説明

ルーバー装置

【課題】周囲への熱拡散の抑制を図ることができるルーバー装置を提供する。
【解決手段】鏡面反射性を備える複数の横板11,11,…を、太陽の動きに追従してスラット角の調整が可能となるように、鏡面反射性を備える縦板12,12間に組み付けることにより構成されたルーバー装置1と、複数の横板と複数の縦板とのいずれか一方が、2次元の再帰反射性を備えており、これらを組み合わせることにより横板のスラット角や縦板の水平方向の回転角によらずに再帰反射性が得られるルーバー装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーバーは、建物の外面に設置されることで、採光性を確保するとともに、日射による建物本体や建物内部の温度上昇を抑制する。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の透孔が形成された横板を備えるルーバーであって、ルーバー面により遮光性や遮熱性を確保するとともに、透孔により採光性を確保するルーバーが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、二重ガラス内に配設されたルーバーであって、ルーバー面が熱吸収ガラスと反射ミラーとの二重構造により構成されたルーバーが開示されている。このルーバーによれば、二重ガラス内で日射の熱吸収をするとともに、熱を除去した反射光を室内に導入することができる。二重ガラス内において吸収した熱は、換気によって外部に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−154688号公報
【特許文献2】特開平6−50070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載のルーバーは、ルーバー面により反射される日射の反射方向が無指向性であるため、反射日射により建物の周囲に熱が拡散するおそれがあった。
無指向性反射の反射は周囲建物で吸収され壁体温度を高めるとともに、大気に放熱することで建物周囲の気温が上昇させるため、結果として冷房負荷を増加させるおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に記載のルーバーは、ルーバーにより吸収した熱を建物外に排出するものであるため、特許文献1のルーバーと同様に、建物周囲の気温を上昇させるおそれがある。
【0008】
このような観点から、本発明は、周囲への熱拡散の抑制を図るルーバー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の第一のルーバー装置は、複数の縦板と複数の横板とを備えるルーバー装置であって、前記縦板および前記横板は、鏡面反射性を備えており、前記横板は、太陽の動きに追従してスラット角の調整が可能となるように前記縦板に組み付けられていることを特徴としている。
ここで、本明細書において、スラット角とは、横板(表面)と水平面とのなす角度をいう。
【0010】
かかるルーバー装置によれば、鏡面反射性を備えた横板の角度調整を太陽の動きに応じて行うことで、横板と縦板との2回反射により、日光が入射した方向に当該日光を再帰反射させることを可能としている。そのため、反射日射が建物周囲に拡散することを防止し、当該ルーバー装置が設置された建物の内外への熱拡散を抑制することが可能となる。
また、日光が横板の正面から入射する場合には、横板のストラット角を調整することで横板により日射を入射した方向に再帰反射させることが可能である。
【0011】
また、本発明の第二のルーバー装置は、複数の縦板と複数の横板を備えるルーバー装置であって、前記縦板と前記横板とのいずれか一方が、2次元の再帰反射性を備えており、横板のスラット角の調整を不要としたことを特徴としている。
【0012】
かかるルーバー装置によれば、例えば、横板による上下方向の2次元の再帰反射と鏡面反射性を備えた縦板による水平方向の2次元の再帰反射とが合成され、横板のスラット角によらずに2回反射により、日射を入射した方向に再帰反射させることが可能となる。
逆に、横板のスラット角度を水平に固定し、鏡面反射とした場合、横板による鏡面反射と2次元の再帰反射性を備えた縦板による水平方向の2次元の再帰反射の合成により、縦板の水平方向の回転角度によらずに、2回反射により、日射を入射した方向に再帰反射させることが可能となる。
【0013】
これにより、反射日射が建物周囲に拡散することを防止し、当該ルーバー装置が設置された建物の内外への熱拡散を抑制することができる。
なお、2次元の再帰反射性を備えた横板または縦板には、例えば、透明なプリズムや2次元の凹凸が形成されたものなどがある。
【0014】
なお、前記ルーバー装置における前記横板の設置間隔と前記縦板の設置間隔との比率は、1:1〜3:1であることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のルーバー装置によれば、周囲への熱拡散の抑制を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は第一の実施の形態に係るルーバー装置を示す斜視図、(b)は同側面図、(c)は同正面図である。
【図2】(a)は第二の実施の形態に係るルーバー装置を示す斜視図、(b)は同側面図、(c)は同正面図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明のルーバー装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態のルーバー装置1について、図面を参照して説明する。
【0018】
ルーバー装置1は、図1(a)に示すように、複数の横板11,11,…と、複数の縦板12,12,…とを組み合わせることにより構成されている。
【0019】
ルーバー装置1は、複数の横板11,11,…により、日光Sを反射すると同時に、横板11および縦板12の間からの通風と眺望とを確保することが可能となるように構成されている。
【0020】
横板11は、図1(a)および(b)に示すように、上下に配設された他の横板11との間に所定の間隔L2をあけた状態で、隣り合う縦板12,12の間に横架されている。
本実施形態では、横板11同士の間隔L2と縦板12同士の間隔L1(図1(c)参照)とが2:1となるように構成する。横板11同士の間隔と縦板12同士の間隔との比率は限定されるものではなく、適宜設定することが可能であるが、1:1〜3:1の範囲内に設定するのが望ましい。
【0021】
横板11は、縦板12に回転可能に固定されており、水平軸回りに回動させることができる。横板を水平軸回りに回動させると、横板11の表面と水平面とのなす角度(スラット角)αが変化するので、横板の向きを太陽の動きに追従させること(一軸追尾すること)ができる。
【0022】
横板11は、表面(日光Sが照射する側の面)が鏡面反射性を備えた平板状の部材により構成されている。横板11の長さ寸法(図1(c)における左右の長さ)は縦板12同士の間隔L1と同じ長さに形成されており、横板11の幅寸法(図1(b)における左右の長さ)は縦板12の幅と同程度に形成されている。
なお、横板11の形状寸法は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0023】
縦板12は、横板11を支持する部材であって、図1(a)に示すように、横方向に間隔をあけて立設されている。
本実施形態では、縦板12を平板状の部材により構成しているが、縦板12の形状は限定されるものではない。
【0024】
本実施形態では、左右に隣り合う縦板12同士の間隔L1が、上下に隣り合う横板11同士の間隔L2の1/2となるように設定するが、縦板12同士の間隔L1の長さは限定されるものではない。
【0025】
縦板12を構成する材料は鏡面反射性をある程度備えた材料であれば、限定されるものではなく、例えば、プラスチックやアルミニウム合金やセメント系材料等により構成することが可能である。縦板12は、屋外に設置する場合、横板11による荷重や強風時や地震時等に作用する応力に対して十分な耐力を備えている必要があり、室内に設置する場合には、通常の室内用ルーバー(ブラインド)と同様の材料とすることができる。
なお、縦板12は、自立していてもよいし、ブラケット等を介して他の構造体に固定されていてもよく、あるいは、室内であれば天井から吊り下げられた状態でもよく、縦板12の固定方法は限定されるものではない。
【0026】
ルーバー装置1を構成する横板11および縦板12の数量や配置は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0027】
以上、本実施形態のルーバー装置1によれば、横板11が鏡面反射特性を具備しているため、図1(b)に示すように、横板11に照射された日光Sは、反射光Saとして日光Sが入射した方向に反射される。
【0028】
また、横板11は、太陽の動きに追従してスラット角の調整が可能となるように縦板12に組みつけられているため、日光Sの照射角に限定されることなく、反射光Saを日光Sが入射した方向に反射させることができる。
【0029】
そのため、ルーバー装置1の周囲に反射熱が拡散することが抑制されるため、反射熱による周囲の気温の上昇が抑制されるとともに、室内の冷房負荷の低減化も可能となる。
【0030】
また、ルーバー装置1は、縦板12同士の左右の間隔L1と横板11同士の上下の間隔L2との割合が1:1〜1:3となるように構成されているため、図1(c)に示すように、横板11に照射した日光Sが正面から入射しない場合であっても、反射光S1が縦板12に照射し、反射光S1を反射した反射光S2を日光Sの入射方向に反射させることが可能となる。
【0031】
<第二の実施の形態>
第二の実施の形態のルーバー装置2について、図面を参照して説明する。
【0032】
ルーバー装置2は、図2(a)に示すように、複数の横板21,21,…と、複数の縦板22,22,…とを組み合わせることにより構成されている。
【0033】
ルーバー装置2は、複数の横板21,21,…により、日光Sを反射すると同時に、横板21および縦板22の間からの通風と眺望とを確保することが可能となるように構成されている。
【0034】
横板21は、上下に配設された他の横板21との間に所定の間隔をあけた状態で、隣り合う縦板22,22の間に横架されている。
本実施形態では、横板21同士の間隔L2が縦板22同士の間隔L1より広くなるように構成するが、横板21同士の間隔L2および縦板22同士の間隔L1は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0035】
横板21は、表面(日光Sが照射する側の面)が反射指向性(上下方向の2次元の再帰反射性)を備えた平板状の部材により構成されている。横板21の長さ寸法(図2(c)における左右の長さ)は縦板22同士の間隔と同程度の長さに形成されており、横板21の幅寸法(図2(b)における左右の長さ)は縦板22の幅より狭く設定されている。
【0036】
横板21は、図2(b)に示すように、縦板22の奥側(太陽の位置と反対側)に組みつけられており、縦板22が横板21よりも突出するように構成されている。
なお、横板21の形状寸法は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0037】
本実施形態の横板21は、表面に透明なプリズムや2次元の凹凸が構成されていることで、上下方向の2次元の再帰反射性を備えている。横板21は、照射された日光Sを縦板22の側面に反射(反射光S1)することが可能なように構成されている。
なお、横板21の構成は限定されるものではなく、適宜構成することが可能である。例えば、横板2を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、アルミニウム合金やプラスチックやセメント系材料により構成された板材の表面に鏡面反射性を備えた部材を固定したものを採用してもよい。
【0038】
縦板22は、横板21を支持する部材であって、図2(a)に示すように、所定の間隔をあけて立設されている。
本実施形態では、縦板22を平板状の部材により構成しているが、縦板22の形状は限定されるものではない。
【0039】
本実施形態では、左右に隣り合う縦板22同士の間隔が、上下に隣り合う横板21同士の間隔と同等になるように設定するが、縦板22同士の間隔は限定されるものではない。
【0040】
縦板22を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、プラスチックやアルミニウム合金やセメント系材料等により構成することが可能であり、縦板22は、屋外に設置する場合、横板21による荷重や強風時や地震時等に作用する応力に対して十分な耐力を備えている必要があるが、室内に設置する場合には、通常の室内用ルーバー(ブラインド)と同様の材料とすることができる。
なお、縦板22は、自立していてもよいし、ブラケット等を介して他の構造体に固定されていてもよく、あるいは、室内であれば天井から吊り下げられた状態でもよく、縦板22の固定方法は限定されるものではない。
【0041】
縦板22の幅寸法(図2(b)における左右の長さ)は、横板21の幅寸法より広くなっている。なお、縦板22の形状寸法は限定されるものではない。
【0042】
縦板22の側面は、鏡面状であって、水平方向の2次元の鏡面反射(正反射)性を備えており、横板21から反射された反射光S1を、日光Sが入射してきた方向に反射(反射光S2)するように構成されている。
【0043】
ルーバー装置2を構成する横板21および縦板22の数量や配置は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0044】
以上、第二の実施形態のルーバー装置2によれば、反射指向性(2次元の上下方向の再帰反射性)を備えた板材からなる横板21と2次元の水平方向の鏡面反射(正反射)性を備えた板材からなる縦板22とを組み合わせて構成されているため、図2(a)および(c)に示すように、横板21に照射された日光Sは、反射光S1として縦板22に向い、縦板22に入射した反射光S1は、縦板22により反射し、その反射光S2は、日光Sが入射した方向に照射される。つまり、日光Sは、横板21と縦板22とで2回反射して、日光Sの入射方向へ反射(再帰反射)する。
【0045】
そのため、ルーバー装置2の周囲に反射熱が拡散することが抑制されるため、反射熱による周囲の気温の上昇が抑制されるとともに、室内の冷房負荷の低減化も可能となる。
【0046】
また、2次元の再帰反射性を備えた横板21と鏡面反射(正反射)性を備えた縦板22との組み合わせにより、横板21のスラット角の調整を要することなく、日光Sを入射方向へ反射させることを可能としている。そのため、簡易な装置とすることができる。
なお、横板21は、太陽の動きに追従してスラット角αの調整が可能に構成されていてもよい。
【0047】
ルーバー装置2は、縦板22の幅寸法が横板21の幅寸法よりも大きく、かつ、縦板22が横板21よりも太陽側に突出するように横板21を縦板22に組み付けることにより構成されているため、横板21から反射した反射光S1が縦板22に照射しやすい。そのため、反射光S1が拡散することを抑制することが可能となる。さらに、縦板22が反射指向性を備えているため、縦板22により反射した反射光S2を日光Sの入射方向に反射させることが可能となる。
【0048】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0049】
例えば、前記各実施形態では、縦板12,22を挟んで対向する横板11,21同士が、同じ高さとなるように横板11,21を縦板12,22に組み付けるものとしたが、図3(a)に示すルーバー装置3のように、横板31の高さを変化させて縦板32に組みつけてもよい。
また、横板31は、図3(b)に示すルーバー装置3のように、部分的に取り除いてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、縦板12,22同士の間に、縦板12,22同士の間隔と同じ長さの板材である横板11,21を配置するものとしたが、図3(c)に示すルーバー装置3のように、縦板32の前面または背面に、長尺(縦板32同士の間隔よりも長い)の板材により構成された横板31を配設することにより形成してもよい。
【0051】
ルーバー装置1,2が設置される場所は限定されるものではない。また、ルーバー装置1,2が設置される構造物の用途、形状、規模等も限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 ルーバー装置
11 横板
12 縦板
2 ルーバー装置
21 横板
22 縦板
S 日光
Sa,S1,S2 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦板と複数の横板とを備えるルーバー装置であって、
前記縦板および前記横板は、鏡面反射性を備えており、
前記横板は、太陽の動きに追従してスラット角の調整が可能となるように前記縦板に組み付けられていることを特徴とする、ルーバー装置。
【請求項2】
複数の縦板と複数の横板を備えるルーバー装置であって、
前記縦板と前記横板とのいずれか一方が、2次元の再帰反射性を備えていることを特徴とするルーバー装置。
【請求項3】
前記横板の設置間隔と前記縦板の設置間隔との比率が1:1〜3:1であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のルーバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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