏光に依存するもののいずれであれ、該吸収帯が互いに異なる光吸収特性、望ましくは互いに相補的な関係にある光吸収特性を有する2つの吸収帯を含んで構成されるようにすれば、上記目的、すなわち、ルーバーフィルムの視野角θを拡大することなく、ルーバーフィルムとしての輝度を向上させることは可能である。
【符号の説明】
【0058】
10,20,40,50,60…ルーバーフィルム、10a、10b…フィルム面、11…透過帯、12R…赤色吸収帯、12G…緑色吸収帯、12B…青色吸収帯、22BL…黒色吸収帯、30…積層膜、31…透過帯膜、32R…赤色吸収帯膜、32G…緑色吸収帯膜、32B…青色吸収帯膜、33…基体、40…液滴吐出装置、61a、61b…偏光帯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する透過帯と光を吸収する吸収帯とが交互に配置されてなるルーバーフィルムにおいて、
異なる吸収特性を有して協働により可視光を遮光する複数の吸収帯を備え、
該複数の吸収帯の各々が前記透過帯を介して連続的に配置されてなる
ことを特徴とするルーバーフィルム。
【請求項2】
前記複数の吸収帯が、可視光に対して異なる複数の吸収特性を同順に繰り返す
請求項1に記載のルーバーフィルム。
【請求項3】
前記異なる吸収特性とは、異なる波長成分を可視光領域にて吸収するものである
請求項1又は2に記載のルーバーフィルム。
【請求項4】
前記異なる吸収特性とは、異なる偏光成分を可視光領域にて吸収するものである
請求項1〜3のいずれか一項に記載のルーバーフィルム。
【請求項5】
前記透過帯と前記吸収帯との境界面は、フィルム面の法線方向から所定の角度だけ傾斜している
請求項1〜4のいずれか一項に記載のルーバーフィルム。
【請求項6】
光を透過する透過帯と光を吸収する吸収帯とが交互に配置されてなるルーバーフィルムの製造方法において、
前記透過帯の構成材料を含む液滴を基体に向けて吐出して透過帯膜を形成する工程と、
前記吸収帯の構成材料を含む液滴を基体に向けて吐出して吸収帯膜を形成する工程と、
を含んで前記透過帯膜を形成する工程と前記吸収帯膜を形成する工程とを繰り返して前記透過帯膜と前記吸収帯膜とが交互に積層されてなる積層膜を前記基体上に形成する工程と、
前記積層膜をその厚さ方向に沿って切断することによりフィルム面を形成して前記積層膜から前記ルーバーフィルムを切り出す工程とを備え、
前記積層膜を形成する工程では、前記透過帯膜を挟んで連続する複数の前記吸収帯膜の協働により可視光が遮光されるかたちで、可視光に対して異なる吸収特性を該複数の吸収帯膜の各々に付与する
ことを特徴とするルーバーフィルムの製造方法。
【請求項7】
紫外線硬化性樹脂からなる前記液滴を前記基体に向けて吐出し、該基体に向けて紫外線を照射することにより、前記透過帯膜及び前記吸収帯膜を形成する
請求項6に記載のルーバーフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記積層膜を形成する工程では、
下地となる少なくとも一つの膜においてその膜厚を一方向に連続的に変更させ、
前記ルーバーフィルムを切り出す工程では、
前記一方向と交差する方向に沿って前記積層膜を切断する
請求項6又は7に記載のルーバーフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−243803(P2010−243803A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92713(P2009−92713)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】